説明

レーダ装置及びコンピュータプログラム

【課題】側方対象物の誤検知を防ぐことができるレーダ装置を提供する。
【解決手段】電波を送信する送信アンテナ14と、送信された電波が対象物により反射された電波を受信する複数の受信アンテナ15と、受信アンテナ15で受信された各受信信号と送信アンテナ14で送信した送信信号とを混合して受信アンテナ15毎にビート信号を生成するビート信号生成部と、各ビート信号の信号強度に、受信アンテナ15毎に関係付けられた所定の重みをかけ、ビート信号の信号強度を変更する重み付け処理部17と、重み付け処理部17により信号強度が変更されたビート信号に基づいて、対象物の方位を検出する方位検出部19と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、目標物体と自車との距離、相対速度および方向を計測できるレーダには、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)レーダやパルスレーダ等の各種のレーダ方式がある。この中でFMCWレーダ方式において、デジタルビームフォーミングが良く用いられている。
【0003】
デジタルビームフォーミングとは、アレーアンテナで受信した受信信号から、デジタル信号処理によって複数のアンテナビームを形成する処理である。このデジタルビームフォーミングは、ソフトウェアによってアンテナのビームを電子的に制御するため、柔軟で複雑なアンテナ指向性制御が行える。
【0004】
車載レーダは、このデジタルビームフォーミングにより、所望の方向に指向性を持たせることで障害物を検知する(例えば、特許文献1参照)。所望の方向に指向性を持たせるには、デジタルビームフォーミングする際に、n個(nは正の整数)のアンテナが受信する受信信号に対して、それぞれ重み付けをすることで所望の特性を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−275840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術においては、複数のアンテナからの受信信号を切替器で切り替えて、1個の受信機で受信しているため、受信信号毎に重み付けを付与されていなかった。
【0007】
図14は、従来のデジタルビームフォーミングパターン特性を説明するための図である。図14(a)は、各アンテナで受信された信号の強度を示した図である。図14(b)は、デジタルビームフォーミングされたビームの水平方向における角度の広がりを示した図である。ここで、水平角度とは、地面に水平な面における受信波の到来方向を示し、基準となる0度は車載レーダの受信アンテナの方向を示す。
【0008】
図14(a)に示されるように、各アンテナANT(iは1からnまでの整数)で受信した受信信号は、全て最大受信強度がLantである受信強度パターン140を有している。
上述の通り、従来、複数のアンテナからの受信信号に対して、それぞれ重み付けがされることなく、車載レーダの信号処理部は、全てのアンテナからの受信信号をそのままデジタルビームフォーミングしていた。
【0009】
その結果、車載レーダの信号処理部は、図14(b)に示すようなデジタルビームフォーミングによる受信強度パターンを形成する。図14(b)において、デジタルビームフォーミングによる受信強度パターンは、メインローブ141と、サイドローブ142と、サイドローブ143からなる。
【0010】
ところが、サイドローブ142またはサイドローブ143の受信強度は、検知閾値よりも大きいので、対象物を検知できるほど十分に大きい。それゆえ、車載レーダの信号処理部は、サイドローブ142またはサイドローブ143の検知範囲に存在する側方対象物を、自車両の走行に障害とならないにも関わらず、誤って検知してしまうという問題がある。
【0011】
そこで本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、側方対象物の誤検知を防ぐことができるレーダ装置及びコンピュータプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[1]上記の課題を解決するため、本発明の一態様であるレーダ装置は、電波を送信する送信アンテナと、前記送信された電波が対象物により反射された電波を受信する複数の受信アンテナと、前記受信アンテナで受信された各受信信号と前記送信アンテナで送信した送信信号とを混合して前記受信アンテナ毎にビート信号を生成するビート信号生成部と、前記各ビート信号の信号強度に、前記受信アンテナ毎に関係付けられた所定の重みをかけ、前記ビート信号の信号強度を変更する重み付け処理部と、前記重み付け処理部により信号強度が変更されたビート信号に基づいて、前記対象物の方位を検出する方位検出部と、を備えることを特徴とする。
上記レーダ装置によれば、ビート信号毎に、受信アンテナ毎に関係付けられた所定の重みをかけるので、受信アンテナのサイドローブを下げ、サイドローブによる検知範囲を狭くすることができる。これによって、側方対象物の誤検知を防ぐことができる。
【0013】
[2]上記[1]記載のレーダ装置において、前記重み付け処理部は、前記ビート信号の周波数が所定の周波数よりも低いときに、前記重みを小さくすることを特徴とする。
これにより、ビート信号の周波数が所定の周波数よりも低いときに、重みを小さくするので、対象物が所定の距離よりも近いときに、サイドローブによる検知範囲を狭くすることができる。これによって、近距離に存在する側方対象物の誤検知を減らすことができる。
【0014】
[3]上記[1]または[2]に記載のレーダ装置において、前記重み付け処理部は、前記ビート信号の周波数が所定の周波数よりも低いときに、前記受信アンテナの位置が端になるほど、該受信アンテナに関係付けられた前記重みを小さくすることを特徴とする。
これにより、受信アンテナの位置が端になるほど、該受信アンテナに関係付けられた重みが小さくなるので、受信アンテナのサイドローブによる検知範囲を狭くすることができる。
【0015】
[4]上記[2]または[3]に記載のレーダ装置において、前記所定の周波数は前記受信アンテナの位置が端になるほど高く、前記重みの周波数に対する変化量は前記受信アンテナの位置によらず一定であることを特徴とする。
これにより、前記重みの周波数に対する変化量が一定であり、受信アンテナの位置が端になるほど所定の周波数が高いので、ビート信号の周波数が変化しても受信アンテナの位置が端になるほど、重みを小さくすることができる。これによって、受信アンテナのサイドローブによる検知範囲を狭くすることができる。
【0016】
[5]上記[2]または[3]に記載のレーダ装置において、前記重みの周波数に対する変化量は、前記受信アンテナの位置が端になるほど大きいことを特徴とする。
