説明

レーダ装置

【課題】互いに隣り合う素子アンテナで受信した信号の位相差を用いてターゲット方位の計測を行なう場合、角度アンビギュイティが発生し、レーダ装置としての有効な測角範囲を狭めてしまう。
【解決手段】複数の素子アンテナにより1つの受信チャンネルを構成する場合、互いに隣り合わない位置関係に配置された複数の素子アンテナRX1−1、RX1−2を同一の受信チャンネルとして組み合わせて信号合成することにより、角度アンビギュイティが発生し始める角度をレーダの視野角よりも可能な限り広角へと追いやり、レーダとして有効な測角範囲を最大限確保することができる。しかも複数の素子アンテナは不等間隔で配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のアンテナを用いて電波を送受信して目標を検知するためのレーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的なレーダ装置においては、十分に絞ったアンテナビームパターンをスキャン面内で走査することによってターゲット方位の計測を実現するものであり、この走査方式としては、大きく機械走査方式と電子走査方式がある。
まず、前者の機械走査方式においては、隣接するアンテナのビームパターンが重なるラップ領域での検出を行い、各ラップ領域についてビート信号の受信強度に基づいて角度を計測する。しかしながら、ビート信号の受信強度は様々な要因の影響を受けやすく、このような受信強度を用いるよりも、位相を用いて角度を計測する後者の電子走査方式の方が分解能・精度を向上できることで知られている。
【0003】
また後者の電子走査方式としては、フェーズドアレー方式がある。フェーズドアレー方式においては、機械走査方式のようにアンテナの角度を所望の方向に振るのではなく、アレーアンテナを構成する個々の素子アンテナに対し、その励振位相を位相器などの電子回路を用いて制御することによってビームスキャンを行うことにより、ターゲット方位の計測を実現する。
また、位相を用いてターゲット方位を計測する別の方式として、ディジタル・ビーム・フォーミング(以下、DBF)がある。DBFでは、ターゲットからのエコーを複数の受信アンテナにより同時に受信し、その受信信号を信号処理段階で位相補正して積算することにより、様々なアンテナパターンをデジタル信号処理の段階で形成するものである。
【0004】
従来のフェーズドアレー方式のアンテナにおいて、各アンテナ毎に備えていた移相器の機能、及び移相器の出力を合成する機能を、DBFではデジタル信号処理により実現しているものと考えることができる。このDBFでは、形成したビームにより特定されるレーダ波の到来方向毎に、受信強度と位相とが検出されることになるため、この位相を用いて角度を高精度に求めることが可能となる。したがって、DBFを用いれば、機械走査方式のようにアンテナを駆動させる必要がないため、駆動機構が不要となり、そのために振動に強く、小型・軽量化を図ることができる。また、移相器や電力合成回路などのハードウェアが不要となるため、前述したフェーズドアレー方式と比べて低コスト化を図ることができる。
【0005】
またさらに、前記したDBFで用いられるアンテナを用いて、複数のデジタル受信信号の相関関係を利用したより複雑な信号処理によって、同一周波数帯の複数電波の入射角度をそれぞれ高精度に推定できる方法として、MUSIC(Multiple Signal Classification)アルゴリズムや、その派生アルゴリズムであるESPRIT(Estimation of Signal
Parameters via Rotational Invariance Techniques)が適用されることがある。
これらの方法は、アンテナビームの解像限界である(波長/アンテナ開口径)よりも近接した角度の複数波を分離測角できることから、超分解能測角アルゴリズムと言われている。
【0006】
上述したように、超分解能測角は、複雑な信号処理を行うアルゴリズムであるが、基本的には2素子(或いは複数の素子対)間における受信信号(エコー)の位相差を用いて受信信号(エコー)の到来方向を導出する、いわゆる位相差方探の原理に基づいてターゲット方位の計測を実現する。(例えば、非特許文献1参照)
【0007】
次に図14を用いて位相差方探の原理を示す。
アンテナ素子RX1−1、RX2−1が2個で、素子間隔がdのアレーアンテナにおいて、アンテナに対し方向θからの到来波s(t)が入射され、それぞれのアンテナ素子に受信信号r(t)、r(t)が得られる場合を簡略化して考える。
受信信号r(t)、r(t)は到来波s(t)に対し、それぞれ0、θの位相をもってアンテナ素子に入力されるとする(r(t)、r(t)の位相差がθ)。このとき2個のアンテナ素子に入力される受信信号r(t)、r(t)はノイズを無視して次式となる。
(t)=s(t)
(t)=ejφ1(t) (1)
【0008】
式(1)から受信信号r(t)とr(t)の関係を導出すると以下となる。
(t)=r(t)ejφ1 (2)
したがって計測した受信信号r(t)、r(t)の位相差φは、以下で求める事が出来る。
【数1】

また、図1から位相差φは素子間隔dと以下の関係にある。λは波長である。
【数2】

【0009】
この式(4)をθについて解くと以下となる。
【数3】

式(5)に式(3)を代入すると到来角θが求められる。つまり受信信号r(t
)とr(t)との位相差φから到来角θを得る事が出来る。
ただし、式(4)或いは式(5)において、位相差φと、位相差φによって導出される到来角θとの1対1関係は、位相差φが以下の範囲内にある場合においてのみ成立する。
−π≦φ≦+π (6)

【0010】
すなわち、位相差φが式(6)の範囲を逸脱する場合においては、角度の折り返しが発生することとなり、計測した位相差φに対して唯1つ導出されるべき到来角θの値は一意に求められなくなり、誤測角を引き起こす要因となる。(以降、これを角度アンビギュイティと呼ぶ。)
したがって、上述した様な位相差方探の原理に基づきターゲット方位を計測するレーダ装置においては、角度アンビギュイティが発生しない測角範囲(以降、有効な測角範囲と呼ぶ。)を±θ以上確保するために、式(4)および式(6)を同時に満足させる必要があり、素子間隔dとして以下を満足しなくてはならない。
