説明

レーシングゲーム装置のプログラム、そのプログラムを格納した記録媒体、及びレーシングゲーム装置

【課題】意外性に富み、現実世界ではありえない仮想空間内独特のレースを展開させることが可能なレーシングゲーム装置を提供する。
【解決手段】レーシングゲーム装置のゲーム処理手段の構成として、仮想空間内に予め複数のパスを移動体の走行経路として設定する手段と、前記複数のパスに対して、通常走行時に使用する第1のパスと特殊モードの発動時にのみ使用する第2のパスとを設定する手段と、移動体を操作する前記操作手段からの発動指示により特殊モード(例えば物理的な重力の方向を操作可能とするモード)が発動された際に、該移動体による前記第2のパス(例えば天井面部)の走行を可能とする手段と、前記第2のパスを移動体が走行中に、所定条件を満たしていると判定した際に、前記第1のパスと合流する合流点を設定する手段と、前記所定条件を満たしていると判定した際に、前記第2のパスを走行中の移動体を前記合流点で合流させる手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作者が操作する移動体を含む複数の移動体を仮想空間内で競争させるレーシングゲーム装置のプログラム及びそのプログラムを格納した記録媒体、並びにレーシングゲーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遊戯者が操作する仮想の自車と他車とを仮想空間内で走行させて競争させるレーシングゲーム装置は、従来から広く知られている。このようなレーシングゲーム装置においては、仮想空間内に設定されたコース上を自動車などの移動体を走行させて順位や制限時間内での走行距離を競う形態としたものが一般的である。仮想空間内に設定されるコースは複数用意されており、複数のコースの中から所望のコースを遊戯者が選択できるようにしているが、決められたコースを走行させるだけでは飽きてしまう可能性がある。
【0003】
そこで、近年では、コース上に障害物を設けたり、コースを分岐させて異なるコースを走行させたりするなど、コースに工夫をしたものが提案されている。例えば、コース内に急に猫を飛び出させるなどのイベントを発生させ、そのイベントに対する操作者の対応によってコースの分岐点から別のルートを走行させるようにしたゲーム装置が提案されている(例えば特許文献1を参照)。また、仮想空間内で移動体を走行させるレーシングゲームにおいて、特殊領域を発生させることができる架空の乗物を移動体としてレースを展開させるようにしたものもある。このレーシングゲームにおいては、ある移動体が特殊領域を発生させた状態で、その特殊領域内に別の移動体が進入して特殊動作を実行することにより、既定の走行経路とは異なる走行経路(例えば通常のコースの上層に架設されている走行経路)を走行できるようにしている(例えば特許文献2を参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−204967号公報
【特許文献2】国際公開第2007/029811号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来のレーシングゲーム装置では、コース上に障害物を設けたり、コースを分岐させて異なるコースを走行させたりするなど、コースに工夫をしたものが提案されている。しかしながら、イベントに対する遊戯者の対応によってコースの分岐点から別のルートを走行させる形態のゲーム装置の場合、遊戯者によって全く別のルートをプレイすることになり、各遊戯者が一緒にプレイをしているという一体感を得ることができない。また、別のルートを走行することはできても、一度通過してしまうと同じルートの走行となるため飽きやすいと考えられる。
【0006】
一方、特殊領域を発生させることができる架空の乗物を用いたゲーム装置の場合は、仮想ゲームならではの非現実的な演出効果で遊戯者を楽しませることができるが、更なる爽快感やダイナミック感、意外性が求められている。また、特殊領域内で特殊動作を実行することにより、別のルートに進入させて走行させることが可能であるが、他の移動体が特殊領域を発生させることが条件であり、特殊領域内に自分の移動体を進入させることが困難である。
【0007】
本発明は上述のような事情から成されたものであり、本発明の目的は、移動体が走行する経路が固定されずに、不特定多数の経路を走行させることが可能なレーシングゲーム装置のプログラム、そのプログラムを格納した記録媒体、及びレーシングゲーム装置を提供することにある。さらに、本発明の目的は、意外性に富み、現実世界ではありえない仮想空間内独特のレースを展開させることが可能なレーシングゲーム装置のプログラム、そのプログラムを格納した記録媒体、及びレーシングゲーム装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、レーシングゲーム装置のプログラム、そのプログラムを格納した記録媒体、及びレーシングゲーム装置に関するものであり、ゲームプログラムに関しては、本発明の上記目的は、遊戯者が操作する操作手段と画像をモニタに表示する画像表示手段とを備えたゲーム装置のコンピュータに、前記操作手段の操作に応答して仮想空間内を移動する移動体を含むゲーム画像の画像情報生成ステップを含むゲーム処理ステップを実行させるゲームプログラムであって、前記ゲーム処理ステップは、仮想空間内に予め複数のパスを前記移動体の走行経路として設定するステップと、前記複数のパスに対して、通常走行時に使用する第1のパスと特殊モードの発動時にのみ使用する第2のパスとを設定するステップと、各移動体が第1の条件を満たしているか否かを判定するステップと、前記第1の条件を満たしていると判定された移動体を操作する前記操作手段からの発動指示により前記特殊モードが発動された際に、該移動体による前記第2のパスの走行を可能とするステップと、前記第2のパスを移動体が走行中に、第2の条件を満たしているか否かを判定するステップと、前記第2の条件を満たしていると判定した際に、前記第1のパスと合流する合流点を設定するステップと、前記第2の条件を満たしていると判定した際に、前記第2のパスを走行中の移動体を前記合流点で合流させるステップと、
を含むことによって達成される。
【0009】
さらに、本発明の上記目的は、前記特殊モードは、前記操作手段の操作によって物理的な重力の方向を指定可能とするモードであること、前記第2のパスは、現実世界では物理的に不可能な走行経路を有するパスであること、前記第2のパスは、列車を含む走行体の壁面部を走行経路とするパス、建造物の天井面部を走行経路とするパス、及び建造物の壁面部を走行経路とするパスのいずれか1つを含むこと、前記ゲーム処理ステップは、前記操作手段によって指定された方向に前記物理的な重力の方向を変えると共に、変えた方向に仮想重力を作用させ、前記遊戯者が操作する移動体を前記指定された方向に射出させる射出処理を実行するステップを更に含むこと、によってそれぞれ一層効果的に達成される。
【0010】
さらに、本発明の上記目的は、前記ゲーム処理ステップは、前記特殊モードが発動されてから前記指定された方向への前記仮想重力のエネルギー開放指示がされるまでの間、時間の経過に応じて、前記仮想重力のエネルギー値を加算し、その加算値を前記仮想重力のチャージ量として記憶手段に記憶するステップを更に含み、前記射出処理を実行するステップは、前記仮想重力のエネルギー開放指示がされた時点で、前記遊戯者が操作する移動体に作用させる力を前記仮想重力のチャージ量に応じた速度に変換し、変換した速度で前記移動体を射出させること、前記操作手段によって指定された方向に作用する仮想重力の範囲は、前記遊戯者が操作する移動体の周囲に設定された特殊重力空間内であること、前記ゲーム処理ステップは、前記特殊モードが発動されてから前記指定された方向への前記仮想重力のエネルギー開放指示がされるまでの間、時間の経過に応じて、前記特殊重力空間内の重力を無重力化して前記遊戯者が操作する移動体を含む前記特殊重力空間内のオブジェクトを浮上させる処理を実行するステップを更に含むこと、前記ゲーム処理ステップは、前記操作手段によって指定された方向に作用する仮想重力の影響を受けるオブジェクトを対象として、歪みのない通常のオブジェクトの形状から、前記仮想重力の作用により歪みを施したオブジェクトの形状へと徐々に変形させる画像処理を実行するステップを更に含むこと、前記ゲーム処理ステップは、前記特殊モードを発動させるステップにより前記特殊モードが発動された際に、該特殊モードの発動をトリガーとしてサウンド出力用の音楽データを変更するステップを更に含むこと、によってそれぞれ一層効果的に達成される。
【0011】
また、情報記憶媒体に関しては、本発明の上記目的は、上記ゲームプログラムを記憶した構成とすることによって達成される。
【0012】