これにより、受信アンテナの位置が端になるほど、前記重みの周波数に対する変化量が大きくなるので、所定の周波数よりも低い範囲においては、周波数が変化したとき受信アンテナの位置が端になるほど、重みを小さくすることができる。これによって、受信アンテナのサイドローブによる検知範囲を狭くすることができる。また、受信アンテナのサイドローブによる検知範囲を柔軟に設定することができる。
【0017】
[6]上記[1]から[5]のいずれかに記載のレーダ装置において、前記重み付け処理部は、前記受信アンテナ毎に前記重みと周波数の関係が定められたフィルタを備え、前記各フィルタは、前記各ビート信号の信号強度を、該ビート信号の信号強度と該ビート信号の周波数に応じた重みとの積に変更することを特徴とする。
これにより、ハイパスフィルタにより、ビート信号毎に、それぞれのビート信号の周波数に応じた重みをかけることができるので、所定の周波数よりも低い範囲においては、周波数が変化しても受信アンテナの位置が端になるほど、重みを小さくすることができる。これによって、受信アンテナのサイドローブによる検知範囲を狭くすることができる。
【0018】
[7]上記[1]から[5]のいずれかに記載のレーダ装置において、前記重み付け処理部は、それぞれの前記ビート信号に関係付けられた重みを記憶する記憶部と、前記各ビート信号をフーリエ変換するフーリエ変換部と、前記ビート信号毎に、それぞれの前記ビート信号に関係付けられた前記重みと、前記フーリエ変換部によりフーリエ変換された信号との積を算出する重み乗算部と、を備えることを特徴とする。
これにより、デジタル信号処理によって、ビート信号毎に、そのビート信号に対応した重みと、そのビート信号から生成したフーリエ変換結果との積を算出することができるので、所定の周波数よりも低い範囲においては、周波数が変化しても受信アンテナの位置が端になるほど、重みを小さくすることができる。これによって、受信アンテナのサイドローブによる検知範囲を狭くすることができる。
【0019】
[8]上記の課題を解決するため、本発明の一態様であるコンピュータプログラムは、複数の受信アンテナで受信された各受信信号と送信アンテナで送信した送信信号とを混合し、前記受信アンテナ毎にビート信号を生成する第1のステップと、前記各ビート信号の信号強度に、前記受信アンテナ毎に関係付けられた所定の重みをかけ、前記ビート信号の信号強度を変更する第2のステップと、前記第2のステップにより信号強度が変更されたビート信号に基づいて、前記対象物の方位を検出する第3のステップと、をコンピュータに実行させる。
これにより、ビート信号毎に、受信アンテナ毎に関係付けられた所定の重みをかけるので、受信アンテナのサイドローブを下げ、サイドローブによる検知範囲を狭くすることができる。これによって、側方対象物の誤検知を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、側方対象物の誤検知を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態によるレーダ装置のブロック構成図である。
【図2】本発明の第1の実施例におけるレーダ装置のブロック構成図である。
【図3】対象物が近距離にあるときと、対象物が遠距離にあるときのレーダ装置の検知範囲を説明するための模式図である。
【図4】ハイパスフィルタ部のハイパスフィルタ特性1を説明するための図である。
【図5】各ハイパスフィルタが図4(a)に示すフィルタ特性を有する場合の、デジタルビームフォーミングパターン特性を説明するための図である。
【図6】ビート信号の周波数がfであるときの、デジタルビームフォーミングパターン特性を説明するための図である。
【図7】ビート信号の周波数がfであるときの、デジタルビームフォーミングパターン特性を説明するための図である。
【図8】ハイパスフィルタ部のハイパスフィルタ特性2を説明するための図である。
【図9】ビート信号の周波数がfであるときの、デジタルビームフォーミングパターン特性を説明するための図である。
【図10】ビート信号の周波数がfであるときの、デジタルビームフォーミングパターン特性を説明するための図である。
【図11】本発明の第1の実施例における方位検出のフローチャートを示した図である。
【図12】本発明の第2の実施例における重み付け処理部のブロック構成図である。
【図13】本発明の第2の実施例における方位検出のフローチャートを示した図である。
【図14】従来のデジタルビームフォーミングパターン特性を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態によるレーダ装置のブロック構成図である。レーダ装置10は、送信制御部11と、送信波生成部12と、送信部13と、送信アンテナ14と、受信アンテナ15と、ビート信号生成部16と、重み付け処理部17と、DBF処理部18と、方位検出部19と、を用いて構成される。
【0023】
送信制御部11は、送信波生成部12を制御する制御信号を生成する処理部である。送信制御部11は、制御信号を生成し、その制御信号を送信波生成部12へ供給する。
送信波生成部12は、送信信号を生成する処理部である。送信波生成部12は、送信制御部11から供給された制御信号を受け取る。そして、送信波生成部12は、その制御信号に基づいて、送信信号を生成する。次に、送信波生成部12は、その送信信号を送信部13と、ビート信号生成部16とへ供給する。
【0024】
送信部13は、送信波生成部12から供給された送信信号を増幅する処理部である。送信部13は、送信波生成部12から供給された送信信号を受け取る。そして、送信部13は、その送信信号を所定の信号強度まで増幅する。送信部13は、増幅された送信信号を送信アンテナへ供給する。
送信アンテナ14は、その増幅された送信信号を送信する処理部である。送信部13から供給された増幅された送信信号を受け取る。そして、送信アンテナ14は、その増幅された送信信号を送信波として空気中へ送信する。
【0025】
受信アンテナ15は、n個(nは正の整数)のアンテナである。各受信アンテナ15は、送信波が対象物に反射した反射波を受信して、それぞれの受信信号をビート信号生成部16へ供給する。
ビート信号生成部16は、各受信アンテナ15から供給された受信信号と、送信波生成部12から供給された送信信号とを受け取る。ビート信号生成部16は、各受信信号を増幅し、増幅した受信信号を生成する。また、ビート信号生成部16は、送信信号を増幅し、増幅した送信信号を生成する。
【0026】
ビート信号生成部16は、増幅した各受信信号と、増幅した送信信号とをミキシングして、n個のビート信号を生成する。ビート信号生成部16は、生成したn個のビート信号を重み付け処理部17へ供給する。
【0027】
重み付け処理部17は、ビート信号生成部16から供給されたn個のビート信号を受け取る。そして、重み付け処理部17は、そのn個のビート信号それぞれのビート信号の周波数に応じて決まる重みを掛け、重み付けしたビート信号を生成する。ここで、ビート信号の周波数は、対象物との距離に比例するので、重みは、対象物との距離に応じて決定される。
