説明

レーダ装置

【課題】目標の検出性能および干渉抑圧性能を向上させたレーダ装置を提供する。
【解決手段】サブキャリア配置が既知のマルチキャリア送信波の受信した反射波から伝搬路特性を解析した結果又は所定のサブキャリア配置よりマルチキャリア送信波の観測帯域内のサブキャリア配置を設定する手段10,20,70〜90、設定されたサブキャリア配置に従ったサブキャリアを配置したマルチキャリア送信波形を生成し送信する手段70,80、送信した送信波の反射波の受信信号をサブキャリア帯域毎に分波しさらに前記設定に従いサブキャリアを配置した帯域の信号と無い帯域の信号とに弁別する手段20、サブキャリアのない帯域の信号に基づき干渉波検出を行う手段60、干渉波の検出結果に従いサブキャリアを配置した帯域の信号に干渉波抑圧を行う手段30、干渉波抑圧を行った信号から目標検出する手段50を有す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーダ装置、特に目標の検出性能および干渉抑圧性能の向上に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置において、できるだけ遠方のターゲット(目標)を検出し、捕捉することは重要である。レーダの代表的な測距方式として、パルス圧縮方式やFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式が知られている(例えば下記非特許文献1参照)。これらは、それぞれ時間遅延、周波数で距離を計測するという原理に基づいている。
【0003】
パルス圧縮方式は、クラッタ抑圧性能や干渉抑圧性能に優れるが、高速の相関処理演算が必要であり高い距離分解能を必要とする場合には、信号処理系の規模が大きくなるという課題がある。FMCW方式は、比較的低速の信号処理で高い距離分解能が得られる方式であり低コスト化が必要なレーダ装置において多く採用されている。しかしFMCW方式は、送信波がCWであるがゆえに送受のアイソレーション問題、伝播損失の小さい近距離の不要反射物からの不要波(クラッタ)問題がある。
【0004】
また、目標の探知性能を向上させる方法として、目標への照射電力を増大させることが最も効果的かつ効率的である。従って、アンテナの送信ビーム或いは受信ビームについて、目標の方向でピーク利得が得られるような制御が行われることが望ましい。
【0005】
なお、実際の環境では周囲の物体(構造物、地形)による反射・散乱によるマルチパスが発生するが、到来角度の違いを利用して空間的に抑圧する、或いはドップラー周波数の違いを利用してフィルタリング処理で抑圧する等の対策技術がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】吉田孝、“改訂レーダ技術”、コロナ社、1996.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、レーダ装置による測距において、低高度で飛来する目標などについては、目標からの直接波とマルチパスに空間的な角度差は殆どなく、ドップラー周波数の違いも殆どない。このような環境下では、伝搬路環境に依存したマルチパスフェージングによる受信電界レベルの低下が避けられない。特に単一周波数を前提とした上記の従来技術では本質的に対応できないことになる。さらに、直接波と反射波(マルチパス)の位相関係は目標との距離にも依存するため、特定の領域において探知性能が著しく劣化することになる。
【0008】
また、検出の妨害となる干渉波はレーダにとっては避けられない存在であり、レーダ性能を大きく劣化させる要因であることから同時に対策をとる必要がある。
【0009】
この発明は、このような問題を解決するものであり、目標の検出性能および干渉抑圧性能を向上させたレーダ装置を提供することを目的とする。このレーダ装置では、マルチパスをも含めて伝搬路特性の良い帯域にサブキャリアを配置して、そこにエネルギーを集中したマルチキャリア送信波を利用することで、効率良く探知距離の増大を図る。