レーダ装置
【課題】クロスレンジ方向の帯域を拡張して高分解能画像を生成することが可能なレーダ装置を得る。
【解決手段】第1および第2のレーダを、目標から見て異なる角度に配置し、それぞれが同一の周波数帯域で目標を観測し、2次元相互コヒーレント化手段を用いて、得られた各受信信号スペクトルの位相を一致させる処理を行い、1次元帯域拡張手段により、位相を一致させた受信信号スペクトルを、クロスレンジ方向に内挿あるいは外挿して帯域幅を拡張した連続スペクトルを生成し、連続スペクトルのレンジとクロスレンジを圧縮手段で圧縮し、目標の観測画像として出力する。
【解決手段】第1および第2のレーダを、目標から見て異なる角度に配置し、それぞれが同一の周波数帯域で目標を観測し、2次元相互コヒーレント化手段を用いて、得られた各受信信号スペクトルの位相を一致させる処理を行い、1次元帯域拡張手段により、位相を一致させた受信信号スペクトルを、クロスレンジ方向に内挿あるいは外挿して帯域幅を拡張した連続スペクトルを生成し、連続スペクトルのレンジとクロスレンジを圧縮手段で圧縮し、目標の観測画像として出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、目標の高分解能画像を生成するレーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーダにおける距離分解能は占有帯域幅に依存する。例えば3センチメートルの分解能を実現するためには5ギガヘルツの帯域幅を必要とするが、周波数資源の有効利用の観点から、これだけの帯域幅を占有することは難しい。この問題に対処する方法として、一対のレーダを用い、例えば第1のレーダでは5.0から5.5ギガヘルツの周波数帯域、第2のレーダ装置では9.5から10.0ギガヘルツの周波数帯域を使用してそれぞれ観測を行い、その受信信号スペクトルを補間することによって、あたかも5から10ギガヘルツの周波数帯域で観測したスペクトルを推定しようとする試みがなされている。この場合、2つのレーダから目標までの距離は一般に異なるので、それぞれで観測されたスペクトルの位相変化は連続でなく、あるいはコヒーレントではない。そこで、従来のレーダ装置では、第1の周波数帯域で観測する第1のレーダと第2の周波数で観測する第2のレーダの空間スペクトルを、レンジ方向について位相を一致させた上で、これらの空間スペクトルに基づいて帯域を拡張することによりレンジの高分解能化を図っていた(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に掲載された従来のレーダ装置について説明する。
図14は従来のレーダ装置の観測のジオメトリを示す説明図である。図15は同レーダ装置の機能構成を示すブロック図である。図16は図15に示す1次元相互コヒーレント化手段の詳細な構成を示すブロック図、図17は図15に示す1次元帯域拡張手段の詳細な構成を示す図である。また、図18は同レーダ装置の信号スペクトルを示す模式図である。
図14に示すように、同一位置に設置された2つのレーダが同一の目標8を観測することを前提としている。すなわち、第1のレーダの送受信アンテナ1aと第2のレーダの送受信アンテナ1bにより、目標8に対するレーダ波の送受信を行う。ただし、2つのレーダの周波数帯域は異なる。このレーダ波のスペクトルを図18に示すが、横軸はレンジ方向の空間周波数あるいはレーダの瞬時送信周波数を表している。図18(a)において、16aは第1のレーダの受信信号、16bは第2のレーダの受信信号を表す。図18(b)において、17aは1次元相互コヒーレント化手段3の出力における第1のレーダの受信信号を表し、17bは1次元相互コヒーレント化手段3の出力における第2のレーダの受信信号を表す。なお、以下では1次元相互コヒーレント化手段3は第1のレーダの受信信号のみを補償することを想定して説明しているので、17bは16bと等しい。また、図18(c)において、18は1次元帯域拡張手段4の出力信号を表している。
【0004】
このレーダ装置の場合、第1および第2のレーダによるレンジ分解能は、スペクトル16aの帯域幅とスペクトル16bの帯域幅でそれぞれ規定され、これらの帯域幅が広いほど高いレンジ分解能を実現できる。そこで、2つのレーダで観測されたこれらのスペクトルを内挿あるいは外挿してスペクトルの帯域幅を拡大する。そのためにはスペクトル16aと16bの位相の連続性(コヒーレンシー)が保たれている必要があるが、図18(a)に示されるように、この条件は一般に成立しない。その理由は2つのレーダのアンテナ1a,1bの位相中心から目標8までの距離が、一般に完全には一致していないからである。この問題を解決するために、1次元相互コヒーレント化手段3を用いてスペクトル16aと16bの位相が連続になるようにスペクトルを補償するようにしている。スペクトル16aを補償したスペクトル17aのようになる。さらに、1次元帯域拡張手段4により、スペクトルを内挿あるいは外挿してスペクトルの帯域幅を拡大する。拡張されたスペクトルは図18(c)に示されるスペクトル18ようになる。次に、レンジ圧縮手段5により、拡張されたスペクトル18をフーリエ変換し、レンジを圧縮して高いレンジ分解能を実現する。最後に、クロスレンジ圧縮手段6において、受信信号をパルス方向にフーリエ変換することによりクロスレンジを圧縮して高いクロスレンジ分解能を実現する。これは、逆合成開口レーダとしてよく知られた原理に基づく処理である。
【0005】
次に、図16に示す1次元相互コヒーレント化手段3の詳細動作を説明する。
ここでは、信号16aと16bはP個の指数関数の和で表すものと仮定する。すなわち、次式のモデルで信号を表現する。
【数1】
まず、Root−Music手段9により、信号16aの極(pole)を求める。次に、1次元all−pole推定手段10aにおいて、極に基づいて(1)式の係数ak 、pk を求め、モデルM1 を決定する。信号16bについても同様の処理を行って係数ak 、pk を求め、モデルM2 を決定する。次に、非線形最小二乗手段11において、(2)式で表す指標Cを最小化するΔθとAを求める。すなわち、2つのモデルM1 とM2 の位相の連続性を最大化するパラメータを探索する。ただし、Aは2つのモデルの振幅比を調整する係数、Δθは2つのモデルの位相差を調整する係数、Nはスペクトルの標本点数(図18の横軸のサンプル数)とする。またjは√(1)である。
【数2】
最後に、1次元スペクトル補償手段12において、最小二乗手段11で求めたパラメータΔθと係数Aを用いて信号16aを補償し、図18(b)に示されるように位相の連続性が保たれた信号17aと17bの組が得られる。
【0006】
次に、図17に示す1次元帯域拡張手段4の詳細動作を説明する。
なお、ここでも信号17aと17bを合成した信号は指数関数の和で表されるものと仮定し、(3)式のモデルで信号を表現する。(3)式は(1)式と同じ形をしているが、信号17aと17bを合成した信号に対するモデルであるので、こちらのモデルMをglobal−poleと呼ぶことにする。
【数3】
まず、Root−Music手段9により、信号17aと17bを合成した信号の極を求める。次に、1次元global−pole推定手段13が、極に基づいて(3)式の係数ak 、pk を求め、モデルMの初期値を決定する。次に、非線形最小二乗手段14において、(4)式に示される指標Jを最小化するモデルMを求めるためにak 、pk をパラメータとして探索する。ただし、sn は信号17aと17bを合成した信号のスペクトル、wn は適当な重み係数、<n>は信号17aと17bが値をもつ標本点である。
【数4】
最後に、1次元スペクトル内外挿手段15において、非線形最小二乗手段14で推定されたパラメータak 、pk を(3)式に当てはめて帯域拡張された信号18を得る。以上のように動作することによって、従来のレーダ装置ではレンジについて高分解能化された目標の画像を得ていた。
【0007】
【特許文献1】米国特許第5945940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のレーダ装置は、相互コヒーレント化手段が1次元の信号にしか対応していないので、レンジ方向にしか位相の連続性を補償することができなかった。また、帯域拡張手段も1次元の信号にしか対応していなかった。したがって、高分解能化できるのはレンジ方向のみに限られており、クロスレンジ方向についての高分解能化には対応できなかった。
【0009】
この発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、クロスレンジ方向の帯域を拡張して高分解能画像を生成することが可能なレーダ装置を得ることを目的とする。
また、この発明は、レンジ方向に加えて、クロスレンジ方向についても帯域を拡張して高分解能画像を生成することが可能なレーダ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るレーダ装置は、目標に対して送受信アンテナを配置し、所定の周波数帯域で目標を観測する第1のレーダと、目標から見て第1のレーダの送受信アンテナと異なる角度に送受信アンテナを配置し、所定の周波数帯域で目標を観測する第2のレーダと、第1および第2のレーダで得られる受信信号スペクトルの位相を一致させる処理を行う2次元相互コヒーレント化手段と、2次元相互コヒーレント化手段で位相を一致させた受信信号スペクトルを、クロスレンジ方向に内挿あるいは外挿して帯域幅を拡張した連続スペクトルを生成する1次元帯域拡張手段と、帯域拡張手段で生成された連続スペクトルのレンジを圧縮するレンジ圧縮手段と、レンジ圧縮手段でレンジが圧縮された連続スペクトルのクロスレンジを圧縮し、目標の観測画像として出力するクロスレンジ圧縮手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、クロスレンジ方向の帯域を拡張して高分解能画像を実現する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実施の形態1.