そして、重み付け処理部17は、それらのn個の重み付けしたビート信号を周波数で多重化し、1つの多重化信号を生成する。次に、重み付け処理部17は、その多重化信号をDBF処理部18へ供給する。
【0028】
DBF処理部18は、重み付け処理部17から供給された多重化信号を受け取る。DBF処理部18は、その多重化信号を各アンテナに対応した信号に分離する。DBF処理部18は、各アンテナに対応した信号を時間軸でフーリエ変換して、フーリエ変換結果である複素データを生成する。
【0029】
DBF処理部18は、時間軸でフーリエ変換された複素データを、更にアンテナの配列方向にフーリエ変換(空間軸フーリエ変換)する。そして、DBF処理部18は、角度分解能に対応した角度チャネル毎のスペクトルの強度を示す空間複素数データを算出し、ビート周波数毎に方位検出部19に供給する。
【0030】
方位検出部19は、DBF処理部18から供給された空間複素数データを受け取る。そして、方位検出部19は、算出されたビート周波数毎の空間複素数データの値の大きさのうち、一番大きな値を取る角度φを対象物の方位として検出する。次に、方位検出部19は、その対象物の方位を不図示の外部装置へ供給する。
【0031】
続いて、本発明の第1の実施例について説明する。本発明の第1実施例では、図1に示したレーダ装置10の重み付け処理部17を、ハードウェアで実現する構成である。
図2は、本発明の第1の実施例におけるレーダ装置20のブロック構成図である。レーダ装置20の送信波生成部12は、DAC(D/Aコンバータ)21と、増幅器22と、電圧制御発振器23と、ローカル増幅器24と、分岐回路25とを用いて構成されている。
DAC21は、送信制御部11から供給された制御信号を受け取る。DAC21は、受け取った制御信号をアナログの制御信号に変換する。DAC21は、そのアナログの制御信号を増幅器22へ供給する。
【0032】
増幅器22は、DAC21から供給されたアナログの制御信号を受け取る。増幅器22は、そのアナログの制御信号を所定の増幅率で増幅し、増幅信号を生成する。増幅器22は、その増幅信号を制御電圧として電圧制御発振器23へ供給する。
電圧制御発振器23は、増幅器22から供給された制御電圧を受け取る。電圧制御発振器23は、供給された制御電圧を用いて、ミリ波帯域の三角波信号を生成する。電圧制御発振器23は、その三角波信号をローカル増幅器24へ供給する。
【0033】
ローカル増幅器24は、電圧制御発振器23から供給された三角波信号を受け取る。ローカル増幅器24は、三角波信号を所定の増幅率で増幅し、送信信号を生成する。ローカル増幅器24は、送信信号を分岐回路25へ供給する。
分岐回路25は、ローカル増幅器24から送信信号を受け取る。分岐回路25は、その増幅された三角波信号を送信部13の増幅器26と、ビート信号生成部16のn個の増幅器35(iは1からnまでの整数)へ供給する。
【0034】
送信部13は、増幅器26を用いて構成されている。増幅器26は、分岐回路25から供給された送信信号を受け取る。増幅器26は、その送信信号を所定の信号強度まで増幅し、増幅した送信信号を生成する。増幅器26は、その増幅した送信信号を送信アンテナ14へ供給する。
送信アンテナ14は、送信部13から供給された増幅した送信信号を受け取る。送信アンテナ14は、その増幅した送信信号を送信波として空気中へ送信する。
【0035】
受信アンテナ15は、n個の受信アンテナ31(iは1からnまでの整数)を用いて構成されている。各受信アンテナ31は、送信波が対象物によって反射された反射波を受信信号として受信する。そして、各受信アンテナ31は、その受信信号をそれぞれビート信号生成部16の各増幅器33へ供給する。
【0036】
ビート信号生成部16は、n個の増幅器33(iは1からnまでの整数)と、n個のミキサー34(iは1からnまでの整数)と、n個の増幅器35(iは1からnまでの整数)とを用いて構成されている。
各増幅器33は、それぞれ各受信アンテナ31から供給された受信信号を受け取る。各増幅器33は、その受信信号を増幅し、増幅した受信信号をそれぞれインデックスiが同じ各ミキサー34へ供給する。
【0037】
各増幅器35は、分岐回路25から供給された送信信号を受け取る。各増幅器35は、その送信信号を所定の増幅率で増幅し、増幅した送信信号を生成する。各増幅器35は、その増幅した送信信号をそれぞれインデックスiが同じミキサー34へ供給する。
各ミキサー34は、インデックスiが同じ増幅器33から供給された増幅した受信信号と、インデックスiが同じ増幅器35から供給された増幅した送信信号とを受け取る。
【0038】
各ミキサー34は、その増幅した受信信号とその増幅した送信信号とを混合して、ビート信号を生成する。各ミキサー34は、そのビート信号をそれぞれインデックスiが同じHPF(ハイパスフィルタ)36(iは1からnまでの整数)へ供給する。
【0039】
重み付け処理部17は、n個のHPF(ハイパスフィルタ)36(iは1からnまでの整数)と、マルチプレクサ37と、ADC(A/Dコンバータ)38と、を用いて構成されている。
各HPF(ハイパスフィルタ)36は、インデックスi毎に、各々異なる周波数特性を持ったハイパスフィルタである。
【0040】
各HPF(ハイパスフィルタ)36は、インデックスiが同じミキサー34から供給されたビート信号を受け取る。各HPF(ハイパスフィルタ)36は、受け取ったビート信号に対して、そのビート信号の周波数によって決まる利得(重み)を乗じ、フィルタされた信号を生成する。これによって、ビート信号の周波数に応じて、フィルタされた信号の受信強度が設定される。
各HPF(ハイパスフィルタ)36は、そのフィルタされたビート信号(Beat、iは1からnまでの整数)をマルチプレクサ37へ供給する。
【0041】
マルチプレクサ37は、n個のHPF(ハイパスフィルタ)36から供給されたn個のフィルタされたビート信号Beatを受け取る。マルチプレクサ37は、そのフィルタされたビート信号Beatをそれぞれの周波数帯域毎に信号をのせて(周波数多重化し)、1つの多重化信号Boutを生成する。そして、マルチプレクサ37は、その多重化信号をADC(A/Dコンバータ)38へ供給する。
【0042】
また、マルチプレクサ37は、周波数多重化した際に、フィルタされたビート信号Beatが、低い周波帯域から数えて何番目の周波帯域になるのかという情報(以下、周波数帯域番号と称する)を算出する。そして、マルチプレクサ37は、その周波数帯域番号をDBF処理部18へ供給する。
【0043】
ADC(A/Dコンバータ)38は、マルチプレクサ37から供給された多重化信号を受け取る。ADC(A/Dコンバータ)38は、その多重化信号をデジタル信号へ変換する。ADC(A/Dコンバータ)38は、そのデジタル信号をDBF処理部18へ供給する。
【0044】
