説明

レーダ用アンテナ装置

【課題】柔軟な配置を可能とする複数のアンテナからなる多面レーダシステムを構築でき、小型軽量化を実現するとともに、故障発生時にもアンテナ毎に対応可能なレーダ用アンテナ装置を提供する。
【解決手段】交流電圧源1からの交流電圧を直流電圧に変換して供給するACDCコンバータ11と、直流電圧に基づきパルス電流を生成するとともにパルス状の高周波信号の送受信を行う複数のアンテナ14,15,16とを備え、ACDCコンバータ11は、複数のアンテナの各々に電力を分配する複数のスイッチ回路4a,4b,4cを有し、複数のアンテナの各々は、パルス状の高周波信号の送受信を制御する複数のRFモジュール13と、複数のRFモジュール13に対応して設けられるとともに各々の一端が対応する前記RFモジュール13に接続され各々の他端が複数のスイッチ回路4a,4b,4cのいずれかに接続された複数のDCDCコンバータ12とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ用アンテナの多面接続が可能であり小型で信頼性の高いレーダ用アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばレーダ用アンテナ装置において電力を供給する電源装置は、パルス送出時に負荷装置(送信電力増幅器等)に発生する過大なパルス電流の影響で電源電圧に変動が生じないように、出力安定化対策が施されている。その一つに、負荷装置との距離をプラグイン等の手段によって極力短くして損失を低減すると共に、負荷装置への出力部に大容量で且つ高周波特性の優れた電解コンデンサを配置する方法がある。
【0003】
しかしながら、この様な従来の方式では電源装置と負荷装置とを近接して配置する必要があるために、そのレイアウトに制約を受けるようになり、装置全体の形状や構成に対して影響を与える。
【0004】
図6は、従来のレーダ用アンテナ装置の構成を示すものである。図6に示すように、このレーダ用アンテナ装置は、交流電圧源1と、交流電圧源1に接続された3つのアンテナ30a,30b,30cとから構成される。
【0005】
また、アンテナ30aは、パルス電源22a、インタフェース回路24a、及びn個のRFモジュール26a−1〜26a−nから構成される。アンテナ30bとアンテナ30cとは、それぞれアンテナ30aと同様の構成を有する。各アンテナは、複数(任意の数n)のRFモジュール及び対応する複数の素子アンテナにより例えばフェーズドアレイアンテナを構成する。
【0006】
パルス電源22aは、交流電圧源1により出力された交流電圧を直流電圧に変換してモジュールに必要な安定化した電圧を生成するとともに、図示されない大容量のコンデンサーバンクを有するインタフェース回路24aを介してRFモジュール26a−1〜26a−nに対しパルス電流を出力する。
【0007】
このパルス電流は、図6に示すように送信パルス幅が数μs〜百数十μsの矩形波であり、また、nの数にもよるがピーク電流は数百〜数千Aの大電流となる。したがって、各RFモジュールに入力される電圧は、大きく低下したものとなるため、パルス電源22aにおいて電圧を上げるとともに、パルス電源22a−各RFモジュール間の距離を最短にして接続する必要がある。パルス電源22aと各RFモジュールとの間の電源配線が持つインダクタンスやプラグインコネクタの接触抵抗等によって過渡的な電圧降下が生じ、各RFモジュールの特性に影響を与えるからである。
【0008】
また、パルス電源22b,22cは、パルス電源22aと同様であり、それぞれアンテナ30b,30cに設けられ、必要なパルス電流を供給する。
【0009】
特許文献1には、送受信モジュールの故障時にアンテナの運転を停止することなく交換可能であり、DC/DC電源の個数を削減し、コスト、重量、故障率を低くしたフェーズドアレイアンテナについて記載されている。
【0010】
このフェーズドアレイアンテナは、マトリクス状に配置された複数の素子アンテナ、複数の素子アンテナのそれぞれに1つずつ直結され、接続された素子アンテナに対して位相の異なる高周波電力を送受信する送受信モジュール、複数の送受信モジュールの内の複数個が接続されるとともに、接続された複数個の送受信モジュールに対して共通の電源を供給するDC/DC複合電源を備えたものである。
