説明

レーダ装置

【課題】レーダ装置において、ターゲットからの反射波に含まれるドップラスペクトルの広がりに拘わらず、簡易な構成を用いてコヒーレント積分利得あるいはノンコヒーレント利得を高める。
【解決手段】レーダ送信部は、送信信号を高周波送信信号に変換して送信アンテナから送信する。レーダ受信部は、複数の受信アンテナを用いて、ターゲットにより反射された反射波の到来方向を推定する。レーダ受信部は、受信信号と送信信号との相関値を基に、複数のドップラ周波数に応じた位相変動の補正量を用いてコヒーレント積分する複数のアンテナ系統処理部と、複数のコヒーレント積分の各出力を基に、各受信アンテナの配置に起因する位相差情報である相関行列を、ドップラ周波数毎に生成する複数の相関行列生成部と、複数の相関行列生成部の出力を加算する加算部と、加算部の出力を基に、反射波の到来方向を推定する到来方向推定部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターゲットに反射された反射波のパルス信号をアンテナにより受信してターゲットを検出する、パルス信号を用いたレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置は、測定地点から電波を空間に放射し、ターゲットに反射された反射波のパルス信号を受信して、測定地点とターゲットとの距離、方向のうち、少なくとも1つ以上を測定する。特に近年、マイクロ波又はミリ波を含む波長の短い電波を用いた高分解能な測定によって、自動車及び歩行者を含めてターゲットとして検出可能なレーダ装置の開発が進められている。
【0003】
レーダ装置は、近距離に存在するターゲットと遠距離に存在するターゲットとからの反射波が混合された信号を受信することがある。特に、近距離に存在するターゲットからの反射波の信号によってレンジサイドローブが生じる場合、レンジサイドローブと遠距離に存在するターゲットからの反射波の信号のメインローブとが混在し、レーダ装置では、遠距離に存在するターゲットの検出精度が劣化する。
【0004】
従って、複数のターゲットに対して高分解能な測定が要求されるパルス信号を用いたレーダ装置には、低いレンジサイドローブレベルとなる自己相関特性(以下、「低レンジサイドローブ特性」という)を有するパルス波又はパルス変調波の送信が要求される。
【0005】
また、レーダ装置は、測定地点から同じ距離に自動車と歩行者とが存在する場合、レーダ反射断面積(RCS: Radar cross section)の異なる自動車と歩行者とからの各反射波の信号が混合された信号を受信する。一般的な歩行者のレーダ反射断面積は、自動車のレーダ反射断面積に比べると低い。
【0006】
レーダ装置は、たとえ測定地点から同じ距離に、自動車と歩行者とが存在していても、自動車及び歩行者からの反射波の信号を適正に受信することが要求される。なお、ターゲットの距離又は種別により、受信信号レベルとなる反射波の信号は変化する。レーダ装置は、様々な受信信号レベルとなる反射波の信号を受信可能な受信ダイナミックレンジが要求される。
【0007】
従来のパルス圧縮を用いたレーダ装置は、送信周期Tにおいてパルス圧縮符号を繰り返して送信する場合、パルス圧縮処理により算出された相関値を加算して、ターゲットからの反射波の受信におけるSNR(signal to noise ratio)を改善することが知られている。なお、加算には、コヒーレント積分とノンコヒーレント積分(あるいはインコヒーレント積分とも呼ばれる)とがある。
【0008】
例えば、パルス圧縮処理により算出された相関値のうち、時間相関が高い期間(N×T)では、相関値のI成分及びQ成分毎にコヒーレント積分が可能である。パラメータTはパルス送信周期[秒]である。コヒーレント積分により、数式(1)に示す様に、受信SNR[dB]に対してコヒーレント積分利得G[dB]分の受信品質の改善が可能である。コヒーレント積分利得Gは、数式(2)に従って算出される。
【0009】
【数1】

【0010】
【数2】

【0011】
パラメータNは、コヒーレント積分数であり、ターゲットの想定最大移動速度に依存して設定される。従って、ターゲットの想定最大移動速度が大きいほど、ターゲットからの反射波の信号に含まれるドップラ周波数の変動が大きくなり、時間相関の高い期間が短くなる。コヒーレント積分数Nが小さい場合、数式(2)によってコヒーレント積分による利得Gが小さくなる。即ち、数式(1)において、コヒーレント積分によるSNRの向上効果が小さくなる。
【0012】
一方、ノンコヒーレント積分を用いた場合にも、パルス圧縮処理により算出された相関値の振幅或いは受信電力成分を加算することによって、数式(3)に示す様に、受信SNRの改善が可能である。パラメータGは、ノンコヒーレント積分による利得であり、数式(4)に従って算出される。
【0013】
【数3】

【0014】
【数4】

【0015】
パラメータNは、ノンコヒーレント積分数である。コヒーレント積分数Nとノンコヒーレント積分数Nとが同じ場合、数式(2)及び数式(4)により、コヒーレント積分はノンコヒーレント積分よりも利得向上の寄与度が大きい。但し、理想的なコヒーレント積分による利得を得るためには、コヒーレント積分される区間(時間)において、受信信号の位相成分が所定範囲内において一致する必要があり、コヒーレント積分の可能範囲が制約される。
【0016】
また、N回のパルス圧縮符号の送信区間(N×T)に対し、特定の離散時刻においてパルス圧縮処理されたN個の相関値を用いてフーリエ変換すると、フーリエ変換された周波数領域信号からターゲットからの反射波に含まれるドップラスペクトルを観測できる。また、従来のパルス圧縮を用いたレーダ装置は、ドップラスペクトル上のピークとなる周波数成分(以下、ピークドップラスペクトラムと呼ぶ)から、コヒーレント積分による利得向上効果が得られた信号成分を検出できる。なお、フーリエ変換は、「FFT」(Fast Fourier Transform)又は「DFT」(Discrete Fourier Transform)のアルゴリズムが用いられる。以下、フーリエ変換をFFTと記載するが、DFTと置き換えても同様とする。
【0017】
更に、N回のパルス圧縮符号の送信区間(N×T)に対し、特定の離散時刻においてパルス圧縮処理されたN個の相関値を用いたFFTによるフーリエ変換の処理を、「FFTによるコヒーレント積分」と記載する。
【0018】
従来のパルス圧縮を用いたレーダ装置は、ターゲットの移動に伴うドップラ周波数偏移による位相変動がターゲットからの反射波に含まれる場合、FFTによるコヒーレント積分によってドップラスペクトルのピークを検出できると、周波数偏移による位相変動に応じたコヒーレント積分が可能となる。
【0019】
ドップラスペクトルの広がり(ドップラスプレッド)が十分に小さい場合、FFTサイズに相当するコヒーレント積分区間に拘わらず、従来のパルス圧縮を用いたレーダ装置は、コヒーレント積分による利得向上効果(数式(1)参照)が得られる。特に、ドップラスペクトルが線スペクトルによって近似できる場合に、従来のパルス圧縮を用いたレーダ装置は、FFTによるコヒーレント積分数Nに対して、数式(5)に示すコヒーレント積分効果による利得G[dB]が得られる。
【0020】
【数5】