さらに、送信には使用しない帯域を用いることで干渉波の検出・抑圧を行うことを同時に可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、送信アンテナからのマルチキャリア送信波の受信アンテナで受信した反射波により目標を検出するレーダ装置であって、前記送信アンテナから送信させたサブキャリア配置が既知のマルチキャリア送信波の前記受信アンテナで受信した反射波から伝搬路特性を解析した結果により、又は予め設定された基準のサブキャリア配置により、観測対象とする帯域内におけるマルチキャリア送信波のサブキャリア配置を設定する送信波制御手段と、前記送信波制御手段で設定されたサブキャリア配置に従った位置および数だけサブキャリアを配置したマルチキャリア送信波形を生成して前記送信アンテナから送信させる送信波形生成手段と、前記送信波形生成手段で生成され送信された送信波に対する前記受信アンテナで受信した反射波の受信信号を各サブキャリア帯域毎に分波し、さらに前記送信波制御手段での設定に従い前記マルチキャリア送信波形においてサブキャリアを配置していない帯域の信号とサブキャリアを配置した帯域の信号とに弁別する分波・弁別手段と、弁別されたサブキャリアを配置していない帯域の信号に基づいて干渉波の検出を行う干渉検出手段と、前記干渉検出手段において干渉波を検出した場合には、検出結果に従って弁別されたサブキャリアを配置した帯域の信号に対して干渉波の抑圧を行う干渉除去手段と、前記干渉除去手段から得られた信号を用いて目標を検出する目標検出手段と、を備えたことを特徴とするレーダ装置にある。
【発明の効果】
【0011】
この発明では、送信波としてマルチキャリア信号を利用した、目標の検出性能および干渉抑圧性能を向上させたレーダ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1によるレーダ装置の構成図である。
【図2】この発明によるレーダ装置での各種信号を示す図である。
【図3】この発明によるレーダ装置の1つの分波器の具体的な構成例を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1によるレーダ装置の動作の一例を示す動作フローである。
【図5】この発明の実施の形態1によるレーダ装置の動作の別の例を示す動作フローである。
【図6】この発明の実施の形態2によるレーダ装置の構成図である。
【図7】この発明によるレーダ装置で基準として用いるサブキャリア配置の例をいくつか示した図である。
【図8】この発明の実施の形態2によるレーダ装置の動作の一例を示す動作フローである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明では、送信波としてマルチキャリア信号を利用し、伝搬路特性に応じて適応的に送信波形を制御し、その波形情報を利用して受信信号に処理を施すことで、目標の検出性能および干渉抑圧性能を向上させたレーダ装置を提供する。以下、この発明のレーダ装置を各実施の形態について図面を用いて説明する。
【0014】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるレーダ装置の構成図である。図1においてレーダ装置は、K個の素子アンテナ11〜13からなるアレーアンテナである受信アンテナ10、各素子アンテナにそれぞれ設けられた個別構成品であるK個の分波器21〜23からなる分波部20、干渉除去部30、信号合成部40、目標検出部50、干渉検出部60、さらに送信アンテナ70、送信波形生成部80、判定部90から構成される。
【0015】
なお、図1では受信アンテナ10と送信アンテナ70を別個に記載しているが、この発明はこれに限定されない。素子アンテナ11〜13を受信アンテナ10と送信アンテナ70で共用する構成も可能である。また、送信アンテナ70は単素子となっているが、もちろんアレーアンテナ構成としても良い。また、実際の装置においては、受信した高周波信号を周波数変換し、ベースバンドのディジタルデータに変換するための各種デバイス・回路が必要であるが、これらの図示及び説明は省略するものとする。また送信系についても、ディジタル信号を高周波信号に変換する各機能ブロックを同様に省略している。図1に示す構成品はこの発明において主要な機能に限定して記載するものである。
【0016】
この実施の形態ではレーダ装置が自ら信号を送出して、目標からの反射波を検出するアクティブレーダ方式を想定する。従って、送信波についてはある程度任意に生成することができることを利用する。より具体的には、運用時の伝搬路特性に応じてより目標の検出に適した帯域を利用した送信波形を生成する。この特性を活かすために、マルチキャリア信号を適用する。
【0017】
なお、受信アンテナ10、分波部20、送信アンテナ70、送信波形生成部80、判定部90が送信波制御手段を構成し、送信アンテナ70、送信波形生成部80が送信波形生成手段を構成し、分波部20が分波・弁別手段を構成し、干渉検出部60が干渉検出手段を構成し、信号合成部40が干渉除去手段を構成し、目標検出部50が目標検出手段を構成する。