図1はこの発明のレーダ装置の観測のジオメトリを示す説明図である。従来のレーダ装置では、図14に示すように2つのレーダが同一の位置に設置されていることを想定していたが、この実施の形態1では、図1に示すように2つのレーダのアンテナ1a,1bが目標8から見て互いに異なる方位に設置されていることを想定している。
図2はこの発明の実施の形態1によるレーダ装置の機能構成を示すブロック図である。図2の構成は、1次元相互コヒーレント化手段に替えて、2次元相互コヒーレント化手段19を用いた以外は図15に示した従来のレーダ装置と同じ機能部で構成されている。
図2において、送受信機2a,2bは、送受信アンテナ1a,1bを用いて同一の周波数帯域で目標を観測する第1、第2のレーダを構成する。2次元相互コヒーレント化手段19は、送受信機2a,2bで得られる受信信号スペクトルの位相を一致させる処理を行う手段である。1次元帯域拡張手段4は、2次元相互コヒーレント化手段19で得られた位相を一致させた受信信号スペクトルを、クロスレンジ方向に内挿あるいは外挿して帯域幅を拡張した連続スペクトルを生成する手段である。レンジ圧縮手段5は、1次元帯域拡張手段4で生成された連続スペクトルのレンジを圧縮する手段である。クロスレンジ圧縮手段6は、レンジ圧縮手段5でレンジが圧縮された連続スペクトルのクロスレンジを圧縮する手段である。表示手段7は、処理して得られた目標の画像を表示する手段である。
図3は図2に示した2次元相互コヒーレント化手段19の詳細な機能構成を示すブロック図である。2次元相互コヒーレント化手段19は、2次元Music手段20a,20b、2次元all−pole推定手段21a,21b、非線形最小二乗手段22および2次元スペクトル補償手段23を備えており、その詳細については後述する。
【0013】
次に、動作について説明する。
この実施の形態1では、2つのレーダが同一の周波帯域で目標8を観測することを想定している。この場合の信号スペクトルは模式的に図4で示される。横軸はクロスレンジ方向の空間周波数fx あるいはパルスヒット、縦軸はレンジ方向の空間周波数fy あるいはレーダの瞬時送信周波数を表す。また、濃淡は複素信号振幅を表している。図4(a)において、24aは送受信アンテナ1a、送受信機2aからなる第1のレーダの受信信号、24bは送受信アンテナ1b、送受信機2bからなる第2のレーダの受信信号を表している。各レーダのレンジ分解能はスペクトル24a,24bのfy 方向の帯域幅で規定され、また、クロスレンジ分解能はスペクトル24a,24bのfx 方向の帯域幅で規定されており、したがって、これら帯域幅を広くすることができれば高い分解能を実現できることになる。図4(b)において、25aと25bは2次元相互コヒーレント化手段19の出力で、位相を一致させた受信信号スペクトルを表している。図4(c)において、26は1次元帯域拡張手段4の出力で、図4(b)の受信信号スペクトル25a,25bを、クロスレンジ方向に内挿あるいは外挿して帯域幅を拡張させた連続スペクトルを表している。
【0014】
この実施の形態1では、2つのレーダで観測された受信信号スペクトルを内挿あるいは外挿してfx 方向のスペクトルの帯域幅を拡張し、クロスレンジ分解能を向上させることを目指す。スペクトルを内挿あるいは外挿するためには、受信信号スペクトル24aと24bの位相の連続性(コヒーレンシー)が保たれることが必要であるが、この条件は一般に成立しないため、上記従来のレーダ装置の動作で説明したように、fy 方向のコヒーレンシーのみを確保するために一次元相互コヒーレント化手段を用いていた。しかし、この実施の形態1の場合には、図4(b)に示すように、fy 方向に加えて、fx 方向でもコヒーレンシーを確保する必要があり、別の方法が要求される。そのために、この実施の形態1では、2次元相互コヒーレント化手段19を用いる。
【0015】
2次元相互コヒーレント化手段19は、後述するように、第1および第2のレーダの受信信号スペクトル24aと24bの位相を一致させるように補償する。第1のレーダの受信信号スペクトル24aを補償すると、図4(b)に示すようなスペクトル25aが得られる。
次に、1次元帯域拡張手段4において、2次元相互コヒーレント化手段19で出力されるスペクトル25a,25bをクロスレンジの空間周波数fx 方向に内挿あるいは外挿してスペクトルの帯域幅を拡張する。その結果、図4(c)に示すように拡張され連続スペクトル26が生成される。
次に、レンジ圧縮手段5において、拡張された連続スペクトル26をフーリエ変換してレンジを圧縮し、レンジ方向の分解能を向上させる。最後に、クロスレンジ圧縮手段6において、レンジ圧縮手段5から出力される信号をクロスレンジ方向(fx 方向)にフーリエ変換してクロスレンジを圧縮し、高いクロスレンジ分解能を実現することができる。
【0016】
ここで、2次元相互コヒーレント化手段19の詳細な動作を、図3の構成を用いて説明する。
この実施の形態1において、第1のレーダの受信信号24aはP個の指数関数の和で表されるものと仮定する。ただし、モデルは2次元に拡張された次式を用いる。
【数5】
また、信号の極を求めるにあたって、従来のレーザ装置ではRoot−Music手段9を使用していたが、このアルゴリズムを2次元信号に適用する方法は知られていない。そこで、ここではピークサーチを行う2次元Music手段20aを用いて信号24aの極を求める。この手順について、以下に説明する。
始めに、スペクトル24をsm,n で表記することとする。ただし、スペクトル24aは、fx 方向にN1 点、fy 方向にM1 点の標本を持ち、(m=0,1,・・・,M11 )、(n=0,1,・・・,N11 )とする。また、スペクトル24bは,fx 方向にN2 点、fy 方向にM2 点の標本を持ち、(m=MM2 ,…,M1)、(n=NN2 ,fx 方向,N1)とする。ここに、N、Mは帯域拡張後のスペクトル26のfx 、fy 方向の標本点数で、この実施の形態1においては、M1 =M2 =Mである。
【0017】
次に、スペクトル24aについて次のHankel行列H1 を求める。ただし、Lm 、Ln は、それぞれfy 方向とfx 方向の相関窓長である。
【数6】
この行列H1 を次のように特異値分解する。ただし、*は共役複素数を、Tは転置行列を表す。
【数7】
ここに、S1 はH1 の特異値を対角要素にもつ対角行列、U1 、V1 はそれぞれ左特異ベクトルと右特異ベクトルを列ベクトルにもつユニタリ行列である。
V1 は信号空間V1sn と雑音空間V1nから構成されており、次のように表すことができる。
【数8】
ここに、V1sn の列数Pk は、スペクトル24aの信号次元数に一致し、例えば行列S1 の対角要素に現れる固有値の大きさに基づくなどの一般的な方法で求められる。
【0018】
そこで、まず信号次元数Pk を行列S1 から求め、これに基づいて、雑音空間V1nを取り出す。そして次のMusicスペクトルPmuを求める。
【数9】
ここに、a(ωm ,ωn )はステアリングベクトルであり、次式で定義される。
【数10】
(9)式で計算されるPmuがピークを持つ座標(ωm ,ωn )の組がスペクトルの極に対応する。そこで、2次元Music手段20aはPmuがピークをもつ座標(ωm ,ωn )の組を出力する。また、もう一方の2次元Music手段20bもスペクトル24bについて同様の計算を行う。
【0019】
次に、2次元all−pole推定手段21aにおいて、2次元Music手段20aが出力する座標(ωm ,ωn )の組に基づいて、(5)式の係数ak 、pk 、qk を求め、モデルX1 を決定する。この手順について、以下で数式を用いて説明する。はじめに、受信信号は次のようにモデル化される。
【数11】
(5)式と比較してわかるように、pk =ωmk、qk =ωnkである。ただし、(ωmk、ωnk)は2次元Music手段20aが出力する座標(ωm ,ωn )のk番目の極である。
次に、ak については、スペクトル24a(sm,n (但し、m=0,1,…,M1 1))と(11)式の差が最小となるように選ぶ。これは一般的な最小二乗法を解くことによって計算できる。この結果、(5)式の係数ak 、pk 、qk が全て求まり、モデルX1 が決定される。そこで、2次元all−pole推定手段21aは、係数ak 、pk 、qk を出力する。また、もう一方の2次元all−pole推定手段21bにおいても同様の計算を行い、モデルX2 を決定する。
【0020】
非線形最小二乗手段22では、(12)式に示される指標Cを最小化するA、Δθ、およびΔφを求める。すなわち、2つのモデルX1 とX2 の位相の連続性を最大化するパラメータを探索する。ただし、X1 とX2 は、それぞれ信号24aと24bから求められたモデル、Aは2つのモデルの振幅比を調整する係数、ΔθとΔφは2つのモデルのレンジとクロスレンジの位相差を調整する係数、MとNはレンジとクロスレンジのスペクトルの標本点数である。
【数12】
次に、2次元スペクトル補償手段23では、推定されたパラメータAとΔθおよびΔφを用いて信号24aを次式のように補償する。このことにより、図4(b)に示されるように位相の連続性の保たれた信号25aと25bの組を得ることができる。
【数13】
【0021】
以上のように、この実施の形態1によれば、第1および第2のレーダを、目標から見て異なる角度に配置し、それぞれが同一の周波数帯域で目標を観測し、2次元相互コヒーレント化手段を用いて、得られた各受信信号スペクトルの位相を一致させる処理を行い、1次元帯域拡張手段により、位相を一致させた受信信号スペクトルを、クロスレンジ方向に内挿あるいは外挿して帯域幅を拡張した連続スペクトルを生成し、連続スペクトルのレンジとクロスレンジを圧縮手段で圧縮し、目標の観測画像として出力するようにしたので、信号スペクトルをクロスレンジの空間周波数方向に拡張して分解能を改善でき、それぞれのレーダが単独で達成できるクロスレンジ分解能を超えて高分解能化された目標の画像を得ることができる。
【0022】
実施の形態2.
図5はこの発明の実施の形態2によるレーダ装置の機能構成を示すブロック図である。図において、図2に相当する機能部分には同一符号を付し、原則としてその説明を省略する。この実施の形態2の場合、2次元相互コヒーレント化手段19の後にレンジ圧縮手段5を設け、その後に1次元帯域拡張手段4を設けている点が上記実施の形態1と異なっている。上記実施の形態1では、1次元帯域拡張手段4が信号スペクトルをクロスレンジの空間周波数fx 方向に拡張した後に、レンジ圧縮手段5によりレンジの分解能を向上させるためのフーリエ変換を行ってレンジを圧縮していたが、この実施の形態2では、この処理順序を入れ替えるようにしている。
この実施の形態2では、1次元帯域拡張手段4に先んじてレンジを圧縮することで、目標の散乱点が観測されないレンジビンについては、1次元帯域拡張手段4およびクロスレンジ圧縮手段6の処理を省略することが可能となる。すなわち、この実施の形態2のレーダ装置の場合、実施の形態1の効果に加えて、そのための演算量の削減を可能にする。
【0023】
実施の形態3.