【0021】
従来のパルス圧縮を用いたレーダ装置では、数式(5)に示すような理想的なコヒーレント積分利得が得られるためには、ターゲットからの反射波に含まれる位相変動に応じたドップラスプレッドδが十分に小さいことが必要となる。つまり、従来のパルス圧縮を用いたレーダ装置は、ターゲットからの反射波に含まれる位相変動に応じたドップラスプレッドδが大きくなるにつれて、コヒーレント積分利得が制約される。
【0022】
図17(a)は、FFT後のドップラスプレッドに応じたドップラスペクトル特性を示す。横軸は周波数であり、縦軸はドップラスペクトルである。図17(b)は、ドップラスプレッドに応じた、FFTサイズに相当するコヒーレント積分回数(積分区間)に対するコヒーレント積分利得の特性を示す。横軸はログスケールによるコヒーレント積分回数を表し、縦軸はコヒーレント積分利得を示す。
【0023】
図17(b)に示す様に、ドップラスプレッドδが大きい場合には、コヒーレント積分利得の飽和領域の開始点がコヒーレント積分回数Aとなる。ドップラスプレッドδが小さい場合には、コヒーレント積分利得の飽和領域の開始点がコヒーレント積分回数Bとなる。従って、ドップラスプレッドδが大きくなるにつれて、FFTによるコヒーレント積分利得が飽和する領域の開始点のコヒーレント積分回数は、小さくなる。
【0024】
上記のように、従来のパルス圧縮を用いたレーダ装置は、ドップラスプレッドδが大きくコヒーレント積分回数を増加してもコヒーレント積分利得が早く飽和する場合、コヒーレント積分とノンコヒーレント積分を併用し、ノンコヒーレント積分回数を増加する方がSNRの改善量を増加できる。
【0025】
ここで、ターゲットからの反射波に含まれるドップラスプレッドは、ターゲットが存在する場所の周囲に反射物が多い場合、又はターゲット自身が多くの散乱点を有する場合により大きな広がりを有する。また、ターゲットからの反射波に含まれるドップラスプレッドは、送信アンテナ又は受信アンテナの指向性が広くなるにつれて大きな広がりを有する傾向をもつ。
【0026】
従来のパルス圧縮を用いたレーダ装置では、測位対象とするターゲットからの反射波が、ドップラスプレッドが大きいターゲットから小さいターゲットまでを含み、ドップラスプレッドに比較的幅がある場合に、FFTによるコヒーレント積分回数Nを固定値として設定すると以下のような課題があった。
【0027】
ドップラスプレッドが大きいターゲットの測位を基準にした場合、コヒーレント積分数をノンコヒーレント積分数よりも小さく設定すると、ドップラスプレッドが小さいターゲットの測位に対して本来得られるコヒーレント積分利得を享受することが困難になる。
【0028】
逆に、ドップラスプレッドが小さいターゲットの測位を基準にした場合、コヒーレント積分数をノンコヒーレント積分数よりも大きく設定すると、ドップラスプレッドが大きいターゲットの測位に対して、コヒーレント積分利得が飽和する影響によって(図17(b)参照)、十分なSNR改善量が得られなくなる。
【0029】
この課題に関連して、例えば特許文献1に示すレーダ装置が知られている。レーダ装置は、パルス幅によってレンジゲート幅が決定される複数個のレンジゲートを備え、各レンジゲートに対し、複数個のコヒーレント積分器、複数個の検波器、複数個のノンコヒーレント積分器、及び複数個のスレッショルド検出器をそれぞれ含む構成である。
【0030】
更に、レーダ装置は、複数個のコヒーレント積分器と複数個のノンコヒーレント積分器により、コヒーレント積分数とノンコヒーレント積分数との比が異なる複数の積分処理を行い、そして、積分処理された複数の信号を複数個のスレッショルド検出器により、所定のしきい値との比較によって、レンジ毎に測定ターゲットを検出する構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】特開平5−45449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
しかしながら、特許文献1のレーダ装置において、複数のアンテナ素子を用いて構成するアレーアンテナを用いて、受信したターゲットからの反射波の信号の位相差に応じて到来方向を推定すると、レーダ装置の回路規模が増大する。
【0033】
すなわち、レンジゲート毎の複数のコヒーレント積分器の出力は、ターゲットからの反射波の信号の位相情報が含まれるが、検波部において位相情報が除かれるため、レンジゲート毎の複数のコヒーレント積分器の出力にそれぞれ到来方向推定部を追加する構成が一例として考えられる。そのため、複数のコヒーレント積分器及びノンコヒーレント積分器の全ての組合せに対して到来方向推定処理を施す必要があり、レーダ装置の回路規模が増大する。
【0034】
別の一例として、レンジゲート毎の複数のスレッショルド検出器の後段に、それぞれ到来方向推定部を追加する構成が考えられる。各スレッショルド検出器によるスレッショルド判定の結果を用いた場合、スレッショルドに満たない信号に対する到来方向を推定する必要はない。しかし、受信信号が、複数の検出器のうち、どの検出器のスレッショルドを満たすかどうかは事前に判別困難である。このため、複数の各コヒーレント積分器の出力データをメモリに保存し、スレッショルド検出器の検出結果に基づいて到来方向を推定できる。この場合、所要のメモリ量が増大し、更に、到来方向の推定処理結果が得られるまでの処理遅延も増大する。
【0035】
本発明は、上述従来の事情に鑑みてなされたもので、ターゲットからの反射波に含まれるドップラスペクトルの広がりに拘わらず、簡易な構成を用いてコヒーレント積分利得あるいはノンコヒーレント利得を高めるレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0036】
本発明は、上述したレーダ装置であって、送信信号を高周波送信信号に変換し、前記高周波送信信号を送信アンテナから送信するレーダ送信部と、複数の受信アンテナを用いて、ターゲットにより反射された前記高周波送信信号である反射波を基に、前記反射波の到来方向を推定するレーダ受信部と、を含み、前記レーダ受信部は、受信信号と前記送信信号との相関値を基に、異なる複数のドップラ周波数に応じた位相変動の補正量を用いてコヒーレント積分する複数のアンテナ系統処理部と、複数の前記コヒーレント積分の各出力を基に、前記複数の受信アンテナの配置に起因する位相差情報である相関行列を、前記異なる複数のドップラ周波数毎に生成する複数の相関行列生成部と、前記複数の相関行列生成部の出力を、加算する加算部と、前記加算部の出力を基に、前記ターゲットからの前記反射波の到来方向を推定する到来方向推定部と、を有する。
【0037】
本発明は、上述したレーダ装置であって、送信信号を高周波送信信号に変換し、前記高周波送信信号を送信アンテナから送信するレーダ送信部と、複数の受信アンテナを用いて、ターゲットにより反射された前記高周波送信信号である反射波を基に、前記反射波の到来方向を推定するレーダ受信部と、を含み、前記レーダ受信部は、受信信号と前記送信信号との相関値を基に、異なる複数のドップラ周波数に応じた位相変動の補正量を用いて、第1の積分数及び第2の積分数のコヒーレント積分する複数のアンテナ系統処理部と、複数の前記第1の積分数及び第2の積分数のコヒーレント積分の各出力を基に、前記複数の受信アンテナの配置に起因する位相差情報である相関行列を、前記異なる複数のドップラ周波数毎に生成する複数の相関行列生成部と、前記複数の相関行列生成部の出力を、前記異なる複数のドップラ周波数毎に加算する加算部と、前記加算部の出力を基に、前記ターゲットからの前記反射波の到来方向を推定する到来方向推定部と、を有する。
【0038】
本発明は、上述したレーダ装置であって、送信信号を高周波送信信号に変換し、前記高周波送信信号を送信アンテナから送信するレーダ送信部と、複数の受信アンテナを用いて、ターゲットにより反射された前記高周波送信信号である反射波を基に、前記反射波の到来方向を推定するレーダ受信部と、を含み、前記レーダ受信部は、受信信号と前記送信信号との相関値を基に、異なる複数のドップラ周波数に応じた位相変動の補正量を用いてコヒーレント積分する複数のアンテナ系統処理部と、複数の前記コヒーレント積分の各出力を基に、前記複数の受信アンテナの配置に起因する位相差情報である相関行列を、前記異なる複数のドップラ周波数毎に生成する複数の相関行列生成部と、前記複数のうちいずれかの前記相関行列生成部の出力を基に、コヒーレント積分利得が最大のドップラ周波数を含む所定の周波数範囲におけるドップラスプレッドを検出するピークドップラ周波数検出部と、前記ドップラスプレッドを基に、前記生成された各相関行列のうち前記コヒーレント積分利得が最大のドップラ周波数における相関行列を選択する出力選択部と、前記出力選択部の出力を基に、前記ターゲットからの反射波の前記到来方向を推定する到来方向推定部と、を有する。
【0039】
本発明は、上述したレーダ装置であって、送信信号を高周波送信信号に変換し、前記高周波送信信号を送信アンテナから送信するレーダ送信部と、ターゲットにより反射された前記高周波送信信号である反射波を基に、前記ターゲットとの距離を推定するレーダ受信部と、を含み、前記レーダ受信部は、受信信号と前記送信信号との相関値を基に、異なる複数のドップラ周波数に応じた位相変動の補正量を用いてコヒーレント積分するアンテナ系統処理部と、前記コヒーレント積分の各出力を用いて、前記複数のドップラ周波数毎にノンコヒーレント積分する複数のノンコヒーレント積分部と、前記複数のノンコヒーレント積分部の出力を、加算する加算部と、前記加算部の出力を基に、前記ターゲットまでの距離を推定する距離推定部と、を有する。
【0040】
本発明は、上述したレーダ装置であって、送信信号を高周波送信信号に変換し、前記高周波送信信号を送信アンテナから送信するレーダ送信部と、ターゲットにより反射された前記高周波送信信号である反射波を基に、前記ターゲットとの距離を推定するレーダ受信部と、を含み、前記レーダ受信部は、受信信号と前記送信信号との相関値を基に、異なる複数のドップラ周波数に応じた位相変動の補正量を用いて第1の積分数及び第2の積分数のコヒーレント積分するアンテナ系統処理部と、前記第1の積分数及び第2の前記コヒーレント積分の各出力を用いて、前記複数のドップラ周波数毎にノンコヒーレント積分する複数のノンコヒーレント積分部と、前記複数のノンコヒーレント積分部の出力を、前記異なる複数のドップラ周波数毎に加算する加算部と、前記加算部の出力を基に、前記ターゲットまでの距離を推定する距離推定部と、を有する。
【0041】
本発明は、上述したレーダ装置であって、送信信号を高周波送信信号に変換し、前記高周波送信信号を送信アンテナから送信するレーダ送信部と、ターゲットにより反射された前記高周波送信信号である反射波を基に、前記ターゲットとの距離を推定するレーダ受信部と、を含み、前記レーダ受信部は、受信信号と前記送信信号との相関値を基に、異なる複数のドップラ周波数に応じた位相変動の補正量を用いてコヒーレント積分するアンテナ系統処理部と、前記コヒーレント積分の各出力を用いて、前記複数のドップラ周波数毎にノンコヒーレント積分する複数のノンコヒーレント積分部と、前記複数のうちいずれかのノンコヒーレント積分部の出力を基に、コヒーレント積分利得が最大のドップラ周波数を含む所定範囲のドップラスプレッドを検出するピークドップラ周波数/ドップラスプレッド検出部と、前記ドップラスプレッドを基に、前記生成された各ノンコヒーレント積分の各出力のうち前記コヒーレント積分利得が最大のドップラ周波数に応じた前記ノンコヒーレント積分の出力を選択する出力選択部と、前記出力選択部の出力を基に、前記ターゲットとの距離を推定する距離推定部と、を有する。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、ターゲットからの反射波に含まれるドップラスペクトルの広がりに拘わらず、コヒーレント積分利得を簡易な構成を用いて高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】第1の実施形態のレーダ装置の内部構成を簡略に示すブロック図
【図2】第1の実施形態のレーダ装置の内部構成を詳細に示すブロック図
【図3】高周波送信信号の送信区間と送信周期との関係を示す説明図
【図4】送信信号生成部の他の内部構成を詳細に示すブロック図
【図5】高周波送信信号の送信区間と送信周期と測定範囲との関係を示す説明図
【図6】第1の実施形態の変形例1のレーダ装置の内部構成を詳細に示すブロック図
【図7】第1の実施形態の変形例2のレーダ装置の内部構成を詳細に示すブロック図
【図8】第1の実施形態の変形例3のレーダ装置の内部構成を詳細に示すブロック図
【図9】第2の実施形態のレーダ装置の内部構成を簡略に示すブロック図
【図10】第2の実施形態のレーダ装置の内部構成を詳細に示すブロック図
【図11】第2の実施形態の変形例1のレーダ装置の内部構成を詳細に示すブロック図
【図12】第3の実施形態のレーダ装置の内部構成を簡略に示すブロック図
【図13】第3の実施形態のレーダ装置の内部構成を詳細に示すブロック図
【図14】第4の実施形態のレーダ装置の内部構成を簡略に示すブロック図
【図15】第4の実施形態のレーダ装置の内部構成を詳細に示すブロック図
【図16】第4の実施形態の変形例1のレーダ装置の内部構成を詳細に示すブロック図
【図17】(a)FFT後のドップラスプレッドに応じたドップラスペクトル特性を表した図、(b)ドップラスプレッドに応じた、FFTサイズに相当するコヒーレント積分回数(積分区間)に対するコヒーレント積分利得の特性を表した図
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明に係るレーダ装置の各実施形態を説明する前に、以下、後述の各実施形態の前提となる技術内容として、パルス圧縮処理、及び相補符号に関してそれぞれ簡単に説明する。
【0045】
(パルス圧縮処理)
先ず、パルス圧縮処理に関して説明する。例えば、上述した低レンジサイドローブ特性を有するパルス波又はパルス変調波として、Barker符号、M系列符号、相補符号の少なくとも1つを含むパルス圧縮符号を用いて高周波送信信号を送信するパルス圧縮レーダが知られている。
【0046】
パルス圧縮とは、まず、レーダ装置が上記のパルス圧縮符号を用いた複数のパルス信号をパルス変調又は位相変調して、等価的にパルス幅の広い信号を用いて送信する。その後、レーダ装置が、ターゲットによる反射波を受信した後の信号処理において、受信信号を復調して、送信に用いたパルス圧縮符号との相関を求めることによって、元のパルス幅の狭い信号に変換(圧縮)して相関値を算出することである。パルス圧縮によれば、受信電力を等価的に高め、ターゲットの探知距離を増大し、更に、探知距離に対する距離推定精度が向上する。
【0047】
(相補符号)
次に、相補符号に関して説明する。相補符号は、複数、例えば2つのペアとなる相補符号系列(a、b)を用いた符号である。相補符号は、一方の相補符号系列aと他方の相補符号系列bの各自己相関算出結果において、遅延時間τ[秒]を一致させた各自己相関算出結果の加算によって、レンジサイドローブがゼロとなる性質を有する。なお、パラメータnはn=1,2,…,Lである。パラメータLは、符号系列長又は単に符号長を示す。
【0048】
相補符号の生成方法は、例えば下記参考非特許文献1に開示されている。
(参考非特許文献1)BUDISIN, S. Z,「NEW COMPLEMENTARY PAIRS OF SEQUENCES」,Electron. Lett., 26,(13), pp.881−883(1990)
【0049】
相補符号系列(a,b)のうち、一方の相補符号系列aの自己相関値算出結果は、数式(6)に従って算出される。他方の相補符号系列bの自己相関値算出結果は、数式(7)に従って算出される。なお、パラメータRは自己相関値算出結果を示す。但し、n>L又はn<1では、相補符号系列a,bはゼロとする(すなわち、n>L又はn<1において、a=0、b=0)。なお、アスタリスク*は複素共役演算子を示す。
【0050】
【数6】

【0051】
【数7】

【0052】
数式(6)に従って算出された相補符号系列aの自己相関値算出結果Raa(τ)は、遅延時間(あるいはシフト時間)τがゼロであるとピークが発生し、遅延時間τがゼロ以外では、レンジサイドローブが存在する。同様に、数式(7)に従って算出された相補符号系列bの自己相関値算出結果Rbb(τ)は、遅延時間τがゼロであるとピークが発生し、遅延時間τがゼロ以外では、レンジサイドローブが存在する。
【0053】
これらの自己相関値算出結果(Raa(τ),Rbb(τ))の加算値は、遅延時間τがゼロであるとピークが発生し、遅延時間τがゼロ以外ではレンジサイドローブが存在せずにゼロになる。以下、遅延時間τがゼロであると発生するピークを「メインローブ」という。遅延時間τとメインローブとの関係を数式(8)に示す。
【0054】
【数8】