また、ゲーム装置に関しては、本発明の上記目的は、遊戯者が操作する操作手段と、画像をモニタに表示する画像表示手段と、前記操作手段の操作に応答して仮想空間内を移動する移動体を含むゲーム画像の画像情報生成手段を含むゲーム処理手段とを備えたゲーム装置であって、前記ゲーム処理手段は、仮想空間内に予め複数のパスを前記移動体の走行経路として設定する手段と、前記複数のパスに対して、通常走行時に使用する第1のパスと特殊モードの発動時にのみ使用する第2のパスとを設定する手段と、各移動体が第1の条件を満たしているか否かを判定する手段と、前記第1の条件を満たしていると判定された移動体を操作する前記操作手段からの発動指示により前記特殊モードが発動された際に、該移動体による前記第2のパスの走行を可能とする手段と、前記第2のパスを移動体が走行中に、第2の条件を満たしているか否かを判定する手段と、前記第2の条件を満たしていると判定した際に、前記第1のパスと合流する合流点を設定する手段と、前記第2の条件を満たしていると判定した際に、前記第2のパスを走行中の移動体を前記合流点で合流させる手段と、を含むことによって達成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、特殊モードが発動された際に、その発動時にのみ走行可能な特殊パスを使用できるようにしている。また、特殊モードの発動が終了となったときに、通常パスと合流する合流点を設定するようにしている。そのため、移動体が走行する経路が固定されずに、不特定多数の経路を走行させることが可能となる。また、操作手段の操作によって物理的な重力の方向を指定可能とする特殊モードを備えた形態とすることによって、重力の操作によって天井や壁などを移動体の走行経路として走行させるなど、意外性に富み、現実世界ではありえない仮想空間内独特のレースを展開させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明が適用される家庭用ゲーム装置の一例を示す外観図であり、このゲーム装置は、一般的な家庭用ゲーム装置の例を示している。図1において、ゲーム装置の本体1(以下「ゲーム機本体」と呼ぶ)には、操作信号の入力端子(12a〜12d)と、映像信号及び音声信号の出力端子とが設けられており、操作者が操作する操作コントローラ2が接続ケーブル7を介して接続され、ゲーム画像などを表示するための表示装置3が映像/音声接続ケーブル6を介して接続される。
【0016】
コンピュータをゲーム処理手段として機能させるためのゲームソフトウェア(ゲームプログラム及び制御データ類)は、本例では外部記憶媒体4に格納されており、その外部記憶媒体4(本例ではDVD−ROM)は、ゲーム機本体1に設けられている蓋体14の部分から装填される。画像表示手段としての表示装置3は、本例ではテレビジョン受像機であり、ディスプレイ(画像表示装置)31とスピーカ32a,32bと映像/音声入力端子(映像信号入力端子33及び音声信号入力端子34,35)とを備えている。
【0017】
操作コントローラ2には、ゲームの開始を指令するスタートボタン21と、アナログジョイスティック22,23と、各種操作ボタン24と、方向キー25とが配設されており、これらの入力操作スイッチには、遊戯するゲームに応じて様々な機能が割り当てられている。本例では、4つの操作コントローラ2がゲーム機本体1に接続可能であり、最大4人の遊戯者が1つのゲームに同時に参加してゲームを楽しめるように構成されている。
【0018】
このような構成において、ゲーム装置は、操作コントローラ2から出力される入力操作情報に基づいてゲームプログラムを実行し、ゲームに係る画像データと音声データを生成して、テレビジョン受像機3のモニタ(ディスプレイ31)にゲーム画像を表示すると共にスピーカ32a,32bから効果音等を発生させる。
【0019】
図2は図1に例示したゲーム装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。ゲーム機本体1には、制御基板10と外部記憶媒体4の読取装置20(本例ではDVD−ROM読取装置)とが内蔵されている。なお、説明の便宜上、本発明に係るレーシングゲームの処理を実行する全体の情報処理手段を「ゲーム処理手段」として定義し、画像情報生成手段や音声情報生成手段については、ゲーム処理手段の一部の構成要件として説明する。
【0020】
制御基板10には、ゲームプログラムに従って動作するゲーム処理手段としてのメインCPU(Central Processing Unit)11と、主記憶手段としてのROM(Read Only Memory)12及びRAM(Random Access Memory)13と、ゲームプログラムによって生成された画像情報を基に、画像表示装置31に出力する映像信号を生成する画像処理回路14と、スピーカ32に出力する音声信号を生成する音声処理回路15と、入出力制御手段としての入出力機器用I/F(interface)回路16と、通信制御手段としての通信用I/F回路17とが搭載され、これらはバス18を介して接続されている。
【0021】
ROM12にはゲーム装置の起動用プログラム等の基本ソフトウェアが格納されており、RAM13には、ゲームの進行に従って得られる移動体の移動情報や仮想空間の地形情報などが一時的に記憶される。
【0022】
画像処理回路14は、CPU11からの指示に応じて動作するGPU(Graphics Processing Unit)14aとグラフィックメモリ14b等から構成され、画像情報生成手段としてCPU11を機能させるゲームプログラムに従って生成された画像情報(3次元仮想空間にモデル化されたポリゴンオブジェクト,仮想光源,仮想カメラなどの情報)に基づいて、3次元座標から2次元座標への座標変換処理やレンダリング処理(シェーディング,テクスチャーマッピング,レートレーシング法,ラジオシティ法などによる画像処理)を行い、ゲーム画像を画像表示装置31に表示させる処理を行う。なお、GPU14aやレンダリングプロセッサなどの3次元グラフィックス処理用の補助プロセッサを備えていないゲーム装置の場合は、ゲームプログラムによって上記のような座標変換処理やレンダリング処理などを実行する形態となる。
【0023】
音声処理回路15は、SPU(Sound Processing Unit)15aとサウンドメモリ15b等から構成され、音声情報生成手段としてCPU11を機能させるゲームプログラムに従って生成された音声情報に基づいて、効果音等の音声データを生成して音声信号を出力する処理を行う。
【0024】
入出力機器用I/F回路16は、本例では、操作コントローラ用のI/F回路16a、画像データ出力用のI/F回路16b、音声データ出力用のI/F回路16c、及びDVD−ROM読取装置用のI/F回路16dを備えている。通信用のI/F回路17は、インターネット通信網等の通信ネットワーク5を介したオンラインゲームを行う場合などに使用される通信制御手段である。
【0025】
なお、操作者が移動体を操作する移動体操作手段としての操作コントローラ2は、図1に例示した操作コントローラ2の構成に限るものではなく、ワイヤレスの操作コントローラや、コントローラ本体の動きを検知するセンサ(コントローラの画面に対する位置や方向、コントローラの傾きやX,Y,Z軸方向の加速度を検知するセンサなど)を備えたものや、タッチパネルやデジタイザ等のポインティングデバイスにて構成されたものなど、遊戯者が入力操作した情報をゲーム装置側に伝達できるものであれば良い。また、ゲームソフト(ゲームプログラム及びデータ)を格納する外部記憶媒体4は、DVD−ROMに限るものでなく、コンピュータにより読取可能な任意の情報記憶媒体を用いることができる。また、ゲーム機本体1内のRAM13若しくは他の内部記憶媒体にネットワークを介してゲームソフトをダウンロードする形態とした場合は、外部記憶媒体4及びその読取装置20は不要である。
【0026】
次に、本実施形態に係るコンピュータゲームの概要について説明する。
【0027】
本発明は、遊戯者の操作に応答して移動する移動体を含む複数の移動体を仮想三次元空間内で競争させるコンピュータゲーム(「レーシングゲーム」と呼ぶ)に好適に適用されるものであり、以下、レーシングゲームに適用した場合を例として説明する。
【0028】
図3は、仮想空間内に設定されるコース(走行路)50の基本構成の一例を示している本実施形態に係るレーシングゲームは、操作者(以下「遊戯者」と呼ぶ)が操作する移動体を含む複数の移動体60が、仮想空間内に設定された3次元形状のコース50を走行して競争するゲームである。図3のコース50の例では、遊戯者又はCPUによって操作される各移動体60が、スタート地点STからスタートして環状のコース50を規定回数周回し、ゴール地点(地点ST又は他の地点)に達した順位で勝敗を決定する。図3中の矢印R1〜R5に沿った走行経路NPは、通常走行時に使用する第1のパス(以下「通常パス」と呼ぶ)であり、この他に、後述する特殊モードの発動時にのみ使用することができる特殊な走行経路として第2のパス(以下「特殊パス」と呼ぶ)が設定されている。
【0029】