【0018】
次に、詳細な動作について説明する。まず、送信の手順に関し、伝搬路特性を把握するために高精度な目標の検出処理の前に、事前処理としてトレーニング信号の送信を行う。図2にこの発明によるレーダ装置での各種信号を示す。図2の(a)にトレーニング信号の一例を示す。横軸は周波数であり、各線はサブキャリア100のレベル(振幅)の大きさを表す。このように帯域内に均一にサブキャリアを配置する。キャリア間隔は任意であるが、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)信号であれば互いに直交関係を満たす間隔となる。また、帯域幅についてはできるだけ広い方が望ましいが、実際には送受信機の実現性と性能のトレードオフとなる。
【0019】
まず、このトレーニング信号を発射して、受信アンテナ10にて目標からの反射波群を受信する。図1に示す分波部20は分波器21〜23により各素子アンテナの受信信号をサブキャリアに分離する。このサブキャリア単位に分波された信号は、分波部20により判定部90へと送られる。その結果、判定部90には受信信号として図2の(b)のようなマルチキャリア信号が素子数分入力される。
【0020】
分波器21〜23は例えば同一構成を有し、図3に1つの分波器の具体的な構成例を示す。送信波形がOFDM信号である場合の例を示している。素子アンテナ11からの出力信号は直並列変換部24によりN個単位でデータが並び替えられる。N個の信号群はFFT(Fast Fourier Transform)部25により各サブキャリアに分離される。ここで、Nはサブキャリア数(或いはFFTサイズ)を表す。この後、すべてのサブキャリアは判定部90に出力される。また、弁別回路26は判定部90からの情報を基に、各サブキャリア信号を干渉除去部30への出力信号(M個)と干渉検出部60への出力信号(L個)とに弁別する。すなわち、N≧M+Lの関係が成り立つ。
【0021】
判定部90では、予め設定した閾値(図2の(b)の101)をもとに、各サブキャリアの受信レベルが予め設定された閾値よりも大きいかどうかを判定し、所定の受信レベルを満足できそうな帯域を決定する。この判定情報に基づき、送信波形生成部80では図2の(c)のような伝搬路特性に応じて最適な位置にサブキャリアを配置した最適化した送信信号を送信マルチキャリア信号として生成する。ここで、図2の(c)の102は送信波形生成に使用する帯域のサブキャリア、103は使用しない帯域のサブキャリアを示す。こうすることで、伝搬路特性の良い帯域の信号にエネルギーを集中して送信できる。
【0022】
なお、上記の閾値判定に関しては、分波部20の中のある分波器からの出力を選択して実行してもよいし、複数の分波器からの出力に対してそれぞれ実行して総合的に判定してもよい。或いは、複数またはすべての分波器の出力を合成した後の信号を用いて判定してもよい。この合成のために必要となる重み係数(ウエイト)については、干渉波やマルチパスが問題とならない状態、いわゆる通常の運用状態で使用する探索ビーム(固定のビームパターン)を形成するための励振分布(振幅、位相)を適用できる。
【0023】
次に、目標を検出するための手順を示す。上記のようにして生成した送信信号を送信アンテナ70より発射し、受信アンテナ10の各素子アンテナ11〜13で受信する。ここまでは、トレーニング信号を用いた事前処理と同様である。受信信号はつづいて、分波部20に入力され、それぞれ分波器21〜23においてサブキャリア単位に周波数分離されるが、判定部90から得たサブキャリア配置情報に基づき、使用している帯域のサブキャリア信号(図2の(c)の102)については干渉除去部30に、使用していない帯域のサブキャリア信号(図2の(c)の103)については干渉検出部60にそれぞれ出力される。
【0024】
まず、干渉検出部60において妨害となる干渉波の有無を調べる。干渉検出部60に入力されるサブキャリア信号は、送信波形生成部80においてサブキャリアを配置しない、すなわち送信波に使用していない帯域に該当する。従って、入力されたサブキャリア信号の受信レベルを判定するだけで干渉波の有無が識別可能である。なお、素子アンテナ毎に複数のサブキャリア信号が得られるため、これらの受信レベルを平均化することで識別精度を向上することが容易にできる。
【0025】