DBF処理部18は、マルチプレクサ37から供給された周波数帯域番号と、ADC(A/Dコンバータ)38から供給されたデジタル信号とを受け取る。DBF処理部18は、周波数帯域番号に基づいて、そのデジタル信号を各アンテナに対応した信号に分ける。DBF処理部18は、デジタル信号処理で各アンテナに対応した信号を、時間軸でフーリエ変換し、時間軸でフーリエ変換された複素データを生成する。
【0045】
DBF処理部18は、時間軸でフーリエ変換された複素データを、アンテナの配列方向にさらにフーリエ変換し、すなわち空間軸フーリエ変換を行う。そして、DBF処理部18は、角度分解能に対応した角度チャネル毎のスペクトルの強度を示す空間複素数データを算出し、ビート周波数毎に方位検出部19に供給する。
実施例1の方位検出部19は、実施形態と同じであるので、説明を省略する。
【0046】
図3は、対象物が近距離にあるときと、対象物が遠距離にあるときのレーダ装置の検知範囲を説明するための模式図である。図3(a)は、対象物が近距離にあるときのレーダ装置の検知範囲を説明するための模式図である。同図は、右前方車両5からの反射波を受信したときの、レーダ装置20が処理をした結果想定されるメインローブによる検知範囲6aとサイドローブによる検知範囲7aを表している。
【0047】
図3(b)は、対象物が遠距離にあるときのレーダ装置の検知範囲を説明するための模式図である。同図は、前方車両4からの反射波を受信したときの、レーダ装置20が処理をした結果想定されるメインローブによる検知範囲6bとサイドローブによる検知範囲7bの模式図である。
【0048】
図3(a)と図3(b)において、左車線1と右車線2とがある。自車両3は左車線1を走行している。前方車両4は、自車両3の前方の左車線1を走行している。右前方車両5は、自車両3の前方の右車線2を走行している。水平角度θは、自車両の進行方向を0度としたときに、地面と水平な面における受信波の到来角度である。
【0049】
図3(a)において、自車両3に搭載されたレーダ装置は、自車両3のサイドローブ受信範囲7で右前方車両5を検知しないようにするため、サイドローブによる検知範囲7bを小さくする。
一方、図3(b)において、自車両3に搭載されたレーダ装置は、自車両3のメインローブ受信範囲6で前方車両4を検知するために、メインローブによる検知範囲6aを大きくする。
【0050】
このように、本発明の原理の概要は、レーダ装置が、検知対象物との距離に応じて、デジタルビームフォーミングパターンを変更することにより、メインローブによる検知範囲とサイドローブによる検知範囲を変更することができる。これによって、側方対象物の誤検知を防ぐことができる。
【0051】
続いて、ハイパスフィルタ36のフィルタ特性と、それに伴うビームフォーミングパターンとを説明する。
図4は、ハイパスフィルタ部36のハイパスフィルタ特性1を説明するための図である。この例では、受信アンテナ15はANT、ANT、ANT、ANTおよびANTの5個のアンテナを用いて構成されている。各受信アンテナは、自車両3の前方に左から順番に設置されている。また、各受信アンテナは、地面に対して水平にかつ一列に設置されている。
【0052】
図4(a)は、対象物との距離とハイパスフィルタの利得の関係を示した図である。ここで、対象物との距離とビート信号の周波数とは比例関係にある。従って、ビート信号の周波数が大きくなるほど、対象物が遠距離にある。一方、ビート信号の周波数が大きくなるほど、対象物が遠距離にある。
【0053】
図4(a)において、ハイパスフィルタの特性は、周波数がf43より大きい高周波数帯域と、周波数がf41よりも小さい低周波数帯域とに分かれる。
図4(a)のハイパスフィルタの特性(以下、ハイパスフィルタ特性1と称する)は、フィルタ特性41と、フィルタ特性42と、フィルタ特性43との3つのフィルタ特性がある。
【0054】
フィルタ特性41は、ANTに対応したハイパスフィルタHPF36が有するフィルタ特性である。フィルタ特性41は、周波数がカットオフ周波数f41より小さくなるほど、利得(重み)が小さい。
フィルタ特性42は、ANTとANTに対応したそれぞれのハイパスフィルタHPF36とHPF36のフィルタ特性である。フィルタ特性42は、周波数がカットオフ周波数f42より小さくなるほど、周波数の利得(重み)が小さい。
【0055】
フィルタ特性43は、ANTとANTに対応したそれぞれのハイパスフィルタHPF36とHPF36のフィルタ特性である。フィルタ特性43は、周波数がカットオフ周波数f43より小さくなるほど、周波数の利得(重み)が小さい。
フィルタ特性41、フィルタ特性42およびフィルタ特性43は、それぞれのカットオフ周波数より低い周波数帯域において、利得(重み)の周波数に対する変化量が一定である。
【0056】
ビート信号の周波数が図4(a)における周波数f42よりも小さい場合には、特性41をもつハイパスフィルタHPF3の利得は、特性42をもつハイパスフィルタHPF2とHPF4の利得よりも大きい。また、ビート信号の周波数が周波数f43よりも小さい場合には、特性42をもつハイパスフィルタHPF2とHPF4の利得は、特性43をもつハイパスフィルタHPF1とHPF5の利得よりも大きい。
【0057】
なお、ハイパスフィルタの特性はこれに限らず、アンテナの位置が端になるほど、そのアンテナの利得(重み)が小さくなるようにすればよい。
【0058】
続いて、ビート信号の周波数がfである場合のデジタルフォーミングビームパターンと、ビート信号の周波数がfである場合のデジタルビームフォーミングパターンとの違いについて説明する。
周波数f、周波数fとも低周波数帯域の周波数帯域に存在する。また、周波数fは周波数fより大きいので、周波数がfであるビート信号に対応する対象物は、周波数がfであるビート信号に対応する対象物よりも、レーダ装置20から遠い位置にある。
【0059】
図4(b)は、各アンテナで受信した信号に対して、図4(a)の特性を持つハイパスフィルタによってフィルタされた後のビート信号の受信強度を示した図である。
図4(a)における低周波数帯域において、フィルタ特性41の利得がフィルタ特性42の利得よりも大きい。従って、ANTに対応するフィルタ後のビート信号の信号強度は、ANTとANTに対応するフィルタ後のビート信号の受信強度より大きい。
【0060】
また、図4(a)における低周波数帯域において、フィルタ特性42の利得がフィルタ特性43の利得よりも大きい。従って、ANTとANTに対応するフィルタ後のビート信号の受信強度は、ANTとANTに対応するフィルタ後のビート信号の受信強度より大きい。このように、アンテナの並びが端に行くほど、フィルタ後のビート信号の受信強度が小さい。
【0061】
図5は、各ハイパスフィルタが図4(a)に示すフィルタ特性を有する場合の、デジタルビームフォーミングパターン特性を説明するための図である。図5(a)は、低周波数帯域において、デジタルビームフォーミングパターン特性を示した図である。一方、図5(b)は、高周波数帯域において、デジタルビームフォーミングパターン特性を示した図である。