【0011】
このフェーズドアレイアンテナによれば、複数の送受信モジュールに対して1つのDC/DC複合電源を配置することで、電源装置の個数を減らすことができる。また、これによりアンテナ素子間隔からくる寸法制限が緩和されるという効果が得られる。
【特許文献1】特開2003−309427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、図6に示すレーダ用アンテナ装置では、供給電力の損失を低減して必要なパルス電流を確保するために、各パルス電源と各RFモジュールとを近接して配置する必要があるため、そのレイアウトに制約を与え、装置全体の形状や構成に対して影響を与えるばかりでなく、その動作特性にも直接的に影響し、高精度の信頼性に富む装置を実現することが困難となる。また、多面レーダシステムを構築する場合において、電圧降下によるレーダの性能劣化を防止するために、各アンテナにパルス電源が必要であり且つ大型のコンデンサを必要とするため、アンテナ装置が大型化するという問題点がある。
【0013】
また、特許文献1に記載のフェーズドアレイアンテナを多面レーダに適用した場合には、AC/DCコンバータが全てのレーダのアンテナに対して電力を供給することとなる。ここで、仮にレーダ1面が故障して短絡等の事故が生じた場合には、AC/DCコンバータの電圧が極端に下がり、故障したレーダ以外のレーダに対しても十分な電力供給が行われないため、結果として全てのレーダが使用不能に陥る可能性も考えられる。
【0014】
本発明は上述した従来技術の問題点を解決するもので、柔軟な配置を可能とする複数のアンテナからなる多面レーダシステムを構築でき、小型軽量化を実現するとともに、故障発生時にもアンテナ毎に対応可能なレーダ用アンテナ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るレーダ用アンテナ装置は、上記課題を解決するために、交流電源からの交流電圧を直流電圧に変換して供給するAC/DCコンバータ部と、前記AC/DCコンバータ部により供給された直流電圧に基づきパルス電流を生成するとともに前記パルス電流を使用してパルス状の高周波信号の送信を行う複数のアンテナとを備え、前記AC/DCコンバータ部は、前記複数のアンテナの各々に対する電力を分配する複数のスイッチ回路を有し、前記複数のアンテナの各々は、前記パルス状の高周波信号の送受信を制御する複数のRFモジュールと、前記複数のRFモジュールに対応して設けられるとともに各々の一端が対応する前記RFモジュールに接続され各々の他端が前記複数のスイッチ回路のいずれかに接続された複数のDC/DCコンバータとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、AC/DCコンバータ部に対して各アンテナがDC/DCコンバータを備えるため、柔軟な配置を可能とする複数のアンテナからなる多面レーダシステムを構築でき、小型軽量化を実現するとともに、故障発生時にもアンテナ毎にスイッチ回路による電力供給を停止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明のレーダ用アンテナ装置の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
最初に本発明の実施例1のレーダ用アンテナ装置の構成について説明する。図1は、本発明の実施例1のレーダ用アンテナ装置の構成を示すブロック図である。なお、本実施例において説明するレーダ用アンテナ装置は、3つのアンテナを例にとったものである。図1に示すように、本発明のレーダ用アンテナ装置は、交流電圧源1と、ACDCコンバータ11と、複数のアンテナ14,15,16とから構成される。
【0019】
交流電圧源1は、本発明の交流電源に対応し、交流電圧をACDCコンバータ11に対して出力する。
【0020】
