説明

レーダ画像処理装置

【課題】干渉信号の帯域幅によらず、合成開口レーダの受信信号から干渉信号を抑圧することによって、合成開口レーダ画像の劣化を防止可能なレーダ画像処理装置を得る。
【解決手段】合成開口レーダ画像に相当する第1の空間周波数領域の信号の非干渉帯域の信号に対して、2次元超解像法により超解像画像を生成し、超解像画像に相当する第2の空間周波数領域の信号を算出する2次元超解像処理手段4と、第2の空間周波数領域の信号を所定の関数で変換し、干渉信号を抑圧する干渉信号抑圧フィルタを生成する干渉信号抑圧フィルタ生成手段5と、干渉信号抑圧フィルタにより、合成開口レーダ画像から干渉信号が抑圧された画像に相当する第3の空間周波数領域の信号を算出する抑圧後信号算出手段と、第3の空間周波数領域の信号に対して、2次元IFFT処理により干渉信号が抑圧された合成開口レーダ画像を生成する2次元IFFT手段8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、合成開口レーダ(SAR:Synthetic Aperture Radar)により得られた受信信号に基づいて、合成開口レーダ画像を再生するレーダ画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
合成開口レーダは、昼夜を問わず、また雲や雨等の天候を問わず地表面を観測し、地表面の高分解能マップを生成することができるので、人工衛星や航空機等に搭載されたレーダを用いたリモートセンシングの分野で広く利用されている。具体的には、合成開口レーダは、広帯域(主にマイクロ波帯)の送信信号を、電磁波としてパルス状に繰り返し放射し、地表面からの散乱波を受信して、受信信号を適切に合成する信号処理を経ることにより、地表面の高分解能マップを生成する。
【0003】
ここで、合成開口レーダの分解能(特に、距離方向の分解能)は、送信信号の周波数帯域幅に依存しており、周波数帯域幅が広いほど高分解能の観測が可能となる。そのため、高分解能な合成開口レーダでは、地表面の観測に広帯域の送信信号を使用する。なお、広帯域の送信信号を使用することは、時間領域について言えば、送信信号のパルス圧縮と同義である。
【0004】
一方、地表面には、各種通信施設やレーダ施設等が多数存在し、それぞれが電磁波を放射しているので、これらの電波源からの信号が、合成開口レーダの受信信号に重畳することは避けられない。このような他の電波源から放射されて受信信号に重畳した信号を、以下の説明では干渉信号と称する。また、受信信号から干渉信号を除いた所望の信号を、以下の説明では目標信号と称する。
【0005】
合成開口レーダにおける干渉信号を抑圧する方法として、フィルタを用いて干渉信号を抑圧するものが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
すなわち、非特許文献1には、干渉信号の帯域幅がそれほど広くないことを前提として、特定の周波数の干渉信号を抑圧するノッチフィルタや、干渉信号の帯域幅に合わせた帯域阻止フィルタを用いて、干渉信号が重畳した周波数帯域の受信信号を目標信号とともに完全に抑圧することにより、干渉信号を抑圧することが示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】WALTER W.GOJ, “SYNTHETIC-APERTURE RADAR AND ELECTRONIC WARFARE” Artech House. 1993
