説明

レーダ装置

【課題】軽い演算負荷で干渉信号の影響を低減できるレーダ装置を提供する。
【解決手段】制御演算部は、送信信号と反射信号とを混合部で混合したビート信号を逐次サンプリングして取得する。制御演算部は、取得したビート信号に基づき、ビート信号に干渉信号が含まれる干渉期間を特定する。干渉期間を特定すると、制御演算部は、特定した干渉期間を除く期間で取得したビート信号に対してFFT処理をした結果に基づき、対象物との相対距離、及び相対速度を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置に関し、より特定的には、自動車などの移動体に搭載されるレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両の周囲に存在する先行車両、対向車両、人、及び路上の静止物(例えば、鋲、看板など)などの対象物を測定し、測定した対象物を回避、或いは当該対象物に追従する制御をするためのレーダ装置が自動車などの移動体に搭載されている。このようなレーダ装置に適用できる従来技術として、例えば、特許文献1に記載のレーダシステム(以下、従来技術と称する)が挙げられる。
【0003】
従来技術では、FM−CW方式で対象物を測定しているときに、受信した信号をサンプリングしてデジタル信号に変換し、サンプリングしたデジタル信号によって示されるレベルの勾配(傾き)を逐次演算する。従来技術では、逐次演算した勾配の中から、予め定められたしきい値を超える勾配を生じるレベルを示すデジタル信号を干渉信号と判断する。干渉信号をサンプリングした期間を少なくとも含む期間にサンプリングしたデジタル信号に対して、従来技術では、ゼロを示す信号で補う処理(ゼロパッド)、或いは当該期間にサンプリングしたデジタル信号によって示されるレベルを減じるような加重関数を乗じる処理などをし、処理後のデジタル信号に基づいてFFT処理をすることにより、サンプリングしたデジタル信号に対する干渉信号の影響を低減し、干渉信号によって測定結果の正確さが損なわれることを防いでいる。
【特許文献1】特開2006−171001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、以下に述べる課題を有する。すなわち、上記従来技術では、干渉信号をサンプリングした期間を少なくとも含む期間にサンプリングしたデジタル信号に対してゼロ補間をした上で、全てのデジタル信号に対してFFT処理をする。ところが、従来技術のようにゼロ補間をしたデジタル信号に対してFFT処理をすると、処理結果にリップルが生じてしまうことが従来知られている。したがって、従来技術では、リップルが生じているFFT処理の処理結果に基づいて対象物を測定することに起因する測定結果の精度の低下が生じ、測定結果の正確さが損なわれる。
【0005】
また、上記従来技術において、加重関数を乗じて測定結果の正確さが損なわれることを防ぐ場合には、サンプリングした干渉信号の特性(例えば、周波数帯域、及び位相など)に応じた加重関数を生成しなければ、サンプリングしたデジタル信号の中から干渉信号のみを効果的に抑圧することができない。したがって、従来技術では、干渉信号をサンプリングする度に、サンプリングした干渉信号に基づき加重関数を導出する必要がある。このため、従来技術では、サンプリングした干渉信号を抑圧するための加重関数を導出するための処理、及び導出した加重関数を用いてサンプリングしたデジタル信号から干渉信号のみを抑圧する処理などを逐次しなければならないため、処理系に係る演算負荷が大きくなってしまう。
【0006】
それ故に、本発明では、軽い演算負荷で干渉信号の影響を低減できるレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記本発明の目的を達成するために、以下に述べる特徴を有する。
第1の発明は、放射部から電磁波として放射される送信信号と、反射波を受信部で受信した反射信号とに基づき、対象物を測定するレーダ装置であって、送信信号と反射信号とを混合することにより混合信号を生成する混合手段と、混合手段が反射信号に干渉する干渉信号をさらに混合している干渉期間を、混合信号に基づいて特定する干渉期間特定手段と、干渉期間特定手段によって干渉期間が特定されたとき、混合信号が生成されている期間の中で当該干渉期間を除く期間を処理対象期間として特定する処理対象期間特定手段と、処理対象期間で混合手段によって混合された混合信号に基づき、対象物を測定する測定手段とを備える。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明に従属する発明であって、予め定められた範囲の周波数帯域で送信信号を生成可能であって、予め定められた長さの周期で予め定められた変化をする周波数の送信信号を生成する信号生成手段と、干渉期間特定手段によって干渉期間が特定されたとき、当該干渉期間を除く範囲の周波数帯域の内、最も広い範囲の周波数帯域を特定する周波数帯域特定手段と、周波数帯域特定手段によって周波数帯域が特定されたとき、当該周波数帯域で送信信号を生成する指示を信号生成手段に与える指示手段とをさらに備える。
【0009】
第3の発明は、上記第1の発明に従属する発明であって、混合手段は、予め定められた長さの周期で予め定められた変化をする周波数の周波数帯域で信号生成手段によって生成される送信信号と、反射信号とを混合し、処理対象期間特定手段は、周期の中で干渉期間を除く期間の中で、最も長く連続する期間を処理対象期間として特定する。
【0010】
第4の発明は、上記第1の発明に従属する発明であって、混合手段は、予め定められた長さの周期で予め定められた変化をする周波数の周波数帯域で信号生成手段によって生成される送信信号と、反射信号とを混合し、混合手段が干渉信号をさらに混合しているとき、当該干渉信号の周波数を干渉周波数として混合信号に基づいて特定する干渉周波数特定手段と、混合手段が干渉信号を混合した周期における時点を、混合信号に基づき干渉時点として特定する干渉時点特定手段と、周期における干渉時点を除いた期間の中で最も長い期間がさらに長くなる送信信号の周波数帯域を、干渉信号と送信信号とに基づき決定する決定手段と、決定手段によって決定された周波数帯域で送信信号を生成する指示を信号生成手段に与える指示手段とをさらに備える。
【0011】
第5の発明は、上記第4の発明に従属する発明であって、決定手段は、測定手段によって予め定められた回数だけ対象物が測定される度に、周期における干渉時点を除いた期間の中で最も長い期間がさらに長くなる送信信号の周波数帯域を決定する。
【0012】
第6の発明は、上記第4の発明に従属する発明であって、処理対象期間で混合手段によって混合された混合信号に対してFFT処理をすることにより、送信信号に対する反射信号のドップラーシフト量と遅延時間とを求める処理手段をさらに備え、決定手段は、信号生成部によって生成される送信信号に対して、周波数帯域がドップラーシフト量だけ当該ドップラーシフト量の符号に沿って遷移し、且つ遅延時間だけ遅延した等価反射信号を生成する等価反射信号生成手段と、等価反射信号の周波数帯域を遷移させる遷移手段と、遷移手段によって周波数帯域が遷移させられた等価反射信号の周波数と干渉周波数とが略一致する時点を等価干渉時点として特定する等価干渉時点特定手段と、等価干渉時点を周期から除いた期間の中で最も長く連続する期間がさらに長くなる等価反射信号の周波数帯域を、遷移手段によって遷移させられた等価反射信号の周波数帯域の中から特定する非干渉期間特定手段とを含み、非干渉期間特定手段によって特定された等価反射信号の周波数帯域をドップラーシフト量の符号と反対に当該ドップラーシフト量だけ遷移させた周波数帯域を送信信号の周波数帯域として決定する。