ACDCコンバータ11は、本発明のAC/DCコンバータ部に対応し、交流電源1からの交流電圧を直流電圧に変換して供給する。具体的には、ACDCコンバータ11は、絶縁型のAC/DCコンバータであり、整流平滑回路2と、コンバータ部3と、複数のスイッチ回路4a,4b,4cからなるスイッチ回路群4とを有する。
【0021】
整流平滑回路2は、交流電圧源1により出力された交流電圧を整流して直流電圧に変換し、さらに平滑化してコンバータ部3に出力する。
【0022】
コンバータ部3は、整流平滑回路2により平滑化された直流電圧を交流電源系から絶縁された所定の電圧に変換して安定化する。また、このコンバータ部3は、後述する複数のスイッチ回路4a,4b,4cの各々に対して制御信号を出力することにより、各スイッチ回路のオン/オフを制御する。操作人は、外部操作等により予め当該制御信号を設定することができるものとし、例えばレーダのアンテナ3面全てを使う場合には、複数のスイッチ回路4a,4b,4cの全てがオン状態となるように制御信号を設定すればよい。
【0023】
スイッチ回路群4を構成する複数のスイッチ回路4a,4b,4cは、コンバータ部3により出力された制御信号に基づき、複数のアンテナ14,15,16の各々に対する電力供給を分配する。スイッチ回路群4の詳細については後述する。
【0024】
複数のアンテナ14,15,16は、ACDCコンバータ11からMm離れた位置に配置され、ACDCコンバータ11により供給された直流電圧に基づきパルス電流を生成するとともにパルス電流を使用してパルス状の高周波信号の送信を行う。本発明の特徴の1つとして、複数のアンテナ14,15,16は、ACDCコンバータからある程度(Mm)離れた位置に配置することが可能であるため、各アンテナの設置位置の許容範囲が広く、柔軟なアンテナ配置が可能であることが挙げられる。
【0025】
具体的な構成として、複数のアンテナ14,15,16の各々は、パルス状の高周波信号の送受信を制御する複数のRFモジュールと複数のDC/DCコンバータとを有する。例えば、アンテナ14は、複数(本実施例においてはn個)のRFモジュール13a−1〜13a−nと、複数(本実施例においてはn個)のDCDCコンバータ12a−1〜12a−nとを有する。アンテナ15,16も同様に、それぞれ複数のRFモジュールと複数のDC/DCコンバータとを有する。
【0026】
複数のRFモジュール13a−1〜13a−nは、パルス状の高周波信号の送受信を制御する。具体的には、複数のRFモジュール13a−1〜13a−nは、DCDCコンバータ12a−1〜12a−nにより出力されたパルス電流を使用してパルス状の高周波信号の送信を行い、あるいはパルス状の高周波信号を受信する。
【0027】
DCDCコンバータ12a−1〜12a−nは、複数のRFモジュール13a−1〜13a−nに対応して設けられるとともに、各々の一端が対応するRFモジュールに接続され各々の他端が複数のスイッチ回路4a,4b,4cのいずれかに接続される。本実施例においては、アンテナ14の有するDCDCコンバータ12a−1〜12a−nは、スイッチ回路4aに接続されている。また、アンテナ15の有するDCDCコンバータ12b−1〜12b−nは、スイッチ回路4bに接続されている。また、アンテナ16の有するDCDCコンバータ12c−1〜12c−nは、スイッチ回路4cに接続されている。
【0028】
また、本実施例においては、いずれのアンテナにおいても、搭載されたRFモジュールの数はn個であるが、必ずしも全てのアンテナのRFモジュールの数を同じにする必要は無く、任意の数でよい。
【0029】
複数のDCDCコンバータ12a−1〜12a−nの各々は、入力にパルス電流対応のコンデンサを備えてブリッジ形コンバータを構成し、ACDCコンバータ11により生成された直流電圧をRFモジュール13a−1〜13a−nに必要な電圧に変換するとともに、パルス電流に対応した電流を供給する。DCDCコンバータ12b−1〜12b−n,12c−1〜12c−nも同様である。
【0030】