このようにして、干渉検出部60において干渉波の存在を検出した場合には、干渉除去部30において受信信号から干渉波成分を除去する処理を施す。すでに各素子アンテナについて干渉波のみを含むサブキャリア信号を分波しているので、これらを用いて干渉波方向にヌル(受信感度の低い点)を形成する重み係数を算出して、干渉除去部30において各信号に作用させる(重み付けを行う)ことで干渉波の除去ができる。
【0026】
こうして干渉波成分を除去した複数のサブキャリア信号が信号合成部40に出力される。ここでは、同じ周波数配置にあるサブキャリア同士を合成して、SNR(Signal-to-Noise Ratio:信号対雑音電力比)をさらに改善し、目標の検出性能を向上させる。すでに干渉波成分は除去されているので、各出力の振幅に応じた重みで同相合成する、いわゆる最大比合成ダイバーシチとして動作させればよい。
【0027】
なお、信号合成部40では受信アンテナ10が1つの素子アンテナで構成されている場合には、例えば一次記憶メモリ等(図示省略)を設けて、同一素子アンテナでの複数回の受信による複数のサブキャリア信号を合成してもよく、また受信アンテナ10が複数の素子アンテナ11〜13からなるアレーアンテナである場合には、複数の素子アンテナ11〜13でのそれぞれの1回の受信による複数のサブキャリア信号を合成してもよい。さらに受信アンテナが1つの素子アンテナからなる場合には、信号合成部40は省略してもよい。
【0028】
このように、干渉波が除去され、SNRが改善された信号が目標検出部50に出力され、出力信号のレベル(振幅)の時間変化を観測することで目標の有無を検出し、検出した場合には目標の距離・方向・移動速度などの情報をレーダ信号処理により演算する。
【0029】
上述の内容に関する動作フローの一例を図4に示す。図4の動作を説明すると、まず、伝搬路特性の測定のために、例えば判定部90からの指令信号に従って送信波形生成部80で図2の(a)に示すような使用帯域に均一にサブキャリアを配置した送信波形であるトレーニング信号が生成されて送信アンテナ70から送信される(ステップS1)。受信側では受信アンテナ10で受けた受信信号が分波部20でサブキャリア単位に分波され(ステップS2)、周波数特性が観測できるようにされた後、判定部90へ送られる。判定部90では、予め設定した閾値との判定処理により受信レベルの大きいサブキャリアを選択する(ステップS3)。
【0030】
なおステップS3で、伝搬路特性が全体的に良くない状態であったり、選択した素子アンテナの受信信号が劣化している場合がある。そのようにしてサブキャリアの選択が困難であるときには、判定部90は再びステップS1のトレーニング信号を送信する手順に戻ることで改善を図る。なお、トレーニング信号の再送を行う前に、閾値を下げて再判定することでサブキャリア選択を早期に完了させることも可能である。
【0031】
こうして判定部90で使用するサブキャリア配置が決定されると(ステップS4)、判定部90は送信波形生成部80に決定したサブキャリア配置に基づく伝搬路特性に従って最適化した波形を生成させて、送信アンテナ70から目標検出のための送信を実施させる(ステップS5)。受信側では、目標からの反射波は受信アンテナ10で受信され分波部20で分波され(ステップS6)、上述の処理、すなわち干渉検出部60、干渉除去部30における干渉波の検出・除去(ステップS7)、さらに信号合成部40における目標信号成分の合成(ステップS8)を実施した後、目標検出部50で目標の検出処理を実行する(ステップS9)。このとき、送信波形の最適化により、各素子アンテナで受信された信号は受信レベルがすでに高い状態であるので、後段の各処理の高精度化も期待できる。以上の一連の処理を、定期的或いは必要なタイミングで繰り返しながら動作させる。
【0032】
また、図5に別の例の動作フローを示す。図4のフローでは、判定部90において受信レベルの大きいサブキャリアを選択する際に閾値を導入したが、トレーニング信号の再送などによる処理遅延が許容されない運用も想定される。そこで、即応性を重視する場合にはステップS3aで、閾値判定ではなく、使用するサブキャリア数Mを予め設定しておき、受信レベルが上位M個のサブキャリアを一意に選択するものとする。その他のステップは図4と同じである。こうすることで、トレーニング信号の送信は1回で済むため(再送を禁止する)、目標検出までの処理遅延を改善できる。
【0033】
以上のような処理により、この発明のレーダ装置は、伝搬路特性に応じた送信波形を生成し、受信側でその情報を利用することでマルチパスフェージング環境においても、目標の探知距離を増大しつつ、測距の妨害となる干渉波の検出および除去を実現できる。
【0034】
実施の形態2.