【0013】
第7の発明は、上記第6の発明に従属する発明であって、遷移手段は、等価反射信号の周波数帯域を予め定められた遷移間隔で遷移させ、等価干渉時点特定手段は、遷移手段によって等価反射信号の周波数帯域が遷移させられる度に等価干渉時点を特定し、非干渉期間特定手段は、等価干渉時点特定手段によって等価干渉時点が特定される度に特定した等価反射信号の周波数帯域の中で、最も長い期間が、さらに、最も長くなる等価反射信号の周波数帯域を特定する。
【0014】
第8の発明は、上記第2の発明に従属する発明であって、混合手段は、予め定められた長さの周期で予め定められた変化をする周波数の周波数帯域で信号生成手段によって生成される送信信号と、反射信号とを混合し、混合手段が干渉信号をさらに混合しているとき、当該干渉信号の周波数を干渉周波数として混合信号に基づいて特定する干渉周波数特定手段と、干渉周波数を含まない反射信号の周波数帯域を特定する非干渉周波数特定手段と、非干渉周波数特定手段によって特定された周波数帯域に基づき、送信信号の周波数帯域を決定する決定手段と、決定手段によって決定された周波数帯域で送信信号を生成する指示を信号生成手段に与える指示手段とをさらに備える。
【0015】
第9の発明は、上記第8の発明に従属する発明であって、処理対象期間で混合手段によって混合された混合信号に対してFFT処理をすることにより、送信信号に対する反射信号のドップラーシフト量と遅延時間とを求める処理手段をさらに備え、決定手段は、非干渉周波数特定手段によって特定された周波数帯域をドップラーシフト量の符号と反対に当該ドップラーシフト量だけ遷移させた周波数帯域を送信信号の周波数帯域として決定する。
【0016】
第10の発明は、上記第9の発明に従属する発明であって、放射部から電磁波として放射される送信信号と、反射波を受信部で受信した反射信号とに基づき、対象物を測定するレーダ装置で実行される測定方法であって、送信信号と反射信号とを混合することにより混合信号を生成する混合ステップと、混合ステップにおいて混合信号が生成されている期間を通じて、当該混合信号に基づき反射信号に干渉する干渉信号がさらに混合されている干渉期間を特定する干渉期間特定ステップと、干渉期間特定ステップにおいて干渉期間が特定されたとき、混合信号が生成されている期間の中で当該干渉期間を除く期間を処理対象期間として設定する設定ステップと、混合ステップにおいて混合信号が生成されている期間における処理対象期間を通じて混合ステップにおいて混合された混合信号に基づき、対象物を測定する測定ステップとを備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、軽い演算負荷で干渉信号の影響を低減できるレーダ装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るレーダ装置1の概略構成を示すブロック図である。第1の実施形態に係るレーダ装置1は、信号生成部101と、分岐部102と、放射部103と、受信部104と、混合部105と、フィルタ106と、制御演算部107とを備える。
【0019】
信号生成部101は、典型的には、VCO(Voltage Controlled Oscillator:電圧制御発振器)、及びVCOを制御する集積回路などから構成され、制御演算部107から与えられる指示に応じた変調帯域で送信信号Ssを生成する。
【0020】
分岐部102は、信号生成部101によって生成された送信信号Ssを放射部103、及び混合部105にそれぞれ分岐する。
【0021】
放射部103は、典型的には、分岐部102によって分岐された送信信号Ssを電磁波として空間に放射するアンテナである。
【0022】
受信部104は、それぞれ放射部103から放射された電磁波が対象物で反射した反射波を反射信号Hsとして受信するアンテナである。
【0023】
混合部105は、分岐部102から分岐された送信信号Ssと、受信部104によって受信された反射信号Hsとを混合してビート信号Bsを生成する。
【0024】
フィルタ106は、混合部105によって生成されたビート信号Bsの内、制御演算部107が処理に必要な周波数のビート信号Bsのみを濾波して通過させる。
【0025】
制御演算部107は、フィルタ106を通過したビート信号Bsに対してFFT(Fast Fourier Transform)処理をした結果に基づき、受信部104で受信した反射信号Hsを反射した対象物との相対距離、及び相対速度を測定する。また、制御演算部107は、フィルタ106を通過したビート信号Bsの中からFFT処理の対象とする信号を特定する処理、及び干渉が生じないように送信信号Ssの変調帯域を制御する処理をするが、これらの処理の詳細については後述する。
【0026】
以上が、第1の実施形態に係るレーダ装置1の概略構成の説明である。尚、図1において、レーダ装置1は1つの受信部を備え、制御演算部107が、放射した送信信号Ssと受信した反射信号Hsとに基づいて対象物との相対距離、及び相対速度をそれぞれ測定できる構成としている。しかしながら、他の一実施形態に係るレーダ装置では、2以上の複数の受信部を備え、それぞれの受信部で受信した反射信号Hsの位相差やレベル差(振幅差)などに基づき、対象物の存在する方向(方位角)をさらに測定できるように構成されていてもよい。また、他の一実施形態に係るレーダ装置では、複数の受信部の代わりに複数の素子を配列したアレーアンテナを用いて、同様に対象物の存在する方向をさらに測定できるように構成されていてもよい。
【0027】
第1の実施形態に係るレーダ装置1は、一例として、公知のFM−CW方式を用いて対象物との相対距離、及び相対速度を測定するものとする。以下、FM−CW方式による測定方法について説明する。図2は、混合部105が混合するそれぞれの信号の周波数、すなわち、信号生成部101が制御演算部107から与えられる指示に応じて生成する送信信号Ssの周波数と、受信部104によって受信される反射信号Hsの周波数とをそれぞれ時間の経過に沿って示す図である。図2では、信号生成部101によって生成された送信信号Ssを実線で示し、受信部104によって受信された反射信号Hsを破線で示している。
【0028】
信号生成部101によって生成される送信信号Ssは、漸減端周波数から漸増端周波数まで予め定められた漸増期間で漸増し、漸増端周波数まで漸増すると、次に、漸増端周波数から漸減端周波数まで予め定められた漸減期間で漸減するように変調される。図2には、一例として、周波数f1の漸減端周波数、及び周波数f2の漸増端周波数を示し、さらに、それぞれ長さTの漸増期間、及び漸減期間を示している。第1の実施形態における送信信号Ssの変調帯域とは、漸減端周波数から漸増端周波数までの周波数帯域であり、図2に示す例では、漸減端周波数f1から漸増端周波数f2までの周波数帯域ΔF1である。つまり、信号生成部101によって生成される送信信号Ssは、変調帯域の中で、期間Tが経過する度に周波数が漸増と漸減とを繰り返す周期2Tの三角波となる。
【0029】
図2に示す変調可能範囲ΔFtは、信号生成部101が生成可能な送信信号Ssの周波数の範囲を示しており、信号生成部101は、後述するように、制御演算部107から与えられる指示に応じて、変調可能範囲ΔFtの中で変調帯域を変更する。
【0030】
受信部104は、放射部103から電磁波として放射され、空間を伝搬して対象物で反射し、再び空間を伝搬した送信信号Ssを反射信号Hsとして受信する。したがって、混合部105で混合される送信信号Ssと反射信号Hsとの間には、図2に示すように、電磁波として放射された送信信号Ssが反射信号Hsとして受信されるまでの遅延時間τが生じる。さらに、送信信号Ssが対象物で反射することによってドップラーシフトを生じるため、混合部105で混合される送信信号Ssと反射信号Hsとの間には周波数差が生じる。図2は、変調帯域ΔF1の送信信号Ssが対象物で反射し、ドップラーシフトすることによって、反射信号Hsの周波数帯域が、変調帯域ΔF1の周波数帯域よりも周波数差df(以下、ドップラーシフト量dfと称する)だけ低い周波数帯域ΔF2になる例を示している。