図6はこの発明の実施の形態3に係るレーダ装置の観測のジオメトリを示す説明図である。上記各実施の形態では、クロスレンジの空間分解能だけ拡張したレーダを2つ備えることを前提としていたが、この実施の形態3は、1個の送受信アンテナ1で移動する目標8に対して、時間を前後して電波を発射して同様な観測を行うものである。
図7はこの発明の実施の形態3によるレーダ装置の機能構成を示すブロック図である。図において、図2に相当する機能部分には同一符号を付し、原則としてその説明を省略する。この実施の形態3の場合、2つのレーダに替えて、アンテナ1と送受信機2からなる1つのレーダを設け、また記憶手段27を設けた点が上記実施の形態1と異なっている。
【0024】
次に、動作について説明する。
これまでの各実施の形態では、2つのレーダで収集された受信信号の空間スペクトルは目標8を異なる方位から同時に観測したものであったが、空間スペクトルを得るためには、観測時刻が同一であることは必ずしも必要ではない。そこで、この実施の形態3の場合には、移動する目標8を適当な時間間隔を設けて2回観測することにより、異なる方位から目標8を観測した信号を1組得るようにしている。そのため、まず、送受信アンテナ1により、目標8に向けて複数のパルスを送信してその反射波を受信し、受信信号を記憶手段27に蓄積する。次に、適当な時間をおいてから、再びアンテナ1により、目標8に向けて複数のパルスを送信してその反射波を受信し、2次元相互コヒーレント化手段19へ与える。同時に、先に観測して記憶手段27に蓄積した受信データも2次元相互コヒーレント化手段19へ与える。2次元相互コヒーレント化手段19以降の処理動作は、実施の形態1で述べたものと同じであるので、説明は省略する。
【0025】
以上のように、この実施の形態3によれば、目標に対して配置するレーダを1つとし、目標を所定の時間間隔をおいて少なくとも2回観測するようにし、先に観測した受信信号を記憶手段に蓄積しておき、2回目に観測した受信信号と先に観測し記憶手段に蓄積された受信信号のスペクトルの位相を、2次元相互コヒーレント化手段で一致させる処理を行うようにしたので、レーダの数を減らしても、実施の形態1と同様な効果を得ることができる。また、2次元相互コヒーレント化手段19の後段の処理において、実施の形態2の処理手順を適用した場合には、実施の形態2と同様な効果を得ることも可能である。
【0026】
実施の形態4.
上記実施の形態1では、信号スペクトルをクロスレンジの空間周波数fx 方向にのみ拡張して分解能を改善するようにしたが、この実施の形態4では、さらに、レンジの空間周波数fy 方向にも拡張して分解能を改善する方法について説明する。
この実施の形態4では、図1で示したと同様に、2つのレーダが目標から見て異なる方位に設置されていることを想定している。また、実施の形態1では、2つのレーダが同一の周波帯域で目標を観測することを想定したものであったが、この実施の形態4場合は、2つのレーダが異なる周波数帯域で観測することを想定している。
図8はこの発明の実施の形態4によるレーダ装置の機能構成を示すブロック図である。図において、図2に相当する機能部分には同一符号を付し、原則としてその説明を省略する。この実施の形態4の場合、図2の1次元帯域拡張手段4の代わりに、2次元帯域拡張手段28を設けた点が上記実施の形態1と異なっている。2次元帯域拡張手段28は、2次元相互コヒーレント化手段19で位相を一致させたそれぞれの受信信号の空間スペクトルを、レンジ方向とクロスレンジ方向に内挿あるいは外挿して帯域幅を拡張した連続スペクトルを生成する手段である。
【0027】
次に、動作について説明する。
この実施の形態4の場合の信号スペクトルは模式的に図9に示される。第1と第2のレーダの受信信号は、図9(a)のスペクトルは24a,24bのように表される。2次元相互コヒーレント化手段19では、これらの受信信号スペクトルの位相を、レンジとクロスレンジについて一致させてそれぞれの受信信号の空間スペクトルを生成する処理を行う。そのための詳細な動作については上記実施の形態1において説明した同様である。この位相を一致させた各受信信号の空間スペクトルは図9(b)の25a,25bのように表される。
次に、2次元帯域拡張手段28では、2次元相互コヒーレント化手段19で位相の連続性(コヒーレンシー)が保たれるようにしたそれぞれの受信信号の空間スペクトル25a,25bを、レンジ方向とクロスレンジ方向に内挿あるいは外挿して帯域幅を拡張した連続スペクトルを生成する。このようにして得られた連続スペクトルは図9(c)の29で表される。すなわち、クロスレンジのfx 方向のスペクトルの帯域幅を拡大してクロスレンジ分解能を向上させ、加えてレンジのfy 方向のスペクトルの帯域幅を拡大してレンジ分解能も向上させることができる。この2次元帯域拡張手段28の詳細動作については後述する。
次に、レンジ圧縮手段5では、帯域幅が拡張された信号スペクトル29を、レンジの空間周波数fy 方向にフーリエ変換してレンジを圧縮し、高いレンジ分解能を実現する。最後に、クロスレンジ圧縮手段6により、レンジが圧縮された信号を、クロスレンジの空間周波数fx 方向にフーリエ変換することによりクロスレンジを圧縮し、高いクロスレンジ分解能を実現する。
【0028】
ここで、2次元帯域拡張手段28の詳細動作について図10の機能構成を用いて説明する。
ここでは、信号25aと25bを合成した信号は指数関数の和で表されるものと仮定し、(14)式の信号モデルで表現する。ただし、(5)式が部分帯域の信号モデルであったのに対して、(14)式は全帯域の信号モデルであるので、このモデルXをglobal−poleと呼ぶことにする。
【数14】
上記従来のレーダ装置では、Root−Music手段9を用いて信号25aと25bを合成した信号の極を求めていたが、このアルゴリズムを2次元の信号に対して適用する方法は知られていない。そこで、この実施の形態4においては、上記実施の形態1と同様にピークサーチを行う2次元のMusic手段20を用いる。その詳細な動作は実施の形態1で述べた2次元Music手段20a,20bと同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0029】
次に、2次元Music手段20で求めた極に基づいて、2次元global−pole推定手段31において(14)式の係数ak 、pk およびqk を求め、モデルXの初期値を決定する。その詳細な動作は、上記実施の形態1で述べた2次元all−pole推定手段21a,21bと同様であるので、ここでは説明を省略する。
次に、非線形最小二乗手段32において、(15)式に示される指標Jを最小化するモデルXを求めるために係数ak 、pk およびqk をパラメータとして探索する。ただし、sm,n は信号25aと25bを合成した信号のスペクトル、wm,n は適当な重み係数、<m,n>は信号25aと25bが値を持つfy 方向とfx 方向の標本点の組である。
【数15】
最後に、2次元スペクトル内外挿手段33において、非線形最小二乗手段32で推定されたパラメータak 、pk およびqk を(14)式に当てはめて、帯域拡張された信号スペクトル29を得る。
【0030】
この実施の形態4のレーダ装置によって得られる目標の画像は表示手段7で表示されるが、その画像の比較例を図11に示す。図11(a)は2つのレーダの一方の受信信号24aから得られるレーダ画像、図11(b)は他方のレーダの受信信号24bから得られるレーダ画像である。また、図11(c)は、この実施の形態4これらの受信信号を、この実施の形態4により2次元で帯域拡張した信号29から得られるレーダ画像である。図11(a)と(b)の画像では明瞭でなかった2つの散乱点が図11(c)では分離されて表示されていることがわかる。
【0031】
以上のように、この実施の形態4によれば、第1および第2のレーダを、目標から見て異なる角度に配置し、それぞれが異なる周波数帯域で目標を観測し、2次元相互コヒーレント化手段を用いて、得られた各受信信号スペクトルの位相を一致させる処理を行い、2次元帯域拡張手段を用いて、位相を一致させたそれぞれの受信信号の空間スペクトルを、レンジ方向とクロスレンジ方向に内挿あるいは外挿して帯域幅を拡張した連続スペクトルを生成し、生成された連続スペクトルのレンジとクロスレンジを圧縮手段により圧縮し、目標の観測画像として出力するようにしたので、それぞれのレーダが単独で達成できるレンジとクロスレンジの分解能を超えて、2次元で高分解能化された目標の画像を得ることができる。
【0032】
実施の形態5.
