説明

レーダ装置及び質問送信方法

【課題】他局のレーダ装置と連携して確実に目標を検出できるようにする。
【解決手段】本実施形態に係るレーダ装置1Aは、自局覆域と一部の覆域が重なる他局のレーダ装置1Bと通信回線を介して接続され、アンテナ11から目標に質問信号を送信し、目標からの応答信号を受信する送受信部12と、他局から目標の位置情報を通信回線を介して取得する通信処理部14と、通信処理部14により取得された目標の位置情報に基づいて上記一部の覆域から一定幅の外側領域に目標が進入するタイミングで質問信号を送信させる質問制御部14とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、複数のレーダ装置を連携させて運用するレーダ装置及び質問送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空管制用のレーダシステムでは、覆域の一部が重なる複数のレーダ装置を通信回線で接続して連携させる運用が行われている。このような運用により、ターゲットの捜索範囲を拡大できる他、複数のレーダ装置で1つのターゲットとする航空機を連携して追跡することが可能となる。ターゲットを検出する覆域が重なる複数のレーダ装置相互で、検出したターゲットの位置情報を共有することにより、初期捕捉することなく個別質問のみで、ターゲット位置を追跡することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−174547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、各レーダ装置の回転速度やスキャンタイミングは異なるため、隣接するレーダ装置相互で覆域が重なる領域では、次のレーダ装置でターゲットを検出するタイミングが1スキャン以上遅れる場合があり、ターゲットの検出精度が低下するという問題があった。
【0005】
本実施形態の目的は、他のレーダ装置と連携して確実に目標を検出可能なレーダ装置及び質問送信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係るレーダ装置は、自局覆域と一部の覆域が重なる他局のレーダ装置と通信回線を介して接続され、前記他局と連携して目標を追跡するレーダ装置であって、アンテナから前記目標に質問信号を送信し、前記目標から送り返される応答信号を受信する送受信手段と、前記他局から前記目標の位置情報を前記通信回線を介して取得する通信手段と、前記通信手段により取得された前記目標の位置情報に基づいて前記一部の覆域から一定幅の外側領域に前記目標が進入するタイミングで前記質問信号を送信させる制御手段とを具備する。
【0007】
本実施形態に係る質問送信方法は、自局覆域と一部の覆域が重なる他局のレーダ装置と通信回線を介して接続され、前記他局と連携して目標を追跡するレーダ装置に用いられる方法であって、アンテナから前記目標に質問信号を送信し、前記目標から送り返される応答信号を受信することと、前記他局から前記目標の位置情報を前記通信回線を介して取得することと、前記目標の位置情報に基づいて前記一部の覆域から一定幅の外側領域に前記目標が進入するタイミングで前記質問信号を送信させるものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態に係るレーダ装置を示す構成図。
【図2】レーダ装置の覆域を示す図。
【図3】個別質問タイミングを説明するための図。
【図4】個別質問のシーケンスを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係るレーダ装置及び質問送信方法を説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係るレーダ装置を示す構成図である。レーダ装置1Aは、例えば2次監視レーダ(Second Surveillance Rader;SSR)で構成され、自局覆域と一部の覆域が重なる他局のレーダ装置1Bと通信回線を介して接続される。レーダ装置1Aは、アンテナ11、送受信部12、質問制御部13及び通信処理部14を備える。
【0011】
送受信部12は、質問制御部13の制御により、アンテナ11から検出対象の航空機(ターゲット)に質問信号を送信し、航空機から送り返される応答信号を受信する。通信処理部14は、他局のレーダ装置1Bにより検出されたターゲット位置情報(緯度経度及びヘディング速度)を上記通信回線を介して取得する。質問制御部13は、通信処理部14により取得されたターゲット位置情報と自局覆域とに基づいて質問信号のタイミングを制御する。
【0012】
図2は、レーダ装置の覆域を示す図である。自局において、覆域が重なる他局により検出されたターゲット位置201で個別質問をする場合、図2に示すようにレーダ装置相互のアンテナ方位が異なるため、ターゲット位置情報を受けた側の自局では、1スキャン以内に個別質問を出すことができる場合(図2中202で示す範囲)と1スキャン以上経過してから個別質問を出すことになる場合(図2中203で示す範囲)とがある。
【0013】
レーダ装置相互のアンテナ回転速度が異なる場合、自局のアンテナ方位が北を向いた時を基準にして、他局のアンテナの方位が変化するので、他局により検出されたターゲット位置情報を受信するタイミングが図2中202の範囲になったり図2中203の範囲になったり変化するので、1スキャン以上経過して個別質問を出す頻度が増えて、検出精度が低下するという欠点がある。つまり、他局から得るターゲット位置情報の受信タイミングは、必ずしも自局の個別質問スケジューリングのタイミングと一致するわけでないので、個別質問スケジューリング処理をした後では、既に検出タイミングを通り過ぎてしまうことがあり、1スキャン検出が遅れてしまう。
