説明

レーダ装置

【課題】 大規模なフェイズドアレイアンテナ装置において、フィールド内で温度差が発生する場合において、アンテナ装置までのケーブルの位相を測定及び補償することが可能なレーダ装置を提供する。
【解決手段】 複数の素子アンテナにそれぞれ接続され、送信波及び受信波を伝送する複数の伝送線路と、複数の移相器と複数の素子アンテナとの接続をそれぞれ短絡へ切り替え可能な複数の接続・短絡切替部のうち、少なくとも一つが短絡側へ切り替わったときに、短絡された伝送線路以外の複数の伝送線路を伝送する各信号の位相を、短絡された伝送線路に対応する移相器以外の、複数の移相器の移相量を制御し、順次、位相を変更させる位相設定部と、波源からの送信波が複数の接続・短絡切替部による短絡で生じた反射波を含む波源からの送信波の反射波を、順次、蓄積していくデータ蓄積部が所定回数蓄積した反射波のデータの加算値から位相を補償する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の素子アンテナに電波を送信し、かつ位相を電子的に変化させることにより高速で主ビームを変更することが可能である目標の検出や大気状況の観察を行う大規模なフェイズドアレイアンテナを用いたレーダ装置に関し、特に、フェイズドアレイアンテナを用いたレーダ装置のビーム方向精度に重要な要素であるアンテナ装置までの伝送線路(ケーブル)位相を短時間に、測定及び補償することを可能とするものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フェイズドアレイレーダには、素子アンテナに八木宇田アンテナを選択し、各アンテナの距離を等間隔に配置するもの(例えば、特許文献1)がある。また、このようなレーダ装置において、アンテナ装置までの伝送線路(ケーブル)位相を測定及び補償するための方法としては、目標物にビーム照射し、測定されたビーム反射信号の受信強度を元に、移相器で補正しながら受信強度を最大化させるように調整するものがある。さらに、アンテナ装置までの伝送線路(ケーブル)位相を測定及び補償だけでなく、レーダ装置(アレイアンテナ)を起点として要求覆域が存在する方向の範囲に、密にサンプル点を配置し、サンプル点方向の最大所要探知距離での探知状況をチェックして要求覆域の制約を判定し、制約が満たされていない場合にはビームの送信態様に適切な変更を加え、要求覆域を満たし且つ高効率のビーム構成を求めることのできるレーダパラメータ最適化を行うレーダ装置もある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
従来、伝送線路(ケーブル)の位相測定には、同軸ケーブルのコネクタを介してパルス送受信機を接続することで、内導体に波長λのパルス信号を印加する。同軸の内導体に接続された内導体線と、同軸の外導体に接続された外導体線の先端を接続し、パルス送受信機にてパルス信号の反射時間t1を測定する。内導体線と、外導体線の先端を被測定体であるアンテナ部品上の所望の2点に接続し、パルス送受信機にてパルス信号の反射時間t2を測定することで、被測定体であるアンテナ部品の位相を求めるものがある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−20861号公報
【特許文献2】特開2005−55363号公報
【特許文献3】特開2008−58072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の素子アンテナまでのそれぞれの伝送線路の長さを、性能の個体差を考慮した上で、同じ長さにして、フェイズドアレイアンテナを用いたレーダ装置を運用していても、伝送線路ごとの位相の変動は、温度条件により生じるため、レーダ装置の設置環境が急激な温度変化や雪・日射による個々の伝送線路の状態が刻々と変化するような環境の場合、短時間・かつ自動的に伝送線路ごとの位相を測定できることが要求される。しかし、多数の素子アンテナにより構成されているフェイズドアレイアンテナを用いたレーダ装置においては、前述の従来技術では、短時間にこれらの位相および損失を測定することが困難であるという課題があった。これは、素子アンテナが広いエリアに広がって設置される場合は、伝送線路が必然的に長くなるので、さらに、顕著となる。また、特許文献3に記載のもののように、伝送線路(同軸ケーブル)ごとに、位相を測定する場合は、フェイズドアレイアンテナを用いたレーダ装置が設置されている場所の天候などにより測定そのものが困難な状況が考えられるという課題もあった。
【0006】