【0055】
相補符号では、上述した自己相関特性から、より短い符号長によってピークサイドローブレベルを低減できる。このため、短い符号長を用いる相補符号では、近距離に存在するターゲットと遠距離に存在するターゲットとからの反射波が混合された信号を受信しても、受信ダイナミックレンジを低減できる。
【0056】
また、相補符号は、符号長LのBarker符号、M系列符号を用いることによって、ピークサイドローブ比は20log10(1/L)[dB]によって与えられる。このため、相補符号は、符号長Lを長くすることによって、優れた低レンジサイドローブ特性が得られる。
【0057】
(本発明の各実施形態)
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0058】
以下の説明において、本発明に係るレーダ装置は、ターゲットからの反射波の信号を受信する複数の受信アンテナを有する。例えば4つの受信アンテナ(アレーアンテナ)を有する構成を例に示すがこれに限定されない。なお、4つの受信アンテナは4つの受信アンテナ素子であってもよい。
【0059】
(第1の実施形態)
第1の実施形態のレーダ装置1の構成及び動作について、図1〜図5を参照して説明する。図1は、第1の実施形態のレーダ装置1の内部構成を簡略に示すブロック図である。図2は、第1の実施形態のレーダ装置1の内部構成を詳細に示すブロック図である。図3は、高周波送信信号の送信区間Tと送信周期Tとの関係を示す説明図である。図4は、送信信号生成部4の他の内部構成を詳細に示すブロック図である。図5は、高周波送信信号の送信区間Tと送信周期Tと測定範囲との関係を示す説明図である。
【0060】
レーダ装置1は、レーダ送信部2により生成された高周波送信信号を送信アンテナAN1から送信(発射)する。レーダ装置1は、ターゲットにより反射された高周波送信信号である反射波の信号を、例えば図2に示す様な4つの受信アンテナAN2〜AN2−4(不図示、以下同様)において受信する。レーダ装置1は、各受信アンテナAN2〜AN2−4において受信された信号の信号処理によって、ターゲットの有無を検出する。
【0061】
なお、ターゲットはレーダ装置1が検出する対象の物体であり、例えば自動車又は人を含み、以下の各実施形態においても同様である。
【0062】
先ず、レーダ装置1の各部の構成について簡略に説明する。
【0063】
レーダ装置1は、図1に示す様に、レーダ送信部2及びレーダ受信部3を含む構成である。レーダ送信部2は、送信信号生成部4、及び、送信アンテナAN1と接続される送信RF部5を有する。レーダ送信部2及びレーダ受信部3は、基準信号発振器Loに接続され、基準信号発振器Loから信号が供給される。レーダ送信部2及びレーダ受信部3は同期して動作する。
【0064】
レーダ受信部3は、D個のアンテナ系統処理部11−1〜11−D、第1相関行列生成部25、第2相関行列生成部26、加算部27、及び到来方向推定部31を有する。パラメータDは2以上の自然数である。各アンテナ系統処理部は同様の構成を有し、以下、アンテナ系統処理部11−1を例示して説明する。
【0065】
アンテナ系統処理部11−1は、受信アンテナAN2と接続される受信RF部12、相関値算出部19、コヒーレント積分部20、及びFFT処理部21を少なくとも有する。
【0066】
(レーダ送信部)
次に、レーダ送信部2の各部の構成について、図2を参照して詳細に説明する。
【0067】
レーダ送信部2は、図2に示す様に、送信信号生成部4、及び、送信アンテナAN1が接続された送信RF部5を含む構成である。
【0068】
送信信号生成部4は、符号生成部6、変調部7、及びLPF(Low Pass Filter)8を含む構成である。なお、図2では、送信信号生成部4はLPF8を含む構成であるが、LPF8は、送信信号生成部4と独立してレーダ送信部2の中に構成されても良い。
【0069】
送信RF部5は、周波数変換部9、及び増幅器10を含む構成である。
【0070】
次に、レーダ送信部2の各部の動作について詳細に説明する。
【0071】
送信信号生成部4は、基準信号発振器Loにより生成されたリファレンス信号に基づいて、リファレンス信号を所定倍に逓倍した信号を生成する。送信信号生成部4の各部は、生成された信号に基づいて動作する。なお、基準信号発振器Loを用いてリファレンス信号を生成するリファレンス信号生成部は、図示しない。
【0072】
送信信号生成部4は、符号長Lの符号系列aの変調によって、数式(9)に示すベースバンドのパルス圧縮符号(送信信号)r(k、M)を周期的に生成する。ここで、パラメータn=1,・・・,Lであり、パラメータLは符号系列aの符号長を表す。パラメータjはj=−1を満たす虚数単位である。
【0073】
数式(9)に示されたベースバンドの送信信号r(k、M)は、第M番目の送信周期Tの離散時刻kにおける送信信号を示し、同相信号成分I(k、M)と、虚数単位jが乗算された直交信号成分Q(k、M)との加算結果によって表される。
【0074】
【数9】

【0075】
また、送信信号生成部4により生成される送信信号は、例えば各送信周期Tの送信区間T[秒]では、符号長Lの符号系列aに対して、1つのパルス符号あたりN[個]のサンプルが存在する。従って、図3の送信区間Tにおいては、N(=N×L)のサンプルが含まれる。また、各送信周期Tの非送信区間(T−T)[秒]では、ベースバンドの送信信号としてN[個]のサンプルが存在する。パラメータkは、離散時刻である。
【0076】
符号生成部6は、送信周期T毎に、符号長Lの符号系列aのパルス圧縮用の送信符号を生成する。パルス圧縮用の送信符号は、低レンジサイドローブ特性を有するために、例えば上述した相補符号のペアを構成する符号系列の他に、Barker符号系列又はM系列符号のいずれか1つを含む符号であることが好ましい。
【0077】
符号生成部6は、生成された符号系列aの送信符号を変調部7に出力する。以下、符号系列aの送信符号を、便宜的に送信符号aと記載する。
【0078】
なお、符号生成部6は、送信周期Tにおいて、送信符号aとして相補符号のペアを生成する場合、2つの送信周期(2T)を用いて、送信周期毎に交互にペアとなる符号P,Qをそれぞれ生成する。
【0079】
すなわち、第M番目の送信周期(T)において、パルス圧縮符号a(M)として符号Pを送信し、続く第(M+1)番目の送信周期(T)ではパルス圧縮符号a(M+1)として、符号Qを送信する。これ以後、第(M+2)番目以降の送信周期では、第M番目の送信周期及び第(M+1)の2つの送信周期を一つの単位として、同様に符号P,Qの順に繰り返して生成する。
【0080】
変調部7は、符号生成部6により出力された送信符号aを入力する。変調部7は、入力された送信符号aのパルス変調によって、数式(9)に示されるベースバンドの送信信号r(k,M)を生成する。なお、パルス変調とは、振幅変調、ASK(Amplitude Shift Keying))又は位相変調(PSK(Phase Shift Keying)である。また、変調部7は、LPF8を介して、生成された送信信号r(k,M)のうち、予め設定された制限帯域以下の送信信号r(k,M)を送信RF部5に出力する。
【0081】
送信RF部5は、基準信号発振器Loにより生成されたリファレンス信号に基づいて、リファレンス信号を所定倍数に逓倍した信号を生成する。
【0082】
なお、逓倍信号は、送信信号生成部4と送信RF部5とそれぞれ、異なる倍数に逓倍した信号でもよいし、同一の倍数に逓倍した信号でもよい。送信RF部5は、逓倍した信号に基づいて動作する。
【0083】
周波数変換部9は、送信信号生成部4により生成された送信信号r(k,M)をアップコンバートすることによって、キャリア周波数帯域の高周波送信信号を生成する。周波数変換部9は、生成された高周波送信信号を増幅器10に出力する。
【0084】
増幅器10は、周波数変換部9により出力された高周波送信信号のレベルを所定のレベルに増幅することによって、送信アンテナAN1に出力する。増幅された高周波送信信号は、送信アンテナAN1を介した空間への放射によって送信される。
【0085】
送信アンテナAN1は、送信RF部5により出力された高周波送信信号を空間に放射することによって送信する。図3に示す様に、高周波送信信号は、送信周期Tのうち送信区間Twの間に送信され、非送信区間(T−T)の間には送信されない。
【0086】
なお、送信RF部5、及び各アンテナ系統処理部11−1〜11−4の受信RF部12〜12−4(不図示、以下同様)には、基準信号発振器Loにより生成されたリファレンス信号が所定倍に逓倍された信号が共通に供給される。各送信RF部5及び受信RF部12〜12−4間は同期して動作する。
【0087】
なお、上述した符号生成部6を送信信号生成部4に設けず、図4に示す様に、送信信号生成部4により生成された送信符号aを予め記憶する送信符号記憶部CMを設けても良い。送信信号生成部4により相補符号が生成される場合、相補符号のペア、例えば送信周期毎に交互にペアとなる符号P,Qが送信符号記憶部CMに記憶されることが好ましい。
【0088】
なお、図4に示した送信符号記憶部CMは、第1の実施形態に限らず、後述の各実施形態にも同様に適用できる。図4に示す様に、送信信号生成部4は、送信符号記憶部CM、送信符号制御部CT、変調部7及びLPF8を含む構成である。
【0089】
図4において、送信符号制御部CTは、基準信号発振器Loにより出力されたリファレンス信号を所定倍に逓倍した信号に基づいて、送信周期T毎に、送信符号a(又は相補符号を構成する送信符号P,送信符号Q)を、送信符号記憶部CMから巡回的に読み出して変調部7に出力する。以降の動作は上述した変調部7及びLPF8と同様のため、動作の説明は省略する。
【0090】
(レーダ受信部)
次に、レーダ受信部3の各部の構成について、図2を参照して詳細に説明する。
【0091】
レーダ受信部3は、アンテナ系統処理部毎に1つの受信アンテナAN2が接続された複数のアンテナ系統処理部を有し、複数の受信アンテナを含むアレーアンテナを構成している。図2に示すレーダ受信部3は、アンテナ系統処理部の個数を示すパラメータDが4である。パラメータDは、図6〜図11における各レーダ受信部においても同様である。
【0092】
レーダ受信部3は、図2に示す様に、アレーアンテナを構成する受信アンテナAN2の本数に対応して設けられた4つのアンテナ系統処理部11−1〜11−4、第1相関行列生成部25、第2相関行列生成部26、加算部27、ピークドップラ周波数検出部28、速度推定部29、出力選択部30及び到来方向推定部31を含む構成である。
【0093】
以下の説明においては、4つのアンテナ系統処理部11−1〜11−4の各部の構成及び動作は同様であるため、アンテナ系統処理部11−1を例示して説明し、後述の各実施形態においても同様である。更に、図2に示すアンテナ系統処理部11−1の各部の符号に関して、例えば受信RF部12−1と記載せずに、単に受信RF部12と記載する。
【0094】
なお、図6〜図11に示す各アンテナ系統処理部の各部の符号の説明においても同様である。なお、必要に応じて、他のアンテナ系統処理部の各部の説明において、例えば受信RF部12−2と記載する。
【0095】
アンテナ系統処理部11−1は、受信アンテナAN2が接続された受信RF部12、及び信号処理部13を含む構成である。受信RF部12は、増幅器14、周波数変換部15及び直交検波部16を含む構成である。信号処理部13は、A/D変換部17,18、相関値算出部19、コヒーレント積分部20、FFT処理部21、係数生成部22、係数乗算部23及びバッファ部24を含む構成である。信号処理部13は、各送信周期Tを信号処理区間として周期的に動作する。
【0096】
次に、レーダ受信部3の各部の動作について詳細に説明する。
【0097】
受信アンテナAN2は、レーダ送信部2により送信された高周波送信信号がターゲットにより反射された反射波の信号を受信する。受信アンテナAN2により受信された受信信号は、受信RF部12に入力される。
【0098】
受信RF部12は、送信RF部5と同様に、基準信号発振器Loにより生成されたリファレンス信号に基づいて、リファレンス信号を所定倍に逓倍した信号を生成する。受信RF部12は、生成された信号に基づいて動作する。なお、基準信号発振器Loを用いてリファレンス信号を生成するリファレンス信号生成部は、図示しない。
【0099】
増幅器14は、受信アンテナAN2から出力された高周波帯域の受信信号のレベルが入力され、高周波帯域の受信信号のレベルを増幅して周波数変換部15に出力する。
【0100】
周波数変換部15は、増幅器14から出力された増幅された高周波帯域の受信信号が入力され、増幅された高周波帯域の受信信号を、ベースバンドにダウンコンバートし、ダウンコンバートされた受信信号を直交検波部16に出力する。
【0101】
直交検波部16は、周波数変換部15から出力されたベースバンドの受信信号が入力され、ベースバンドの受信信号を直交検波することによって、同相信号(In-phase signal)及び直交信号(Quadrate signal)を用いて構成されるベースバンドの受信信号を生成する。直交検波部16は、生成された受信信号のうち、同相信号をA/D変換部17に出力し、直交信号をA/D変換部18に出力する。
【0102】
A/D変換部17は、直交検波部16から出力されたベースバンドの同相信号が入力され、ベースバンドの同相信号を離散時刻k毎にサンプリングすることによって、アナログデータの同相信号をデジタルデータに変換する。A/D変換部17は、離散時刻k毎に変換されたデジタルデータの同相信号成分を、離散サンプル値として相関値算出部19に出力する。
【0103】
A/D変換部17は、ベースバンドの同相信号を、送信信号生成部4により生成された送信信号の1つのパルス幅(パルス時間)T(=T/L)あたりN[個]の割合によってサンプリングする。従って、A/D変換部17のサンプリングレートは、N/Tとなり、1パルス当たりのオーバーサンプル数はN[個]である。なお、A/D変換部17のサンプリングタイミングは、送信信号生成部4と同期して動作するために、送信信号生成部4と同様に、基準信号発振器Loにおいて生成されたリファレンス信号に基づいて、リファレンス信号を所定倍に逓倍した信号を基に生成する。
【0104】
なお、図2、図6及び図8〜図11では、A/D変換部17へのリファレンス信号の入力は省略している。
【0105】
A/D変換部18は、直交検波部16から出力されたベースバンドの直交信号が入力され、ベースバンドの直交信号を離散時刻k毎にサンプリングすることによって、アナログデータの直交信号をデジタルデータに変換する。A/D変換部18は、離散時刻k毎に変換されたデジタルデータの直交信号成分を、離散サンプル値として相関値算出部19に出力する。
【0106】
A/D変換部18は、ベースバンドの直交信号を、送信信号生成部4により生成された送信信号の1つのパルス幅(パルス時間)T(=T/L)あたりN[個]の割合によってサンプリングする。従って、A/D変換部18のサンプリングレートは、N/Tとなり、1パルス当たりのオーバーサンプル数はN[個]である。なお、A/D変換部18のサンプリングタイミングは、送信信号生成部4と同期して動作するために、送信信号生成部4と同様に、基準信号発振器Loにおいて生成されたリファレンス信号に基づいて、リファレンス信号を所定倍に逓倍した信号を基に生成する。
【0107】
なお、図2、図6及び図8〜図11では、A/D変換部18へのリファレンス信号の入力は省略している。
【0108】
なお、受信RF部12、信号処理部13は、異なる倍数の逓倍信号を用いてもよいし、同じ倍数の逓倍信号を用いてもよい。
【0109】
なお、以下では、A/D変換部17,18により変換された第M番目の送信周期Tの離散時刻kにおける受信信号は、同相信号成分I(k、M)及び直交信号成分Q(k、M)を用いて、数式(10)の複素信号x(k、M)として表す。以下の各実施形態においても同様である。ここで、jは虚数単位である。
【0110】
パラメータkは、変調部7がベースバンドの送信信号を生成するタイミングを表し、図5の第1段に示す様に、離散時刻k=0は、各送信周期Tの開始時点を表す。離散時刻k=Nは、各送信周期Tにおける送信区間Tの終了時点を表す。更に、離散時刻k=(N+N)は、各送信周期Tの終了直前時点を表す。
【0111】
パラメータkは、A/D変換部17,18がサンプリングするタイミングを表し、図5の第2段に示す様に、離散時刻k=0は、各送信周期Tの開始時点を表す。離散時刻k=N×L=N×(N/N)は、各送信周期Tにおける送信区間Tの終了時点を表す。更に、離散時刻k=(N+N)×(N/N)は、各送信周期Tの終了直前時点を表す。
【0112】
離散時刻kは、第M番目のレーダ送信周期(T)の開始するタイミングを基準(k=0)とし、レーダ送信周期Tが終了する前までのサンプル点である離散時刻k(=(N+N)×N/N)までをカウントし、後続する第(M+1)番目のレーダ送信周期(T)の開始時点において、再び離散時刻kを基準値(k=0)にリセットする。すなわち、A/D変換部17,18は、送信周期Tの送信タイミングに同期して離散時刻を周期的にカウントする。
【0113】
よって、A/D変換部17,18は、k=0〜((N+N)×N/N)を満たす離散時刻まで、周期的にサンプリングする。離散時刻kの範囲は、後述の各実施形態においても同様である。
【0114】
【数10】

