説明

レーダ反射器

【課題】RCSパターンのビーム幅を広くする。
【解決手段】所定の比誘電率を有し、軸心周りに重ねられた複数の層からなる円柱形状の誘電体層11と、誘電体層11の外周面の一部に設けられた第1の反射板12と、誘電体層11の端面に、当該誘電体層11の軸心方向に略垂直に設けられた第2の反射板13a,13bとを構成単位1とし、1つの構成単位1から構成された、または複数の構成単位1が軸心方向に連接されて構成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーダ波を反射するレーダ反射器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶には、船舶用レーダから放射されるレーダ波を反射するため、レーダ反射器が搭載されている。船舶用レーダによる視認性を向上するには、レーダ波の反射鏡を示す指標であるレーダ断面積(RCS:Radar Cross Section)の大きなレーダ反射器を搭載することが望ましい。このレーダ反射器は、様々な形式が実用化されており、例えば非特許文献1に様々なレーダ反射器が示されている。
以下では、代表的なレーダ反射器の1つとして、上記非特許文献1の9ページ目に記載されているチューブ型のレーダ反射器の動作原理について説明する。
【0003】
チューブ型のレーダ反射器は、図5に示すように、破線で示した構成単位101を、角度を変えて複数連接した構造となっている。このレーダ反射器の基本的な反射特性は、構成単位101の反射特性から説明できる。
図6に構成単位101の構造を示す。なお、図6では座標系をあわせて示しており、以降、xz面を垂直面、xy面を水平面と定義して説明を行う。また、図7に構成単位101の反射板102a〜102dをy軸方向から見た図を示す。
【0004】
レーザ反射器の構成単位101では、図7に示すように、反射板102a〜102dが構成単位101の軸心周りに互いに略直交するように配置されており、よく知られた2面コーナーリフレクタとして動作する構造となっている。すなわち、例えば+x軸方向から(図7の左側から構成単位101側へ)レーダ波が入射した場合、最初に反射板102bで反射された後、さらに反射板102aで反射されてレーダ波の入射方向に反射波が戻る構造となっており、大きなRCSを有する。
また、構成単位101の両端面には、反射板103a,103bが構成単位101の軸心方向に略垂直に配置されており、3面コーナーリフレクタとして動作する構造となっている。すなわち、図6に示すように、水平面内において、例えば+x軸方向から少し離れた角度からレーダ波が入射した場合、反射板102a,102bおよび反射板103aで順に反射され、レーダ波の入射方向に反射波が戻る構造となっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】S.Luke著,“Performance Investigation of Marine Radar Reflectors on the Market”,QinetiQ Ltd. 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1に開示された従来のレーダ反射器では、図7において、2面コーナーリフレクタのxz面内のRCSパターンのビーム幅が狭い。そのため、入射角がx軸方向から離れるとRCSの値が低くなり、レーダ反射器として十分な性能を達成できないという課題があった。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、RCSパターンのビーム幅を広くすることができるレーダ反射器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るレーダ反射器は、所定の比誘電率を有し、軸心周りに重ねられた複数の層からなる円柱形状の誘電体層と、誘電体層の外周面の一部に設けられた第1の反射板と、誘電体層の端面に、当該誘電体層の軸心方向に略垂直に設けられた第2の反射板とを構成単位とし、1つの構成単位から構成された、または、複数の構成単位が軸心方向に連接されて構成されたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、上記のように構成したので、RCSパターンのビーム幅を広くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1に係るレーダ反射器の構造を示す斜視図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るレーダ反射器の構成単位の構造を示す斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るレーダ反射器の構成単位の構造を示すy軸方向から見た断面図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係るレーダ反射器の構成単位の構造を示すy軸方向から見た断面図である。
【図5】従来のレーダ反射器の構造を示す斜視図である。
【図6】従来のレーダ反射器の構成単位の構造を示す斜視図である。
【図7】従来のレーダ反射器の構成単位の反射板をy軸方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るレーダ反射器の構造を示す斜視図であり、図2はレーザ反射器の構成単位1の構造を示す斜視図である。なお、図1,2では、構成単位1の後述する誘電体層11を3層とした場合を示している。
レーダ反射器は、図1に示すように、破線で示した構成単位1を軸心方向に複数連接することで構成されている。なお、図1では、複数の構成単位1によりレーダ反射器を構成しているが、1つの構成単位1によりレーダ反射器を構成するようにしてもよい。
【0012】
このレーダ反射器の構成単位1は、図2に示すように、所定の比誘電率を有し、軸心周りに重ねられた複数の層からなる円柱形状の誘電体層11と、誘電体層11の外周面の一部に設けられた金属板である第1の反射板12と、誘電体層11の端面(円柱の上下底面)に当該誘電体層11の軸心方向に略垂直に設けられた金属板である第2の反射板13a,13bとから構成されている。なお、図2では、誘電体層11は3つの層11a〜11cで構成されている。また、第1の反射板12は半円筒形状に構成され、誘電体層11の外周面のうち、レーザ波が入射する部分とは反対側部分(入射したレーザ波が集束する部分)に貼り付けられている(図3参照)。
【0013】
次に、上記のように構成されたレーダ反射器の構成単位1による効果について、図3を参照しながら説明する。
なお、図3に示すレーダ反射器の構成単位1では、誘電体層11をn層としており、符号11aは第1層目の誘電体層、符号11bは第2層目の誘電体層、符号11nは第n層目の誘電体層である。また、構成単位1の最外形の半径はrであるとする。
【0014】



