説明

レーダ断面積の測定装置及び方法並びにレーダ断面積の測定プログラム

【課題】近傍領域で測定した散乱電界の振幅情報のみから遠方領域のRCSを推定できるレーダ断面積の測定装置を得る。
【解決手段】水平方向において大きく、かつ垂直方向において水平方向に比べて小さい被測定物1を水平面で回転走査させる回転機構2と、被測定物1に電波を送信する送信アンテナ4と、被測定物1からの電波を受信する受信アンテナ5と、被測定物1から近傍領域内において被測定物1と送受信アンテナ4、5の間の距離が異なる3つの距離に送受信アンテナ4、5を水平方向に移動させる送受信アンテナ移動機構部7及び送受信アンテナ移動用レール8と、回転機構2、送受信アンテナ4、5、送受信アンテナ移動機構部7及び移動用レール8を駆動制御して遠方領域のRCSを求める制御ユニット100とを設け、制御ユニット100は、3つの異なる距離の近傍領域で測定した散乱電界の振幅情報のみから遠方領域のRCSを推定する手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、近傍領域のレーダ断面積から遠方領域のレーダ断面積を推定するレーダ断面積の測定装置に関し、特に、3つの異なる距離の近傍領域で測定した散乱電界の振幅情報のみから遠方領域のレーダ断面積を推定するレーダ断面積の測定装置及び方法並びにレーダ断面積の測定プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーダ断面積(RCS:Radar Cross Section)は、無限遠方で測定したものとして規定されるため、被測定物から十分遠方で測定する必要がある。通常、被測定物の最大径をD、測定波長をλとすると、十分遠方で測定するためには測定距離Rは、次の式(1)を満たさなければならない。
【0003】
【数1】

【0004】
しかし、十分な測定レンジがとれない場合、遠方領域のRCSを求める方法の一つとして、近傍領域での測定値から遠方領域のRCSを推定する方法が提案されている。例えば、近傍領域で測定した散乱電界から遠方領域のレーダ断面積を求める方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
図5は、従来のレーダ断面積の測定方法で定義されている遠方RCS推定用の座標系を示す図である。図5において、推定するRCSの方向をX軸とし、被測定物のある原点から距離ρの位置に実際に測定する波源及び観測点P(送信アンテナ及び受信アンテナ)を設置する。このとき、被測定物のY軸方向及びZ軸方向の最大長をHw、Zw、測定波長をλとし、測定距離ρは、次の式(2)を満たす近傍領域とする。
【0006】
【数2】

【0007】
すなわち、被測定物のY軸方向の大きさに対しては近傍領域になるが、Z軸方向の大きさに対しては遠方領域になっているものとする。この測定距離において波源及び観測点を固定し被測定物をXY面内で回転させ(走査角:φ)、散乱電界E(φ)を測定する。ここで、散乱電界は、電界強度のみでなく位相情報も測定する必要がある。測定範囲がφの散乱電界から、次の式(3)で散乱体固有の等価散乱係数S(y)を求めることができる。
【0008】
【数3】

【0009】
次に、被測定物をY軸に投影した領域相当yの等価散乱係数S(y)から、次の式(4)で遠方領域におけるレーダ断面積(RCS)σを求めることができる。
【0010】
【数4】

【0011】
このRCS測定法では、近傍領域の散乱電界E(φ)は、電界強度だけでなく位相情報も測定する必要がある。
【0012】
一方、近傍領域の散乱電界の位相情報を用いず、電界強度のみからRCSを推定する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このRCS推定方法について、図6を用いて説明する。
【0013】
図6は、従来のRCS推定方法を示す図である。図6において、被測定物1、送信アンテナ4、受信アンテナ5が描かれている。被測定物1を回転する走査方法は、上記従来例に示した方法と同様とする。また、図6において、近傍領域の距離ρ、ρにおいて、散乱電界の振幅のみ測定する。ここで、被測定物1の大きさ、距離ρ、ρは、式(2)を満たすものとする。特許文献1において、等価散乱係数S(y)から、近傍領域の距離ρ、走査角φにおける散乱電界E(φ)は、次の式(5)で求めることができる。