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1に開示された干渉信号の抑圧方法では、干渉信号の帯域幅がそれほど広くないことを前提としているので、干渉信号が重畳した周波数帯域の受信信号を目標信号とともに抑圧したとしても、得られる合成開口レーダ画像が大きく劣化することはない。しかしながら、干渉信号の帯域幅が広い場合に、非特許文献1に開示された方法を適用し、干渉信号が重畳した周波数帯域の受信信号を目標信号とともに抑圧すると、広い帯域幅において目標信号が抑圧されることから、干渉信号抑圧後の合成開口レーダ画像が著しく劣化するという問題がある。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、干渉信号の帯域幅によらず、合成開口レーダの受信信号から干渉信号を抑圧することによって、合成開口レーダ画像の劣化を防止することができるレーダ画像処理装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るレーダ画像処理装置は、移動可能なプラットフォームに搭載された合成開口レーダによって送受信された信号に基づいて、合成開口レーダ画像を再生するSAR画像再生手段と、合成開口レーダ画像に対して2次元FFT処理を適用し、第1の空間周波数領域の信号を算出する2次元FFT手段と、第1の空間周波数領域の信号を、外部からの干渉信号が重畳した干渉帯域の信号と干渉信号が重畳していない非干渉帯域の信号とに分離する干渉帯域・非干渉帯域分離手段と、非干渉帯域の信号に対して、2次元超解像法を適用して超解像画像を生成し、超解像画像に相当する第2の空間周波数領域の信号を算出する2次元超解像処理手段と、第2の空間周波数領域の信号を所定の関数に基づいて変換し、干渉信号を抑圧する干渉信号抑圧フィルタを生成する干渉信号抑圧フィルタ生成手段と、干渉信号抑圧フィルタを用いて、合成開口レーダ画像から、干渉信号が抑圧された画像に相当する第3の空間周波数領域の信号を算出する抑圧後信号算出手段と、第3の空間周波数領域の信号に対して2次元IFFT処理を適用し、干渉信号が抑圧された合成開口レーダ画像を生成する2次元IFFT処理手段と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係るレーダ画像処理装置によれば、2次元超解像処理手段は、合成開口レーダ画像に相当する第1の空間周波数領域の信号のうち、干渉信号が重畳していない非干渉帯域の信号に対して、2次元超解像法を適用して超解像画像を生成し、超解像画像に相当する第2の空間周波数領域の信号を算出し、干渉信号抑圧フィルタ生成手段は、第2の空間周波数領域の信号を所定の関数に基づいて変換し、干渉信号を抑圧する干渉信号抑圧フィルタを生成し、抑圧後信号算出手段は、干渉信号抑圧フィルタを用いて、合成開口レーダ画像から、干渉信号が抑圧された画像に相当する第3の空間周波数領域の信号を算出し、2次元IFFT処理手段は、第3の空間周波数領域の信号に対して2次元IFFT処理を適用し、干渉信号が抑圧された合成開口レーダ画像を生成する。
そのため、干渉信号の帯域幅によらず、合成開口レーダの受信信号から干渉信号を抑圧することによって、合成開口レーダ画像の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1に係るレーダ画像処理装置を示すブロック構成図である。
【図2】図1に示した干渉帯域・非干渉帯域分離手段の処理を示す説明図である。
【図3】図1に示した2次元超解像処理手段の処理を示す説明図である。
【図4】図1に示した干渉信号抑圧手段の詳細な構成を周辺手段とともに示すブロック構成図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係るレーダ画像処理装置を示すブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明のレーダ画像処理装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明するが、各図において同一、または相当する部分については、同一符号を付して説明する。
