説明

レーダ情報伝送システム及びそのためのレーダ装置

【課題】複数のレーダ装置の間でのレーダ情報の伝送システムにおいて、情報伝送のための通信装置を設けることなく、レーダ情報を伝送し、レーダ装置間で情報を共有すること。
【解決手段】第1パルスレーダ装置Aからパルス電波に物標情報に基づく通信データを重畳して形成された通信データ重畳電波を送信し、第2パルスレーダ装置Bで通信データ重畳電波に含まれる物標情報を取得することにより、情報伝送のための通信装置を設けることなく、レーダ装置間で情報を共有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のレーダ装置等の間でのレーダ情報の伝送システム及びそのためのレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーダ装置とレーダ装置との間でレーダ情報を伝送する場合には、レーダビデオそのものを送る場合と、レーダ装置において目標検出を行って船舶などの必要情報のみを抽出し、ディジタルデータによるレーダレポートとして送る場合がある。近年のレーダ信号処理技術の発達により、ディジタルデータによるレーダレポートを送るものが多くなっているが、情報量を豊富に含んでいるレーダビデオの伝送も行われている。
【0003】
このレーダ情報の伝送方法としては、光ファイバーケーブルなどの有線LANを使用した有線通信方式やマイクロ波回線を介しての無線通信方式が用いられる。例えば、有線LANを使用した有線通信方式を採用してレーダ情報を伝送するマルチレーダシステムが、特許文献1に開示されている。また、移動体にレーダ装置が搭載される場合の情報伝送では、無線通信方式が用いられることになるが、この場合には、レーダ送信波以外に、通信用の電波の割り当てが必要となる。
【特許文献1】特開2006−105897
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、有線通信方式や無線通信方式のいずれの場合においても、レーダ装置以外に情報伝送のための通信装置を別途必要としている。
【0005】
そこで、本発明は、複数のレーダ装置の間でのレーダ情報の伝送システムにおいて、情報伝送のための通信装置を設けることなく、レーダ情報を伝送し、レーダ装置間で情報を共有することを目的とする。また、そのためのレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のレーダ情報伝送システムは、指向性を有する回転走査型アンテナからパルス電波を送信し、反射波を受信して物標情報を取得することが出来るパルスレーダ装置であって、パルス電波に前記物標情報に基づく通信データを重畳して形成された通信データ重畳電波を送信する第1パルスレーダ装置と、
指向性を有する回転走査型アンテナからパルス電波を送信し、反射波を受信して物標情報を取得することが出来るパルスレーダ装置であって、前記第1パルスレーダ装置からの通信データ重畳電波を受信する方向へ回転走査型アンテナを指向させて受信し、通信データ重畳電波に含まれる物標情報を取得する、少なくとも1つの第2パルスレーダ装置とを備え、
前記第2パルスレーダ装置の表示器に、通信データ重畳電波に含まれる物標情報を、表示することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載のパルスレーダ装置は、指向性を有する回転走査型アンテナからパルス電波を送信し、反射波を受信して物標情報を取得することが出来るパルスレーダ装置であって、パルス電波に前記物標情報に基づく通信データを重畳して通信データ重畳電波を送信することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載のパルスレーダ装置は、指向性を有する回転走査型アンテナからパルス電波を送信し、反射波を受信して物標情報を取得することが出来るパルスレーダ装置であって、外部から送信される通信データ重畳電波を受信する方向へ回転走査型アンテナを指向させて受信し、通信データ重畳電波に含まれる物標情報を取得し、該物標情報を、表示器に表示することを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載のレーダ情報伝送システムは、指向性を有する回転走査型アンテナからパルス電波を送信し、反射波を受信して物標情報を取得することが出来るパルスレーダ装置であって、パルス電波に前記物標情報に基づく通信データを重畳して形成された通信データ重畳電波を送信するパルスレーダ装置と、