コース50を走行する移動体60は、本例では、図4(A)〜(C)に示すようなキャラクタ(仮想の遊戯者)61が乗った仮想乗物62である。図4(A)に示される仮想乗物62aは、エア(空気)の力を利用して地上との間に空気の層を形成し、その上をスノーボードやサーフィンボードのように滑走する形態の「エアライド」と称する架空の乗物である。図4(B)に示される仮想乗物62bは、地面に接地して走行するバイク型の乗物であり、図4(C)に示される仮想乗物62cは、地上との間に仮想の海の層を形成し、その上を高速艇のように滑走する形態の「ホイールヨット」と称する架空の乗物62aである。
【0030】
遊戯者は、このような移動体60の動作を操作コントローラによって操作する。例えば、図1に例示した操作コントローラ2を用いた場合は、操作ボタン24の押圧操作によって仮想乗物62の加速や減速を操作する。また、キャラクタ61の姿勢を左右に傾けて移動体60の重心を移動させたい場合や、仮想乗物62を上下左右に移動させたい場合は、アナログジョイスティック22又は23の傾動操作によって方向を操作する。また、後述する特殊モードの発動時に物理的な重力(G)の方向を変更したい場合も、アナログジョイスティック22又は23の傾動操作によって重力の方向を指定して変更する。
【0031】
これらの仮想乗物62は、加速性能,減速性能,コーナリング性能,最高速,ジャンプ力,回頭性,燃費など、それぞれ異なる走行性能が割り当てられており、仮想乗物62の走行性能を変化させるパーツも用意されている。遊戯者は、このような各種の仮想乗物62の中から、コースロケーションに応じて自分好みの仮想乗物62を選択してレースに参加する。また、仮想乗物62の乗るキャラクタ61についても複数の種類が設定されており、自分好みのキャラクタ61を選択可能としている。なお、初期の乗物62は、例えば図4(A)の乗物62a(エアライド)というように予め設定されている。その後は、レース中に貯めたポイントを用いて好みの乗物を購入することが可能である。なお、パーツの部分を購入して自分の乗物をカスタマイズできる形態としても良い。
【0032】
図5は、移動体60が通常パスNPを走行中のゲーム画像の一例を示しており、同図に示すように、ゲーム画像としては、例えば移動体60を仮想カメラによって捉えた画像が画面G1上に表示されると共に、画面G1上の所定位置にコースマップG2が合成して表示される。コースマップG2としては、例えばコース全域の縮図G2aと現在の走行位置を示すシンボル画像G2bとが表示される。また、画面G1上には、走行状況を示す情報として、現在のラップタイム、走行速度、周回数等の情報が表示される。図5中のリング状のアイテム65は、移動体60がリング部を通過して獲得することでポイントが貯まるアイテムである。本例でのポイントは仮想のお金であり、乗物やパーツを購入するために使用される。
【0033】
次に、本発明に係る特殊モードと特殊パス(特殊な走行経路)について説明する。
【0034】
本実施形態に係るレーシングゲームは、一般に設けられた道路を走行するのではなく、仮想空間内を疾走するレーシングゲームであるため、仮想空間内独特のレースを展開させるようにしている。仮想空間内に設定されるコース50としては、図3に例示した通常パスNPの他に、特殊モードの発動時にのみ、その経路での走行が有効となる特殊パスが設定されている。その特殊パスは移動体が所定条件を満たしたときに走行可能であり、本実施の形態においては、遊戯者が操作コントローラ2を用いて移動体60の周囲の重力を操作することによって、例えば当該移動体60が所定条件を満たしていると判定し、通常は重力の作用によって走行できない天井や壁などの特殊パスの走行を可能としている。
【0035】
ここで、重力(G)の制御について説明する。移動体60に作用する重力は、現実世界では万有引力と天体(地球)の自転による遠心力との合力であり、3次元座標系のXZ面(水平面)に対して略垂直方向に作用するが、本発明に係るコンピュータゲーム上の仮想世界においては、操作コントローラ2の操作によって重力が作用する方向を変更できるようにしている。言い換えると、現実世界における物理的な重力を無重力化する代わりに、遊戯者が制御可能な架空の重力(「仮想重力」と呼ぶ)を発生させるようにしている。なお、本発明で言う「物理的な重力」とは、3次元の仮想空間内において現実世界と同様の方向に働く重力のことを意味する。一方、本発明で言う「仮想重力」とは、遊戯者が操作可能な重力のことを指し、詳しくは、特殊モードにおいて操作コントローラ2の操作によって指定された方向に物理的な重力の方向を変えた際に、変えた方向に作用する重力のことであり、遊戯者が操作可能な重力のことを意味する。以下、説明の便宜上、両者の意味が混同しそうな場合を除いて「仮想重力」も「重力」という用語を用いて説明する。
【0036】
以下、重力の操作が可能なモードを「特殊モード」と定義し、特殊モードでの重力の操作(物理的な重力の方向変更操作,仮想重力エネルギーのチャージ操作,仮想重力エネルギーの開放操作など)を「重力コントロール」と定義して説明する。
【0037】
重力コントロールとは、移動体60の周囲の物理的な重力を吸収する形で仮想重力をチャージすることにより無重力状態を発生させ、チャージした重力(仮想重力のエネルギー)を指定した方向に開放することにより、その方向に移動体60や周囲のオブジェクトを落下(重力という名前の速度を与える)させるアクションのことを言う。遊戯者の操作としては、例えば、特定の操作ボタン24の押圧操作によって特殊モードの発動(重力コントロールの発動)を指示し、アナログジョイスティック23の傾動操作(又は方向キー25の操作)によって重力の方向を指示する。チャージした重力の開放指示は、特定の操作ボタン24の押圧操作によって行う。その重力の開放によって重力が当該方向に射出される。重力によって移動体60に与える速度は、本実施の形態では無重力状態の継続時間(つまり重力のチャージ量)によって異なり、重力のチャージ量が多いほど移動体60の速度が速くなるように、重力のチャージ量に応じて重力エネルギーを速度に変換し、移動体60に当該速度を付加する形態としている。
【0038】
本発明に係るレーシングゲームにおいては、上述のような重力の操作によって、現実世界では重力の作用によって物理的に不可能な走行面を有するトンネル天井部などの特殊パスでの移動体60の走行を可能としている。
【0039】
次に、特殊モードにおいて使用可能となる特殊パスについて説明する。
【0040】
図6は、特殊パスが設定されたコース50の例を示しており、本例では、通常パスNPから分岐する2つの特殊パスSPが設定されている。特殊パスSPとしては、構造物(ガードレールや建物など)の壁や天井などがあるが、特殊パスSPの種類については具体例を示して後述する。このようなコース50において、遊戯者は、例えば、特殊パスSPへの分岐点SPaに移動体が到達する直前で特殊モードを発動し、周囲の重力をチャージして無重力化すると共に、重力の方向を特殊パスSPの方向に変化させることによって、移動体60を特殊パスSP側に移動させる。その際、移動体60の走行経路が分岐点SPaを起点として特殊パスSP側に変更され、特殊パスSPのルートを移動体60が走行することになる。そして、合流点SPbで通常パスNPに合流し、移動体60は元の通常パスNPを走行することになる。
【0041】
壁や天井等の地形(特殊パスSPの走行路)から、グローバル軸上の地上(通常パスNPへの合流点SPb)に戻す場合の処理形態としては、例えば次のような形態がある。
(T1)地上から移動体60を離す仕掛け(ジャンプ台等)を用意し、強制的にその地形から落下させることで地上に戻す処理形態。
(T2)地形の角度を徐々に変化させ、地続きでグローバル軸上の高さ方向を示すY軸の−方向に戻す処理形態。
(T3)壁や天井に移る際と同様に、Gコントロールを用いて、遊戯者の重力操作に応じて地上に戻す処理形態。
【0042】
上記(T1)及び(T2)の処理形態では、特殊モードの解除は、特殊パスNPの終端に設定された合流点SPbで自動的に行われるが、例えば(T3)の処理形態で遊戯者の操作で特殊モードの発動を解除(終了)した場合、あるいは、合流点SPbの手前で例えば重力のチャージ量を全て消費した場合は、特殊パスの途上で特殊モードが解除され、元の重力方向に重力が戻ることになる。その場合、特殊モードの発動を終了した時点で合流点が設定され、特殊パスを走行中の移動体はその合流点で通常パスに合流することになる。
【0043】
なお、本実施の形態においては、特殊モードは、重力の操作指示がされたことのみを条件として発動できる形態としているが、特定アイテムの獲得によって得られるポイント、走行時間、周回数、走行順位、移動体間の距離などを要素として、特定の条件を満たしたときに発動可能とする形態としても良い。また、特殊パスSPは、重力の操作方向が正しければ常に利用できるパスの他に、特定のスイッチオブジェクトを作動しないと利用できないパスを設定するようにしても良い。例えば、重力コントロールによって通常では走行できないルートにアクセスが可能となった場合に、通常では走行できないルートのみに設置された一般ルートを走行している後続の移動体(或いは遊戯者が操作する移動体自体、或いは遊戯者が操作する移動体より先行する移動体)に対して影響を及ぼすことのできるスイッチを配置させることが可能である。このようなスイッチを配置しておくことで、単に、通常走行できないルートを走らせるだけではなく、通常走行できないルートに設けられたスイッチを積極的に探索することになり、より優位にゲームを進めさせることが可能となる。例えば、先行する遊戯者の移動体がスイッチを踏むことにより隠しルートが露出され、後続する遊戯者の移動体も有利に進める状況が発生する。このような事象は、移動体がスイッチを踏むことにより発生させる形態と、後述する特殊モードにおける無重力(−G)の作用、或いは、重力方向の操作による重力(+G)の作用によってスイッチを作動させることにより発生させる形態とがある。