【0013】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係るレーダ画像処理装置を示すブロック構成図である。図1において、このレーダ画像処理装置は、SAR画像再生手段1、2次元FFT手段2、干渉帯域・非干渉帯域分離手段3、2次元超解像処理手段4、干渉信号抑圧フィルタ生成手段5、干渉信号抑圧手段6(抑圧後信号算出手段)、干渉帯域・非干渉帯域合成手段7(抑圧後信号算出手段)、2次元IFFT手段8、偽像抑圧手段9、および表示手段10を備えている。また、偽像抑圧手段9は、偽像抑圧フィルタ生成手段91および偽像抑圧フィルタ乗算手段92を有している。
【0014】
以下、上記構成のレーダ画像処理装置の各部位の機能について説明する。
SAR画像再生手段1は、移動可能なプラットフォーム(例えば、人工衛星や航空機等)に搭載された合成開口レーダ(図示せず)によって送受信された信号に基づいて、合成開口レーダ画像を再生する(例えば、地表面の高分解能マップを生成する)SAR画像再生処理を実行する。ここで、SAR画像再生処理については、例えば非特許文献2(大内和夫著、「リモートセンシングのための合成開口レーダの基礎」、第1版、東京電機大学、2004年1月20日)等に示されているので、詳細な説明を省略する。
【0015】
なお、合成開口レーダが受信した受信信号には、上述したように干渉信号が重畳しているので、SAR画像再生手段1で再生された合成開口レーダ画像は、干渉信号の影響を受けた画像となる。
2次元FFT手段2は、SAR画像再生手段1で再生された合成開口レーダ画像に対して2次元FFT(Fast Fourier Transform、高速フーリエ変換)処理を適用し、合成開口レーダ画像に相当する空間周波数領域の信号(第1の空間周波数領域の信号)を算出する。
【0016】
次に、図2を参照しながら、干渉帯域・非干渉帯域分離手段3の機能について説明する。図2は、図1に示した干渉帯域・非干渉帯域分離手段3の処理を示す説明図である。
干渉帯域・非干渉帯域分離手段3は、2次元FFT手段2で算出された空間周波数領域の信号を、干渉信号が重畳した帯域(以下、「干渉帯域」と称する)の信号と、干渉信号が重畳していない帯域(以下、「非干渉帯域」と称する)の信号とに分離して出力する。
【0017】
具体的には、まず、干渉帯域・非干渉帯域分離手段3は、2次元FFT手段2で算出された空間周波数領域の信号全体の平均電力と、ローカルな帯域内における平均電力との比率を算出する。続いて、干渉帯域・非干渉帯域分離手段3は、算出された比率が、あらかじめ設定された任意の閾値よりも大きい場合に、そのローカルな帯域を干渉帯域と判定し、上記閾値以下の場合に、そのローカルな領域を非干渉帯域と判定する。上記閾値は、例えば、上記空間周波数領域の信号全体の平均電力のα倍(αは正の実数)に設定する。次に、干渉帯域・非干渉帯域分離手段3は、非干渉帯域の信号を2次元超解像処理手段4に出力し、非干渉帯域の信号および干渉帯域の信号を干渉信号抑圧手段6にそれぞれ出力する。
【0018】
ここで、干渉帯域および非干渉帯域は、図2に示されるように、レンジ空間周波数の方向で分離されることが一般的である。したがって、干渉帯域・非干渉帯域分離手段3は、この性質を利用し、2次元FFT手段2で算出された2次元の空間周波数領域の信号を、アジマス空間周波数方向に電力平均してレンジ空間周波数方向の1次元の平均電力信号を算出し、この1次元の平均電力信号に対して、干渉帯域または非干渉帯域の判定処理を実行してもよい。なお、干渉帯域と非干渉帯域とを干渉帯域・非干渉帯域分離手段3で分離することが困難な場合には、オペレータが干渉帯域と非干渉帯域とを分離してもよい。
【0019】
次に、図3を参照しながら、2次元超解像処理手段4の機能について説明する。図3は、図1に示した2次元超解像処理手段4の処理を示す説明図である。