ここで、スイッチ回路群4の構成について詳述する。図2は、本発明の実施例1のレーダ用アンテナ装置におけるスイッチ回路群4の詳細な構成を示すブロック図である。また、図3は、本発明の実施例1のレーダ用アンテナ装置におけるスイッチ回路群4の実装例を示す図である。なお、図2、図3におけるスイッチ回路群4は、本発明に使用されるスイッチ回路群4の一般的な構成として説明するため、1台の電源に対して切り換える負荷回路が2系統の場合を示しており、スイッチ回路を2つしか有していないが、実際にはスイッチ回路の数は負荷(アンテナ)の数に依存するものとする。したがって、図1に示すような3つのアンテナを有するレーダ用アンテナに用いられる場合には、スイッチ回路群4の有するスイッチ回路の数は3つとなり、さらに多くのアンテナを有する場合にはアンテナの数に応じたスイッチ回路を備えるものとする。また、スイッチ回路群4は、複数の電源と複数の負荷回路を接続した構成に対しても適用可能である。
【0031】
図2に示すように、スイッチ回路群4は、入力+側電極用端子(バスバー)5と、入力−側電極用端子(バスバー)6と、出力+側電極用端子(バスバー)7a,7bと、出力−側電極用端子(バスバー)8a,8bと、半導体スイッチ制御回路9a,9bと、半導体スイッチ10a,10bとから構成される。
【0032】
ここで、バスバーとは、電源供給ラインに替わって使用される細長い棒状の金属であり、放熱効果やシールド効果に優れ、低インピーダンスにより電圧ドロップも低く抑えられる。
【0033】
入力+側電極用端子(バスバー)5は、複数の半導体スイッチ10a,10bに対して共通の入力側端子であり、コンバータ部3のプラス側に接続され、コンバータ部3により出力された直流電圧が入力される。
【0034】
また、出力−側電極用端子(バスバー)8a,8bは、入力−側電極用端子(バスバー)6を介してコンバータ部3のマイナス側に接続されている。出力−側電極用端子(バスバー)8a,8bと入力−側電極用端子(バスバー)6とは、印刷基板10の−パターンを介して低インピーダンスで接続されている。
【0035】
また、出力+側電極用端子(バスバー)7a,7bは、それぞれ複数の半導体スイッチ10a,10bに接続され、出力−側電極用端子(バスバー)8a,8bとともに直流電圧を負荷17a,17bに対して供給する。
【0036】
複数の半導体スイッチ制御回路9a,9bは、本発明の制御部に対応し、複数の半導体スイッチ10a,10bに対応して設けられるとともに、外部(ここではコンバータ部3)から入力された制御信号に基づき対応する半導体スイッチのオン/オフを制御する。
【0037】
複数の半導体スイッチ10a,10bは、いずれも入力+側電極用端子(バスバー)5に印刷基板19の+パターンを介して接続されており、自己の半導体スイッチのオン/オフにより、複数の負荷17a,17b(図1においては、アンテナ14,15,16)の各々に対するACDCコンバータ11内部で変換された直流電圧の出力を分配する。
【0038】
なお、図1に示す複数のスイッチ回路4a,4b,4cの各々は、半導体スイッチ制御回路と半導体スイッチとを有する。すなわち本明細書において、1つのスイッチ回路は、例えば図2に示す半導体スイッチ制御回路9aと半導体スイッチ10aとから構成されるものとする。
【0039】
ここで、従来使用されていたスイッチ回路について簡潔に述べる。従来のスイッチ回路は、電源の出力を複数の負荷に供給する場合に、一旦端子板などで受け、リレー等の機械接点か又はSSRの様な固体化素子によりオン/オフを行っていた。このため、従来のスイッチ回路は、端子板や切り換えスイッチが大きく配線も太いため、実現するために広い実装スペースを必要としていた。また従来のスイッチ回路は、配線の加工の手間や組み込みに相当な時間を必要とし、配線を行う者の配線の技量により電圧のドロップ量が異なるといった問題や負荷電流のノイズによる誤動作の危険性が存在した。
【0040】
これに対し、本発明におけるスイッチ回路群4は、電源(コンバータ部3)の出力を接続する入力+側電極用端子(バスバー)5と電流を流したときの電圧ドロップを低く抑えられる端子(バスバー)と複数の切換用の半導体スイッチ10a,10bを印刷基板上に配置して一体化したものであり、回路の小型化と安定性向上を目的としている。
【0041】