【0044】
また、特殊パスSPとしては、走行経路の両端に分岐点SPaと合流点SPbとが固定して設定されているものと、移動体60が通常パスNPから特殊パスSPへ移動する際に分岐点SPaが設定され、移動体60が特殊パスSPから通常パスNPへ戻る際に合流点SPbが設定される形態がある。例えば、隠し扉の開放により出現する特殊パスSPへの分岐点SPaは固定的なものであるが、無重力化した状態で空間を移動する空間中の特殊パスSPの場合は、その特殊パスSPへの分岐点SPaは、特殊モードの発動時点で設定される可変的なものである。また、合流点SPbは、前述のように、例えば遊戯者の指示によって特殊モードの発動が終了となったときは、自動的に設定される可変的なものである。その場合には、例えば移動体の中心を通る重力方向の直線と通常パスの路面との交点を合流点として設定する。
【0045】
次に、特殊モードの発動時における重力の作用について、特殊パスの具体例を示して説明する。
【0046】
図7(A)は、移動体60が通常パスNPを進行方向Aに走行している状態を示している。図7(A)において、通常パスNPの路面を水平面と仮定すると、通常パスNPではその路面に対して垂直な重力Gが作用している。本実施の形態においては、レーシングゲームに用いるコースとして、このような通常パスNPの他に、特殊モードの発動時にのみ利用可能な図7(B)〜(D)に示すような特殊パスSP(SP1〜SP3)を予め設定若しくはレース中に動的に設定し、重力Gを操作することによって、通常は重力の作用によって走行できない特殊パスSPを走行可能としている。図7(B)の例は、壁面を特殊パスSP1として設定した例であり、図7(C)の例は、天井面をパスSP2として設定した例である。図7(D)に示される特殊パスSP3は、目視では見えないパスであり、遊戯者による重力制御によって形成される地上のパス(地上の空間をG方向に落下(G方向に引っ張る力によって空間内を移動)するパス)である。詳しくは、特殊パスSP3は、新しく指定されたG方向を重力方向としてその方向に移動体が引っ張られ、その引力又は引力と特殊パスSPに移る時点の移動体の慣性力とによって空間内を移動体が進行する状態となるときの進行経路である。
【0047】
例えば、図7(D)中の通常コースNPの直角コーナ直前で遊戯者が特殊モードを発動させると、通常時の重力が無重力化され、移動体60は路面から浮上する。その状態で図7(D)中の矢印G方向へ重力を発生させることで、重力によるG方向への自由落下による特殊パスSP3が形成され、その特殊パスSP3を移動体60が落下(空間を走行)することになる。
【0048】
このように、本実施の形態においては、現実世界ではありえない重力の制御を可能としている。そして、遊戯者(若しくはCPU)が重力の方向を操作することによって、非現実で意外性のある天井や壁面などの特殊パスを使用した走行を可能としている。例えば、遊戯者は、その特殊パスと重力エネルギーを利用することで、先行する他の移動体を追い越したり、周回遅れの移動体に邪魔されずに走行したり、急カーブや直角コーナをドリフト走行や限界のグリップ走行と比較して高速で走行したりすることが可能となる。
【0049】
次に、特殊モード時に発生する重力の作用範囲について、図8を参照して説明する。
【0050】
ゲームプログラムに従って動作するCPU11(以下「ゲーム処理手段11」と呼ぶ)は、特殊モードが発動されると、移動体60を中心とした周囲の3次元空間を重力Gが作用する範囲として設定する。例えば、図8において、移動体60が1.5m程度とすると、その位置を中心とした半径R=最大で20m程度の球状空間の内部を特殊重力空間GS(重力Gの作用範囲)として設定する。
【0051】
ゲーム処理手段11では、特殊モードが発動されてから重力の開放指示がされるまでの間、時間の経過に応じて、特殊重力空間GS内の重力を無重力化すると共に、重力エネルギーの量を加算し、その加算値を重力のチャージ量としてRAM3に記憶する。そして、操作コントローラからの重力の開放指令を入力した時点で、操作コントローラの操作によって指定された方向に重力Gを作用させる。ゲーム処理手段11は、重力Gをその特殊重力空間GS内に存在する他のオブジェクト80(重力の影響有りの属性を有するオブジェクト)に対しても同様に作用させ、重力Gの方向と大きさを示す重力情報に基づいて、オブジェクト80の動きを制御するようにしても良い。例えば、オブジェクト80が、コース50に設定されている特殊パスの経路を使用可能にするためのオブジェクト(隠し経路の扉など)であれば、そのオブジェクトの属性情報に応じて、オブジェクト80を重力Gの方向に飛ばしたり、破壊して消失させたり、隠し経路の扉(通常時の重力方向では回動しないが所定方向の力で回動する扉)を開口させたりするようにしても良い。
【0052】
移動体60のオブジェクトに対しては、重力という名前の速度に換算し、その速度(又はその速度とその時点の走行速度との加算値)で移動体60を走行させることによって瞬間的に加速させる。あるいは、図8中に示すように、特殊モード発動時の走行速度ベクトルA1と重力速度ベクトルGとを合成し、合成後の速度ベクトルA2の情報に基づいて、移動体60の移動方向と速度を決定するようにしても良い。
【0053】
また、周囲のエネルギーを吸収して無重力化させている過程では、特殊重力空間GS内に存在する他のオブジェクト80が浮遊したり、上記重力の影響とは逆に、無重力の影響によってオブジェクト80を破壊して消失させたり、隠し経路の扉を開口させたり、壁を消失させて新しいルートの通常パス若しくは特殊パスを出現させたりするなど、無重力の影響によって様々な事象を発生させる形態とするのが好ましい。本実施の形態においては、重力エネルギーの解放時には前述のような他のオブジェクト80の動きを制御せずに、無重力状態を発生時にその影響を他のオブジェクト80に与えることによって、上記のような様々な事象を発生させる形態としている。
【0054】
なお、本実施の形態においては、特殊重力空間の範囲は予め設定された範囲としているが、仮想乗物62の種類(及びカスタマイズ用のパーツの種類)や、仮想乗物62に乗るキャラクタ61の種類に応じて、ゲーム処理手段11が可変する形態としても良い。
【0055】
次に、本発明に係る特殊パスの設定形態についてコースの具体例を示して説明する。
【0056】
図9及び10は、本発明に係るレーシングコースの主要部の構成例を示す斜視図であり、図9は図3に例示したコース50の左側の部分、図10は右側の部分を示している。図9において、矢印A方向からのルートには、通常パスNP1の上段に第2の通常パスNP1が設定されている。下段の通常パスNP1の左側には、特殊モード時に走行可能な建造物オブジェクト63の一例であるガードレール状の壁63aが設けられており、本例では、その壁面部を第1の特殊パスSP1として設定している。他方、上段の通常パスNP1の上方には屋根63bが設けられており、本例では、その屋根63bの天井面部を第2の特殊パスSP2として設定している。第3の特殊パスは、図7(D)に例示した特殊パスSP3(空間内を重力方向に移動するパス)であり、ここでは説明を省略する。
【0057】
なお、第1の特殊パスSP1の出口には、通常パスNP1と比較してカーブが緩やかで且つコースの長さが短縮される通路63cが設けられている。その通路63c(本例では特殊モードが解除された状態で走行可能なトンネル状の通路)を通るパスSP1aは、本例では特殊パスSP1の続きとして利用できるパスであり、通常パスNP1のルートからは進入できないパスである。
【0058】
図9に例示される上記改札口63dのギミック(仕掛け)、キッカ64a及び階段64bはそれぞれコース上に任意に設定されるギミックであり、それぞれの役割を持つものである。例えば、重力の影響を受けるという属性が設定されている改札口63dであれば、重力Gの操作を実施して改札口63dを開口することにより、その先のパスを走行可能となる。あるいは、キャラクタタイプが後述するパワータイプによって破壊可能であると言う属性が設定されている改札口63dであれば、そのパワータイプのキャラクタ61(仮想の遊戯者)が改札口63dを破壊して走行可能になるが、そうでないキャラクタにとっては通行できないギミックになる。また、本例では、キッカ64aに、乗物タイプがエアライド(図4(A)に例示した仮想乗物62a)であるときにアクセスすると、射出機(カタパルト)のような役割を果たし、仮想乗物62aが空中を滑走して、階段64bを通過することなく上段ルートを走行可能になるギミックとしている。
【0059】
このように、ギミックの属性情報,キャラクタ61(仮想の遊戯者オブジェクト)の属性情報,仮想乗物62の属性情報に応じて、様々な事象を発生させることができる。更に、本実施の形態においては、仮想重力の影響の有無を各オブジェクトの属性として追加する形態とし、より多様な事象を発生させるようにしている。
【0060】
なお、図9中の符号66で示されるオブジェクトは、一般車両(本例ではタクシー66a)のオブジェクトである。本例では、一般車両66が走行する走行路をレーシングコースの一部としており、ゲーム処理手段11では、タクシー66a等の一般車両66の動作を制御して、一般車両66が移動体60の走行を妨害する場面などを展開するようにしている。図9中の符号TP1で示されるパスは、レール状の細長い走行経路(レールウェイ)で形成されたパスであり、このパスTP1は、仮想乗物62に乗ったキャラクタ61が後述するスピードタイプのキャラクタの場合にのみアクセスできるように設定されている。
【0061】
続いて、図10を参照して他の特殊パスについて説明する。図10において、通常パスNP1の右側コーナの斜め上方には、通常パスNP1のカーブに沿って形成された高架63eが設けられており、本例では、高架63eの線路上を走行する列車66bの筐体側面部を第4の特殊パスSP4として設定している。この特殊パスSP4を使用する場合は、遊戯者は、移動体60を列車66bと並走させている状態で特殊モードを発動すると共に、図12(A)に示すように、重力Gの方向を列車66bの側面部の方向に操作する。この操作により、列車66bの側面に移動体60が接地し、列車66bの側面部を特殊パスSP4として使用することができる。
【0062】
ゲーム処理手段11は、移動体60が特殊パスSP4を走行していると判定した場合は、列車66bの速度と移動体60の移動速度とを加算した速度を、仮想空間内における移動体60の移動速度としている。そして、図12(B)に示すように、移動体60がキッカ64aを利用して列車66bから飛降りる状態では、ゲーム処理手段11は、通常パスNPへの合流点に設けられたキッカ64aの通過タイミングを特殊モードの発動終了時点とし、上記移動速度で移動体60を通常パスNP側へ移動させる処理を行う。
【0063】
なお、本例では、特殊パスSP4の利用条件を厳しくし、例えば移動体60の高さと特殊パスSP4の高さとを比較して、両者の高さが略同等と判定した場合に特殊モードの発動を許可するようにしている。例えば、図10の例では、上昇気流64c(以下「タービュランス」と呼ぶ)が発生する特殊領域NP1sを特殊パスSP4の下方に設けており、そのタービュランス64cを利用しないと、特殊パスSP4の高さに到達できないようにしている。ここで言うタービュランス64cとは、気流の壁をイメージした仮想の空間領域であり、タービュランス64cを利用した移動体は、通常よりも高速でその軌道上を移動できると共に、通常では届かない高さに行くことができる。また、このタービュランス64cは、定期的に発生する形態や、常時発生している形態としても良いが、本実施の形態においては、高速で走行する移動体が引き起こす気流の壁として、その移動体の後方に発生させるようにしている。すなわち、本例での特殊パスSP4を利用できる条件は、特殊領域NP1sを他の移動体が高速で走行してタービュランス64cが発生しており、且つ、移動体60のタービュランス64cの軌道に乗って重力コントロールにより無重力化させた状態で高架63eの高さに達しており、且つ、列車66bが並走している状態であることが条件となる。
【0064】
第5の特殊パスSP5は、高架63eの線路脇に設けられた壁63fの壁面部としている。その特殊パスSP5を利用できる条件は、特殊領域NP1sを他の移動体が高速で走行してタービュランス64cが発生しており、且つ、移動体60のタービュランス64cの軌道に乗って重力コントロールにより無重力化させた状態で高架63eの高さに達しており、且つ、列車66bが並走していない状態であることが条件となる。
【0065】
なお、上記の実施形態では、特殊パスSP4又は特殊パスSP5の使用条件が厳しくなるため、特殊重力空間GS内に特殊パスが存在することのみを条件とする形態としても良い。
【0066】
図10中の符号63gで示される建造物オブジェクトは、ホテル等の建物を示している。各建物63gの屋上部を利用するパスTP2は、仮想乗物62に乗ったキャラクタ61が後述するフライタイプのキャラクタの場合にのみアクセスできるように設定されている。なお、各建物63gを整列して並設し、それらの建物63gの外壁面部を特殊パスとして設定する形態としても良い。
【0067】
ここで、キャラクタ61のタイプについて説明する。
【0068】
キャラクタ61のタイプには、スピードタイプ、フライタイプ、パワータイプ等の複数のタイプが設定されており、レース中にそれぞれのタイプのキャラクタが所有する特徴的な能力(キャラクタ特有の性格や技術)を発揮することにより、その能力に応じた特定のアクションを起こすことが可能に設定されている。
【0069】
スピードタイプのキャラクタは、コース上に設置された前述のパスTP1(レールウェイ)に仮想乗物をアクセスさせる能力を身に着けたキャラクタである。フライタイプのキャラクタは、コース上に設置された専用のギミック上を通過することにより、仮想乗物を飛行させる能力を身に着けたキャラクタである。このフライタイプのキャラクタは、コース上に設置された前述の各建物63gの屋上部を利用する前述のパスTP2など、仮想乗物を飛行させながら特定のパスを滑空させることが可能である。パワータイプのキャラクタは、走行経路上に設置された障害物(移動体60のの進行を邪魔するもの)を破壊する能力を身に着けたキャラクタであり、その能力を発揮して前方の障害物などを破壊することにより、障害物を回避せずに仮想乗物を走行させることが可能である。
【0070】
次に、本発明に係るゲーム装置の動作例を説明する。先ず、本発明に係るレーシングゲームの全体の流れを図13のフローチャートを用いて説明する。
【0071】
遊戯者のスタートボタン21の押圧操作によりゲームが開始されると、ゲーム処理手段11は、選択可能なコースや移動体60(キャラクタ61及び仮想乗物62)を示すメニュー画面をディスプレイ31に表示し、メニュー画面上でのクリック操作等によってコースや移動体60を遊戯者に選択させる(ステップS1)。
【0072】
続いて、ゲーム処理手段11は、遊戯者によって選択されたコースのスタート位置に、当該レースに参加する移動体60を含む各移動体オブジェクトを設定し、各移動体を仮想カメラから捉えた画像の画像情報を生成してディスプレイ31に表示すると共に、例えばカウントダウン表示が0になったタイミングでレースを開始する(ステップS2)。レースが開始されると、ゲーム処理手段11は、コース50の通常パスNPを走行する各移動体(各遊戯者又はCPU11が操作する移動体)の3次元仮想空間内の現在位置及び方向を逐次算出し、移動体の現在位置等の記憶情報を更新する(ステップS3)。そして、仮想カメラから捉えた移動体60のオブジェクトと地形や構造物などの背景オブジェクトとを合成処理した現在の走行状況を表す画像情報を逐次生成してグラフィックメモリ14bに格納し、図5に例示したようなゲーム画像を、画像処理回路14を介してディスプレイ31に表示させる(ステップS4)。
【0073】
続いて、ゲーム処理手段11は、移動体60の通過による特定アイテム獲得時のポイント加算処理など、移動体60の動作に応じた所定の処理を実行すると共に(ステップS5)、各移動体60が、特殊モードを発動するための条件(「第1の条件」とする)を満たしているか否かを判定する。ここで言う「第1の条件」とは、例えば、移動体60を走行させるためのエネルギーがあること、遊戯者が操作する移動体60がゴール地点に到達していないこと、移動体60がスピンしている状態でないこと、特定の演出画像を表示するために発動を制限していないこと、移動体60がコースを逆走していないことのいずれか1つ以上である。言い換えると、本実施の形態においては、特殊モードの発動は、移動体60を走行させるためのエネルギーさえあれば、基本的にはゲーム中のどのタイミングでも行えるようにしている。なお、発動条件(and条件)として、ステップS5で更新したポイント値と予め定められた設定値とを比較し、ポイント値が設定値を超えていることを付加する形態としても良い(ステップS6)。
【0074】
続いて、ゲーム処理手段11は、上記第1の条件を満たしている移動体60を操作する遊戯者による特殊モードの発動開始指示(操作コントローラ2からの特殊モード発動指令の入力)の有無を監視し(ステップS7)、特殊モードの発動指令が入力されたと判定した場合は、操作コントローラ2からの重力の操作情報の入力を受付け、重力コントロールの処理を実行する(ステップS100)。なお、この重力コントロールの処理については、具体的な例を示して後述する。