【0115】
相関値算出部19は、第M番目の送信周期Tにおいて送信する符号長Lのパルス圧縮符号a(M)を周期的に生成する。ここで、パラメータn=1,…,Lである。パラメータLは符号長である。
【0116】
相関値算出部19は、A/D変換部17,18により出力された各離散サンプル値x(k,M)と、生成されたパルス圧縮符号a(M)との相関値AC(k,M)を算出する。相関値AC(k,M)は、第M番目の送信周期Tにおける離散時刻kでの相関値を表す。
【0117】
具体的には、相関値算出部19は、図5に示す各送信周期T、即ち離散時刻k=1〜((N+N)×N/N)において数式(11)に従って、相関値AC(k,M)を算出する。相関値算出部19は、算出された相関値AC(k,M)をコヒーレント積分部20に出力する。右上添え字のアスタリスク(*)は複素共役演算子を表す。
【0118】
図5の第1段は高周波送信信号の送信タイミングを示し、同図の第2段は反射波の信号の受信タイミングを示す。反射波の信号は、送信区間Tの間に送信された高周波送信信号が、ターゲットにより反射された波である。
【0119】
【数11】

【0120】
相関値算出部19は、離散時刻k=1〜((N+N)×N/N)において算出する。なお、レーダ装置1の測定対象となるターゲットの存在範囲によって、測定レンジ(kの範囲)を、例えば、k=NL+1〜{((N+N)×N/N)−NL}として、更に狭めた限定をしてもよい。
【0121】
図5の第2段に示す様に、離散時刻k=NL+1は、送信区間Tの終了時刻の次の離散時刻を表す。離散時刻k=NL+1は、反射波の信号が、離散時刻k=0より遅延時間τほど遅れて開始される受信の開始時刻である。遅延時間τは、数式(12)により表される。
【0122】
【数12】

【0123】
図5の第2段に示す様に、離散時刻k={((N+N)×N/N)−NL}は、送信周期Tの終了時刻から送信区間T(=T×L)前の時刻に相当する。離散時刻k={((N+N)×N/N)−NL}は、反射波の信号が、離散時刻k=0より遅延時間τほど遅れて開始される受信の開始時刻である。遅延時間τは、数式(13)により表される。
【0124】
【数13】

【0125】
相関値算出部19は、少なくとも離散時刻k=NL+1〜{((N+N)×N/N)−NL}の範囲において相関値AC(k,M)を算出しても良い。これにより、レーダ装置1は、相関値算出部19の算出量を低減できる。即ち、レーダ装置1は、信号処理部13による算出量の削減に基づく消費電力量を低減できる。なお、他のアンテナ系統処理部11−2〜11−4においても同様である。
【0126】
更に、離散時刻kの範囲を限定した場合、レーダ装置1は、高周波送信信号の送信区間Tにおいてターゲットの測定範囲外となり、高周波送信信号がレーダ受信部3に直接的に回り込んだとしても、回り込みによる影響を排除できる。
【0127】
測定レンジ(離散時刻kの範囲)の限定を適用する場合、後述するコヒーレント積分部20、FFT処理部21、係数生成部22、係数乗算部23、バッファ部24、第1相関行列生成部25、第2相関行列生成部26、加算部27、ピークドップラ周波数検出部28、速度推定部29、出力選択部30及び到来方向推定部31の動作も同様の測定レンジに限定した範囲となる。
【0128】
コヒーレント積分部20は、複数回(N回)の送信周期Tの期間(T×N)において、離散時刻k毎に算出された相関値AC(k,N(m−1)+u)を基に、数式(14)に従って積分数Nのコヒーレント積分をする。
【0129】
ここで、パラメータNは、コヒーレント積分部20によるコヒーレント積分の積分回数を表す。パラメータmは、自然数であり、送信周期Tの序数を表す。パラメータuは、1〜Nの自然数であり、コヒーレント積分部20におけるコヒーレント積分範囲を表す。
【0130】
【数14】

【0131】
即ち、コヒーレント積分部20は、第{N(m−1)+1}番目の送信周期Tにおける相関値AC(k,N(m−1)+1)から第(N×m)番目の送信周期Tにおける相関値AC(k,N×m)を単位に、離散時刻kのタイミングを揃えて各相関値を加算する。コヒーレント積分部20は、積分数N回のコヒーレント積分結果CI(k,m)をFFT処理部21に出力する。
【0132】
レーダ装置1は、コヒーレント積分部20のコヒーレント積分により、N回にわたるコヒーレント積分区間(時間範囲)のうち、ターゲットからの反射波の受信信号が高い相関値を有する範囲においてSNRを改善でき、反射波の到来方向の推定精度を向上できる。更に、レーダ装置1は、ターゲットまでの距離の推定精度を向上できる。
【0133】
FFT処理部21は、複数回(N×N回)の送信周期Tの期間(T×N×N)において、N個のコヒーレント積分結果CI(k,N(w−1)+1)〜CI(k,N×w)を基に、2N−1個の異なるドップラ周波数成分fに応じた各位相変動(数式(15)参照)を補正した後に、積分数N回のコヒーレント積分をする(数式(16)参照)。FFT処理部21は、積分数N回のコヒーレント積分結果を、係数乗算部23及び第1相関行列生成部25にそれぞれ出力する。
【0134】
なお、パラメータwは自然数である。パラメータwは、送信周期TのN×N回毎の繰り返し回数を示す。w=1であれば、1からN×N回までの送信周期Tとなる。
【0135】
つまり、FFT処理部21は、送信周期TがN×N回繰り返すたびに、コヒーレント積分結果を出力する。
【0136】
数式(16)において、Nantは、アンテナ系統処理部の序数(番号)を表し、1〜Dである。更に、数式(16)において、指数関数部分(exp成分)は、ターゲットの移動に応じて反射波に含まれた位相変動を打ち消す(補正)するための、2N−1個の異なるドップラ周波数成分fに応じた位相変動のキャンセル量(補正量)を表す。パラメータqは、1〜Nの自然数であり、FFT処理部21におけるコヒーレント積分範囲を表す。
【0137】
【数15】

【0138】
【数16】

【0139】
FT_CINant(k,f,w)は、FFT処理部21の第w番目の出力を表し、第Nant番目のアンテナ系統処理部の離散時刻kにおけるドップラ周波数成分fに応じたコヒーレント積分結果を表す。パラメータkは1〜((N+N)×N/N)、パラメータwは自然数である。パラメータwは、送信周期TのN×N回毎の繰り返し回数を示す。w=1であれば、1からN×N回までの送信周期Tとなる。パラメータfは、−N+1,…,0,…,N−1である。
【0140】
FFT処理部21は、数式(16)の算出により、積分数N回のコヒーレント積分結果FT_CINant(k,−N+1,w)〜FT_CINant(k,N−1,w)を、送信周期Tの(N×N)回の期間(T×N×N)毎に得る。
【0141】
数式(16)のコヒーレント積分は、サンプリング間隔T=T×N、サンプリング周波数f=1/Tとして、コヒーレント積分部20の出力を離散フーリエ変換処理していることに相当する。離散フーリエ変換におけるFFTサイズは、FFT処理部21におけるコヒーレント積分の積分数Nとなる。
【0142】
また、FFT処理部21は、数式(16)のコヒーレント積分を、それぞれ、正の周波数成分において数式(17)を用いて離散フーリエ変換し、負の周波数成分において数式(18)を用いて離散フーリエ変換することで等価に処理できる。
【0143】
FFT処理部21は、負の周波数成分における離散フーリエ変換において、数式(18)に示す様に、指数関数部分(exp成分)の符号の極性を変えることにより算出可能である。又は、FFT処理部21は、負の周波数成分における離散フーリエ変換において、コヒーレント積分部20の出力を時間的に逆順に入力することにより、同様に算出可能である。
【0144】
パラメータN及びNは、自然数であり、数式(19)を満たす。なお、数式(19)が成立する場合、パラメータq>Nとなる領域では、FFT処理部21は、CI(k,N(w−1)+q+1)=0となるゼロ埋め処理を行う。上述した各離散フーリエ変換処理において、FFT処理部21は、パラメータNを2のべき乗の数とすることにより、高速フーリエ変換処理が適用でき、算出処理量を低減できる。なお、パラメータf=0〜N−1であり、f番目の離散周波数成分はドップラ周波数成分f/Nに対応する。
【0145】
【数17】

【0146】
【数18】

【0147】
【数19】

【0148】
なお、第1の実施形態では、FFT処理部21の前段にコヒーレント積分部20を設けることにより、数式(3)のパラメータNをパラメータ「N×N」に置き換えた高いコヒーレント積分利得を得ることができ、更に、パラメータNに相当するFFTサイズを低減できる。すなわち、高いコヒーレント積分利得(N×N)を得ながらFFTサイズ(N)を小さくできる。
【0149】
但し、コヒーレント積分部20を信号処理部13に設けず、FFT処理部21においてパラメータ「N×N」のFFTサイズを用いて相関値算出部19により出力された相関値AC(k,M)を基にコヒーレント積分しても良い。これにより、レーダ装置1は、受信アンテナにおいて受信された受信信号の信号処理において高い周波数分解能を得ることができる。
【0150】
ここで、係数生成部22が係数を生成する送信周期Tの送信回数の単位を、パラメータNmax回とする。なお、パラメータNmaxは、NとNとの最小公倍数、若しくはNとNとの最小公倍数の整数倍となることが好ましい(数式(21)参照)。
【0151】
係数生成部22は、Nmax回の送信周期Tにおいて、(N×N)回の送信周期T毎に得られるFFT処理部21からの2N−1個の異なるドップラ周波数成分fの出力に対し、更にドップラ周波数成分毎にコヒーレント積分するための係数を生成する(数式(20)参照)。係数生成部22は、ドップラ周波数成分毎の係数を係数乗算部23に出力する。
【0152】
ここで、FFT処理部21は、送信周期Tの(N×N)回毎にドップラ周波数成分fを出力する。なお、パラメータw=1,…,Dpcであり、第w番目の係数は、送信周期TのNmax回のうち、送信周期Tの(N×N)×(w−1)回から(N×N)×w回において、FFT処理部21の出力に対し生成される。また、f=−N+1,…,0,…,N−1である。
【0153】
これにより、Nmax回の送信周期Tにおいては、数式(21)に示す様に、Dpc個の出力が得られる。
【0154】
なお、各アンテナ系統処理部は、係数生成部22を含まずに、係数生成部22により生成された係数を記憶するテーブルを含む構成としても良い。係数乗算部23は、テーブルからパラメータf及びパラメータwに応じた係数を読み出して後述の乗算をする。
【0155】
【数20】