図3に示すように、スイッチ回路群4の各部品は、印刷ユニット(印刷基板)19上に配置されている。この印刷ユニット19は、厚みのあるパターンやバスバーを使用して+側電極と−側電極とを低インピ−ダンスに構成する。また、半導体スイッチ10a,10bは、通電時の損失が発生しても放熱できる機構部品を装備しており、筐体18に取り付けられることによる空冷、あるいは筐体18に伝導することによって排熱可能な構造を有する。さらに、スイッチ回路群4における各端子(バスバー)は、銅コアやバスバーを使用して低インピーダンス化してあるのみならず、入出力線を接続するためのネジタップ等が設けてある。
【0042】
すなわち図1においては、複数のスイッチ回路4a,4b,4cの各々は、同一の印刷基板上に配線パターンにより実装され一体化したものである。スイッチ回路群4は、配線パターンによる配線レスであるため、電圧のドロップ量が配線を行う者の技量に左右されることも無く、小型で動作安定性の高い高品質のスイッチ回路となる。
【0043】
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を図1を用いて説明する。まず、交流電圧源1は、交流電圧をACDCコンバータ11に対して出力する。ACDCコンバータ11は、交流電源1からの交流電圧を直流電圧に変換し、複数のアンテナ14,15,16の各々に対して供給する。
【0044】
ACDCコンバータ11内部の動作について述べる。整流平滑回路2は、交流電圧源1により出力された交流電圧を整流して直流電圧に変換し、さらに平滑化してコンバータ部3に出力する。コンバータ部3は、整流平滑回路2により平滑化された直流電圧を交流電源系から絶縁された所定の電圧に変換して安定化する。また、このコンバータ部3は、複数のスイッチ回路4a,4b,4cの各々に対して制御信号を出力することにより、各スイッチ回路のオン/オフを制御する。
【0045】
スイッチ回路群4を構成する複数のスイッチ回路4a,4b,4cは、コンバータ部3により出力された制御信号に基づき、複数のアンテナ14,15,16の各々に電力を供給する。
【0046】
具体的には、外部(コンバータ部3)から制御信号が入力されると、図2に示す半導体スイッチ制御回路9a,9bは、半導体スイッチ10a,10bを駆動する。半導体スイッチ制御回路9a,9bは、それぞれ半導体スイッチ10a,10bとペアで個別に制御が可能である。半導体スイッチ10a,10bのオンにより、コンバータ部3から入力された電流は、入力+側電極用端子(バスバー)5を介して印刷基板19の+パターンを流れ、オン状態の半導体スイッチを通過し、その後出力+側電極用端子(バスバー)7aあるいは7bを介して負荷17aあるいは17bに流れる。
【0047】
すなわち、図1に示す本発明のスイッチ回路群4は、コンバータ部3からの制御信号により自己の有する複数の半導体スイッチのオン/オフを個別に制御するので、アンテナ14,15,16のうち任意のアンテナに電流を供給することができる。
【0048】
図4は、本実施例のレーダ用アンテナ装置における各部の電流波形を示す図である。図4の最下段に示すように、ACDCコンバータ11のスイッチ回路群4から各アンテナに対して流れる電流は、ACDCコンバータ11の最大出力電流で制限されるため急峻な大電流とはならず、複数のDCDCコンバータ12a,12b,12c内部の入力に配置された図示されないコンデンサの充電状態に応じて緩やかな波形となる。このコンデンサは、各RFモジュールが要求するパルス電流の周波数に合わせて放電するため、ACDCコンバータ11から各アンテナに対して流れる電流も当該周波数に応じた波形となる。ACDCコンバータ11の出力電圧を高くすることにより、DCDCコンバータ内部に配置されたコンデンサは、各RFモジュールへのパルス電流を供給することが可能となる。したがって、ACDCコンバータ11は、急峻なパルス大電流を供給する必要がない。なお、1DCDCコンバータあたりに必要な電流を数Aとすると、各アンテナはn個のDCDCコンバータを備えているため、図4の最下段に示すように、ACDCコンバータ11から各アンテナに対して流れる電流のピーク値は、数A×nの値となる。
【0049】