【0062】
ハイパスフィルタによって、ビート信号の周波数が低くなるほど、つまりは対象物との距離が小さくなるほど、フィルタ後のビート信号の受信強度が小さくなる。従って、図5において、高周波数帯域のメインローブ54の受信強度が、低周波数帯域のメインローブ51の受信強度より大きい。これによって、方位検出部19は、遠距離にある対象物を認識することができる。
【0063】
また、同様の利用で、図5において、低周波数帯域のサイドローブ52およびサイドローブ53の受信強度が、高周波数帯域のサイドローブ55およびサイドローブ56の受信強度より小さい。これによって、方位検出部19は、水平角度が大きくなる対象物つまりは側方の対象物を認識しなくなる。
【0064】
続いて、距離毎のデジタルビームフォーミングパターンの特性を説明する。図6は、ビート信号の周波数がfであるときの、デジタルビームフォーミングパターン特性を説明するための図である。図6(a)は、周波数fにおける受信強度とアンテナ番号の関係を表した図である。図4(a)に示すハイパスフィルタ特性を有する各HPF36は、それぞれビート信号の信号強度61(jは1から5までの整数)を、フィルタ後のビート信号の信号強度62へ変換する。
【0065】
具体的には、ハイパスフィルタ特性43を有するHPF36は、ビート信号61をビート信号62へ変換する。ハイパスフィルタ特性42を有するHPF36は、ビート信号61をビート信号62へ変換する。ハイパスフィルタ特性43を有するHPF36は、ビート信号61をビート信号62へ変換する。ハイパスフィルタ特性42を有するHPF36は、ビート信号61をビート信号62へ変換する。ハイパスフィルタ特性43を有するHPF36は、ビート信号61をビート信号62へ変換する。
【0066】
図6(b)は、図6(a)のようにフィルタを掛けられたビート信号によるデジタルビームフォーミングのパターンを表した図である。DBF処理部18は、図6(a)に示したフィルタ後のビート信号62(jは1から5までの整数)をデジタルビームフォーミングし、図6(b)に示すデジタルビームフォーミングパターンを算出する。
メインローブ66の最大受信強度は、受信強度y66である。サイドローブ67またはサイドローブ68の最大受信強度は、受信強度y67である。
【0067】
図7は、ビート信号の周波数がfであるときの、デジタルビームフォーミングパターン特性を説明するための図である。図7(a)は、ビート信号の周波数がfであるときの、受信強度とアンテナ番号の関係を表した図である。HPF36は、ビート信号を71(jは1から5までの整数)に、フィルタを掛けて、72へ変換する。
【0068】
例えば、具体的には、ハイパスフィルタ特性43を有するHPF36は、ビート信号71をビート信号72へ変換する。ハイパスフィルタ特性42を有するHPF36は、ビート信号71をビート信号72へ変換する。ハイパスフィルタ特性41を有するHPF36は、ビート信号71をビート信号72へ変換する。ハイパスフィルタ特性42を有するHPF36は、ビート信号71をビート信号72へ変換する。ハイパスフィルタ特性43を有するHPF36は、ビート信号71をビート信号72へ変換する。
【0069】
図7(b)は、ビート信号の周波数がfであるときの、受信強度と水平角度の関係を表した図である。DBF処理部18は、図7(a)に示したフィルタ後のビート信号7jb(jは1から5までの整数)をデジタルビームフォーミングし、図7(b)に示すデジタルビームフォーミングパターンを算出する。
【0070】
メインローブ76の最大受信強度は、受信強度y76である。サイドローブ77またはサイドローブ78の最大受信強度は、受信強度y76である。ここで、受信強度y76は、図6(b)に示す受信強度y66よりも小さく、また受信強度y77は、図6(b)に示すy67よりも小さい。
【0071】
図6(b)から、ビート信号の周波数が高いすなわち対象物との距離が大きい場合、図3(b)に示すように、メインローブによる検知範囲が広く、遠方の対象物まで検知できる。
一方、図7(b)から、ビート信号の周波数が低いすなわち対象物との距離が小さい場合、図3(a)に示すように、サイドローブによる検知範囲が狭く、側方対象物を誤検知しなくなる。
【0072】
以上説明したように、アンテナを水平に一列に並べた場合に、端に行くほど利得が小さくなるように設定することで、自車両3のサイドローブ受信範囲7を小さくすることができる。これによって、レーダ装置20が側方に存在する対象物を検出しないようにすることができる。
【0073】
続いて、別のハイパスフィルタ特性を用いて生成されるデジタルビームフォーミングパターンの特性を説明する。
図8は、ハイパスフィルタ部のハイパスフィルタ特性2を説明するための図である。図8のハイパスフィルタの特性(以下、ハイパスフィルタ特性2と称する)は、特性81と、特性82と、特性83との3つの特性がある。図8において、ハイパスフィルタの特性は、周波数がfより大きい高周波数帯域と、周波数がfよりも小さい低周波数帯域に分かれる。
【0074】
高周波数帯域では、周波数(距離に相当)に関わらず利得が一定である。一方、低周波数帯域においては、周波数(距離に相当)が小さいほど利得が小さくなる。また、利得の周波数(距離に相当)に対する傾きは、ハイパスフィルタ部毎に異なる。具体的には、特性82の傾きは、特性81の傾きよりも大きく、特性83の傾きは、特性82の傾きよりも更に大きい。
【0075】
以下、具体例を用いて、ハイパスフィルタ部36の処理について説明する。例えば、ハイパスフィルタ部36のハイパスフィルタは、HPF36、HPF36、HP36、HPF36およびHPF36の5個のハイパスフィルタを用いて構成されている。
【0076】
ANTに対応したハイパスフィルタHPF36は、特性81をもつ。ANTとANTに対応したそれぞれのハイパスフィルタHPF36とHPF36は、特性82をもつ。ANTとANTに対応したそれぞれのハイパスフィルタHPF36とHPF36は、特性83をもつ。
【0077】
従って、ビート信号の周波数が図8に示す周波数fよりも小さい場合には、特性81をもつハイパスフィルタHPF3の利得は、特性82をもつハイパスフィルタHPF2とHPF4の利得よりも大きい。また、ビート信号の周波数が距離fよりも小さい場合には、特性82をもつハイパスフィルタHPF2とHPF4の利得は、特性83をもつハイパスフィルタHPF1とHPF5の利得よりも大きい。
【0078】
続いて、ビート信号の周波数が周波数fである場合のデジタルフォーミングパターンと、ビート信号の周波数が周波数fである場合のデジタルフォーミングパターンとの違いについて説明する。
図8において、周波数f、周波数fとも低周波数帯域の周波数帯域に存在する。また、周波数fより周波数fの方が大きい。従って、ビート信号の周波数がfである対象物は、ビート信号の周波数がfである対象物よりも、レーダ装置20から遠い位置にある。