【0156】
【数21】

【0157】
係数乗算部23は、送信周期TのNmax回毎に演算する。なお、FFT処理部21は、送信周期Tの(N×N)回毎に演算する。
【0158】
係数乗算部23は、送信周期TのNmax×(z−1)からNmax×z回のうち、送信周期Tの(N×N)×(w−1)から(N×N)×w回において、FFT処理部21から出力される値(FT_CINant(k,−N+1,Dpc(z−1)+w)と、係数生成部22により出力された係数と、を離散時刻k毎に乗算する(数式(22)参照)。なお、パラメータwは、1〜Dpcである。
【0159】
なお、パラメータzは、Nmax回の送信周期Tを複数回繰り返した場合に、z番目の繰り返しを示し、パラメータwは、(N×N)回の送信周期Tを複数回繰り返してNmax回の送信周期Tが構成されている場合に、w番目の繰り返しを示す。
【0160】
係数乗算部23は、数式(22)による乗算結果をバッファ部24に出力する。ここで、f=−N+1,…,0,…,N−1である。
【0161】
【数22】

【0162】
バッファ部24は、送信周期TがNmax回繰り返す間であって、パラメータw=1〜Dpcの期間において、離散時刻k毎に係数乗算部23により出力されたDpc個の乗算結果を加算する。バッファ部24におけるDpc個の乗算結果の加算は、積分数Dpc(N×N)個のFFTによるコヒーレント積分に相当する。
【0163】
即ち、バッファ部24は、送信周期TのNmax×(z−1)回からNmax×z回において、FFTによるコヒーレント積分の結果に相当する数式(23)に表されるコヒーレント積分結果を、第2相関行列生成部26に出力する。ここで、f=−N+1,…,0,…,N−1である。なお、zは自然数である。
【0164】
【数23】

【0165】
第1相関行列生成部25は、各アンテナ系統処理部11〜11−4の各FFT処理部により出力されたコヒーレント積分結果(FT_CINant(k,−N+1,w)〜FT_CINant(k,N−1,w))を入力する。第1相関行列生成部25は、コヒーレント積分結果を基に、ターゲットからの反射波の信号の各受信アンテナ間の位相差を検出するために、離散時刻k毎に相関行列Hsub(k,f,w)を生成する(数式(24)参照)。数式(24)において、上付き添え字Hは、複素共役転置を表す演算子である。ここで、f=−N+1,…,0,…,N−1である。
【0166】
【数24】

【0167】
更に、第1相関行列生成部25は、送信周期TのNmax回×(z−1)からNmax×z回にわたり、(N×N)回の送信周期T毎に得られたFFT処理部21からの出力を基に、数式(23)に従って算出されたDpc個の乗算結果を加算する(数式(25)参照)。第1相関行列生成部25は、送信周期TのNmax回×(z−1)からNmax×z回のうち、送信周期T毎に、相関行列の加算値B(k,f,z)を加算部27に出力する。
【0168】
【数25】

【0169】
第2相関行列生成部26は、各アンテナ系統処理部11〜11−4の各バッファ部により出力された各コヒーレント積分結果(BufNant(k,f,z))を基に、ターゲットからの反射波の信号の各受信アンテナ間の位相差を検出するために、離散時刻k毎に相関行列B(k,f,z)を生成する(数式(26)参照)。数式(26)において、上付き添え字Hは、複素共役転置を表す演算子である。
【0170】
又は、各バッファ部が、過去に生成された(N×Nmax)回の送信周期Tにおける積分数Nmax回のコヒーレント積分結果(BufNant(k,f,z−N)〜BufNant(k,f,z−1))を記憶している。第2相関行列生成部26は、各バッファ部に記憶されている各コヒーレント積分結果を用いて相関行列B(k,f,z)を生成しても良い。パラメータNは、自然数である。
【0171】
すなわち、第2相関行列生成部26は、(N×Nmax)回の送信周期Tにおける積分数Nmax回のコヒーレント積分結果(BufNant(k,f,z−N)〜BufNant(k,f,z−1))を基に、離散時刻k毎に相関行列B(k,f,z)を生成する(数式(27)参照)。
【0172】
第2相関行列生成部26は、過去の時刻に生成されたコヒーレント積分結果を用いた相関行列を用いることで、第1相関行列生成部25よりも大きいコヒーレント積分数を用いて、相関行列を生成する。このため、レーダ装置1は、ターゲットの移動速度が十分に小さい(ドップラスプレッドが小さい)場合に、雑音成分を抑圧することにより、SNRを改善でき、ターゲットからの反射波の到来方向の推定精度を向上できる。
【0173】
なお、過去に生成されたコヒーレント積分結果を用いた相関行列の生成については、以下の各実施形態においても同様に適用可能である。
【0174】
第2相関行列生成部26は、Nmax回の送信周期T毎に、相関行列B(k,f,z)を加算部27及びピークドップラ周波数検出部28にそれぞれ出力する。
【0175】
【数26】

【0176】
【数27】

【0177】
なお、第1相関行列生成部25は、数式(24)の代わりに数式(28)を用いて、複数のアンテナ系統処理部11〜11−4のうちいずれかのアンテナ系統処理部の受信アンテナによって受信された信号の位相を基準位相として、相関ベクトルを生成しても良い。
【0178】
【数28】

【0179】
更に、第2相関行列生成部26は、数式(26)又は数式(27)の代わりに数式(29)又は数式(30)を用いて、複数のアンテナ系統処理部11〜11−4のうちいずれかのアンテナ系統処理部の受信アンテナによって受信された信号の位相を基準位相として、相関ベクトルを生成しても良い。なお、各相関行列生成部において相関行列ではなく相関ベクトルを生成するのは、以下の各実施形態においても同様に適用しても良い。
【0180】
【数29】

【0181】
【数30】

【0182】
数式(28)〜数式(30)において、上付き添え字のアスタリスク(*)は、複素共役演算子を表す。これにより、レーダ装置1は、各相関行列生成部の算出量を低減し、ターゲットからの反射波の信号の受信アンテナ間の位相差を簡易に検出できる。
【0183】
加算部27は、第1相関行列生成部25からの出力と第2相関行列生成部26からの出力とを基に、数式(31)に従って各相関行列生成部からの各出力を加算する。
【0184】
具体的には、加算部27は、第1相関行列生成部25により離散時刻k毎の2N−1個の異なるドップラ周波数成分f毎に算出された相関行列B(k,f,z)と、第2相関行列生成部26により離散時刻k毎の2N−1個の異なるドップラ周波数成分f毎に算出された相関行列B(k,f,z)とを加算する。
【0185】
【数31】

【0186】
加算部27は、各相関行列生成部からの各出力である各相関行列の加算時に、各相関行列の対角成分の大きさに比例した重み付け係数αを乗じて加算しても良い(数式(32)、数式(33)参照)。加算部27は、数式(30)又は数式(31)の加算結果を出力選択部30に出力する。
【0187】
【数32】

【0188】
【数33】

【0189】
ピークドップラ周波数検出部28は、第2相関行列生成部26からの出力、即ち、Nmax回の送信周期T毎に2N−1個の異なるドップラ周波数成分fに応じて得られた相関行列B(k,f,z)を入力する。ピークドップラ周波数検出部28は、相関行列B(k,f,z)のうち、コヒーレント積分利得が最大のドップラ周波数成分fselect(k,z)を離散時刻k毎に選択する。
【0190】
具体的には、ピークドップラ周波数検出部28は、相関行列B(k,f,z)のうち、コヒーレント積分後の平均受信電力成分に相当する相関行列の対角成分の和が最大となるドップラ周波数成分fselect(k,z)を選択する。即ち、ピークドップラ周波数検出部28は、数式(34)に従って、コヒーレント積分後の平均受信電力成分に相当する相関行列の対角成分の和が最大となるドップラ周波数成分fselect(k,z)を選択する。なお、diag[B(k,f,z)]は、相関行列B(k,f,z)の対角成分の和を算出する演算子である。
【0191】
【数34】

【0192】
ピークドップラ周波数検出部28は、離散時刻k毎に選択されたドップラ周波数成分fselect(k,z)を、速度推定部29及び出力選択部30にそれぞれ出力する。
【0193】
なお、到来方向推定部25は、ピークドップラ周波数検出部28によって、離散時刻kにおけるdiag[B(k,f,z)]が所定レベルを満たさないと判断された場合、離散時刻kにおけるターゲットからの反射波の到来方向を推定しなくても良い。
【0194】
又は、ピークドップラ周波数検出部28は、離散時刻kにおけるdiag[B(k,f,z)]が所定レベルを満たさない場合、ドップラ周波数成分fselect(k,z)をヌルとする。これにより、レーダ装置1は、ターゲットが検出されない離散時刻kにおいて冗長な算出を不要とし、レーダ受信部3における処理遅延を低減できる。
【0195】
なお、ピークドップラ周波数検出部28は、第2相関行列生成部26からの出力を基にドップラ周波数成分fselect(k,z)を選択している。他に、ピークドップラ周波数検出部28は、第2相関行列生成部26に入力されたコヒーレント積分結果、第1相関行列生成部25に入力されたコヒーレント積分結果、又は第1相関行列生成部25から出力された相関行列を基に、ドップラ周波数成分fselect(k,z)を選択しても良い。ピークドップラ周波数検出部28のドップラ周波数成分fselect(k,z)の選択については、以下の各実施形態においても同様である。
【0196】
速度推定部29は、ピークドップラ周波数検出部28からの出力、即ち、離散時刻k毎に選択されたドップラ周波数成分fselect(k,z)が入力される。
【0197】
速度推定部29は、離散時刻k毎に選択されたドップラ周波数成分fselect(k,z)を基に、レーダ受信部3において測定されるターゲットの相対移動速度v(k,z)を出力する(数式(35)参照)。
【0198】
【数35】