【0014】
そこで、本実施形態では、図3に示す通り、覆域が重なる領域(A領域とする)と、他局から自局にターゲット位置情報が少なくとも2スキャン後のタイミングで進入する幅でA領域の外側領域(B領域とする)を設定する。
【0015】
図3に示すように、自局覆域に進入する手前のa地点に位置するターゲット位置情報に基づいて次スキャンの個別質問スケジューリングを開始し、ターゲットのヘディング(移動方向)と速度から次スキャンでA領域に進入するかを予測する。個別質問タイミングでは、A領域に進入していると予測していれば個別質問を送信する。まだターゲットがB領域にいると予測した場合は、個別質問を送信しない。
【0016】
図4に、個別質問のシーケンスを示す。ステップS1において、他局は、ターゲットに個別質問を送信して、a地点のターゲットからの応答を受信すると、ターゲットの緯度経度、高さを検出し、ステップS2においてB領域のターゲット位置情報を自局に送信する。自局の通信処理部14は、他局から送られたターゲット位置情報を受信する。ステップS3において、自局の質問制御部13は、a地点のターゲット位置に基づいて次スキャンで検出する位置の個別質問のスケジューリングを行う。ステップS4において、質問制御部13は、ステップS3でスケジューリングしたタイミングでターゲットがA領域に進入するのを予測して、例えばb地点のターゲットに個別質問を送信する。
【0017】
ステップS5において、他局は、ターゲットに個別質問を送信して、ターゲットからの応答を受信すると、ターゲットの緯度経度、高さを検出し、ステップS6においてA領域のターゲット位置情報を自局に送信する。ステップS7において、自局の送受信部12は、自局で送信した個別質問に対するターゲットからの応答を受信する。ステップS8において、他局と自局の両方で検出したターゲット位置に基づいて次スキャンで検出する位置の個別質問のスケジューリングを行う。ステップS9において、上記ステップS8でスケジューリングしたタイミングで個別質問を送信し、ステップS10でこの個別質問に対する応答を受信する。このように、図4のシーケンスによれば、1スキャンの検出タイミング欠落を無くすことができる。
【0018】
以上述べたように、本実施形態によれば、アンテナの向きが異なる他局からのターゲット位置情報を受けるタイミングが、自局でスケジューリングするタイミングに合わなくても、1スキャン以内で個別質問を送信することが可能となる。
【0019】
したがって、ターゲットを検出する覆域が重なる複数のレーダ装置相互で、検出ターゲットの位置を共有することにより、初期捕捉することなく個別質問のみで、確実にターゲット位置を追跡することが可能となる。
【0020】
なお、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0021】
1A,1B…レーダ装置、11…アンテナ、12…送受信部、13…質問制御部、14…通信処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自局覆域と一部の覆域が重なる他局のレーダ装置と通信回線を介して接続され、前記他局と連携して目標を追跡するレーダ装置であって、
アンテナから前記目標に質問信号を送信し、前記目標から送り返される応答信号を受信する送受信手段と、
前記他局から前記目標の位置情報を前記通信回線を介して取得する通信手段と、
前記通信手段により取得された前記目標の位置情報に基づいて前記一部の覆域から一定幅の外側領域に前記目標が進入するタイミングで前記質問信号を送信させる制御手段と
を具備することを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記外側領域の範囲を前記他局から前記目標の位置情報を少なくとも2回取得する期間に基づいて調整することを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記タイミングをさらに前記目標の移動方向と速度に基づいて調整することを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項4】
自局覆域と一部の覆域が重なる他局のレーダ装置と通信回線を介して接続され、前記他局と連携して目標を追跡するレーダ装置に用いられる方法であって、
アンテナから前記目標に質問信号を送信し、前記目標から送り返される応答信号を受信することと、
前記他局から前記目標の位置情報を前記通信回線を介して取得することと、
前記目標の位置情報に基づいて前記一部の覆域から一定幅の外側領域に前記目標が進入するタイミングで前記質問信号を送信させることを特徴とする質問送信方法。
【請求項5】
前記タイミングは、前記外側領域の範囲を前記他局から前記目標の位置情報を少なくとも2回取得する期間に基づいて調整されることを特徴とする請求項4記載の質問送信方法。
【請求項6】
前記タイミングは、さらに前記目標の移動方向と速度に基づいて調整されることを特徴とする請求項4記載の質問送信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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