【数4】

また、式(7)より、より広い角度範囲を有効な測角範囲とするためには、より狭い素子間隔が要求されることがわかる。
また、受信チャンネルとしての放射パターン(振幅、および位相の方位特性)をチャンネル間で偏りなく、均一にすることにより、より高精度にターゲット方位を計測することが可能となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】M.I.Skolnik, Introduction to Radar Systems, Third Ed., pp.222-224, McGraw-Hill, 2001.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述においては、測角に用いるチャンネルとしてRX1、RX2の2個チャンネルが、各々1個ずつの素子アンテナRX1−1、RX2−1から構成されている場合を例に位相差方探の原理を説明した。
また一方で、検知距離拡大などの要請から大規模アレーアンテナによりレーダ装置を構成する場合などにおいては、低コスト化の観点からより少ないチャンネル数により大規模アレーを構成するため、1個のチャンネルを複数の素子アンテナにより構成した所謂サブアレー構成により大規模アレーアンテナを実現することがある。これにより、レーダ装置は検知距離の拡大を実現することができる。
【0013】
しかしながら、1個の受信チャンネルを複数の素子アンテナから構成する場合においては、レーダ装置として検知距離の拡大を実現できることに引換え、前述した角度アンビギュイティの発生によって有効な測角範囲を狭めてしまうという課題が発生していた。
このような課題に関し、単純化した複数化の例として2素子のアンテナにより1個の受信チャンネルを構成する場合を例に図15を用いて以下に説明する。
図15において、2個の受信チャンネルRX1、RX2は、各々2個の素子アンテナから構成されており、それぞれの素子アンテナを端からRX1−1、RX1−2、RX2−1、RX2−2と定義する。また、素子アンテナRX1−1、RX1−2が受信した受信信号を合成することによりチャンネルRX1の受信信号r(t)が、素子アンテナRX2−1、RX2−2が受信した受信信号を合成することによりチャンネルRX2の受信信号r(t)がそれぞれ得られることとなる。
【0014】
この際、それぞれのチャンネル内で合成する2個の素子アンテナの受信信号は、アンテナ効率の観点から等振幅・等位相で合成されるため、それぞれのチャンネルにおける所謂位相中心(機構的なアンテナ中心ではなく、実効的な波源の位置)は、それぞれのチャンネルを構成する2個の素子アンテナの丁度中心に位置することとなる。したがって、チャンネルRX1、RX2の位相中心は、それぞれ素子アンテナRX1−1、RX1−2および素子アンテナRX2−1、RX2−2のアンテナ中心の丁度中央となる。
したがって、前述のように、隣接する素子アンテナを組み合わせて同一チャンネルとした場合には、有効な測角範囲を広く確保することを目的として全ての素子アンテナ間隔を機構的な最小間隔dで配置したとしても、実際の測角処理に用いるチャンネル間隔dは、機構的な最小間隔dの2倍を要してしまうこととなり、前述した角度アンビギュイティが発生し、レーダ装置としての有効な測角範囲を狭めてしまう結果となる。
【0015】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、検知距離の拡大を目的として複数の素子アンテナにより1チャンネルを構成する場合においても、角度アンビギュイティが発生し始める角度をレーダの視野角よりも可能な限り広角へと追いやり、レーダとして有効な測角範囲を最大限確保することを目的とするレーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明のレーダ装置は、送信アンテナと、n個(nは3以上)の素子アンテナを用いて複数の受信チャンネルを構成している受信アンテナとを有し、送信アンテナから電波を送信してターゲットからの反射波を受信アンテナによって受信し、同一の受信チャンネルとして見なした複数の素子アンテナの受信信号を合成して受信チャンネルとしての受信信号を求め、得られた受信信号から導出される受信チャンネル間の位相差を用いて、ターゲットの方位を計測するレーダ装置において、受信チャンネルのうち少なくとも1個の受信チャンネルが、互いに隣り合わない位置関係に配置された複数の素子アンテナから構成され、受信アンテナを構成するn個の素子アンテナが不等間隔で配置されているものである。
【発明の効果】
【0017】
この発明によるレーダ装置では、検知距離の拡大を目的として複数の素子アンテナにより1チャンネルを構成する場合においても、角度アンビギュイティが発生し始める角度をレーダの視野角よりも可能な限り広角へと追いやり、レーダとして有効な測角範囲を最大限確保することができる。
また、複数の素子アンテナによりサブアレー化した受信アンテナを用いているため、チャンネル数を削減することができ、より低コストに検知距離を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明におけるアンテナの基本構成を説明する概念図である。
【図2】この発明の実施形態1におけるレーダ装置の構成図である。
【図3】この発明の実施形態1において、受信アンテナの放射パターンを示すグラフ図である。
【図4】この発明の実施形態1において、スキャン面と直交する方向に配置した素子アンテナの構成を示す概念図である。
【図5】この発明の実施形態1において、信号合成を実現するための具体的な構造を示す(a)上面図と(b)斜視図である。
【図6】この発明の実施形態2において、受信チャンネルを3チャンネルで構成した場合の概念図である。
【図7】この発明の実施形態2において、信号合成を実現するための具体的な構造を示す(a)上面図、(b)側面図、(c)斜視図である。
【図8】この発明の実施形態3において、受信用素子アンテナの配置を示す概念図である。
【図9】この発明の実施形態4において、受信用素子アンテナの配置を示す概念図である。
【図10】この発明の実施形態5において、受信用素子アンテナの配置を示す概念図である。
【図11】この発明の実施形態6において、受信用素子アンテナの配置を示す概念図である。
