説明

レーダ情報処理システム及びレーダ情報処理方法

【課題】複数のレーダ装置の受信信号から検出された目標に関する情報を正確に同期表示させること。
【解決手段】第1レーダ装置1及び第2レーダ装置2は、空中線11、21を同一周期で回転させてレーダパルスを送受信して、目標検出部13、23により目標を検出する。データ処理装置3は、第1レーダ装置1及び第2レーダ装置2により検出された複数の目標情報を同期させて出力する。第1レーダ装置1及び第2レーダ装置2は、目標検出処理前後の方位値を目標情報に付加してデータ処理装置3に出力し、データ処理装置3は、目標検出処理前後の方位値をもとに複数の目標情報を基準値に合わせて遅延させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば航空管制用のレーダ情報処理システム及びレーダ情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、航空管制用のレーダとして、航空路監視レーダ(Air Route Surveillance Rader;ARSR)や空港監視レーダ(Airport Surveillance Rader;ASR)等の1次監視レーダと併せて2次監視レーダ(Second Surveillance Rader;SSR)が広く使用されている。同じ回転をしている1次監視レーダと2次監視レーダのアンテナからそれぞれ受信した信号で1つの目標とする航空機を異なる方式で検出し、1つのアナログ指示器にビデオ信号を表示する場合、ビデオ信号に対して1次監視レーダと2次監視レーダとの間での方位補正(アジマス補正)と距離補正(レンジ補正)が必要となる。
【0003】
ビデオ信号のアジマス補正は、アナログ指示器が1レンジ表示するスイープ単位で遅らせて補正を行い、処理遅延が短い方の装置側で出力タイミングを遅らせ、遅らせるスイープ数は固定で設定することが一般的である。
【0004】
また、ビデオ信号のレンジ補正は、1次監視レーダからと2次監視レーダからのスイープ開始タイミングを合わせるために、ビデオ出力基準タイミングを一方の装置で発生しそのタイミングを他方渡すことを一般的に行っている。
【0005】
なお、本願に関連する公知文献として次のようなものがある(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−248131公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、装置の処理遅延補正は、遅延時間が短い方の装置側で出力タイミングを遅らせる処理を行うことが一般的である。ところが、上記アジマス補正の手法では、検出の処理時間のばらつきが1スイープの時間内であることが条件で遅延補正値が固定に設定されているので、検出処理時間が1スイープの時間を越えて変化した場合、アナログ指示器での表示がアジマス方向で誤差が生じてしまうという欠点がある。また、ビデオ信号のレンジを補正するためのビデオ出力基準タイミングを生成している側の装置で障害が発生した場合、アナログ指示器での表示が停止してしまうという問題があった。
【0008】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、複数のレーダ装置の受信信号から検出された目標に関する情報を正確に同期表示させることができるレーダ情報処理システム及びレーダ情報処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明に係るレーダ情報処理システムは、同一周期で空中線を回転させてレーダパルスを送受信して目標を検出する複数のレーダ装置と、前記複数のレーダ装置により検出された複数の目標情報を同期させて出力するデータ処理装置とを具備するレーダ情報処理システムであって、前記レーダ装置は、前記目標検出処理前後の方位値を前記目標情報に付加して前記データ処理装置に出力する手段を具備し、前記データ処理装置は、前記目標検出処理前後の方位値をもとに前記複数の目標情報を基準値に合わせて遅延させるものである。
【0010】
また、この発明に係るレーダ情報処理方法は、同一周期で空中線を回転させてレーダパルスを送受信して目標を検出する複数のレーダ装置と、前記複数のレーダ装置により検出された複数の目標情報を同期させて出力するデータ処理装置とを具備するレーダ情報処理システムに用いられる方法であって、前記レーダ装置において、前記目標検出処理前後の方位値を前記目標情報に付加して前記データ処理装置に出力し、前記データ処理装置において、前記目標検出処理前後の方位値をもとに前記複数の目標情報を基準値に合わせて遅延させるものである。
【発明の効果】
【0011】
したがってこの発明によれば、複数のレーダ装置の受信信号から検出された目標に関する情報を正確に同期表示させることができるレーダ情報処理システム及びレーダ情報処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーダ情報処理システムの構成例を示す図。
【図2】従来のレーダ情報処理システムの構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るレーダ情報処理システムの構成例を示す図である。本システムは、第1レーダ装置1と、第2レーダ装置2と、データ処理装置3と、表示装置4とを備える。
【0014】
第1のレーダ装置1は、例えば、航空路監視レーダ(Air Route Surveillance Rader;ARSR)や空港監視レーダ(Airport Surveillance Rader;ASR)等の1次監視レーダで構成され、空中線11と、方位カウンタ12と、目標検出部13とを備える。第2レーダ装置2は、例えば、2次監視レーダ(Second Surveillance Rader;SSR)で構成され、第1レーダ装置1と同様に、空中線21と、方位カウンタ22と、目標検出部23とを備える。
【0015】
第1レーダ装置1の空中線11と第2レーダ装置2の空中線21とは、同一周期で回転して電波を送受信する。方位カウンタ12及び方位カウンタ22は、空中線11及び空中線12の方位信号から方位値をカウントする。目標検出部13及び目標検出部23は、空中線11及び空中線12の受信信号から1つの目標(航空機)を異なる方式で検出する。目標検出部13及び目標検出部23で検出された目標情報は、ディジタル処理した第1及び第2のビデオ信号としてそれぞれ出力される。