複数のアンテナ14,15,16は、ACDCコンバータ11からMm離れた位置に配置され、ACDCコンバータ11により供給された直流電圧に基づきパルス電流を生成するとともにパルス電流を使用してパルス状の高周波信号の送信を行う。
【0050】
複数のアンテナ14,15,16をACDCコンバータ11からある程度(Mm)離れた位置に配置することができる理由は、ACDCコンバータ11による急峻なパルス大電流の供給が不要だからである。ACDCコンバータ11と各アンテナとの間の配線による電圧降下は、各アンテナに実装されたDCDCコンバータ12a,12b,12cにより補正される。
【0051】
複数のDCDCコンバータ12a−1〜12a−nの各々は、ACDCコンバータ11により生成された直流電圧をRFモジュール13a−1〜13a−nに必要な電圧に変換するとともに、パルス電流に対応した電流を供給する。DCDCコンバータ12b−1〜12b−n,12c−1〜12c−nも同様である。
【0052】
各DCDCコンバータ内の入力に設けられたコンデンサを通過した後の電流波形は、図4の中段に示すように矩形波となる。この際のピーク電流は、数Aであるが、各DCDCコンバータは、電圧を下げて各RFモジュールが必要な電流値(本実施例においてはピーク値で数十A)を確保した後に各RFモジュールに対して出力する。
【0053】
大型レーダのアンテナ1面の送信出力電力は、ピーク電力で数kWにおよぶ。レーダ側RF素子の効率は約25%程度であるため、DCDCコンバータのピーク電力は数十kWとなり、ピーク電流は数千Aとなる。このため、RFモジュールをたとえば、百列に分割し、1列ごとにDCDCコンバータを実装すると1列ごとのパルス電流は数十Aとなる。したがって、1モジュールあたりのDCDCコンバータ・RFモジュール間電流は、図4の最上段に示すように数十Aのピーク値を有する矩形波となる。
【0054】
複数のRFモジュール13a−1〜13a−nは、パルス状の高周波信号の送受信を制御する。具体的には、複数のRFモジュール13a−1〜13a−nは、DCDCコンバータ12a−1〜12a−nにより出力されたパルス電流を使用してパルス状の高周波信号の送信を行い、あるいはパルス状の高周波信号を受信する。複数のRFモジュール13b−1〜13b−nとRFモジュール13c−1〜13c−nも同様である。
【0055】
さらに、各アンテナに複数のRFモジュールに対応する複数のDCDCコンバータ部を配置したことで、ACDCコンバータ11と複数のアンテナ14,15,16を離して実装することができるため、1台のACDCコンバータ11に対して数台のアンテナ(本実施例においては3台のアンテナ14,15,16)を接続し、運用することが可能となる。また、いずれかのアンテナが異常となった場合には、操作人等は、コンバータ部3出力に設けたスイッチにより、当該異常のアンテナを切り離し、他のアンテナで運用を継続することができる。
【0056】
上述のとおり、本発明の実施例1の形態に係るレーダ用アンテナ装置によれば、ACDCコンバータ11に対して各アンテナがDC/DCコンバータを備えるため、柔軟な配置を可能とする複数のアンテナからなる多面レーダシステムを構築でき、小型軽量化を実現するとともに、故障発生時にもアンテナ毎にスイッチ回路により、故障アンテナの分離ができる。
【0057】
ACDCコンバータ11と各アンテナとの間の配線による電圧降下は、各アンテナに実装されたDCDCコンバータ12a,12b,12cにより補正されるので、レーダの性能劣化を防止することができる。
【0058】
また、ACDCコンバータ11と各アンテナとは、分離し距離を置いて柔軟に配置することが可能であるため、指向性を有する各アンテナをお互いの幅域を補完し合うように設置することができる。
【0059】
したがって、1台のACDCコンバータ11に対して数台のレーダ用アンテナ(本実施例においてはアンテナ14,15,16)を接続可能な多面レーダシステムを構築することができる。
【0060】
また、いずれかのアンテナが異常となった場合には、操作人等は、コンバータ部3出力に設けたスイッチにより、当該異常のアンテナを切り離し、他のアンテナで運用を継続することができる。したがって、仮にレーダ1面が故障して短絡等の事故が生じた場合においても、ACDCコンバータ11の電圧が極端に下がり、全てのレーダが使用不能に陥るといった事態を回避することができる。またメンテナンスの際にも、任意のアンテナを切り離すことが可能である。