【0079】
図9は、ビート信号の周波数がfであるときの、デジタルビームフォーミングパターン特性を説明するための図である。図9(a)は、ビート信号の周波数がfであるときの、受信強度とアンテナ番号の関係を表した図である。図9(a)に示すハイパスフィルタ特性のいずれかを有するHPF36は、ビート信号を91(jは1から5までの整数)に、フィルタを掛けて、92へ変換する。
【0080】
具体的には、ハイパスフィルタ特性83を有するHPF36は、ビート信号の信号強度91をビート信号の信号強度92へ変換する。ハイパスフィルタ特性42を有するHPF36は、ビート信号の信号強度91をビート信号の信号強度92へ変換する。ハイパスフィルタ特性83を有するHPF36は、ビート信号の信号強度91をビート信号の信号強度92へ変換する。ハイパスフィルタ特性82を有するHPF36は、ビート信号の信号強度91をビート信号の信号強度92へ変換する。ハイパスフィルタ特性83を有するHPF36は、ビート信号の信号強度91をビート信号の信号強度92へ変換する。
【0081】
図9(b)は、ビート信号の周波数がfであるときの、受信強度と水平角度の関係を表した図である。DBF処理部18は、図9(a)に示したフィルタ後のビート信号9jb(jは1から5までの整数)をデジタルビームフォーミングし、図9(b)に示すデジタルビームフォーミングパターンを算出する。
図9(b)において、メインローブ96の最大受信強度は、受信強度y96である。サイドローブ97またはサイドローブ98の最大受信強度は、受信強度y97である。
【0082】
図10は、ビート信号の周波数がfであるときの、デジタルビームフォーミングパターン特性を説明するための図である。図10(a)は、ビート信号の周波数がfであるときの、受信強度とアンテナ番号の関係を表した図である。HPF36は、ビート信号を101(jは1から5までの整数)に、フィルタを掛けて、102へ変換する。
【0083】
具体的には、ハイパスフィルタ特性83を有するHPF36は、ビート信号の信号強度101をビート信号の信号強度102へ変換する。ハイパスフィルタ特性82を有するHPF36は、ビート信号の信号強度101をビート信号の信号強度102へ変換する。ハイパスフィルタ特性81を有するHPF36は、ビート信号の信号強度101をビート信号の信号強度102へ変換する。ハイパスフィルタ特性82を有するHPF36は、ビート信号の信号強度101をビート信号の信号強度102へ変換する。ハイパスフィルタ特性83を有するHPF36は、ビート信号の信号強度101をビート信号の信号強度102へ変換する。
【0084】
図10(b)は、ビート信号の周波数がfであるときの受信強度と水平角度の関係を表した図である。DBF処理部18は、図10(a)に示したフィルタ後のビート信号10jb(jは1から5までの整数)をデジタルビームフォーミングし、図10(b)に示すデジタルビームフォーミングパターンを算出する。
【0085】
図10(b)において、メインローブ106の最大受信強度は、受信強度y106である。サイドローブ107またはサイドローブ108の最大受信強度は、受信強度y107である。ここで、受信強度y106は、図9(b)に示す受信強度y96よりも小さく、また受信強度y107は、図9(b)に示すy97よりも小さい。
従って、レーダ装置20は、アンテナの位置が端になるほど、ビート信号の周波数(対象物との距離に相当)に対する利得(重み)の変化量を大きくすることで、より柔軟にデジタルビームフォーミングパターンを設定することができる。
【0086】
図9(b)から、ビート信号の周波数が高いすなわち対象物との距離が大きい場合、図3(b)に示すように、メインローブによる検知範囲が広く、遠方の対象物まで検知できる。
一方、図10(b)から、ビート信号の周波数が低いすなわち対象物との距離が小さい場合、図3(a)に示すように、サイドローブによる検知範囲が狭く、側方対象物を誤検知しなくなる。
【0087】
以上説明したように、アンテナを水平に一列に並べた場合に、端のアンテナに対応するフィルタにおける受信電力の距離に対する傾きを大きくすることで、自車両3のサイドローブによる検知範囲7aをより小さくすることができる。これによって、レーダ装置20が側方に存在する対象物を検出しないようにすることができる。
【0088】
図11は、本発明の第1の実施例における方位検出のフローチャートを示した図である。まず、受信アンテナ31(iは1からnまでの整数)は、送信波が対象物に反射した反射波を受信する(ステップ S111)。各増幅器33は、対応する各反射波を増幅し、増幅された反射波をミキサー34に供給する。
【0089】
次に、各ミキサー34は、各増幅器33から供給された増幅した受信信号と、インデックスiが同じ増幅器33から供給された増幅した受信信号とを受け取る。各ミキサー34は、その増幅した受信信号とその増幅した送信信号とを混合して、ビート信号を生成する(ステップ S112)。各ミキサー34は、そのビート信号をそれぞれインデックスiが同じHPF(ハイパスフィルタ)36(iは1からnまでの整数)へ供給する。
【0090】
次に、各HPF(ハイパスフィルタ)36は、インデックスiが同じミキサー34から供給されたビート信号を受け取る。各HPF(ハイパスフィルタ)36は、そのビート信号に、各ハイパスフィルタをかけて、フィルタされた信号を生成する(ステップ S113)。これによって、ビート信号の周波数に応じた受信強度を設定することができる。
【0091】
次に、各HPF(ハイパスフィルタ)36は、そのフィルタされたビート信号(Beat、iは1からnまでの整数)をマルチプレクサ37へ供給する。
次に、マルチプレクサ37は、n個のHPF(ハイパスフィルタ)36から供給されたn個のフィルタされたビート信号Beatを受け取る。マルチプレクサ37は、そのフィルタされたビート信号Beatをそれぞれの周波帯域毎に信号をのせて(周波数多重化し)、1つの多重化信号Boutを生成する(ステップ S114)。
【0092】
次に、マルチプレクサ37は、その多重化信号をADC(A/Dコンバータ)38へ供給する。ADC(A/Dコンバータ)38は、マルチプレクサ37から供給された多重化信号を受け取る。ADC(A/Dコンバータ)38は、その多重化信号をデジタル信号へ変換する(ステップ S115)。
【0093】
ADC(A/Dコンバータ)38は、そのデジタル信号をDBF処理部18へ供給する。DBF処理部18は、ADC(A/Dコンバータ)38から供給されたデジタル信号を受け取る。DBF処理部18は、そのデジタル信号をデジタル信号処理で、ビームフォーミングし、ビームフォーミングパターンを生成する(ステップ S116)。
【0094】