指向性を有し回動可能なアンテナで電波を受信することが出来る受信装置であって、前記パルスレーダ装置からの通信データ重畳電波を受信する方向へアンテナを指向させて受信し、通信データ重畳電波に含まれる物標情報を取得する、少なくとも1つの受信装置とを備え、
前記受信装置の表示器に、通信データ重畳電波に含まれる物標情報を、表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のレーダ情報伝送システム及びレーダ装置によれば、レーダ電波とその送信装置を利用して、情報伝送のための通信装置を設けることなく、複数のレーダ装置において物標情報を共有することができる。
【0011】
複数のレーダ装置の物標情報を共有することにより、探知範囲を拡大すること、障害物で探知出来ない物標も探知すること、複数レーダの送信電波の周波数を異ならせること(例、XバンドとSバンド)で探知できる物標の種別を拡大すること、等の利点を得ることが出来る。
【0012】
また、自己のレーダ電波を送出することなく、レーダに依る物標情報を得ることが出来るから、被探知性を向上することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のレーダ情報伝送システム及びレーダ装置は、第1パルスレーダ装置からパルス電波に物標情報に基づく通信データを重畳して形成された通信データ重畳電波を送信し、第2パルスレーダ装置で通信データ重畳電波に含まれる物標情報を取得することにより、情報伝送のための通信装置を設けることなく、レーダ装置間で情報を共有するものである。
【0014】
このために、指向性を有する回転走査型アンテナからパルス電波を送信し、反射波を受信して物標情報を取得することが出来る第1パルスレーダ装置から、パルス電波に物標情報に基づく通信データを重畳して形成された通信データ重畳電波を送信する。そして、指向性を有する回転走査型アンテナからパルス電波を送信し、反射波を受信して物標情報を取得することが出来る第2パルスレーダ装置を、第1パルスレーダ装置からの通信データ重畳電波を受信する方向へ回転走査型アンテナを指向させて受信し、通信データ重畳電波に含まれる物標情報を取得する。この第2パルスレーダ装置の表示器に、第2パルスレーダ装置で取得した通信データ重畳信号に含まれる物標情報を、第2パルスレーダ装置で自らパルス電波を送受信して取得したと同じように表示する。
【0015】
また、レーダ情報伝送システムの変形例として、第1パルスレーダ装置は、指向性を有する回転走査型アンテナからパルス電波を送信し、反射波を受信して物標情報を取得するレーダ装置であってパルス電波に物標情報に基づく通信データを重畳して形成された通信データ重畳信号を送信する一方、指向性を有し回動可能なアンテナで電波を受信することが出来る受信装置が、第1パルスレーダ装置からの通信データ重畳電波を受信する方向へアンテナを指向させて受信し、通信データ重畳電波に含まれる物標情報を取得する。そして、受信装置の表示器に、受信装置で取得した通信データ重畳電波に含まれる物標情報を、受信装置で取得したと同じように表示する、こととしても良い。この変形例は、第2パルスレーダ装置に代えて、受信装置を用いるものである。
【0016】
この出願における通信データ重畳電波は、パルス電波を、物標情報に基づいてパルス変調して、一連のパルス電波に物標情報に基づく通信データを重畳したものとすることが出来る。
【0017】
また、通信データ重畳電波は、パルス電波を、物標情報に基づいてパルス振幅変調(パルス有無変調を含む)して、一連のパルス電波に物標情報に基づく通信データを重畳したものとすることも良い。
【0018】
また、通信データ重畳電波は、パルス電波を、物標情報に基づいてパルス位置変調(パルス繰り返し周波数(PRF)ジッタ変調を含む)して、一連のパルス電波に物標情報に基づく通信データを重畳したものとすることも良い。
【0019】
さらに、通信データ重畳電波は、パルス電波と物標情報に基づいて変調された通信波と重畳して、一連のパルス電波に物標情報に基づく通信データを重畳したものとすることも良い。
【0020】
さて、本発明のレーダ情報伝送システムは、第1パルスレーダ装置(以下、レーダ装置A)と 第2パルスレーダ装置(以下、レーダ装置B)の動作状況の組み合わせに関して、図1〜図4のような各フェーズを持つ。