【0061】
また、ACDCコンバータ11内に設けたスイッチ回路群4は、大電流を必要とする複数の負荷回路(アンテナ14,15,16)に対し、スイッチ回路4a,4b,4cをオン/オフすることにより個別に電流を供給することができる。さらに、複数のスイッチ回路4a,4b,4cの各々は、同一の印刷基板19上に低インピーダンスの配線パターンにより実装され一体化したものであるため、配線の技量により電圧のドロップ量が異なるといった問題や負荷電流のノイズによる誤動作の危険性が存在せず、配線レスであり小型でありながら動作安定性の高い高品質のスイッチ回路となる。
【実施例2】
【0062】
図5は、本発明の実施例2のレーダ用アンテナ装置の構成を示すブロック図である。まず、本実施の形態の構成を説明する。なお、図5において、図1における構成要素と同一ないし均等のものは、前記と同一符号を以て示し、重複した説明を省略する。実施例1の構成と異なる点は、ACDCコンバータ11内のスイッチ回路群4の後段に電流検出部20が設けられている点である。
【0063】
電流検出部20は、複数のスイッチ回路4a,4b,4cの各々から出力された電流量を検出し、検出した電流量をスイッチ回路群4に出力する。なお、図5において、電流検出部20は、1つであるように描かれているが、必ずしも1つとする必要はない。複数のスイッチ回路4a,4b,4cのそれぞれに対応して、3つの電流検出部を設けてもよい。その場合に各電流検出部は、自己の対応するスイッチ回路の出力した電流値を検出し、当該自己の対応するスイッチ回路に対して検出した電流量を出力する。
【0064】
複数のスイッチ回路4a,4b,4cの各々は、電流検出部20により検出された電流量を判断し所定値以上の場合は、複数のアンテナ14,15,16の各々に対する電力供給を停止する。
【0065】
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。基本的には実施例1の作用と同様である。異なる点として、電流検出部20は、複数のスイッチ回路4a,4b,4cの各々から出力された電流量を検出し、検出結果をスイッチ回路群4に出力する。
【0066】
複数のスイッチ回路4a,4b,4cの各々は、各スイッチ回路が出力した電流量を電流検出部20により検出し、その値が所定値以上であるか否かを判断し、所定値以上である場合には、当該所定値以上の電流を出力しているスイッチ回路をオフにし、電力供給を停止する。いずれかのレーダ1面が故障して短絡等の事故が生じた場合には、当該短絡が生じたアンテナに対して大電流が流れるため、本実施例における複数のスイッチ回路4a,4b,4cの各々は、当該短絡を迅速に察知して、当該短絡が生じたアンテナに対する電力供給を停止する。
【0067】
なお、電流検出部20は、複数のスイッチ回路4a,4b,4cの各々から出力された電流量を検出するとともに、当該電流量が所定値以上であるか否かを判断する構成とすることもできる。この場合には、電流検出部20は、当該電流量が所定値以上である場合にのみ停止を求める旨の制御信号を出力する。複数のスイッチ回路4a,4b,4cの各々は、電流検出部20により出力された制御信号に基づき、大電流を出力しているスイッチ回路をオフにし、短絡事故が生じたアンテナに対する電力供給を停止する。
【0068】
上述のとおり、本発明の実施例2の形態に係るレーダ用アンテナ装置によれば、実施例1の効果に加え、いずれかのアンテナが故障等により短絡等の事故を生じた場合においても、迅速に短絡を察知して当該事故を生じたアンテナに対する電力供給を停止するので、ACDCコンバータ11の電圧が極端に下がり、全てのレーダが使用不能に陥るといった事態を迅速に回避することができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係るレーダ用アンテナ装置は、アンテナ用RF素子を使用した複数の大型レーダ(アンテナ)による多面レーダシステムに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施例1の形態のレーダ用アンテナ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例1の形態のレーダ用アンテナ装置におけるスイッチ回路群の詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例1の形態のレーダ用アンテナ装置におけるスイッチ回路群の実装例を示す図である。
