説明

レーザ装置

【課題】レーザ装置において効率的、安価、かつ高精度で先端チップの構造や透過率の差異等に応じたレーザ出力制御を実現する。
【解決手段】レーザ装置は、レーザ発振器1、レーザ発振器1によるレーザ光の出力を制御する制御部2、レーザ発信器1より出力されるレーザ光を導光するケーブル5、ケーブル5の先端に交換可能に取り付けられ、ケーブル5より出力されるレーザ光を照射表面に導光する先端チップ6、及び先端チップ6に設けられICタグ15を備える。制御部2はICタグ15から読み出した情報に基づいてレーザ発振器1によるレーザ光の出力を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を患部に照射し、生体患部の切開、凝固、蒸散等に供する
レーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザ装置はあらゆる分野で技術活用され発展しているが、特に、医療の分野でも日進月歩で応用化されその真価を発揮しつつある。従来の医療用レーザ装置の一例としては、例えば特許文献1に、レーザ導光路先端に、レーザ導光路より出力されるレーザ光を生体表面まで導光する複数のタイプの先端チップを着脱可能に備えたレーザ装置の技術が示されている。
【0003】
一方で、様々な情報の読み出し、書き込みが可能なICチップを利用したICタグがIT業界から高い注目を集めている。
【0004】
【特許文献1】実開昭62−197316号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のレーザ装置では、複数の先端チップの構造的差異や、先端チップ自体のレーザ光透過率が異なることによる、先端チップより出力されるレーザ光強度の差の補正や、先端チップ自体の温度上昇防止を考慮した出力制御等は、以下の2つに大別される。第1の手法としては、レーザ装置本体に備えられた操作表示部を操作者が操作してレーザ出力条件を変更する。第2の手法としては、本体装置に先端チップより出力されるレーザ光出力を検知するための光パワーメータを設け、事前にレーザ光出力を計測することにより、レーザ導光路に装着された先端チップを自動認識し、レーザ出力制御値を自動設定する。しかしながら、前者は、操作が非効率で、かつレーザ出力等の設定を誤る場合がある。また、後者は、先端チップのレーザ出力を測定する光パワーメータ、先端チップをセンサ部に照射するためのガイド部等が本体装置に必要であり、高価となることや、先端チップの故障や劣化による透過率低下等による誤認識が生じる等の問題があった。
【0006】
かかる従来の問題に鑑み、本発明は、レーザ装置において効率的、安価、かつ高精度で先端チップの構造や透過率の差異等に応じたレーザ出力制御を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明におけるレーザ装置は、レーザ発振器と、前記レーザ発振器によるレーザ光の出力を制御する制御部と、前記レーザ発信器より出力されるレーザ光を導光するレーザ導光路と、前記レーザ導光路の先端に交換可能に取り付けられ、前記レーザ導光路より出力されるレーザ光を照射表面に導光する先端チップと、前記先端チップに設けられるICタグとを備える。具体的には、前記ICタグは、前記前記先端チップに関する情報(例えば先端チップのタイプや透過率等)を読み出し可能に記憶し、前記制御部は前記ICタグから読み出した情報に基づいて前記レーザ発振器によるレーザ光の出力を制御する。これにより、制御部が使用される先端チップのタイプや透過率等の特性を認識し、それに基づいてレーザ発振器によるレーザ光の出力を制御する。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明のレーザ装置では、先端チップに、前記先端チップのタイプや、透過率等の特性に関する情報を有するICタグを備え、制御部がこの情報を読み出すので、先端チップをレーザ導光路に接続時に接続した際にレーザ装置は自身に接続された先端チップを自動的に認識可能となり、先端チップのタイプや、透過率等の特性に応じたレーザ出力制御が可能で、治療に最適な出力制御を、高精度で誤りなく実行できる。
【0009】
また、先端チップをレーザ導光路に接続すると制御部がICタグから読み出した情報に基づいて自動的に先端チップを認識するので、事前のレーザ光出力計測等が不要であり、効率的である。
【0010】
さらに、先端チップ認識のための光パワーメータ等が必要ない点で安価である。
【0011】
さらにまた、新たな病巣部への適用として追加された先端チップに対しても、記憶された特性値を読み取ることにより、本体装置を変更することなく、最適なレーザ光の出力制御が可能となり、機器の応用範囲を容易に広げることを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図1から図4を用いて説明する。