DBF処理部18は、生成したビームフォーミングパターンを方位検出部19へ供給する。方位検出部19は、DBF処理部18から供給されたビームフォーミングパターンを受け取る。そして、方位検出部19は、そのビームフォーミングパターンから、対象物の方位を検出する(ステップ S117)。方位検出部19は、その対象物の方位を不図示の外部装置へ供給する。以上で、本フローチャートは終了する。
【0095】
続いて、本発明の第2の実施例について説明する。本発明の第2実施例では、図2に示したレーダ装置10の重み付け処理部17を、ソフトウェアで実現する構成である。本発明の第2の実施例におけるレーダ装置は、重み付け処理部17とDBF処理部18以外の構成は、第1の実施例におけるレーダ装置20と同じであるので、説明を省略する。
【0096】
図12は、本発明の第2の実施例における重み付け処理部のブロック構成図である。重み付け処理部17は、SW(スイッチ)121と、ADC(A/Dコンバータ)122と、制御部123と、記憶部124と、フーリエ変換部125と、重み乗算部126と、を用いて構成される。
【0097】
SW121は、制御部123から供給されたサンプリング信号を受け取る。SW121は、受け取ったサンプリング信号に対応して、各受信アンテナ15に対応したiチャンネルごとのビート信号を、順次切り替える。そして、SW121は、切り替えたビート信号をADC122に供給する。
【0098】
ADC122は、上記SW121から上記サンプリング信号に同期して出力される各受信アンテナ15に対応したビート信号を受け取る。ADC122は、上記サンプリング信号に同期して、そのビート信号をA/D変換して、デジタル信号に変換する。ADC122は、そのデジタル信号を記憶部124に順次供給する。
制御部123は、図示しないROMなどに格納された制御プログラムに基づき、サンプリング信号をSW121と、ADC122へ供給する。
【0099】
記憶部124は、ADC122が供給するデジタル信号を受け取る。記憶部124は、受け取ったデジタル信号を各受信アンテナ15に対応したiチャンネルごとのデータとして記憶する。そして、記憶部124は、そのiチャンネルごとのM点のデータ(Mは正の整数)をフーリエ変換部125へ供給する。
【0100】
また、記憶部124は、予めチャネルi毎のHPF減衰度Gfb(i)を保持する。記憶部124は、重み乗算部126からの要求に応じて、周波数毎のHPF(ハイパスフィルタ)減衰度Gfb(i)を、重み乗算部126へ供給する。
【0101】
フーリエ変換部125は、記憶部124が供給するiチャンネルごとのM点のデータを受け取る。フーリエ変換部125は、そのiチャンネルごとのM点のデータをフーリエ変換し、フーリエ変換結果FFT(i)を算出する。フーリエ変換部125は、チャネルi毎、周波数毎のフーリエ変換結果FFT(i)を、重み乗算部126へ供給する。
【0102】
重み乗算部127は、フーリエ変換部126が供給するフーリエ変換結果FFT(i)を受け取る。また、重み乗算部126は、記憶部124が供給するHPF減衰度Gfb(i)を受け取る。そして、重み乗算部126は、各HPF減衰度Gfb(i)をフーリエ変換結果FFT(i)に乗じ、積Gfb(i)×FFT(i)を算出する。そして、重み乗算部126は、その積Gfb(i)×FFT(i)をDBF処理部18へ供給する。
【0103】
DBF処理部18は、重み乗算部126から供給されたチャネル毎に対応した積Gfb(i)×FFT(i)を受け取る。DBF処理部18は、デジタル信号処理で各アンテナに対応した積Gfb(i)×FFT(i)を、アンテナの配列方向にさらにフーリエ変換、すなわち空間軸フーリエ変換をする。そして、DBF処理部18は、角度分解能に対応した角度チャネル毎のスペクトルの強度を示す空間複素数データを算出し、ビート周波数毎に方位検出部19に供給する。
【0104】
図13は、本発明の第2の実施例における方位検出のフローチャートを示した図である。まず、受信アンテナ31(iは1からnまでの整数)は、送信波が対象物に反射した反射波を受信する(ステップ S1301)。各増幅器33は、対応する各反射波を増幅し、増幅された反射波をミキサー34に供給する。
【0105】
次に、各ミキサー34は、各増幅器33から供給された増幅した受信信号と、インデックスiが同じ増幅器33から供給された増幅した受信信号とを受け取る。各ミキサー34は、その増幅した受信信号とその増幅した送信信号とを混合して、ビート信号を生成する(ステップ S1302)。各ミキサー34は、そのビート信号をそれぞれSW121へ供給する。
【0106】
SW121は、受け取ったサンプリング信号に対応して、各受信アンテナ15に対応したiチャンネルごとのビート信号を、順次切り替える。そして、SW121は、切り替えたビート信号をADC122に供給する。
ADC122は、上記SW121から上記サンプリング信号に同期して出力される各受信アンテナ15に対応したビート信号を受け取る。ADC122は、上記サンプリング信号に同期して、そのビート信号をA/D変換して、デジタル信号に変換する(ステップ S1303)。
【0107】
ADC122は、そのデジタル信号を記憶部124に順次供給する。記憶部124は、ADC122が供給するデジタル信号を受け取る。記憶部124は、受け取ったデジタル信号を各受信アンテナ15に対応したiチャンネルごとのデータとして記憶する。そして、記憶部124は、そのiチャンネルごとのM点のデータ(Mは正の整数)をフーリエ変換部125へ供給する。
【0108】
次に、フーリエ変換部125は、記憶部124が供給するiチャンネルごとのM点のデータを受け取る。フーリエ変換部125は、そのiチャンネルごとのM点のデータをN点(Nは正の整数で、NはM以下)でフーリエ変換し、フーリエ変換結果FFT(i)を算出する(ステップ S1304)。
次に、フーリエ変換部125は、チャネルi毎のフーリエ変換結果FFT(i)を、重み乗算部126へ供給する。重み乗算部126は、そのチャネルi毎のフーリエ変換結果FFT(i)を受け取る。
【0109】
次に、重み乗算部127は、チャネルのインデックスkを1に初期化する(ステップ S1305)。チャネルのインデックスkが(n+1)/2以下の場合(ステップ S1306 YES)、ステップ S1307において、重み乗算部126は、記憶部124からHPF減衰度Gfb(k)を読み出す。
【0110】
次に、重み乗算部127は、HPF減衰度Gfb(k)をフーリエ変換結果FFT(k)に乗じ、積Gfb(k)×FFT(k)を算出する(ステップ S1307)。そして、重み乗算部126は、積Gfb(k)×FFT(k)をDBF処理部18へ供給する。次に、重み乗算部127は、チャネルのインデックスkを1増やす。
【0111】
チャネルのインデックスkが(n+1)/2より大きい場合(ステップ S1306 YES)、DBF処理部18は、デジタル信号処理で各アンテナに対応した積Gfb(i)×FFT(i)を、アンテナの配列方向にさらにフーリエ変換し、すなわち空間軸フーリエ変換を行う(ステップ S1309)。そして、DBF処理部18は、角度分解能に対応した角度チャネル毎のスペクトルの強度を示す空間複素数データを算出し、ビート周波数毎に方位検出部19に供給する。