【図4】本発明の実施例1の形態のレーダ用アンテナ装置における各部の電流波形を示す図である。
【図5】本発明の実施例2の形態のレーダ用アンテナ装置の構成を示すブロック図である。
【図6】従来のレーダ用アンテナ装置の構成を示すブロック図である。
【0071】
状況を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
1 交流電圧源
2 整流平滑回路
3 コンバータ部
4 スイッチ回路群
4a,4b,4c スイッチ回路
5 入力+側電極用端子(バスバー)
6 入力−側電極用端子(バスバー)
7a,7b 出力+側電極用端子(バスバー)
8a,8b 出力−側電極用端子(バスバー)
9a,9b 半導体スイッチ制御回路
10a,10b 半導体スイッチ
11 ACDCコンバータ
12a,12b,12c DCDCコンバータ
13a,13b,13c RFモジュール
14,15,16 アンテナ
17a,17b 負荷
18 筐体
19 印刷ユニット
20 電流検出部
22a,22b,22c パルス電源
24a,24b,24c インタフェース回路
26a,26b,26c RFモジュール
30a,30b,30c アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源からの交流電圧を直流電圧に変換して供給するAC/DCコンバータ部と、
前記AC/DCコンバータ部により供給された直流電圧に基づきパルス電流を生成するとともに前記パルス電流を使用してパルス状の高周波信号の送受信を行う複数のアンテナとを備え、
前記AC/DCコンバータ部は、前記複数のアンテナの各々に電力を分配する複数のスイッチ回路を有し、
前記複数のアンテナの各々は、
前記パルス状の高周波信号の送受信を制御する複数のRFモジュールと、
前記複数のRFモジュールに対応して設けられるとともに各々の一端が対応する前記RFモジュールに接続され各々の他端が前記複数のスイッチ回路のいずれかに接続された複数のDC/DCコンバータと、
を有することを特徴とするレーダ用アンテナ装置。
【請求項2】
前記複数のスイッチ回路の各々から出力された電流量を検出する電流検出部を備え、
前記複数のスイッチ回路の各々は、前記電流検出部により検出された電流量に基づき前記複数のアンテナの各々に対する電力供給を停止することを特徴とする請求項1記載のレーダ用アンテナ装置。
【請求項3】
前記複数のスイッチ回路の各々は、同一の印刷基板上に配線パターンにより実装され一体化したものであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のレーダ用アンテナ装置。
【請求項4】
前記複数のスイッチ回路の各々は、
前記複数のアンテナの各々に対する前記AC/DCコンバータ部内部で変換された直流電圧の出力を分配する複数の半導体スイッチと、
前記複数の半導体スイッチに対応して設けられるとともに外部から入力された制御信号に基づき対応する前記半導体スイッチのオン/オフを制御する複数の制御部と、
を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のレーダ用アンテナ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−122051(P2010−122051A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295614(P2008−295614)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】