また、目標物にビーム照射しながら伝送線路位相を移相器で補正しながら最適化する方法は、目標物が明確に存在しなければ利用することができないので、例えば、気象レーダ・大気観測用レーダのような目標物が明確でないものを測定する装置においては、反射物をフィールドに配置することができず、実施することが不可能であるという課題があった。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解消するためになされたもので、大規模なフェイズドアレイアンテナ装置において、フィールド内で温度差が発生する場合において、アンテナ装置までのケーブルの位相を自動的に測定及び補償することが可能なレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明に係るレーダ装置は、複数の素子アンテナから構成されるフェイズドアレイアンテナから送信波を送信し、その送信波が物質により反射した電波を受信波として受信することで、目標の検出や大気状況の観察を行うレーダ装置において、前記複数の素子アンテナにそれぞれ接続された複数の移相器と、これらの複数の移相器を介して、前記複数の素子アンテナにそれぞれ接続され、送信波及び受信波を伝送する複数の伝送線路と、前記複数の移相器と前記複数の素子アンテナとの接続をそれぞれ短絡へ切り替え可能な複数の接続・短絡切替部と、これらの複数の接続・短絡切替部のうち、少なくとも一つが短絡側へ切り替わったときに、短絡された伝送線路以外の前記複数の伝送線路を伝送する各信号の位相を、短絡された伝送線路に対応する前記移相器以外の、前記複数の移相器の移相量を制御し、順次、位相を変更させる位相設定部と、波源からの送信波が前記複数の接続・短絡切替部による短絡で生じた反射波を含む前記波源からの送信波の反射波を、順次、蓄積していくデータ蓄積部と、このデータ蓄積部が所定回数蓄積した反射波のデータの加算値から、短絡された伝送線路の位相を測定する伝送線路位相測定部と、この伝送線路位相測定部により位相を測定された伝送線路に対応する前記移相器の移相量を制御し、位相を補償することが可能な位相補償制御部とを備えたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の発明に係るレーダ装置は、送信波を送信し、その送信波が物質により反射した電波を受信波として受信するフェイズドアレイアンテナを構成する複数の素子アンテナと、これらの複数の素子アンテナから放射する送信波の波源である種信号生成部と、この種信号生成部からの信号を分配し、前記複数の素子アンテナが受信した受信波由来の各信号を合成する合成分配部と、この合成分配部が分配した各信号及び前記複数の素子アンテナが受信した受信波由来の各信号をそれぞれ伝送する複数の伝送線路と、一端が前記複数の伝送線路に、他端が前記複数の素子アンテナに接続され、前記合成分配部が分配した各信号の位相をそれぞれ制御して、前記アレイアンテナの放射パターンを制御する複数の送受信処理部と、前記種信号生成部と前記合成分配部との間に設けられ、送受信を切り替え、後記信号処理部へ前記複数の素子アンテナが受信した受信波由来の信号であって、前記合成分配部が合成した信号を送る送受切替部と、切り替えることによって前記種信号生成部からの信号を前記複数の送受信処理部内で短絡することが可能な前記送受信処理部ごとにそれぞれ設けられた複数の接続・短絡切替部と、この接続・短絡切替部ごとに設けられ、前記複数の伝送線路を伝送する信号の位相をそれぞれ変化させること可能な複数の移相器と、前記複数の素子アンテナが受信した受信波を前記合成分配部が合成した合成信号、前記複数の接続・短絡切替部が前記種信号生成部からの信号が前記複数の送受信処理部内の短絡で生じた反射波の信号、及び、前記複数の伝送線路及び前記送受信処理部内で生じた反射波を前記合成分配部が合成した合成信号をディジタル信号に変換する受信部と、この受信部が変換したディジタル信号を高速フーリエ変換して、目標の検出や大気状況の観察を行う信号処理部と、前記複数の接続・短絡切替部のうち、少なくとも一つが短絡側へ切り替わったときに、短絡された伝送線路以外の前記複数の伝送線路を伝送する各信号の位相を、短絡された伝送線路に対応する前記移相器以外の、前記複数の移相器の移相量を制御し、順次、位相を変更させる位相設定部と、前記種信号生成部からの送信波が前記複数の接続・短絡切替部による短絡で生じた反射波と前記複数の伝送線路及び前記送受信処理部内で生じた反射波とが前記合成分配部により合成された合成信号を前記信号処理部が処理したデータを、順次、蓄積していくデータ蓄積部と、このデータ蓄積部が所定回数蓄積した反射波のデータの加算値から、短絡された伝送線路の位相を測定する伝送線路位相測定部と、この伝送線路位相測定部により位相を測定された伝送線路に対応する前記移相器の移相量を制御し、位相を補償することが可能な位相補償制御部とを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項3の発明に係るレーダ装置は、前記複数の接続・短絡切替部の接続側と短絡側との切り替えを制御する接続・短絡切替制御部を有する請求項1又は2に記載のものである。
【0011】
請求項4の発明に係るレーダ装置は、前記接続・短絡切替制御部が、前記伝送線路位相測定部が短絡された伝送線路の位相を測定するごとに、前記複数の接続・短絡切替部のうち、接続側から短絡側へ切り替わるものを順次入れ替えていく制御を行う請求項3に記載のものである。
【0012】
請求項5の発明に係るレーダ装置は、前記位相設定部が、ランダムに位相を変更させる請求項1〜4のいずれかに記載のものである。
【0013】
請求項6の発明に係るレーダ装置は、前記位相設定部が、等間隔で位相を変更させる請求項1〜4のいずれかに記載のものである。
【0014】
請求項7の発明に係るレーダ装置は、前記位相設定部が、位相を前記移相器の移相量精度の回数分変更させる請求項6に記載のものである。
【0015】
請求項8の発明に係るレーダ装置は、前記伝送線路が、同軸ケーブルである請求項1〜7のいずれかに記載のものである。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、この発明によれば、測定時間が数秒程度で、伝送線路の位相や複数の伝送線路の位相差を測定することが可能となり、急激な環境変化に対しても迅速な伝送線路(ケーブル)の位相差の補償処理を行うことができるようになり、人手がかからないため、屋外条件が厳しい状態(降雨・降雪・強風等)に影響されることなく、位相測定及び位相補償処理を行うことができるレーダ装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施の形態1に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】例示的に求めた時系列データの和のシミュレーション図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るレーダ装置の伝送線路の位相を求めたシミュレーション図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係るレーダ装置の運用示すフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態1に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1について図1〜5を用いて説明する。図1〜5において、1は複数の素子アンテナ1−1、1−2、〜、1−n(nは整数)から構成されるフェイズドアレイアンテナ、2は複数の素子アンテナ1−1、1−2、〜、1−nから放射する送信波の波源である種信号生成部、3は種信号生成部2からの信号を分配し、複数の素子アンテナ1−1、1−2、〜、1−nが受信した受信波由来の各信号を合成する合成分配部(合成分配器)、4は合成分配部3が分配した各信号及び複数の素子アンテナ1−1、1−2、〜、1−nが受信した受信波由来の各信号をそれぞれ伝送する複数の伝送線路4−1、4−2、〜、4−n(nは整数)で構成された伝送線路群であり、伝送線路4−1、4−2、〜、4−nは同軸ケーブルを使用することにより、伝搬する信号(電波)の漏洩が少なくすることができる。5は一端が伝送線路群4に、他端がフェイズドアレイアンテナ1(素子アンテナ1−1、1−2、〜、1−n)に接続され、合成分配部3が分配した各信号の位相をそれぞれ制御して、フェイズドアレイアンテナ1の放射パターンを制御する複数の送受信処理部5−1、5−2、〜、5−n(nは整数)で構成された送受信処理部群、6は送受信処理部群5(詳しくは、後述する第3の送受切替部群)とフェイズドアレイアンテナ1とを接続する複数のアンテナ接続用伝送線路6−1、6−2、〜、6−n(nは整数)から構成されたアンテナ接続用伝送線路群(図1上では、アンテナ接続用伝送線路群6の符号表示は省略する)である。
【0019】
続いて、7は種信号生成部2と合成分配部3との間に設けられ、送受信を切り替え、後述する信号処理部へフェイズドアレイアンテナ1が受信した受信波由来の信号であって、合成分配部3が合成した信号を送る送受切替部(第1の送受切替部)、8は種信号生成部2からの信号を複数の送受信処理部群5内で、それぞれで短絡する送受信処理部ごとに設けられた複数の接続・短絡切替部8−1、8−2、〜、8−n(nは整数)から構成された接続・短絡切替部群、9は第2の送受切替部9−1、9−2、〜、9−n(nは整数)から構成された第2の送受切替部群、10は第3の送受切替部10−1、10−2、〜、10−n(nは整数)から構成された第3の送受切替部群、11は第2の送受切替部群9と第3の送受切替部群10との間に設けられ、種信号生成部2が生成した信号由来の各信号(送信信号)を増幅する送信信号増幅部11−1、11−2、〜、11−n(nは整数)から構成される送信信号増幅部群、12は第2の送受切替部群9と第3の送受切替部群10との間に設けられ、フェイズドアレイアンテナ1が受信した受信波由来の各信号(受信信号)を増幅する受信信号増幅部12−1、12−2、〜、12−n(nは整数)から構成される受信信号増幅部群である。
【0020】
続いて、13はフェイズドアレイアンテナ1に対して、接続・短絡切替部群8の後段に、接続・短絡切替部8−1、8−2、〜、8−nごとに設けられ、複数の素子アンテナ1−1、1−2、〜、1−nにそれぞれ接続され、伝送線路4−1、4−2、〜、4−nを伝送する信号の位相をそれぞれ変化させる複数の移相器13−1、13−2、〜、13−n(nは整数)から構成された移相器群であり、複数の移相器13−1、13−2、〜、13−nと複数の素子アンテナ1−1、1−2、〜、1−nとの接続をそれぞれ短絡へ切り替え可能なものが複数の接続・短絡切替部8−1、8−2、〜、8−nである。また、複数の伝送線路伝送線路4−1、4−2、〜、4−nは、複数の移相器移相器13−1、13−2、〜、13−nを介して、複数の素子アンテナ1−1、1−2、〜、1−nにそれぞれ接続され、送信波及び受信波を伝送するものといえる。14は表示部である。なお、図1上では、接続・短絡切替部群8、第2の送受切替部群9、第3の送受切替部群10、送信信号増幅部群11、受信信号増幅部群12、移相器群13の符号表示は省略する。
【0021】
続いて、15はフェイズドアレイアンテナ1が受信した受信波由来の信号であって、合成分配部3が合成した信号、及び、波源からの送信波が複数の接続・短絡切替部による短絡で生じた反射波を含む波源からの送信波の反射波を合成分配部3が合成した信号をディジタル信号に変換する受信部である。波源からの送信波が複数の接続・短絡切替部による短絡で生じた反射波を含む波源からの送信波の反射波とは、接続・短絡切替部群8が種信号生成部2からの信号が送受信処理部群5(送受信処理部5−1、5−2、〜、5−nの少なくとも一つ)内の短絡で生じた反射波と伝送線路群4及び送受信処理部群5内で生じた反射波を指す。16は受信部15が変換したディジタル信号を高速フーリエ変換(以下、FFTと称す)して、フェイズドアレイアンテナ1が受信した受信波由来の信号(受信信号)から目標の検出や大気状況の観察を行い、レーダ装置の内部回路・線路の反射波の受信処理も行う信号処理部、17は接続・短絡切替部群8を制御して、各接続・短絡切替部8−1、8−2、〜、8−nを設定する接続・短絡切替制御部であり、具体的には、接続・短絡切替制御部17は各接続・短絡切替部8−1、8−2、〜、8−nと制御線で繋がれ、各接続・短絡切替部8−1、8−2、〜、8−nを接続側と短絡側との切り替えを制御するものである。制御線は、図1に示すように、接続・短絡切替制御部17から各接続・短絡切替部8−1、8−2、〜、8−nの直前で分岐するように配設してもよいし、複数の伝送線路4−1、4−2、〜、4−nのように、複数の接続・短絡切替部8−1、8−2、〜、8−nごとに配設してもよい。なお、複数の伝送線路が近しい位置に配設されている場合は、複数の接続・短絡切替部を短絡側に切り替えても、反射波の振幅が複数倍になるだけなので、後述する位相補償がまとめてできる。
【0022】
続いて、18は接続・短絡切替制御部17により制御されて、複数の接続・短絡切替部群8が種信号生成部2からの信号を送受信処理部群5のうち、少なくとも一つの送受信処理部内で、対応する接続・短絡切替部を一つが短絡側へ切り替え、線路を短絡したときに、移相器群13の移相量を制御し、複数の伝送線路4−1、4−2、〜、4−nのうち、少なくとも先の送受信処理部に対応する伝送線路を伝送する信号の位相を不変とし(つまり、移相器を固定する)、この位相を不変とした信号以外の複数の伝送線路を伝送する各信号(つまり、短絡された伝送線路以外の伝送線路を伝送する各信号)の位相をそれぞれランダムに又は等間隔で順次変更していく制御を行う位相設定部である。位相設定部18は、各移相器13−1、13−2、〜、13−nと制御線で繋がれている。この制御線は、図1に示すように、位相設定部18から各移相器13−1、13−2、〜、13−nの直前で分岐するように配設してもよいし、複数の伝送線路4−1、4−2、〜、4−nのように、複数の移相器13−1、13−2、〜、13−nごとに配設してもよい。
【0023】
さらに、19は位相設定部18が移相器群13を制御した後に、種信号生成部2からの信号が送受信処理部群5内で接続・短絡切替部群8による短絡で生じた反射波由来と伝送線路群4及び送受信処理部群5内で生じた反射波由来との信号を信号処理部16が高速フーリエ変換したデータを、順次、蓄積していくデータ蓄積部、20はデータ蓄積部19が波源からの送信波が複数の接続・短絡切替部による短絡で生じた反射波を含む波源からの送信波の反射波を、順次、蓄積していき、所定回数蓄積したデータの加算値から、伝送する信号の位相が固定された少なくとも一つの伝送線路(送受信処理部5−1、5−2、〜、5−nのいずれか)の位相を測定する伝送線路位相測定部である。データの加算は、少なくともデータ蓄積部19又は伝送線路位相測定部20のいずれかで行えばよい。なお、データ蓄積部19は、通常のレーダ装置運用時のデータを蓄積してもよい。つまり、データ蓄積部19は、信号処理部16からのデータを蓄積するものである。
【0024】
加えて、21は先の少なくとも一つの伝送線路に対応する移相器(移相器13−1、13−2、〜、13−nのいずれか)を制御し、伝送線路位相測定部20が測定した位相から少なくとも一つの伝送線路の位相を補償する位相補償制御部であり、伝送線路位相測定部20により位相を測定された伝送線路に対応する移相器の移相量を制御し、位相を補償することが可能なものである。位相補償制御部21で一つの伝送線路の位相を補償する場合は、予め設定された値からのずれ分を位相設定部18が移相器群13を制御して補償すればよいし、予め設定された値を使わずに、全ての伝送線路4−1、4−2、〜、4−nの位相を揃えることだけを要するのであれば、位相設定部18が、伝送線路群4にうち、伝送する信号の位相を不変する伝送線路を順次変更、つまり、伝送線路位相測定部20が短絡された伝送線路の位相を測定するごとに、複数の接続・短絡切替部8−1、8−2、〜、8−nのうち、接続側から短絡側へ切り替わるものを順次入れ替えていく制御を行い、全ての伝送線路4−1、4−2、〜、4−nの位相を伝送線路位相測定部20により、測定して、全ての伝送線路4−1、4−2、〜、4−nのずれを位相補償制御部21が位相を補償すればよい。また、同じ手順で、単に、伝送線路位相測定部20により、二つの伝送線路の位相差を測定し、位相補償制御部21が、二つの伝送線路の位相を補償してもよい。22は実施の形態1に係るレーダ装置において、送受切替部7以降の構成を複数配列する際に、種信号生成部からの信号(種信号)を各送受切替部7に分配する分配部である。なお、表示部14は、信号処理部16が処理した目標や大気状況の表示やデータ蓄積部19に蓄積された伝送線路群4の位相の情報やその補償に関する各種情報の表示を行うものである。
【0025】
次に動作について説明する。図1に記載の実施の形態1に係るレーダ装置において、種信号生成部2で発生した種信号は、送受切替部7から合成分配部3を通り、伝送線路4−1、4−2、〜、4−nにそれぞれ接続された送受信処理部5−1、5−2、〜、5−nに分配される。実施の形態1に係るレーダ装置をフェイズドアレイアンテナ1から送信波を送信し、その送信波が物質により反射した電波を受信波として受信することで、目標の検出や大気状況の観察を行うように動作させる場合、つまり、レーダ動作させる場合は、接続・短絡切替制御部17において接続・短絡切替部群8を制御して、全ての接続・短絡切替部8−1、8−2、〜、8−nをフェイズドアレイアンテナ1に繋がる方(短絡する方とは反対側の方、つまり、短絡側に対して接続側)に接続することを選択する。なお、図1では、接続・短絡切替部8−1は、短絡する方(短絡側)に接続されている状態を図示している。その後、送受信処理部群5内に設けられた移相器群13、接続・短絡切替部群8を経由した種信号が第2の送受切替部群9、送信信号増幅部群11、第3の送受切替部群10を経由し、増幅された電磁波(電波)がフェイズドアレイアンテナ1から空中に放射される。目標物などの物質から反射した信号は、送受切替部7、第2の送受切替部群9および第3の送受切替部群10を受信側に変更した後、フェイズドアレイアンテナ1から送受信処理部群5内の、第3の送受切替部群10、受信信号増幅部群12、第2の送受切替部群9、接続・短絡切替部群8、移相器群13を経由して合成分配部3でアナログ合成された後、送受切替部7を経由して受信部15にてディジタル信号に変換され、信号処理部16にてFFTおよび目標検出などの処理を行う。なお、図1では、第2の送受信切替部9−1、9−2、〜、9−n(第2の送受信切替部群9)は、全て送信側に接続された状態を示している。
【0026】
ここで、接続・短絡切替制御部17において接続・短絡切替部8−1、8−2、〜、8−nのうち、短絡切替部8−1を制御して、送受信処理部5−1のみ短絡を選択することにより、種信号生成部2にて生成された信号を接続・短絡切替部8−1で反射させるとともに、送受切替部7を受信状態とすることにより、反射された信号を受信部15、信号処理部16を経由してデータ蓄積部19にデータ保存される。この保存されたデータを時系列データとして保存すれば、時系列波形からレーダ装置における伝送線路4−1、4−2、〜、4−n(伝送線路群4)を含む送受切替部7から接続・短絡切替部8−1、8−2、〜、8−n(接続・短絡切替部群8)までの伝達路振幅および位相を把握することが可能となる。
【0027】
しかし、送受信処理部群5において、接続・短絡切替部群8を接続状態(フェイズドアレイアンテナ1に繋がる状態)である接続側にすれば理想的な状態では種信号が反射しないが、実際は、レーダ装置の各接続部(特に、接続・短絡切替部群8)では、必ず通過する成分と反射する成分が存在し、若干のインピーダンスのミスマッチ等で発生するリターンロスと呼ばれる反射成分があるというハードウェアの性質上からくる特性のため、送受信処理部5−1、5−2、〜、5−nからの反射波(反射受信信号)が存在する。そのために、これらの反射波が合成分配部3にて送受信処理部5−1の信号(送受信処理部5−1の短絡切替部8−1による反射波)とアナログ合成されてしまい、結果として合成分配部3〜接続・短絡切替部8−1までの位相差を把握することができないことが想定される。一般的には種信号レベルに対して、最大で−10dB程度の反射が想定される。送受信処理部5−1から得られる時系列データおよび、送受信処理部群5から得られる時系列データの和のシミュレーション例を図2に示す。
【0028】
このシミュレーションでは、送受信処理部群5が19あるという条件下で行っている。換言すると、送受信処理部5−nのnは、n=19である。以後、n=19である場合の説明を行うが、nは整数であれば、特に制限がないことはいうまでもない。また、接続・短絡切替制御部17により、接続・短絡切替部8−1のみを短絡側にしている場合で説明を進める。図2において、測定されるデータ(図2のΣ(#1〜#19))は、送受信処理部5−1から送受信処理部5−19までの総和であるため、測定したい送受信処理部5−1の位相および振幅は、他の送受信処理部5−2から受信処理部5−19から来る前述の反射波の合成信号(図2のΣ(#2〜#19))に影響を受けた結果となってしまい、結果をデータ蓄積部19に保存する作業を所定回数(ここでは、M回)繰り返したとしても、図2の#1のような理想的な送受信処理部5−1の位相および振幅の正確な測定ができない。なお、図2の#1の波形は、送受信処理部5−2から受信処理部5−19から来る前述の反射波の合成信号がなく、送受信処理部5−1(接続・短絡切替部8−1)から来る反射波の信号のみという仮想の状態のシミュレーション値である。同じく、図2のΣ(#2〜#19)の波形は、送受信処理部5−1(接続・短絡切替部8−1)から来る反射波の信号がなく、送受信処理部5−2から受信処理部5−19から来る前述の反射波の合成信号を算出するという仮想の状態のシミュレーション値である。これは、以下の説明で用いる図3でも同様である。
【0029】
そこで、実施の形態1に係るレーダ装置において、位相設定部18により、送受信処理部5−1の移相器13−1は固定し、他の送受信処理部5−2〜5−19の移相器13−2〜13−19は、測定ごとに位相をランダムに変化させ、それぞれの結果をデータ蓄積部19に保存する作業をM回繰り返す。データ蓄積部19に保存されたM個の時系列データを時系列方向に加算すると、図3に示すように、送受信処理部5−1は同位相のため、同相加算される(#1×M)。その一方、送受信処理部5−2〜5−19においては、M個の時系列データの位相は移相器を測定ごとにランダムに設定するため、反射波は同相ではないので、加算しても低いレベルとなる(Σ(#2〜#19)×M)。よって(Σ(#1〜#19)×M)が(#1×M)との値が、ほぼ一致する。これは、送受信処理部5−1はコヒーレンシーのある時系列データである一方、送受信処理部5−2〜5−19はコヒーレンシーのない時系列データであることを示している。なお、測定ごとに位相をランダムに変更する場合、移相器ごとに個別に位相を変更してもよいし、移相器13−2〜13−19をすべて同じ動作にしてもよい。
【0030】
したがって、データ蓄積部19に保存されたM個のデータを時系列方向に加算されたデータは、M=100回とすれば、いわゆるコヒーレント積分と同義の効果となるため、送受信処理部5−1の振幅は、送受信処理部5−2〜5−19の信号に対して+20dBの差が出てくる。このことは送受信処理部群5の信号(前述の反射受信信号)を無視することができることを意味する。すなわち、送受切替部7から接続・短絡切替部8−1までの位相は、送受信処理部5−1まで接続されているケーブル位相のみを検出することが可能となる。同様に、送受信処理部群5のうち、他の送受信処理部5−2〜5−19についても上記と同様の処理を行うことにより、結果として送受切替部7から送受信処理部5−1〜5−19、それぞれの、接続・短絡切替部8−1〜8−19までの伝達路振幅および位相差を取得することができる。この位相差情報を、位相設定部18にレーダ動作前に再設定させることによりフェイズドアレイアンテナのケーブル状態(伝送線路)を反映させることが可能となる。
【0031】
なお、送受信処理部5−2〜5−19の移相器13−2〜13−19において位相をランダムではなく、等間隔に変化させた場合は、移相器の移送量精度の回数分(例えば、5ビット移相器の場合、360°/2=11.25°単位で32回)設定し加算処理させると、不要反射波(送受信処理部5−2〜5−19からの反射波)は、すべて打ち消されるという効果がある。
【0032】
実施の形態1に係るレーダ装置の効果について、再度図3を用いて説明する。送受信処理部群5から得られる時系列データの和(図3のΣ(#2〜#19)×M)が、送受信処理部5−1から得られる時系列データ(図3の#1×M)に対して極めて小さく、誤差のレベルになっていることが分かる。なお、誤差の範囲としては、例えば、5ビット移相器の場合、±5.625°以内であるかどうかが基準となる。次に、実際に測定に掛かる時間について試算する。パルス繰り返し周期を1msに設定した場合、M=100とすると、これをたとえばN=1000素子とした場合1ms×100回×1000素子=100秒の時間があれば、1000素子におけるそれぞれのケーブル位相差データをデータ蓄積部19に蓄積することが可能となる。
【0033】
次に、図4のフローチャートを用いて、実施の形態1に係るレーダ装置の位相補償運用(一例)を説明する。この運用は、レーダ装置の通常運用である目標の検出や大気状況の観察を行う合間や定期的に行えばよい。ここでの位相補償は、伝送線路位相測定部20が短絡された伝送線路の位相を測定するごとに、複数の接続・短絡切替部8−1、8−2、〜、8−nのうち、接続側から短絡側へ切り替わるものを順次入れ替えていく制御を行い、全ての伝送線路4−1、4−2、〜、4−nの位相を伝送線路位相測定部20により、測定して、全ての伝送線路4−1、4−2、〜、4−nのずれを補償する場合である。
【0034】
まず、STEP1にて、レーダ装置の通常運用状態又は運用可能状態である全ての接続・短絡切替部8−1〜8−nが接続側に設定されている状態から、接続・短絡切替部8−1〜8−nのいずれかを、順次、短絡側に切り替えて、反射波を測定する。具体的には、順次、短絡側に切り替えた接続・短絡切替部を反射波を測定ごとに、接続側へ戻して、別の接続・短絡切替部を短絡側に切り替える動作を繰り返す。測定データはデータ蓄積部19に蓄積される(STEP2)。STEP3にて、伝送線路位相測定部20が、各伝送線路(伝送線路4−1〜4−n)の位相差を計算し、STEP4として算出した位相差データを位相補償制御部21へ送る。次に、STEP5にて、位相補償制御部21は、移相器出力で同位相となるように各移相器(移相器13−1〜13−n)の移相量を設定して、各移相器へ移相量を設定指示する。最後に、STEP1〜STEP3と同じ動作をSTEP6〜STEP8として行い、各伝送線路(伝送線路4−1〜4−n)の位相差が補償されたかを確認する。レーダ装置の設置場所が、急激な環境変化が生じるような場所であれば、この確認で位相差が補償されていないことが判明することもありうるが(補償動作後に、環境の状況が変わる場合などを想定)、その場合は、STEP1〜STEP8を繰り返せばよい。位相差の補償が確認された後、レーダ装置を通常運用状態に復帰させる。また、STEP6〜STEP8のフロー省略する運用を行ってもよい。
【0035】
次に、実施の形態1に係るレーダ装置の変形例に関して図5を用いて説明する。図1に記載のレーダ装置の構成を示すブロック図では、受信部15(送受切替部7)は、一つであったが、図5のように受信部15複数設けてもよい。なお、図5においては、送受切替部7以降のフェイズドアレイアンテナ1までの構成,接続・短絡切替制御部が制御する接続・短絡切替部群8の構成,位相設定部18が制御する移相器群13の構成の図示は省略する。ここで、たとえば受信部15を20個設置すると、100/20=5秒で測定が終了することになるため、観測の合間に測定を実施しながら伝送線路(ケーブル)位相補正(補償)を行うことにより、より急激な環境変化による位相変動にも対応が可能である。
【0036】
実施の形態1に係るレーダ装置及びその変形例では、送受信処理部群5内に反射機能を設けることにより、フィールドに反射物を置かなくとも送信電力を反射させることが可能となる。さらに、種信号をアナログ分配した後、送受信処理部群5にて増幅・受信する構成の場合、送受信処理部群5の反射電力がアナログ合成されるため、アナログ分配〜送受信処理部までの伝送線路(ケーブル)位相差の測定が困難となるが、送受信処理部群の移相器を活用することによって不要信号を相殺することが可能となり、所望の伝送線路(ケーブル)位相差・損失データを得ることが可能となる。これらのデータを蓄積し、レーダ動作前に位相設定を行うことにより位相補償を行う。
【0037】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2(実施の形態1の応用)について説明する。実施の形態1に係るレーダ装置及びその変形例によって得られた時系列データ(振幅・位相)を継続的に測定・比較することにより、振幅の減少があれば、ケーブル断線などの故障を発見する装置としても利用可能である。また、同様に、ケーブル周囲の温度変化検知や、レーダ装置のフィールド上での降雨・降雪しているエリアの検出及び日照しているエリアの検出にも応用することが可能である。
【0038】
具体的に説明すると、伝送線路4−1〜4−nの温度による位相のシフト特性を事前のグラフ化しておくことにより、伝送線路ごとの位相のシフト量から、その伝送線路の周囲の温度が逆算できる。また、接続・短絡切替部8−1〜8−nによる短絡で生じた反射波が正常な値ではない場合や、接続・短絡切替部8−1〜8−nが短絡側ではなく、接続側に設定されているにも関わらず、レーダ装置の内部回路・線路の反射波よりも大きい値の反射波が存在する場合は、対応する伝送線路にケーブル断線などの故障が生じていると判断できる。これらの機能は、伝送線路位相測定部20に付加してもよいし、信号処理部16などのレーダ装置の別の回路に付加してもよい。
【符号の説明】
【0039】
1・・フェイズドアレイアンテナ,1−1、1−2、〜、1−n・・素子アンテナ,2・・種信号生成部,3・・合成分配部(合成分配器),4・・伝送線路群,4−1、4−2、〜、4−n・・伝送線路,5・・送受信処理部群,5−1、5−2、〜、5−n・・送受信処理部,6・・アンテナ接続用伝送線路群,6−1、6−2、〜、6−n・・アンテナ接続用伝送線路,7・・送受切替部(第1の送受切替部),8・・接続・短絡切替部群,8−1、8−2、〜、8−n・・接続・短絡切替部,9・・第2の送受切替部群,9−1、9−2、〜、9−n・・第2の送受切替部,10・・第3の送受切替部群,10−1、10−2、〜、10−n・・第3の送受切替部,11・・送信信号増幅部群,11−1、11−2、〜、11−n・・送信信号増幅部,12・・受信信号増幅部群,12−1、12−2、〜、12−n・・受信信号増幅部,13・・移相器群,13−1、13−2、〜、13−n・・移相器,14・・表示部,15・・受信部,16・・信号処理部,17・・接続・短絡切替制御部,18・・位相設定部,19・・データ蓄積部,20・・伝送線路位相測定部,21・・位相補償制御部,22・・分配部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の素子アンテナから構成されるフェイズドアレイアンテナから送信波を送信し、その送信波が物質により反射した電波を受信波として受信することで、目標の検出や大気状況の観察を行うレーダ装置において、前記複数の素子アンテナにそれぞれ接続された複数の移相器と、これらの複数の移相器を介して、前記複数の素子アンテナにそれぞれ接続され、送信波及び受信波を伝送する複数の伝送線路と、前記複数の移相器と前記複数の素子アンテナとの接続をそれぞれ短絡へ切り替え可能な複数の接続・短絡切替部と、これらの複数の接続・短絡切替部のうち、少なくとも一つが短絡側へ切り替わったときに、短絡された伝送線路以外の前記複数の伝送線路を伝送する各信号の位相を、短絡された伝送線路に対応する前記移相器以外の、前記複数の移相器の移相量を制御し、順次、位相を変更させる位相設定部と、波源からの送信波が前記複数の接続・短絡切替部による短絡で生じた反射波を含む前記波源からの送信波の反射波を、順次、蓄積していくデータ蓄積部と、このデータ蓄積部が所定回数蓄積した反射波のデータの加算値から、短絡された伝送線路の位相を測定する伝送線路位相測定部と、この伝送線路位相測定部により位相を測定された伝送線路に対応する前記移相器の移相量を制御し、位相を補償することが可能な位相補償制御部とを備えたレーダ装置。
【請求項2】
送信波を送信し、その送信波が物質により反射した電波を受信波として受信するフェイズドアレイアンテナを構成する複数の素子アンテナと、これらの複数の素子アンテナから放射する送信波の波源である種信号生成部と、この種信号生成部からの信号を分配し、前記複数の素子アンテナが受信した受信波由来の各信号を合成する合成分配部と、この合成分配部が分配した各信号及び前記複数の素子アンテナが受信した受信波由来の各信号をそれぞれ伝送する複数の伝送線路と、一端が前記複数の伝送線路に、他端が前記複数の素子アンテナに接続され、前記合成分配部が分配した各信号の位相をそれぞれ制御して、前記アレイアンテナの放射パターンを制御する複数の送受信処理部と、前記種信号生成部と前記合成分配部との間に設けられ、送受信を切り替え、後記信号処理部へ前記複数の素子アンテナが受信した受信波由来の信号であって、前記合成分配部が合成した信号を送る送受切替部と、切り替えることによって前記種信号生成部からの信号を前記複数の送受信処理部内で短絡することが可能な前記送受信処理部ごとにそれぞれ設けられた複数の接続・短絡切替部と、この接続・短絡切替部ごとに設けられ、前記複数の伝送線路を伝送する信号の位相をそれぞれ変化させること可能な複数の移相器と、前記複数の素子アンテナが受信した受信波を前記合成分配部が合成した合成信号、前記複数の接続・短絡切替部が前記種信号生成部からの信号が前記複数の送受信処理部内の短絡で生じた反射波の信号、及び、前記複数の伝送線路及び前記送受信処理部内で生じた反射波を前記合成分配部が合成した合成信号をディジタル信号に変換する受信部と、この受信部が変換したディジタル信号を高速フーリエ変換して、目標の検出や大気状況の観察を行う信号処理部と、前記複数の接続・短絡切替部のうち、少なくとも一つが短絡側へ切り替わったときに、短絡された伝送線路以外の前記複数の伝送線路を伝送する各信号の位相を、短絡された伝送線路に対応する前記移相器以外の、前記複数の移相器の移相量を制御し、順次、位相を変更させる位相設定部と、前記種信号生成部からの送信波が前記複数の接続・短絡切替部による短絡で生じた反射波と前記複数の伝送線路及び前記送受信処理部内で生じた反射波とが前記合成分配部により合成された合成信号を前記信号処理部が処理したデータを、順次、蓄積していくデータ蓄積部と、このデータ蓄積部が所定回数蓄積した反射波のデータの加算値から、短絡された伝送線路の位相を測定する伝送線路位相測定部と、この伝送線路位相測定部により位相を測定された伝送線路に対応する前記移相器の移相量を制御し、位相を補償することが可能な位相補償制御部とを備えたレーダ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレーダ装置は、前記複数の接続・短絡切替部の接続側と短絡側との切り替えを制御する接続・短絡切替制御部を有するレーダ装置。
【請求項4】
前記接続・短絡切替制御部は、前記伝送線路位相測定部が短絡された伝送線路の位相を測定するごとに、前記複数の接続・短絡切替部のうち、接続側から短絡側へ切り替わるものを順次入れ替えていく制御を行う請求項3に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記位相設定部は、ランダムに位相を変更させる請求項1〜4のいずれかに記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記位相設定部は、等間隔で位相を変更させる請求項1〜4のいずれかに記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記位相設定部は、位相を前記移相器の移相量精度の回数分変更させる請求項6に記載のレーダ装置。
【請求項8】
前記伝送線路は、同軸ケーブルである請求項1〜7のいずれかに記載のレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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