【0075】
上記ステップS100における重力コントロールの処理が終了すると、ゲーム処理手段11は、全ての移動体がゴール位置に到達したか否かを判定し(ステップS8)、到達していないと判定した場合は、ステップS3に移行して処理を繰り返し、ステップS8において全ての移動体がゴール位置に到達したと判定した場合は、ゲームの終了処理を行って当該コースでのレーシングゲームを終了する。
【0076】
次に、上記ステップS100における重力コントロールの処理について、図14のフローチャートの流れに沿って説明する。
【0077】
ゲーム処理手段11は、特殊モードの発動条件を満たしていると判定した場合は、先ず、重力を無重力化した空間の画像演出表現を開始する。以下、図15の模式図と、仮想カメラの動作例を示す図16を参照して説明する。図15は、例えば、図7(D)に例示したような急カーブを有する通常パスNPにおいて特殊モードが発動された場合の重力コントロールのイメージを示す模式図であり、図16は、そのときの仮想カメラの動作例を示す模式図である。そして、図16中のPa,Pb,Pc,Pdは、図15中の移動体60a,60b,60c,60dの位置を示している。
【0078】
ゲーム処理手段11は、操作ボタン24aの押圧操作の情報入力によって重力コントロール(Gコントロール)が発動されたことを検出すると、重力を無重力化した空間の画像演出表現を開始し(ステップS101)、ゲーム処理手段11によるコントロールの対象を移動体60(以下、遊戯者が操作する移動体を「プレイヤキャラクタ」と呼ぶ)から仮想カメラ70に移行する。詳しくは、通常時はプレイヤキャラクタ60の姿勢(進行方向)を操作するようにしているが、Gコントロール時はプレイヤキャラクタ60を中心に仮想カメラ70の位置を操作する(ステップS102)。
【0079】
ゲーム処理手段11は、無重力化する前のプレイヤキャラクタ60の処理として、プレイヤキャラクタ60の速度を所定の速度(例えば時速50km程度)まで徐々に速度を落とす処理を実行すると共に、その低速化する速度に比例して、操作している仮想カメラ70の動き(仮想カメラ70のロット変化)を高速化する処理を実行する。ここで言う仮想カメラ70の「ロット」とは、ROTATE(回転)を指しており、本実施の形態では、仮想カメラ70の注視点が方向キーの指定している方向に、プレイヤキャラクタ60を原点として円周移動する動きを指している。この円周移動は、初速と後半速度の段階変化をもっており、ゲーム処理手段11では、後半は加速度が増し若干早く移動するように、仮想カメラ70のカメラワークを制御している。
【0080】
図15の画像例では、図15中のプレイヤキャラクタ60aの位置からプレイヤキャラクタ60bの位置へとスピードダウンしながら移動させる。そのプレイヤキャラクタの移動動作に応じて、仮想カメラ70の位置を図16中のPaの位置からPdの位置へと移動させると共に、図16中の矢印に示すように、仮想カメラ70の方向を円周移動させる。その間、重力コントロール(特殊モード)の発動時点から周囲の重力をチャージする処理を実行し、重力のチャージ量の記憶値を逐次加算する。また、プレイヤキャラクタ60aからプレイヤキャラクタ60bの位置へとスピードダウンしながらの移動量を、順位に応じて変動させてもよい。この場合、遊戯者に気づかれることなく、各移動体同士の距離が短くなるため、より緊迫したレース展開をすることが可能となる。
【0081】
ゲーム処理手段11は、上記処理を実行すると共に、一定領域内(前述の特殊重力空間GS内)のオブジェクトを検出し(ステップS103)、検出オブジェクトを無重力化する処理を実行する。その際、背景オブジェクトを含む特殊重力空間GS内の各オブジェクトを対象として、各オブジェクトのポリゴンの頂点座標を変更して形状を変化させる等の画像処理によって、重力空間から無重力空間への遷移過程における重力の変化を空間(時空構造)の歪みとして表現するようにしている。画像上では例えば空気の流れが変わった様なイメージで表現する。図15の画像例では、歪んだ空間内でプレイヤキャラクタの姿勢と地面からの高さを徐々に変化させながら、図15中のプレイヤキャラクタ60bの状態からプレイヤキャラクタ60cの状態へと遷移させるようにしている。そのときの特殊重力空間GS内のオブジェクト(プレイヤキャラクタと検出オブジェクト)に対しては、一定範囲内の高さまで上昇する力を付加して地面から浮上させる処理(当該オブジェクトのポジションをY軸上のある程度の範囲に移動させる処理)を実行する。なお、その際の浮上範囲は、本実施の形態では固定ではなく、乱数値を持たせて多少変動させるようにしている(ステップS104)。
【0082】
遊戯者は、このような無重力空間の演出画像を見ながら、図16中に示すように、アナログジョイスティック23の傾動操作により重力の方向を指定すると共に(ステップS105)、重力コントロールの解除のタイミングを図って重力コントロールの解除指示(本例ではチャージした重力の開放指示)を行う。
【0083】
ゲーム処理手段11は、重力コントロールの解除指示を入力するまでの間、図15中のプレイヤキャラクタ60dに示すように、例えば、キャラクタの顔部は進行方向、腹部はねじれて仮想カメラ70の方向に向けると言うように、仮想乗物に乗ったキャラクタの頭部、腹部の動きをそれぞれ仮想カメラ70のYロット(rot)を遊戯者の操作やカメラ位置に合わせて制御する。さらに、前述のように、プレイヤキャラクタ60の移動動作に応じて、仮想カメラ70の位置を移動させると共に、プレイヤキャラクタ60を原点として仮想カメラ70の注視点を円周移動させ、重力を開放する方向を見出す。
【0084】
ゲーム処理手段11は、重力コントロールの解除指示を検出すると、無重力空間の画像演出表現の処理を終了し(ステップS106)、コントロールの対象を仮想カメラ70からプレイヤキャラクタ60に移行する(ステップS107)。そして、アナログジョイスティック23の傾動操作により指定された重力(G)の方向へ、プレイヤキャラクタ60及び特殊重力空間GS内の検出オブジェクトを射出させる。その際の射出方向(チャージした重力を開放する方向)は遊戯者の指定した方向であり、射出速度は、例えば前述のように無重力状態の継続時間(重力コントロールの発動指示の時点から解除指示の時点までの重力のチャージ量)に応じた速度(最高速度は例えば時速200km)である。プレイヤキャラクタ60を射出する際には、ゲーム処理手段11は、仮想カメラ70の画角を広域化し、上記速度で瞬間的に加速するプレイヤキャラクタ60をその画角で捉えて撮像し、図15中のプレイヤキャラクタ60eに示すように、例えばリング状の効果線をエフェクト画像としてプレイヤキャラクタ60eの周りに描画すると共に、画面効果としてブラー(blur)を施した画像を表示するようにしている。このような画像処理によって、重力エネルギーが放出されてプレイヤキャラクタ60eが瞬間的に加速する状態を表現する(ステップS108)。
【0085】
なお、上述のような重力コントロールは、好ましい実施の形態では、以下の2種類のパターンPT1,PT2を用意している。
(PT1)図15の画像例のように、通常走行時に仮想重力のエネルギーを指定方向へ開放すると、その重力コントロールによってプレイヤキャラクタ60が急なカーブ(コーナ)を曲がることを目的とした重力変化を起こすパターン。
(PT2)コース内に設置されたキッカ等を利用してトリック発動後に仮想重力のエネルギーを指定方向へ開放すると、その重力コントロールによって、特殊パスとして設定されている壁や天井といった3次元ルートを選択することを目的とした重力変化を起こすパターン。
【0086】
上記2つのパターンにおいては、ゲーム処理手段11は、プレイヤキャラクタ60自身の挙動或いは周囲のオブジェクトに与える影響には全く差別化を行っていないが、パターンPT2の場合のみ、プレイヤキャラクタ60を射出した後において仮想3次元空間上に設定されている地上以外に設定されている地上パス(つまり壁や天井といった特殊パス)を検知するようにしている。処理パターンを分けているのは、3次元ルートに移る際のルールを遊戯者に明確に伝えることと、及び、ゲーム処理手段11によるパス検知の処理負荷(頻度)を軽減化することを目的としている。なお、上記PT2の処理パターンの重力コントロールのみとしたシステムとしても良い。
【0087】
また、他の実施形態としては、上記パターンPT2において通常パスから特殊パスへ移行する際に、キッカ等を利用せずに、無重力で浮上した状態で仮想重力のエネルギーを特殊パスの方向へ向けて開放し、それによって特殊パスへ移行させる形態としても良い。その場合においても同様の画像処理をして、通常の重力空間から無重力空間へ遷移する過程での各オブジェクトの状態変化や、重力が開放されて特殊パス上を加速するプレイヤキャラクタ60の様子を表示するようにしても良い。例えば、図7(B)に例示した壁面の特殊パスSP1の場合は、図17に示すように、プレイヤキャラクタ60の様子を示す画像60a(図17の例ではキッカを利用して壁面の特殊パスSP1へジャンプして移動した画像例)において、無重力により浮遊した状態を示す画像を表示し、仮想重力のエネルギーを壁面に向けて開放されると、プレイヤキャラクタ60aを壁面に移動させた状態の画像を表示し、その後、壁面に移動した状態で特殊パスSP1の進行方向に瞬間的に加速する様子を示す画像60bを経由して画像60cへと変化させて表示するようにしても良い。