【図12】この発明の実施形態7において、受信用素子アンテナの配置を示す概念図である。
【図13】この発明の実施形態8において、受信用素子アンテナの配置を示す概念図である。
【図14】位相差方探の原理を説明する概念図である。
【図15】従来例の課題を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の基本構成
この発明に係るレーダ装置において、発明の基本構成を図1を用いて説明する。また、図1においては、従来例と同様に簡単のため、RX1、RX2の全2チャンネルが、各々2個ずつの素子アンテナから構成されている場合を例にとり説明する。
図1に示すように、この発明は4つの素子アンテナRX1−1、RX1−2、RX2−1、RX2−2が等間隔で配置されている構成は従来例と同じであるが、これら素子アンテナをチャンネル定義する際の組み合わせ方法が従来例とは異なる。
即ち、この発明に係るレーダ装置では、従来例のように隣り合う素子アンテナ同士を1個のチャンネルとして組み合わせるのではなく、1素子離れで(互いに隣り合わない位置関係)配置された素子アンテナRX1−1、RX1−2を一方の同一チャンネルRX1として、また1素子離れで配置された素子アンテナRX2−1、RX2−2を他方の同一チャンネルRX2として定義し、それぞれの素子アンテナが受信した受信信号を合成することにより構成される。
【0020】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1におけるレーダ装置を図2〜図5に基づいて説明する。
図2はこの発明の実施の形態1におけるレーダ装置の構成図を示し、電圧制御発振器VCO201からの信号はカプラ202に入力され、カプラ202からの一方の出力はアンプ203を介して送信アンテナ204に供給される。
送信アンテナ204から電波を送信してターゲットからの反射波を受信アンテナ205によって受信する。受信アンテナ205は、図1で説明したように、4つの素子アンテナRX1−1、RX1−2、RX2−1、RX2−2が等間隔dで配置されて構成されている。互いに隣り合わない位置関係に配置された複数の素子アンテナRX1−1、RX1−2からのそれぞれの出力は合成回路206で合成され、1つの受信チャンネルRX1を構成している。また互いに隣り合わない位置関係に配置された他の複数の素子アンテナRX2−1、RX2−2からのそれぞれの出力は合成回路207で合成され、もう1つの受信チャンネルRX2を構成している。
【0021】
カプラ202からの他方の出力はアンプ208を介してローカル2分配器209に供給される。ローカル2分配器209からの一方の出力と、合成回路206からの出力はRX1用ミキサ210でミキシングされ、ビート信号を出力する。また、ローカル2分配器209からの他方の出力と、合成回路207からの出力はRX2用ミキサ211でミキシングされ、ビート信号を出力する。RX1用ミキサ210およびRX2用ミキサ211で得られた2個のビート信号はチャンネルごとに設けられたA/D変換器212に入力されて、2個のデジタル信号に変換され、それぞれ信号処理回路213に入力される。信号処理回路213では、デジタル信号をDBF合成(位相回転後に積算)することによってレーダ装置としてのターゲット検知覆域を得ると共に、それぞれの受信チャンネル間の位相差を用いてターゲット方位を計測する。
【0022】
次に図2を用いてレーダ装置の送信および受信動作について説明する。
最初に信号処理回路213は時間軸上で三角波状に変化する信号を生成し、これを電圧制御発振器(以下、VCO)201に印加する。次に、VCO201は印加された電圧に応じて、周波数が時間的に変化する周波数変調連続波(以下、FMCW波)を生成し、カプラ202へと出力する。
そして、カプラ202は入力されたFMCW波の一部を送信信号として、アンプ203
を介して送信アンテナ204へと入力する一方で、カプラ202は残りの電力を受信用ローカル信号として、アンプ208を介してローカル2分配器209へと入力する。送信アンテナ204は、入力された送信信号を送信波として空間に放射する。
【0023】
送信アンテナ204から放射された電波は、ターゲットにより反射した後、ターゲットまでの距離に応じた遅延時間を経て、4個の素子アンテナにより構成された受信アンテナ205によりエコーとして受信される。
受信用の4個の素子アンテナは、端から順番にRX1−1、RX2−1、RX1−2、RX2−2と定義されている。互いに隣り合わない位置関係の素子アンテナRX1−1、素子アンテナRX1−2により受信された受信信号は、合成回路206を用いて受信チャンネルRX1として、また互いに隣り合わない位置関係の素子アンテナRX2−1、素子アンテナRX2−2により受信された受信信号は、合成回路207を用いて受信チャンネルRX2としてそれぞれ合成され、各受信チャンネルにおいて1個ずつの信号として合計2個のチャンネルの受信信号が受信される。
【0024】
その後、2個のチャンネルRX1、RX2の受信信号は、LO2分配器209から出力される受信用ローカル信号と、チャンネルごとに設けられた2個のミキサ(RX1用ミキサ210、RX2用ミキサ211)によってそれぞれミキシングされて、2個のチャンネルのビート信号を出力する。得られた2個のビート信号はチャンネルごとに設けられたA/D変換器212に入力されて、2個のデジタル信号に変換され、それぞれ信号処理回路213に入力される。
この発明においては、信号処理回路213は、得られた受信信号をDBF合成(位相回転後に積算)することによってレーダ装置としてのターゲット検知覆域を得る。また、ターゲット方位の計測は背景技術で述べた通り、それぞれの受信チャンネル間の位相差を用いて実現する。
【0025】
次にこの発明におけるターゲット方位の計測時の優位性について、図2を用いて詳細に説明する。
図2において、素子アンテナRX1−1、素子アンテナRX1−2を1個の受信チャンネルRX1、素子アンテナRX2−1、素子アンテナRX2−2をもう1個の受信チャンネルRX2として見なし、それぞれの受信チャンネルにおいて受信信号が合成される。