【0013】
図1は本発明のレーザ装置の実施の形態における全体図を示し、図2はブロック図を示す。本実施の形態のレーザ装置は、レーザ発振器1、制御部2、レーザ発振器1と制御部2を内蔵する本体部3、操作表示部4、光ファイバ11と信号線16を内蔵したケーブル5、及び先端チップ6を備える。
【0014】
本実施の形態におけるレーザ装置は、歯科診療所などに置かれる例を示す。歯科診療所では様々な機材を置く必要があることから占有面積を極力小さくすることが求められる。そこで本実施の形態におけるレーザ装置は、占有面積を小さくするために本体部3を平面投影面積の小さい胴長の形状とし、ディスプレイ4aを含む操作表示部4は操作者が操作しやすい位置になるように胴長形状の本体部3の上部を覆うように設けられている。本体部3を支える底部7には床面との間にキャスタ8を備え、容易に床面を移動できるようにしている。また、操作表示部4には移動時に使用する取っ手10が設けられている。さらに、本実施の形態のレーザ装置は、レーザ照射スイッチとしてのフットスイッチ9を備える。製品の安全上、フットスイッチ9が操作者により踏み込まれた時のみレーザが出力される。
【0015】
制御部2は、操作表示部4及びフットスイッチ9から入力される信号や、後述するICタグ15から読み出した情報に基づいて、レーザ発振器1によるレーザ光の出力を制御する。光ファイバ11は、制御部2で制御されてレーザ発振器1から出力されるレーザ光を患者の患部にまで導く。先端チップ6はケーブル5(光ファイバ11)の先端に取り付けられ、光ファイバ11で導光されたレーザ光を、最終的に患者患部表面に導光する。患者患部の部位や患部の状態、治療目的等により、異なるタイプの先端チップ6が備えられ、取替え可能ないしは交換可能な構造となっている。
【0016】
図3は本実施の形態におけるレーザ装置のケーブル5、及び先端チップ6の内部構造を模式的に示す断面図である。なお、図3において、図1で図示されたものと同一構成物については同一符号を付している。図3では信号線16の図示は省略している。
【0017】
図3にのみ図示した集光レンズ12は、レーザ導光路を構成する光ファイバ11より出力されるレーザ光13を集光して先端チップ6a、或いは先端チップ6bに入射させる。
【0018】
先端チップ6a,6bは、レーザ光13を反射する薄膜で内面が構成されたテーパ状、或いは針状の金属製パイプのレーザ導光路であり、内面反射によりレーザ光を生体表面14へ導光する。先端チップ6a,6bは、様々な種類を有する先端チップ6の中で2例を示すものであり、生体表面14に照射される面積(照射径)が異なるとともに、導光するパイプ形状が異なる。例えば、先端チップ6bは、細いポケット状の歯肉等に挿入してレーザ光13を照射するのに最適であり、先端チップ6aは歯肉表面の比較的広い病巣部にレーザ光13を照射するのに適している。このように生体表面14の様々な形態、病状に対して最適な照射条件となるように、先端チップ6には多くの種類がある。
【0019】
本実施の形態における先端チップ6a,6bは異なる光学的、熱的な特性を有する。具体的には、先端チップ6bは先端チップ6aよりも、内部でのレーザ光13の反射回数が多く、透過率が低い。また、先端チップ6bは非透過による低下したエネルギー量に相当して先端チップ6aよりも温度上昇値が高い。従って、例えば照射面積が変化しても、照射パワー密度を同一としたい場合でも、先端チップ6bのように先端チップの温度上昇値が高いとあまり平均出力の高いレーザ光を導光することが出来ない等、2つの先端チップ6a,6b間で使用条件が異なる。
【0020】
図2及び図4を参照すると、先端チップ6a,6bにはICタグ15が取り付けられている。本実施形態では、ICタグ15は先端チップ6a,6bの表面に配置されているが、ICタグ15を先端チップ6a,6bの内部に内蔵させてもよい。ICタグ15内部のメモリ17には、個々の先端チップ6a,6bのタイプ、レーザ光透過率等の特性に関する情報が記録されている。ケーブル5内の信号線16は、一端が制御部2に電気的に接続されている。また、信号線15の他端と先端チップ6a,6bには、図2にのみ模式的に示すようにそれぞれコネクタ18,19が設けられている。
【0021】
先端チップ6a、或いは先端チップ6bをケーブル5に接続すると、コネクタ18,19及び信号線14を介して、ICタグ15が本体部3側の制御部2に接続され、ICタグ15に記憶された情報が制御部1により電気信号として読み出される。制御部1は、ICタグ15から読み出した先端チップのタイプや、透過率等の特性情報を、操作表示部4のディスプレイ4aに表示する。また、制御部1は、先端チップ6a,6bのICタグ15から読み込まれる特性パラメータに基づき、照射パワー密度、平均出力制限値等を制御条件に組み込み、レーザ発振器1からのレーザ出力を制御する。