【0021】
図1のフェーズ1:レーダ装置Aは、指向性を有する回転走査型アンテナを回転しながらパルス電波を繰り返し送信し、反射波を受信して物標情報を取得する動作状態(以下、レーダ運用)。レーダ装置Bは、指向性を有する回転走査型アンテナを回転しながらパルス電波を繰り返し送信し、反射波を受信して物標情報を取得する動作状態(以下、レーダ運用)。このフェーズ1では、データ伝送(レーダ装置Aからレーダ装置Bへのデータ伝送)は、行われない。非伝送。
【0022】
図2のフェーズ2:レーダ装置Aは、指向性を有する回転走査型アンテナを回転しながらパルス電波に物標情報に基づく通信データを重畳して形成された通信データ重畳電波を送信するとともに、反射波を受信して物標情報を取得する動作状態(以下、レーダ運用&データ送信)。一方、レーダ装置Bは、レーダ装置Aからの通信データ重畳電波を受信する方向へ回転走査型アンテナを指向させて停止して受信し、通信データ重畳電波に含まれる物標情報を取得する動作状態(以下、データ受信)。このフェーズ2では、データ伝送は、両レーダ装置のアンテナが対向したときに行われるから、間欠伝送となる。
【0023】
図3のフェーズ3:レーダ装置Aは、指向性を有する回転走査型アンテナを回転しながら、パルス電波に物標情報に基づく通信データを重畳して形成された通信データ重畳電波を送信する(但し、反射波を受信して物標情報を取得しない)動作状態(以下、データ送信)。一方、レーダ装置Bは、レーダ装置Aからの通信電波重畳電波を受信する方向へ回転走査型アンテナを指向させて停止して受信し、通信データ重畳電波に含まれる物標情報を取得する動作状態(以下、データ受信)。このフェーズ3でも、データ伝送は、間欠伝送となる。
【0024】
図4のフェーズ4:レーダ装置Aは、指向性を有する回転走査型アンテナを回転させずにレーダ装置Bの方向に指向させて固定(停止)し、パルス電波に物標情報に基づく通信データを重畳して形成された通信データ重畳電波を送信する(但し、反射波を受信して物標情報を取得しない)動作状態(以下、データ送信)。一方、レーダ装置Bは、レーダ装置Aからの通信電波重畳電波を受信する方向へ回転走査型アンテナを指向させて受信し、通信データ重畳電波に含まれる物標情報を取得する動作状態(以下、データ受信)。このフェーズ4では、データ伝送は、両レーダ装置のアンテナが連続して対向しているから、連続伝送となる。
【0025】
なお、フェーズ1〜3において、レーダ装置Bを複数台設けてレーダ装置B1〜Bnとし、レーダ装置Aからの通信データ重畳電波を複数のレーダ装置B1〜Bnで同時に受信するようにしても良い。
【0026】
レーダ情報伝送システムとして、レーダ装置Aとレーダ装置Bの動作状況は、フェーズ1〜4を単独で用いても良いし、フェーズを組み合わせた次のような種々の態様を取ることが出来る。
【0027】
態様1:フェーズ1とフェーズ2とを、所定期間ずつ交互に実行する。これにより、レーダ装置Aでは、自らパルス電波を送受信して取得した物標情報を表示できる一方、レーダ装置Bでは、自らパルス電波を送受信して取得した物標情報と、レーダ装置Aでパルス電波を送受信して取得した物標情報とを、合成して一緒に表示できる。これによりレーダ電波とその送信装置を利用して、情報伝送のための通信装置を設けることなく、複数のレーダ装置において物標情報を共有することができる。また、レーダ装置Aでは、レーダ運用に格別の制限が掛けられることがない。
【0028】
態様2:フェーズ1とフェーズ3とを、所定期間ずつ交互に実行する。この場合にも、態様1と同様な表示が出来る。また、外部の第3者から見たときに、レーダ装置Aは通常のレーダ運用を行っていると思わせるとともに、レーダ装置Aでの物標情報の取得処理を休止することが出来る。
【0029】
態様3:フェーズ2を、連続して、単独で実行する。これにより、レーダ装置Aでは、自らパルス電波を送受信して取得した物標情報を表示できる一方、レーダ装置Bでは、レーダ装置Aでパルス電波を送受信して取得した物標情報を表示できる。この場合には、レーダ装置Bからは電波を送出しないので、レーダ装置Bを搭載した船舶などの移動体や、レーダ装置Bの設置箇所が秘匿される。
【0030】
態様4:フェーズ1とフェーズ4とを、所定期間ずつ交互に実行する。これにより、レーダ装置Aでは、自らパルス電波を送受信して取得した物標情報を表示できる一方、レーダ装置Bでは、自らパルス電波を送受信して取得した物標情報とレーダ装置Aでパルス電波を送受信して取得した物標情報とを、合成して一緒に表示できる。また、データ伝送がフェーズ4のときに連続して行われるから、データ伝送が短時間で終了する。