すなわち、従来例のように隣接する素子アンテナ同士を同一チャンネルとして組み合わせるのではなく、1素子離れで互いに隣り合わない素子アンテナ同士(図2の場合、素子アンテナRX1−1とRX1−2、素子アンテナRX2−1とRX2−2)をそれぞれ同一チャンネルと見なして合成することによってターゲット方位の計測を行う。
【0026】
この際、それぞれの受信チャンネル内で合成する2個の素子アンテナの受信信号は、アンテナ効率の観点から等振幅・等位相で合成するため、それぞれの受信チャンネルにおける所謂位相中心(機構的なアンテナ中心ではなく、実効的な波源の位置)は、それぞれのチャンネルを構成する2個の素子アンテナの丁度中心に位置することとなる。さらに、各素子アンテナが等間隔で配置されているため、RX1チャンネル、RX2チャンネルにおける位相中心は、図2に示すように、それぞれ素子アンテナRX2−1、素子アンテナRX1−2の位置と等しくなる。
したがって、全ての素子アンテナ間隔を機構的な最小間隔dで配置している場合においては、測角処理において有効な測角範囲に影響するチャンネル間隔dを、機構的な最小間隔dまで狭めることが可能となる。
【0027】
これにより、検知距離の拡大を目的として、複数の素子アンテナ(この実施形態では2素子の場合を説明)により1チャンネルを構成する場合においても、前述した角度アンビギュイティが発生し始める角度をレーダの視野角よりも可能な限り広角へと追いやり、レ
ーダとして有効な測角範囲を最大限広く確保できる。
また、複数の素子アンテナによりサブアレー化した受信アンテナを用いることができ、より少ないチャンネル数で大きなアンテナ開口を得ることができるため、より低コストに検知距離を確保することができる。
また、この実施形態における受信アンテナの配置のように、それぞれの受信チャンネルにおける素子アンテナの配置(間隔)および素子アンテナの素子数が2つの受信チャンネルにおいて等しいため、受信チャンネルとしての放射パターン(振幅、および位相の方位特性)を2つのチャンネル間で偏りなく均一にすることができる。このため、位相差方探の原理に基づく測角において、ターゲット方位の計測を高精度に行うことができる。
【0028】
なお、車載レーダ用途などの先行車などの検知においては、検知性能の遠距離化、広角化が同時に要求されるため、この発明を適用する例としては好適である。例えば、先行車ターゲットを確実に検知することが要求される車載レーダにおいては、レーダの視野角内に存在するガードレールや並走車両などのクラッタを誤検知することは致命的であり、前述した角度アンビギュイティが発生し始める角度を、レーダの視野角よりも十分広角へと追いやることにより、システムの信頼性を向上させることができる。
ただし、それぞれのチャンネルを構成する素子アンテナの間隔については、2dとなり、機構的な最小間隔dまで狭めることができたとしても、1個の受信チャンネルにおいての放射パターンとしては誤検知の要因となり得るグレーティングローブが広角方向に発生してしまう場合があるが、この実施形態における素子アンテナ配置を用いれば、2チャンネルの放射パターンをDBF合成することによりグレーティングローブの発生を抑制することができる。
【0029】
上記したグレーティングローブの低減について、素子アンテナ間隔d=0.6λとした場合を例に図3を用いて説明する。図3は横軸にスキャン面角度[deg]、縦軸に放射強度[dB]を示した放射パターンを表しており、図3に示すように、受信チャンネルを構成する素子アンテナの間隔は、2d=1.2λとなるため、1チャンネル分の放射パターンとしては±50deg方向付近にグレーティングローブが発生する。しかしながら、この発明においては、チャンネル間隔をdに出来るため、チャンネル間隔dとした場合のアレーファクターとしては、各チャンネルにおけるグレーティングローブと同一の±50deg方向において放射レベルが著しく低い方向(以下、ヌル点)の放射パターンを発生させることができる。したがって、2チャンネルの放射パターンを間隔dでDBF合成した結果の放射パターンとしては、グレーティングローブは放射のヌル点で打ち消され、受信アンテナ全体としては、グレーティングローブの発生を抑制することができる。
【0030】
以上の説明においては、アレーアンテナを構成する素子アンテナの配置方向として、ターゲットをスキャンする面内に配置する素子アンテナに限定して述べてきたが、この実施形態の他の例として、2個の受信チャンネルのそれぞれにおいて、上記チャンネル方向とは直交する方向に複数個の素子アンテナを配置して、その方向のアンテナビームパターンを形成するための構成方法について図4を用いて説明する。
図4において、スキャン面内に配置させるべきチャンネル(以下、CHと表記)方向の素子アンテナは紙面の横方向に配置されており、CH方向とは直交する方向に配置される複数個の素子アンテナは、紙面の奥行き方向に配置されている。
つまり、この実施形態のように各受信チャンネルにおいて、2個の素子アンテナをCH方向に配置させる場合においては、1個のチャンネルについて、CH方向(紙面横方向)に2個、CH方向に直交する方向(紙面奥行き方向)にk個の素子アンテナ(#1〜#k)によって構成される2×k個の2次元アレーアンテナとなる。
したがって、それぞれのチャンネル内において、スキャン面とは直交する方向に配置されたk個の素子アンテナの合成回路と、スキャン面内に配置された素子アンテナの合成回路(206、207)の両方の合成手段が必要となる。
【0031】
この発明を適用させるレーダ装置として、例えば車載レーダに適用する場合においては、先行車などのターゲットのスキャンを行う水平面方向に2個の受信チャンネルを配置し、直交する垂直方向においては、検知距離拡大、ならびにグランドクラッタ抑圧を目的として、より多くの素子アンテナを配置する。また、サイドローブ低減などの所望のビームパターンを形成するために、必要に応じて垂直方向に配置された各素子アンテナに対して任意の励振分布を与えてもよい。
【0032】
次にこの実施形態において述べている、CH方向に配置した素子アンテナRX1−1、素子アンテナRX1−2が受信した受信信号をチャンネルRX1の受信信号として合成するための合成回路206、素子アンテナRX2−1、素子アンテナRX2−2が受信した受信信号をチャンネルRX2の受信信号として合成するための合成回路207について、実現するための具体的な構造例を説明する。