【0014】
【数5】

【0015】
ここで、積分範囲yは、被測定物1のY軸への投影領域相当である。この座標系において、図6に示すように異なる距離ρ、ρに送受信アンテナ4、5を設置してそれぞれにおいて散乱電界E、Eを測定し、これらの測定値から図7に示すフローチャートの手順で遠方RCSを求める。次に、これらの各手順について説明する。
【0016】
必要とするデータは上述した距離ρ、ρにおける散乱電界の測定値であるが、位相成分は不明で電界強度のみを測定する。また、それぞれの電界強度を振幅A、Aとする(ステップ901)。
【0017】
次に、距離ρでの散乱電界の位相成分は不明であるが、初期条件として位相Pが0であると仮定する(ステップ902)。
【0018】
次に、距離ρにおける散乱電界が振幅A、位相Pであると仮定し、式(3)に従い等価散乱係数S’(y)を求める(ステップ903)。
【0019】
次に、ステップ903で求めた等価散乱係数S’(y)から、式(5)に従い距離ρにおける散乱電界を求め、その振幅をA’、位相をP’とする(ステップ904)。
【0020】
次に、ステップ904で得られた位相P’、最初の測定で得られた振幅Aを距離ρにおける散乱電界とし、式(3)に従い等価散乱係数S”(y)を求める(ステップ905)。
【0021】
次に、ステップ903、ステップ905でそれぞれ得られた等価散乱係数S’(y)、S”(y)の差が十分小さいか否か判定する。S’(y)、S”(y)は位置yにより異なるため、例えば被測定物1のy軸投影領域相当内に等間隔にm点の参照点{y|i=1、・・・、m}をとり、これらの参照点でのS’(y)、S”(y)の誤差平均が微小量δ以下であるか否か判定すればよい。
【0022】
【数6】

【0023】
式(6)を満たす場合(YES)には、十分収束していると判定しステップ909に進み、これらの等価散乱係数から遠方RCSを計算する。式(6)を満たさない場合(NO)には、次のステップ907に進む(ステップ906)。
【0024】
ステップ905で求めた等価散乱係数S”(y)から、式(5)に従い距離ρにおける散乱電界を求め、その振幅をA”、位相をP”とする(ステップ907)。
【0025】
次に、距離ρにおける位相Pをステップ907で得られたP”で置き換え、ステップ903から繰り返す(ステップ908)。
【0026】
そして、ステップ906で収束条件が満たされている場合には、等価散乱係数S’(y)あるいはS”(y)で式(4)に従い遠方領域におけるRCSを求める(ステップ909)。
【0027】
上述したステップ903〜ステップ908を繰り返し行うことにより、初期値の散乱電界として位相情報がなくても、真の等価散乱係数に近いものを得ることができ、遠方でのRCSを求めることができる。
【0028】
【特許文献1】特許第3672239号公報
【非特許文献1】稲沢良夫、千葉勇著「近傍領域の1次元散乱界測定値を用いた遠方RCS推定法」1999年電子情報通信学会総合大会、B−1−10
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
2つの従来例を説明したが、特に位相情報を用いない後者の従来例は、2つの近傍領域の散乱電界の振幅パターンから、遠方領域のRCSを求める方法が示されている。この後者の従来例には、3つ以上の近傍領域の散乱電界の振幅パターンから、遠方領域のRCSを求めることができることが示唆されているが、具体的なアルゴリズムが示されていない。この後者の従来例の内容からは、RCSの推定精度の改善のため、3つ以上の近傍領域の散乱電界の振幅パターンから遠方領域のRCSを求めることができないという問題点があった。
【0030】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、3つの異なる距離の近傍領域で測定した散乱電界の振幅情報のみから遠方領域のレーダ断面積を推定することができるレーダ断面積の測定装置及び方法並びにレーダ断面積の測定プログラムを得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