2つのレーダを用いたこれまでの実施の形態では、2つの送受信アンテナ1aと1bの配置に対しては、目標8から見て異なる方位に設置されていること以外に制限が与えられていなかったが、この実施の形態5では、これら送受信アンテナの配置に対して新たに条件を与えることにより、画像の分解能の劣化を防ぐ方法について説明する。
図12は実施の形態5に係るアンテナの配置関係を示す説明図である。この例では、第3のレーダの送受信アンテナ1cが他の送受信アンテナ1a,1bと異なる位置に設置されている。ここで、送受信アンテナ1a,1bに着目して見たとき、30aは第1の送受信アンテナ1aから目標8を見る第1のLOS(Line of sight)、30bは第2の送受信アンテナ1bから目標8を見る第2のLOSである。34aは第1の送受信アンテナ1aから目標8を観測した場合に画像が形成される第1の画像投影面、34bは第2の送受信アンテナ1bから目標8を観測した場合に画像が形成される第2の画像投影面、35は送受信アンテナに対する目標8の回転角速度ベクトルである。回転角速度ベクトル35は、目標8のロール、ピッチ、ヨーによっても生じるが、目標8が直進した場合にもアンテナに対する向きが変化して等価的な回転を生じる。
図13はこの発明の実施の形態5によるレーダ装置の機能構成を示すブロック図である。図において、図2に相当する機能部分には同一符号を付し、原則としてその説明を省略する。この実施の形態5の場合、送受信アンテナ1cと送受信機2cからなる第3のレーダが新たに設けられ、また、各送受信機2a,2b,2cと2次元相互コヒーレント化手段19の間に選択手段36を設けた点が上記実施の形態1と異なっている。
【0033】
次に、動作について説明する。
この発明の原理に従うレーダ装置は目標の2次元画像を得るものであるが、このことは3次元の目標を2次元平面に投影したものとして考えることができる。ここでは、画像が投影される仮想的な平面を画像投影面と呼ぶことにする。撮像の原理から、画像投影面34はLOS30と回転ベクトル35の外積が作るベクトルと、LOS30の方向ベクトルとを含む平面であることが知られている。すなわち、送受信アンテナ1a,1bまたは目標8を原点として、LOSとLOS×Ωで張られる平面である。ここに、Ωは回転角速度ベクトル35である。
実施の形態1から実施の形態4では、画像投影面34aと34bが一致していることを暗黙の前提としており、これらが一致しない場合にはスペクトル24aと24bの位相の連続性を正しく一致させることができず、結果として画像の分解能が劣化したり、あるいは偽像を生じたりするという問題が起きる。そこで、この実施の形態5では、選択手段36を設けている。選択手段36では、それぞれの送受信アンテナ1a,1b,1cにおける画像投影面34を監視し、その画像投影面の差が小さいアンテナから得られる受信信号の組を選択する。そして、選択された2つの受信信号に対して、実施の形態1と同様に2次元相互コヒーレント化手段19以降の処理を行う。このことにより、画像の分解能の劣化あるいは偽像の発生を防止することができる。なお、この例では、レーダの数を3個としているが、それ以上の数を適用してもよい。
【0034】
以上のように、この実施の形態5によれば、目標から見て第1および第2のレーダと異なる角度に、第1および第2のレーダと同一の周波数帯域で目標を観測する少なくとも1つのレーダ配置し、選択手段により、各レーダが目標を観測したときに形成される画像投影面の差が小さい受信信号の組を選択して、2次元相互コヒーレント化手段で処理するようにしたので、クロスレンジについて高分解能画像を実現することができると共に、分解能の劣化や偽像の発生の少ないレーダ画像を観測可能にする。
なお、この実施の形態5の方法は、1つの送受信アンテナと記憶手段を用いた実施の形態3に対しても適用することが可能である。この場合には、3回以上の観測を行い、異なる方位から目標8を先の2回で観測した各受信信号を記憶手段27に蓄積し、最後に観測した受信信号と先に蓄積した受信信号の中から、観測時に形成される画像投影面の差が小さい受信信号の組を選択すればよい。ただし、選択にあたっては、アンテナの空間配置を選択するだけでなく、時間方向についても選択することになる。また、この実施の形態5の方法は、上記実施の形態4に対しても適用できることができる。ただし、この場合は、観測に用いる周波数帯域がレーダ毎に異なることが必要である。
【0035】
この発明は、上記各実施の形態において、レーダの受信信号を入力として処理することで説明したが、代わりに、それぞれのレーダで観測された目標の複素画像を2次元逆フーリエ変換して得られる空間スペクトルを入力として処理してもよく、同様な効果が得られることは明らかである。
また、上記各実施の形態を、固定されたレーダから移動目標を観測する、いわゆる逆合成開口レーダを対象として説明を行なってきたが、レーダが移動する、いわゆる合成開口レーダに適用してもよく、同様な効果を得ることができる。
さらに、上記各実施の形態において、2次元相互コヒーレント化手段19の2次元スペクトル補償手段23が一方の受信信号だけを補償する動作例を説明したが、補償する信号としては、もう一方の受信信号でもよく、あるいは両方に対してでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の実施の形態1、実施の形態2および実施の形態4に係るレーダ装置の観測のジオメトリを示す説明図である。
【図2】この発明の実施の形態1によるレーダ装置の機能構成を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る2次元相互コヒーレント化手段の機能構成を示すブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係るレーダ装置の信号スペクトルを示す模式図である。
【図5】この発明の実施の形態2によるレーダ装置の機能構成を示すブロック図である。
【図6】この発明の実施の形態3に係るレーダ装置の観測のジオメトリを示す説明図である。
【図7】この発明の実施の形態3によるレーダ装置の機能構成を示すブロック図である。
【図8】この発明の実施の形態4によるレーダ装置の機能構成を示すブロック図である。
【図9】この発明の実施の形態4に係るレーダ装置の信号スペクトルを示す模式図である。
【図10】この発明の実施の形態4に係る2次元帯域拡張手段の機能構成を示すブロック図である。
【図11】この発明の実施の形態4のレーダ装置で得られた目標の画像の例を示す説明図である。
【図12】この発明の実施の形態5に係るアンテナの配置関係を示す説明図である。
【図13】この発明の実施の形態5によるレーダ装置の機能構成を示すブロック図である。
【図14】従来のレーダ装置の観測のジオメトリを示す説明図である。
【図15】従来のレーダ装置の機能構成を示すブロック図である。
【図16】従来のレーダ装置で使用する1次元相互コヒーレント化手段の機能構成を示すブロック図である。
【図17】従来のレーダ装置で使用する1次元帯域拡張手段の機能構成を示すブロック図である。
【図18】従来のレーダ装置の信号スペクトルを示す模式図である。
【符号の説明】
【0037】
1,1a,1b 送受信アンテナ、2,2a,2b 送受信機、4 1次元帯域拡張手段、5 レンジ圧縮手段、6 クロスレンジ圧縮手段、7 表示手段、19 2次元相互コヒーレント化手段、27 記憶手段、28 2次元帯域拡張手段、36 選択手段。
【技術分野】
【0001】
この発明は、目標の高分解能画像を生成するレーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーダにおける距離分解能は占有帯域幅に依存する。例えば3センチメートルの分解能を実現するためには5ギガヘルツの帯域幅を必要とするが、周波数資源の有効利用の観点から、これだけの帯域幅を占有することは難しい。この問題に対処する方法として、一対のレーダを用い、例えば第1のレーダでは5.0から5.5ギガヘルツの周波数帯域、第2のレーダ装置では9.5から10.0ギガヘルツの周波数帯域を使用してそれぞれ観測を行い、その受信信号スペクトルを補間することによって、あたかも5から10ギガヘルツの周波数帯域で観測したスペクトルを推定しようとする試みがなされている。この場合、2つのレーダから目標までの距離は一般に異なるので、それぞれで観測されたスペクトルの位相変化は連続でなく、あるいはコヒーレントではない。そこで、従来のレーダ装置では、第1の周波数帯域で観測する第1のレーダと第2の周波数で観測する第2のレーダの空間スペクトルを、レンジ方向について位相を一致させた上で、これらの空間スペクトルに基づいて帯域を拡張することによりレンジの高分解能化を図っていた(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に掲載された従来のレーダ装置について説明する。
図14は従来のレーダ装置の観測のジオメトリを示す説明図である。図15は同レーダ装置の機能構成を示すブロック図である。図16は図15に示す1次元相互コヒーレント化手段の詳細な構成を示すブロック図、図17は図15に示す1次元帯域拡張手段の詳細な構成を示す図である。また、図18は同レーダ装置の信号スペクトルを示す模式図である。
図14に示すように、同一位置に設置された2つのレーダが同一の目標8を観測することを前提としている。すなわち、第1のレーダの送受信アンテナ1aと第2のレーダの送受信アンテナ1bにより、目標8に対するレーダ波の送受信を行う。ただし、2つのレーダの周波数帯域は異なる。このレーダ波のスペクトルを図18に示すが、横軸はレンジ方向の空間周波数あるいはレーダの瞬時送信周波数を表している。図18(a)において、16aは第1のレーダの受信信号、16bは第2のレーダの受信信号を表す。図18(b)において、17aは1次元相互コヒーレント化手段3の出力における第1のレーダの受信信号を表し、17bは1次元相互コヒーレント化手段3の出力における第2のレーダの受信信号を表す。なお、以下では1次元相互コヒーレント化手段3は第1のレーダの受信信号のみを補償することを想定して説明しているので、17bは16bと等しい。また、図18(c)において、18は1次元帯域拡張手段4の出力信号を表している。