図4で説明したように、CH方向と直交する方向に配置された複数個の素子アンテナ(#1〜#k)の受信信号については、各素子アンテナ(RX1−1〜RX2−2)ごとに個別に合成されており、この発明とは全く独立した事象であるため、具体的な構造などの詳しい内容については省略する。
【0033】
図5は合成回路206、207を実現するための、例えば導波管回路を用いた具体的構造例を示す。図5において、(a)は上面図、(b)は斜視図である。
合成回路206、207は、図5(b)に示すとおり、共に導波管のT分岐回路、及びベンド回路を組み合わせることにより構成されている。
素子アンテナRX1−1、RX1−2の受信信号はRX1用合成回路206、素子アンテナRX2−1、RX2−2の受信信号はRX2用合成回路207によって、それぞれRX1チャンネル、RX2チャンネルの受信信号として合成される。
【0034】
各素子アンテナ(RX1−1〜RX2−2)の受信信号は、図5(b)で黒塗り矢印で示すように、それぞれアンテナ側から合成回路の層にまで伝送されて入力される。
ただし、図5(b)に示すように、2個のチャンネルで互いに逆方向に屈曲され、互いに対抗する向きに配置された合成回路(分岐構造)によってそれぞれのチャンネルにおいて信号が合成される。
このため、2チャンネル分の合成回路として見ると、合成すべき2個の線路によって互いを挟み込むような交互配置を形成している。上記したような交互配置により、それぞれのチャンネルの合成回路が機構的に干渉することを避けることができる。そして、逆方向に伝送されたあと、合成された2チャンネル分の受信信号は、それぞれRX1用ミキサ210、RX2用ミキサ211に出力され、レーダ装置のターゲットの測距および測角などの検知処理に用いられる。(図5(b)で黒色矢印で示す)
【0035】
以上のような合成回路構造を用いることによって、1素子離れで配置された素子アンテナ同士を同一チャンネルとして合成することができる。
この実施形態においては、対向して配置する合成回路(分岐回路)として、同一平面上に逆方向に配置する場合について説明したが、同一平面上に限定するものではなく、角度をつけて対向させてもよい。
また、この実施形態では導波管回路を例にして述べたが、導波管回路以外にも、マイクロストリップ線路などの平面回路や、或いは同軸線路によって実現してもよい。また、この実施形態においては、分岐回路を用いた構成で実現することについて述べたが、ハイブリッド回路やカプラなどの他の手段を用いて信号合成を実現しても良い。
【0036】
以上の実施の形態においては、2個の受信チャンネルを有した受信アンテナに関してのみ説明したが、送信アンテナも同様な構成にしてもよい。例えば、図4において、チャン
ネルCH方向とは直交する方向に複数個の素子アンテナを配置して所望のアンテナビームパターンを形成するようにしてもよい。
なお、図4を用いて説明したようなチャンネル方向と直交する方向に配置された素子アンテナが受信した信号の合成方法については、一般的な手段によって実現するため、詳しい内容については説明しない。
【0037】
また、送信アンテナ204は、図2において受信アンテナ205から所定の距離を隔てて設置しているが、送信アンテナ204の構成および設置位置に関してこの発明においては全く限定するものではなく、送信アンテナ204が複数チャンネルで構成されていても良いし、複数の素子アンテナにより構成されていてもよい。また、送信アンテナ204の設置位置は、受信アンテナ205の両側端部に設置されていても良いし、受信アンテナ205の中に包含されていてもよい。また、送信アンテナ204が送受兼用のアンテナとして構成されていてもよく、受信アンテナ205とともに測角に用いられても良い。
また、アレーアンテナを構成するための素子アンテナとしては、スロットアンテナ、マイクロストリップパッチアンテナのような平面アンテナでも良いし、ダイポールアンテナのような線状アンテナでも良いし、または、ホーンアンテナのような開口面アンテナを複数個配置する構成であっても良く、素子アンテナの種類によって適用範囲が限定されるものではない。
【0038】
以上説明した実施の形態1に記載の発明では、n個(nは3以上)の素子アンテナを用いて複数の受信チャンネルを構成している受信アンテナを設け、受信チャンネルのうち少なくとも1個の受信チャンネルが、互いに隣り合わない位置関係に配置された複数の素子アンテナから構成されていることによって、検知距離の拡大を目的として複数の素子アンテナにより1チャンネルを構成する場合においても、角度アンビギュイティが発生し始める角度をレーダの視野角よりも可能な限り広角へと追いやり、レーダとして有効な測角範囲を最大限確保することができる。
また、受信アンテナを構成するn個の素子アンテナが等間隔で配置されていることによって、アンテナの放射効率を向上させることにより、より検知距離を拡大することができる。
【0039】
また、同一の受信チャンネルとして見なされる素子アンテナの数が全ての受信チャンネルにわたって同数のm個で構成され、なおかつ、1個の受信チャンネルを構成する素子アンテナの間隔を全受信チャンネルに亘って等間隔とすることによって、受信チャンネル毎の放射パターンを均一化することができるため、より高い精度にてターゲット方位を計測することができる。例えば、受信アンテナが4個の素子アンテナで構成され(n=4)、1素子離れで等間隔に配置された2個(m=2)の素子アンテナがそれぞれ同一の受信チャンネルとして構成し、位相差方探に必要な最小限のチャンネル構成、アンテナ構成とすることにより、低コスト化、および小型化を実現することができる。
【0040】
さらに、同一の受信チャンネルとして見なした素子アンテナの受信信号をそれぞれ合成するために用いる合成回路は、その分岐構造が互いに対向する方向に配置されていることにより、それぞれのチャンネルの合成回路が機構的に干渉することを避けることができる。
【0041】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2におけるレーダ装置を図6、図7に基づいて説明する。
図6はこの発明の実施の形態2におけるレーダ装置の受信アンテナを構成する素子アンテナの配置と合成回路を示し、受信アンテナ205および合成回路206、207、214を備えている。これら受信アンテナおよび合成回路は図2における受信アンテナ205および合成回路206、207に相当するものである。
実施の形態1においては、単純化したモデルを用いて説明する為に、受信チャンネルはチャンネルRX1、RX2の2個のチャンネルで構成する場合について説明してきたが、実施の形態2の発明は3チャンネル以上の複数の受信チャンネルにより構成したものである。
【0042】
実施の形態2の発明として3チャンネルに適用する場合について図6を用いて説明する。図6に示すように、3個の受信チャンネルRX1、RX2、RX3はそれぞれ2個の受信用素子アンテナから構成されており、合計6つの受信用素子アンテナより構成されている。6つの受信用素子アンテナは、素子アンテナ間隔dを全受信チャンネルに亘って等間隔とし、端からRX1−1、RX2−1、RX3−1、RX1−2、RX2−2、RX3−2の順で定義する。そして2素子離れで互いに隣り合わない位置関係にある受信用の素子アンテナ群(素子アンテナRX1−1、RX1−2)、(素子アンテナRX2−1、RX2−2)、(素子アンテナRX3−1、RX3−2)を同一受信チャンネル(それぞれ、RX1、RX2、RX3)として組み合わせることによってターゲット方位の計測を行う。
【0043】
これにより、2チャンネルで構成した場合と同様、チャンネル間隔を機構的最小の素子間隔にまで狭めることが可能となり、レーダとして有効な測角範囲を最大限広く確保できるようになる。ただし、端から順番にチャンネルを定義するように述べたが、チャンネルの並びについては不問であり順番が入れ替わっていてもよい。例えば、受信チャンネルRX2がRX3と定義され、受信チャンネルRX3がRX1と定義されていてもよい。
したがって、iチャンネルの複数のチャンネルで構成した場合には、(i−1)素子離れで配置された受信用の素子アンテナ同士を同一チャンネルとして組み合わせればよい。
【0044】
また、図6で示した受信チャンネルを3チャンネルで構成する場合において、信号合成を実現するための合成回路の具体的構造例を図7に示す。図7(a)は上面図、図7(b)は側面図、図7(c)は斜視図を示す。
2チャンネルの場合の具体的構造例(図5)と構造上異なるのは、1チャンネルだけ他の2チャンネルとは合成を行う平面が異なることである。
図7において、チャンネルRX1、RX3については、図7(a)に示すように同一平面内で逆方向に信号を合成しているが、残りのチャンネルRX2については、図7(b)に示すように他の2チャンネルRX1、RX3とは異なる直交する面内で信号の合成を行っており、それぞれのチャンネルの合成回路が互いに干渉することを避けることが可能となる。
【0045】
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3におけるレーダ装置を図8に基づいて説明する。
図8はこの発明の実施の形態3におけるレーダ装置の受信アンテナを構成する素子アンテナの配置と合成回路を示している。
実施の形態1〜2においては、説明の単純化のため1個の受信チャンネルを2個の素子アンテナにより構成する場合に限定して説明してきたが、実施の形態3の発明は1個の受信チャンネルを3個以上の複数の素子アンテナにより構成したものである。
実施の形態3の発明として、4個の素子アンテナにより1個の受信チャンネルを構成する場合について説明する。
【0046】
図8に示すように、各々の受信チャンネルRX1、RX2を4個の素子アンテナで構成する場合には、8つの素子アンテナを端からRX1−1、RX2−1、RX1−2、RX2−2、RX1−3、RX2−3、RX1−4、RX2−4の順で定義し、8つの素子アンテナ間隔dを全受信チャンネルに亘って等間隔とする。そして1素子離れで互いに隣り合わない位置関係にある受信用の素子アンテナ群(素子アンテナRX1−1、RX1−2
、RX1−3、RX1−4)、(素子アンテナRX2−1、RX2−2、RX2−3、RX2−4)を同一チャンネル(それぞれ、RX1、RX2)と見なしてターゲット方位の計測を行う。
このように構成することにより、2個の素子アンテナにより構成した場合と同様、チャンネル間隔を機構的最小の素子間隔にまで狭めることが可能となり、レーダとして有効な測角範囲を最大限広く確保できる。参考までに、図8に受信チャンネルRX1、RX2における位相中心位置を示す。
【0047】
実施の形態4.
次に、この発明の実施の形態4におけるレーダ装置を図9に基づいて説明する。
図9はこの発明の実施の形態4におけるレーダ装置の受信アンテナを構成する素子アンテナの配置(この図9以降の図では合成回路の箇所は省略して示す)を示している。
実施の形態1〜3においては、受信用の全ての素子アンテナが等間隔で配置されている場合について述べてきたが、実施の形態4の発明は全ての素子アンテナが等間隔で配置されていなくても、この発明が適用できるようにしたものである。
【0048】
図9に示すように、全6個の素子アンテナで構成される場合において、素子アンテナの間隔として、間隔dと間隔d’の異なる距離の間隔が混在しているため、受信用の全ての素子アンテナは等間隔に配置されていないことになる。
しかしながら、素子アンテナは、端からRX1−1、RX2−1、RX1−2、RX2−2、RX1−3、RX2−3の順で定義し、1素子離れで互いに隣り合わないように配置された受信用の素子アンテナ群(素子アンテナRX1−1、RX1−2、RX1−3)、(素子アンテナRX2−1、RX2−2、RX2−3)をそれぞれ同一の受信チャンネル(それぞれ、RX1、RX2)と見なしてターゲット方位の計測を行う。
このように構成することにより、受信用の全ての素子アンテナが等間隔に配置されていない場合においても、チャンネル間隔を機構的最小の素子間隔にまで狭めることが可能となり、レーダとして有効な測角範囲を最大限広く確保できる。参考までに、図9に受信チャンネルRX1、RX2における位相中心位置を示す。
【0049】
なお、図9に示す実施形態4において、受信用の全ての素子アンテナが等間隔に配置されていなくても、同一の受信チャンネルRX1(RX2)の素子アンテナの数が全ての受信チャンネルに亘って同数のmで構成され、素子アンテナ間隔が間隔dと間隔d’の2つの異なる距離の場合は、同一の受信チャンネルRX1(RX2)の素子アンテナ間隔は(d+d’)となって、素子アンテナ間隔が等間隔となる。
【0050】
実施の形態5.
次に、この発明の実施の形態5におけるレーダ装置を図10に基づいて説明する。
図10はこの発明の実施の形態5におけるレーダ装置の受信アンテナを構成する素子アンテナの配置を示している。
実施の形態1〜4においては、同一の受信チャンネルとして見なされる素子アンテナが、等間隔で配置されており、なおかつ、同一の受信チャンネルとして見なされる素子アンテナの数が同一数で構成されている場合について述べてきたが、実施の形態5の発明は同一の受信チャンネルとして見なされる素子アンテナが等間隔に配置されておらず、なおかつ同一数で構成されていない場合においても、この発明が適用できるようにしたものである。
【0051】
図10において、全4個の受信用素子アンテナは等間隔に配置されているが、中央左側の素子アンテナについては、いずれの受信チャンネルとしても見なされない所謂ダミーの素子アンテナとして扱う。図10のように、素子アンテナは端からRX1−1、ダミー素子、RX2−1、RX1−2の順で定義し、互いに隣り合わないように配置された受信用
の素子アンテナ群(素子アンテナRX1−1、RX1−2)、(素子アンテナRX2−1)をそれぞれ同一の受信チャンネル(それぞれ、RX1、RX2)と見なしてターゲット方位の計測を行う。
すなわち、受信チャンネルRX1は素子間隔が3dの2個の素子アンテナRX1−1、RX1−2で構成され、受信チャンネルRX2は素子アンテナRX1−1から間隔2d、素子アンテRX1−2から間隔d離れた1個の素子アンテナRX2−1で構成されている。
【0052】
このように構成することにより、ダミーの素子アンテナが混在するなどして、同一の受信チャンネルとして見なされる素子アンテナを同数かつ等間隔に割り振ることができない場合においても、互いに隣り合わないように配置された素子アンテナを同一チャンネルとして見なすことにより、チャンネル間隔を機構的最小の素子間隔にまで狭めることが可能となり、レーダとして有効な測角範囲を最大限広く確保できる。
また、ダミー素子の代わりにRX1、RX2とは別の受信チャンネル(RX3)として見なしても同様の効果を得ることができる。また、この実施形態からも分かるように、単数の素子アンテナを1個の受信チャンネルとして見なす場合においても、同様の効果が得られることを示している。
【0053】
実施の形態6.
次に、この発明の実施の形態6におけるレーダ装置を図11に基づいて説明する。
図11はこの発明の実施の形態6におけるレーダ装置の受信アンテナを構成する素子アンテナの配置を示している。
この実施の形態6では、全ての素子アンテナの間隔が等間隔でなくて、なおかつ同一の受信チャンネルとして見なされる素子アンテナが等間隔に配置されておらず、なおかつ同一数で構成されていない場合においても、この発明が適用できるようにしたものである。
【0054】
図11に示すように、素子アンテナの間隔として、間隔dと間隔2dの異なる距離の間隔が混在しているため、受信用の全ての素子アンテナは等間隔に配置されていないことになる。さらに、同一の受信チャンネルとして見なされる素子アンテナが等間隔に配置されておらず、なおかつ同一数で構成されていない。
すなわち、受信チャンネルRX1は3つの素子アンテナRX1−1、RX1−2、RX1−3が間隔3dで配置され、受信チャンネルRX2は2つの素子アンテナRX2−1、RX2−2が間隔6dで配置され、受信チャンネルRX3は2つの素子アンテナRX3−1、RX3−2が間隔3dで配置されている。
【0055】
しかしながら、互いに隣り合わないように配置された受信用の素子アンテナ群(素子アンテナRX1−1、RX1−2、RX1−3)、(素子アンテナRX2−1、RX2−2)、(素子アンテナRX3−1、RX3−2)をそれぞれ同一の受信チャンネル(それぞれ、RX1、RX2、RX3)と見なしてターゲット方位の計測を行うことにより、この実施形態の場合においても、チャンネル間隔を機構的最小の素子間隔にまで狭めることが可能となり、レーダとして有効な測角範囲を最大限広く確保できる。参考までに、図11に受信チャンネルRX1、RX2、RX3における位相中心位置を示す。
【0056】
実施の形態7.
次に、この発明の実施の形態7におけるレーダ装置を図12に基づいて説明する。
図12はこの発明の実施の形態7におけるレーダ装置の受信アンテナを構成する素子アンテナの配置を示している。
この実施の形態7では、受信用の全ての素子アンテナが等間隔で配置されていなくてもこの発明が適用できる、実施の形態5とは別の例について説明する。
図12に示すアンテナ配置は、実施の形態1で示した4個の素子アンテナから構成され
るアンテナ群が、実施の形態1における素子アンテナ間隔dとは異なる間隔d’の距離をを離して2個設置されている。このため、素子アンテナの間隔として、間隔dと間隔d’の異なる距離の間隔が混在しているため、受信用の全ての素子アンテナは等間隔に配置されていない。
【0057】
しかしながら、実施の形態1と同様、それぞれのアンテナ群において1素子離れで互いに隣り合わない素子アンテナ同士、図12に示す例の場合は、素子アンテナRX1−1とRX1−2、素子アンテナRX2−1とRX2−2、素子アンテナRX3−1とRX3−2、素子アンテナRX4−1とRX4−2をそれぞれ同一チャンネル(それぞれ、RX1、RX2、RX3、RX4)と見なして合成し、4つの受信チャンネルでターゲット方位の計測を行なうことによって、それぞれのアンテナ群においてのチャンネル間隔を機構的最小の素子間隔にまで狭めることが可能となり、レーダとして有効な測角範囲を最大限広く確保できるようになる。参考までに、図12に受信チャンネルRX1、RX2、RX3、RX4における位相中心位置を示す。
【0058】
実施の形態8.