2次元超解像処理手段4は、干渉帯域・非干渉帯域分離手段3からの非干渉帯域の信号に対して、2次元超解像法を適用して超解像画像を生成し、この超解像画像に相当する空間周波数領域の信号(第2の空間周波数領域の信号)を、干渉信号抑圧フィルタ生成手段5および偽像抑圧フィルタ生成手段91に出力する。
【0020】
2次元超解像法としては、Capon法、MUSIC(MUltiple SIgnal Classification)法、RRMVM(Reduced Rank Minimum Variance Method)法を含む多数の方法が提案されている。これらの2次元超解像法については、例えば非特許文献3(S.R.DeGraaf, “SAR Imaging Via Modern 2-D Spectral Estimation Methods”,IEEE Trans.Image Proc.,vol.7、no.5,May 1998,pp.729-761)等に示されている。
【0021】
なお、2次元超解像処理手段4で適用される2次元超解像法について、特に限定はないが、ここでは、2次元超解像処理手段4が2次元Capon法(ただし、非特許文献3には、2次元Capon法がMVM法として示されている)を適用した場合を例に挙げて説明する。以下に、2次元Capon法の一般的な処理について、動作主体を処理手段として説明する。
【0022】
まず、処理手段は、空間周波数領域の信号に対してサブアパーチャを設定し、そのサブアパーチャ内の信号をラスタスキャンすることにより信号ベクトルを構成する。続いて、処理手段は、サブアパーチャを空間周波数領域内で1サンプルずつ移動させながら、信号ベクトルを順次構成し、構成された複数の信号ベクトルの共分散行列を算出する。次に、処理手段は、算出された共分散行列を固有値展開する。
【0023】
続いて、処理手段は、共分散行列の固有値展開によって得られた固有ベクトルを、上記ラスタスキャンの逆のプロセスによって2次元の信号に還元し、還元されたそれぞれの信号に対して2次元IFFT(Inverse Fast Fourier Transform、逆高速フーリエ変換)処理を適用する。次に、処理手段は、2次元IFFT処理によって算出された信号を、上記固有値展開によって得られた固有値の逆数で重み付けして電力平均を求めることにより、超解像画像を生成する。
【0024】
2次元超解像処理手段4が2次元Capon法を適用した場合も、2次元Capon法の処理は、上述した一般的な処理と基本的に同様の内容である。ただし、この発明の実施の形態1では、図3に示されるように、2次元超解像処理手段4が、サブアパーチャ11を設定する際に、非干渉帯域の信号のみを対象とする点に特徴がある。なお、非干渉帯域の信号全てを用いることが望ましいが、何らかの理由でそれが困難な場合には、非干渉帯域の信号の一部のみを用いてもよい。
【0025】
干渉信号抑圧フィルタ生成手段5は、2次元超解像処理手段4からの空間周波数領域の信号を、あらかじめ設定された所定の関数(基本的には、単調増加関数)に基づいて変換し、干渉信号を抑圧する目標信号保存型の干渉信号抑圧フィルタを生成する。なお、あらかじめ設定された関数の代表的なものとしては、単調増加関数の他に、対数関数や指数関数等が挙げられるが、これらの関数に限定されるものではない。
【0026】
次に、図4を参照しながら、干渉信号抑圧手段6の機能について説明する。図4は、図1に示した干渉信号抑圧手段6の詳細な構成を周辺手段とともに示すブロック構成図である。図4において、干渉信号抑圧手段6は、干渉信号2次元IFFT手段61、乗算手段62および干渉信号2次元FFT手段63を有している。なお、干渉信号抑圧手段6は、干渉帯域・非干渉帯域分離手段3からの非干渉帯域の信号をそのまま干渉帯域・非干渉帯域合成手段7に出力する。
【0027】