【0004】
このレーダ装置の場合、第1および第2のレーダによるレンジ分解能は、スペクトル16aの帯域幅とスペクトル16bの帯域幅でそれぞれ規定され、これらの帯域幅が広いほど高いレンジ分解能を実現できる。そこで、2つのレーダで観測されたこれらのスペクトルを内挿あるいは外挿してスペクトルの帯域幅を拡大する。そのためにはスペクトル16aと16bの位相の連続性(コヒーレンシー)が保たれている必要があるが、図18(a)に示されるように、この条件は一般に成立しない。その理由は2つのレーダのアンテナ1a,1bの位相中心から目標8までの距離が、一般に完全には一致していないからである。この問題を解決するために、1次元相互コヒーレント化手段3を用いてスペクトル16aと16bの位相が連続になるようにスペクトルを補償するようにしている。スペクトル16aを補償したスペクトル17aのようになる。さらに、1次元帯域拡張手段4により、スペクトルを内挿あるいは外挿してスペクトルの帯域幅を拡大する。拡張されたスペクトルは図18(c)に示されるスペクトル18ようになる。次に、レンジ圧縮手段5により、拡張されたスペクトル18をフーリエ変換し、レンジを圧縮して高いレンジ分解能を実現する。最後に、クロスレンジ圧縮手段6において、受信信号をパルス方向にフーリエ変換することによりクロスレンジを圧縮して高いクロスレンジ分解能を実現する。これは、逆合成開口レーダとしてよく知られた原理に基づく処理である。
【0005】
次に、図16に示す1次元相互コヒーレント化手段3の詳細動作を説明する。
ここでは、信号16aと16bはP個の指数関数の和で表すものと仮定する。すなわち、次式のモデルで信号を表現する。
【数1】
まず、Root−Music手段9により、信号16aの極(pole)を求める。次に、1次元all−pole推定手段10aにおいて、極に基づいて(1)式の係数ak 、pk を求め、モデルM1 を決定する。信号16bについても同様の処理を行って係数ak 、pk を求め、モデルM2 を決定する。次に、非線形最小二乗手段11において、(2)式で表す指標Cを最小化するΔθとAを求める。すなわち、2つのモデルM1 とM2 の位相の連続性を最大化するパラメータを探索する。ただし、Aは2つのモデルの振幅比を調整する係数、Δθは2つのモデルの位相差を調整する係数、Nはスペクトルの標本点数(図18の横軸のサンプル数)とする。またjは√(1)である。
【数2】
最後に、1次元スペクトル補償手段12において、最小二乗手段11で求めたパラメータΔθと係数Aを用いて信号16aを補償し、図18(b)に示されるように位相の連続性が保たれた信号17aと17bの組が得られる。
【0006】
次に、図17に示す1次元帯域拡張手段4の詳細動作を説明する。
なお、ここでも信号17aと17bを合成した信号は指数関数の和で表されるものと仮定し、(3)式のモデルで信号を表現する。(3)式は(1)式と同じ形をしているが、信号17aと17bを合成した信号に対するモデルであるので、こちらのモデルMをglobal−poleと呼ぶことにする。
【数3】
まず、Root−Music手段9により、信号17aと17bを合成した信号の極を求める。次に、1次元global−pole推定手段13が、極に基づいて(3)式の係数ak 、pk を求め、モデルMの初期値を決定する。次に、非線形最小二乗手段14において、(4)式に示される指標Jを最小化するモデルMを求めるためにak 、pk をパラメータとして探索する。ただし、sn は信号17aと17bを合成した信号のスペクトル、wn は適当な重み係数、<n>は信号17aと17bが値をもつ標本点である。
【数4】
最後に、1次元スペクトル内外挿手段15において、非線形最小二乗手段14で推定されたパラメータak 、pk を(3)式に当てはめて帯域拡張された信号18を得る。以上のように動作することによって、従来のレーダ装置ではレンジについて高分解能化された目標の画像を得ていた。
【0007】
【特許文献1】米国特許第5945940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のレーダ装置は、相互コヒーレント化手段が1次元の信号にしか対応していないので、レンジ方向にしか位相の連続性を補償することができなかった。また、帯域拡張手段も1次元の信号にしか対応していなかった。したがって、高分解能化できるのはレンジ方向のみに限られており、クロスレンジ方向についての高分解能化には対応できなかった。
【0009】
この発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、クロスレンジ方向の帯域を拡張して高分解能画像を生成することが可能なレーダ装置を得ることを目的とする。
また、この発明は、レンジ方向に加えて、クロスレンジ方向についても帯域を拡張して高分解能画像を生成することが可能なレーダ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るレーダ装置は、目標に対して送受信アンテナを配置し、所定の周波数帯域で目標を観測する第1のレーダと、目標から見て第1のレーダの送受信アンテナと異なる角度に送受信アンテナを配置し、所定の周波数帯域で目標を観測する第2のレーダと、第1および第2のレーダで得られる受信信号スペクトルの位相を一致させる処理を行う2次元相互コヒーレント化手段と、2次元相互コヒーレント化手段で位相を一致させた受信信号スペクトルを、クロスレンジ方向に内挿あるいは外挿して帯域幅を拡張した連続スペクトルを生成する1次元帯域拡張手段と、帯域拡張手段で生成された連続スペクトルのレンジを圧縮するレンジ圧縮手段と、レンジ圧縮手段でレンジが圧縮された連続スペクトルのクロスレンジを圧縮し、目標の観測画像として出力するクロスレンジ圧縮手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、クロスレンジ方向の帯域を拡張して高分解能画像を実現する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実施の形態1.
図1はこの発明のレーダ装置の観測のジオメトリを示す説明図である。従来のレーダ装置では、図14に示すように2つのレーダが同一の位置に設置されていることを想定していたが、この実施の形態1では、図1に示すように2つのレーダのアンテナ1a,1bが目標8から見て互いに異なる方位に設置されていることを想定している。
図2はこの発明の実施の形態1によるレーダ装置の機能構成を示すブロック図である。図2の構成は、1次元相互コヒーレント化手段に替えて、2次元相互コヒーレント化手段19を用いた以外は図15に示した従来のレーダ装置と同じ機能部で構成されている。
図2において、送受信機2a,2bは、送受信アンテナ1a,1bを用いて同一の周波数帯域で目標を観測する第1、第2のレーダを構成する。2次元相互コヒーレント化手段19は、送受信機2a,2bで得られる受信信号スペクトルの位相を一致させる処理を行う手段である。1次元帯域拡張手段4は、2次元相互コヒーレント化手段19で得られた位相を一致させた受信信号スペクトルを、クロスレンジ方向に内挿あるいは外挿して帯域幅を拡張した連続スペクトルを生成する手段である。レンジ圧縮手段5は、1次元帯域拡張手段4で生成された連続スペクトルのレンジを圧縮する手段である。クロスレンジ圧縮手段6は、レンジ圧縮手段5でレンジが圧縮された連続スペクトルのクロスレンジを圧縮する手段である。表示手段7は、処理して得られた目標の画像を表示する手段である。
図3は図2に示した2次元相互コヒーレント化手段19の詳細な機能構成を示すブロック図である。2次元相互コヒーレント化手段19は、2次元Music手段20a,20b、2次元all−pole推定手段21a,21b、非線形最小二乗手段22および2次元スペクトル補償手段23を備えており、その詳細については後述する。
【0013】
次に、動作について説明する。
この実施の形態1では、2つのレーダが同一の周波帯域で目標8を観測することを想定している。この場合の信号スペクトルは模式的に図4で示される。横軸はクロスレンジ方向の空間周波数fx あるいはパルスヒット、縦軸はレンジ方向の空間周波数fy あるいはレーダの瞬時送信周波数を表す。また、濃淡は複素信号振幅を表している。図4(a)において、24aは送受信アンテナ1a、送受信機2aからなる第1のレーダの受信信号、24bは送受信アンテナ1b、送受信機2bからなる第2のレーダの受信信号を表している。各レーダのレンジ分解能はスペクトル24a,24bのfy 方向の帯域幅で規定され、また、クロスレンジ分解能はスペクトル24a,24bのfx 方向の帯域幅で規定されており、したがって、これら帯域幅を広くすることができれば高い分解能を実現できることになる。図4(b)において、25aと25bは2次元相互コヒーレント化手段19の出力で、位相を一致させた受信信号スペクトルを表している。図4(c)において、26は1次元帯域拡張手段4の出力で、図4(b)の受信信号スペクトル25a,25bを、クロスレンジ方向に内挿あるいは外挿して帯域幅を拡張させた連続スペクトルを表している。
【0014】
この実施の形態1では、2つのレーダで観測された受信信号スペクトルを内挿あるいは外挿してfx 方向のスペクトルの帯域幅を拡張し、クロスレンジ分解能を向上させることを目指す。スペクトルを内挿あるいは外挿するためには、受信信号スペクトル24aと24bの位相の連続性(コヒーレンシー)が保たれることが必要であるが、この条件は一般に成立しないため、上記従来のレーダ装置の動作で説明したように、fy 方向のコヒーレンシーのみを確保するために一次元相互コヒーレント化手段を用いていた。しかし、この実施の形態1の場合には、図4(b)に示すように、fy 方向に加えて、fx 方向でもコヒーレンシーを確保する必要があり、別の方法が要求される。そのために、この実施の形態1では、2次元相互コヒーレント化手段19を用いる。