【0088】
前記ステップS108の処理に続いて、ゲーム処理手段11は、特殊パスを走向中のプレイヤキャラクタ60について、その特殊パスの走行終了の条件(「第2の条件」とする)を満たしたか否かを判定する。ここで言う「第2の条件」とは、例えば、遊戯者による特殊モードの発動終了指示(操作コントローラ2からの特殊モード発動終了指令の入力)を受付けたこと、あるいは特殊パスの終了地点(通常パスとの合流点)にプレイヤキャラクタ60が到達したことである(ステップS109)。
【0089】
上記ステップS109において第2の条件を満たしていると判定した場合は、ゲーム処理手段11は、プレイヤキャラクタ60が特殊パス上を移動する状態(本例ではプレイヤキャラクタ60が空間中の特殊パスをG方向へ落下する状態)の画像を表示すると共に、プレイヤキャラクタ60eの着地位置(特殊パスから通常パスへの合流点)となる地形の重力方向(XYZ軸+/−方向)を確認し(ステップS110)、プレイヤキャラクタ60の姿勢をG方向(射出方向)から通常の重力方向へと変化させながら、プレイヤキャラクタ60を着地位置へと着地させ、通常パスへと合流させる(ステップS111)。そして、ゲーム処理手段11は、特殊モードを解除して重力コントロールの処理を終了する。
【0090】
なお、上記ステップS110、S111においてプレイヤキャラクタ60を地上に戻す処理形態としては、前述のように、(T1)強制的に着地位置へ落下させる形態、(T2)地形の角度を徐々に変化させ、地続きで地上に戻す形態、(T3)特殊パスに移る際と同様に、遊戯者の重力操作に応じて地上に戻す形態がある。上記(T3)の形態の場合は、遊戯者は、地形側に重力方向を指定しており、遊戯者は、特殊パス上を移動するプレイヤキャラクタ60eと前方の地形とを示す画像を見て射出方向にある地形の重力方向を予測し、操作コントローラ2を操作してキャラクタ61の姿勢を変化させながらプレイヤキャラクタ60eを着地させ、通常パスへと合流させる。ゲーム処理手段11では、操作コントローラ2からの操作情報、通常パスの地形情報、及び移動体の位置情報に基づいて、特殊パス上を移動中のプレイヤキャラクタを通常パスへ合流させる処理を実行し、その演出画像の画像情報を生成してディスプレイ31に表示する。
【0091】
次に、特殊モードでの重力操作時の画像処理と音楽の変更処理について説明する。先ず、重力操作時の画像処理について、図18のフローチャートの流れに沿って説明する。
【0092】
ゲーム処理手段11は、全ての移動体60(単独走行のゲームではプレイヤキャラクタ60)がゴール位置に到達したか否かを判定することにより、ゲームが終了したか否かを判定し(ステップS11)、ゲームが終了したと判定した場合は、レーシングゲームの終了処理(プレイヤキャラクタ60の順位や遊戯者の操縦技術に関する評価値等の結果表示)を行って、当該コースでのゲームを終了する。
【0093】
ステップS11において、ゲームが終了していないと判定した場合は、画像情報生成手段が、現在のプレイヤキャラクタ60の位置情報や地形情報に基づいて画像情報を生成すると共に、生成した画像情報をグラフィックメモリ14bにリアルタイムに記録する(ステップS12)。そして、座標変換処理やレンダリング処理を実行した後のゲーム画像をディスプレイ31に表示させる。
【0094】
続いて、ゲーム処理手段11は、遊戯者の操作が特殊モードにおける重力操作か否かを判定し(ステップS13)、重力操作でない場合はステップS11に戻って処理を繰り返し、重力操作と判定した場合は、特殊重力空間内のオブジェクト(3次元ポリゴンモデル)の画像情報をフレームバッファに退避させ(ステップS14)、退避させた画像情報をテクスチャとして、画像情報生成手段によって当該オブジェクトの画像データを加工する。その際、例えば、3次元座標系において、歪みのない通常のオブジェクト(3次元ポリゴンモデル)の形状から、重力の変化に応じて歪みを施したオブジェクトの形状へと、モーフィング処理により徐々に変形させる画像処理を行うことにより、無重力化に伴うオブジェクトの状態変化や、重力方向の変化に伴うオブジェクトの状態変化を表現する。また、重力の開放指示により当該オブジェクトを重力方向へ射出する処理の際には、前記ステップS108で述べたように、テクスチャ画像にブラーを施したり、エフェクト画像を合成したりするなどの画像加工処理を行うことによって、重力が放出されて瞬間的に加速する状態などを表現する(ステップS15)。
【0095】
そして、歪みのない通常の形状から歪みを施した形状へとオブジェクトの形状を変形させながら、モーフィングした3次元ポリゴンモデルのテクスチャ画像をスクリーン座標系の大きさのモデルに貼付け(ステップS16)、特殊重力空間内の当該オブジェクトの画像と特殊重力空間外の画像とを合成した画像を表示し(ステップS17)、ステップS11に移行し、ステップS11においてゲーム終了と判定するまで画像処理を繰り返す。
【0096】
次に、特殊モードでの音楽の変更処理について、図19のフローチャートの流れに沿って説明する。
【0097】
ゲーム処理手段11は、ゲームが終了したか否かを判定し(ステップS21)、ゲームが終了していない場合は、音声情報生成手段によって生成された通常時の音声情報に基づいて、BGM等の音声データを音声処理回路15を介して生成し、通常時の音楽データによるサウンド出力を繰り返す(ステップS22)。上記ステップS22の処理中に重力操作が開始されたと判定した場合は、通常時の音楽データから、特殊モード時の音楽データ(例えば重力の変化や空間の歪みを表現する独特の効果音を有する音楽データ)に切換え(ステップS23、S24)、切換後の音楽データによるサウンド出力を繰り返す(ステップS25)。そして、重力操作が終了したと判定した時点で(ステップS26)、特殊モード時の音楽データから通常時の音楽データに切換え(ステップS27)、ステップS21に移行して処理を繰り返す。そして、ステップS21においてゲーム処理手段11がゲーム終了と判定した時点で、レース中の音声処理を終了する。なお、通常時の音楽データを複数用意しておき、重力操作がされるたびに、上記ステップS27において前の通常走行時とは別の音楽データへ切換るようにしても良い。
【0098】
なお、上述した実施の形態では、重力コントロール実施後の重力の効果は、移動体の属性に依存しない形態としているが、移動体の属性(仮想乗物に乗るキャラクタのタイプ、仮想乗物の種類、パーツの装着によるカスタマイズ後の仮想乗物の形態など)に応じて重力の効果に差を生じさせる形態としても良い。
【0099】
例えば、第1の例としては、スピードタイプのキャラクタを標準として、フライタイプのキャラクタは、重力コントロールの発動のためのポイントは溜まりやすいが、実際に発動した後の発動時間が短い一方、パワータイプのキャラクタは、重力コントロールの発動のためのポイントは溜まりにくいが、実際に発動した後の発動時間が短いなど、キャラクタのタイプに応じて、重力コントロールの発動要件や発動時間を調整する形態とする。
【0100】
第2の例としては、キャラクタのタイプに応じて、重力コントロール時の特殊パスへのアクセスを制限する形態とする。例えば、特殊パスが地上、壁、天井に設定されている場合、スピードタイプとパワータイプは、重力コントロール時に地上あるいは壁を短時間しか走行できないが、フライタイプに限り天井を長時間走行可能とする形態とする。
【0101】
また、上述した実施の形態にいては、家庭用ゲーム装置に適用した場合を例として説明したが、本発明は、家庭用ゲーム装置に限らず、業務用ゲーム装置やゲーム機能を有する一般的な携帯電話機にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明が適用される家庭用ゲーム装置の一例を示す外観図である。
【図2】図1に例示した家庭用ゲーム装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【図3】本発明に係るコースの基本構成の一例を示す模式図である。
【図4】本発明に係る移動体の例を示す模式図である。
【図5】本発明に係るレーシングゲームの画像例を示す図である。
【図6】本発明に係る特殊パスを説明するための図である。
【図7】本発明に係る特殊パスにおける移動体の走行状態を説明するための図である。
【図8】本発明に係る特殊モードでの重力の作用範囲を説明するための図である。
【図9】本発明に係るレーシングコースの主要部の構成例を示す第1の斜視図である。
【図10】本発明に係るレーシングコースの主要部の構成例を示す第2の斜視図である。