干渉信号2次元IFFT手段61は、干渉帯域・非干渉帯域分離手段3からの干渉帯域の信号に対して、2次元IFFT処理を適用して干渉帯域の画像を生成する。なお、干渉帯域・非干渉帯域分離手段3からの干渉帯域の信号が複数の固まりに分割される場合、例えば図2に示されるように2つの固まりに分割される場合には、干渉信号2次元IFFT手段61は、それぞれの固まり毎に2次元IFFT処理を適用する。
【0028】
乗算手段62は、干渉信号抑圧フィルタ生成手段5で生成された目標信号保存型の干渉信号抑圧フィルタを、干渉信号2次元IFFT手段61での2次元IFFT処理によって生成された干渉帯域の画像のそれぞれに乗算する。これにより、干渉信号抑圧後の干渉帯域の画像が生成される。
【0029】
ここで、乗算手段62での乗算演算は、信号のサンプル毎に実行される。そのため、干渉信号抑圧フィルタ生成手段5で生成された干渉信号抑圧フィルタと、干渉信号2次元IFFT手段61で生成された干渉帯域の画像とは、互いにサイズが等しいことが必要となる。以下、信号のサイズについて説明を加える。
【0030】
2次元超解像処理手段4で生成された超解像画像のサイズは、SAR画像再生手段1で再生された合成開口レーダ画像のサイズと一致することが望ましい。このようにすることで、2次元超解像処理手段4で生成された超解像画像に基づいて干渉信号抑圧フィルタ生成手段5で生成された干渉信号抑圧フィルタのサイズが、SAR画像再生手段1で再生された合成開口レーダ画像のサイズと等しくなる。そこで、干渉信号2次元IFFT手段61で生成された干渉帯域の画像のサイズが、SAR画像再生手段1で再生された合成開口レーダ画像のサイズと一致するように、2次元IFFT処理の前に、干渉帯域の信号にゼロ詰めしておくことが望ましい。
【0031】
干渉信号2次元FFT手段63は、乗算手段62で生成された、干渉信号抑圧フィルタによって干渉信号が抑圧された干渉帯域の画像に対して、2次元FFT処理を適用し、この画像に相当する空間周波数領域の信号を算出し、干渉信号抑圧後の干渉帯域の信号として出力する。
【0032】
干渉帯域・非干渉帯域合成手段7は、干渉帯域・非干渉帯域分離手段3からの非干渉帯域の信号と、干渉信号抑圧手段6からの干渉信号抑圧後の干渉帯域の信号とを合成する。
2次元IFFT手段8は、干渉帯域・非干渉帯域合成手段7で合成された空間周波数領域の信号(第3の空間周波数領域の信号)に対して、2次元IFFT処理を適用し、干渉信号が抑圧された合成開口レーダ画像を生成する。
【0033】
ここで、以上の2次元FFT手段2から2次元IFFT手段8までの構成により、SAR画像再生手段1で再生された合成開口レーダ画像から、干渉信号を抑圧した合成開口レーダ画像を得ることができる。したがって、少なくとも上記の構成を有していれば、干渉信号の帯域幅によらず、合成開口レーダ画像の劣化を防止することができる。
【0034】
しかしながら、干渉帯域・非干渉帯域合成手段7で合成された空間周波数領域の信号は、干渉帯域と非干渉帯域とのつなぎ目部分において、信号の不連続性が生じている。そのため、2次元IFFT手段8によって、干渉帯域・非干渉帯域合成手段7で合成された空間周波数領域の信号に2次元IFFT処理を適用して生成された合成開口レーダ画像において、信号の不連続性に起因する偽像が発生する恐れがある。そこで、この偽像を抑圧することが望ましい。
【0035】
以下、偽像抑圧手段9を用いて偽像を抑圧する処理について説明する。
偽像抑圧手段9は、上述したように、偽像抑圧フィルタ生成手段91および偽像抑圧フィルタ乗算手段92を有している。
【0036】
偽像抑圧フィルタ生成手段91は、2次元超解像処理手段4で生成された超解像画像に基づいて、偽像を抑圧するための偽像抑圧フィルタを生成する。具体的には、偽像抑圧フィルタ生成手段91は、干渉信号抑圧フィルタ生成手段5と同様に、2次元超解像処理手段4からの空間周波数領域の信号を、あらかじめ設定された関数(基本的には、単調増加関数)に基づいて変換し、偽像抑圧フィルタを生成する。なお、あらかじめ設定された関数の代表的なものとしては、単調増加関数の他に、対数関数や指数関数等が挙げられるが、これらの関数に限定されるものではない。