【0031】
なお、本発明において、レーダ装置Aとして用いていたレーダ装置をレーダ装置Bとし、レーダ装置Bとして用いていたレーダ装置をレーダ装置Aとして、用いることが出来る。即ち、全てのレーダ装置は、レーダ装置Aとしてもまたレーダ装置Bとしても用いることが出来る。このために、レーダ装置Aとレーダ装置Bの両機能を備えたものとすることが良い。
【0032】
図5は、パルス電波に物標情報に基づく通信データを重畳する方式を説明する図である。重畳方式(a)は、一定周期で送信されるべきパルス電波を、物標情報に基づいてそのパルス電波の有無を制御するパルス有無変調方式である。このパルス有無変調方式では、データ伝送速度は比較的遅く、例えば1kbps程度である。このパルス電波の有無に代えて、パルス電波の振幅を物標情報に基づいて複数段階に制御する方式とすることが出来るので、重畳方式(a)をパルス振幅変調方式としても良い。
【0033】
重畳方式(b)は、一定周期で送信されるべきパルス電波に、物標情報に基づいてジッタを与えるPRFジッタ変調方式である。このPRFジッタ変調方式では、データ伝送速度は、例えば18kbps程度である。このパルス電波にジッタを与えることはパルス電波の位置を制御することでもあるので、PRFジッタ変調方式をパルス位置変調変調方式としても良い。
【0034】
重畳方式(c)は、一定周期で送信されるパルス電波に、物標情報に基づく通信波を重畳する通信波重畳方式である。この通信波重畳方式では、データ伝送速度は著しく速くでき、例えば10Mbps程度である。なお、重畳方式(c)では、レーダ装置のアンテナからパルス電波と通信波とを重畳して送信することが出来るので、重畳方式(a)(b)と同様に、レーダアンテナ以外にアンテナは不要であるが、ただ、通信波のための通信回路や電波取得が必要となる。
【0035】
これら重畳方式(a)(b)(c)において、それらの適用性を検討するために、具体的な伝送条件を、次のように想定する。
データの内容:追尾データ;方位、距離、進行方向、速度、目標識別番号、等
データの個数;N個
データの容量:1目標あたりのデータ容量*全N目標
通信速度:各重畳方式(a),(b)、(c)のデータ伝送速度
通信可能時間:アンテナ回転の場合;T[s]ごとにt[ms]、
アンテナ固定の場合;連続
【0036】
そして、重畳方式(a)〜(c)とアンテナ回転/固定(停止)とに応じて得られる種々の伝送状況と、各重畳方式の通信速度、データ容量、通信可能時間などの諸条件を考慮して、最適な伝送状態を選定することが良い。
【0037】
図6、図7及び図8は、本発明のレーダ情報伝送システムに用いるパルスレーダ装置の構成を示す図であり、図6は通信データ重畳電波を送信するレーダ装置Aの構成を示す図であり、図7は通信データ重畳電波を受信するレーダ装置Bの構成を示す図であり、図8は通信データ重畳電波を送信し且つ受信する機能を併有するレーダ装置の構成を示す図である。
【0038】
図6のレーダ装置Aにおいて、輻射部11、アンテナ駆動部12を有する空中線(アンテナ)10と、操作部21、アンテナ制御部22、送信部23、受信部24、信号処理部25、追尾情報変調部26を有する送受信機20と、表示器30を備えている。なお、この図では記載されていなくても、パルスレーダ装置として通常備えるべき構成や機能は、図への記載が省略されているだけで、当然に具有するものである。
【0039】
操作部21からの回転制御信号が、アンテナ制御部22を介してアンテナ駆動部12へ供給され、アンテナ10が回転制御信号に応じて回転し或いは指向性ビームが所定の方向を指向して停止したりする。そのアンテナ10の指向している方位を示す方位信号がアンテナ制御部22に供給され、図示していないが操作部21や信号処理部25に供給される。
【0040】
送信部23からは、操作部21からの制御信号に基づいて、所定振幅、所定繰り返し周波数でレーダパルス電波となる送信信号が、輻射部11へ供給され、パルス電波がアンテナ10から放射される。
【0041】