この発明に係るレーダ断面積の測定装置は、水平方向において大きく、かつ垂直方向において前記水平方向に比べて小さい被測定物を水平面で回転走査させる回転機構と、前記被測定物に電波を送信する送信アンテナと、前記被測定物からの電波を受信する受信アンテナと、前記被測定物から近傍領域内において前記被測定物と前記送信アンテナ及び前記受信アンテナの間の距離が異なる第1、第2及び第3の距離に前記送信アンテナ及び前記受信アンテナを水平方向に移動させる移動機構と、前記回転機構、前記送信アンテナ、前記受信アンテナ及び前記移動機構を駆動制御して遠方領域のレーダ断面積を求める制御ユニットとを設け、前記制御ユニットは、前記第1、第2及び第3の距離における散乱電界の強度を散乱電界の第1、第2及び第3の振幅として測定する第1の手段と、前記第1の距離における散乱電界の第1の位相を、初期条件として0と仮定する第2の手段と、前記第1の手段により測定した第1の距離における散乱電界の第1の振幅と、前記第2の手段により仮定あるいは第5の手段により推定した第1の距離における散乱電界の第1の位相とから第1の等価散乱係数を求め、この第1の等価散乱係数から第2の距離における散乱電界の第2の振幅と第2の位相を推定する第3の手段と、前記第1の手段により測定した第2の距離における散乱電界の第2の振幅と、前記第3の手段により推定した第2の距離における散乱電界の第2の位相とから第2の等価散乱係数を求め、この第2の等価散乱係数から第3の距離における散乱電界の第3の振幅と第3の位相を推定する第4の手段と、前記第1の手段により測定した第3の距離における散乱電界の第3の振幅と、前記第4の手段により推定された第3の距離における散乱電界の第3の位相とから第3の等価散乱係数を求め、この第3の等価散乱係数から第1の距離における散乱電界の第1の振幅と第1の位相を推定する第5の手段と、前記第3の手段から前記第5の手段までの処理の繰り返し回数が、所定の回数以下の場合には、前記第3の手段から前記第5の手段までの繰り返し処理に移行し、所定の回数より大きい場合には、第7の手段の処理に移行する第6の手段と、前記第5の手段により推定した第1の距離における散乱電界の第1の振幅と、前記第1の手段により測定した第1の距離における散乱電界の第1の振幅との第1の誤差、前記第3の手段により推定した第2の距離における散乱電界の第2の振幅と、前記第1の手段により測定した第2の距離における散乱電界の第2の振幅との第2の誤差、及び前記第4の手段により推定した第3の距離における散乱電界の第3の振幅と、前記第1の手段により測定した第3の距離における散乱電界の第3の振幅との第3の誤差を評価する第7の手段と、前記第7の手段により評価した第1の誤差、第2の誤差及び第3の誤差の最小値が、所定の値以上の場合には、第3の手段の処理に移行し、所定の値より小さい場合には、第9の手段の処理に移行する第8の手段と、前記第1、第2及び第3の誤差のうち最小となる誤差に対応する、前記第1、第2及び第3の距離のいずれかに対応する等価散乱係数から遠方領域のレーダ断面積を推定する第9の手段とを有するものである。
【発明の効果】
【0032】
この発明に係るレーダ断面積の測定装置は、3つの異なる距離の近傍領域で測定した散乱電界の振幅情報のみから遠方領域のレーダ断面積を推定することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係るレーダ断面積の測定装置について図1から図4までを参照しながら説明する。図1は、この発明の実施の形態1に係るレーダ断面積の測定装置の構成を示す斜視図である。なお、各図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0034】
図1において、この発明の実施の形態1に係るレーダ断面積の測定装置は、被測定物1と、被測定物1を回転走査させる回転機構2と、被測定物1及び回転機構2を支持する支持機構3と、被測定物1に電波を送信する送信アンテナ4と、被測定物1からの電波を受信する受信アンテナ5と、送受信アンテナ支持機構6と、送受信アンテナ移動機構部7と、送受信アンテナ移動用レール8(送受信アンテナ移動機構部7と送受信アンテナ移動用レール8で移動機構を構成する)と、これらの装置の制御を行う例えばCPU、メモリなどを含むコンピュータから構成される制御ユニット100とが設けられている。