【0016】
データ処理装置3は、例えば、ビデオ再生機能を有する装置であって、第1遅延補正部31と、第2遅延補正部32と、第1D/A変換部33と、第2D/A変換部34と、メモリ35とを備える。第1遅延補正部31及び第2遅延補正部32は、第1レーダ装置1及び第2レーダ装置2からそれぞれ出力される第1及び第2のビデオ信号の遅延をそれぞれ補正する。第1D/A変換部33及び第2D/A変換部34は、遅延補正後の第1及び第2のビデオ信号をアナログ変換して出力する。メモリ35には、第1遅延補正部31及び第2遅延補正部32での遅延補正処理に用いられる基準の最大遅延値が予め記憶される。
【0017】
表示装置4は、例えば、アナログ指示器で構成される。表示装置4には、データ処理装置3から出力されるアナログ化した第1及び第2のビデオ信号をもとに、レーダビデオが共に表示される。
【0018】
次に、このように構成されたレーダ情報処理システムの動作について説明する。
上述したように、第1レーダ装置1及び第2レーダ装置2において、空中線11と空中線21とは同一周期で回転しており、目標検出装置13、23は、空中線11、21で受信した信号から、1つの目標を異なる方式で検出する。そして、第1レーダ装置1及び第2レーダ装置2は、方位カウンタ12、22でカウントされた目標検出処理前と処理後の方位値(方位カウント値)をディジタルビデオ化したデータに付加して、データ処理装置3に伝送する。データ処理装置3は、遅延補正部31、32において、基準の最大遅延に合わせて第1レーダ装置1及び第2レーダ装置2からのビデオ信号をそれぞれ遅延させ、第1及び第2D/A変換部33、34でD/A変換して表示装置4のアナログ指示器に表示する。
【0019】
第1遅延補正部31及び第2遅延補正部32では、メモリ35に予め記憶された基準の最大遅延値に合わせて、遅延補正値を算出してビデオ信号の遅延を補正する。例えば、遅延補正値は以下のように算出することができる。
遅延補正値=基準の最大遅延値−(処理後の方位値−処理前の方位値)…(式1)
なお、基準の最大遅延値≧処理後の方位値とする。
【0020】
このように、基準となる最大遅延値に合わせて、第1レーダ装置1及び第2レーダ装置2のそれぞれについて、上記式1のような遅延補正を行うことで、異なる方式で目標検出処理を行っても同じ目標を同じ位置にアナログ指示器に表示することができる。
【0021】
ここで、図2に、従来のレーダ情報処理システムの構成例を示す。第2レーダ装置2Aの目標検出部23が、第1レーダ装置1Aの目標検出部13より処理遅延が短い場合、アナログ指示器が1レンジ表示するスイープ単位で遅らせて補正を行い、第2レーダ装置2A側で出力タイミングを遅らせ、遅らせるスイープ数は固定で設定することが一般的である。すなわち、空中線11と空中線21は同一周期で回転しているので固定の遅延値を用いて補正することが可能である。第2レーダ装置2Aのビデオ信号は、固定の遅延補正部24で遅延され、第1レーダ装置1A及び第2レーダ装置2Aのビデオ信号が基準タイミング25で同期出力される。
【0022】
しかし、上記従来手法では、目標検出の処理時間のばらつきが1スイープの時間内であることが条件で遅延補正値が固定に設定されているので、検出処理時間が1スイープの時間を越えて変化した場合、アナログ指示器での表示がアジマス方向で誤差が生じてしまうという欠点がある。また、ビデオ信号のレンジを補正するためのビデオ出力基準タイミングを生成している第2レーダ装置2A側で障害が発生した場合、アナログ指示器での表示が停止してしまうという問題があった。
【0023】
これに対し、上記実施形態では、第1レーダ装置1及び第2レーダ装置2において、目標検出処理前後の方位値を第1及び第2のビデオ信号に付加してデータ処理装置3に出力し、データ処理装置3は、目標検出処理前後の方位値をもとに第1及び第2のビデオ信号を基準の最大遅延値に合わせて遅延させる。つまり、遅延補正値は固定ではなく、目標検出の処理時間の変化に応じて可変して補正することができる。これにより、検出処理時間が1スイープの時間を越えてばらつきを生じた場合でも、正確に同期表示することができる。また、片方のレーダ装置が障害で停止した場合でも、正常動作中の装置単独で目標をアナログ指示器に表示することができる。
【0024】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1…第1レーダ装置、2…第2レーダ装置、11、21…空中線、12、22…方位カウンタ、13、23…目標検出部、3…データ処理装置、31…第1遅延補正部、32…第2遅延補正部、33…第1D/A変換部、34…第2D/A変換部、35…メモリ、4…表示装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一周期で空中線を回転させてレーダパルスを送受信して目標を検出する複数のレーダ装置と、前記複数のレーダ装置により検出された複数の目標情報を同期させて出力するデータ処理装置とを具備するレーダ情報処理システムであって、
前記レーダ装置は、前記目標検出処理前後の方位値を前記目標情報に付加して前記データ処理装置に出力する手段を具備し、
前記データ処理装置は、前記目標検出処理前後の方位値をもとに前記複数の目標情報を基準値に合わせて遅延させる手段を具備することを特徴とするレーダ情報処理システム。
【請求項2】
同一周期で空中線を回転させてレーダパルスを送受信して目標を検出する複数のレーダ装置と、前記複数のレーダ装置により検出された複数の目標情報を同期させて出力するデータ処理装置とを具備するレーダ情報処理システムに用いられる方法であって、
前記レーダ装置において、前記目標検出処理前後の方位値を前記目標情報に付加して前記データ処理装置に出力し、
前記データ処理装置において、前記目標検出処理前後の方位値をもとに前記複数の目標情報を基準値に合わせて遅延させることを特徴とするレーダ情報処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−112456(P2011−112456A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267821(P2009−267821)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】