目標に照射され、反射されるパルス電波の一部が輻射部11で受信され、その受信信号に受信部24で周波数変換、増幅、検波などの処理が施されて生ビデオ信号が得られる。信号処理部25で、この生ビデオ信号が操作部からの制御信号などに基づいて信号処理されて、表示用ビデオ信号や追尾情報が形成され、それらが表示器30に送られて表示される。ここまでが、指向性を有する回転走査型アンテナからパルス電波を繰り返し送信し、反射波を受信して物標情報を取得することが出来る、従来のパルスレーダ装置である。
【0042】
本発明のパルスレーダ装置Aは、追尾情報変調部26を設けている。この追尾情報変調部26は、信号処理部25からの追尾情報を受けて、この追尾情報に基づく変調信号を生成し、送信部23へ供給する。この変調信号は、パルス電波に物標情報に基づく通信データを重畳する方式、即ち、重畳方式(a):パルス有無変調方式、重畳方式(b):PRFジッタ変調方式、或いは重畳方式(c):通信波重畳方式、に対応した形態とされている。
【0043】
送信部23では、この変調信号に基づき且つその重畳方式にしたがって、パルス電波に追尾情報(物標情報)に基づく通信データを重畳して形成された通信データ重畳電波を、アンテナ10から送信する。
【0044】
レーダ装置Aは図1〜図4の各フェーズに応じて次のように動作する。フェーズ1では、アンテナ10を回転しつつ非変調のパルス電波を送信し且つ反射波を受信して物標情報を取得するレーダ運用状態であるから、送信部23からは非変調の送信信号が出力される。フェーズ2では、アンテナ10を回転しつつ変調されたパルス電波を送信し且つ反射波を受信して物標情報を取得するレーダ運用&データ送信状態であるから、送信部23からは通信データでレーダパルスが変調された送信信号が出力される。フェーズ3では、アンテナ10を回転しつつ変調されたパルス電波を送信し反射波を受信処理しないデータ送信状態であるから、送信部23からは通信データでレーダパルスが変調された送信信号が出力されるとともに、受信部24では受信信号の処理は行わない。フェーズ4では、アンテナ10をレーダ装置Bに指向させて回転を停止し変調されたパルス電波を送信し反射波を受信処理しないデータ送信状態であるから、送信部23からは通信データでレーダパルスが変調された送信信号が出力されるとともに、受信部24では受信信号の処理は行わない。
【0045】
図7のレーダ装置Bにおいて、図6の追尾情報変調部26が省略され、新たに相手船方位検出部27と、追尾情報復調部28が設けられている。その他の構成は、図6と同様であるので、説明は省略する。
【0046】
相手船方位検出部27は、図7のアンテナ10が指向する方向を、通信データ重畳電波を送出するレーダ装置Aが搭載されている相手船の方向へ、向けるためのものである。相手船方位検出部27での相手船方位の検出は、受信部24で得たビデオ信号の振幅に基づいて、例えば、振幅値の最大となる方向をアンテナの指向方位を変更しながら探知する山登り方式によって検出する。アンテナ10の指向方向を、検出された相手船方位に向けて、アンテナ10の回転を停止する。
【0047】
アンテナ10を、レーダ装置Aが搭載されている相手船の方向へ指向させた状態で、回転を停止させて、レーダ装置Aから送信される通信データ重畳電波を受信し、受信部24で追尾情報を含むビデオ信号を取得し、追尾情報復調部28へ供給する。
【0048】
追尾情報復調部28では、追尾情報を含むビデオ信号から、重畳方式(a)〜(c)に基づいて追尾情報を生成し、信号処理部25へ供給する。そして、信号処理部25で、ビデオ信号とともに追尾情報を表示信号として表示器30へ供給して表示する。
【0049】
レーダ装置Bは図1〜図4の各フェーズに応じて次のように動作する。フェーズ1では、送信アンテナ10を回転しつつ非変調のパルス電波を送信し且つ反射波を受信して物標情報を取得するレーダ運用状態であるから、受信部24では受信信号を処理して物標情報を取得する。フェーズ2〜4では、レーダ装置Aから送信される通信データ重畳電波を受信するデータ受信状態であるから、アンテナ10をレーダ装置Aの方向へ指向させて回転を停止し、レーダ装置Aから送信される通信データ(追尾情報)を取得する。レーダ装置Bでは、レーダ運用で得た物標情報に、レーダ装置Aから送信される追尾情報を加えて、統合された情報を表示器30に表示する。
【0050】
このように、図6のレーダ装置A及び図7のレーダ装置Bにおいて、アンテナ10の制御や、送信部23,受信部24等は、前述のフェーズ1〜4や、態様1〜4に応じて、回転/停止や、動作の制御が行われる。
【0051】