【0035】
被測定物1は、回転機構2で任意の角度に回転することができる。また、送信アンテナ4及び受信アンテナ5は、送受信アンテナ移動用レール8上にあり、被測定物1から任意の距離に移動することができる。
【0036】
制御ユニット100は、後述する方法に従って送信アンテナ4及び受信アンテナ5を駆動して、測定した散乱電界から被測定物1の遠方領域におけるレーダ断面積を求める。
【0037】
つぎに、この実施の形態1に係るレーダ断面積の測定装置の動作について図面を参照しながら説明する。
【0038】
図2は、この発明の実施の形態1に係るレーダ断面積の測定装置の測定方法を説明する座標系を示す図である。
【0039】
図2において、被測定物1、送信アンテナ4、受信アンテナ5などが描かれている。座標系及び被測定物1を回転する走査方法は、従来例に示した方法と同様とする。従って、上記の式(2)〜(5)が成立する。
【0040】
制御ユニット100は、図2に示すように、この座標系において、異なる距離ρ、ρ、ρに送受信アンテナ4、5を設置してそれぞれにおいて散乱電界を測定し、これらの測定値から図3に示すフローチャートの手順で遠方RCSを求める。次に、これらの各手順について説明する。
【0041】
まず、ステップ101において、制御ユニット100は、必要とするデータは上述した距離ρ、ρ、ρにおける散乱電界の測定値であるが、位相成分は不明で電界強度のみ測定する。また、それぞれの電界強度を振幅パターンA(φ)、A(φ)、A(φ)とする。
【0042】
次に、ステップ102において、距離ρでの散乱電界の位相成分は不明であるが、初期条件として位相パターンP(φ)が0であると仮定する。
【0043】
次に、ステップ103において、ステップ101で測定した距離ρにおける散乱電界の振幅パターンA(φ)と、ステップ102あるいはステップ105で推定された位相パターンP(φ)から、式(3)に従い等価散乱係数S(y)を求め、この等価散乱係数S(y)から、式(5)に従い距離ρにおける振幅パターンA’(φ)、位相パターンP(φ)を求める。
【0044】
次に、ステップ104において、ステップ101で測定した距離ρにおける散乱電界の振幅パターンA(φ)と、ステップ103で推定された位相パターンP(φ)から等価散乱係数S(y)を求め、この等価散乱係数S(y)から、式(5)に従い距離ρにおける振幅パターンA’(φ)、位相パターンP(φ)を求める。
【0045】
次に、ステップ105において、ステップ101で測定した距離ρにおける散乱電界の振幅パターンA(φ)と、ステップ104で推定された位相パターンP(φ)から等価散乱係数S(y)を求め、この等価散乱係数S(y)から、式(5)に従い距離ρにおける振幅パターンA’(φ)、位相パターンP(φ)を求める。
【0046】
次に、ステップ106において、ステップ103〜ステップ105の繰り返し回数iが、所定の回数n以下の場合(NO)には、ステップ103〜ステップ105を繰り返すようにステップ103に移行する。一方、繰り返し回数iが、所定の回数nより大きい場合(YES)には、次のステップ107に移行する。
【0047】
ステップ107において、ステップ103、104、105で得られた振幅パターンA’(φ)、A’(φ)、A’(φ)と、ステップ101で測定したA(φ)、A(φ)、A(φ)の誤差E、E、Eを、次の式(7)に従い評価する。
【0048】
【数7】

【0049】
ここで、φはRCS推定に使用する角度範囲、φは周囲の極大値を探索する角度範囲を示す。
【0050】
次に、ステップ108において、ステップ107で求めた誤差E、E、Eの最小値が、所定のクライテリアδ以上の場合(NO)には、まだ収束が不十分であると判断し、ステップ103に戻り、所定のクライテリアδより小さい場合(YES)には、収束したと判断して、次のステップ109に移行する。なお、このδは、式(6)中のδと概念が同じ微小量を表し、値そのものは異なる。
【0051】
最後に、ステップ109において、制御ユニット100は、ステップ107の誤差E(j=1,2,3)が最小となるjの等価散乱係数S(y)から、式(4)に従い遠方領域のレーダ断面積(RCS)を推定する。