【0031】
そして、混合部105は、図2にそれぞれ示す送信信号Ss、及び反射信号Hsを混合することによって、ビート信号Bsを生成する。ビート信号Bsとは、混合部105によって混合される信号の周波数差、すなわち、送信信号Ssの周波数と反射信号Hsの周波数との周波数差の絶対値に等しい周波数を有する信号である。第1の実施形態に係るレーダ装置1は、送信信号Ssの周波数、及び反射信号Hsの周波数のそれぞれが共に漸増している期間に生成されたビート信号Bsと、共に漸減している期間に生成されたビート信号Bsとをそれぞれ制御演算部107でFFT処理することによって、対象物との相対距離、及び相対速度をそれぞれ測定する。
【0032】
制御演算部107は、FFT処理をするとき、まず、フィルタ106を通過したビート信号Bsを内部に備える図示しないADC(Analog to Digital Converter)でサンプリングしてデジタル信号に変換したデータを図示しない記憶部に記憶する。そして、制御演算部107は、予め定められた個数の連続するサンプリングデータを1つのグループとし、予め定められたグループ数(例えば、2の累乗の数のグループ)のデータを記憶してから、記憶したデータに基づいてFFT処理をする。
【0033】
図3は、制御演算部107がサンプリングするビート信号Bsを説明するための一例を示す図である。FFT処理をするとき、制御演算部107は、図3に示すように、送信信号Ssの周波数、及び反射信号Hsの周波数が共に漸増しているときにおける予め定められた期間(以下、漸増時取得期間と称する)で取得したビート信号Bsを漸増期間信号Zsとしてサンプリングし、デジタル信号に変換する。また、制御演算部107は、図3に示すように、送信信号Ssの周波数、及び反射信号Hsの周波数が共に漸減しているときにおける予め定められた長さの期間(以下、漸減時取得期間と称する)で取得したビート信号Bsを漸減期間信号Gsとしてサンプリングし、デジタル信号に変換する。そして、制御演算部107は、漸増期間信号Zs、及び漸減期間信号Gsをそれぞれデジタル信号に変換したデータを図示しない記憶部に記憶し、記憶したデータの中から前述のグループ数のデータに基づいてFFT処理をする。
【0034】
尚、制御演算部107は、漸増期間信号Zs、及び漸減期間信号Gsのみをサンプリングして記憶したデータの中から前述のグループ数のデータに基づいてそれぞれFFT処理をしてもよいし、全ての期間におけるビート信号Bsをサンプリングして記憶したデータの中から漸増時取得期間、及び漸減時取得期間にそれぞれ取得したビート信号Bsのデータをそれぞれ漸増期間信号Zs、及び漸減期間信号Gsのデータとして特定し、特定したデータの中から前述のグループ数のデータに基づいてそれぞれFFT処理をしてもよい。
【0035】
また、図3に示される漸増時取得期間、及び漸減時取得期間は、それぞれ一例であって、1つの三角波が生成されているときにおいて送信信号Ssの周波数、及び反射信号Hsの周波数が共に漸増している期間中、及び共に漸減している期間中であればそれぞれどのような長さの期間であってもよいし、互いに同じ、或いは互いに異なる長さであってもよい。
【0036】
制御演算部107は、漸増期間信号Zsの前述のグループ数のデータ、及び漸増期間信号Gsの前述のグループ数のデータに対してそれぞれFFT処理をし、それぞれの信号のスペクトルがピークを生じる周波数(ピーク周波数)を特定する。このとき特定したピーク周波数が、それぞれ漸増期間信号Zsの周波数、及び漸減期間信号Gsの周波数、すなわち、それぞれ図3に示す周波数差fuの絶対値、及び周波数差fdの絶対値を示す。制御演算部107は、これらの周波数差の絶対値、すなわち、漸増期間信号Zsの周波数、及び漸減期間信号Gsの周波数に基づいて、混合部105が混合した反射信号Hsを反射した対象物との相対距離、及び相対速度をそれぞれ測定する。以下に、制御演算部107が、漸増期間信号Zsの周波数、及び漸減期間信号Gsの周波数に基づいて対象物との相対距離、及び相対速度を演算して測定するための数式を示す。
【0037】
【数1】

【0038】
【数2】

【0039】
上記数式(1)が対象物との相対距離Rを演算するための数式であり、上記数式(2)が対象物との相対速度vを演算するための数式である。上記数式(1)、及び数式(2)において、fupは漸増期間信号Zsの周波数であり、fdownは漸減期間信号Gsの周波数である。また、上記数式(1)のC1、及び上記数式(2)のC2はそれぞれ予め定められた定数である。以上が、FM−CW方式による測定方法の説明である。
【0040】
ところで、レーダ装置1の測定中に、図4に示すように反射信号Hsの周波数帯域(図2に示す例では、周波数帯域ΔF2)に含まれる周波数の干渉信号Ksを受信部104が受信すると、混合部105によって生成されるビート信号Bs(漸増期間信号Zs、又は漸減期間信号Gs)は、干渉信号Ksの周波数と反射信号Hsの周波数とが略一致する時点(干渉が生じる時点。図4に示す例では、破線の円で囲まれる時点X)で、図5に示すようにレベルが大きく変化する干渉を生じる。そして、図5に示すように干渉によってレベルが大きく変化した信号を含むビート信号Bsを制御演算部107でFFT処理すると、スペクトルは図6(a)に一例として示すように、ピーク周波数を明瞭に識別できないスペクトルとなってしまう。尚、図6(b)には、図6(a)と比較するために、干渉信号Ksを受信しておらず、ピーク周波数を明瞭に識別できるときのビート信号Bsのスペクトルの一例を示している。
【0041】
図6(a)に示すようなスペクトルが得られたとき、制御演算部107は、明瞭に識別できないピークを生じる周波数に基づいて、対象物との相対距離、及び相対速度を測定するため、測定結果の精度が低下する場合、或いは測定ができない場合が生じてしまう。そこで、第1の実施形態に係るレーダ装置1は、図4に示すように干渉信号Ksを受信したとき、少なくとも干渉が生じる時点を除く期間に混合部105で生成したビート信号Bsに基づき、対象物との相対距離、及び相対速度をそれぞれ測定する。
【0042】
尚、時点X以外の時間において受信した干渉信号Ksも混合部105で送信信号Ssと混合されるが、当該干渉信号Ksは、混合部105で送信信号Ssと混合されることによって、送信信号Ssの周波数との周波数差の絶対値にまで周波数がダウンコンバートされ、フィルタ106を通過できなくなる。このため、時点X以外の時間において受信した干渉信号Ksが、制御演算部107のFFT処理の結果に影響を与えることはない。そして、第1の実施形態に係るレーダ装置1では、時点X以外の時間において受信した干渉信号Ksが、制御演算部107のFFT処理の結果に影響を与えることのないように、フィルタ106の通過周波数帯域を、時点X以外の時間において受信した干渉信号Ksが制御演算部107のFFT処理の結果に与える影響を低減できるような通過周波数帯域に設定するとよい。また、フィルタ106の通過周波数帯域は、干渉信号Ksだけでなく、さらに、ノイズが制御演算部107のFFT処理の結果に与える影響を低減できるような通過周波数帯域に設定してもよい。
【0043】