【図11】本発明に係る特殊モードでの重力の操作例を説明するための第1の模式図である。
【図12】本発明に係る特殊モードでの重力の操作例を説明するための第2の模式図である。
【図13】本発明に係るレーシングゲームの全体の流れを説明するためのフローチャートである。
【図14】本発明に係る重力コントロールの処理を説明するためのフローチャートである。
【図15】本発明に係る重力コントロールのイメージを示す第1の模式図である。
【図16】本発明に係る特殊モードでの仮想カメラの動作例を示す模式図である。
【図17】本発明に係る重力コントロールのイメージを示す第2の模式図である。
【図18】本発明に係る重力操作時の画像処理を説明するためのフローチャートである。
【図19】本発明に係る重力操作時の音声処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0103】
1 ゲーム機本体
2 操作コントローラ
3 テレビジョン受像機
4 外部記憶媒体
5 通信ネットワーク
10 制御基板
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 画像処理回路
14a GPU
14b グラフィックメモリ
15 音声処理回路
15a SPU
15b サウンドメモリ
16 入出力機器用I/F回路
16a 操作コントローラ用I/F回路
16b 画像データ出力用I/F回路
16c 音声データ出力用I/F回路
16d DVD−ROM読取装置用I/F回路
17 通信用I/F回路
18 バス
20 外部記憶媒体読取装置
50 コース
60 移動体
61 キャラクタ(仮想の遊戯者)
62 仮想乗物
63 建造物オブジェクト
63a 壁(壁面部)
63b 屋根(天井面部)
63c トンネル状通路
63d 改札口(開閉扉部)
63e 高架
63f 線路脇の壁(壁面部)
63g 建物
64a キッカ(ジャンプ台)
64b 階段
64c タービュランス
65 アイテム
66 一般車両オブジェクト
66a タクシー
66b 列車
70 仮想カメラ
NP 通常パス
SP 特殊パス
SPa 分岐点
SPb 合流点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊戯者が操作する操作手段と画像をモニタに表示する画像表示手段とを備えたゲーム装置のコンピュータに、前記操作手段の操作に応答して仮想空間内を移動する移動体を含むゲーム画像の画像情報生成ステップを含むゲーム処理ステップを実行させるゲームプログラムであって、
前記ゲーム処理ステップは、
仮想空間内に予め複数のパスを前記移動体の走行経路として設定するステップと、
前記複数のパスに対して、通常走行時に使用する第1のパスと特殊モードの発動時にのみ使用する第2のパスとを設定するステップと、
各移動体が第1の条件を満たしているか否かを判定するステップと、
前記第1の条件を満たしていると判定された移動体を操作する前記操作手段からの発動指示により前記特殊モードが発動された際に、該移動体による前記第2のパスの走行を可能とするステップと、
前記第2のパスを移動体が走行中に、第2の条件を満たしているか否かを判定するステップと、
前記第2の条件を満たしていると判定した際に、前記第1のパスと合流する合流点を設定するステップと、
前記第2の条件を満たしていると判定した際に、前記第2のパスを走行中の移動体を前記合流点で合流させるステップと、
を含むことを特徴とするゲームプログラム。
【請求項2】
前記特殊モードは、前記操作手段の操作によって物理的な重力の方向を指定可能とするモードである請求項1に記載のゲームプログラム。
【請求項3】
前記第2のパスは、現実世界では物理的に不可能な走行経路を有するパスである請求項1又は2に記載のゲームプログラム。
【請求項4】
前記第2のパスは、列車を含む走行体の壁面部を走行経路とするパス、建造物の天井面部を走行経路とするパス、及び建造物の壁面部を走行経路とするパスのいずれか1つを含むことを特徴とする請求項3に記載のゲームプログラム。
【請求項5】
前記ゲーム処理ステップは、前記操作手段によって指定された方向に前記物理的な重力の方向を変えると共に、変えた方向に仮想重力を作用させ、前記遊戯者が操作する移動体を前記指定された方向に射出させる射出処理を実行するステップを更に含むことを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載のゲームプログラム。
【請求項6】
前記ゲーム処理ステップは、前記特殊モードが発動されてから前記指定された方向への前記仮想重力のエネルギー開放指示がされるまでの間、時間の経過に応じて、前記仮想重力のエネルギー値を加算し、その加算値を前記仮想重力のチャージ量として記憶手段に記憶するステップを更に含み、前記射出処理を実行するステップは、前記仮想重力のエネルギー開放指示がされた時点で、前記遊戯者が操作する移動体に作用させる力を前記仮想重力のチャージ量に応じた速度に変換し、変換した速度で前記移動体を射出させることを特徴とする請求項5に記載のゲームプログラム。
【請求項7】
前記操作手段によって指定された方向に作用する仮想重力の範囲は、前記遊戯者が操作する移動体の周囲に設定された特殊重力空間内である請求項2乃至6のいずれかに記載のゲームプログラム。
【請求項8】
前記ゲーム処理ステップは、前記特殊モードが発動されてから前記指定された方向への前記仮想重力のエネルギー開放指示がされるまでの間、時間の経過に応じて、前記特殊重力空間内の重力を無重力化して前記遊戯者が操作する移動体を含む前記特殊重力空間内のオブジェクトを浮上させる処理を実行するステップを更に含むことを特徴とする請求項7に記載のゲームプログラム。
【請求項9】
前記ゲーム処理ステップは、前記操作手段によって指定された方向に作用する仮想重力の影響を受けるオブジェクトを対象として、歪みのない通常のオブジェクトの形状から、前記仮想重力の作用により歪みを施したオブジェクトの形状へと徐々に変形させる画像処理を実行するステップを更に含むことを特徴とする請求項2乃至8のいずれかに記載のゲームプログラム。
【請求項10】
前記ゲーム処理ステップは、前記特殊モードを発動させるステップにより前記特殊モードが発動された際に、該特殊モードの発動をトリガーとしてサウンド出力用の音楽データを変更するステップを更に含むことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のゲームプログラム。
【請求項11】
コンピュータ読取可能な情報記憶媒体であって、請求項1〜10のいずれかに記載のゲームプログラムを記憶した情報記憶媒体。
【請求項12】
遊戯者が操作する操作手段と、画像をモニタに表示する画像表示手段と、前記操作手段の操作に応答して仮想空間内を移動する移動体を含むゲーム画像の画像情報生成手段を含むゲーム処理手段とを備えたゲーム装置であって、
前記ゲーム処理手段は、
仮想空間内に予め複数のパスを前記移動体の走行経路として設定する手段と、
前記複数のパスに対して、通常走行時に使用する第1のパスと特殊モードの発動時にのみ使用する第2のパスとを設定する手段と、
各移動体が第1の条件を満たしているか否かを判定する手段と、
前記第1の条件を満たしていると判定された移動体を操作する前記操作手段からの発動指示により前記特殊モードが発動された際に、該移動体による前記第2のパスの走行を可能とする手段と、
前記第2のパスを移動体が走行中に、第2の条件を満たしているか否かを判定する手段と、
前記第2の条件を満たしていると判定した際に、前記第1のパスと合流する合流点を設定する手段と、
前記第2の条件を満たしていると判定した際に、前記第2のパスを走行中の移動体を前記合流点で合流させる手段と、
を含むことを特徴とするゲーム装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図13】
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【図14】
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【図18】
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【図19】
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【図4】
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【図5】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−11370(P2009−11370A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−173257(P2007−173257)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000132471)株式会社セガ (811)
【Fターム(参考)】