【0052】
上述した方法により、初期値の散乱電界として位相情報がなくても、真の等価散乱係数に近いものを得ることができ、遠方領域でのRCSを求めることができる。また、本実施の形態では、3つの測定距離で測定した散乱電界の測定値を用いたが、4つ以上の位置で測定した散乱電界に対して同様の処理を行ってもよい。
【0053】
以上のように、本実施の形態によれば、周波数が高いこと等で散乱電界の位相の測定が困難な場合にも遠方領域でのRCSを得ることができる。また、位相測定機構のない簡易な測定系、装置を実現できるという効果がある。また、直接、遠方領域でのRCSを測定する測定系と比べてコンパクトな測定系、装置を実現することができる。
【0054】
なお、図4に示すように、高精度に散乱電界強度を測定するため、被測定物1と送信アンテナ4及び受信アンテナ5間に電波吸収体9を設置し、高精度に散乱電界強度を測定できるようにしてもよい。電波吸収体9が設置されているため、地面反射などの不要波の影響を取り除くことができ、高精度に散乱電界を測定できるため、高精度に遠方領域でのRCSを求めることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】この発明の実施の形態1に係るレーダ断面積の測定装置の構成を示す斜視図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るレーダ断面積の測定装置の測定方法を説明する座標系を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るレーダ断面積の測定装置の制御ユニットの動作を示すフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態1に係るレーダ断面積の測定装置の別の構成を示す斜視図である。
【図5】従来のレーダ断面積の測定方法で定義されている遠方RCS推定用の座標系を示す図である。
【図6】従来のRCS推定方法を説明する座標系を示す図である。
【図7】従来のレーダ断面積の測定装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0056】
1 被測定物、2 回転機構、3 支持機構、4 送信アンテナ、5 受信アンテナ、6 送受信アンテナ支持機構、7 送受信アンテナ移動機構部、8 送受信アンテナ移動用レール、9 電波吸収体、100 制御ユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向において大きく、かつ垂直方向において前記水平方向に比べて小さい被測定物を水平面で回転走査させる回転機構と、
前記被測定物に電波を送信する送信アンテナと、
前記被測定物からの電波を受信する受信アンテナと、
前記被測定物から近傍領域内において前記被測定物と前記送信アンテナ及び前記受信アンテナの間の距離が異なる第1、第2及び第3の距離に前記送信アンテナ及び前記受信アンテナを水平方向に移動させる移動機構と、
前記回転機構、前記送信アンテナ、前記受信アンテナ及び前記移動機構を駆動制御して遠方領域のレーダ断面積を求める制御ユニットとを備え、
前記制御ユニットは、
前記第1、第2及び第3の距離における散乱電界の強度を散乱電界の第1、第2及び第3の振幅として測定する第1の手段と、
前記第1の距離における散乱電界の第1の位相を、初期条件として0と仮定する第2の手段と、
前記第1の手段により測定した第1の距離における散乱電界の第1の振幅と、前記第2の手段により仮定あるいは第5の手段により推定した第1の距離における散乱電界の第1の位相とから第1の等価散乱係数を求め、この第1の等価散乱係数から第2の距離における散乱電界の第2の振幅と第2の位相を推定する第3の手段と、
前記第1の手段により測定した第2の距離における散乱電界の第2の振幅と、前記第3の手段により推定した第2の距離における散乱電界の第2の位相とから第2の等価散乱係数を求め、この第2の等価散乱係数から第3の距離における散乱電界の第3の振幅と第3の位相を推定する第4の手段と、
前記第1の手段により測定した第3の距離における散乱電界の第3の振幅と、前記第4の手段により推定された第3の距離における散乱電界の第3の位相とから第3の等価散乱係数を求め、この第3の等価散乱係数から第1の距離における散乱電界の第1の振幅と第1の位相を推定する第5の手段と、