【0112】
次に、方位検出部19は、DBF処理部18から供給された空間複素数データを受け取る。そして、方位検出部19は、算出されたビート周波数毎の空間複素数データの値の大きさのうち、一番大きな値を取る角度φを対象物の方位として検出する(ステップ S1310)。次に、方位検出部19は、その対象物の方位を不図示の外部装置へ供給する。以上で、本フローチャートは終了する。
【0113】
以上により、n個の受信信号に対して適切な重み付けをすることによって、対象物が近距離にあるときに、車載レーダのサイドローブ受信範囲を狭めることができる。これによって、側方対象物の誤検知を防ぐことができる。
【0114】
なお、本発明の実施形態では、対象物が1つ存在するときについて説明したが、対象物が2つ以上存在してもよい。対象物が2つ以上ある場合には、ぞれぞれの対象物から反射された受信波に対して、それぞれの対象物の距離に応じた重みが掛けられることにより、デジタルビームフォーミングパターンがそれぞれの対象物ごとに形成される。これにより、それぞれの対象物に対して、メインローブとサイドローブによる検知範囲を設定することができる。
【0115】
具体的には、例えば、遠距離の前方対象物と、近距離の側方対象物とが存在する場合、遠距離の対象物の検知することと、近距離の側方対象物の誤検知を減らすことを両方実現することができる。
【0116】
以上、本発明によれば、ビーム信号の周波数すなわち対象物との距離に応じて、重みが変更される。そして、レーダ装置が、複数のアンテナからの受信信号に対して、それぞれ変更された重みを乗じる。従って、レーダ装置は、デジタルビームフォーミングパターンを対象物との距離に応じて変化させることできるので、対象物との距離に応じた最適なデジタルビームフォーミングを行うことができる。これによって、距離に応じたデジタルビームフォーミングにより遠距離の対象物の検知性能を上げることと、近距離の側方対象物の誤検知を減らすことを両立することができる。
【0117】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0118】
1 左車線
2 右車線
3 自車両
4 前方車両
5 右前方車両
6a、6b メインローブによる検知範囲
7a、7b サイドローブによる検知範囲
10 レーダ装置
11 送信制御部
12 送信波生成部
13 送信部
14 送信アンテナ
15 受信アンテナ
16 ビート信号生成部
17 重み付け処理部
18 DBF処理部
19 方位検出部
20 レーダ装置
21 DAC(D/Aコンバータ)
22 増幅器
23 電圧制御発振器
24 ローカル増幅器
25 分岐回路
26 増幅器
31、31、31、31 受信アンテナ
33、33、33、33 増幅器
34、34、34、34 ミキサー
35、35、35、35 増幅器
36、36、36、36 HPF(ハイパスフィルタ)
37 マルチプレクサ
38 ADC(A/Dコンバータ)
121 SW(スイッチ)
122 ADC(A/Dコンバータ)
123 制御部
124 記憶部
125 フーリエ変換部
126 重み乗算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を送信する送信アンテナと、
前記送信された電波が対象物により反射された電波を受信する複数の受信アンテナと、
前記受信アンテナで受信された各受信信号と前記送信アンテナで送信した送信信号とを混合して前記受信アンテナ毎にビート信号を生成するビート信号生成部と、
前記各ビート信号の信号強度に、前記受信アンテナ毎に関係付けられた所定の重みをかけ、前記ビート信号の信号強度を変更する重み付け処理部と、
前記重み付け処理部により信号強度が変更されたビート信号に基づいて、前記対象物の方位を検出する方位検出部と、
を備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記重み付け処理部は、前記ビート信号の周波数が所定の周波数よりも低いときに、前記重みを小さくすることを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記重み付け処理部は、前記ビート信号の周波数が所定の周波数よりも低いときに、前記受信アンテナの位置が端になるほど、該受信アンテナに関係付けられた前記重みを小さくすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記所定の周波数は前記受信アンテナの位置が端になるほど高く、前記重みの周波数に対する変化量は前記受信アンテナの位置によらず一定であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記重みの周波数に対する変化量は、前記受信アンテナの位置が端になるほど大きいことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記重み付け処理部は、前記受信アンテナ毎に前記重みと周波数の関係が定められたフィルタを備え、
前記各フィルタは、前記各ビート信号の信号強度を、該ビート信号の信号強度と該ビート信号の周波数に応じた重みとの積に変更することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記重み付け処理部は、それぞれの前記ビート信号に関係付けられた重みを記憶する記憶部と、
前記各ビート信号をフーリエ変換するフーリエ変換部と、
前記ビート信号毎に、それぞれの前記ビート信号に関係付けられた前記重みと、前記フーリエ変換部によりフーリエ変換された信号との積を算出する重み乗算部と、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のレーダ装置。
【請求項8】
複数の受信アンテナで受信された各受信信号と送信アンテナで送信した送信信号とを混合し、前記受信アンテナ毎にビート信号を生成する第1のステップと、
前記各ビート信号の信号強度に、前記受信アンテナ毎に関係付けられた所定の重みをかけ、前記ビート信号の信号強度を変更する第2のステップと、
前記第2のステップにより信号強度が変更されたビート信号に基づいて、前記対象物の方位を検出する第3のステップと、
をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−215114(P2011−215114A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86135(P2010−86135)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(300052246)株式会社ホンダエレシス (105)
【Fターム(参考)】