【0022】
本実施の形態の場合、先端チップ6a,6bは生体表面14における照射面積が異なるが、同一出力設定値では、同一パワー密度となるように設定される。また、先端チップ6bを使用する場合、温度上昇値が先端チップ6aを使用する場合よりも高くなるため、出力設定値の上限が低く制限される。
【0023】
本実施の形態のレーザ装置では、先端チップ6a,6bに、先端チップ6a,6bのタイプや、透過率等の特性に関する情報を有するICタグ15を備え、制御部2がこの情報を読み出すので、先端チップ6a,6bをケーブル5に接続時に接続した際にレーザ装置は自身に接続された先端チップ6a,6bを自動的に認識可能となり、先端チップ6a,6bのタイプや、透過率等の特性に応じたレーザ出力制御が可能で、治療に最適な出力制御を、高精度で誤りなく実行できる。
【0024】
また、先端チップ6a,6bをケーブル5に接続すると制御部がICタグから読み出した情報に基づいて自動的に先端チップ6a,6bを認識するので、事前のレーザ光出力計測等が不要であり、効率的である。
【0025】
さらに、先端チップ認識のための光パワーメータ等が必要ない点で本実施の形態のレーザ装置は安価である。
【0026】
さらにまた、新たな病巣部への適用として追加された先端チップ6に対しても、記憶された特性値を読み取ることにより、本体装置を変更することなく、最適なレーザ光の出力制御が可能となり、機器の応用範囲を容易に広げることが可能である。
【0027】
前記実施の形態では有線式のICタグを採用しているが、無線式のICタグを採用してもよい。また、医療用のレーザ装置を例に本発明を説明したが、本発明は他の用途のレーザ装置にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のレーザ装置は、先端チップのタイプや、透過率等の特性情報を予め記憶させたICタグを先端チップに設けることにより、レーザ出力を適切に、かつ確実に制御可能とするとともに、本体装置を変更することなく、新たな特性の先端チップを使用可能となり、特に医科、歯科用のレーザ装置などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のレーザ装置による実施の形態における全体図。
【図2】本発明のレーザ装置による実施の形態におけるブロック図。
【図3】本発明のレーザ装置による実施の形態におけるレーザ導光路5及び先端チップ6の内部構成を示す断面図。
【図4】本発明のレーザ装置による実施の形態1におけるレーザ導光路5及び先端チップ6(特にICタグ15)の構成示す図。
【符号の説明】
【0030】
1 レーザ発振器
2 制御部
3 本体部
4 操作表示部
5 ケーブル
6 先端チップ
6a 先端チップ
6b 先端チップ
7 底部
8 キャスタ
9 フットスイッチ
10 取っ手
11 光ファイバ
12 集光レンズ
13 レーザ光
14 生体表面
15 ICタグ
16 信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ発振器と、
前記レーザ発振器によるレーザ光の出力を制御する制御部と、
前記レーザ発信器より出力されるレーザ光を導光するレーザ導光路を内蔵したケーブルと、
前記ケーブルの先端に交換可能に取り付けられ、前記レーザ導光路より出力されるレーザ光を照射表面に導光する先端チップと、
前記先端チップに設けられるICタグと
を備えるレーザ装置。
【請求項2】
前記ICタグは、前記前記先端チップに関する情報を読み出し可能に記憶し、
前記制御部は前記ICタグから読み出した情報に基づいて前記レーザ発振器によるレーザ光の出力を制御する、請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項3】
前記ICタグより読み出された情報を報知する操作表示部をさらに備える、請求項1又は請求項2に記載のレーザ装置。
【請求項4】
前記ケーブルは前記ICタグと前記制御部を電気的に接続するための信号線を内蔵している、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレーザ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−64994(P2009−64994A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232217(P2007−232217)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】