前記第3の手段から前記第5の手段までの処理の繰り返し回数が、所定の回数以下の場合には、前記第3の手段から前記第5の手段までの繰り返し処理に移行し、所定の回数より大きい場合には、第7の手段の処理に移行する第6の手段と、
前記第5の手段により推定した第1の距離における散乱電界の第1の振幅と、前記第1の手段により測定した第1の距離における散乱電界の第1の振幅との第1の誤差、前記第3の手段により推定した第2の距離における散乱電界の第2の振幅と、前記第1の手段により測定した第2の距離における散乱電界の第2の振幅との第2の誤差、及び前記第4の手段により推定した第3の距離における散乱電界の第3の振幅と、前記第1の手段により測定した第3の距離における散乱電界の第3の振幅との第3の誤差を評価する第7の手段と、
前記第7の手段により評価した第1の誤差、第2の誤差及び第3の誤差の最小値が、所定の値以上の場合には、第3の手段の処理に移行し、所定の値より小さい場合には、第9の手段の処理に移行する第8の手段と、
前記第1、第2及び第3の誤差のうち最小となる誤差に対応する、前記第1、第2及び第3の距離のいずれかに対応する等価散乱係数から遠方領域のレーダ断面積を推定する第9の手段とを有する
ことを特徴とするレーダ断面積の測定装置。
【請求項2】
前記被測定物と前記送信アンテナ及び前記受信アンテナとの間に設置した電波吸収体をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1記載のレーダ断面積の測定装置。
【請求項3】
水平方向において大きく、かつ垂直方向において前記水平方向に比べて小さい被測定物を水平面で回転走査させる回転機構と、
前記被測定物に電波を送信する送信アンテナと、
前記被測定物からの電波を受信する受信アンテナと、
前記被測定物から近傍領域内において前記被測定物と前記送信アンテナ及び前記受信アンテナの間の距離が異なる第1、第2及び第3の距離に前記送信アンテナ及び前記受信アンテナを水平方向に移動させる移動機構と、
前記回転機構、前記送信アンテナ、前記受信アンテナ及び前記移動機構を駆動制御して遠方領域のレーダ断面積を求める制御ユニットとを備えたレーダ断面積の測定装置において、
前記第1、第2及び第3の距離における散乱電界の強度を散乱電界の第1、第2及び第3の振幅として測定する第1のステップと、
前記第1の距離における散乱電界の第1の位相を、初期条件として0と仮定する第2のステップと、
前記第1のステップにより測定した第1の距離における散乱電界の第1の振幅と、前記第2のステップにより仮定あるいは第5のステップにより推定した第1の距離における散乱電界の第1の位相とから第1の等価散乱係数を求め、この第1の等価散乱係数から第2の距離における散乱電界の第2の振幅と第2の位相を推定する第3のステップと、
前記第1のステップにより測定した第2の距離における散乱電界の第2の振幅と、前記第3のステップにより推定した第2の距離における散乱電界の第2の位相とから第2の等価散乱係数を求め、この第2の等価散乱係数から第3の距離における散乱電界の第3の振幅と第3の位相を推定する第4のステップと、
前記第1のステップにより測定した第3の距離における散乱電界の第3の振幅と、前記第4のステップにより推定された第3の距離における散乱電界の第3の位相とから第3の等価散乱係数を求め、この第3の等価散乱係数から第1の距離における散乱電界の第1の振幅と第1の位相を推定する第5のステップと、
前記第3のステップから前記第5のステップまでの処理の繰り返し回数が、所定の回数以下の場合には、前記第3のステップから前記第5のステップまでの繰り返し処理に移行し、所定の回数より大きい場合には、第7のステップの処理に移行する第6のステップと、
前記第5のステップにより推定した第1の距離における散乱電界の第1の振幅と、前記第1のステップにより測定した第1の距離における散乱電界の第1の振幅との第1の誤差、前記第3のステップにより推定した第2の距離における散乱電界の第2の振幅と、前記第1のステップにより測定した第2の距離における散乱電界の第2の振幅との第2の誤差、及び前記第4のステップにより推定した第3の距離における散乱電界の第3の振幅と、前記第1のステップにより測定した第3の距離における散乱電界の第3の振幅との第3の誤差を評価する第7のステップと、