次に、この発明の実施の形態8におけるレーダ装置を図13に基づいて説明する。
図13はこの発明の実施の形態8におけるレーダ装置の受信アンテナを構成する素子アンテナの配置を示している。
この実施の形態8では、受信用の素子アンテナにおいて同一の受信チャンネルとして見なされる素子アンテナが連続的に配置されている場合においても、この発明が適用できるようにしたものである。
【0059】
図13に示すアンテナ配置は、実施の形態1で示した4個の素子アンテナから構成されるアンテナ群において、それぞれの素子アンテナが同一の受信チャンネルと見なされ連続的に2個配置された素子アンテナにより構成されたアンテナ群に置き換えられている。
すなわち、受信チャンネルRX1は連続的に2個配置された素子アンテナ(RX1−1とRX1−2)と連続的に2個配置された素子アンテナ(RX1−3とRX1−4)とが隣り合わない位置関係の素子アンテナで構成されている。またもう一方の受信チャンネルRX2は連続的に2個配置された素子アンテナ(RX2−1とRX2−2)と連続的に2個配置された素子アンテナ(RX2−3とRX2−4)とが隣り合わない位置関係の素子アンテナで構成されている。
また、この実施形態においては、全ての素子アンテナがアンテナ群に置き換えるとしたが、一部の素子アンテナを置き換えるようにしてもよいし、置き換える箇所ごとに素子アンテナの個数が異なっていても良い。
【0060】
このように、互いに隣り合わない位置関係に配置された複数の素子アンテナで構成された同一受信チャンネルの素子アンテナのうち、少なくとも一方の素子アンテナが互いに隣接して連続配置された2個以上の素子アンテナ群で構成することにより、アンテナ群同士は互いに隣り合わない位置関係にあるため、チャンネル間隔を極力狭めることが出来るとともに、レーダとして有効な測角範囲を最大限広く確保できるようになる。
また、受信アンテナを構成する一部または全ての素子アンテナが、同一受信チャンネルの素子アンテナが連続的に配置された素子アンテナ群に置き換えられたことにより、アンテナ開口を更に増大させることができるため、さらに検知距離を拡大することができる。
参考までに、図13に2つの受信チャンネルRX1、RX2における位相中心位置を示す。
【産業上の利用可能性】
【0061】
この発明は、車載用レーダ装置における先行車ターゲットの位置、速度を計測するためのレーダ装置に利用できる。車載用レーダ装置に利用した場合、遠距離の測距性能を保持
しつつ、ガードレールや並走車両などのクラッタの誤検知を抑制した信頼性の高いレーダ装置を得ることができる。
【符号の説明】
【0062】
201… 電圧制御発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator)
202… カプラ
203… アンプ
204… 送信アンテナ
205… 受信アンテナ(RX1−1〜RX1−4、RX2−1〜RX2−4)
206… RX1用合成回路
207… RX2用合成回路
208… アンプ
209… LO2分配器
210… RX1用ミキサ
211… RX2用ミキサ
212… アナログデジタル(A/D:Analog to Digital)変換器
213… 信号処理回路
RX1〜RX4… 受信チャンネル
RX1−1〜RX1−4、RX2−1〜RX2−4、RX3−1〜RX3−2
RX4−1〜RX4−2 … 素子アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信アンテナと、n個(nは3以上)の素子アンテナを用いて複数の受信チャンネルを構成している受信アンテナとを有し、前記送信アンテナから電波を送信してターゲットからの反射波を前記受信アンテナによって受信し、同一の受信チャンネルとして見なした前記複数の素子アンテナの受信信号を合成して前記受信チャンネルとしての受信信号を求め、得られた受信信号から導出される受信チャンネル間の位相差を用いて、前記ターゲットの方位を計測するレーダ装置において、前記受信チャンネルのうち少なくとも1個の受信チャンネルが、互いに隣り合わない位置関係に配置された複数の素子アンテナから構成され、前記受信アンテナを構成する前記n個の素子アンテナが不等間隔で配置されていることを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーダ装置において、同一の受信チャンネルとして見なされる素子アンテナが等間隔で配置されておらず、且つ、同一数で構成されていないことを特徴とするレーダ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のレーダ装置において、同一の受信チャンネルとして見なされる素子アンテナの数が全ての受信チャンネルに亘って同数で構成され、且つ、1個の受信チャンネルを構成する素子アンテナの間隔を全受信チャンネルに亘って等間隔とすることを特徴とするレーダ装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーダ装置において、互いに隣り合わない位置関係に配置された複数の素子アンテナで構成された同一受信チャンネルの素子アンテナのうち、少なくとも一方の素子アンテナが互いに隣接して連続配置された2個以上の素子アンテナ群で構成されたことを特徴とするレーダ装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のレーダ装置において、前記受信アンテナが2個の受信チャンネルにより構成されており、同一の受信チャンネルとして見なした素子アンテナの受信信号をそれぞれ合成するために用いる合成回路の分岐構造が互いに対向する方向に配置されていることを特徴とするレーダ装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のレーダ装置において、前記受信アンテナが3個の受信チャンネルにより構成されており、同一の受信チャンネルとして見なした素子アンテナの受信信号をそれぞれ合成するために用いる合成回路の分岐構造が、互いに直交する方向に配置されていることを特徴とするレーダ装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のレーダ装置を、車載用レーダ装置に適用したことを特徴とするレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−168194(P2012−168194A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−108145(P2012−108145)
【出願日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【分割の表示】特願2010−93927(P2010−93927)の分割
【原出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】