制御演算部107は、少なくとも干渉が生じる時点を除く期間に混合部105で生成したビート信号Bs(漸増期間信号Zs、又は漸減期間信号Gs)に基づき対象物との相対距離、及び相対速度をそれぞれ測定するために、まず、サンプリングしたビート信号Bsに基づき公知の手法を用いて、干渉が生じた時点を少なくとも含む期間(以下、干渉期間と称する)を検知する。ここで、制御演算部107が、干渉期間を検知する手法としては、例えば、特願2006−50682号に記載の手法や他の公知の手法を用いてもよい。
【0044】
そして、制御演算部107は、干渉期間を検知すると、サンプリングしたビート信号Bs(漸増期間信号Zs、又は漸減期間信号Gs)の内、干渉期間を通じてサンプリングしたビート信号BsをFFT処理の対象から除外して、干渉期間を除く期間でサンプリングしたビート信号Bs(干渉期間を除く期間で混合部105によって生成されたビート信号Bs)に対してFFT処理をする。このときの制御演算部107の処理をより詳細に説明する。
【0045】
図7は、制御演算部107が干渉期間を検知したときに、FFT処理の対象とするデータを説明するための図である。図7では、一例として、反射信号Hsの周波数と略一致する時点を生じる周波数の図4に示す干渉信号Ksを受信したときに、FFT処理の対象となるデータを説明するための図を示している。第1の実施形態に係る制御演算部107は、図7に示すように、漸増時取得期間、及び漸減時取得期間においてそれぞれ漸増期間信号Zs、及び漸減期間信号Gsをサンプリングしながら、サンプリングしたデータを予め定められた長さの期間(K1〜K10:以下、干渉判断期間と称する)毎に区切る。ここで、図7に示す干渉判断期間の長さは、一例として、漸増時取得期間、及び漸減時取得期間をそれぞれ5等分した期間の長さとしているが、5等分よりも少ない数で等分割した期間の長さでもよいし、5等分よりも多い数で等分割した期間の長さでもよいし、必ずしもそれぞれの期間を等分割した長さでなくてもよい。また、干渉判断期間の長さは、前述のADCのサンプリングタイムと同じ長さの期間であってもよい。
【0046】
制御演算部107は、漸増期間信号Zs、及び漸減期間信号Gsを干渉判断期間毎に区切りながらサンプリングして記憶すると、記憶したデータに基づいて上述の公知の手法で、全ての干渉判断期間の内、干渉を生じている時点を含む干渉判断期間を干渉期間として検知する。そして、制御演算部107は、干渉期間を検知すると送信信号Ssの1つの周期の期間で、より詳細には、漸増時取得期間、及び漸減時取得期間の中でそれぞれ干渉期間を除いた期間の内、最も長く連続する干渉判断期間でサンプリングした信号をFFT処理の対象とする。
【0047】
図7に示す例を用いてより具体的に説明すると、制御演算部107は、干渉判断期間K4、及び干渉判断期間K9を干渉期間としてそれぞれ検知し、漸増時取得期間、及び漸減時取得期間の中からそれぞれ干渉判断期間K4、及び干渉判断期間K9を除いた期間(漸増時取得期間では干渉判断期間K1〜K3、及び干渉判断期間K5。漸減時取得期間では干渉判断期間K6〜K8、及び干渉判断期間K10)の内、最も長く連続する干渉判断期間をFFT対象期間として特定して記憶する。図7に示す例では、制御演算部107は、干渉判断期間K1〜K3、及び干渉判断期間K6〜K8の期間をそれぞれFFT対象期間として特定して記憶する。そして、制御演算部107は、特定したFFT対象期間でサンプリングした漸増時取得信号Zs、及び漸減時取得信号Gsのデータに対してそれぞれFFT処理をし、それぞれの信号のスペクトルを求める。このとき、制御演算部107は、特定したFFT対象期間でサンプリングした漸増時取得信号Zs、及び漸減時取得信号Gsのデータの中から前述のグループ数のデータに対してFFT処理をする。
【0048】
尚、図7に示す例では、漸増時取得期間、及び漸減時取得期間の両方において反射信号Hsの周波数と略一致する時点を生じる干渉信号Ksを受信する場合を一例として示しているが、漸増時取得期間、及び漸減時取得期間のいずれか一方において反射信号Hsの周波数と略一致する時点を生じる干渉信号Ksを受信した場合にも制御演算部107は同様の処理をしてもよい。すなわち、制御演算部107は、漸増時取得期間、及び漸減時取得期間の内、反射信号Hsの周波数と略一致する時点を生じた期間における干渉期間を除いた期間の内、最も長く連続する干渉判断期間を前述のFFT対象期間として、当該FFT対象期間でサンプリングした信号のデータをFFT処理の対象とする。このとき、漸増時取得期間、及び漸減時取得期間の内、反射信号Hsの周波数と略一致する時点を生じない期間については、当該期間の全てを前述のFFT対象期間として、サンプリングした信号のデータをFFT処理の対象とする。
【0049】
制御演算部107は、漸増時取得期間におけるFFT対象期間、及び漸減時取得期間におけるFFT対象期間でサンプリングした信号(漸増時取得信号Zs、及び漸減時取得信号Gs)のデータに対してそれぞれFFT処理をすると、上述したように、FFT処理をすることによって得られるスペクトルに基づいて漸増時取得信号Zsの周波数、及び漸減時取得信号Gsの周波数をそれぞれ求める。漸増時取得信号Zsの周波数、及び漸減時取得信号Gsの周波数をそれぞれ求めると、制御演算部107は、求めた周波数に基づき、上述したように対象物との相対距離、及び相対速度を測定する。
【0050】
以上で説明したように、第1の実施形態に係るレーダ装置1によれば、制御演算部107は、漸増時取得期間、及び漸減時取得期間の中でそれぞれ干渉期間を除いた期間の内、最も長く連続する干渉判断期間からなるFFT対象期間でサンプリングした信号のデータをFFT処理の対象とし、干渉信号Ksの干渉を受けた信号をサンプリングしたデータをFFT処理の対象から除外するため、干渉を受けることによる測定精度の低下や干渉を受けることによって測定ができなくなることを防ぐことができる。
【0051】
次に、第1の実施形態に係るレーダ装置1が、送信信号Ssの変調帯域を変更するための処理について説明する。第1の実施形態に係る制御演算部107は、前述のFFT対象期間を特定してFFT処理をし、対象物との相対距離、及び相対速度を測定した後、送信信号Ssの変調帯域を変更して干渉信号の影響を低減するために、変更後の送信信号Ssの変調帯域を特定して図示しない記憶部に記憶する変調帯域記憶処理をする。本発明では変調帯域記憶処理としてどのような処理をしてもよいが、例えば、以下で説明する2種類の処理が具体的な処理として考えられる。まず第1の処理について説明する。
【0052】
第1の処理として、上述の公知の手法で検出した前述の時点Xを含む干渉期間を特定して対象物との相対距離、及び相対速度を測定した後、特定した干渉期間に対応する周波数帯域を除く変調可能範囲ΔFtの中で、最も広い変調帯域を特定し、特定した変調帯域で送信信号Ssを生成する指示を信号生成部101に与えるために、制御演算部107が、特定した変調帯域を図示しない記憶部に記憶する変調帯域特定処理がある。
【0053】
図8は、制御演算部107の変調帯域特定処理を説明するための一例を示す図である。図8において、周波数f3は、制御演算部107によって検出された時点X(干渉が生じた時点X)で信号生成部101によって生成された送信信号Ssの周波数である。また、図8において、周波数帯域ΔF3は、特定した干渉期間に対応する周波数帯域である。
【0054】
変調帯域特定処理をするとき、制御演算部107は、まず、対象物との相対距離、及び相対速度を測定するときに既に特定した干渉期間に対応する周波数帯域(図8に示す例では、周波数帯域ΔF3)を特定する。干渉期間に対応する周波数帯域を特定すると、制御演算部107は、変調可能範囲ΔFtの中で特定した周波数帯域を除く複数の周波数帯域(図8に示す例では、周波数帯域ΔF4、及び周波数帯域ΔF5)の内、最も広い周波数帯域を変調帯域として信号生成部101に与えるために、図示しない記憶部に記憶する。