この比誘電率は、理想的なルーネベルグレンズの誘電率分布を各層の中心点でサンプリングした値である。
【0015】
そして、この構成単位1は、反射板付きルーネベルグレンズとして動作する。なお、ルーネベルグレンズは、通常、球形の形状で構成されるものであるが、本実施の形態では、円柱形状にルーネベルグレンズ特有の誘電率分布を適用している。これにより、垂直面(xz面)内のRCSパターンのビーム幅を十分広くすることができる。
例えば、図3において、+x軸付近からレーダ波が入射した場合、当該レーダ波は、誘電体層11のルーネベルグレンズの効果により、第1の反射板12の表面近傍に集束する。そして、当該レーダ波は、第1の反射板12で反射された後、レーダ波が入射した方向に反射する。また、レーダ波の入射角が+x軸方向から離れても、RCSの値が低くなることを防止でき、レーザ反射器として十分な性能を達成することができる。
【0016】
なお、水平面内において、+x軸方向から少し離れた角度からレーダ波が入射した場合には、従来のレーザ反射器と同様に3面コーナーリフレクタとして動作する。すなわち、図2において、入射したレーザ光は、第1の反射板12、第2の反射板13aおよび第2の反射板13bで反射されて、入射方向に戻る。
【0017】
以上のように、この実施の形態1によれば、レーザ反射器の構成単位1を、円筒形状の誘電体層11および第1の反射板12を用いて反射板付きルーネベルグレンズとして動作するように構成したので、2面コーナーリフレクタとして動作する従来例と比べて、垂直面におけるRCSパターンのビーム幅が広くなる。また、従来例と比べて、垂直面におけるRCSの値が高くなる。
【0018】
なお、図3では、第1の反射板12を半円筒形状に構成したが、これに限るものではなく、誘電体層11の外周面のうち、当該誘電体層11に入射したレーザ波が集束する部分に設けられていればよく、第1の反射板12の面積をさらに狭くしてもよい。
【0019】
実施の形態2.
図4はこの発明の実施の形態2に係るレーダ反射器の構成単位1の構造を示す断面図である。図4に示す実施の形態2に係るレーダ反射器の構成単位1は、図3に示す実施の形態1に係るレーダ反射器の構成単位1の第1の反射板12を第3の反射板14a〜14dに変更したものである。その他の構成は同様であり、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0020】
第3の反射板14a〜14dは、誘電体層11内に設けられ、当該誘電体層11の軸心周りに互いに略直交して配置された金属板である。
これにより、実施の形態1に係るレーダ反射器の構成単位1と比較して、−x軸方向から(図4の右側から構成単位1側へ)レーダ波が入射した場合であっても、高いRCSを有することが可能となる。
【0021】
また、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 構成単位、11,11a〜11n 誘電体層、12 第1の反射板、13a,13b 第2の反射板、14a〜14d 第3の反射板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の比誘電率を有し、軸心周りに重ねられた複数の層からなる円柱形状の誘電体層と、
前記誘電体層の外周面の一部に設けられた第1の反射板と、
前記誘電体層の端面に、当該誘電体層の軸心方向に略垂直に設けられた第2の反射板とを構成単位とし、
1つの前記構成単位から構成された、または、複数の前記構成単位が軸心方向に連接されて構成された
ことを特徴とするレーダ反射器。
【請求項2】
前記第1の反射板に代えて、前記誘電体層内に設けられ、当該誘電体層の軸心周りに互いに略直交する金属板からなる第3の反射板が設けられた
ことを特徴とする請求項1記載のレーダ反射器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate