説明

レーダ装置

【課題】自レーダユニットの受信信号レベルに対する他レーダユニットからの干渉信号レベルを効果的に抑圧し、当該抑圧に必要な測定時間及び付加回路の増大を回避する。
【解決手段】第1レーダ送信部は、第1送信トリガ信号生成部が所定の同期確立信号の受信時から第1遅延時間経過後に生成された第1送信トリガ信号に基づいて、第1送信符号制御部の制御の下で、第1レーダ送信信号を第1送信周期で周期的に送信する。第2レーダ送信部は、第2送信トリガ信号生成部が当該同期確立信号の受信時から第2遅延時間経過後に生成された第2送信トリガ信号に基づいて、第2送信符号制御部の制御の下で、第2レーダ送信信号を第2送信周期で周期的に送信する。第1遅延時間及び第2遅延時間に応じて、第1レーダ送信部及び第2レーダ送信部からの各干渉信号の到来時が第2レーダ送信信号及び第1レーダ送信信号の各送信区間内となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のレーダユニットを有し、各測定エリアを測定する各レーダユニットから送信されたレーダ送信信号がターゲットに反射された際の反射波の信号を各レーダユニットの受信アンテナで受信してターゲットを検出するレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置は、測定地点から電波を空間に放射し、ターゲットに反射された反射波の信号を受信して、当該測定地点とターゲットとの距離、方向等を測定する。特に近年、マイクロ波又はミリ波等の波長の短い電波を用いた高分解能な測定を行うことで、自動車だけでなく歩行者等もターゲットとして検出可能なレーダ装置の開発が進められている。
【0003】
また、レーダ装置は、近距離にいるターゲットと遠距離にいるターゲットとからの反射波が混合された信号を受信することがある。特に、近距離にいるターゲットからの反射波の信号によりレンジサイドローブが生じる場合、このレンジサイドローブと、遠距離にいるターゲットからの反射波の信号のメインローブとが混在することがある。この場合、レーダ装置が遠距離にいるターゲットを検出する際の検出精度が劣化することがある。
【0004】
また、レーダ装置は、測定地点から同じ距離に自動車と歩行者とがいる場合に、レーダ反射断面積(RCS: Radar cross section)の異なる自動車と歩行者とからのそれぞれの反射波の信号が混合された信号を受信することがある。一般に、歩行者のレーダ反射断面積は自動車のレーダ反射断面積に比べると低い。
【0005】
このため、レーダ装置には、たとえ測定地点から同じ距離に自動車と歩行者とがいる場合でも、自動車だけでなく歩行者からの反射波の信号を適正に受信することが要求される。この様に、レーダ装置には、ターゲットの距離又は種別により様々な受信レベルとなる反射波の信号を、受信可能な程度に大きな受信ダイナミックレンジを有することが要求される。
【0006】
従って、複数のターゲットに対して、高分解能な測定が要求されるレーダ装置には、低いレンジサイドローブレベルとなる自己相関特性(以下、「低レンジサイドローブ特性」という)を有するパルス波又はパルス変調波の送信が要求される。
【0007】
また、上述したレーダ装置の一例として、複数のレーダユニットを有し、各レーダユニットが各々定められた測定エリアを個別に測定することで、全体的に広角な範囲の測定エリアを測定してターゲットを検出するレーダ装置が知られている。以下の説明において、ターゲット検出の際にそれぞれ各々定められた別個の測定エリアを測定する各レーダ装置を、「レーダユニット」という。各レーダユニットの測定エリアは、それぞれ別個であるが、測定エリアが近接している場合には一部重複していることもある。
【0008】
従来のレーダ装置では、各レーダユニットの測定エリアが近接する場合に、各レーダユニットから送信された送信信号間で干渉が発生する。従来のレーダ装置において、送信信号間で干渉が発生した場合には、ターゲットの位置推定精度が劣化するという課題があった。
【0009】
この課題に対して、各レーダユニットの送信信号間の干渉を低減するものとして、例えば特許文献1が知られている。特許文献1に示す従来のレーダ装置の概要に関して、図18を参照して説明する。図25は、従来のレーダ装置の動作を説明するタイミングチャートを示す説明図である。
【0010】
特許文献1のレーダ装置は、2つのAレーダ装置及びBレーダ装置を有する。Aレーダ装置は、Aレーダ装置が発射するAパルス信号のタイミングを制御する同期部と、Bレーダ装置が発射するBパルス信号に同期するB同期トリガ信号を受信するI/F部とを有する。Aレーダ装置は、Bレーダ装置から当該B同期トリガ信号を、I/F部を介して受信する。Aレーダ装置は、当該受信したB同期トリガ信号に基づいて、Aレーダ装置が発射するAパルス信号の発射のタイミングを制御する。
【0011】
この制御により、図25に示す様に、Aレーダ装置の干渉波、即ち、Bレーダ装置がAレーダ装置からの干渉波として受信した干渉信号の到来時間は、Bレーダ装置の受信有効期間の時間間隔外(Tx)に固定化される。このため、Bレーダ装置が受信したAレーダ装置からの干渉波は、Bレーダ装置の測定に影響を与えない。
【0012】
更に、Bレーダ装置の干渉波、即ち、Aレーダ装置がBレーダ装置からの干渉波として受信した干渉信号の到来時間は、Aレーダ装置の受信有効期間の時間内である。但し、Aレーダ装置は、当該干渉信号に対して限定的な干渉抑圧処理又はゲート処理を行うことで、当該干渉信号の効果的な除去を可能とする。なお、図25において、パラメータTmは受信有効期間、パラメータTxは受信有効期間の間の時間間隔、パラメータTdは他レーダ装置からの干渉波が到来するまでに要する時間、をそれぞれ表す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平7−333328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1において、Bレーダ装置からの干渉波をAレーダ装置が抑圧するためには、当該Aレーダ装置は、当該干渉を抑圧するためのフィルタ回路等の付加回路を更に設ける必要がある。これにより、Aレーダ装置の構成、特に受信部の構成が複雑化するという課題が生じる。又は、Aレーダ装置がBレーダ装置からの干渉波をゲート処理することで、Aレーダ装置の受信有効期間Tmに、Bレーダ装置からの干渉波の受信時間分に相当する測定不能領域が発生するという課題が生じる。
【0015】
上述した課題、即ち、Aレーダ装置の受信部の複雑化、及びAレーダ装置の受信有効期間における測定不能領域の発生を回避するため、各レーダ装置からの干渉波の到来時刻を各々の受信有効期間外にするという方法が検討され得る。この方法について図26を参照して説明する。図26は、各レーダ装置からの干渉波の到来時刻を各々の受信有効期間外にした場合の各レーダ装置の動作を説明するタイミングチャートである。図26において、パラメータTmは受信有効期間、パラメータTgは受信有効期間の間の時間間隔、パラメータTdは他レーダ装置からの干渉波が到来するまでに要する時間、をそれぞれ表す。
【0016】
図26において、Bレーダ装置は、Aレーダ装置からの干渉波の到来時刻Tdの経過後、Bレーダ装置における送信パルスの発射を開始する。同様に、Aレーダ装置は、このBレーダ装置からの干渉波の到来時刻Tdの経過後、Aレーダ装置における送信パルスの発射を開始する。この場合、図26における受信有効期間の間の時間間隔Tgが図25における受信有効期間の間の時間間隔Txより大きくなり、図26においては各レーダ装置における測定時間が全体的に長くなる。このため、各レーダ装置における所定時間あたりの測定回数が減少し、各レーダ装置における距離測定精度が劣化するという課題が新たに生じる。
【0017】
本発明は、上述従来の事情に鑑みてなされたもので、複数のレーダユニットを配置させた際、自レーダユニットの受信信号レベルに対する他レーダユニットからの干渉信号レベルを効果的に抑圧し、当該抑圧に必要な測定時間及び付加回路の増大を回避するレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、上述したレーダ装置であって、所定の同期確立信号の受信時から第1遅延時間経過後に、第1送信トリガ信号を生成する第1送信トリガ信号生成部と、前記生成された第1送信トリガ信号に基づいて、第1レーダ送信信号を第1送信周期毎に生成する様に制御する第1送信符号制御部と、前記生成された第1レーダ送信信号を周期的に送信する第1レーダ送信部と、前記所定の同期確立信号の受信時から第2遅延時間経過後に、第2送信トリガ信号を生成する第2送信トリガ信号生成部と、前記生成された第2送信トリガ信号に基づいて、第2レーダ送信信号を第2送信周期毎に生成する様に制御する第2送信符号制御部と、前記生成された第2レーダ送信信号を周期的に送信する第2レーダ送信部と、を備え、前記第1送信符号制御部及び前記第2送信符号制御部は、前記第1遅延時間及び前記第2遅延時間に応じて、前記第1レーダ送信部及び前記第2レーダ送信部からの各干渉信号の到来時が前記第2レーダ送信信号及び前記第1レーダ送信信号の各送信区間内となる様に、前記第1レーダ送信部及び前記第2レーダ送信部を制御する。
【発明の効果】
【0019】
本発明のレーダ装置によれば、複数のレーダユニットを配置させた際、自レーダユニットの受信信号レベルに対する他レーダユニットからの干渉信号レベルを効果的に抑圧し、当該抑圧に必要な測定時間及び付加回路の増大を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】相補符号の性質を説明する説明図、(a)一方の相補符号系列の自己相関演算結果を示す説明図、(b)他方の相補符号系列の自己相関演算結果を示す説明図、(c)2つの相補符号系列の自己相関演算結果の加算値を示す説明図
【図2】第1の実施形態の広角レーダ装置における各レーダユニットの配置関係を示す説明図
【図3】第1の実施形態の広角レーダ装置における各レーダユニットの構成を示すシステム構成図
【図4】第1の実施形態の広角レーダ装置における各レーダユニットの一部の構成を示すシステム構成図、(a)第1レーダユニットの一部、(b)第1レーダユニットの更なる一部、(c)第2レーダユニットの一部、(d)第2レーダユニットの更なる一部
【図5】第1の実施形態の広角レーダ装置の各レーダユニットの内部構成を示すブロック図、(a)第1レーダユニット、(b)第2レーダユニット
【図6】第1の実施形態の広角レーダ装置における各レーダユニットの内部構成を詳細に示すブロック図
【図7】第1の実施形態の広角レーダ装置における第1レーダユニットの一部構成を示すブロック図、(a)第1レーダ送信部、(b)第1レーダ受信部
【図8】第1の実施形態の広角レーダ装置における各レーダユニットの動作に関するタイミングチャート
【図9】相関値演算部に入力される正規化干渉信号レベル、(a)調整時間Ts≒干渉信号の到来時間Td、(b)調整時間Ts≒(干渉信号の到来時間Td)−(レーダ送信信号の送信区間Tw)
【図10】相関値演算部から出力される正規化干渉信号レベル
【図11】相関値演算部から出力される正規化干渉信号レベル
【図12】第1の実施形態の変形例1の広角レーダ装置における各レーダユニットの内部構成を詳細に示すブロック図
【図13】第1の実施形態の変形例1の広角レーダ装置における第1レーダユニットの一部構成を示すブロック図、(a)第1レーダ送信部、(b)第1レーダ受信部
【図14】第1の実施形態の変形例1の広角レーダ装置における第1レーダユニットの更なる一部構成を示すブロック図、(a)送信アンテナ及びアンテナ切換部を含む第1レーダ送信部、(b)受信アンテナ及びアンテナ切換部を含む第1レーダ受信部
【図15】第1の実施形態の変形例1の広角レーダ装置における各レーダユニットの動作に関するタイミングチャート
【図16】3つ以上のレーダユニットを有する広角レーダ装置における各レーダユニットの配置例を示す説明図、(a)レーダユニット数が3の場合、(b)レーダユニット数が4の場合
【図17】レーダユニット数が3の場合における各レーダユニットの動作に関するタイミングチャート
【図18】レーダユニット数が4の場合における各レーダユニットの動作に関するタイミングチャート
【図19】第1の実施形態の変形例3の広角レーダ装置における各レーダユニットの構成を示すシステム構成図
【図20】第1の実施形態の変形例3の広角レーダ装置の各レーダユニットの内部構成を示すブロック図、(a)第1レーダユニット、(b)第2レーダユニット
【図21】第1の実施形態の変形例3の広角レーダ装置における各レーダユニットの各レーダユニット間で同期を確立する動作を説明するタイミングチャート
【図22】第1の実施形態の変形例4の広角レーダ装置における各レーダユニットの構成を示すシステム構成図
【図23】第1の実施形態の変形例4の広角レーダ装置の各レーダユニットの内部構成を示すブロック図、(a)第1レーダユニット、(b)第2レーダユニット
【図24】第1の実施形態の変形例4の広角レーダ装置における各レーダユニットの動作を説明するタイミングチャート
【図25】従来のレーダ装置の動作を説明するタイミングチャート
【図26】各レーダ装置からの干渉波の到来時刻を各々の受信有効期間外にした場合の各レーダ装置の動作を説明するタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係るレーダ装置の各実施形態を説明する前に、以下、後述の各実施形態の前提となる技術知識として、パルス圧縮処理及び相補符号に関して簡単に説明する。
【0022】
例えば、上述した低レンジサイドローブ特性を有するパルス波又はパルス変調波として、Barker符号、M系列符号、相補符号を含む符号を用いて高周波のレーダ送信信号を送信するパルス圧縮レーダが知られている。
【0023】
パルス圧縮とは、レーダ装置が、パルス信号をパルス変調又は位相変調してパルス幅の広い信号(パルス圧縮符号)を用いて送信し、反射波の受信後の信号処理において受信信号を復調してパルス幅の狭い信号に変換(圧縮)して相関値を演算することである。このパルス圧縮によれば、受信電力を等価的に高め、ターゲットの探知距離を増大することができ、更に、当該探知距離に対する距離推定精度を向上することができる。
【0024】
ここで、相補符号は、複数例えば2つの相補符号系列(a、b)を用いて構成される符号である。また、相補符号は、一方の相補符号系列aと他方の相補符号系列bの各自己相関演算結果において、遅延時間τ[秒]を一致させて各自己相関演算結果を加算することで、レンジサイドローブがゼロとなる性質を有する。なお、パラメータnはn=1、2、・・・、Lである。パラメータLは、符号系列長又は単に符号長を示す。
【0025】
相補符号の生成方法は、例えば下記参考非特許文献1に開示されている。
(参考非特許文献1)BUDISIN, S. Z,「NEW COMPLEMENTARY PAIRS OF SEQUENCES」,Electron. Lett., 26,(13), pp.881−883(1990)
【0026】
この様な相補符号の性質に関して、図1を参照して説明する。図1は、相補符号の性質を説明する説明図である。同図(a)は、一方の相補符号系列aの自己相関値演算結果を示す説明図である。同図(b)は、他方の相補符号系列bの自己相関値演算結果を示す説明図である。同図(c)は、2つの相補符号系列(a,b)の自己相関値演算結果の加算値を示す説明図である。なお、図1で用いた相補符号の符号長Lは128である。
【0027】
相補符号系列(a,b)のうち一方の相補符号系列aの自己相関値演算結果は、数式(1)に従って演算される。他方の相補符号系列bの自己相関値演算結果は、数式(2)に従って演算される。なお、パラメータRは自己相関値演算結果を示す。但し、n>L又はn<1の場合には、相補符号系列a,bはゼロとする(すなわち、n>L又はn<1において、a=0、b=0)。なお、アスタリスク*は複素共役演算子を示す。
【0028】
【数1】

【0029】
【数2】

【0030】
数式(1)に従って演算された相補符号系列aの自己相関値演算結果Raa(τ)は、図1(a)に示す様に、遅延時間(あるいはシフト時間)τがゼロのときにピークが発生し、遅延時間τがゼロでない場合にはレンジサイドローブが存在する。同様に、数式(2)に従って演算された相補符号系列bの自己相関値演算結果Rbb(τ)は、図1(b)に示す様に、遅延時間τがゼロのときにピークが発生し、遅延時間τがゼロでない場合にはレンジサイドローブが存在する。
【0031】
これらの自己相関値演算結果(Raa(τ),Rbb(τ))の加算値は、図1(c)に示す様に、遅延時間τがゼロのときにピークが発生し、遅延時間τがゼロでない場合にはレンジサイドローブが存在せずにゼロになる。以下、遅延時間τがゼロの場合に発生するピークを「メインローブ」という。この関係を数式(3)に示す。なお、図1(a)〜(c)の横軸は自己相関値演算における遅延時間(τ)を示し、縦軸は演算された自己相関値演算結果を示す。
【0032】
【数3】

【0033】
近距離に存在するターゲットと遠距離に存在するターゲットとからの反射波が混合された信号を受信する場合において、一般的に、パルス圧縮された符号の符号長が長いほど、所要の受信ダイナミックレンジが大きくなることが知られている。
【0034】
相補符号では、上述した自己相関特性から、より短い符号長でピークサイドローブレベルを低減できる。このため、短い符号長を用いる相補符号では、近距離に存在するターゲットと遠距離に存在するターゲットとからの反射波が混合された信号を受信する場合において、受信ダイナミックレンジを低減できる。
【0035】
また、符号長LのBarker符号、M系列符号を用いる場合のピークサイドローブ比は20log10(1/L)[dB]で与えられ、符号長Lを長くすることで、優れた低レンジサイドローブ特性が得られる。
【0036】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図2は、第1の実施形態の広角レーダ装置10における各レーダユニットの配置関係を示す説明図である。以下の説明において、本発明に係る広角レーダ装置10は、図2に示す様に、複数の例えば2つのレーダユニット(第1レーダユニット11、第2レーダユニット11a)を備える。
【0037】
各レーダユニットが受信する受信信号には、自レーダユニットから送信されたレーダ送信信号がターゲットにより反射された反射波の信号と、他レーダユニットから送信された干渉波としてのレーダ送信信号(干渉信号)とが含まれる。また、第1レーダユニット11から送信される送信信号を第1レーダ送信信号といい、第2レーダユニット11aから送信される送信信号を第2レーダ送信信号といい、以下の各実施形態においても同様である。
【0038】
以下の説明において、本発明に係る広角レーダ装置10を構成する各レーダユニットは、当該各レーダユニットの測定エリアがほぼ同一直線上にあり、測定エリアの一部が重複する様に対向的に配置されるものとする。即ち、図2において、各レーダユニット間の距離をRd、各レーダユニットの最大測定距離をRmとした場合、数式(4)が成立する。
【0039】
なお、以下の各実施形態においても、本発明に係る広角レーダ装置を構成する各レーダユニットは、当該各レーダユニットの測定エリアがほぼ同一直線上にあるものを含み、測定エリアの一部が重複する様に対向的に配置されるものとする。
【0040】
なお、本実施の形態において、各レーダユニットの最大測定距離はRmとして説明を行うが、これに限定されず互いのレーダユニットの最大測定距離が異なっていても、当該各レーダユニットの測定エリアがほぼ同一直線上にあり、測定エリアの一部が重複する様に対向的に配置されていれば同様に適用が可能である。
【0041】
【数4】

【0042】
〔第1の実施形態〕
第1の実施形態の広角レーダ装置10の構成及び動作について、図3〜図8を参照して説明する。図3は、第1の実施形態の広角レーダ装置10における各レーダユニットの構成を示すシステム構成図である。図4は、第1の実施形態の広角レーダ装置10における各レーダユニットの一部の構成を示すシステム構成図である。同図(a)は、第1レーダユニット11の一部である。同図(b)は、第1レーダユニット11の更なる一部である。同図(c)は、第2レーダユニット11aの一部である。同図(d)は、第2レーダユニット11aの更なる一部である。図4の各図は、それぞれ、個別に、レーダ装置として、動作するものである。
【0043】
図5は、第1の実施形態の広角レーダ装置10の各レーダユニットの内部構成を示すブロック図である。同図(a)は、第1レーダユニット11である。同図(b)は、第2レーダユニット11aである。図5の各図は、それぞれ、個別に、レーダユニットとして動作するものである。
【0044】
図6は、第1の実施形態の広角レーダ装置10における各レーダユニットの内部構成を詳細に示すブロック図である。図7は、第1の実施形態の広角レーダ装置10における第1レーダユニット11の一部構成を示すブロック図である。同図(a)は、第1レーダ送信部15である。同図(b)は、第1レーダ受信部16である。図7の各図は、それぞれ、個別に、送信装置、受信装置として、動作するものである。図8は、第1の実施形態の広角レーダ装置10における各レーダユニットの動作に関するタイミングチャートである。
【0045】
図3において、広角レーダ装置10では、第1レーダユニット11及び第2レーダユニット11aは、所定の間欠的な高周波のレーダ送信信号をそれぞれ生成して送信アンテナAN1及び送信アンテナAN3から送信する。
【0046】
更に、第1レーダユニット11は、当該第1レーダユニット11から送信されたレーダ送信信号がターゲットTAにより反射された反射波の信号と、第2レーダユニット11aから送信された干渉波としてのレーダ送信信号とを、受信アンテナAN2で受信する。
【0047】
更に、第2レーダユニット11aは、当該第2レーダユニット11aから送信されたレーダ送信信号がターゲットTAにより反射された反射波の信号と、第1レーダユニット11から送信された干渉波としてのレーダ送信信号とを、受信アンテナAN4で受信する。
【0048】
更に、広角レーダ装置10では、第1レーダユニット11及び第2レーダユニット11aは、それぞれ第1レーダ受信部16及び第2レーダ受信部16aで受信した受信信号を信号処理して距離測定を行う。これにより、第1レーダユニット11及び第2レーダユニット11aは、各レーダユニットの測定エリアA,BにおけるターゲットTAの有無を検出する。
【0049】
ターゲットTAが存在する場合、広角レーダ装置10では、各レーダユニット11,11aは、各レーダユニット11、11aから測定ターゲットまでの距離を測定する。なお、ターゲットTAは広角レーダ装置10が検出する対象の物体であり、例えば自動車又は人等であり、以下の各実施形態においても同様である。
【0050】
第1レーダユニット11は、図3及び図5(a)に示す様に、レーダ間同期確立信号検出部12、第1送信トリガ信号生成部13、第1送信符号制御部14、送信アンテナAN1と接続される第1レーダ送信部15、及び、受信アンテナAN2と接続される第1レーダ受信部16を備える。なお、第1レーダ送信部15及び第1レーダ受信部16は、共に基準信号発振器Lo1に接続され、当該基準信号発振器Lo1から信号が供給され、第1レーダ送信部15及び第1レーダ受信部16の処理の同期が揃うようにしている。
【0051】
第2レーダユニット11aは、図3及び図5(b)に示す様に、レーダ間同期確立信号検出部12a、第1送信トリガ信号生成部13a、第1送信符号制御部14a、送信アンテナAN3と接続される第2レーダ送信部15a、及び、受信アンテナAN4と接続される第2レーダ受信部16aを備える。なお、第2レーダ送信部15a及び第2レーダ受信部16aは、共に基準信号発振器Lo2に接続され、当該基準信号発振器Lo2から信号が供給され、第2レーダ送信部15a及び第2レーダ受信部16aの処理の同期が揃うようにしている。
【0052】
なお、第1レーダユニット11と第2レーダユニット11aとは同様な構成を有し、同様に動作するため、以下の広角レーダ装置10の構成及び動作の説明においては、第1レーダユニット11の構成及び動作を主に説明し、必要に応じて第2レーダユニット11aの構成及び動作を説明する。
【0053】
特に、第2レーダユニット11aでの構成が明示的に説明されていないものは、第1レーダユニット11の対応する構成における説明と同様に動作する。以下の各実施形態においても同様である。
【0054】
レーダ間同期確立信号検出部12は、第1レーダユニット11及び第2レーダユニット11a間でレーダ送信信号の送信タイミングの同期を行うための各レーダユニットに共通な同期確立信号を検出又は受信する。この同期確立信号は、例えばLAN(Local Area Network)等の有線通信回線或いは無線通信回線を介して、特定の基地局装置等から送信された送信信号、又はGPS(Global Positioning System)衛星を介して送信された送信信号を用いることができる。
【0055】
なお、以下の説明において、同期確立信号における同期とは、各レーダユニット間の同期、すなわち、各レーダユニットから送信されるレーダ送信信号の送信時に基準となるタイミングが同一であることをいう。
【0056】
第1送信トリガ信号生成部13は、レーダ間同期確立信号検出部12の同期確立信号の検出時又は受信時から第1レーダユニット11に固有の遅延時間D1の経過後、第1送信トリガ信号を生成する(図8参照)。この第1送信トリガ信号は、第1レーダユニット11が第1レーダ送信信号を生成及び送信するタイミングを規定する信号である。
【0057】
第2送信トリガ信号生成部13aは、レーダ間同期確立信号検出部12aの同期確立信号の検出時又は受信時から第2レーダユニット11aに固有の遅延時間D2の経過後、第2送信トリガ信号を生成する(図8参照)。この第2送信トリガ信号は、第2レーダユニット11aが第2レーダ送信信号を生成及び送信するタイミングを規定する信号である。
【0058】
第1送信符号制御部14は、第1送信トリガ信号生成部13の第1送信トリガ信号の生成に応じて、後述する送信周期Tr毎に第1レーダ送信信号を生成する様に第1レーダ送信部15を制御する。具体的には、第1送信符号制御部14は、当該第1送信トリガ信号に応じて、後述する送信周期Tr毎に第1送信信号を生成する旨の送信符号制御信号を、第1レーダ送信部15の第1送信信号生成部17の符号生成部18に出力する。
【0059】
なお、図示していないが、第1送信トリガ信号生成部13は、第1送信トリガ信号を送信周期Tr毎に出力し、第1送信符号制御部14は、当該送信周期Tr毎に第1レーダ送信信号を生成する様に第1レーダ送信部15を制御してもよい。なお、送信周期は、周期ごとに変化しても良い。
【0060】
また、第1送信符号制御部14は、当該第1送信信号を生成する旨の送信符号制御信号を、後述する第1レーダ受信部16の相関値演算部31にも出力する。
【0061】
第2送信符号制御部14aは、第2送信トリガ信号生成部13aの第2送信トリガ信号の生成に応じて、後述する送信周期Tr毎に第2レーダ送信信号を生成する様に第2レーダ送信部15aを制御する。具体的には、第2送信符号制御部14aは、当該第2送信トリガ信号に応じて、後述する送信周期Tr毎に第2送信信号を生成する旨の送信符号制御信号を、第2レーダ送信部15aの第2送信信号生成部17aの符号生成部18aに出力する。
【0062】
なお、図示していないが、第2送信トリガ信号生成部13aは、第2送信トリガ信号を送信周期Tr毎に出力し、第2送信符号制御部14aは、当該送信周期Tr毎に第2レーダ送信信号を生成する様に第2レーダ送信部15aを制御してもよい。なお、送信周期は、周期ごとに変化しても良い。
【0063】
また、第2送信符号制御部14aは、当該第2送信信号を生成する旨の送信符号制御信号を、後述する第2レーダ受信部16aの相関値演算部31aにも出力する。
【0064】
次に、第1レーダ送信部15の構成について説明する。
【0065】
第1レーダ送信部15は、図6に示す様に、第1送信信号生成部17、及び、送信アンテナAN1が接続された送信RF部21を備える。
【0066】
第1送信信号生成部17は、図6に示す様に、符号生成部18、変調部19、及びLPF(Low Pass Filter)20を備える。なお、図6では、第1送信信号生成部17はLPF20を含む様に構成されているが、LPF20は、第1送信信号生成部17と独立して第1レーダ送信部15の中に構成されても良い。
【0067】
送信RF部21は、図6に示す様に、周波数変換部22、及び増幅器23を備える。
【0068】
次に、第2レーダ送信部15aの構成について説明する。なお、第2レーダ送信部15aは図6に示す第1レーダ送信部15と同様な構成のため、当該第2レーダ送信部15aの図面は省略する。
【0069】
第2レーダ送信部15aは、第2送信信号生成部17a、及び、送信アンテナAN3が接続された送信RF部21aを備える。
【0070】
第2送信信号生成部17aは、符号生成部18a、変調部19a、及びLPF20aを備える。なお、第2送信信号生成部17aはLPF20aを含む様に構成されているが、LPF20aは、第2送信信号生成部17aと独立して第2レーダ送信部15aの中に構成されても良い。
【0071】
送信RF部21aは、周波数変換部22a、及び増幅器23aを備える。
【0072】
次に、第1レーダ送信部15の各部の構成及び動作について説明する。
【0073】
第1送信信号生成部17は、基準信号発振器Lo1により生成されたリファレンス信号に基づいて、当該リファレンス信号を所定倍に逓倍した信号を生成する。第1送信信号生成部17の各部は、当該生成された信号に基づいて動作する。
【0074】
第1送信信号生成部17は、符号長Lの符号系列aを変調し、数式(5)に示すベースバンドの第1送信信号r(k、M)(パルス圧縮符号)を周期的に生成する。ここで、パラメータn=1,・・・,Lであり、パラメータLは、符号系列aの符号長を表す。パラメータjは、j=−1を満たす虚数単位である。パラメータkは、k=1〜(Nr+Nu)を満たす離散時刻である。離散時刻kの範囲は、後述の各実施形態においても同様である。
【0075】
数式(5)に示されたベースバンドの第1送信信号r(k、M)は、第M番目の送信周期Trの離散時刻kにおける送信信号を示し、同相成分Ir(k、M)と、虚数単位jが乗算された直交成分Qr(k、M)との加算結果で示される。
【0076】
【数5】

【0077】
また、第1送信信号生成部17により生成される第1送信信号は、連続的な信号ではないものとする。図8の第4段及び第5段に示す様に、例えば各送信周期Trの送信区間Tw[秒]では、符号長Lの符号系列aに対して、1つのパルス符号あたりNo[個]のサンプルが存在する。従って、送信区間Twにおいては、Nr(=No×L)のサンプルが含まれる。また、各送信周期Trの非送信区間(Tr−Tw)[秒]では、ベースバンドの第1送信信号としてNu[個]のサンプルが存在するものとする。
【0078】
符号生成部18は、送信周期Tr毎に、第1送信符号制御部14により出力された送信符号制御信号に基づいて、符号長Lの符号系列aのパルス圧縮用の送信符号を生成する。この送信符号は、例えば、上述した相補符号のペアを構成する符号系列、Barker符号系列又はM系列符号等であることが好ましい。
【0079】
符号生成部18は、当該生成された符号系列aの送信符号を変調部19に出力する。以下、符号系列aの送信符号を、便宜的に送信符号aと記載する。
【0080】
変調部19は、符号生成部18により出力された送信符号aを入力する。変調部19は、当該入力された送信符号aをパルス変調することで、ベースバンドの第1送信信号r(k、M)を生成する。なお、パルス変調とは、振幅変調、ASK(Amplitude Shift Keying))又は位相変調(PSK(Phase Shift Keying)である。また、変調部19は、LPF20を介して、当該生成された第1送信信号r(k、M)のうち予め設定された制限帯域以下の第1送信信号r(k、M)を送信RF部21に出力する。
【0081】
送信RF部21は、基準信号発振器Lo1により生成されたリファレンス信号に基づいて、当該リファレンス信号を所定倍数に逓倍した信号を生成する。送信RF部21は、当該生成された信号に基づいて動作する。
【0082】
周波数変換部22は、第1送信信号生成部17により生成された第1送信信号r(k、M)を入力し、当該入力されたベースバンドの第1送信信号r(k、M)をアップコンバートしてキャリア周波数帯域の高周波の第1レーダ送信信号を生成する。周波数変換部22は、当該生成された第1レーダ送信信号を増幅器23に出力する。
【0083】
増幅器23は、当該出力された第1レーダ送信信号を入力し、当該入力された第1レーダ送信信号のレベルを所定のレベルに増幅して送信アンテナAN1に出力する。この増幅された第1レーダ送信信号は、送信アンテナAN1を介して空間に放射する様に送信される。
【0084】
送信アンテナAN1は、送信RF部21により出力された第1レーダ送信信号を空間に放射する様に送信する。図8の第4段に示す様に、第1レーダ送信信号は、送信周期Trのうち送信区間Twの間に送信され、非送信区間(Tr−Tw)の間には送信されない。同様に、図8の第5段に示す様に、第2レーダ送信信号は、送信周期Trのうち送信区間Twの間に送信され、非送信区間(Tr−Tw)の間には送信されない。
【0085】
なお、上述した各レーダユニットの送信RF部21,21a及び受信RF部24,24a内にそれぞれ設けられる局部発振器には、基準信号発振器Lo1,Lo2により生成されたリファレンス信号が所定倍に逓倍された信号が共通に供給されている。これにより、当該各レーダユニットの送信RF部21,21a及び受信RF部24,24aの局部発振器間の同期を確立することができる。
【0086】
ここで、上述した同期確立信号、第1送信トリガ信号、第2送信トリガ信号、第1レーダ送信信号及び第2レーダ送信信号の送信のタイミングに関して、図8を参照して説明する。上述した様に、第1送信トリガ信号生成部13は、レーダ間同期確立信号検出部12の同期確立信号の検出時又は受信時から、第1レーダユニット41に固有の遅延時間D1の経過後に、第1送信トリガ信号を生成する。
【0087】
同様に、第2送信トリガ信号生成部13aは、レーダ間同期確立信号検出部12aの同期確立信号の検出時又は受信時から、第1レーダユニット41に固有の遅延時間D2の経過後に、第2送信トリガ信号を生成する。
【0088】
第1送信符号制御部14は、当該第1送信トリガ信号の生成と同じタイミングで、第1レーダ送信信号を生成した後、所定の送信周期Tr毎に当該第1レーダ送信信号を周期的に送信する様に第1レーダ送信部15を制御する。
【0089】
同様に、第2送信符号制御部14aは、当該第2送信トリガ信号の生成と同じタイミングで、第2レーダ送信信号を生成した後、所定の送信周期Tr毎に当該第2レーダ送信信号を周期的に送信する様に第2レーダ送信部15aを制御する。
【0090】
なお、第1送信符号制御部14、及び、第2送信符号制御部14aは、それぞれ、第1送信トリガ信号及び当該第2送信トリガ信号の立ち上がりで、レーダ送信信号を生成したが、立ち下がりのタイミングで、レーダ送信信号を生成してもよい。
【0091】
また、第1送信符号制御部14、及び、第2送信符号制御部14aは、それぞれ、送信トリガ信号から一定時間後に、レーダ送信信号を生成してもよい。
【0092】
第1の実施形態の広角レーダ装置10において、第1送信トリガ信号及び第2送信トリガ信号の生成タイミング、即ち、上述した遅延時間D1と遅延時間D2は所定量の差分を有する。従って、第2送信符号制御部14aは、第1送信符号制御部14aが第1レーダ送信部15に第1レーダ送信信号を送信させた後、この差分に応じた時間差(D2−D1)の経過後、第2レーダ送信部15aに第2レーダ送信信号を送信させる。以下の説明において、この差分に応じた時間差を、調整時間Tsと表す。従って、調整時間Tsと、遅延時間D1と、遅延時間D2との間には、数式(6)が成立する。
【0093】
【数6】

【0094】
この調整時間Tsは、他レーダユニットからの干渉信号が自レーダユニットで受信される迄に要した到来時間Tdの開始時刻tが、当該自レーダユニットのレーダ送信信号の送信周期Trの送信区間Tw内となる様に設定される。即ち、調整時間Tsは、数式(7)を満たす様に設定される。なお、パラメータtは、他レーダユニットからの干渉信号の到来時間Tdの開始時刻、即ち、当該干渉信号の到来時を表す。
【0095】
【数7】

【0096】
なお、他レーダユニットからの干渉信号の到来時間Tdは、実測により導出されても良いし、複数のレーダユニットが設置される大地等の特定の反射物を含むモデルを仮定することで幾何学的に導出されても良く、以下の各実施形態においても同様である。更に、他レーダユニットからの干渉信号の到来時間Tdは、第1レーダユニット11と第2レーダユニット11aとの間の距離Rdから簡易的に数式(8)に従って導出されても良く、以下の各実施形態においても同様である。なお、パラメータCは光速[m/秒]である。
【0097】
【数8】

【0098】
また図8には、調整時間Tsは、第1レーダ送信信号及び第2レーダ送信信号の各送信周期Trの半分の時間である場合が示されている。但し、この調整時間Tsは、当該各送信周期Trの半分の時間でなくても良い(Ts≠Tr/2)。
【0099】
例えば、第1レーダ送信信号の送信開始時から第2レーダ送信信号の送信開始時までの時間をTs21とし、第2レーダ送信信号の送信開始時から第1レーダ送信信号の送信開始時までの時間をTs12とする。パラメータTs21とTs12との間には、数式(9)が成立する。この場合、時間Ts21と時間Ts12は、数式(10)が成立する様に設定されるのが好ましい。
【0100】
【数9】

【0101】
【数10】

【0102】
なお、図8には、上述した時間Ts21と時間Ts12とが、他レーダユニットからの干渉信号の到来時間Tdと同じである場合が示されている(Ts21=Ts12=Td)。
【0103】
但し、当該時間Ts21と当該時間Ts12とが同じでなくても良い。この場合、上述した調整時間Tsは、時間Ts21と時間Ts12とが数式(11)が成立する様に設定されるのが好ましい。
【0104】
【数11】

【0105】
更に、調整時間Tsが各送信周期Trの半分の時間でない場合(Ts≠Tr/2)、上述した時間Ts21と時間Ts12とは、数式(9)及び数式(12)が成立する様に設定されるのが好ましい。
【0106】
【数12】

【0107】
なお、上述した同期確立信号は周期的に送信され、その都度、第1送信トリガ信号及び第2送信トリガ信号も周期的に送信される。これにより、広角レーダ装置10は、各レーダユニットにおけるレーダ送信信号の送信タイミングの同期を繰り返すことができる。以下の各実施形態においても同様である。
【0108】
次に、第1レーダ受信部16の構成について説明する。
【0109】
第1レーダ受信部16は、図6に示す様に、受信アンテナAN2が接続された受信RF部24、及び、信号処理部25を備える。
【0110】
受信RF部24は、増幅器26、周波数変換部27及び直交検波部28を備える。信号処理部25は、A/D変換部29,30、相関値演算部31、加算処理部32、及び到来距離推定部33を備える。第1レーダ受信部16は、各送信周期Trを信号処理部25における信号処理区間として周期的に演算する。
【0111】
次に、第2レーダ受信部16aの構成について説明する。なお、第2レーダ受信部16aは図6に示す第1レーダ受信部16と同様な構成のため、当該第2レーダ受信部16aの図面は省略する。
【0112】
第2レーダ受信部16aは、第1レーダ受信部16と同様に、受信アンテナAN4が接続された受信RF部24a、及び、信号処理部25aを備える。
【0113】
受信RF部24aは、増幅器26a、周波数変換部27a及び直交検波部28aを備える。信号処理部25aは、A/D変換部29a,30a、相関値演算部31a、加算処理部32a、及び到来距離推定部33aを備える。第2レーダ受信部16aは、各送信周期Trを信号処理部25aにおける信号処理区間として周期的に演算する。
【0114】
次に、第1レーダ受信部16の各部の構成及び動作について説明する。
【0115】
受信アンテナAN2は、第1レーダ送信部15により送信された第1レーダ送信信号がターゲットTAにより反射された反射波の信号と、第2レーダユニット11aから送信された干渉波としての第2レーダ送信信号とを受信する。受信アンテナAN2により受信された受信信号は、受信RF部24に入力される。
【0116】
なお、広角レーダ装置10において、第1レーダ受信部16は1つの受信アンテナAN2を保持する。同様に、第2レーダ受信部16aは1つの受信アンテナAN4を保持する。
【0117】
受信RF部24は、送信RF部21と同様に、基準信号発振器Lo1により生成されたリファレンス信号に基づいて、当該リファレンス信号を所定倍に逓倍した信号を生成する。受信RF部24は、当該生成された信号に基づいて動作する。これにより、送信RF部21の局部発振器と受信RF部24の局部発振器(不図示)との間の同期を確立することができる。
【0118】
増幅器26は、受信アンテナAN2により受信された高周波帯域の受信信号を入力し、当該入力された受信信号のレベルを増幅して周波数変換部27に出力する。
【0119】
周波数変換部27は、当該増幅器26により出力された高周波帯域の受信信号を入力し、当該入力された高周波帯域の受信信号をベースバンドにダウンコンバートし、当該ダウンコンバートされた受信信号を直交検波部28に出力する。
【0120】
直交検波部28は、周波数変換部27により出力されたベースバンドの受信信号を直交検波することで、同相信号(In-phase signal)及び直交信号(Quadrate signal)を用いて構成されるベースバンドの受信信号を生成する。直交検波部28は、当該生成された受信信号のうち、同相信号成分をA/D変換部29に出力し、当該生成された受信信号のうち、直交信号成分をA/D変換部30に出力する。
【0121】
A/D変換部29は、直交検波部28により出力されたベースバンドの同相信号に対して離散時刻kにおけるサンプリングを行い、アナログデータの当該同相信号をデジタルデータに変換する。A/D変換部29は、当該変換されたデジタルデータの同相信号を、相関値演算部31に出力する。
【0122】
同様に、A/D変換部30は、直交検波部28により出力されたベースバンドの直交信号に対して離散時刻kにおけるサンプリングを行い、アナログデータの当該直交信号をデジタルデータに変換する。A/D変換部30は、当該変換されたデジタルデータの直交信号を、相関値演算部31に出力する。
【0123】
また、A/D変換部29,30により変換された第M番目の送信周期Trの離散時刻kにおける受信信号は、当該受信信号の同相信号I(k、M)及び当該受信信号の直交信号Q(k、M)を用いて、数式(13)の複素信号x(k、M)として表される。以下の各実施形態においても同様である。
【0124】
【数13】

【0125】
ここで、離散時刻k=1は、各送信周期Trの開始時点を示す。また、離散時刻k=Nrは、各送信周期Trにおける送信区間Twの終了時点を示す。更に、離散時刻k=(Nr+Nu)は、各送信周期Trの終了直前時点を示す。
【0126】
相関値演算部31は、A/D変換部29,30によりそれぞれ出力されたデジタルデータの複素信号x(k、M)を入力する。相関値演算部31は、第1送信信号生成部17の動作と同期を確立することで、当該第1送信信号生成部17と同様に、基準信号発振器Lo1において生成されたリファレンス信号に基づいて、当該リファレンス信号を所定倍に逓倍した信号を生成する。なお、図6では、相関値演算部31へのリファレンス信号の入力は省略している。
【0127】
相関値演算部31は、当該リファレンス信号を所定倍に逓倍された信号に基づいて、離散時刻kに応じて第1送信信号生成部17により生成された第1送信信号(数式(5)参照)と同一のベースバンドである基準第1送信信号r(k、M)を周期的に生成する。
【0128】
また、相関値演算部31は、当該入力された複素信号x(k、M)と、当該生成された基準第1送信信号r(k、M)との相関値ACを演算する。但し、この相関値ACの演算においては、基準第1送信信号r(k、M)の複素共役値が用いられる。
【0129】
具体的には、相関値演算部31は、図8に示す各送信周期Tr、即ち離散時刻k=1〜(Nr+Nu)の場合には、数式(14)に従って相関値ACを演算する。相関値演算部31は、数式(14)に従って演算された相関値ACを加算処理部32に出力する。
【0130】
【数14】

【0131】
加算処理部32は、相関値演算部31により出力された相関値ACを入力する。加算処理部32は、第M番目の送信周期Trにおいて乗算された相関値ACを単位として、複数R回の加算平均を行う。パラメータRは自然数である。
【0132】
即ち、加算処理部32は、第M番目の送信周期Trにおける相関値AC(k、m)から第(M+1)番目の送信周期Trにおける相関値AC(k、m+R−1)を単位として、離散時刻kのタイミングを揃えて平均相関値aveACを演算する。加算処理部32は、当該演算された平均相関値aveACを到来距離推定部33に出力する。パラメータmは、ゼロを含む自然数Mの倍数である。
【0133】
この加算処理部32の動作により、広角レーダ装置10は、雑音成分を更に抑圧することで、SNR(Signal Noise Ratio)を向上することができ、更に、ターゲットの到来距離の推定に関する測定性能を向上することができる。
【0134】
上述した様に、相関値演算部31の演算は、離散時刻k=1〜(Nr+Nu)に対して行われる。なお、広角レーダ装置10の測定対象となるターゲットTAの存在範囲によって、測定レンジ(kの範囲)を、例えばk=Nr〜(Nr+Nu)の様に更に狭めた限定をしてもよい。
【0135】
これにより、広角レーダ装置10は、相関値演算部31の演算量を低減することができる。即ち、広角レーダ装置10は、信号処理部25による演算量の削減に基づく消費電力量を低減することができる。
【0136】
この場合、更に、広角レーダ装置10は、第1レーダ送信信号及び第2レーダ送信信号の送信区間Twにおける測定を行わず、各レーダ送信信号が各レーダ受信部に直接的に回り込む様な場合でも、当該回り込みによる影響を排除した測定を行うことができる。
【0137】
到来距離推定部33は、加算処理部32により出力された平均相関値aveACを入力する。到来距離推定部33は、当該入力された平均相関値aveACに基づいて、第1レーダユニット11からターゲットTAまでの距離の推定演算を行う。到来距離推定部33によるターゲットTAまでの距離の推定演算は、既に公知の技術であり、例えば下述参考非特許文献2を参照することにより実現することが可能である。
【0138】
(参考非特許文献2)J.J.BUSSGANG、et al.、「A Unified Analysis of Range Performance of CW, Pulse, and Pulse Dopper Radar」,Proceedings of the IRE,Vol.47,Issue 10,pp.1753−1762(1959)
【0139】
例えば、到来距離推定部33は、加算処理部32により出力された平均相関値aveACに基づいて、当該平均相関値aveACが最大値をとるときの離散時刻と第1レーダ送信信号の送信時間との時間差を判定する。更に、到来距離推定部33は、当該判定された時間差に基づいて、第1レーダユニット11からターゲットTAまでの距離を推定する。
【0140】
また、上述した各レーダユニットは、受信アンテナとして1つのアンテナAN2,AN4を有するものとして説明した。但し、各レーダユニットが受信アンテナとして複数の受信アンテナを有する場合には、到来距離推定部33は、各々の当該受信アンテナにより受信された受信信号の位相差に基づいて、各レーダユニットに対するターゲットTAの到来角を推定することもできる。
【0141】
第1の実施形態の広角レーダ装置10では、他レーダユニットからの干渉信号の到来時間Tdの開始時刻tが自レーダユニットのレーダ送信信号の送信区間Tw内となる様に、各レーダユニットのレーダ送信信号の第1送信周期の開始時刻が、調整時間Tsほど時間シフトされる。なお、上述した様に、パラメータtは、他レーダユニットからの干渉信号の到来時間Tdの開始時刻を表す。
【0142】
具体的には、第2レーダ送信信号の送信周期Trの開始時刻が、第1レーダ送信信号の送信周期Trの開始時刻より調整時間Tsの時間シフトされる。更に、第1レーダ送信信号の送信周期Trの開始時刻が、第2レーダ送信信号の送信周期Trの開始時刻より調整時間Tsの時間シフトされる。
【0143】
従って、第1の実施形態の広角レーダ装置10では、複数のレーダユニットを対向的に配置させた際、自レーダユニットの受信信号レベルに対する他レーダユニットからの干渉信号レベルを効果的に抑圧することができる。具体的には、広角レーダ装置10は、自レーダユニットのレーダ送信信号の距離減衰に対する、他レーダユニットのレーダ送信信号の距離減衰の比を十分に高めることができる。
【0144】
更に、第1の実施形態の広角レーダ装置10では、各レーダユニットがパルス圧縮を施した送信符号を用いて構成したレーダ送信信号を送信し、パルス圧縮処理により、各レーダユニット間における干渉を更に抑圧することができる。
【0145】
従って、第1の実施形態の広角レーダ装置10によれば、当該他レーダユニットから送信されたレーダ送信信号の干渉信号レベルを抑圧するために必要な測定時間及び付加回路の増大を回避することができる。
【0146】
特に、距離Rd、各送信周期Tr及び各レーダ送信信号の送信区間Twが数式(15)を満たし、各送信周期Tr及び調整時間Tsが数式(16)を満たす場合、広角レーダ装置10は、各レーダユニット間における相互干渉量を等しくすることができる。この場合、広角レーダ装置10全体における干渉信号レベルを均一化することができ、更に、広角レーダ装置10の位置推定性能を平均的に向上することができる。
【0147】
【数15】

【0148】
【数16】

【0149】
また、干渉信号レベルがレーダユニット毎に異なる場合には、SINRが低くなるレーダユニットの影響を受けて、広角レーダ装置10全体におけるターゲットTAの誤検出率及び未検出率が増加することになる。但し、上述した数式(16)が成立する場合には、広角レーダ装置10における各レーダユニットのターゲットTAの誤検出率及び未検出率の増加を低減することができる。
【0150】
上述した第1の実施形態の広角レーダ装置10の効果について、図9〜図11を参照して説明する。図9は、相関値演算部31に入力される正規化干渉信号入力レベルを示す。同図(a)は、調整時間Tsと干渉信号の到来時間Tdとがほぼ等しい場合の正規化干渉信号入力レベルを示す。
【0151】
同図(b)は、調整時間Tsと、干渉信号の到来時間Tdとレーダ送信信号の送信区間Twとの差分とがほぼ等しい場合の正規化干渉信号入力レベルを示す。図9において、横軸は離散時刻kを示し、縦軸は相関値演算部31に入力される正規化干渉信号入力レベル(|x(k、M)|)を示す。
【0152】
上述した様に、広角レーダ装置10では、第1レーダユニット11の送信周期Trの開始時刻と、第2レーダユニット11aの送信周期Trの開始時刻との間で調整時間Tsの時間シフトが行われる。
【0153】
このため、広角レーダ装置10は、自レーダユニットの測定エリアにいるターゲットTAにより反射された所望反射波の受信信号レベルで他レーダユニットからの干渉信号レベルを正規化した正規化干渉信号レベルを所定値以下に抑圧することができる。この所定値とは、広角レーダ装置10の位置推定精度の劣化を低減するためのSINRを有するために必要な閾値であり、当該所定値より小さいほど当該SINRは大きくなる。
【0154】
この正規化干渉信号レベルは、干渉信号の到来時刻Tdと調整時間Tsとがほぼ等しくなるほど小さくなり、それに伴い干渉信号レベルの抑圧量が大きくなる。なお、正規化干渉信号レベルは、数式(17)で表すことができる。
【0155】
【数17】

【0156】
数式(17)において、干渉信号レベルは各レーダユニットとターゲットTAとの距離Rの4乗に反比例するが、当該干渉信号が直接波である場合には、各レーダユニットとターゲットTAとの距離Rの2乗に反比例する。同様に、自測定エリア(自レーダユニットの測定エリア)におけるターゲットTAの所望反射波の受信信号レベルは、各レーダユニットとターゲットTAとの距離Rの4乗に反比例する。
【0157】
これにより、広角レーダ装置10は、図9(a)及び(b)に示す様に、相関値演算部31に入力される正規化干渉信号レベルを所定値レベル(点線参照)以下又は同程度レベルにすることができる。このため、広角レーダ装置10は、所定値以上のSINRを有することができ、ターゲットTAの位置推定性能の劣化を低減することができる。なお、図9において、パラメータkは、干渉領域([k=k〜(k+Nr)])の開始時点を表す離散時刻である。
【0158】
図10は、相関値演算部31から出力される正規化干渉信号レベルを示す。横軸は離散時刻kを示し、縦軸は相関値演算部31から出力される正規化干渉信号レベル(|AC(k、M)|)を示す。
【0159】
また、広角レーダ装置10は、第1,第2レーダユニット11,11aが同一の優れた自己相関特性を有するレーダ送信信号(パルス圧縮符号)を送信する場合、パルス圧縮処理により干渉領域([k=k〜(k+Nr)])における干渉信号を抑圧することができる。
【0160】
従って、図9(b)に示す様に正規化干渉信号レベルが上述した所定値レベルと同程度でも、相関値演算部31のパルス圧縮処理により、広角レーダ装置10は、干渉領域([k=(k+1)〜(k+Nr)])における干渉信号を所定値レベル以下に抑圧することができる。なお、図10に示す様に、離散時刻k=kにおける正規化干渉信号レベルは所定レベル以上の値を有する。
【0161】
また、他レーダユニットからの干渉信号が更に複数の遅延波を含む場合には、広角レーダ装置10は、当該複数の遅延波の到来時間が全て離散時刻k=Nr以下であると、相関値演算部31のパルス圧縮処理により、送信区間Tw以降の干渉信号を抑圧することができる。例えば、各レーダユニットの測定レンジ(離散時刻kの範囲)を送信区間Twの終了時点から開始する場合、即ち、離散時刻k=Nr〜(Nr+Nu)とする場合に有効である。
【0162】
特に、レーダ送信信号としてM系列符号又はBarker符号を用いる場合には、広角レーダ装置10は、図10に示す様に、離散時刻k=kを除く干渉領域([k=(k+1)〜(k+Nr)])において、20log10(1/L)[dB]ほど抑圧することができる。なお、図10の離散時刻k=kにおける太線は、当該離散時刻k=kにおける正規化干渉信号レベルを示し、この正規化干渉信号レベルが上述した所定値レベルを超えることを示す。
【0163】
特に、レーダ送信信号として相補符号を用いる場合には、広角レーダ装置10は、理想的には、干渉領域([k=k〜(k+Nr)])において、干渉量をほぼゼロにすることができる。但し、相補符号を用いる場合には、或る送信周期Trでは相補符号の一方のペアの符号系列を送信し、且つ次の送信周期Trでは相補符号の他方のペアの符号系列を送信する必要がある。
【0164】
図11は、相関値演算部31から出力される正規化干渉信号レベルを示す。横軸は離散時刻kを示し、縦軸は相関値演算部31から出力される正規化干渉信号レベル(|AC(k、M)|)を示す。
【0165】
また、広角レーダ装置10は、第1,第2レーダユニット11,11aが異なるレーダ送信信号を送信する場合、数式(18)に示すレーダ送信信号間の相互相関値の絶対値の最大値が小さい符号を用いることで、他レーダユニットからの干渉信号レベルを抑圧することができる。
【0166】
【数18】

【0167】
数式(18)において、符号aは第1レーダユニット11から送信された第1レーダ送信信号であり、符号bは第2レーダユニット11aから送信された第2レーダ送信信号であり、符号a,b共に符号長はLである。
【0168】
従って、図9(b)に示す様に正規化干渉信号レベルが上述した所定値レベルと同程度でも、相関値演算部31のパルス圧縮処理により、広角レーダ装置10は、干渉領域([k=k〜(k+Nr)])における干渉信号を所定レベル以下に抑圧することができる(図11参照)。
【0169】
また、他レーダユニットからの干渉信号が更に複数の遅延波を含む場合には、広角レーダ装置10は、当該複数の遅延波の到来時間が全て離散時刻k=Nr以下であると、相関値演算部31のパルス圧縮処理により、送信区間Tw以降の干渉信号を抑圧することができる。例えば、各レーダユニットの測定レンジ(離散時刻kの範囲)を送信区間Twの終了時点から開始する場合、即ち、離散時刻k=Nr〜(Nr+Nu)とする場合に有効である。
【0170】
なお、上述した第1の実施形態の広角レーダ装置10では、各レーダユニットが符号長Lのパルス圧縮レーダを用いる場合の構成及び動作を説明したが、各レーダユニットは単一のパルスを用いるパルスレーダを用いて良い。
【0171】
この場合、例えば第1レーダ送信部15の符号生成部18は、符号長L=1の単一パルスを生成する。同様に、第2レーダ送信部15aの符号生成部18aは符号長L=1の単一パルスを生成する。更に、第1レーダユニット11の送信周期Trの開始時刻と、第2レーダユニット11aの送信周期Trの開始時刻との間で調整時間Tsの時間シフトが行われる。
【0172】
これにより、上述した第1の実施形態の広角レーダ装置10と同様に、各レーダユニットがパルスレーダを用いた場合でも、上述した正規化干渉信号レベルを所定値以下に抑圧することができる。
【0173】
なお、上述した第1の実施形態の広角レーダ装置10では、第1,第2レーダユニット11,11aの各送信周期Trが予め固定的に設定されていることを前提に説明した。但し、この各送信周期Trは、他レーダユニットからの干渉信号の到来時間Tdに基づいて、数式(19)に示す様に適応的に設定されても良い。
【0174】
【数19】

【0175】
数式(19)に応じて送信周期Trを適応的に設定することで、広角レーダ装置10は、各レーダユニット間における相互干渉量を等しくすることができる。この場合、広角レーダ装置10は、干渉信号レベルを全体的に均一化することができ、更に、広角レーダ装置10は、位置推定性能を平均的に向上することができる。
【0176】
また、干渉信号レベルがレーダユニット毎に異なる場合には、SINRが低くなるレーダユニットの影響を受けて、広角レーダ装置10は、ターゲットTAの誤検出率及び未検出率が増加することになる。
【0177】
但し、上述した数式(16)が成立する場合には、広角レーダ装置10におけるターゲットTAの誤検出率及び未検出率の増加を低減することができる。ここで、パラメータΔTは、第1,第2レーダユニット11,11a間の同期精度及び干渉信号の到来時刻Tdの検出誤差を含めた時間マージンである。
【0178】
〔第1の実施形態の変形例1〕
第1の実施形態の広角レーダ装置10では、各レーダユニットは同一の固定的な符号長Lのレーダ送信信号を送信周期Tr毎に送信していた。従って、各レーダ送信信号の符号長Lは固定であるため、各レーダユニットの最大測定可能距離は同じであった。
【0179】
第1の実施形態の変形例1の広角レーダ装置40では、各レーダユニットは、近距離測定用の符号長L1のレーダ送信信号と遠距離測定用の符号長L2のレーダ送信信号とを、各符号長に対応した異なる送信周期でそれぞれ送信する。更に、各レーダユニットは、近距離測定用の符号長L1のレーダ送信信号と遠距離測定用の符号長L2のレーダ送信信号とを、近距離測定の符号長L1のレーダ送信信号の送信タイミングが各レーダユニット間で重複しない様に送信する。
【0180】
以下の説明において、近距離測定用の符号長L1のレーダ送信信号の送信周期をパラメータTr1とし、遠距離測定用の符号長L2のレーダ送信信号の送信周期をパラメータTr2とする(Tr1<Tr2)。
【0181】
以下、第1の実施形態の変形例1の広角レーダ装置40の構成及び動作について、図12〜図15を参照して説明する。図12は、第1の実施形態の変形例1の広角レーダ装置40における各レーダユニットの内部構成を詳細に示すブロック図である。図13は、第1の実施形態の変形例1の広角レーダ装置40における第1レーダユニット41の一部構成を示すブロック図である。同図(a)は、第1レーダ送信部45である。同図(b)は、第1レーダ受信部46である。図13の各図は、それぞれ個別に、送信装置、受信装置として、動作するものである。
【0182】
図14は、第1の実施形態の変形例1の広角レーダ装置40における第1レーダユニット41の更なる一部構成を示すブロック図である。同図(a)は、送信アンテナAN5,AN6及びアンテナ切換部56を含む第1レーダ送信部45である。同図(b)は、受信アンテナAN7,AN8及びアンテナ切換部57を含む第1レーダ受信部46である。図14の各図は、それぞれ個別に、送信装置、受信装置として動作するものである。図15は、第1の実施形態の変形例1の広角レーダ装置40における各レーダユニットの動作に関するタイミングチャートである。
【0183】
第1の実施形態の変形例1の広角レーダ装置40は、複数の例えば2つのレーダユニット(第1レーダユニット41、第2レーダユニット41a)を有する。広角レーダ装置40では、第1レーダユニット41及び第2レーダユニット41aは、所定の間欠的な高周波のレーダ送信信号をそれぞれ生成して送信アンテナAN5,AN6及び送信アンテナAN7,AN8から送信する。
【0184】
更に、第1レーダユニット41は、当該第1レーダユニット41から送信されたレーダ送信信号がターゲットTAにより反射された反射波の信号と、第2レーダユニット41aから送信された干渉波としてのレーダ送信信号とを、受信アンテナAN7又は受信アンテナAN8で受信する。
【0185】
更に、第2レーダユニット41aは、当該第2レーダユニット41aから送信されたレーダ送信信号がターゲットTAにより反射された反射波の信号と、第1レーダユニット41から送信された干渉波としてのレーダ送信信号とを、受信アンテナAN11又は受信アンテナAN12で受信する。
【0186】
更に、広角レーダ装置40では、第1レーダユニット41及び第2レーダユニット41aは、それぞれ第1レーダ受信部46及び第2レーダ受信部46aで受信した受信信号を信号処理してターゲットTAの有無を検出する。
【0187】
第1レーダユニット41は、図12に示す様に、レーダ間同期確立信号検出部42、第1送信トリガ信号生成部43、第1送信符号制御部44、アンテナ切換部56を介して送信アンテナAN5,AN6と接続される第1レーダ送信部45、及び、アンテナ切換部57を介して受信アンテナAN7,AN8と接続される第1レーダ受信部46を備える。なお、第1レーダ送信部45及び第1レーダ受信部46は、共に基準信号発振器Lo1に接続され、当該基準信号発振器Lo1から信号が、第1レーダ送信部45及び第1レーダ受信部46の動作の同期が確立するように供給されている。
【0188】
第2レーダユニット41aは、同様に、レーダ間同期確立信号検出部42a、第2送信トリガ信号生成部43a、第2送信符号制御部44a、アンテナ切換部56aを介して送信アンテナAN9,AN10と接続される第2レーダ送信部45a、及び、アンテナ切換部57aを介して受信アンテナAN11,AN12と接続される第2レーダ受信部46aを備える。
【0189】
なお、第2レーダ送信部45a及び第2レーダ受信部46aは、共に基準信号発振器Lo2に接続され、当該基準信号発振器Lo2から信号が、第2レーダ送信部45a及び第2レーダ受信部46aの動作の同期が確立するように供給されている。
【0190】
なお、第1レーダユニット41と第2レーダユニット41aとは同様な構成を有し、同様に動作するため、以下の広角レーダ装置40の構成及び動作の説明においては、第1レーダユニット41の構成及び動作を主に説明し、必要に応じて第2レーダユニット41aの構成及び動作を説明する。
【0191】
また、レーダ間同期確立信号検出部42及び第1送信トリガ信号生成部43の動作は、上述した第1の実施形態のレーダ間同期確立信号検出部12及び第1送信トリガ信号生成部43の動作と同様であるため、当該動作の説明は省略する。なお、レーダ間同期確立信号検出部42a及び第2送信トリガ信号生成部43aの動作も、上述した第1の実施形態のレーダ間同期確立信号検出部12a及び第2送信トリガ信号生成部43aの動作と同様であるため、当該動作の説明は省略する。
【0192】
第1送信符号制御部44は、第1送信トリガ信号生成部43の第1送信トリガ信号の生成に応じて、近距離測定用の第1レーダ送信信号、及び遠距離測定用の第1レーダ送信信号をそれぞれ生成する様に第1レーダ送信部45を制御する。
【0193】
具体的には、第1送信符号制御部44は、当該第1送信トリガ信号に応じて、送信周期Tr1で近距離測定用の第1送信信号を生成する旨の送信符号制御信号を、第1送信信号生成部47の第1符号生成部48及び符号切換部50にそれぞれ出力する。
【0194】
更に、第1送信符号制御部44は、当該第1送信トリガ信号に応じて、送信周期Tr2で遠距離測定用の第1送信信号を生成する旨の送信符号制御信号を、第1送信信号生成部47の第2符号生成部49及び符号切換部50にそれぞれに出力する。
【0195】
また、第1送信符号制御部44は、当該近距離測定用の第1送信信号を生成する旨の送信符号制御信号を、後述する第1レーダ受信部46の第1相関値演算部66にも出力する。
更に、第1送信符号制御部44は、当該遠距離測定用の第1送信信号を生成する旨の送信符号制御信号を、後述する第1レーダ受信部46の第2相関値演算部67にも出力する。
【0196】
第2送信符号制御部44aは、第2送信トリガ信号生成部43aの第2送信トリガ信号の生成に応じて、近距離測定用の第2レーダ送信信号、及び遠距離測定用の第2レーダ送信信号をそれぞれ生成する様に第2レーダ送信部45aを制御する。
【0197】
具体的には、第2送信符号制御部44aは、当該第2送信トリガ信号に応じて、送信周期Tr1で近距離測定用の第2送信信号を生成する旨の送信符号制御信号を、第2送信信号生成部47aの第3符号生成部48a及び符号切換部50aにそれぞれ出力する。
【0198】
更に、第2送信符号制御部44aは、当該第2送信トリガ信号に応じて、送信周期Tr2で遠距離測定用の第2送信信号を生成する旨の送信符号制御信号を、第2送信信号生成部47aの第4符号生成部49a及び符号切換部50aにそれぞれ出力する。
【0199】
また、第2送信符号制御部44aは、当該近距離測定用の第2送信信号を生成する旨の送信符号制御信号を、後述する第2レーダ受信部46aの第3相関値演算部66aにも出力する。
【0200】
更に、第2送信符号制御部44aは、当該遠距離測定用の第2送信信号を生成する旨の送信符号制御信号を、後述する第2レーダ受信部46aの第4相関値演算部67aにも出力する。
【0201】
次に、第1レーダ送信部45の構成について説明する。
【0202】
第1レーダ送信部45は、図12に示す様に、第1送信信号生成部47、及び、アンテナ切換部56を介して送信アンテナAN5,AN6と接続された送信RF部53を備える。
【0203】
第1送信信号生成部47は、図12に示す様に、第1符号生成部48、第2符号生成部49、符号切換部50、変調部51、及びLPF52を備える。なお、図12では、第1送信信号生成部47はLPF52を含む様に構成されているが、LPF52は、第1送信信号生成部47と独立して第1レーダ送信部45の中に構成されても良い。
【0204】
送信RF部53は、図12に示す様に、周波数変換部54、及び増幅器55を備える。
【0205】
次に、第2レーダ送信部45aの構成について説明する。なお、第2レーダ送信部45aは図12に示す第1レーダ送信部45と同様な構成のため、当該第2レーダ送信部45aの図面は省略する。
【0206】
第2レーダ送信部45aは、同様に、第2送信信号生成部47a、及び、アンテナ切換部56aを介して送信アンテナAN9,AN10と接続された送信RF部53aを備える。
【0207】
第2送信信号生成部47aは、同様に、第2符号生成部48a、第2符号生成部49a、符号切換部50a、変調部51a、及びLPF52aを備える。なお、第2送信信号生成部47aはLPF52aを含む様に構成されているが、LPF52aは、第2送信信号生成部47aと独立して第2レーダ送信部45aの中に構成されても良い。
【0208】
送信RF部53aは、周波数変換部54a、及び増幅器55aを備える。
【0209】
次に、第1レーダ送信部45の各部の構成及び動作について説明する。
【0210】
第1送信信号生成部47は、基準信号発振器Lo1により生成されたリファレンス信号に基づいて、当該リファレンス信号を所定倍に逓倍した信号を生成する。第1送信信号生成部47の各部は、当該リファレンス信号を所定倍に逓倍された信号に基づいて動作する。
【0211】
第1送信信号生成部47は、符号長L1の符号系列a又は符号長L2の符号系列bを変調し、数式(5)に示すベースバンドの第1送信信号r(k、M)(パルス圧縮符号)を周期的に生成する。
【0212】
また、第1送信信号生成部47により生成される第1送信信号は、連続的な信号ではないものとする。図15の第4段及び第5段に示す様に、例えば各送信周期Tr2の送信区間Tw2[秒]及び各送信周期Tr1の送信区間Tw1では、それぞれ符号長L2の符号系列b及び符号長L1の符号系列aに対して、1つのパルス符号あたりNo[個]のサンプルが存在する。
【0213】
従って、各送信周期Tr1,Tr2における送信区間においては、Nr1(=No×L1)、Nr2(=No×L2)のサンプルが含まれる。また、各送信周期Tr1,Tr2における非送信区間(Tr−Tw1)[秒]、(Tr−Tw2)[秒]では、ベースバンドの第1送信信号としてNu1[個]、Nu2[個]のサンプルが存在するものとする。
【0214】
第1符号生成部48は、第1送信符号制御部44により出力された送信符号制御信号に基づいて、符号長L1の符号系列aのパルス圧縮用の送信符号を生成する。この送信符号は、例えば、Barker符号系列又はM系列符号等であることが好ましい。
【0215】
第1符号生成部48は、当該生成された符号系列aの送信符号を符号切換部50に出力する。
【0216】
第2符号生成部49は、第1送信符号制御部44により出力された送信符号制御信号に基づいて、符号長L2の符号系列bのパルス圧縮用の送信符号を生成する。この送信符号は、例えば、Barker符号系列又はM系列符号等であることが好ましい。
【0217】
第2符号生成部49は、当該生成された符号系列bの送信符号を符号切換部50に出力する。
【0218】
符号切換部50は、第1送信符号制御部44により出力された送信符号制御信号を入力し、当該入力された送信符号制御信号に基づいて、送信符号a又は送信符号bを切り換えて選択的に変調部51に出力する。
【0219】
なお、変調部51及びLPF52の動作は、上述した第1の実施形態の変調部19及びLPF20と同様であるため、当該動作の説明は省略する。
【0220】
送信RF部53は、基準信号発振器Lo1により生成されたリファレンス信号に基づいて、当該リファレンス信号を所定倍数に逓倍した信号を生成する。送信RF部53は、当該生成された信号に基づいて動作する。
【0221】
具体的には、周波数変換部54は、第1送信信号生成部47により生成された第1送信信号r(k、M)を入力し、当該入力されたベースバンドの第1送信信号r(k、M)をアップコンバートしてキャリア周波数帯域の高周波の第1レーダ送信信号を生成する。周波数変換部54は、当該生成された第1レーダ送信信号を増幅器55に出力する。
【0222】
増幅器55は、当該出力された第1レーダ送信信号を入力し、当該入力された第1レーダ送信信号のレベルを所定のレベルに増幅してアンテナ切換部56に出力する。この増幅された第1レーダ送信信号は、アンテナ切換部56を介して、送信アンテナAN5又は送信アンテナAN6から空間に放射する様に送信される。
【0223】
アンテナ切換部56は、第1送信符号制御部44により出力された送信符号制御信号を入力する。更に、アンテナ切換部56は、当該入力された送信符号制御信号に基づいて、送信する第1レーダ送信信号に応じた送信アンテナを、送信アンテナAN5又は送信アンテナAN6から選択的に切り換える。第1の実施形態の変形例1の広角レーダ装置40では、送信アンテナAN5は近距離測定用に用いられ、送信アンテナAN6は遠距離測定用に用いられる。
【0224】
即ち、アンテナ切換部56は、符号切換部50が送信周期Tr1において符号系列aを選択的に出力した場合には、第1送信符号制御部44により出力された送信符号制御信号に基づいて、近距離測定用の送信アンテナAN5に切り換える。
【0225】
また、アンテナ切換部56は、符号切換部50が送信周期Tr2において符号系列bを選択的に出力した場合には、第1送信符号制御部44により出力された送信符号制御信号に基づいて、遠距離測定用の送信アンテナAN6に切り換える。
【0226】
送信アンテナAN5又は送信アンテナAN6は、送信RF部53により出力された第1レーダ送信信号を空間に放射する様に送信する。図15の第4段に示す様に、第1レーダ送信信号は、送信周期Tr2のうち送信区間Tw2の間に送信され、非送信区間(Tr2−Tw2)の間には送信されない。
【0227】
同様に、図15の第5段に示す様に、第2レーダ送信信号は、送信周期Tr2のうち送信区間Tw2の間に送信され、非送信区間(Tr2−Tw2)の間には送信されない。更に、第1レーダ送信信号は、送信周期Tr1のうち送信区間Tw1の間に送信され、非送信区間(Tr1−Tw1)の間には送信されない。
【0228】
なお、上述した各レーダユニットの送信RF部53,53a及び受信RF部58,58a内にそれぞれ設けられる局部発振器には、基準信号発振器Lo1,Lo2により生成されたリファレンス信号が所定倍に逓倍された信号が共通に供給されている。これにより、当該各レーダユニットの送信RF部53,53a及び受信RF部58,58aの局部発振器間の同期を確立することができる。
【0229】
ここで、上述した同期確立信号、第1送信トリガ信号、第2送信トリガ信号、第1レーダ送信信号及び第2レーダ送信信号の送信のタイミングに関して、図15を参照して説明する。上述した様に、第1送信トリガ信号生成部43は、レーダ間同期確立信号検出部42の同期確立信号の検出時又は受信時から、第1レーダユニット41に固有の遅延時間D1の経過後に、第1送信トリガ信号を生成する。
【0230】
同様に、第2送信トリガ信号生成部43aは、レーダ間同期確立信号検出部42aの同期確立信号の検出時又は受信時から、第2レーダユニット41aに固有の遅延時間D2の経過後に、第2送信トリガ信号を生成する。
【0231】
第1送信符号制御部44は、当該第1送信トリガ信号の生成と同じタイミングで、第1レーダ送信信号を生成させ、以後、遠距離測定用の送信符号bを所定回数(図15では4回)送信し、その後近距離測定用の送信符号aを送信する様に第1レーダ送信部45を制御する。
【0232】
同様に、第2送信符号制御部44aは、当該第2送信トリガ信号の生成と同じタイミングで、第2レーダ送信信号を生成させ、以後、近距離測定用の送信符号aを送信し、その後遠距離測定用の送信符号bを送信する様に第2レーダ送信部45aを制御する。
【0233】
即ち、各レーダユニットは、近距離測定用の符号長L1のレーダ送信信号と遠距離測定用の符号長L2のレーダ送信信号とを、近距離測定の符号長L1のレーダ送信信号の送信タイミングが各レーダユニット間で重複しない様に送信する。
【0234】
従って、送信周期Tr1は、第1レーダユニット41の遠距離測定用のレーダ送信信号の到来時間Tdの開始時刻tが、第2レーダユニット41aの遠距離測定用のレーダ送信信号の送信区間Tw2内となる様に設定される。
【0235】
また、送信周期Tr2は、第2レーダユニット41aが遠距離測定用のレーダ送信信号の干渉信号の到来時間Tdの開始時刻tが、第1レーダユニット41の遠距離測定用のレーダ送信信号の送信区間Tw2内となる様に設定される。
【0236】
即ち、送信周期Tr2は、数式(20)を満たす様に設定される。
【0237】
【数20】

【0238】
また、図15には、近距離測定用のレーダ送信信号の送信周期Tr1は、遠距離測定用のレーダ送信信号の送信周期Tr2の半分の時間である場合が示されている。
【0239】
但し、この近距離測定用のレーダ送信信号の送信周期Tr1は、遠距離測定用のレーダ送信信号の送信周期Tr2の半分の時間でなくても良い(Tr1≠Tr2/2)。
【0240】
この場合、第1レーダユニット41の遠距離測定用のレーダ送信信号の送信開始時から、第2レーダユニット41aの遠距離測定用のレーダ送信信号の送信開始時までの時間をTs21とする。
【0241】
更に、第2レーダユニット41aの遠距離測定用のレーダ送信信号の送信開始時から、第1レーダユニット41の遠距離測定用のレーダ送信信号の送信開始時までの時間をTs12とする。パラメータTs21とTs12との間には、数式(21)が成立する。この場合、パラメータTs21とTs12とは、数式(10)が成立する様に設定される。
【0242】
【数21】

【0243】
次に、第1レーダ受信部46の構成について説明する。なお、第2レーダ受信部46aは図12に示す第1レーダ受信部46と同様な構成のため、当該第2レーダ受信部46aの図面は省略する。
【0244】
第1レーダ受信部46は、図12に示す様に、アンテナ切換部57を介して受信アンテナAN7及び受信アンテナAN8が接続された受信RF部58、及び、信号処理部63を備える。
【0245】
受信RF部58は、増幅器60、周波数変換部61及び直交検波部62を備える。信号処理部63は、A/D変換部64,65、第1相関値演算部66、第2相関値演算部67、出力切換部68、第1加算処理部69、第2加算処理部70及び到来距離推定部71を備える。
【0246】
第1レーダ受信部46は、第1送信符号制御部44からの送信符号制御信号によって送信アンテナAN5又は送信アンテナAN6から送信されたレーダ送信信号に応じて、送信周期Tr1又は送信周期Tr2を、信号処理部63における信号処理区間として周期的に演算する。
【0247】
次に、第2レーダ受信部46aの構成について説明する。なお、第2レーダ受信部46aは図12に示す第1レーダ受信部46と同様な構成のため、当該第2レーダ受信部46aの図面は省略する。
【0248】
第2レーダ受信部46aは、アンテナ切換部57aを介して受信アンテナAN11及び受信アンテナAN12が接続された受信RF部58a、及び、信号処理部63aを備える。
【0249】
受信RF部58aは、増幅器60a、周波数変換部61a及び直交検波部62aを備える。信号処理部63aは、A/D変換部64a,65a、第1相関値演算部66a、第2相関値演算部67a、出力切換部68a、第1加算処理部69a、第2加算処理部70a及び到来距離推定部71aを備える。
【0250】
第2レーダ受信部46aは、第2送信符号制御部44aからの送信符号制御信号によって送信アンテナAN9又は送信アンテナAN10から送信されたレーダ送信信号に応じて、送信周期Tr1又は送信周期Tr2を、信号処理部63aにおける信号処理区間として周期的に演算する。
【0251】
次に、第1レーダ受信部46の各部の構成及び動作について説明する。
【0252】
アンテナ切換部57は、第1送信符号制御部44により出力された送信符号制御信号を入力する。更に、アンテナ切換部57は、当該入力された送信符号制御信号に基づいて、第1レーダ送信信号に対する反射波の信号と第2レーダユニット41aからの干渉信号を受信する受信アンテナを、受信アンテナAN7又は受信アンテナAN8から選択的に切り換える。
【0253】
第1の実施形態の変形例1の広角レーダ装置40では、受信アンテナAN7は近距離測定用に用いられ、受信アンテナAN8は遠距離測定用に用いられる。
【0254】
従って、アンテナ切換部56が送信アンテナAN5に切り換えた場合には、アンテナ切換部57は受信アンテナAN7に切り換える。同様に、アンテナ切換部56が送信アンテナAN6に切り換えた場合には、アンテナ切換部57は受信アンテナAN8に切り換える。
【0255】
受信アンテナAN7又は受信アンテナAN8は、送信アンテナAN5又は送信アンテナAN6から送信された第1レーダ送信信号のターゲットTAに反射された反射波の信号と、第2レーダユニット41aからの干渉信号とを受信する。受信アンテナAN7又は受信アンテナAN8により受信された受信信号は、アンテナ切換部57を介して受信RF部58に入力される。
【0256】
受信RF部58の各部の動作は、第1の実施形態の受信RF部24の動作と同様であるため、当該動作に関する説明は省略する。
【0257】
A/D変換部64は、直交検波部62により出力されたベースバンドの同相信号に対して離散時刻kにおけるサンプリングを行い、アナログデータの当該同相信号をデジタルデータに変換する。A/D変換部64は、当該変換されたデジタルデータの同相信号を、第1相関値演算部66及び第2相関値演算部67にそれぞれ出力する。
【0258】
同様に、A/D変換部65は、直交検波部62により出力されたベースバンドの直交信号に対して離散時刻kにおけるサンプリングを行い、アナログデータの当該直交信号をデジタルデータに変換する。A/D変換部65は、当該変換されたデジタルデータの直交信号を、第1相関値演算部66及び第2相関値演算部67にそれぞれ出力する。
【0259】
第1相関値演算部66は、A/D変換部64及びA/D変換部65から出力されたデジタルデータの複素信号x(k、M)を入力する。第1相関値演算部66は、第1送信信号生成部47の動作と同期を確立することで、当該第1送信信号生成部47と同様に、基準信号発振器Lo1において生成されたリファレンス信号に基づいて、当該リファレンス信号を所定倍に逓倍した信号を生成する。なお、図12では、第1相関値演算部66へのリファレンス信号の入力は省略している。
【0260】
第1相関値演算部66は、当該リファレンス信号を所定倍に逓倍された信号に基づいて、離散時刻kに応じて第1送信信号生成部47により生成された近距離測定用の第1送信信号(数式(5)参照)と同一のベースバンドである基準第1送信信号r(k、M)を周期的に生成する。
【0261】
また、第1相関値演算部66は、当該入力された複素信号x(k、M)と、当該生成された基準第1送信信号r(k、M)との第1相関値ACを演算する。但し、この第1相関値ACの演算においては、基準第1送信信号r(k、M)の複素共役値が用いられる。
具体的には、第1相関値演算部66は、図15に示す送信周期Tr1、即ち離散時刻k=1〜(Nr1+Nu1)の場合には、数式(14)に従って第1相関値ACを演算する。第1相関値演算部66は、数式(14)に従って演算された第1相関値ACを出力切換部68に出力する。
【0262】
第2相関値演算部67は、A/D変換部64及びA/D変換部65から出力されたデジタルデータの複素信号x(k、M)を入力する。第2相関値演算部67は、第1送信信号生成部47の動作と同期することで、当該第1送信信号生成部47と同様に、基準信号発振器Lo1において生成されたリファレンス信号に基づいて、当該リファレンス信号を所定倍に逓倍した信号を生成する。なお、図12では、第1相関値演算部66へのリファレンス信号の入力は省略している。
【0263】
第2相関値演算部67は、当該リファレンス信号を所定倍に逓倍された信号に基づいて、離散時刻kに応じて第1送信信号生成部47により生成された遠距離測定用の第1送信信号(数式(5)参照)と同一のベースバンドである基準第1送信信号r(k、M)を周期的に生成する。
【0264】
また、第2相関値演算部67は、当該入力された複素信号x(k、M)と、当該生成された基準第1送信信号r(k、M)との第2相関値ACを演算する。但し、この第2相関値ACの演算においては、基準第1送信信号r(k、M)の複素共役値が用いられる。
具体的には、第2相関値演算部67は、図15に示す送信周期Tr2、即ち離散時刻k=1〜(Nr2+Nu2)の場合には、数式(14)に従って第2相関値ACを演算する。第2相関値演算部67は、数式(14)に従って演算された第2相関値ACを出力切換部68に出力する。
【0265】
出力切換部68は、第1送信符号制御部44により出力された送信符号制御信号を入力し、更に、第1相関値演算部66及び第2相関値演算部67によりそれぞれ出力された第1相関値AC及び第2相関値ACを入力する。出力切換部68は、当該入力された送信符号制御信号に基づいて、第1相関値AC及び第2相関値ACを切り換えて選択的に第1加算処理部69又は第2加算処理部70に出力する。
【0266】
第1加算処理部69は、出力切換部68により出力された第1相関値ACを入力する。第1加算処理部69は、第M番目の送信周期Tr1において乗算された第1相関値ACを単位として、複数R回の加算平均を行う。
【0267】
即ち、第1加算処理部69は、第M番目の送信周期Tr1における第1相関値AC(k、m)から第(M+1)番目の送信周期Tr1における第1相関値AC(k、m+R−1)を単位として、離散時刻kのタイミングを揃えて平均相関値aveACを演算する。第1加算処理部69は、当該演算された平均相関値aveACを到来距離推定部71に出力する。
【0268】
この第1加算処理部69の動作により、広角レーダ装置40は、雑音成分を更に抑圧することで、SNR(Signal Noise Ratio)を向上することができ、更に、ターゲットの到来距離の推定に関する測定性能を向上することができる。
【0269】
第2加算処理部70は、出力切換部68により出力された第2相関値ACを入力する。第2加算処理部70は、第M番目の送信周期Tr2において乗算された第2相関値ACを単位として、複数R回の加算平均を行う。
【0270】
即ち、第2加算処理部70は、第M番目の送信周期Tr2における第2相関値AC(k、m)から第(M+1)番目の送信周期Tr2における第2相関値AC(k、m+R−1)を単位として、離散時刻kのタイミングを揃えて平均相関値aveACを演算する。第2加算処理部70は、当該演算された平均相関値aveACを到来距離推定部71に出力する。
【0271】
この第2加算処理部70の動作により、広角レーダ装置40は、雑音成分を更に抑圧することで、SNR(Signal Noise Ratio)を向上することができ、更に、ターゲットの到来距離の推定に関する測定性能を向上することができる。
【0272】
上述した様に、第1相関値演算部66及び第2相関値演算部67の演算は、離散時刻k=1〜(Nr+Nu)に対して行われる。なお、広角レーダ装置40の測定対象となるターゲットTAの存在範囲によって、測定レンジ(kの範囲)を、例えばk=Nr〜(Nr+Nu)の様に更に狭めた限定をしてもよい。
【0273】
これにより、広角レーダ装置40は、第1相関値演算部66及び第2相関値演算部67の演算量を低減することができる。即ち、広角レーダ装置40は、信号処理部63による演算量の削減に基づく消費電力量を低減することができる。
【0274】
到来距離推定部71は、第1加算処理部69により出力された平均相関値aveAC及び第2加算処理部70により出力された平均相関値aveACを入力する。到来距離推定部71は、当該入力された平均相関値aveAC及び平均相関値aveACに基づいて、第1レーダユニット41からターゲットTAまでの距離の推定演算を行う。到来距離推定部71によるターゲットTAまでの距離の推定演算は、既に公知の技術であり、例えば上述参考非特許文献2を参照することにより実現することが可能である。
【0275】
例えば、到来距離推定部71は、第1加算処理部69により出力された平均相関値aveAC及び第2加算処理部70により出力された平均相関値aveACに基づいて、当該平均相関値aveAC及び平均相関値aveAC12が最大値をとるときの離散時刻と第1レーダ送信信号の送信時間との時間差を判定する。更に、到来距離推定部71は、当該判定された時間差に基づいて、第1レーダユニット41からターゲットTAまでの距離を推定する。
【0276】
また、到来距離推定部71は、各々の当該受信アンテナにより受信された受信信号の位相差に基づいて、各レーダユニットに対するターゲットTAの到来角を推定することも可能である。
【0277】
以上により、第1の実施形態の変形例1の広角レーダ装置40では、各レーダユニットは、近距離測定用の符号長L1のレーダ送信信号と遠距離測定用の符号長L2のレーダ送信信号を、近距離測定の符号長L1のレーダ送信信号の送信タイミングが重複しない様に送信する。
【0278】
これにより、第1の実施形態の変形例1の広角レーダ装置40では、近距離測定用のレーダ送信信号の送信時及び受信時には近距離レンジに指向性を絞った送受信を行うため、指向性の影響を受けない他レーダユニットからの遠距離測定のレーダ送信信号の干渉信号を更に抑圧することができる。
【0279】
〔第1の実施形態の変形例2〕
上述した各実施形態の広角レーダ装置10,40ではレーダユニットの数が2つである場合について説明した。第1の実施形態の変形例2では、広角レーダ装置を構成するレーダユニットの数が3つ以上として例えば3つ及び4つである場合について説明する。
【0280】
図16は、3つ以上のレーダユニットを有する広角レーダ装置における各レーダユニットの配置例を示す説明図である。同図(a)は、レーダユニット数が3つの場合を示す説明図である。同図(b)は、レーダユニット数が4つの場合を示す説明図である。
【0281】
レーダユニット数が3つである場合には、或るレーダユニットが、残りの2つのレーダユニットからの各干渉信号が到来する到来時間が等しい又は比較的近いものとなる組合せを探し、当該組合せとなる2つのレーダユニットと、残りの1つのレーダユニットとのグループに分ける。例えば、第1の実施形態の変形例2の広角レーダ装置が、図16(a)に示す様な3つのレーダユニットから構成される場合を考える。
【0282】
図16(a)において、第2レーダユニット(#2)における第1レーダユニット(#1)からの干渉信号の到来時間Td21、第3レーダユニット(#3)からの干渉信号の到来時間Td23が、幾何学的な距離伝搬を経て到来するとする。この場合、第1レーダユニットと第2レーダユニットとの距離R12、第2レーダユニットと第3レーダユニットとの距離R23、及び第1レーダユニットと第3レーダユニットとの距離R13との間には、数式(22)が成立する。従って、数式(23)も成立すると見なすことができる。
【0283】
【数22】

【0284】
【数23】

【0285】
これにより、図16(a)における第1の実施形態の変形例2の広角レーダ装置では、第1レーダユニット及び第3レーダユニットのグループと、第2レーダユニットのグループとにより構成される。即ち、図16(a)において、第1グループG1のレーダユニットは、第1レーダユニット及び第3レーダユニットである。同様に、第2グループG2のレーダユニットは、第2レーダユニットのみである。
【0286】
図16(b)においては、第1レーダユニット(#1)における第2レーダユニット(#2)からの干渉信号の到来時間Td12、及び第4レーダユニット(#4)からの干渉信号の到来時間Td14が、幾何学的な距離伝搬を経て到来するとする。この場合、第1レーダユニットと第2レーダユニットとの距離R12、第1レーダユニットと第4レーダユニットとの距離R14、及び第1レーダユニットと第3レーダユニットとの距離R13との間には、数式(24)が成立する。従って、数式(25)も成立すると見なすことができる。
【0287】
【数24】

【0288】
【数25】

【0289】
これにより、図16(b)における第1の実施形態の変形例2の広角レーダ装置では、第1レーダユニット及び第3レーダユニットのグループと、第2レーダユニット及び第4レーダユニットのグループとにより構成される。即ち、図16(b)において、第1グループG1のレーダユニットは、第1レーダユニット及び第3レーダユニットである。
【0290】
同様に、第2グループG2のレーダユニットは、第2レーダユニット及び第4レーダユニットである。以下では、各レーダユニットとその属するグループは上記の関係があるものとして説明を行うが、これに限定されるものではない。
【0291】
第1の実施形態の変形例2の広角レーダ装置では、第1グループG1に属するレーダユニットは、上述した第1の実施形態の広角レーダ装置10の第1送信トリガ信号に基づいてレーダ送信信号の送信を行う。一方、第2グループG2に属するレーダユニットは、上述した第1の実施形態の広角レーダ装置10の第2送信トリガ信号に基づいてレーダ送信信号の送信を行う。
【0292】
また、同じグループに複数のレーダユニットが属する場合には、当該レーダユニットにおけるレーダ送信信号の送信タイミングは同一となる。更に、同じグループに属するレーダユニット間の干渉信号は抑圧される必要がある。このため、同じグループに複数のレーダユニットが属する場合、各レーダユニットは、異なる周波数帯域を用いてレーダ送信信号を送信し(FDM:Frequency Division Multiplexing)、又は互いに直交性の高いレーダ送信信号を送信する(CDM:Code Division Multiplexing)。
【0293】
図17は、レーダユニット数が3つの場合における各レーダユニットの動作に関するタイミングチャートである。図18は、レーダユニット数が4つの場合における各レーダユニットの動作に関するタイミングチャートである。なお、図16に示す各レーダユニットの構成は、上述した第1の実施形態の広角レーダ装置10の第1レーダユニット11又は第2レーダユニット11aと同様である。
【0294】
図17又は図18において、第1レーダユニットの第1送信トリガ生成部は、レーダ間同期確立信号検出部の同期確立信号の検出時又は受信時から、第1レーダユニットが属するグループに固有の遅延時間D1(第1グループG1に属する場合)の経過後に、第1送信トリガ信号を生成する。
【0295】
また、第2レーダユニットの第2送信トリガ生成部は、レーダ間同期確立信号検出部の同期確立信号の検出時又は受信時から、第2レーダユニットが属するグループに固有の遅延時間D2(第2グループG2に属する場合)の経過後に、第2送信トリガ信号を生成する。
【0296】
図17又は図18において、第3レーダユニットの第3送信トリガ生成部は、レーダ間同期確立信号検出部の同期確立信号の検出時又は受信時から、第3レーダユニットが属するグループに固有の遅延時間D1(第1グループG1に属する場合)の経過後に、第1送信トリガ信号を生成する。
【0297】
また、図18において、第4レーダユニットの第4送信トリガ生成部は、レーダ間同期確立信号検出部の同期確立信号の検出時又は受信時から、第4レーダユニットが属するグループに固有の遅延時間D2(第2グループG2に属する場合)の経過後に、第4送信トリガ信号を生成する。
【0298】
第1レーダユニットの第1送信符号制御部は、当該第1送信トリガ信号に基づいて、第1グループG1に属する第1レーダユニットの第1レーダ送信部に第1レーダ送信信号を生成するように制御する。
【0299】
第2レーダユニットの第2送信符号制御部は、当該第2送信トリガ信号に基づいて、第2グループG2に属する第2レーダユニットの第2レーダ送信部に第2レーダ送信信号を生成するように制御する。
【0300】
第3レーダユニットの第3送信符号制御部は、当該第1送信トリガ信号に基づいて、第1グループG1に属する第3レーダユニットの第3レーダ送信部に第3レーダ送信信号を生成するように制御する。
【0301】
第4レーダユニットの第4送信符号制御部は、当該第2送信トリガ信号に基づいて、第2グループG2に属する第4レーダユニットの第4レーダ送信部に第4レーダ送信信号を生成するように制御する。
【0302】
なお、第1送信トリガ信号、第2送信トリガ信号、他レーダユニットからの干渉信号の到来時間Td及び調整時間Tsは、上述した第1の実施形態の広角レーダ装置10における内容と同一であるため、当該内容に関する説明は省略する。
【0303】
上述した様に、第1の実施形態の変形例2の広角レーダ装置では、干渉信号の到来時間Tdが等しい又は比較的近いものとなるレーダユニットの組合せ又はレーダユニット間の距離の等しい又は比較的近いものとなるレーダユニットの組合せでグループが形成される。更に、当該グループ間で、上述した第1の実施形態における第1送信トリガ信号、第2送信トリガ信号、他レーダユニットからの干渉信号の到来時間Td及び調整時間Tsが適用される。
【0304】
更に、第1の実施形態の変形例2の広角レーダ装置では、同じグループに複数のレーダユニットが属する場合、各レーダユニットは、異なる周波数帯域を用いてレーダ送信信号を送信し、又は互いに直交性の高いレーダ送信信号を送信する。
【0305】
このため、第1の実施形態の変形例2の広角レーダ装置では、従来のCDM又はFDMのみを用いたレーダユニット間の直交化に比べ、各レーダユニットの送信周期の調整時間Tsの調整により、符号多重数又は周波数分割数をより少なくして干渉信号の抑圧を行うことができる。
【0306】
従って、第1の実施形態の変形例2の広角レーダ装置は、各レーダユニットの送信周期の調整時間Tsの調整とCDMとを併用することで、従来のCDMより符号長を短くすることができる。更に、第1の実施形態の変形例2の広角レーダ装置は、測定時間の増分が少なく、受信信号の受信に必要な受信ダイナミックレンジも低減することができる。
【0307】
従って、第1の実施形態の変形例2の広角レーダ装置は、各レーダユニットの送信周期の調整時間Tsの調整とFDMとを併用することで、従来のFDMより所定の利用可能な周波数帯域での周波数分割数を少なくすることができる。更に、第1の実施形態の変形例2の広角レーダ装置は、測定時における時間分解能を高めることができる。
【0308】
〔第1の実施形態の変形例3〕
第1の実施形態の変形例3の広角レーダ装置を構成する各レーダユニットは、当該各レーダユニット間でレーダ送信信号を用いることで、干渉信号の到来時間Tdを実測して調整時間Tsを設定し、各レーダユニット間で同期を確立する。
【0309】
図19は、第1の実施形態の変形例3の広角レーダ装置80における各レーダユニットの構成を示すシステム構成図である。図20は、第1の実施形態の変形例3の広角レーダ装置80の各レーダユニットの内部構成を示すブロック図である。同図(a)は、第1レーダユニット81である。同図(b)は、第2レーダユニット81aである。図20の各図は、それぞれ個別に、レーダユニットとして、動作するものである。図21は、第1の実施形態の変形例3の広角レーダ装置80における各レーダユニットの各レーダユニット間で同期を確立する動作を説明するタイミングチャートである。
【0310】
第1の実施形態の変形例3の広角レーダ装置80は、第1レーダユニット81及び第2レーダユニット81aを備える。
【0311】
第1レーダユニット81は、レーダ間同期確立信号検出部82、マスタレーダ間同期確立制御部83、第1送信トリガ信号生成部84、第1送信符号制御部85、送信アンテナAN13が接続された第1レーダ送信部86、及び受信アンテナAN14が接続された第1レーダ受信部87を備える。
【0312】
第2レーダユニット81aは、レーダ間同期確立信号検出部82a、スレーブレーダ間同期確立制御部83a、第2送信トリガ信号生成部84a、第2送信符号制御部85a、送信アンテナAN15が接続された第2レーダ送信部86a、及び受信アンテナAN16が接続された第2レーダ受信部87aを備える。
【0313】
なお、第1レーダユニット81と第2レーダユニット81aとは同様な構成を有し、同様に動作するため、以下の広角レーダ装置80の構成及び動作の説明においては、第1レーダユニット81の構成及び動作を主に説明し、必要に応じて第2レーダユニット81aの構成及び動作を説明する。
【0314】
特に、第2レーダユニット81aでの構成が明示的に説明されていないものは、第1レーダユニット81の対応する構成における説明と同様に動作する。
【0315】
レーダ間同期確立信号検出部82は、第1レーダユニット81及び第2レーダユニット81a間でレーダ間同期確立期間に移行を指示するレーダ間同期確立信号を検出又は受信する。この同期確立信号は、図示しないが、例えば、LAN(Local Area Network)等の有線通信回線或いは無線通信回線を介して特定の基地局装置等から送信された送信信号、又はGPS(Global Positioning System)衛星を介して送信された送信信号を用いることができる。
【0316】
マスタレーダ間同期確立制御部83は、広角レーダ装置80を構成する複数のレーダユニットのうち1つのレーダユニットが有するものである。図19では、第1レーダユニット81がマスタレーダ間同期確立制御部83を有するものとする。
【0317】
マスタレーダ間同期確立制御部83は、通常レーダ送信期間(測定期間)とは異なるレーダ間同期確立期間でレーダ送信信号の送受信を行う様に第1送信符号制御部85を制御する。
【0318】
スレーブレーダ間同期確立制御部83aは、広角レーダ装置80を構成する複数のレーダユニットのうちマスタとなるレーダユニットと異なるレーダユニットが有するものである。図19では、第2レーダユニット81aがスレーブレーダ間同期確立制御部83aを有するものとする。
【0319】
スレーブレーダ間同期確立制御部83aは、通常レーダ送信期間(測定期間)とは異なるレーダ間同期確立期間でレーダ送信信号の送受信を行う様に第2送信符号制御部85aを制御する。
【0320】
第1送信トリガ信号生成部84は、レーダ間同期確立期間に第2レーダユニット81aからの干渉信号の到来時間Tdの測定結果に基づいて、第1送信トリガ信号を生成する。
【0321】
第2送信トリガ信号生成部84aは、レーダ間同期確立期間に第1レーダユニット81からの干渉信号の到来時間Tdの測定結果に基づいて、第2送信トリガ信号を生成する。
【0322】
次に、第1の実施形態の変形例3の広角レーダ装置80のレーダ間同期確立期間から通常レーダ測定期間に移行するまでの動作について図15を参照して説明する。
【0323】
マスタレーダ間同期確立制御部83及びスレーブ間同期確立制御部83aは、レーダ間同期確立信号検出部82,82aのレーダ間同期確立信号の受信に応じて、レーダ間同期確立期間に移行する様に第1,第2送信符号制御部84,84aの動作を制御する。
【0324】
マスタレーダ間同期確立制御部83は、レーダ間同期確立信号に基づいて、所定回数Nm(図21ではNm=1)の送信周期Trにわたり第1レーダ送信信号を送信する様に第1送信符号制御部85を制御する。
【0325】
一方、スレーブレーダ間同期確立制御部83aは、レーダ間同期確立信号に基づいて、第2レーダ送信信号の送信を停止する様に第2送信符号制御部85aを制御する。
【0326】
更に、スレーブレーダ間同期確立制御部83aは、レーダ間同期確立信号の受信時から、第1レーダユニット81から送信された第1レーダ送信信号の干渉信号を所定回数Nmの送信周期Trにわたり検出する様に第2送信符号制御部85aを制御する。
【0327】
更に、スレーブレーダ間同期確立制御部83aは、当該干渉信号(到来時間Td)を検出した旨の検出結果を第2送信トリガ信号生成部84aに出力する。
【0328】
第2送信トリガ信号生成部84aは、スレーブレーダ間同期確立制御部83aから出力された干渉信号の検出結果を入力する。第2送信トリガ信号生成部84aは、当該入力された干渉信号の開始時刻時から送信周期Trの整数倍Kの期間の経過後(図21ではK=1)、第2送信トリガ信号を生成する。この第2送信トリガ信号の生成により、第2レーダユニット81aは、通常レーダ測定期間に移行する。
【0329】
マスタレーダ間同期確立制御部83は、第1レーダユニット81が所定回数Nmの送信周期Trにわたり第1レーダ送信信号を送信した後、第1レーダ送信信号の送信を停止する様に第1送信符号制御部85を制御する。
【0330】
更に、マスタレーダ間同期確立制御部83は、レーダ間同期確立信号の受信時から、通常レーダ測定期間に移行した第2レーダユニット81aから送信された第2レーダ送信信号の干渉信号を所定回数Nm2の送信周期Trにわたり検出する様に第1送信符号制御部85を制御する。
【0331】
更に、マスタレーダ間同期確立制御部83は、当該干渉信号(到来時間Td2)を検出した旨の検出結果を第1送信トリガ信号生成部84に出力する。
【0332】
第1送信トリガ信号生成部84は、スレーブレーダ間同期確立制御部83aから出力された干渉信号の検出結果を入力する。第1送信トリガ信号生成部84は、当該入力された干渉信号の到来時間Td2に関して伝搬路の双対性から数式(26)が成立すると仮定して、当該到来時間Tdを導出する。
【0333】
【数26】

【0334】
第1送信トリガ信号生成部84は、当該導出された到来時間Tdを用いて、数式(7)を満たす様に調整時間Tsを設定する。又は、第1送信トリガ信号生成部84は、当該導出された到来時間Tdが数式(15)を満たす場合に、数式(16)に示す様に調整時間Tsを設定し、第1送信トリガ信号を生成する。この第1送信トリガ信号の生成により、第1レーダユニット81は、通常レーダ測定期間に移行する。
【0335】
第1レーダユニット81が通常レーダ測定期間に移行した後の第1レーダユニット81及び第2レーダユニット81aの動作は、上述した第1の実施形態の広角レーダ装置10の第1レーダユニット11及び第2レーダユニット11aの動作と同様である。このため、第1レーダユニット81が通常レーダ測定期間に移行した後の第1レーダユニット81及び第2レーダユニット81aの動作に関する説明は省略する。
【0336】
以上により、第1の実施形態の変形例3の広角レーダ装置80は、各レーダユニットのレーダ送信信号に基づいて他レーダユニットからの干渉信号の到来時間を実測して調整時間Tsを設定する。従って、第1の実施形態の変形例3の広角レーダ装置80によれば、実際の環境に配置された各レーダユニットの周辺状況に応じて、他レーダユニットからの干渉信号を適応的に抑圧することができる。
【0337】
更に、第1の実施形態の変形例3の広角レーダ装置80によれば、各レーダユニットが同一のレーダ送信信号(パルス圧縮符号)を送信することで、新たな符号生成部及び相関値演算部等の付加回路を追加することなく、レーダ間で同期確立を実現することができる。
【0338】
〔第1の実施形態の変形例4〕
上述した各実施形態では、各レーダユニット間の送信タイミングの同期を前提とした広角レーダ装置の動作を説明した。
【0339】
第1の実施形態の変形例4では、各レーダユニット間の送信タイミングの同期を確立する構成を除いた場合でも、他レーダユニットからの干渉信号の抑圧が可能な広角レーダ装置の構成及び動作について説明する。
【0340】
図22は、第1の実施形態の変形例4の広角レーダ装置90における各レーダユニットの構成を示すシステム構成図である。図23は、第1の実施形態の変形例4の広角レーダ装置90の各レーダユニットの内部構成を示すブロック図である。同図(a)は、第1レーダユニット91である。同図(b)は、第2レーダユニット91aである。図23の各図は、それぞれ個別に、レーダ装置として、動作するものである。図24は、第1の実施形態の変形例4の広角レーダ装置90における各レーダユニットの動作に関するタイミングチャートである。
【0341】
第1の実施形態の変形例4の広角レーダ装置90は、第1レーダユニット91及び第2レーダユニット91aを備える。
【0342】
第1レーダユニット91は、第1送信符号制御部92、送信アンテナAN17が接続された第1レーダ送信部93、及び、受信アンテナAN18が接続された第1レーダ受信部94を備える。
【0343】
第2レーダユニット91aは、第2送信符号制御部92a、送信アンテナAN19が接続された第2レーダ送信部93a、及び、受信アンテナAN20が接続された第2レーダ受信部94aを備える。
【0344】
第1送信符号制御部92は、送信周期Tr3で第1レーダ送信信号(パルス圧縮符号)を送信する様に第1レーダ送信部93を制御する。
【0345】
第2送信符号制御部92aは、送信周期Tr4で第2レーダ送信信号(パルス圧縮符号)を送信する様に第2レーダ送信部93aを制御する。
【0346】
第1レーダ送信部93、第1レーダ受信部94、第2レーダ送信部93a及び第2レーダ受信部94aの構成及び動作は、上述した第1実施形態の広角レーダ装置10における第1レーダ送信部15、第1レーダ受信部16、第2レーダ送信部15a及び第2レーダ受信部16aと同様である。
【0347】
以下の説明においては、第1レーダ送信部93、第1レーダ受信部94、第2レーダ送信部93a及び第2レーダ受信部94aの構成及び動作は、当該広角レーダ装置10における第1レーダ送信部15、第1レーダ受信部16、第2レーダ送信部15a及び第2レーダ受信部16aと異なる内容について説明する。
【0348】
第1の実施形態の変形例4の広角レーダ装置90において、第1レーダ送信信号の送信周期Tr3と、第2レーダ送信信号の送信周期Tr4との間には、数式(27)が成立する。パラメータTwは、第1レーダ送信信号及び第2レーダ送信信号の送信区間であり、干渉信号の到来期間を示す。
【0349】
【数27】

【0350】
図24には、他レーダユニットからの干渉信号が到来する到来期間(干渉領域)が第1レーダ送信信号及び第2レーダ送信信号の送信区間Twに等しい場合が示されている。但し、他レーダユニットからの干渉信号が更に遅延波を含む場合には、当該遅延波を含めた
干渉領域の時間幅Tmを用いて、数式(28)を満たす送信周期Tr3及びTr4が設定される。
【0351】
【数28】

【0352】
第1の実施形態の変形例4の広角レーダ装置90では、数式(27)又は数式(28)に示した送信周期が設定されることで、各々の送信周期Tr3,Tr4毎に、第1レーダ送信信号及び第2レーダ送信信号の干渉領域が重複することなく変化することになる。
【0353】
以上により、第1の実施形態の変形例4の広角レーダ装置90は、各レーダユニットで異なる送信周期でレーダ送信信号(パルス圧縮符号)を送信することで、各々の送信周期間での加算平均によって当該送信周期内で干渉をランダマイズする。
【0354】
これにより、第1の実施形態の変形例4の広角レーダ装置90では、特定の測定期間におけるSINRの劣化を防ぐことができる。具体的には、特定のレーダとして第2レーダユニットにとって、当該第2レーダユニットの送信周期Tr4では第1レーダユニットからの干渉信号の干渉領域が存在しないことになり、当該送信周期Tr4における第2レーダユニットの受信信号レベルに対するSINRを高めることができる。
【0355】
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本発明のレーダ装置はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0356】
なお、上述した各実施形態において、A/D変換部22,23は、受信RF部17の直交検波部20により出力されたベースバンドの同相信号及び直交信号に対して、離散時刻kに応じたオーバーサンプリングでデジタルデータに変換する。しかし、A/D変換部22,23は、レーダ送信部2におけるベースバンドの送信信号と同一のサンプリングレートでA/D変換を行わなくても良い。
【0357】
例えば、上述した各実施形態のレーダ送信部では、符号長Lに対してNのサンプル数を用いて、ベースバンドの送信信号が生成された。これは、1つの符号あたりN/Lサンプルのオーバーサンプリングに相当する。しかしながら、上述した各実施形態のレーダ受信部においては、1つの符号あたり1倍のサンプル以上でも、受信信号の信号処理は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0358】
本発明は、自レーダユニットの受信信号レベルに対する他レーダユニットからの干渉信号レベルを効果的に抑圧し、当該抑圧に必要な測定時間及び付加回路の増加を回避するレーダ装置として有用である。
【符号の説明】
【0359】
10、80、90 広角レーダ装置
11、41、81、91 第1レーダユニット
11a、41a、81a、91a 第2レーダユニット
12、12a、42、82,82a レーダ間同期確立信号検出部
13、43、84 第1送信トリガ信号生成部
14、44、85、92 第1送信符号制御部
15、45、86、93 第1レーダ送信部
16、46、87、94 第1レーダ受信部
13a、84a 第2送信トリガ信号生成部
14a、85a、92a 第2送信符号制御部
15a、86a、93a 第2レーダ送信部
16a、87a、94a 第2レーダ受信部
17、47 第1送信信号生成部
18 符号生成部
19、51 変調部
20、52 LPF
21 送信RF部
22、27、54、61 周波数変換部
23、26、55、60 増幅器
24、58 受信RF部
25 信号処理部
28、62 直交検波部
29、30、64、65 A/D変換部
31 相関値演算部
32 加算処理部
33、71 到来距離推定部
48 第1符号生成部
49 第2符号生成部
50 符号切換部
56、57 アンテナ切換部
66 第1相関値演算部
67 第2相関値演算部
68 出力切換部
69 第1加算処理部
70 第2加算処理部
83 マスタレーダ間同期確立制御部
83a スレーブレーダ間同期確立制御部
AN1、AN3、AN5、AN6、AN13、AN15、AN17、AN19 送信アンテナ
AN2、AN4、AN7、AN8、AN14、AN16、AN18、AN20 受信アンテナ
Lo1、Lo2 基準信号発振器
TA ターゲット
Td 到来時間
Tr、Tr1、Tr2、Tr3、Tr4 送信周期
Ts 調整時間
Tw 送信区間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の同期確立信号の受信時から第1遅延時間経過後に、第1送信トリガ信号を生成する第1送信トリガ信号生成部と、
前記生成された第1送信トリガ信号に基づいて、第1レーダ送信信号を第1送信周期毎に生成する様に制御する第1送信符号制御部と、
前記生成された第1レーダ送信信号を周期的に送信する第1レーダ送信部と、
前記所定の同期確立信号の受信時から第2遅延時間経過後に、第2送信トリガ信号を生成する第2送信トリガ信号生成部と、
前記生成された第2送信トリガ信号に基づいて、第2レーダ送信信号を第2送信周期毎に生成する様に制御する第2送信符号制御部と、
前記生成された第2レーダ送信信号を周期的に送信する第2レーダ送信部と、を備え、
前記第1送信符号制御部及び前記第2送信符号制御部は、前記第1遅延時間及び前記第2遅延時間に応じて、前記第1レーダ送信部及び前記第2レーダ送信部からの各干渉信号の到来時が前記第2レーダ送信信号及び前記第1レーダ送信信号の各送信区間内となる様に、前記第1レーダ送信部及び前記第2レーダ送信部を制御するレーダ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーダ装置であって、
前記第2送信符号制御部は、前記第1レーダ送信部からの干渉信号の到来時が前記第2レーダ送信信号の送信区間内となる調整時間を設定し、
前記第2レーダ送信部は、前記第1レーダ送信信号の送信時から前記設定された調整時間が経過した後に、前記第2レーダ送信信号を送信するレーダ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のレーダ装置であって、
前記レーダ装置は、前記第1レーダ送信部を含む第1レーダユニット、及び前記第2レーダ送信部を含む第2レーダユニットを有し、
前記第2送信符号制御部は、前記第1レーダユニットと前記第2レーダユニットとの距離に基づいて前記第1レーダ送信部からの干渉信号の到来時間を算出し、前記第1レーダ送信部からの干渉信号の到来時が前記第2レーダ送信信号の送信区間内となる調整時間を設定し、
前記第2レーダ送信部は、前記第1レーダ送信信号の送信時から前記設定された調整時間が経過した後に、前記第2レーダ送信信号を送信するレーダ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のレーダ装置であって、
前記第1レーダ送信部からの干渉信号の到来時間Tdは、前記第1レーダユニットと前記第2レーダユニットとの距離Rdを光速Cで除算して求められ、
前記第1レーダ送信信号の送信時から前記設定された調整時間Tsは、前記第1レーダ送信部からの干渉信号の到来時間Tdから前記第1レーダ送信信号の送信区間Twを減算した時間より大きく、前記第1レーダ送信部からの干渉信号の到来時間Tdよりも少ない時間であるレーダ装置。
【請求項5】
請求項2〜4のうちいずれか一項に記載のレーダ装置であって、
前記調整時間は、前記第1送信周期の半周期に相当するレーダ装置。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか一項に記載のレーダ装置であって、
前記所定の同期確立信号を受信する第1レーダ間同期確立信号検出部と、
前記所定の同期確立信号を受信する第2レーダ間同期確立信号検出部と、を更に備え、
前記第1レーダ間同期確立信号検出部は、前記受信された所定の同期確立信号を前記第1送信トリガ信号生成部に出力し、
前記第2レーダ間同期確立信号検出部は、前記受信された所定の同期確立信号を前記第2送信トリガ信号生成部に出力するレーダ装置。
【請求項7】
請求項6に記載のレーダ装置であって、
前記第1レーダ送信部は、
第1符号長の第1送信符号を生成する第1符号生成部と、
前記生成された第1送信符号を変調する第1変調部と、
前記変調された第1送信符号を第1レーダ送信信号に変換し、第1送信アンテナから前記第1送信周期で周期的に送信する第1送信RF部と、を備えるレーダ装置。
【請求項8】
請求項7に記載のレーダ装置であって、
前記第2レーダ送信部は、
第2符号長の第2送信符号を生成する第2符号生成部と、
前記生成された第2送信符号を変調する第2変調部と、
前記変調された第2送信符号を第2レーダ送信信号に変換し、第2送信アンテナから前記第2送信周期で周期的に送信する第2送信RF部と、を備えるレーダ装置。
【請求項9】
請求項8に記載のレーダ装置であって、
前記第2レーダ送信部からの干渉信号を受信する第1レーダ受信部と、を更に備え、
前記第1レーダ受信部は、
前記第1レーダ送信信号がターゲットにより反射された反射波の信号と前記第2レーダ送信部からの干渉信号とを、ベースバンドの受信信号に変換する第1受信RF部と、
前記第1受信RF部により変換された受信信号と、前記第1変調部により変調された第1送信符号と同一の送信信号との第1相関値を演算する第1相関値演算部と、
前記第1相関値演算部により演算された第1相関値を、所定数の前記第1送信周期にわたって加算平均する第1加算処理部と、
前記第1加算処理部により加算平均された第1平均相関値に応じて、前記ターゲットとの到来距離を演算する第1到来距離推定部と、を備えるレーダ装置。
【請求項10】
請求項1〜5のうちいずれか一項に記載のレーダ装置であって、
前記第1レーダ送信部は、
第1符号長の第1送信符号を生成する第1符号生成部と、
前記第1符号長より長い第2符号長の第2送信符号を生成する第2符号生成部と、
前記生成された第1送信符号又は第2送信符号を選択的に出力する第1符号切換部と、
前記出力された第1送信符号又は第2送信符号を変調する第1変調部と、
前記変調された第1送信符号又は第2送信符号を第1レーダ送信信号に変換する第1送信RF部と、を備えるレーダ装置。
【請求項11】
請求項10に記載のレーダ装置であって、
前記第1レーダ送信部は、
前記変換された第1レーダ送信信号を送信する送信アンテナを、前記第1符号切換部により出力された第1送信符号又は第2送信符号に応じて選択的に切り換える第1アンテナ切換部と、を更に備えるレーダ装置。
【請求項12】
請求項10又は11に記載のレーダ装置であって、
前記第2レーダ送信部は、
第3符号長の第3送信符号を生成する第3符号生成部と、
前記第3符号長より長い第4符号長の第4送信符号を生成する第4符号生成部と、
前記生成された第3送信符号又は第4送信符号を選択的に出力する第2符号切換部と、
前記出力された第3送信符号又は第4送信符号を変調する第2変調部と、
前記変調された第3送信符号又は第4送信符号を第2レーダ送信信号に変換する第2送信RF部と、を備えるレーダ装置。
【請求項13】
請求項12に記載のレーダ装置であって、
前記第1レーダ送信部は、
前記変換された第2レーダ送信信号を送信する送信アンテナを、前記第2符号切換部により出力された第3送信符号又は第4送信符号に応じて選択的に切り換える第2アンテナ切換部と、を備えるレーダ装置。
【請求項14】
請求項1に記載のレーダ装置であって、
前記所定の同期確立信号の受信時から第1遅延時間経過後に、第3送信トリガ信号を生成する第3送信トリガ信号生成部と、
前記生成された第3送信トリガ信号に基づいて、第3レーダ送信信号を第1送信周期毎に生成する様に制御する第3送信符号制御部と、
前記生成された第3レーダ送信信号を周期的に送信する第3レーダ送信部と、
前記第1レーダ送信部及び前記第2レーダ送信部からの干渉信号をそれぞれ受信する第3レーダ受信部と、を更に備え、
前記レーダ装置は、前記第1レーダ送信部を含む第1レーダユニット、前記第2レーダ送信部を含む第2レーダユニット、及び前記第3レーダ送信部を含む第3レーダユニットを有し、
前記第2送信符号制御部は、前記第1レーダユニットと前記第2レーダユニットとの距離が前記第2レーダユニットと前記第3レーダユニットとの距離と略等しく且つ前記第1レーダユニットと前記第3レーダユニットとの距離より小さい場合に、前記第1レーダ送信部及び前記第3レーダ送信部からの各干渉信号の到来時が前記第2レーダ送信信号の送信区間内となる調整時間を設定し、
前記第2レーダ送信部は、前記第1レーダ送信信号及び前記第3レーダ送信信号の送信時から前記設定された調整時間が経過した後に、前記第2レーダ送信信号を送信するレーダ装置。
【請求項15】
請求項1に記載のレーダ装置であって、
前記所定の同期確立信号の受信時から第1遅延時間経過後に、第3送信トリガ信号を生成する第3送信トリガ信号生成部と、
前記生成された第3送信トリガ信号に基づいて、第3レーダ送信信号を第1送信周期毎に生成する様に制御する第3送信符号制御部と、
前記生成された第3レーダ送信信号を周期的に送信する第3レーダ送信部と、
前記所定の同期確立信号の受信時から第2遅延時間経過後に、第4送信トリガ信号を生成する第4送信トリガ信号生成部と、
前記生成された第4送信トリガ信号に基づいて、第4レーダ送信信号を第2送信周期毎に生成する様に制御する第4送信符号制御部と、
前記生成された第4レーダ送信信号を周期的に送信する第4レーダ送信部と、
前記第1レーダ送信部、前記第2レーダ送信部及び前記第4レーダ送信部からの干渉信号をそれぞれ受信する第3レーダ受信部と、
前記第1レーダ送信部、前記第2レーダ送信部及び前記第3レーダ送信部からの干渉信号をそれぞれ受信する第4レーダ受信部と、を更に備え、
前記レーダ装置は、前記第1レーダ送信部を含む第1レーダユニット、前記第2レーダ送信部を含む第2レーダユニット、前記第3レーダ送信部を含む第3レーダユニット、及び前記第4レーダ送信部を含む第4レーダユニットを有し、
前記第2送信符号制御部及び前記第4送信符号制御部は、前記第1レーダユニットと前記第2レーダユニットとの距離が前記第1レーダユニットと前記第4レーダユニットとの距離と略等しく且つ前記第1レーダユニットと前記第3レーダユニットとの距離より小さい場合に、前記第1レーダ送信部及び前記第3レーダ送信部からの各干渉信号の到来時が前記第2レーダ送信信号及び前記第4レーダ送信信号の各送信区間内となる調整時間を設定し、
前記第2レーダ送信部及び前記第4レーダ送信部は、前記第1レーダ送信信号及び前記第3レーダ送信信号の送信時から前記設定された調整時間が経過した後に、前記第2レーダ送信信号及び前記第4レーダ送信信号をそれぞれ送信するレーダ装置。
【請求項16】
請求項14又は15に記載のレーダ装置であって、
前記第1レーダ送信部及び前記第3レーダ送信部からの各干渉信号の到来時は、
前記第1レーダ送信部及び前記第3レーダ送信部と、前記第2レーダユニットと、の距離に基づいて算出するレーダ装置。
【請求項17】
請求項1に記載のレーダ装置であって、
所定のレーダ間同期確立信号に応じて、所定回数の第1送信周期にわたり前記第1レーダ送信信号を送信する様に前記第1レーダ送信部を制御するマスタレーダ間同期確立制御部と、
前記所定のレーダ間同期確立信号の受信時から前記第1レーダ送信部から送信された第1レーダ送信信号を、前記所定回数の第2送信周期にわたり検出する様に前記第2レーダ受信部を制御するスレーブレーダ間同期確立制御部と、を更に備え、
前記第2送信トリガ信号生成部は、前記検出された第1レーダ送信信号の到来時から前記第2送信周期の経過後に、前記第2送信トリガ信号を生成するレーダ装置。
【請求項18】
請求項17に記載のレーダ装置であって、
前記マスタレーダ間同期確立制御部は、前記所定回数の第2送信周期の経過後、前記所定のレーダ間同期確立信号の受信時から、前記生成された第2送信トリガ信号に基づいて送信された第2レーダ送信信号を、前記所定回数の第1送信周期にわたり検出する様に前記第1レーダ受信部を制御し、
前記第1送信トリガ信号生成部は、前記検出された第2レーダ送信信号の到来時間に基づいて送信調整時間を設定し、前記第2レーダ送信信号の送信開始時から前記設定された送信調整時間の経過後に、前記第1送信トリガ信号を生成するレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2012−107947(P2012−107947A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256143(P2010−256143)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】