【0015】
2次元相互コヒーレント化手段19は、後述するように、第1および第2のレーダの受信信号スペクトル24aと24bの位相を一致させるように補償する。第1のレーダの受信信号スペクトル24aを補償すると、図4(b)に示すようなスペクトル25aが得られる。
次に、1次元帯域拡張手段4において、2次元相互コヒーレント化手段19で出力されるスペクトル25a,25bをクロスレンジの空間周波数fx 方向に内挿あるいは外挿してスペクトルの帯域幅を拡張する。その結果、図4(c)に示すように拡張され連続スペクトル26が生成される。
次に、レンジ圧縮手段5において、拡張された連続スペクトル26をフーリエ変換してレンジを圧縮し、レンジ方向の分解能を向上させる。最後に、クロスレンジ圧縮手段6において、レンジ圧縮手段5から出力される信号をクロスレンジ方向(fx 方向)にフーリエ変換してクロスレンジを圧縮し、高いクロスレンジ分解能を実現することができる。
【0016】
ここで、2次元相互コヒーレント化手段19の詳細な動作を、図3の構成を用いて説明する。
この実施の形態1において、第1のレーダの受信信号24aはP個の指数関数の和で表されるものと仮定する。ただし、モデルは2次元に拡張された次式を用いる。
【数5】
また、信号の極を求めるにあたって、従来のレーザ装置ではRoot−Music手段9を使用していたが、このアルゴリズムを2次元信号に適用する方法は知られていない。そこで、ここではピークサーチを行う2次元Music手段20aを用いて信号24aの極を求める。この手順について、以下に説明する。
始めに、スペクトル24をsm,n で表記することとする。ただし、スペクトル24aは、fx 方向にN1 点、fy 方向にM1 点の標本を持ち、(m=0,1,・・・,M11 )、(n=0,1,・・・,N11 )とする。また、スペクトル24bは,fx 方向にN2 点、fy 方向にM2 点の標本を持ち、(m=MM2 ,…,M1)、(n=NN2 ,fx 方向,N1)とする。ここに、N、Mは帯域拡張後のスペクトル26のfx 、fy 方向の標本点数で、この実施の形態1においては、M1 =M2 =Mである。
【0017】
次に、スペクトル24aについて次のHankel行列H1 を求める。ただし、Lm 、Ln は、それぞれfy 方向とfx 方向の相関窓長である。
【数6】
この行列H1 を次のように特異値分解する。ただし、*は共役複素数を、Tは転置行列を表す。
【数7】
ここに、S1 はH1 の特異値を対角要素にもつ対角行列、U1 、V1 はそれぞれ左特異ベクトルと右特異ベクトルを列ベクトルにもつユニタリ行列である。
V1 は信号空間V1sn と雑音空間V1nから構成されており、次のように表すことができる。
【数8】
ここに、V1sn の列数Pk は、スペクトル24aの信号次元数に一致し、例えば行列S1 の対角要素に現れる固有値の大きさに基づくなどの一般的な方法で求められる。
【0018】
そこで、まず信号次元数Pk を行列S1 から求め、これに基づいて、雑音空間V1nを取り出す。そして次のMusicスペクトルPmuを求める。
【数9】
ここに、a(ωm ,ωn )はステアリングベクトルであり、次式で定義される。
【数10】
(9)式で計算されるPmuがピークを持つ座標(ωm ,ωn )の組がスペクトルの極に対応する。そこで、2次元Music手段20aはPmuがピークをもつ座標(ωm ,ωn )の組を出力する。また、もう一方の2次元Music手段20bもスペクトル24bについて同様の計算を行う。
【0019】
次に、2次元all−pole推定手段21aにおいて、2次元Music手段20aが出力する座標(ωm ,ωn )の組に基づいて、(5)式の係数ak 、pk 、qk を求め、モデルX1 を決定する。この手順について、以下で数式を用いて説明する。はじめに、受信信号は次のようにモデル化される。
【数11】
(5)式と比較してわかるように、pk =ωmk、qk =ωnkである。ただし、(ωmk、ωnk)は2次元Music手段20aが出力する座標(ωm ,ωn )のk番目の極である。
次に、ak については、スペクトル24a(sm,n (但し、m=0,1,…,M1 1))と(11)式の差が最小となるように選ぶ。これは一般的な最小二乗法を解くことによって計算できる。この結果、(5)式の係数ak 、pk 、qk が全て求まり、モデルX1 が決定される。そこで、2次元all−pole推定手段21aは、係数ak 、pk 、qk を出力する。また、もう一方の2次元all−pole推定手段21bにおいても同様の計算を行い、モデルX2 を決定する。
【0020】
非線形最小二乗手段22では、(12)式に示される指標Cを最小化するA、Δθ、およびΔφを求める。すなわち、2つのモデルX1 とX2 の位相の連続性を最大化するパラメータを探索する。ただし、X1 とX2 は、それぞれ信号24aと24bから求められたモデル、Aは2つのモデルの振幅比を調整する係数、ΔθとΔφは2つのモデルのレンジとクロスレンジの位相差を調整する係数、MとNはレンジとクロスレンジのスペクトルの標本点数である。
【数12】
次に、2次元スペクトル補償手段23では、推定されたパラメータAとΔθおよびΔφを用いて信号24aを次式のように補償する。このことにより、図4(b)に示されるように位相の連続性の保たれた信号25aと25bの組を得ることができる。
【数13】
【0021】
以上のように、この実施の形態1によれば、第1および第2のレーダを、目標から見て異なる角度に配置し、それぞれが同一の周波数帯域で目標を観測し、2次元相互コヒーレント化手段を用いて、得られた各受信信号スペクトルの位相を一致させる処理を行い、1次元帯域拡張手段により、位相を一致させた受信信号スペクトルを、クロスレンジ方向に内挿あるいは外挿して帯域幅を拡張した連続スペクトルを生成し、連続スペクトルのレンジとクロスレンジを圧縮手段で圧縮し、目標の観測画像として出力するようにしたので、信号スペクトルをクロスレンジの空間周波数方向に拡張して分解能を改善でき、それぞれのレーダが単独で達成できるクロスレンジ分解能を超えて高分解能化された目標の画像を得ることができる。
【0022】
実施の形態2.
図5はこの発明の実施の形態2によるレーダ装置の機能構成を示すブロック図である。図において、図2に相当する機能部分には同一符号を付し、原則としてその説明を省略する。この実施の形態2の場合、2次元相互コヒーレント化手段19の後にレンジ圧縮手段5を設け、その後に1次元帯域拡張手段4を設けている点が上記実施の形態1と異なっている。上記実施の形態1では、1次元帯域拡張手段4が信号スペクトルをクロスレンジの空間周波数fx 方向に拡張した後に、レンジ圧縮手段5によりレンジの分解能を向上させるためのフーリエ変換を行ってレンジを圧縮していたが、この実施の形態2では、この処理順序を入れ替えるようにしている。
この実施の形態2では、1次元帯域拡張手段4に先んじてレンジを圧縮することで、目標の散乱点が観測されないレンジビンについては、1次元帯域拡張手段4およびクロスレンジ圧縮手段6の処理を省略することが可能となる。すなわち、この実施の形態2のレーダ装置の場合、実施の形態1の効果に加えて、そのための演算量の削減を可能にする。
【0023】
実施の形態3.
図6はこの発明の実施の形態3に係るレーダ装置の観測のジオメトリを示す説明図である。上記各実施の形態では、クロスレンジの空間分解能だけ拡張したレーダを2つ備えることを前提としていたが、この実施の形態3は、1個の送受信アンテナ1で移動する目標8に対して、時間を前後して電波を発射して同様な観測を行うものである。
図7はこの発明の実施の形態3によるレーダ装置の機能構成を示すブロック図である。図において、図2に相当する機能部分には同一符号を付し、原則としてその説明を省略する。この実施の形態3の場合、2つのレーダに替えて、アンテナ1と送受信機2からなる1つのレーダを設け、また記憶手段27を設けた点が上記実施の形態1と異なっている。
【0024】
次に、動作について説明する。
これまでの各実施の形態では、2つのレーダで収集された受信信号の空間スペクトルは目標8を異なる方位から同時に観測したものであったが、空間スペクトルを得るためには、観測時刻が同一であることは必ずしも必要ではない。そこで、この実施の形態3の場合には、移動する目標8を適当な時間間隔を設けて2回観測することにより、異なる方位から目標8を観測した信号を1組得るようにしている。そのため、まず、送受信アンテナ1により、目標8に向けて複数のパルスを送信してその反射波を受信し、受信信号を記憶手段27に蓄積する。次に、適当な時間をおいてから、再びアンテナ1により、目標8に向けて複数のパルスを送信してその反射波を受信し、2次元相互コヒーレント化手段19へ与える。同時に、先に観測して記憶手段27に蓄積した受信データも2次元相互コヒーレント化手段19へ与える。2次元相互コヒーレント化手段19以降の処理動作は、実施の形態1で述べたものと同じであるので、説明は省略する。
【0025】
以上のように、この実施の形態3によれば、目標に対して配置するレーダを1つとし、目標を所定の時間間隔をおいて少なくとも2回観測するようにし、先に観測した受信信号を記憶手段に蓄積しておき、2回目に観測した受信信号と先に観測し記憶手段に蓄積された受信信号のスペクトルの位相を、2次元相互コヒーレント化手段で一致させる処理を行うようにしたので、レーダの数を減らしても、実施の形態1と同様な効果を得ることができる。また、2次元相互コヒーレント化手段19の後段の処理において、実施の形態2の処理手順を適用した場合には、実施の形態2と同様な効果を得ることも可能である。
【0026】
実施の形態4.