【0199】
数式(35)において、パラメータλは、レーダ送信部2から送信される高周波送信信号におけるキャリア周波数の波長である。
【0200】
出力選択部30は、ピークドップラ周波数検出部28により出力されたドップラ周波数fselect(k,z)、及び加算部27により出力された加算結果(数式(31)又は数式(32)参照)が離散時刻k毎に入力される。
【0201】
出力選択部30は、加算部27から入力された加算結果のうち、ドップラ周波数fselect(k,z)に応じた加算結果成分A(k,fselect(k,z),z)を離散時刻k毎に選択する。出力選択部30は、離散時刻k毎に選択された加算結果成分A(k,fselect(k,z),z)を到来方向推定部31に出力する。
【0202】
到来方向推定部31は、離散時刻k毎に出力選択部30により出力された加算結果成分A(k,fselect(k,z),z)を基に、ターゲットからの反射波の到来方向を推定する。なお、到来方向推定部31によるターゲットからの反射波の到来方向の推定演算は、既に公知の技術であり、例えば下述参考非特許文献2において開示されているアレーアンテナを用いた推定方法を用いて実現可能である。
【0203】
(参考非特許文献2)JAMES A. Cadzow、「Direction of Arrival Estimation Using Signal Subspace Modeling」、IEEE、Vol.28、pp.64−79(1992)
【0204】
なお、第1の実施形態では、ピークドップラ周波数検出部28は、第2相関行列生成部26の出力を基に、コヒーレント積分利得が最大の1つのドップラ周波数成分fselect(k,z)を離散時刻k毎に選択すると説明した。
【0205】
また、ピークドップラ周波数検出部28は、複数のドップラ周波数のピークが検出される場合には、g(k,z)個のドップラ周波数成分を用いたfselectG(k,z)を選択してもよい。パラメータGは、自然数であり、1〜g(k、z)である。
【0206】
出力選択部30は、離散時刻k毎のピークドップラ周波数検出部28の選択結果であるfselectG(k,z)を基に、加算部27からの加算結果のうち、g(k,z)個のドップラ周波数成分fselectG(k,z)に応じた各加算結果成分A(k,fselectG(k,z),z)を到来方向推定部31に出力する。
【0207】
到来方向推定部31は、離散時刻k毎に出力選択部30から出力された各加算結果成分A(k,fselectG(k,z),z)を基に、g(k,z)個のfselectG(k,z)成分毎に、ターゲットからの反射波の到来方向を推定する。
【0208】
以上により、レーダ装置1は、各アンテナ系列処理部において、相関値演算部19の出力が、FFT処理部21により周波数成分毎にコヒーレント積分された値と、FFT処理部21によりコヒーレント積分した後に、バッファ部24によりバッファすることで、コヒーレント積分数を増やした値と、を生成する。更に、レーダ装置1は、各アンテナ系列処理部が生成したコヒーレント積分数が異なる複数の値を用いて、第1相関行列生成部25及び第2相関行列生成部26において、それぞれ周波数成分毎の相関行列を生成し、加算部27において、各相関行列の対角成分の大きさに比例した重み付けによって到来角情報を合成する。
【0209】
これにより、レーダ装置1は、ターゲットからの反射波に含まれるドップラスプレッドが小さい場合は、加算部の出力は、バッファ部24により、積分数Dpc(N×N)個のFFTによるコヒーレント積分効果が得られるため、より大きいコヒーレント積分数を用いてコヒーレント積分して生成した第2の相関行列生成部出力の相関行列成分が優勢となり、より高いコヒーレント利得が得られた信号を用いて到来角を推定できる。
【0210】
一方、ターゲットからの反射波に含まれるドップラスプレッドが大きい場合は、より大きいコヒーレント積分数でコヒーレント積分して生成した第2の相関行列生成部出力の相関行列成分は、コヒーレント積分利得が飽和する影響をうけ、小さいコヒーレント積分数によりコヒーレント積分して生成した第1の相関行列生成部出力の相関行列成分と同程度となる。
【0211】
このため、加算部出力の相関行列は、第1の相関行列生成部出力と第2の相関行列生成部出力の相関行列成分の両者の相関行列を同程度の重み付けで合成されるが、それぞれの相関行列に含まれる雑音成分は無相関であるため雑音成分を抑圧するノンコヒーレント積分効果を得た上で到来角を推定できる。
【0212】
これにより、レーダ装置1は、ターゲットからの反射波に含まれるドップラスペクトルの広がりに大小に拘わらず、簡易な構成を用いてコヒーレント積分利得あるいはノンコヒーレント利得を高め、反射波の到来方向の推定精度を向上できる。
【0213】
(第1の実施形態の変形例1)
第1の実施形態では、ピークドップラ周波数検出部は、離散時刻毎にコヒーレント積分利得が最大のドップラ周波数fselect(k,z)を出力選択部に出力した。
【0214】
第1の実施形態の変形例1では、ピークドップラ周波数検出部は、離散時刻k毎にコヒーレント積分利得が最大のドップラ周波数fselect(k,z)を加算部に出力する。
【0215】
図6は、第1の実施形態の変形例1のレーダ装置1rの内部構成を詳細に示すブロック図である。第1の実施形態の変形例1において、加算部27r、ピークドップラ周波数検出部28r及び出力選択部30rを除く他の構成及び動作は、第1の実施形態のレーダ装置1と同様であり説明を省略する。以下、第1の実施形態のレーダ装置1と異なる内容について説明する。
【0216】
ピークドップラ周波数検出部28rは、離散時刻k毎に選択されたドップラ周波数成分fselect(k,z)の情報を、加算部27r及び速度推定部29にそれぞれ出力する。
【0217】
加算部27rは、ピークドップラ周波数検出部28rからの出力、即ち、離散時刻k毎に選択されたドップラ周波数成分fselect(k,z)を入力する。加算部27rは、第1相関行列生成部25及び第2相関行列生成部26からの各出力のうち、離散時刻k毎に入力されたドップラ周波数成分fselect(k,z)の相関行列を加算する(数式(36)参照)。加算部27rは、離散時刻k毎に加算されたドップラ周波数成分fselect(k,z)の相関行列を出力選択部30rに出力する。
【0218】
【数36】

【0219】
出力選択部30rは、加算部27rから入力された相関行列を到来方向推定部31に出力する。なお、第1の実施形態の変形例1において、レーダ受信部3rは、出力選択部30rを含まない構成としても良い。これにより、レーダ装置1rは、出力選択部27rにおける処理遅延を低減できる。
【0220】
なお、加算部27rは、ピークドップラ周波数検出部28rによって、離散時刻kにおけるdiag[B(k,f,z)]が所定レベルを満たさないと判断された場合、加算処理を行わなくても良い。
これにより、レーダ装置1rは、ターゲットが検出されない離散時刻kにおいて、冗長な加算を不要となり、レーダ受信部3rにおける処理遅延を低減できる。
【0221】
(第1の実施形態の変形例2)
第1の実施形態の変形例2では、第1の実施形態のレーダ装置1の信号処理部13が、パラメータNmaxを更に複数の区間に分割した送信区間Nsub毎に、コヒーレント積分する第2バッファ部を更に含む。
【0222】
更に、第1の実施形態の変形例2では、第1の実施形態のレーダ装置1のレーダ受信部3が、第2バッファ部からの出力を基に相関行列を生成する第3相関行列生成部を更に含む。但し、パラメータNmax、Nsub及びNは、自然数であり、数式(37)が成立する。更に、Nmax/Nsubが整数であることが好ましい。
【0223】
【数37】

【0224】
図7は、第1の実施形態の変形例2のレーダ装置1sの内部構成を詳細に示すブロック図である。レーダ装置1sと第1の実施形態のレーダ装置1との各部の構成及び動作が同一のブロックには、同一の符号が付されている。レーダ装置1sの構成において、レーダ送信部2、基準信号発振器Lo、レーダ受信部3のコヒーレント積分部20までは、第1の実施形態のレーダ装置1と同様であるため各部の図示を省略している。
【0225】
以下、レーダ装置1sの構成及び動作の説明において、レーダ装置1と同一の構成及び動作の内容に関しては省略し、レーダ装置1の構成及び動作と異なる内容に関して説明する。
【0226】
図7において、レーダ装置1sは、送信アンテナAN1と接続されるレーダ送信部2、及び、各受信アンテナAN2〜AN2−4と接続される各アンテナ系統処理部11−1〜11−4を有するレーダ受信部3sを含む構成である。なお、レーダ送信部2及びレーダ受信部3sは、不図示の基準信号発振器Loに接続され、基準信号発振器Loから信号が供給され、レーダ送信部2及びレーダ受信部3sが同期した動作ができる。
【0227】
(レーダ受信部)
次に、レーダ受信部3sの各部の構成について説明する。レーダ受信部3sには、第1の実施形態のレーダ装置1と同様に、例えば4つのアレーアンテナが構成されている。更に、第1の実施形態のレーダ装置1と同様に、アレーアンテナを構成する各受信アンテナはアンテナ系統処理部毎に接続されている。
【0228】
レーダ受信部3sは、アンテナ系統処理部毎に1つの受信アンテナが接続された複数のアンテナ系統処理部を有し、複数の受信アンテナを含むアレーアンテナを構成している。
【0229】
次に、レーダ受信部3sの各部の構成について、図7を参照して説明する。
【0230】
レーダ受信部3sは、図7に示す様に、アレーアンテナを構成する受信アンテナの本数に対応して設けられた4つのアンテナ系統処理部11−1〜11−4、第1相関行列生成部25、第2相関行列生成部26、第3相関行列生成部33、加算部27s、ピークドップラ周波数検出部28s、速度推定部29、出力選択部30及び到来方向推定部31を含む構成である。
【0231】
各アンテナ系統処理部は、受信アンテナAN2が接続された受信RF部12、及び信号処理部13sを含む構成である。受信RF部12は、増幅器14、周波数変換部15及び直交検波部16を含む構成である。信号処理部13sは、A/D変換部17,18、相関値算出部19、コヒーレント積分部20、FFT処理部21、係数生成部22、係数乗算部23、第1バッファ部24s及び第2バッファ部32を含む構成である。信号処理部13sは、各送信周期Tを信号処理区間として周期的に動作する。
【0232】
図7において、図2に示したバッファ部24を第1バッファ部24sと記載し、動作も同一である。図7において、加算部27s及びピークドップラ周波数検出部28sの動作が第1の実施形態と異なる。
【0233】
図7において、係数乗算部23の出力は、第1バッファ部24s及び第2バッファ部32にそれぞれ出力される。第2バッファ部32への入力は、送信周期TのNmax回×(z−1)からNmax×z回のうち、送信周期Tの(N×N)×(w−1)回から(N×N)×w回に得られたFFT処理部21からの各出力と、係数生成部22により出力された各係数との乗算結果である。
【0234】
第2バッファ部32は、Nmax回の送信周期Tにわたり、パラメータw=1〜Dpc_subの期間において離散時刻k毎に係数乗算部23により出力されたDpc_sub個の乗算結果を加算する。なお、パラメータDpc_subは、数式(38)で表される。
【0235】
第2バッファ部32におけるDpc_sub個の乗算結果の加算は、積分数Dpc_sub個のコヒーレント積分に相当する。即ち、第2バッファ部32は、送信周期TのNmax回×(z−1)からNmax×z回において、第2バッファ部32におけるFloor[Nmax/Nsub]回のコヒーレント積分の結果として、数式(38)に示すコヒーレント積分結果を第3相関行列生成部33に出力する。
【0236】
【数38】

【0237】
【数39】

【0238】
数式(39)において、パラメータy=1〜Floor[Nmax/Nsub]である。Floor[Nmax/Nsub]は、実数Nmax/Nsubの小数点以下を切り捨てる演算子である。なお、Nmax/Nsubが整数値とならない場合には、第2バッファ部32は、適宜、数式(39)における加算区間を調整し、加算区間が一部重複して加算する。
【0239】
第3相関行列生成部33は、各アンテナ系統処理部11〜11−4の各第2バッファ部により出力された各コヒーレント積分結果(BufNant(k,f,z,y))を基に、ターゲットからの反射波の信号の受信アンテナ間の位相差を検出するために、離散時刻k毎に相関行列B(k,f,z)を生成する(数式(40)参照)。数式(40)において、上付き添え字Hは、複素共役転置を表す演算子である。
【0240】
第3相関行列生成部33は、Nmax回の送信周期T毎に、相関行列B(k,f,z)を加算部27sに出力する。
【0241】
【数40】

【0242】
加算部27sは、第1相関行列生成部25、第2相関行列生成部26及び第3相関行列生成部33からの各出力を基に、数式(41)に従って各相関行列生成部からの各出力を加算する。
【0243】
具体的には、加算部27sは、第1相関行列生成部25,第2相関行列生成部26,第3相関行列生成部33により離散時刻k毎の2N−1個の異なるドップラ周波数成分f毎に算出された各相関行列B(k,f,z),相関行列B(k,f,z),B(k,f,z)を加算する。
【0244】
【数41】

【0245】
加算部27sは、各相関行列生成部からの出力である各相関行列の加算時に、各相関行列の対角成分の大きさに比例した重み付け係数αを乗じて加算しても良い(数式(42)、数式(43)参照)。加算部27sは、数式(41)又は数式(42)の加算結果を出力選択部30に出力する。出力選択部30以降の動作は、第1の実施形態のレーダ装置1と同様のため、説明を省略する。
【0246】
【数42】