【0055】
より具体的には、図8に示す例では、変調可能範囲ΔFtの中で干渉期間に対応する周波数帯域ΔF3を除く複数の周波数帯域は、周波数帯域ΔF4、及び周波数帯域ΔF5である。図8から明らかなように、周波数帯域ΔF4、及び周波数帯域ΔF5の内、最も広い周波数帯域は、周波数帯域ΔF4であるため、制御演算部107は、図8に示す例では、周波数帯域ΔF4を変調帯域として信号生成部101に指示を与えるために記憶する。
【0056】
制御演算部107は、信号生成部101によって生成される送信信号Ssの変調帯域を、変調帯域特定処理をして記憶した変調帯域に変更させる指示を与えることにより、干渉を受けない最も広い変調帯域で送信信号Ssを生成して、測定を続けることができる。
【0057】
以上が、送信信号Ssの変調帯域を変更するための第1の処理(変調帯域特定処理)の説明である。次に、送信信号Ssの変調帯域を変更するための第2の処理について説明する。
【0058】
第1の実施形態に係る制御演算部107が、送信信号Ssの変調帯域を変更するための第2の処理は、FFT対象期間特定処理である。FFT対象期間特定処理とは、公知の手法で干渉周波数を特定した後、送信信号Ssに相当する等価送信信号の変調帯域を変調可能範囲ΔFtの中で遷移させる演算をすることによって、制御演算部107が、既に記憶してあるFFT対象期間よりもFFT対象期間を長くできる変調帯域があるか否かを判断し、長くできる変調帯域があるときに、当該変調帯域で送信信号Ssを生成する指示を信号生成部101に与えるために、当該変調帯域を記憶する処理のことである。等価送信信号については後述する。
【0059】
制御演算部107は、上述したように干渉期間を特定すると、反射信号Hsに干渉した干渉信号Ksの干渉周波数を特定する。ここで、制御演算部107が干渉周波数を検知する手法は、例えば、特願2006−50682号に記載の手法や他の公知の手法を用いてもよい。尚、以下の説明では、制御演算部107が図4に示す干渉信号Ksの干渉周波数として特定したものとして説明を続ける。
【0060】
図9は、FFT対象期間特定処理を説明するための一例を示す図である。図9において、周波数f6は、制御演算部107によって特定された図4に示す干渉信号Ksの干渉周波数の一例である。また、図9において、周波数帯域ΔF6は変更後の送信信号Ssの変調帯域の一例であり、周波数帯域ΔF7は変更後の送信信号Ssに対する反射信号Hsの周波数帯域の一例である。さらに、図9には、説明の便宜のため、図3で示した漸増時取得期間、及び漸減時取得期間をそれぞれ示している。さらに、図9には、図4で示した干渉の生じた時点X、及び図7で示した干渉判断期間K1〜K10を併せて示している。
【0061】
FFT対象期間特定処理をするとき、制御演算部107は、まず、干渉信号Ksの干渉周波数を上述の公知の手法を用いて特定し、特定した干渉周波数の干渉信号Ksと干渉した反射信号Ksに対応する、1つの三角波(例えば、図4に示す三角波A)の送信信号Ssと当該送信信号Ssの反射信号Hsとのドップラーシフト量df、及び遅延時間τとを演算する。このときのドップラーシフト量dfは、以下に示す数式(3)で求めることができる。また、このときの遅延時間τは、以下に示す数式(4)で求めることができる。
【0062】
【数3】

【0063】
【数4】

【0064】
ここで、数式(3)のvは干渉を受けた反射信号Hsを含む三角波の1つ(例えば、図4に示す三角波A)に基づき、上述したように干渉期間を除いて既に測定した対象物との相対速度であり、cは光速である。また、数式(4)のRは干渉を受けた反射信号Hsを含む三角波の1つ(例えば、図4に示す三角波A)に基づき、上述したように干渉期間を除いて既に測定した対象物との相対距離であり、cは光速である。
【0065】
制御演算部107は、ドップラーシフト量dfと遅延時間τとをそれぞれ求めると、信号生成部101によって現在生成されている変調帯域の送信信号Ssと同じ波形の等価送信信号と、当該等価送信信号に対して、演算したドップラーシフト量dfだけ周波数帯域が異なり、且つ演算した遅延時間τだけ等価送信信号よりも遅延した波形の等価反射信号とをそれぞれ演算して、演算したそれぞれの信号の周波数を時間の経過に沿って示す波形の情報を図示しない記憶部に記憶する。このとき、制御演算部107は、既に特定した干渉信号Ksの干渉周波数に相当する等価干渉信号の周波数を時間の経過に沿って示す波形の情報も併せて記憶する。
【0066】
等価送信信号、及び等価反射信号をそれぞれ記憶すると、制御演算部107は、等価送信信号における前述の漸減端周波数、及び漸増端周波数にそれぞれ相当する周波数を生じるタイミングから予め定められた期間の時点をそれぞれ開始時点とする、前述の漸増時取得期間、及び漸減時取得期間にそれぞれ相当する等価漸増時取得期間、及び等価漸減時取得期間を示す情報をさらに図示しない記憶部に記憶する。
【0067】
等価漸増時取得期間、及び等価漸減時取得期間を記憶すると、制御演算部107は、記憶したそれぞれの期間を前述の干渉判断期間と同じ長さの等価干渉判断期間毎に区切る演算をし、演算した結果を示す情報を図示しない記憶部にさらに記憶する。等価干渉判断期間を記憶すると、制御演算部107は、等価送信信号の変調帯域を周波数方向に変調可能範囲ΔFtの上限から下限まで遷移させることによって等価反射信号の周波数帯域を共に遷移させる演算をする。さらに、制御演算部107は、等価送信信号と共に遷移する等価反射信号の波形と等価干渉信号の周波数との交点、すなわち、等価反射信号が等価干渉信号の干渉を受ける時点を含む等価干渉判断期間を前述の干渉期間に相当する等価干渉期間として、等価送信信号の変調帯域を遷移させる度に特定し、特定した等価干渉期間を示す情報を図示しない記憶部に記憶する。
【0068】
尚、制御演算部107は、前述の干渉期間と同様に、等価漸増時取得期間、及び等価漸減時取得期間のそれぞれにおいて等価干渉期間を特定して記憶する。また、制御演算部107が等価送信信号の変調帯域を遷移させる時の遷移間隔は任意の間隔であってよい。また、制御演算部107が、等価送信信号の変調帯域を遷移させる方向は、変調可能範囲ΔFtの上限から下限までの方向であってもよいし、下限から上限までの方向であってもよい。また、制御演算部107が、等価送信信号の変調帯域の遷移を開始するときの初期の変調帯域は、現在の送信信号Ssの変調帯域であってもよいし、変調可能範囲ΔFtの上限の変調帯域であってもよいし、下限の変調帯域であってもよい。制御演算部107が、等価送信信号の変調帯域の遷移を開始するときの初期の変調帯域を現在の送信信号Ssの変調帯域とするときには、当該変調帯域から変調可能範囲ΔFtの上限まで遷移させた後、下限から再び当該変調帯域まで遷移させてもよいし、当該変調帯域から変調可能範囲ΔFtの下限まで遷移させた後、上限から再び当該変調帯域まで遷移させてもよい。
【0069】
制御演算部107は、等価干渉期間を特定する度に、等価漸増時取得期間、及び等価漸減時取得期間のそれぞれにおいて、前述のFFT対象期間を特定した手法と同様の手法で、前述のFFT対象期間に相当する等価FFT対象期間を特定して記憶する。つまり、制御演算部107は、等価送信信号の変調帯域を周波数方向に沿って任意の遷移間隔で遷移させる度に、等価漸増時取得期間、及び等価漸減時取得期間のそれぞれにおける等価FFT対象期間を特定して、特定した等価FFT対象期間を示す情報を、遷移させた変調帯域毎に対応付けて、図示しない記憶部に記憶する。
【0070】