【0037】
偽像抑圧フィルタ乗算手段92は、偽像抑圧フィルタ生成手段91で生成された偽像抑圧フィルタを、2次元IFFT手段8での2次元IFFT処理によって生成された干渉信号が抑圧された合成開口レーダ画像に乗算する。この処理は、2次元IFFT手段8で生成された合成開口レーダ画像と、偽像抑圧フィルタとを画像毎に乗算する処理である。これにより、合成開口レーダ画像から、偽像が抑圧された画像が生成される。
【0038】
なお、表示手段10は、偽像抑圧フィルタ乗算手段92で生成された、合成開口レーダの受信信号から干渉信号が抑圧され、かつ偽像が抑圧された合成開口レーダ画像を表示する。
【0039】
以上のように、実施の形態1によれば、2次元超解像処理手段は、合成開口レーダ画像に相当する第1の空間周波数領域の信号のうち、干渉信号が重畳していない非干渉帯域の信号に対して、2次元超解像法を適用して超解像画像を生成し、超解像画像に相当する第2の空間周波数領域の信号を算出し、干渉信号抑圧フィルタ生成手段は、第2の空間周波数領域の信号を所定の関数に基づいて変換し、干渉信号を抑圧する干渉信号抑圧フィルタを生成し、抑圧後信号算出手段は、干渉信号抑圧フィルタを用いて、合成開口レーダ画像から、干渉信号が抑圧された画像に相当する第3の空間周波数領域の信号を算出し、2次元IFFT処理手段は、第3の空間周波数領域の信号に対して2次元IFFT処理を適用し、干渉信号が抑圧された合成開口レーダ画像を生成する。
そのため、干渉信号の帯域幅によらず、合成開口レーダの受信信号から干渉信号を抑圧することによって、合成開口レーダ画像の劣化を防止することができる。
【0040】
また、偽像抑圧手段は、第2の空間周波数領域の信号を所定の関数に基づいて変換し、偽像を抑圧する偽像抑圧フィルタを生成する偽像抑圧フィルタ生成手段と、偽像抑圧フィルタを、干渉信号が抑圧された合成開口レーダ画像に乗算する偽像抑圧フィルタ乗算手段とを有している。
そのため、干渉信号が抑圧された合成開口レーダ画像において発生する偽像を抑圧することができる。
【0041】
実施の形態2.
図5は、この発明の実施の形態2に係るレーダ画像処理装置を示すブロック構成図である。図5において、このレーダ画像処理装置は、図1に示した干渉信号抑圧手段6および干渉帯域・非干渉帯域合成手段7に代えて、SAR原画像利用型干渉信号抑圧手段21(抑圧後信号算出手段)および非干渉帯域置換手段22(抑圧後信号算出手段)と備えている。
【0042】
なお、この発明の実施の形態2において、SAR画像再生手段1は、再生した合成開口レーダ画像を、2次元FFT手段2に出力するとともにSAR原画像利用型干渉信号抑圧手段21に出力する。また、干渉帯域・非干渉帯域分離手段3は、非干渉帯域の信号を2次元超解像処理手段4に出力し、非干渉帯域の信号および干渉帯域の信号を非干渉帯域置換手段22にそれぞれ出力する。
【0043】
SAR原画像利用型干渉信号抑圧手段21は、干渉信号抑圧フィルタ生成手段5で生成された目標信号保存型の干渉信号抑圧フィルタを、SAR画像再生手段1で再生された合成開口レーダ画像に乗算する。これにより、合成開口レーダ画像から、干渉信号が抑圧された画像(以下、「干渉信号抑圧後のSAR原画像」と称する)が生成される。
【0044】
まず、非干渉帯域置換手段22は、SAR原画像利用型干渉信号抑圧手段21で生成された、干渉信号抑圧フィルタによって干渉信号が抑圧された干渉信号抑圧後のSAR原画像に対して、2次元FFT処理を適用し、この画像に相当する空間周波数領域の信号(第4の空間周波数領域の信号)を算出する。続いて、非干渉帯域置換手段22は、算出された空間周波数領域の信号のうち、干渉帯域・非干渉帯域分離手段3によって非干渉帯域と判定された部分を、干渉帯域・非干渉帯域分離手段3からの非干渉帯域の信号で置換して、空間周波数領域の信号(第3の空間周波数領域の信号)を2次元IFFT手段8に出力する。