図6はこの発明の実施の形態2によるレーダ装置の構成図である。上記実施の形態と同一もしくは相当部分は同一符号で示し説明を省略する。図6において、任意配置制御部95はサブキャリア配置を任意に制御する機能である。実施の形態1においては、送信波形を生成するために、トレーニング信号の送信および受信処理により事前に伝搬路特性を正確に把握していた。これに対してこの実施の形態2では、送信側単独でサブキャリア配置を制御する構成とした。
【0035】
なお、任意配置制御部95が送信波制御手段を構成する。
【0036】
伝搬路特性は周囲の状況や観測対象の移動により時々刻々と変化するため、それに追従する必要があり、処理の高速化が必要となる場合がある。レーダ装置を運用する環境とは、移動体である目標以外は比較的静的(固定的)なものが多いため、ある程度伝搬路特性を事前に予測することは可能である。従って、送信側で予測モデルに基づく確定的な基準により送信波形を生成する手法は処理の高速化に有効である。用いる基準として、図7にサブキャリア配置の例をいくつか示す。周波数選択性により受信レベルの低下する帯域は観測帯域150の一部と考えられるので、図7の(a)では予め設定(予測)した所定の帯域内にサブキャリアを集中配置する。その他、図7の(b)のようにランダムに配置することで、少ない送信回数でもできるだけ状態の良い帯域のサブキャリアを受信できる確率を上げる方法もある。一方、図7の(c)のように観測帯域内に均一に配置してできるだけ目標の検出不能となる確率を下げ、干渉波の検出も可能とする方法もある。なお、これらの配置を組み合わせることでより改善することも可能である。
【0037】
図8にこの実施の形態の動作フローの一例を示す。任意配置制御部95では、上述のいずれかの確定的基準によるサブキャリア配置を設定し(ステップS4a)、送信波形生成部80に設定したサブキャリア配置に基づく伝搬路特性に従って最適化した波形を生成させて、送信アンテナ70から目標検出のための送信を実施させる(ステップS5a)。その他のステップは図4、図5と同じである。事前の伝搬路推定処理が省略できることで簡易化できる。
【0038】
このような処理により、この実施の形態2では、この実施の形態1と比較して、トレーニング信号に関する送受信間のフィードバック処理が省略できる。これは処理の高速化を可能とするとともに、分波部20から任意配置制御部95への信号出力を必要としないため装置の小型化、低消費電力化が可能となる。
【0039】
なお、上記各実施の形態では、トレーニング信号を用いる構成で説明したが、通常運用中の送信波を利用して伝搬路特性を定期的に観測しておくことももちろん可能である。
また、上記各実施の形態では、常にサブキャリア配置を制御する構成で説明したが、分解能という観点からはなるべく広い帯域を使って検出処理を行うことが望ましい。従って、妨害となる干渉波が存在しない環境やマルチパスが問題にならない環境では、観測帯域内すべてにサブキャリアを配置する運用ももちろん可能である。
なお、上記実施の形態2において、時間短縮(処理の高速化)の効果は減少するものの、複数の送信パルスをいろいろとサブキャリア配置を変更して送信することで、特性の良い受信信号を得られる確率を高めることも可能である。
【符号の説明】
【0040】
10 受信アンテナ、11〜13 素子アンテナ、20 分波部、21〜23 分波器、24 直並列変換部、25 FFT部、26 弁別回路、30 干渉除去部、40 信号合成部、50 目標検出部、60 干渉検出部、70 送信アンテナ、80 送信波形生成部、90 判定部、95 任意配置制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信アンテナからのマルチキャリア送信波の受信アンテナで受信した反射波により目標を検出するレーダ装置であって、
前記送信アンテナから送信させたサブキャリア配置が既知のマルチキャリア送信波の前記受信アンテナで受信した反射波から伝搬路特性を解析した結果により、又は予め設定された基準のサブキャリア配置により、観測対象とする帯域内におけるマルチキャリア送信波のサブキャリア配置を設定する送信波制御手段と、