そして、制御演算部107は、1つの変調帯域に対応する等価漸増時取得期間、及び等価漸減時取得期間のそれぞれにおける等価FFT対象期間が、既に記憶したFFT対象期間(漸増時取得期間、及び漸減時取得期間のそれぞれにおけるFFT対象期間)よりも長くなる変調帯域を、等価FFT対象期間に対応させて記憶した変調帯域の中から特定して、信号生成部101に指示する変更後の送信信号Ssの変調帯域として図示しない記憶部に記憶する。既に記憶したFFT対象期間の長さよりも長くなる等価FFT対象期間に対応する変調帯域が複数あるとき、制御演算部107は、これらの変調帯域の中から最も長い等価FFT対象期間に対応する等価送信信号の変調帯域を信号生成部101に指示する変更後の送信信号Ssの変調帯域として特定して記憶してもよい。
【0071】
一方、制御演算部107は、既に記憶したFFT対象期間の長さよりも長い等価FFT対象期間に対応する等価送信信号の変調帯域を特定できないとき、変調帯域を記憶部に記憶することなく、FFT対象期間特定処理を完了する。
【0072】
以上が、制御演算部107のFFT対象期間特定処理の説明である。制御演算部107が、信号生成部101によって生成される送信信号Ssの変調帯域を、FFT対象期間特定処理をして記憶した変調帯域に変更させる指示を与えることによって、信号生成部101によって生成される送信信号Ssの変調帯域、及び反射信号Hsの周波数帯域は、例えば、図9に示すようになる。図9と図4とを比較すると明らかなように、送信信号Ssの変調帯域を変更させることによって、漸増時取得期間において干渉が生じる時点がなくなり、且つ漸減時取得期間において漸減時取得期間の終了時点から干渉が生じる時点までの期間が、時点Xから時点Yまで長くなる。
【0073】
より具体的には、制御演算部107が、例えば、図9に示すように送信信号Ssの変調帯域を遷移させることによって、FFT対象期間は、漸増時取得期間では、干渉判断期間K1〜K3の長さから干渉判断期間K1〜K5の全ての長さに長くすることができ、且つ漸減時取得期間では、干渉判断期間K6〜K8の長さから干渉判断期間K7〜K10の長さに長くなっている。制御演算部107が、上述で説明したように既に記憶したFFT対象期間を長くするような送信信号Ssの変調帯域を記憶し、記憶した変調帯域でFFT処理の対象となるデータのグループ数を増加させることができ、干渉を受けたときも、対象物との相対距離、及び相対速度の測定精度を増大させることができる。
【0074】
尚、上述のFFT対象期間特定処理の説明では、漸増時取得期間、及び漸減時取得期間の両方において干渉が生じる場合を一例として説明したが、漸増時取得期間、及び漸減時取得期間のいずれか一方において干渉が生じる場合も制御演算部107は同様の処理をして、送信信号Ssの変調帯域を変更することが可能なのは言うまでもない。
【0075】
また、上述のFFT対象期間特定処理の説明では、送信信号Ssの変調帯域の変更後も干渉が生じる場合を一例として説明したが、変調可能範囲ΔFtが十分に広く、干渉が生じない変調帯域(干渉周波数を含まない周波数帯域の反射信号Hsに対する送信信号Ssの周波数帯域)を制御演算部107が特定できた場合には、当該変調帯域に送信信号Ssの変調帯域を変更させる指示を信号生成部101に与えてもよいことは言うまでもない。
【0076】
また、上述のFFT対象期間特定処理の説明では、制御演算部107は、等価送信信号の変調帯域を周波数方向に沿って任意の遷移間隔で遷移させる度に、等価漸増時取得期間、及び等価漸減時取得期間のそれぞれにおける等価FFT対象期間を特定して、特定した等価FFT対象期間を示す情報を、遷移させた変調帯域毎に対応付けて、図示しない記憶部に記憶するものとした。しかしながら、制御演算部107は、等価送信信号の変調帯域を遷移させると共に遷移する等価反射信号の周波数帯域と、特定した等価FFT対象期間を示す情報とを、対応付けて記憶してもよい。この場合、制御演算部107が変更後の送信信号Ssの変調帯域を特定するためには、等価FFT対象期間が、既に記憶したFFT対象期間(漸増時取得期間、及び漸減時取得期間のそれぞれにおけるFFT対象期間)よりも長くなる等価反射信号の周波数帯域を特定し、特定した等価反射信号の周波数帯域を前述のドップラーシフト量dfの符号とは反対の方向に当該ドップラーシフト量だけ遷移させて等価送信信号の変調帯域を求め、求めた変調帯域を変更後の送信信号Ssの変調帯域として決定してもよい。さらに、この場合、既に記憶したFFT対象期間の長さよりも長くなる等価FFT対象期間に対応する等価反射信号の周波数帯域が複数ある時、制御演算部107は、これらの周波数帯域の中から最も長い等価FFT対象期間に対応する等価反射信号の周波数帯域に基づき等価送信信号の変調帯域を求めてもよい。
【0077】
また、制御演算部107は、変更後の送信信号Ssの変調帯域を記憶するための上述した処理を、対象物との相対距離、及び相対速度を測定する度にしてもよいし、予め定められた回数だけ測定する度にしてもよい。
【0078】
また、制御演算部107は、変調帯域特定処理、及びFFT対象期間特定処理のいずれかの処理をして記憶した変調帯域で送信信号Ssを生成する指示を信号生成部101に与えた後、予め定められた回数だけ干渉を受けずに対象物との相対距離、及び相対速度をそれぞれ測定した後、信号生成部101によって生成されている送信信号Ssの変調帯域を、予め定められた倍率、或いは変調可能範囲ΔFtと等しい帯域まで広げてもよい。
【0079】
また、制御演算部107が、送信信号Ssの変調帯域を変更させる指示を信号生成部101に与えたとき、信号生成部101は即座に変調帯域を変更して、例えば、変更後の変調帯域の漸減端周波数から漸増する送信信号Ssの生成の開始、或いは、変更後の変調帯域の漸増端周波数から漸減する送信信号Ssの生成の開始をしてもよい。また、制御演算部107が、送信信号Ssの変調帯域を変更させる指示を信号生成部101に与えるときに、例えば、変更後の変調帯域の指示と、変更後の変調帯域の漸減端周波数から漸増する周波数の送信信号Ssを生成する指示とを信号生成部101に与えてもよい。また、制御演算部107が、送信信号Ssの変調帯域を変更させる指示を信号生成部101に与えるときに、例えば、変更後の変調帯域の指示と、変更後の変調帯域の漸増端周波数から漸減する周波数の送信信号Ssを生成する指示とを信号生成部101に与えてもよい。これにより、制御演算部107は、信号生成部101に変調帯域の指示を与えたタイミングに基づいて、例えば、変調帯域の指示を与えたタイミングから予め定められた開始タイミングでそれぞれ開始する漸増時取得期間、及び漸減時取得期間のそれぞれの開始タイミングを検知すること、サンプリングしたデータの中から漸増時取得期間、及び漸減時取得期間に対応するデータの特定をすること、変調帯域特定処理をするときに特定する必要のある、干渉期間に対応する送信信号Ssの周波数帯域の特定などをすることができる。
【0080】
次に、上述で説明した制御演算部107の処理を含む第1の実施形態に係るレーダ装置1の処理を図10に示すフローチャートを参照しながら説明する。尚、制御演算部107は、図10に示すフローチャートの処理と並行して、ビート信号Bs(漸増期間信号Zs、及び漸減期間信号Gs)をサンプリングして記憶する処理をしているものとする。
【0081】
ステップS101において、制御演算部107は、信号生成部101に指示する変更後の送信信号Ssの変調帯域が図示しない記憶部に記憶されているか否かを判断する。制御演算部107は、ステップS101において、変更後の変調帯域が記憶されていないと判断したとき、ステップS102へ処理を進める。一方、制御演算部107は、ステップS101において、変更後の変調帯域が記憶されていると判断したとき、ステップS103へ処理を進める。
【0082】