【0045】
以上のように、実施の形態2によれば、抑圧後信号算出手段は、干渉信号抑圧フィルタを、合成開口レーダ画像に乗算し、干渉信号抑圧後のSAR原画像を生成するSAR原画像利用型干渉信号抑圧手段と、干渉信号抑圧後のSAR原画像に対して2次元FFT処理を適用し、干渉信号抑圧後のSAR原画像に相当する第4の空間周波数領域の信号を算出するとともに、第4の空間周波数領域の信号のうち、干渉帯域・非干渉帯域分離手段によって非干渉帯域と判定された部分を、非干渉帯域の信号で置換して、第3の空間周波数領域の信号を算出する非干渉帯域置換手段とを有している。
そのため、干渉信号抑圧フィルタを、合成開口レーダ画像に一括して適用することにより、処理の構成を簡略化することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 SAR画像再生手段、2 2次元FFT手段、3 干渉帯域・非干渉帯域分離手段、4 2次元超解像処理手段、5 干渉信号抑圧フィルタ生成手段、6 干渉信号抑圧手段、7 干渉帯域・非干渉帯域合成手段、8 2次元IFFT手段、9 偽像抑圧手段、10 表示手段、21 SAR原画像利用型干渉信号抑圧手段、22 非干渉帯域置換手段、61 干渉信号2次元IFFT手段、62 乗算手段、63 干渉信号2次元FFT手段、91 偽像抑圧フィルタ生成手段、92 偽像抑圧フィルタ乗算手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能なプラットフォームに搭載された合成開口レーダによって送受信された信号に基づいて、合成開口レーダ画像を再生するSAR画像再生手段と、
前記合成開口レーダ画像に対して2次元FFT処理を適用し、第1の空間周波数領域の信号を算出する2次元FFT手段と、
前記第1の空間周波数領域の信号を、外部からの干渉信号が重畳した干渉帯域の信号と前記干渉信号が重畳していない非干渉帯域の信号とに分離する干渉帯域・非干渉帯域分離手段と、
前記非干渉帯域の信号に対して、2次元超解像法を適用して超解像画像を生成し、前記超解像画像に相当する第2の空間周波数領域の信号を算出する2次元超解像処理手段と、
前記第2の空間周波数領域の信号を所定の関数に基づいて変換し、前記干渉信号を抑圧する干渉信号抑圧フィルタを生成する干渉信号抑圧フィルタ生成手段と、
前記干渉信号抑圧フィルタを用いて、前記合成開口レーダ画像から、前記干渉信号が抑圧された画像に相当する第3の空間周波数領域の信号を算出する抑圧後信号算出手段と、
前記第3の空間周波数領域の信号に対して2次元IFFT処理を適用し、前記干渉信号が抑圧された合成開口レーダ画像を生成する2次元IFFT処理手段と、
を備えたことを特徴とするレーダ画像処理装置。
【請求項2】
前記抑圧後信号算出手段は、
前記干渉帯域の信号に対して前記干渉信号抑圧フィルタを適用し、干渉信号抑圧後の前記干渉帯域の信号を算出する干渉信号抑圧手段と、
前記非干渉帯域の信号と、前記干渉信号抑圧後の前記干渉帯域の信号とを合成し、前記第3の空間周波数領域の信号を算出する干渉帯域・非干渉帯域合成手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載のレーダ画像処理装置。
【請求項3】
前記干渉信号抑圧手段は、
前記干渉帯域の信号に対して、2次元IFFT処理を適用して干渉帯域の画像を生成する干渉信号2次元IFFT手段と、
前記干渉信号抑圧フィルタを、前記干渉帯域の画像に乗算し、干渉信号抑圧後の前記干渉帯域の画像を生成する乗算手段と、
前記干渉信号抑圧後の前記干渉帯域の画像に対して2次元FFT処理を適用し、前記干渉信号抑圧後の前記干渉帯域の信号を算出する干渉信号2次元FFT手段と、