前記送信波制御手段で設定されたサブキャリア配置に従った位置および数だけサブキャリアを配置したマルチキャリア送信波形を生成して前記送信アンテナから送信させる送信波形生成手段と、
前記送信波形生成手段で生成され送信された送信波に対する前記受信アンテナで受信した反射波の受信信号を各サブキャリア帯域毎に分波し、さらに前記送信波制御手段での設定に従い前記マルチキャリア送信波形においてサブキャリアを配置していない帯域の信号とサブキャリアを配置した帯域の信号とに弁別する分波・弁別手段と、
弁別されたサブキャリアを配置していない帯域の信号に基づいて干渉波の検出を行う干渉検出手段と、
前記干渉検出手段において干渉波を検出した場合には、検出結果に従って弁別されたサブキャリアを配置した帯域の信号に対して干渉波の抑圧を行う干渉除去手段と、
前記干渉除去手段から得られた信号を用いて目標を検出する目標検出手段と、
を備えたことを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記干渉除去手段からの複数の出力信号を用いて目標信号成分を合成する信号合成手段をさらに備え、
前記目標検出手段が前記信号合成手段から得られた信号を用いて目標を検出することを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記送信波制御手段は、サブキャリア配置が既知の送信波として前記観測帯域内すべてにサブキャリアを配置した送信波形のトレーニング信号を前記送信波形生成手段に生成させて送信させ、受信した信号から伝搬路特性の良い帯域にサブキャリアを配置したマルチキャリア送信波のサブキャリア配置を設定することを特徴とする請求項1又は2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記送信波制御手段は、予め設定した閾値より大きい受信レベルとなった帯域にそれぞれサブキャリアを配置設定することを特徴とする請求項3に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記送信波制御手段は、受信レベルの高い順に予め設定した数の帯域にそれぞれサブキャリアを配置設定することを特徴とする請求項3に記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記送信波制御手段において、予め設定された基準のサブキャリア配置が、前記観測対象とする帯域内の一部に集中的に所定の数のサブキャリアを配置したものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記送信波制御手段において、予め設定された基準のサブキャリア配置が、前記観測対象とする帯域内にランダムに所定の数のサブキャリアを配置したものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のレーダ装置。
【請求項8】
前記送信波制御手段において、予め設定された基準のサブキャリア配置が、前記観測対象とする帯域内に均一に所定の数のサブキャリアを配置したものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のレーダ装置。
【請求項9】
前記送信波制御手段において、予め設定された基準のサブキャリア配置が、請求項6から8までに記載の基準のサブキャリア配置を組み合わせたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のレーダ装置。
【請求項10】
前記受信アンテナが複数の素子アンテナを設けたアレーアンテナ構成を有し、各素子アンテナで受信した反射波の受信信号に対して前記処理を行うことを特徴とする請求項1から9までのいずれか1項に記載のレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−256082(P2010−256082A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104137(P2009−104137)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】