【0247】
【数43】

【0248】
なお、パラメータNmaxをパラメータNsubよりも更に複数の区間に分割した送信区間を設ける。コヒーレント積分する第3,第4,…バッファ部と、各バッファ部からの出力を基に相関行列を生成する第4,第5,…相関行列生成部を同様に設ければ良い。
【0249】
以上により、レーダ装置1sは、レーダ装置1の効果に加え、ターゲットからの反射波に含まれる位相変動に応じたドップラスプレッドが比較的広い場合において、ドップラスプレッドが中程度の大きさを有する反射波の到来方向の推定精度を改善できる。なお、第1の実施形態の変形例2の構成は、以下の各実施形態に同様に適用可能である。
【0250】
(第1の実施形態の変形例3)
第1の実施形態の変形例3では、FFT処理部は、第1の実施形態の係数生成部22及び係数乗算部23を含む様に動作する。
【0251】
図8は、第1の実施形態の変形例3のレーダ装置1uの内部構成を詳細に示すブロック図である。レーダ装置1uと第1の実施形態のレーダ装置1との各部の構成及び動作が同一のブロックには、同一の符号が付されている。以下、レーダ装置1uの構成及び動作の説明において、同一の構成及び動作の内容に関しては省略し、レーダ装置1の構成及び動作と異なる内容に関して説明する。
【0252】
図8において、レーダ装置1uは、送信アンテナAN1と接続されるレーダ送信部2、及び、各受信アンテナAN2〜AN2−4と接続される各アンテナ系統処理部11u−1〜11u−4を有するレーダ受信部3uを含む構成である。なお、レーダ送信部2及びレーダ受信部3uは、基準信号発振器Loに接続され、基準信号発振器Loから信号が供給され、レーダ送信部2及びレーダ受信部3uが同期した動作ができる。
【0253】
(レーダ受信部)
次に、レーダ受信部3uの各部の構成について説明する。レーダ受信部3uには、第1の実施形態のレーダ装置1と同様に、例えば4つのアレーアンテナが構成されている。更に、第1の実施形態のレーダ装置1と同様に、アレーアンテナを構成する各受信アンテナはアンテナ系統処理部毎に接続されている。
【0254】
レーダ受信部3uは、アンテナ系統処理部毎に1つの受信アンテナが接続された複数のアンテナ系統処理部を有し、複数の受信アンテナを含むアレーアンテナを構成している。
【0255】
次に、レーダ受信部3uの各部の構成について、図8を参照して説明する。
【0256】
レーダ受信部3uは、図8に示す様に、アレーアンテナを構成する受信アンテナの本数に対応して設けられた4つのアンテナ系統処理部11u−1〜11u−4、第1相関行列生成部25、第2相関行列生成部26、加算部27、ピークドップラ周波数検出部28、速度推定部29、出力選択部30、及び到来方向推定部31を含む構成である。
【0257】
各アンテナ系統処理部は、受信アンテナAN2が接続された受信RF部12、及び信号処理部13uを含む構成である。受信RF部12は、増幅器14、周波数変換部15及び直交検波部16を含む構成である。信号処理部13uは、A/D変換部17,18、相関値算出部19、コヒーレント積分部20、FFT処理部21u、及びバッファ部24uを含む構成である。信号処理部13uは、各送信周期Tを信号処理区間として周期的に動作する。
【0258】
図8において、FFT処理部21uの動作が第1の実施形態と異なる。
【0259】
FFT処理部21uは、FFTサイズをNmaxとし、離散時刻k毎に得られたコヒーレント積分部20のN個のコヒーレント積分結果CI(k,N(w−1)+1)〜CI(k,N×w)を単位として、FFT処理時に時間シフトを加え、離散時刻kのタイミングを揃えて数式(44)及び数式(45)に従って処理する。なお、第1の実施形態におけるFFT処理部21のFFTサイズは(N×N)である。
【0260】
時間シフトは、Nmax回の送信周期Tのうち、送信周期Tの(N×N)×(w−1)から(N×N)×w回において得られるFFT処理部21uからの出力に対して、N(w−1)として与えられる。
【0261】
【数44】

【0262】
【数45】

【0263】
バッファ部24uは、Nmax回の送信周期Tにわたり、パラメータw=1〜Dpcの期間において離散時刻k毎にFFT処理部21uから出力されたDpc個の乗算結果を加算する。バッファ24uにおけるDpc個の加算は、積分数Dpc個のコヒーレント積分に相当する。即ち、バッファ部24uは、送信周期TのNmax×(w−1)回からNmax×w回において、バッファ部24uにおけるコヒーレント積分の結果として、数式(46)に表されるコヒーレント積分結果を第2相関行列生成部26に出力する。
【0264】
また、第1の実施形態の変形例2におけるFFT処理部21uとバッファ部24uの構成は、以下の各実施形態においても同様に適用可能である。
【0265】
【数46】

【0266】
以上により、レーダ装置1uは、第1の実施形態のレーダ装置1と同様の効果を得ることができる。
【0267】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、ピークドップラ周波数検出部は、コヒーレント積分利得が最大のドップラ周波数を中心とした所定の周波数範囲におけるドップラスプレッドを検出する。出力選択部は、検出されたドップラスプレッドに応じて、いずれかの相関行列生成部のいずれかのドップラ周波数成分に対応する相関行列を選択する。
【0268】
図9は、第2の実施形態のレーダ装置1vの内部構成を簡単に示すブロック図である。図10は、第2の実施形態のレーダ装置1vの内部構成を詳細に示すブロック図である。レーダ装置1vと第1の実施形態のレーダ装置1との各部の構成及び動作が同一のブロックには、同一の符号が付されている。以下、レーダ装置1vの構成及び動作の説明において、同一の構成及び動作の内容に関しては省略し、レーダ装置1の構成及び動作と異なる内容に関して説明する。
【0269】
レーダ装置1vは、図9に示す様に、レーダ送信部2及びレーダ受信部3vを含む構成である。レーダ送信部2は、送信信号生成部4、及び、送信アンテナAN1と接続される送信RF部5を有する。レーダ送信部2及びレーダ受信部3vは、基準信号発振器Loに接続され、基準信号発振器Loから信号が供給され、レーダ送信部2及びレーダ受信部3vが同期して動作する。
【0270】
レーダ受信部3vは、D個のアンテナ系統処理部11−1〜11−D、第1相関行列生成部25、第2相関行列生成部26、ピークドップラ周波数検出部28v、出力選択部30v及び到来方向推定部31vを有する。パラメータDは2以上の整数である。各アンテナ系統処理部は同様の構成を有し、以下、アンテナ系統処理部11−1を例示して説明する。
【0271】
アンテナ系統処理部11−1は、受信アンテナAN2と接続される受信RF部12、相関値算出部19、コヒーレント積分部20、及びFFT処理部21を少なくとも有する。
【0272】
次に、レーダ受信部3vの各部の構成について、図10を参照して詳細に説明する。
【0273】
レーダ受信部3vは、図10に示す様に、アレーアンテナを構成する受信アンテナの本数に対応して設けられた4つのアンテナ系統処理部11−1〜11−4、第1相関行列生成部25、第2相関行列生成部26、ピークドップラ周波数検出部28v、速度推定部29、出力選択部30v及び到来方向推定部31vを含む構成である。
【0274】
次に、レーダ受信部3vの各部の動作について詳細に説明する。
【0275】
ピークドップラ周波数検出部28vは、第2相関行列生成部26からの出力、即ち、Nmax回の送信周期T毎に2N−1個の異なるドップラ周波数成分fに応じて得られた相関行列B(k,f,z)を入力する。ピークドップラ周波数検出部28vは、入力された相関行列B(k,f,z)のうち、コヒーレント積分利得が最大の相関行列のドップラ周波数成分fselect(k,z)を離散時刻k毎に選択する。
【0276】
具体的には、ピークドップラ周波数検出部28vは、入力された相関行列B(k,f,z)のうち、コヒーレント積分後の平均受信電力成分に相当する相関行列の対角成分の和が最大となる相関行列のドップラ周波数成分fselect(k,z)を選択する。即ち、ピークドップラ周波数検出部28vは、数式(34)に従って、コヒーレント積分後の平均受信電力成分に相当する相関行列の対角成分の和が最大となる相関行列のドップラ周波数成分fselect(k,z)を離散時刻k毎に選択する。
【0277】
ピークドップラ周波数検出部28vは、離散時刻k毎に、選択されたドップラ周波数成分fselect(k,z)を、速度推定部29及び出力選択部30vにそれぞれ出力する。
【0278】
更に、ピークドップラ周波数検出部28vは、選択されたドップラ周波数成分fselect(k,z)を中心とし、ドップラ周波数成分fselect(k,z)に隣接する所定の周波数範囲におけるドップラスペクトルの広がり(ドップラスプレッド)を検出する。ピークドップラ周波数検出部28vは、数式(47)又は数式(48)に従って、ドップラスプレッドを検出する。
【0279】
【数47】

【0280】
【数48】

【0281】
数式(47)は、ドップラスプレッドを、±Δf離れた2点を基に検出する方式である。数式(48)は、ドップラスプレッドを、所定の周波数範囲2Δf内におけるドップラスペクトルを用いて検出する方式である。
【0282】
ピークドップラ周波数検出部28vは、数式(47)又は数式(48)に従って算出されたドップラスプレッドDS(k,fselect,z)と所定値THとの比較結果DS_LEV(k,fselect,z)を出力選択部30vに出力する。比較結果DS_LEV(k,fselect,z)は、例えば1ビットの情報によって示される。
【0283】
所定値TH及び後述する所定値THは、ドップラ周波数成分毎に生成された相関行列の対角成分の和が最大となる相関行列の選択によってSNRの改善が見込めるかどうかを示すしきい値である。
【0284】
具体的には、ピークドップラ周波数検出部28vは、ドップラスプレッドDS(k,fselect,z)が所定値TH以上である場合には、比較結果DS_LEV(k,fselect,z)を「0(ゼロ)」として出力選択部30vに出力する(数式(49)参照)。
【0285】
同様に、ピークドップラ周波数検出部28vは、ドップラスプレッドDS(k,fselect,z)が所定値TH未満である場合には、比較結果DS_LEV(k,fselect,z)を「1」として出力選択部30vに出力する(数式(49)参照)。
【0286】
【数49】

【0287】
また、第2の実施形態における説明に用いた図7の第3相関行列生成部を有する場合には、ピークドップラ周波数検出部28vは、ドップラスプレッドDS(k,fselect,z)と所定値THと所定値THとの比較結果DS_LEV(k,fselect,z)を出力選択部30vに出力する。比較結果DS_LEV(k,fselect,z)は、例えば2ビットの情報によって示される。なお、所定値THは所定値THより小さいとする。
【0288】
具体的には、ピークドップラ周波数検出部28vは、ドップラスプレッドDS(k,fselect,z)が所定値TH以上である場合には、比較結果DS_LEV(k,fselect,z)を「0(ゼロ)」として出力選択部30vに出力する(数式(50)参照)。
【0289】
同様に、ピークドップラ周波数検出部28vは、ドップラスプレッドDS(k,fselect,z)が所定値TH以上であって所定値TH未満である場合には、比較結果DS_LEV(k,fselect,z)を「2」として出力選択部30vに出力する(数式(50)参照)。
【0290】
同様に、ピークドップラ周波数検出部28vは、ドップラスプレッドDS(k,fselect,z)が所定値TH未満である場合には、比較結果DS_LEV(k,fselect,z)を「1」として出力選択部30vに出力する(数式(50)参照)。
【0291】

【数50】

【0292】
また、第2の実施形態においてレーダ装置1vがN個の相関行列生成部を有する場合には、ピークドップラ周波数検出部28vは、ドップラスプレッドDS(k,fselect,z)とN−1個の所定値THを用いて数式(49)、数式(50)と同様に比較する。
【0293】
ピークドップラ周波数検出部28vは、ドップラスプレッドDS(k,fselect,z)が大きいほどコヒーレント積分数が少ない相関行列生成部の出力が出力選択部30vにより選択される様にドップラスプレッドDS(k,fselect,z)を出力する。
【0294】
なお、第2の実施形態のレーダ装置1vにおいては、第1相関行列生成部25のコヒーレント積分数は、第2相関行列生成部26のコヒーレント積分数より少ない。
【0295】
出力選択部30vは、離散時刻k毎に、ピークドップラ周波数検出部28vにより出力されたドップラ周波数成分fselect(k,z)及び比較結果DS_LEV(k,fselect,z)、並びに各相関行列生成部により出力されたドップラ周波数成分毎の各相関行列を入力する。
【0296】
出力選択部30vは、ドップラ周波数成分fselect(k,z)及び比較結果DS_LEV(k,fselect,z)を基に、入力された相関行列のうち相関行列BDS_LEV(k,fselect,z)(k,fselect,z)を、離散時刻k毎に到来方向推定部31vに出力する(数式(51)参照)。
【0297】
【数51】