ステップS102において、制御演算部107は、初期設定として予め定められている変調帯域で送信信号Ssを生成する指示を信号生成部101へ与える。ステップS102の処理を完了すると、制御演算部107は、ステップS104へ処理を進める。
【0083】
ステップS103において、制御演算部107は、図示しない記憶部に記憶されている変更後の送信信号Ssの変調帯域で送信信号Ssが生成する指示を信号生成部101へ与える。ステップS103の処理を完了すると、制御演算部107は、ステップS104へ処理を進める。
【0084】
ステップS104において、制御演算部107は、サンプリングしたビート信号Bsに基づき、上述したように公知の手法を用いて干渉を受けたか否かを判断する。制御演算部107は、ステップS104において、干渉を受けたと判断したとき、ステップS105へ処理を進める。一方、制御演算部107は、ステップS104において、干渉を受けていないと判断したとき、ステップS106へ処理を進める。
【0085】
ステップS105において、制御演算部107は、上述したようにFFT対象期間を特定し、特定したFFT対象期間を図示しない記憶部に記憶する。尚、制御演算部107が、図10のフローチャートに示す処理を繰り返すことによって、特定したFFT対象期間が図示しない記憶部に既に記憶されているときは、当該FFT対象期間を新たに特定したFFT対象期間で更新する。制御演算部107は、ステップS105の処理を完了すると、ステップS107へ処理を進める。
【0086】
ステップS106において、制御演算部107は、初期設定として予め定められているFFT対象期間を図示しない記憶部に記憶する。尚、制御演算部107が、図10のフローチャートに示す処理を繰り返すことによって、特定したFFT対象期間が図示しない記憶部に既に記憶されているときは、当該FFT対象期間を初期設定として予め定められているFFT対象期間で更新する。制御演算部107は、ステップS106の処理を完了すると、ステップS107へ処理を進める。
【0087】
ステップS107において、制御演算部107は、図示しない記憶部に記憶されているFFT対象期間(例えば、ステップS105、又はステップS106で記憶したFFT対象期間)でFFT処理をして、漸増期間信号Zs、及び漸減期間信号Gsの周波数をそれぞれ求めて、上述したように対象物との相対距離、及び相対速度をそれぞれ測定する。制御演算部107は、ステップS107の処理を完了すると、ステップS108へ処理を進める。
【0088】
ステップS108において、制御演算部107は、上述した変調帯域記憶処理をする。制御演算部107は、ステップS108の処理を完了すると、ステップS101へ処理を戻す。
【0089】
以上が、第1の実施形態に係るレーダ装置1の処理の説明である。第1の実施形態に係るレーダ装置1は、図10のフローチャートに示す処理をすることにより、ステップS108の変調帯域記憶処理で図示しない記憶部に新たな変調帯域が記憶されたときには、次に、ステップS101の処理、及びステップS103の処理をして、送信信号Ssの変調帯域を変更する指示を信号生成部101に与えることによって、干渉信号の影響を低減することができる。
【0090】
より具体的には、例えば、ステップS108の処理で上述したFFT対象期間特定処理をする場合には、ステップS107のFFT処理で用いたFFT対象期間よりも長いFFT対象期間をステップS109で特定できたときに、次に、図10のフローチャートに示す処理を繰り返してステップS103の処理をすることによって、前回の処理におけるFFT対象期間よりも長いFFT対象期間で測定をすることのできる変調帯域で信号生成部101に送信信号Ssを生成させることができる。第1の実施形態に係るレーダ装置1で用いるFM−CW方式のように信号をFFT処理して対象物の測定をするレーダ装置では、FFT処理に用いることのできるデータがより多い方が測定結果の精度を高められる。つまり、第1の実施形態に係るレーダ装置1によれば、軽い演算負荷で干渉信号Ksの影響を低減して対象物の測定結果の正確さが損なわれることを防ぐことができる。
【0091】
例えば、第1の実施形態に係るレーダ装置1によれば、ゼロパッドなどの手法を用いる従来技術のようにFFT処理によって得られるスペクトルにリップルなどが生じないため、測定結果の正確さが損なわれることを防ぐことができる。さらに、第1の実施形態に係るレーダ装置1によれば、加重関数を用いて干渉信号を抑圧することによって、測定結果の正確さを損なうことを防ぐ従来技術のように加重関数を逐次生成する必要がないため、相対的に軽い演算負荷で干渉信号の影響を低減して、測定結果の正確さが損なわれることを防ぐことができる。
【0092】
一方、図10のフローチャートに示すステップS108の処理において、上述した変調帯域特定処理をする場合には、ステップS108で変調帯域特定処理をして記憶した変調帯域で送信信号Ssを生成する指示を、ステップS103の処理を繰り返したときに信号生成部101に与えることにより、干渉を受けない最も広い変調帯域で送信信号Ssを生成して、測定を続けることができる。
【0093】
尚、変調帯域記憶処理の他の例としては、上述で説明した変調帯域特定処理において、可能な場合には、信号生成部101が生成中の送信信号Ssの変調帯域の幅を変えることなく、特定した最も広い周波数帯域に含まれる範囲に変調帯域を遷移させてもよい。
【0094】
また、本発明の一実施形態に係るレーダ装置1は、例えば、自動車などの移動体に搭載して、周囲に存在する人、車両、及び路上設置物(例えば、看板など)などを対象物として測定するレーダ装置として使用することが可能である。
【0095】
また、制御演算部107は、記憶装置(ROM、RAM、ハードディスク等)に格納された上述した処理手順(例えば、図9のフローチャートに示す処理)を実施可能な所定のプログラムデータが、LSI、CPU或いはマイクロコンピュータなどによって解釈実行されることで実現されてもよい。CPUとは、自動車などの移動体に搭載されるECU(Electric Control Unit)を構成するCPUなどであってもよい。また、この場合、プログラムデータは、記憶媒体を介して記憶装置内に導入されてもよいし、記憶媒体上から直接実行されてもよい。尚、記憶媒体とは、ROMやRAMやフラッシュメモリなどの半導体メモリ、フレキシブルディスクやハードディスクなどの磁気ディスクメモリ、CD−ROMやDVDやBDなどの光ディスクメモリ、及びメモリカードなどであってもよい。
【0096】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、上述の説明はあらゆる点において本発明の一例にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明によれば、干渉を受けたときに、軽い演算負荷で干渉信号の影響を低減することができ、例えば、自動車などの移動体に搭載されるレーダ装置などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーダ装置の概略構成を示す図
【図2】送信信号と反射信号との一例を示す図
【図3】ビート信号の一例を示す図
【図4】干渉信号の一例を示す図
【図5】干渉を受けたときのビート信号の波形の一例を示す図
【図6】ビート信号のスペクトルの一例を示す図
【図7】本発明における干渉判断期間、及び干渉期間の一例をそれぞれ示す図
【図8】本発明における変調帯域特定処理を説明する図
【図9】本発明におけるFFT対象期間特定処理を説明する図
【図10】第1の実施形態に係るレーダ装置の処理を示すフローチャート
【符号の説明】
【0099】
1 レーダ装置
101 信号生成部
102 分岐部
103 放射部
104 受信部
105 混合部
106 フィルタ