上記実施の形態1では、信号スペクトルをクロスレンジの空間周波数fx 方向にのみ拡張して分解能を改善するようにしたが、この実施の形態4では、さらに、レンジの空間周波数fy 方向にも拡張して分解能を改善する方法について説明する。
この実施の形態4では、図1で示したと同様に、2つのレーダが目標から見て異なる方位に設置されていることを想定している。また、実施の形態1では、2つのレーダが同一の周波帯域で目標を観測することを想定したものであったが、この実施の形態4場合は、2つのレーダが異なる周波数帯域で観測することを想定している。
図8はこの発明の実施の形態4によるレーダ装置の機能構成を示すブロック図である。図において、図2に相当する機能部分には同一符号を付し、原則としてその説明を省略する。この実施の形態4の場合、図2の1次元帯域拡張手段4の代わりに、2次元帯域拡張手段28を設けた点が上記実施の形態1と異なっている。2次元帯域拡張手段28は、2次元相互コヒーレント化手段19で位相を一致させたそれぞれの受信信号の空間スペクトルを、レンジ方向とクロスレンジ方向に内挿あるいは外挿して帯域幅を拡張した連続スペクトルを生成する手段である。
【0027】
次に、動作について説明する。
この実施の形態4の場合の信号スペクトルは模式的に図9に示される。第1と第2のレーダの受信信号は、図9(a)のスペクトルは24a,24bのように表される。2次元相互コヒーレント化手段19では、これらの受信信号スペクトルの位相を、レンジとクロスレンジについて一致させてそれぞれの受信信号の空間スペクトルを生成する処理を行う。そのための詳細な動作については上記実施の形態1において説明した同様である。この位相を一致させた各受信信号の空間スペクトルは図9(b)の25a,25bのように表される。
次に、2次元帯域拡張手段28では、2次元相互コヒーレント化手段19で位相の連続性(コヒーレンシー)が保たれるようにしたそれぞれの受信信号の空間スペクトル25a,25bを、レンジ方向とクロスレンジ方向に内挿あるいは外挿して帯域幅を拡張した連続スペクトルを生成する。このようにして得られた連続スペクトルは図9(c)の29で表される。すなわち、クロスレンジのfx 方向のスペクトルの帯域幅を拡大してクロスレンジ分解能を向上させ、加えてレンジのfy 方向のスペクトルの帯域幅を拡大してレンジ分解能も向上させることができる。この2次元帯域拡張手段28の詳細動作については後述する。
次に、レンジ圧縮手段5では、帯域幅が拡張された信号スペクトル29を、レンジの空間周波数fy 方向にフーリエ変換してレンジを圧縮し、高いレンジ分解能を実現する。最後に、クロスレンジ圧縮手段6により、レンジが圧縮された信号を、クロスレンジの空間周波数fx 方向にフーリエ変換することによりクロスレンジを圧縮し、高いクロスレンジ分解能を実現する。
【0028】
ここで、2次元帯域拡張手段28の詳細動作について図10の機能構成を用いて説明する。
ここでは、信号25aと25bを合成した信号は指数関数の和で表されるものと仮定し、(14)式の信号モデルで表現する。ただし、(5)式が部分帯域の信号モデルであったのに対して、(14)式は全帯域の信号モデルであるので、このモデルXをglobal−poleと呼ぶことにする。
【数14】
上記従来のレーダ装置では、Root−Music手段9を用いて信号25aと25bを合成した信号の極を求めていたが、このアルゴリズムを2次元の信号に対して適用する方法は知られていない。そこで、この実施の形態4においては、上記実施の形態1と同様にピークサーチを行う2次元のMusic手段20を用いる。その詳細な動作は実施の形態1で述べた2次元Music手段20a,20bと同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0029】
次に、2次元Music手段20で求めた極に基づいて、2次元global−pole推定手段31において(14)式の係数ak 、pk およびqk を求め、モデルXの初期値を決定する。その詳細な動作は、上記実施の形態1で述べた2次元all−pole推定手段21a,21bと同様であるので、ここでは説明を省略する。
次に、非線形最小二乗手段32において、(15)式に示される指標Jを最小化するモデルXを求めるために係数ak 、pk およびqk をパラメータとして探索する。ただし、sm,n は信号25aと25bを合成した信号のスペクトル、wm,n は適当な重み係数、<m,n>は信号25aと25bが値を持つfy 方向とfx 方向の標本点の組である。
【数15】
最後に、2次元スペクトル内外挿手段33において、非線形最小二乗手段32で推定されたパラメータak 、pk およびqk を(14)式に当てはめて、帯域拡張された信号スペクトル29を得る。
【0030】
この実施の形態4のレーダ装置によって得られる目標の画像は表示手段7で表示されるが、その画像の比較例を図11に示す。図11(a)は2つのレーダの一方の受信信号24aから得られるレーダ画像、図11(b)は他方のレーダの受信信号24bから得られるレーダ画像である。また、図11(c)は、この実施の形態4これらの受信信号を、この実施の形態4により2次元で帯域拡張した信号29から得られるレーダ画像である。図11(a)と(b)の画像では明瞭でなかった2つの散乱点が図11(c)では分離されて表示されていることがわかる。
【0031】
以上のように、この実施の形態4によれば、第1および第2のレーダを、目標から見て異なる角度に配置し、それぞれが異なる周波数帯域で目標を観測し、2次元相互コヒーレント化手段を用いて、得られた各受信信号スペクトルの位相を一致させる処理を行い、2次元帯域拡張手段を用いて、位相を一致させたそれぞれの受信信号の空間スペクトルを、レンジ方向とクロスレンジ方向に内挿あるいは外挿して帯域幅を拡張した連続スペクトルを生成し、生成された連続スペクトルのレンジとクロスレンジを圧縮手段により圧縮し、目標の観測画像として出力するようにしたので、それぞれのレーダが単独で達成できるレンジとクロスレンジの分解能を超えて、2次元で高分解能化された目標の画像を得ることができる。
【0032】
実施の形態5.
2つのレーダを用いたこれまでの実施の形態では、2つの送受信アンテナ1aと1bの配置に対しては、目標8から見て異なる方位に設置されていること以外に制限が与えられていなかったが、この実施の形態5では、これら送受信アンテナの配置に対して新たに条件を与えることにより、画像の分解能の劣化を防ぐ方法について説明する。
図12は実施の形態5に係るアンテナの配置関係を示す説明図である。この例では、第3のレーダの送受信アンテナ1cが他の送受信アンテナ1a,1bと異なる位置に設置されている。ここで、送受信アンテナ1a,1bに着目して見たとき、30aは第1の送受信アンテナ1aから目標8を見る第1のLOS(Line of sight)、30bは第2の送受信アンテナ1bから目標8を見る第2のLOSである。34aは第1の送受信アンテナ1aから目標8を観測した場合に画像が形成される第1の画像投影面、34bは第2の送受信アンテナ1bから目標8を観測した場合に画像が形成される第2の画像投影面、35は送受信アンテナに対する目標8の回転角速度ベクトルである。回転角速度ベクトル35は、目標8のロール、ピッチ、ヨーによっても生じるが、目標8が直進した場合にもアンテナに対する向きが変化して等価的な回転を生じる。
図13はこの発明の実施の形態5によるレーダ装置の機能構成を示すブロック図である。図において、図2に相当する機能部分には同一符号を付し、原則としてその説明を省略する。この実施の形態5の場合、送受信アンテナ1cと送受信機2cからなる第3のレーダが新たに設けられ、また、各送受信機2a,2b,2cと2次元相互コヒーレント化手段19の間に選択手段36を設けた点が上記実施の形態1と異なっている。
【0033】
次に、動作について説明する。
この発明の原理に従うレーダ装置は目標の2次元画像を得るものであるが、このことは3次元の目標を2次元平面に投影したものとして考えることができる。ここでは、画像が投影される仮想的な平面を画像投影面と呼ぶことにする。撮像の原理から、画像投影面34はLOS30と回転ベクトル35の外積が作るベクトルと、LOS30の方向ベクトルとを含む平面であることが知られている。すなわち、送受信アンテナ1a,1bまたは目標8を原点として、LOSとLOS×Ωで張られる平面である。ここに、Ωは回転角速度ベクトル35である。
実施の形態1から実施の形態4では、画像投影面34aと34bが一致していることを暗黙の前提としており、これらが一致しない場合にはスペクトル24aと24bの位相の連続性を正しく一致させることができず、結果として画像の分解能が劣化したり、あるいは偽像を生じたりするという問題が起きる。そこで、この実施の形態5では、選択手段36を設けている。選択手段36では、それぞれの送受信アンテナ1a,1b,1cにおける画像投影面34を監視し、その画像投影面の差が小さいアンテナから得られる受信信号の組を選択する。そして、選択された2つの受信信号に対して、実施の形態1と同様に2次元相互コヒーレント化手段19以降の処理を行う。このことにより、画像の分解能の劣化あるいは偽像の発生を防止することができる。なお、この例では、レーダの数を3個としているが、それ以上の数を適用してもよい。
【0034】
以上のように、この実施の形態5によれば、目標から見て第1および第2のレーダと異なる角度に、第1および第2のレーダと同一の周波数帯域で目標を観測する少なくとも1つのレーダ配置し、選択手段により、各レーダが目標を観測したときに形成される画像投影面の差が小さい受信信号の組を選択して、2次元相互コヒーレント化手段で処理するようにしたので、クロスレンジについて高分解能画像を実現することができると共に、分解能の劣化や偽像の発生の少ないレーダ画像を観測可能にする。
なお、この実施の形態5の方法は、1つの送受信アンテナと記憶手段を用いた実施の形態3に対しても適用することが可能である。この場合には、3回以上の観測を行い、異なる方位から目標8を先の2回で観測した各受信信号を記憶手段27に蓄積し、最後に観測した受信信号と先に蓄積した受信信号の中から、観測時に形成される画像投影面の差が小さい受信信号の組を選択すればよい。ただし、選択にあたっては、アンテナの空間配置を選択するだけでなく、時間方向についても選択することになる。また、この実施の形態5の方法は、上記実施の形態4に対しても適用できることができる。ただし、この場合は、観測に用いる周波数帯域がレーダ毎に異なることが必要である。
【0035】
この発明は、上記各実施の形態において、レーダの受信信号を入力として処理することで説明したが、代わりに、それぞれのレーダで観測された目標の複素画像を2次元逆フーリエ変換して得られる空間スペクトルを入力として処理してもよく、同様な効果が得られることは明らかである。
また、上記各実施の形態を、固定されたレーダから移動目標を観測する、いわゆる逆合成開口レーダを対象として説明を行なってきたが、レーダが移動する、いわゆる合成開口レーダに適用してもよく、同様な効果を得ることができる。
さらに、上記各実施の形態において、2次元相互コヒーレント化手段19の2次元スペクトル補償手段23が一方の受信信号だけを補償する動作例を説明したが、補償する信号としては、もう一方の受信信号でもよく、あるいは両方に対してでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の実施の形態1、実施の形態2および実施の形態4に係るレーダ装置の観測のジオメトリを示す説明図である。
【図2】この発明の実施の形態1によるレーダ装置の機能構成を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る2次元相互コヒーレント化手段の機能構成を示すブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係るレーダ装置の信号スペクトルを示す模式図である。