を含むことを特徴とする請求項2に記載のレーダ画像処理装置。
【請求項4】
前記抑圧後信号算出手段は、
前記干渉信号抑圧フィルタを、前記合成開口レーダ画像に乗算し、干渉信号抑圧後のSAR原画像を生成するSAR原画像利用型干渉信号抑圧手段と、
前記干渉信号抑圧後のSAR原画像に対して2次元FFT処理を適用し、前記干渉信号抑圧後のSAR原画像に相当する第4の空間周波数領域の信号を算出するとともに、前記第4の空間周波数領域の信号のうち、前記干渉帯域・非干渉帯域分離手段によって前記非干渉帯域と判定された部分を、前記非干渉帯域の信号で置換して、前記第3の空間周波数領域の信号を算出する非干渉帯域置換手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載のレーダ画像処理装置。
【請求項5】
前記干渉信号が抑圧された合成開口レーダ画像において発生する偽像を抑圧する偽像抑圧手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1から請求項4までの何れか1項に記載のレーダ画像処理装置。
【請求項6】
前記偽像抑圧手段は、
前記第2の空間周波数領域の信号を所定の関数に基づいて変換し、前記偽像を抑圧する偽像抑圧フィルタを生成する偽像抑圧フィルタ生成手段と、
前記偽像抑圧フィルタを、前記干渉信号が抑圧された合成開口レーダ画像に乗算する偽像抑圧フィルタ乗算手段と、
を有することを特徴とする請求項5に記載のレーダ画像処理装置。
【請求項7】
前記干渉帯域・非干渉帯域分離手段は、前記第1の空間周波数領域の信号全体の平均電力と、ローカルな帯域内における平均電力との比率を算出し、前記比率が、あらかじめ設定された任意の閾値よりも大きい場合に、前記ローカルな帯域を干渉帯域と判定し、前記閾値以下の場合に、前記ローカルな帯域を非干渉帯域と判定する
ことを特徴とする請求項1から請求項6までの何れか1項に記載のレーダ画像処理装置。
【請求項8】
前記干渉帯域・非干渉帯域分離手段は、2次元の前記第1の空間周波数領域の信号を、アジマス空間周波数方向に電力平均してレンジ空間周波数方向の1次元の平均電力信号を算出し、前記1次元の平均電力信号に対して、干渉帯域または非干渉帯域の判定処理を適用する
ことを特徴とする請求項7に記載のレーダ画像処理装置。
【請求項9】
前記2次元超解像処理手段は、前記2次元超解像法として2次元Capon法を適用する
ことを特徴とする請求項1から請求項8までの何れか1項に記載のレーダ画像処理装置。
【請求項10】
前記2次元超解像処理手段は、前記2次元超解像法として2次元MUSIC法を適用する
ことを特徴とする請求項1から請求項8までの何れか1項に記載のレーダ画像処理装置。
【請求項11】
前記2次元超解像処理手段は、前記2次元超解像法として2次元RRMVM法を適用する
ことを特徴とする請求項1から請求項8までの何れか1項に記載のレーダ画像処理装置。
【請求項12】
前記干渉信号抑圧フィルタ生成手段は、前記第2の空間周波数領域の信号を単調増加関数で変換し、前記干渉信号抑圧フィルタを生成する
ことを特徴とする請求項1から請求項11までの何れか1項に記載のレーダ画像処理装置。
【請求項13】
前記干渉信号抑圧フィルタ生成手段は、前記第2の空間周波数領域の信号を対数関数または指数関数で変換し、前記干渉信号抑圧フィルタを生成する
ことを特徴とする請求項1から請求項11までの何れか1項に記載のレーダ画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−208974(P2011−208974A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74476(P2010−74476)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】