107 制御演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射部から電磁波として放射される送信信号と、反射波を受信部で受信した反射信号とに基づき、対象物を測定するレーダ装置であって、
前記送信信号と前記反射信号とを混合することにより混合信号を生成する混合手段と、
前記混合手段が前記反射信号に干渉する干渉信号をさらに混合している干渉期間を、前記混合信号に基づいて特定する干渉期間特定手段と、
前記干渉期間特定手段によって前記干渉期間が特定されたとき、前記混合信号が生成されている期間の中で当該干渉期間を除く期間を処理対象期間として特定する処理対象期間特定手段と、
前記処理対象期間で前記混合手段によって混合された前記混合信号に基づき、前記対象物を測定する測定手段とを備える、レーダ装置。
【請求項2】
予め定められた範囲の周波数で前記送信信号を生成可能であって、予め定められた長さの周期で予め定められた変化をする周波数の前記送信信号を生成する信号生成手段と、
前記干渉期間特定手段によって前記干渉期間が特定されたとき、当該干渉期間を除く前記範囲の周波数帯域の内、最も広い範囲の周波数帯域を特定する周波数帯域特定手段と、
前記周波数帯域特定手段によって前記周波数帯域が特定されたとき、当該周波数帯域で前記送信信号を生成する指示を前記信号生成手段に与える指示手段とをさらに備える、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記混合手段は、予め定められた長さの周期で予め定められた変化をする周波数の周波数帯域で前記信号生成手段によって生成される前記送信信号と、前記反射信号とを混合し、
前記処理対象期間特定手段は、前記周期の中で前記干渉期間を除く期間の中で、最も長く連続する期間を前記処理対象期間として特定する、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記混合手段は、予め定められた長さの周期で予め定められた変化をする周波数の周波数帯域で前記信号生成手段によって生成される前記送信信号と、前記反射信号とを混合し、
前記混合手段が前記干渉信号をさらに混合しているとき、当該干渉信号の周波数を干渉周波数として前記混合信号に基づいて特定する干渉周波数特定手段と、
前記混合手段が前記干渉信号を混合した前記周期における時点を、前記混合信号に基づき干渉時点として特定する干渉時点特定手段と、
前記周期における前記干渉時点を除いた期間の中で最も長い期間がさらに長くなる前記送信信号の周波数帯域を、前記干渉信号と前記送信信号とに基づき決定する決定手段と、
前記決定手段によって決定された周波数帯域で前記送信信号を生成する指示を前記信号生成手段に与える指示手段とをさらに備える、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記決定手段は、前記測定手段によって予め定められた回数だけ前記対象物が測定される度に、前記周期における前記干渉時点を除いた期間の中で最も長い期間がさらに長くなる前記送信信号の周波数帯域を決定する、請求項4に記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記処理対象期間で前記混合手段によって混合された前記混合信号に対してFFT処理をすることにより、前記送信信号に対する前記反射信号のドップラーシフト量と遅延時間とを求める処理手段をさらに備え、
前記決定手段は、
前記信号生成部によって生成される前記送信信号に対して、周波数帯域が前記ドップラーシフト量だけ当該ドップラーシフト量の符号に沿って遷移し、且つ前記遅延時間だけ遅延した等価反射信号を生成する等価反射信号生成手段と、
前記等価反射信号の周波数帯域を遷移させる遷移手段と、
前記遷移手段によって周波数帯域が遷移させられた前記等価反射信号の周波数と前記干渉周波数とが略一致する時点を等価干渉時点として特定する等価干渉時点特定手段と、
前記等価干渉時点を前記周期から除いた期間の中で最も長く連続する期間がさらに長くなる前記等価反射信号の周波数帯域を、前記遷移手段によって遷移させられた前記等価反射信号の周波数帯域の中から特定する非干渉期間特定手段とを含み、
前記非干渉期間特定手段によって特定された前記等価反射信号の周波数帯域を前記ドップラーシフト量の符号と反対に当該ドップラーシフト量だけ遷移させた周波数帯域を前記送信信号の周波数帯域として決定する、請求項4に記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記遷移手段は、前記等価反射信号の周波数帯域を予め定められた遷移間隔で遷移させ、
前記等価干渉時点特定手段は、前記遷移手段によって前記等価反射信号の周波数帯域が遷移させられる度に前記等価干渉時点を特定し、
前記非干渉期間特定手段は、前記等価干渉時点特定手段によって前記等価干渉時点が特定される度に特定した前記等価反射信号の周波数帯域の中で、前記最も長い期間が、さらに、最も長くなる前記等価反射信号の周波数帯域を特定する、請求項6に記載のレーダ装置。
【請求項8】
前記混合手段は、予め定められた長さの周期で予め定められた変化をする周波数の周波数帯域で前記信号生成手段によって生成される前記送信信号と、前記反射信号とを混合し、
前記混合手段が前記干渉信号をさらに混合しているとき、当該干渉信号の周波数を干渉周波数として前記混合信号に基づいて特定する干渉周波数特定手段と、
前記干渉周波数を含まない前記反射信号の周波数帯域を特定する非干渉周波数特定手段と、
前記非干渉周波数特定手段によって特定された周波数帯域に基づき、前記送信信号の周波数帯域を決定する決定手段と、
前記決定手段によって決定された周波数帯域で前記送信信号を生成する指示を前記信号生成手段に与える指示手段とをさらに備える、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項9】
前記処理対象期間で前記混合手段によって混合された前記混合信号に対してFFT処理をすることにより、前記送信信号に対する前記反射信号のドップラーシフト量と遅延時間とを求める処理手段をさらに備え、
前記決定手段は、前記非干渉周波数特定手段によって特定された周波数帯域を前記ドップラーシフト量の符号と反対に当該ドップラーシフト量だけ遷移させた周波数帯域を前記送信信号の周波数帯域として決定する、請求項8に記載のレーダ装置。
【請求項10】
放射部から電磁波として放射される送信信号と、反射波を受信部で受信した反射信号とに基づき、対象物を測定するレーダ装置で実行される測定方法であって、
前記送信信号と前記反射信号とを混合することにより混合信号を生成する混合ステップと、
前記混合ステップにおいて前記混合信号が生成されている期間を通じて、当該混合信号に基づき前記反射信号に干渉する干渉信号がさらに混合されている干渉期間を特定する干渉期間特定ステップと、
前記干渉期間特定ステップにおいて前記干渉期間が特定されたとき、前記混合信号が生成されている期間の中で当該干渉期間を除く期間を処理対象期間として設定する設定ステップと、
前記混合ステップにおいて前記混合信号が生成されている期間における前記処理対象期間を通じて前記混合ステップにおいて混合された前記混合信号に基づき、前記対象物を測定する測定ステップとを備える、測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−107219(P2010−107219A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276710(P2008−276710)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】