【図5】この発明の実施の形態2によるレーダ装置の機能構成を示すブロック図である。
【図6】この発明の実施の形態3に係るレーダ装置の観測のジオメトリを示す説明図である。
【図7】この発明の実施の形態3によるレーダ装置の機能構成を示すブロック図である。
【図8】この発明の実施の形態4によるレーダ装置の機能構成を示すブロック図である。
【図9】この発明の実施の形態4に係るレーダ装置の信号スペクトルを示す模式図である。
【図10】この発明の実施の形態4に係る2次元帯域拡張手段の機能構成を示すブロック図である。
【図11】この発明の実施の形態4のレーダ装置で得られた目標の画像の例を示す説明図である。
【図12】この発明の実施の形態5に係るアンテナの配置関係を示す説明図である。
【図13】この発明の実施の形態5によるレーダ装置の機能構成を示すブロック図である。
【図14】従来のレーダ装置の観測のジオメトリを示す説明図である。
【図15】従来のレーダ装置の機能構成を示すブロック図である。
【図16】従来のレーダ装置で使用する1次元相互コヒーレント化手段の機能構成を示すブロック図である。
【図17】従来のレーダ装置で使用する1次元帯域拡張手段の機能構成を示すブロック図である。
【図18】従来のレーダ装置の信号スペクトルを示す模式図である。
【符号の説明】
【0037】
1,1a,1b 送受信アンテナ、2,2a,2b 送受信機、4 1次元帯域拡張手段、5 レンジ圧縮手段、6 クロスレンジ圧縮手段、7 表示手段、19 2次元相互コヒーレント化手段、27 記憶手段、28 2次元帯域拡張手段、36 選択手段。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標に対して送受信アンテナを配置し、所定の周波数帯域で目標を観測する第1のレーダと、
目標から見て前記第1のレーダの送受信アンテナと異なる角度に送受信アンテナを配置し、前記所定の周波数帯域で目標を観測する第2のレーダと、
前記第1および第2のレーダで得られる受信信号スペクトルの位相を一致させる処理を行う2次元相互コヒーレント化手段と、
前記2次元相互コヒーレント化手段で位相を一致させた受信信号スペクトルを、クロスレンジ方向に内挿あるいは外挿して帯域幅を拡張した連続スペクトルを生成する1次元帯域拡張手段と、
前記帯域拡張手段で生成された連続スペクトルのレンジを圧縮するレンジ圧縮手段と、
前記レンジ圧縮手段でレンジが圧縮された連続スペクトルのクロスレンジを圧縮し、目標の観測画像として出力するクロスレンジ圧縮手段とを備えたことを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
2次元相互コヒーレント化手段の出力に対して、1次元帯域拡張手段とレンジ圧縮手段による処理の順序を入れ替えたことを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項3】
目標から見て第1および第2のレーダの送受信アンテナと異なる角度に送受信アンテナを配置し、所定の周波数帯域で目標を観測する少なくとも1つのレーダと、
各レーダが目標を観測したときに形成される画像投影面の差が小さい受信信号の組を、2次元相互コヒーレント化手段で処理する信号として選択する選択手段を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2記載のレーダ装置。
【請求項4】
目標に対して送受信アンテナを配置し、所定の周波数帯域で目標を所定の時間間隔をおいて少なくとも2回観測するレーダと、
前記レーダが先に観測した受信信号を蓄積する記憶手段と、
前記レーダが2回目に観測した受信信号と先に観測し前記記憶手段に蓄積された受信信号のスペクトルの位相を一致させる処理を行う2次元相互コヒーレント化手段と、
前記2次元相互コヒーレント化手段で位相を一致させた受信信号スペクトルを、クロスレンジ方向に内挿あるいは外挿して帯域幅を拡張した連続スペクトルを生成する1次元帯域拡張手段と、
前記帯域拡張手段で生成された連続スペクトルのレンジを圧縮するレンジ圧縮手段と、
前記レンジ圧縮手段でレンジが圧縮された連続スペクトルのクロスレンジを圧縮し、目標の観測画像として出力するクロスレンジ圧縮手段とを備えたことを特徴とするレーダ装置。
【請求項5】
2次元相互コヒーレント化手段の出力に対して、1次元帯域拡張手段とレンジ圧縮手段による処理の順序を入れ替えたことを特徴とする請求項4記載のレーダ装置。
【請求項6】
レーダにより所定の時間間隔をおいて少なくとも3回以上観測して先に観測した受信信号のそれぞれを記憶手段に蓄積しておくようにし、
前記レーダが最後に観測した受信信号と前記記憶手段に蓄積された先に観測した各受信信号の中から、目標を観測したときに形成される画像投影面の差が小さい受信信号の組を、2次元相互コヒーレント化手段で処理する信号として選択する選択手段を備えたことを特徴とする請求項4または請求項5記載のレーダ装置。
【請求項7】
目標に対して送受信アンテナを配置し、所定の周波数帯域で目標を観測する第1のレーダと、
目標から見て前記第1のレーダの送受信アンテナと異なる角度に送受信アンテナを配置し、前記所定の周波数帯域と異なる周波数帯域で目標を観測する第2のレーダと、
前記第1および第2のレーダで得られる受信信号スペクトルの位相を、レンジとクロスレンジについて一致させてそれぞれの受信信号の空間スペクトルを生成する2次元相互コヒーレント化手段と、
前記2次元相互コヒーレント化手段で位相を一致させたそれぞれの受信信号の空間スペクトルを、レンジ方向とクロスレンジ方向に内挿あるいは外挿して帯域幅を拡張した連続スペクトルを生成する2次元帯域拡張手段と、
前記2次元帯域拡張手段で生成された連続スペクトルのレンジを圧縮するレンジ圧縮手段と、
前記レンジ圧縮手段でレンジが圧縮された連続スペクトルのクロスレンジを圧縮し、目標の観測画像として出力するクロスレンジ圧縮手段とを備えたことを特徴とするレーダ装置。
【請求項8】
目標から見て第1および第2のレーダの送受信アンテナと異なる角度に送受信アンテナを配置し、前記第1および第2のレーダの周波数帯域と異なる周波数帯域で目標を観測する少なくとも1つのレーダと、
各レーダが目標を観測したときに形成される画像投影面の差が小さい受信信号の組を、2次元相互コヒーレント化手段で処理する信号として選択する選択手段を備えたことを特徴とする請求項7記載のレーダ装置。
【請求項1】
目標に対して送受信アンテナを配置し、所定の周波数帯域で目標を観測する第1のレーダと、
目標から見て前記第1のレーダの送受信アンテナと異なる角度に送受信アンテナを配置し、前記所定の周波数帯域で目標を観測する第2のレーダと、
前記第1および第2のレーダで得られる受信信号スペクトルの位相を一致させる処理を行う2次元相互コヒーレント化手段と、
前記2次元相互コヒーレント化手段で位相を一致させた受信信号スペクトルを、クロスレンジ方向に内挿あるいは外挿して帯域幅を拡張した連続スペクトルを生成する1次元帯域拡張手段と、
前記帯域拡張手段で生成された連続スペクトルのレンジを圧縮するレンジ圧縮手段と、
前記レンジ圧縮手段でレンジが圧縮された連続スペクトルのクロスレンジを圧縮し、目標の観測画像として出力するクロスレンジ圧縮手段とを備えたことを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
2次元相互コヒーレント化手段の出力に対して、1次元帯域拡張手段とレンジ圧縮手段による処理の順序を入れ替えたことを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項3】
目標から見て第1および第2のレーダの送受信アンテナと異なる角度に送受信アンテナを配置し、所定の周波数帯域で目標を観測する少なくとも1つのレーダと、
各レーダが目標を観測したときに形成される画像投影面の差が小さい受信信号の組を、2次元相互コヒーレント化手段で処理する信号として選択する選択手段を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2記載のレーダ装置。
【請求項4】
目標に対して送受信アンテナを配置し、所定の周波数帯域で目標を所定の時間間隔をおいて少なくとも2回観測するレーダと、
前記レーダが先に観測した受信信号を蓄積する記憶手段と、
前記レーダが2回目に観測した受信信号と先に観測し前記記憶手段に蓄積された受信信号のスペクトルの位相を一致させる処理を行う2次元相互コヒーレント化手段と、
前記2次元相互コヒーレント化手段で位相を一致させた受信信号スペクトルを、クロスレンジ方向に内挿あるいは外挿して帯域幅を拡張した連続スペクトルを生成する1次元帯域拡張手段と、
前記帯域拡張手段で生成された連続スペクトルのレンジを圧縮するレンジ圧縮手段と、
前記レンジ圧縮手段でレンジが圧縮された連続スペクトルのクロスレンジを圧縮し、目標の観測画像として出力するクロスレンジ圧縮手段とを備えたことを特徴とするレーダ装置。
【請求項5】
2次元相互コヒーレント化手段の出力に対して、1次元帯域拡張手段とレンジ圧縮手段による処理の順序を入れ替えたことを特徴とする請求項4記載のレーダ装置。
【請求項6】
レーダにより所定の時間間隔をおいて少なくとも3回以上観測して先に観測した受信信号のそれぞれを記憶手段に蓄積しておくようにし、
前記レーダが最後に観測した受信信号と前記記憶手段に蓄積された先に観測した各受信信号の中から、目標を観測したときに形成される画像投影面の差が小さい受信信号の組を、2次元相互コヒーレント化手段で処理する信号として選択する選択手段を備えたことを特徴とする請求項4または請求項5記載のレーダ装置。
【請求項7】
目標に対して送受信アンテナを配置し、所定の周波数帯域で目標を観測する第1のレーダと、
目標から見て前記第1のレーダの送受信アンテナと異なる角度に送受信アンテナを配置し、前記所定の周波数帯域と異なる周波数帯域で目標を観測する第2のレーダと、
前記第1および第2のレーダで得られる受信信号スペクトルの位相を、レンジとクロスレンジについて一致させてそれぞれの受信信号の空間スペクトルを生成する2次元相互コヒーレント化手段と、
前記2次元相互コヒーレント化手段で位相を一致させたそれぞれの受信信号の空間スペクトルを、レンジ方向とクロスレンジ方向に内挿あるいは外挿して帯域幅を拡張した連続スペクトルを生成する2次元帯域拡張手段と、
前記2次元帯域拡張手段で生成された連続スペクトルのレンジを圧縮するレンジ圧縮手段と、
前記レンジ圧縮手段でレンジが圧縮された連続スペクトルのクロスレンジを圧縮し、目標の観測画像として出力するクロスレンジ圧縮手段とを備えたことを特徴とするレーダ装置。
【請求項8】
目標から見て第1および第2のレーダの送受信アンテナと異なる角度に送受信アンテナを配置し、前記第1および第2のレーダの周波数帯域と異なる周波数帯域で目標を観測する少なくとも1つのレーダと、
各レーダが目標を観測したときに形成される画像投影面の差が小さい受信信号の組を、2次元相互コヒーレント化手段で処理する信号として選択する選択手段を備えたことを特徴とする請求項7記載のレーダ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
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【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2007−225442(P2007−225442A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−47087(P2006−47087)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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