前記第7のステップにより評価した第1の誤差、第2の誤差及び第3の誤差の最小値が、所定の値以上の場合には、第3のステップの処理に移行し、所定の値より小さい場合には、第9のステップの処理に移行する第8のステップと、
前記第1、第2及び第3の誤差のうち最小となる誤差に対応する、前記第1、第2及び第3の距離のいずれかに対応する等価散乱係数から遠方領域のレーダ断面積を推定する第9のステップと
を含むことを特徴とするレーダ断面積の測定方法。
【請求項4】
水平方向において大きく、かつ垂直方向において前記水平方向に比べて小さい被測定物を水平面で回転走査させる回転機構と、
前記被測定物に電波を送信する送信アンテナと、
前記被測定物からの電波を受信する受信アンテナと、
前記被測定物から近傍領域内において前記被測定物と前記送信アンテナ及び前記受信アンテナの間の距離が異なる第1、第2及び第3の距離に前記送信アンテナ及び前記受信アンテナを水平方向に移動させる移動機構と、
前記回転機構、前記送信アンテナ、前記受信アンテナ及び前記移動機構を駆動制御して遠方領域のレーダ断面積を求める制御ユニットとを備えたレーダ断面積の測定装置において、
前記制御ユニットに、
前記第1、第2及び第3の距離における散乱電界の強度を散乱電界の第1、第2及び第3の振幅として測定する第1の手順と、
前記第1の距離における散乱電界の第1の位相を、初期条件として0と仮定する第2の手順と、
前記第1の手順により測定した第1の距離における散乱電界の第1の振幅と、前記第2の手順により仮定あるいは第5の手順により推定した第1の距離における散乱電界の第1の位相とから第1の等価散乱係数を求め、この第1の等価散乱係数から第2の距離における散乱電界の第2の振幅と第2の位相を推定する第3の手順と、
前記第1の手順により測定した第2の距離における散乱電界の第2の振幅と、前記第3の手順により推定した第2の距離における散乱電界の第2の位相とから第2の等価散乱係数を求め、この第2の等価散乱係数から第3の距離における散乱電界の第3の振幅と第3の位相を推定する第4の手順と、
前記第1の手順により測定した第3の距離における散乱電界の第3の振幅と、前記第4の手順により推定された第3の距離における散乱電界の第3の位相とから第3の等価散乱係数を求め、この第3の等価散乱係数から第1の距離における散乱電界の第1の振幅と第1の位相を推定する第5の手順と、
前記第3の手順から前記第5の手順までの処理の繰り返し回数が、所定の回数以下の場合には、前記第3の手順から前記第5の手順までの繰り返し処理に移行し、所定の回数より大きい場合には、第7の手順の処理に移行する第6の手順と、
前記第5の手順により推定した第1の距離における散乱電界の第1の振幅と、前記第1の手順により測定した第1の距離における散乱電界の第1の振幅との第1の誤差、前記第3の手順により推定した第2の距離における散乱電界の第2の振幅と、前記第1の手順により測定した第2の距離における散乱電界の第2の振幅との第2の誤差、及び前記第4の手順により推定した第3の距離における散乱電界の第3の振幅と、前記第1の手順により測定した第3の距離における散乱電界の第3の振幅との第3の誤差を評価する第7の手順と、
前記第7の手順により評価した第1の誤差、第2の誤差及び第3の誤差の最小値が、所定の値以上の場合には、第3の手順の処理に移行し、所定の値より小さい場合には、第9の手順の処理に移行する第8の手順と、
前記第1、第2及び第3の誤差のうち最小となる誤差に対応する、前記第1、第2及び第3の距離のいずれかに対応する等価散乱係数から遠方領域のレーダ断面積を推定する第9の手順と
を実行させるためのレーダ断面積の測定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−19727(P2010−19727A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181343(P2008−181343)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】