図8のレーダ装置は、従来のパルスレーダ装置に、通信電波重畳電波を送信し且つ受信する機能を併有する構成としたものであり、レーダ装置Aに必要な追尾情報変調部26と、レーダ装置Bに必要な相手船方位検出部27と追尾情報復調部28とが設けられている。図8のレーダ装置は、レーダ装置Aとレーダ装置Bの両機能を備えているから、レーダ装置Aとして用いていたレーダ装置をレーダ装置Bとして使用し、或いは、レーダ装置Bとして用いていたレーダ装置をレーダ装置Aとして使用することが出来る。したがって、レーダ装置間のレーダ情報伝送システムの運用を、変更したり、拡大することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】レーダ情報伝送システムの動作状況のフェーズ1を示す図
【図2】レーダ情報伝送システムの動作状況のフェーズ2を示す図
【図3】レーダ情報伝送システムの動作状況のフェーズ3を示す図
【図4】レーダ情報伝送システムの動作状況のフェーズ4を示す図
【図5】パルス電波に物標情報に基づく通信データを重畳する方式を説明する図
【図6】通信データ重畳電波を送信するレーダ装置Aの構成を示す図
【図7】通信データ重畳電波を受信するレーダ装置Bの構成を示す図
【図8】通信データ重畳電波を送信し且つ受信する機能を併有するレーダ装置の構成を示す図
【符号の説明】
【0053】
A:通信データ重畳電波を送信するレーダ装置
B:通信データ重畳電波を受信し、それに含まれる物標情報を取得するレーダ装置
10:アンテナ、11:輻射部、12:アンテナ駆動部、20:送受信機、21:操作部
22:アンテナ制御部、23:送信部、24:受信部、25:信号処理部、
26:追尾情報変調部、27:相手船方位検出部、28:追尾情報復調部、30:表示器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指向性を有する回転走査型アンテナからパルス電波を送信し、反射波を受信して物標情報を取得することが出来るパルスレーダ装置であって、パルス電波に前記物標情報に基づく通信データを重畳して形成された通信データ重畳電波を送信する第1パルスレーダ装置と、
指向性を有する回転走査型アンテナからパルス電波を送信し、反射波を受信して物標情報を取得することが出来るパルスレーダ装置であって、前記第1パルスレーダ装置からの通信データ重畳電波を受信する方向へ回転走査型アンテナを指向させて受信し、通信データ重畳電波に含まれる物標情報を取得する、少なくとも1つの第2パルスレーダ装置とを備え、
前記第2パルスレーダ装置の表示器に、通信データ重畳電波に含まれる物標情報を、表示することを特徴とするレーダ情報伝送システム。
【請求項2】
指向性を有する回転走査型アンテナからパルス電波を送信し、反射波を受信して物標情報を取得することが出来るパルスレーダ装置であって、パルス電波に前記物標情報に基づく通信データを重畳して通信データ重畳電波を送信することを特徴とするパルスレーダ装置。
【請求項3】
指向性を有する回転走査型アンテナからパルス電波を送信し、反射波を受信して物標情報を取得することが出来るパルスレーダ装置であって、外部から送信される通信データ重畳電波を受信する方向へ回転走査型アンテナを指向させて受信し、通信データ重畳電波に含まれる物標情報を取得し、該物標情報を、表示器に表示することを特徴とするパルスレーダ装置。
【請求項4】
指向性を有する回転走査型アンテナからパルス電波を送信し、反射波を受信して物標情報を取得することが出来るパルスレーダ装置であって、パルス電波に前記物標情報に基づく通信データを重畳して形成された通信データ重畳電波を送信するパルスレーダ装置と、
指向性を有し回動可能なアンテナで電波を受信することが出来る受信装置であって、前記パルスレーダ装置からの通信データ重畳電波を受信する方向へアンテナを指向させて受信し、通信データ重畳電波に含まれる物標情報を取得する、少なくとも1つの受信装置とを備え、
前記受信装置の表示器に、通信データ重畳電波に含まれる物標情報を、表示することを特徴とするレーダ情報伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−8069(P2010−8069A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164305(P2008−164305)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】