【0298】
なお、ピークドップラ周波数検出部28vは、離散時刻kにおいてg(k,z)個のドップラ周波数のピークが検出される場合には、g(k,z)個のドップラ周波数成分を用いたfselectG(k,z)を出力しても良い。パラメータGは、自然数であり、1〜g(k、z)である。
【0299】
ピークドップラ周波数検出部28vは、g(k,z)個のドップラ周波数成分を用いたfselectG(k,z)に対し、それぞれドップラスプレッドDS(k,fselectG(k,z),z)を数式(47)又は数式(48)に従って算出する。
【0300】
更に、ピークドップラ周波数検出部28vは、算出されたドップラスプレッドDS(k,fselectG(k,z),z)と所定値THとの比較結果DS_LEV(k,fselectG(k,z),z)を出力選択部30vに出力する。
【0301】
なお、到来方向推定部31vは、ピークドップラ周波数検出部28vによって、離散時刻kにおけるdiag[B(k,f,z)]が所定レベルを満たさないと判断された場合、離散時刻kにおけるターゲットの到来方向を推定しなくても良い。
【0302】
又は、ピークドップラ周波数検出部28vは、離散時刻kにおけるdiag[B(k,f,z)]が所定レベルを満たさない場合、ドップラ周波数成分fselect(k,z)をヌルとする。これにより、レーダ装置1vは、ターゲットが検出されない離散時刻kにおいて、冗長な算出を不要とし、レーダ受信部3vにおける処理遅延を低減できる。
【0303】
出力選択部30vは、ピークドップラ周波数検出部28vからの出力fselectG(k,z)を基に、g(k,z)個のfselectG(k,z)成分における各比較結果DS_LEV(k,fselectG(k,z),z)に応じた各相関行列BDS_LEV(k,fselect,z)(k,fselect(k,z),z)を離散時刻k毎に到来方向推定部31vに出力する。なお、g(k,z)=0では、出力選択部30vは、離散時刻kにおける相関行列の出力を「0(ゼロ)」としても良い。
【0304】
到来方向推定部31vは、離散時刻k毎に出力選択部30vにより出力された加算結果成分A(k,fselectG(k,z),z)を入力する。到来方向推定部31vは、離散時刻k毎に入力された出力A(k,fselectgg(k,z),z)を基に、ターゲットからの反射波の到来方向を推定する。
【0305】
以上により、レーダ装置1vは、各アンテナ系列処理部において、相関演算部19の出力が、FFT処理部21により周波数成分毎にコヒーレント積分された値と、FFT処理部21によりコヒーレント積分した後に、バッファ部24によりバッファすることで、コヒーレント積分数を増やした値と、を生成する。更に、レーダ装置1は、各アンテナ系列処理部が生成したコヒーレント積分数が異なる複数の値を用いて、第1相関行列生成部25及び第2相関行列生成部26において、それぞれ周波数成分毎の相関行列を生成し、ピークドップラ周波数検出部28vにおいて、ドップラスプレッドの大きさに応じて、どちらかの相関行列を選択し、選択された相関行列を用いて到来角を推定する。
【0306】
これにより、レーダ装置1は、ターゲットからの反射波に含まれるドップラスプレッドが小さい場合は、より大きいコヒーレント積分数によりコヒーレント積分して生成した第2の相関行列生成部において生成される相関行列を選択するため、より高いコヒーレント利得が得られた相関行列を用いて到来角を推定できる。
【0307】
一方、ターゲットからの反射波に含まれるドップラスプレッドが大きい場合は、より小さいコヒーレント積分数によりコヒーレント積分して生成した第1の相関行列生成部において生成される相関行列を選択するため、より高いノンコヒーレント利得が得られた相関行列を用いて到来角を推定できる。
【0308】
これにより、レーダ装置1は、ターゲットからの反射波に含まれるドップラスペクトルの広がりの大小に拘わらず、コヒーレント積分利得を簡易な構成を用いて高め、反射波の到来方向の推定精度を向上できる。
【0309】
(第2の実施形態の変形例1)
第2の実施形態の変形例1では、ドップラ成分加算部は、ピークドップラ周波数検出部により選択されたドップラ周波数成分を中心とした所定の周波数範囲成分における各相関行列を加算し、到来方向推定部に出力する。
【0310】
図11は、第2の実施形態の変形例1のレーダ装置1wの内部構成を詳細に示すブロック図である。レーダ装置1wと第2の実施形態のレーダ装置1vとの各部の構成及び動作が同一のブロックには、同一の符号が付されている。以下、レーダ装置1wの構成及び動作の説明において、同一の構成及び動作の内容に関しては省略し、レーダ装置1vの構成及び動作と異なる内容に関して説明する。
【0311】
図11において、レーダ装置1wは、レーダ装置1vにドップラ成分加算部34を更に含む構成である。図11において、出力選択部30wは、図10の出力選択部30vと異なる動作をする。
【0312】
ピークドップラ周波数検出部28vからの出力は、速度推定部29、出力選択部30w及びドップラ成分加算部34にそれぞれ入力される。
【0313】
出力選択部30wは、離散時刻k毎に、ピークドップラ周波数検出部28vにより出力されたドップラ周波数成分fselect(k,z)及び比較結果DS_LEV(k,fselect,z)、並びに各相関行列生成部により出力されたドップラ周波数成分毎の各相関行列を入力する。
【0314】
出力選択部30wは、ドップラ周波数成分fselect(k,z)及び比較結果DS_LEV(k,fselect,z)を基に、ドップラ周波数成分fselect(k,z)及び隣接する所定の周波数範囲成分[−DF[DS_LEV(k,fselect,z)],+DF[DS_LEV(k,fselect,z)]]における各相関行列を、離散時刻k毎にドップラ成分加算部34に出力する。
【0315】
パラメータDF[DS_LEV(k,fselect,z)]は、数式(52)に示す値である。なお、range_fは、所定の正の値である。
【0316】
【数52】

【0317】
また、第2の実施形態の変形例1において図7の第3相関行列生成部を有する場合には、パラメータDF[DS_LEV(k,fselect,z)]は、数式(53)に示す値となる。なお、第1相関行列生成部25の入力は第3相関行列生成部33の入力よりもコヒーレント積分数が少ないため、range_f及びrange_fは、所定の正の値であって、range_f>range_fとする。
【0318】
【数53】

【0319】
ドップラ成分加算部34は、出力選択部30wからの出力を基に、ピークドップラ周波数検出部28vにより選択されたドップラ周波数成分fselect(k,z)を中心とした所定の周波数範囲成分[−DF[DS_LEV(k,fselect,z)],+DF[DS_LEV(k,fselect,z)]]における各相関行列を加算する(数式(54)参照)。
【0320】
ドップラ成分加算部34は、数式(54)に従って加算されたドップラ成分加算結果sum_A(k,fselect(k,z),z)を到来方向推定部31wに出力する。
【0321】
【数54】

【0322】
到来方向推定部31wは、離散時刻k毎にドップラ成分加算部34により出力されたドップラ成分加算結果sum_A(k,fselect(k,z),z)を入力する。到来方向推定部31wは、離散時刻k毎に入力された出力sum_A(k,fselect(k,z),z)を基に、fselect(k,z)毎にターゲットからの反射波の到来方向を推定する。
【0323】
以上により、レーダ装置1wは、ピークドップラ周波数検出部において検出されたドップラスプレッドが大きい場合に、ドップラスプレッドの範囲に広がった受信信号に応じてターゲットからの反射波の到来方向を推定できる。更に、レーダ装置1wは、ピークドップラ周波数検出部において検出されたドップラスプレッドが大きい場合でも、ターゲットからの反射波の到来方向の推定精度を改善できる。
【0324】
(第3の実施形態)
上述した各実施形態では、ターゲットからの反射波の到来方向を推定する例を説明した。以下の各実施形態においては、レーダ装置からターゲットまでの距離を推定する例を説明する。
【0325】
第3の実施形態では、レーダ装置1xは、第1の実施形態のレーダ装置1の構成を基に、レーダ装置1xからターゲットまでの距離を推定する。
【0326】
図12は、第3の実施形態のレーダ装置1xの内部構成を簡単に示すブロック図である。図13は、第3の実施形態のレーダ装置1xの内部構成を詳細に示すブロック図である。レーダ装置1xと第1の実施形態のレーダ装置1との各部の構成及び動作が同一のブロックには、同一の符号が付されている。以下、レーダ装置1xの構成及び動作の説明において、同一の構成及び動作の内容に関しては省略し、レーダ装置1の構成及び動作と異なる内容に関して説明する。
【0327】
レーダ装置1xは、図12に示す様に、レーダ送信部2及びレーダ受信部3xを含む構成である。レーダ送信部2は、送信信号生成部4、及び、送信アンテナAN1と接続される送信RF部5を有する。レーダ送信部2及びレーダ受信部3xは、基準信号発振器Loに接続され、基準信号発振器Loから信号が供給され、レーダ送信部2及びレーダ受信部3xが同期して動作する。
【0328】
レーダ受信部3xは、図12に示す様に、アンテナ系統処理部11−1、第1ノンコヒーレント積分部35、第2ノンコヒーレント積分部36、加算部27x及び距離推定部37を含む構成である。レーダ受信部3xは1個以上のアンテナ系統処理部を有するが、図12には1個のアンテナ系統処理部11−1が図示されている。
【0329】
なお、アンテナ系統処理部11−1、第1ノンコヒーレント積分部35及び第2ノンコヒーレント積分部36を複数系統用いても良い。複数系統を用いる場合、複数の第2ノンコヒーレント積分部33の出力を、加算部において、加算する構成となる。これにより、複数系統の雑音成分は無相関であるため、加算部におけるノンコヒーレント利得を一層高めることができる。
【0330】
アンテナ系統処理部11−1は、受信アンテナAN2と接続される受信RF部12、相関値算出部19、コヒーレント積分部20、及びFFT処理部21を少なくとも有する。
【0331】
次に、レーダ受信部3xの各部の構成について、図13を参照して詳細に説明する。
【0332】
レーダ受信部3xは、図13に示す様に、アンテナ系統処理部11−1、第1ノンコヒーレント積分部35、第2ノンコヒーレント積分部36、加算部27x、ピークドップラ周波数検出部28x、速度推定部29、出力選択部30x及び距離推定部37を含む構成である。
【0333】
次に、レーダ受信部3xの各部の動作について、第1の実施形態のレーダ装置1と異なる部分について詳細に説明する。
【0334】
第1ノンコヒーレント積分部35は、アンテナ系統処理部11−1のFFT処理部21により出力されたコヒーレント積分結果(数式(16)参照)を入力する。第1ノンコヒーレント積分部35は、Nmax回の送信周期Tのうち、送信周期Tの(N×N)回毎に得られたFFT処理部21からのDpc個のコヒーレント積分結果を自乗加算処理する(数式(55)参照)。
【0335】
第1ノンコヒーレント積分部35は、送信周期TのNmax回毎に、自乗加算値E(k,f,z)を加算部27xに出力する。数式(55)は、送信周期TのNmax×(z−1)からNmax×z回において、第1ノンコヒーレント積分部35から出力される自乗加算値E(k,f,z)を示す。
【0336】
【数55】

【0337】
第2ノンコヒーレント積分部36は、アンテナ系統処理部11−1のバッファ部24により出力されたコヒーレント積分結果(数式(23)参照)を入力する。第2ノンコヒーレント積分部36は、送信周期TのNmax回毎に得られたバッファ部24からのコヒーレント積分結果を自乗処理する(数式(56)参照)。第2ノンコヒーレント積分部36は、送信周期TのNmax回毎に、自乗加算値E(k,f,z)を加算部27xに出力する。数式(56)は、送信周期TのNmax×(z−1)からNmax×z回において、第2ノンコヒーレント積分部36から出力される自乗加算値E(k,f,z)を示す。
【0338】
【数56】

【0339】
又は、バッファ部24が過去に生成された(N×Nmax)回の送信周期Tにおける積分数Nmax回のコヒーレント積分結果(Buf(k,f,z−N)〜Buf(k,f,z−1))を記憶しているとする。第2ノンコヒーレント積分部36は、これらの記憶されているコヒーレント積分結果を用いて自乗加算値E(k,f,z)を算出しても良い。
【0340】
具体的には、第2ノンコヒーレント積分部36は、(N×Nmax)回の送信周期Tにおける積分数Nmax回のコヒーレント積分結果(Buf(k,f,z−N)〜Buf(k,f,z−1))を基に、離散時刻k毎に自乗加算値E(k,f,z)を算出する(数式(57)参照)。
【0341】
これにより、レーダ装置1xは、ターゲットの移動速度が十分に小さい場合に、雑音成分を抑圧することにより、SNRを改善でき、ターゲットからの反射波の到来方向の推定精度を向上できる。
【0342】
第2ノンコヒーレント積分部36は、Nmax回の送信周期T毎に、自乗加算値Eを加算部27x及びピークドップラ周波数検出部28xにそれぞれ出力する。
【0343】
【数57】

【0344】
加算部27xは、第1ノンコヒーレント積分部35からの出力と第2ノンコヒーレント積分部36からの出力とを基に、数式(58)に従って各ノンコヒーレント積分部からの各出力を加算する。
【0345】
具体的には、加算部27xは、第1ノンコヒーレント積分部35により離散時刻k毎の2N−1個の異なるドップラ周波数成分f毎に算出された自乗加算値E(k,f,z)と、第2ノンコヒーレント積分部36により離散時刻k毎の2N−1個の異なるドップラ周波数成分f毎に算出された自乗加算値E(k,f,z)とを加算する。
【0346】
【数58】

【0347】
加算部27xは、各ノンコヒーレント積分部からの各出力である各自乗加算値の加算時に、各自乗加算値の成分の大きさに比例した重み付け係数αを乗じて加算しても良い(数式(59)、数式(60)参照)。加算部27xは、数式(58)又は数式(59)の加算結果を出力選択部30xに出力する。
【0348】
【数59】

【0349】
【数60】

【0350】
なお、第3の実施形態において、図6に示した様に、加算部27xは、ピークドップラ周波数検出部28xの出力を入力し、離散時刻k毎に選択されたドップラ周波数成分fselect(k,z)に応じた自乗加算値を加算しても良い(数式(61)参照)。これにより、レーダ装置1xは、加算部27xにおける算出量を低減できる。
【0351】
【数61】

【0352】
ピークドップラ周波数検出部28xは、第2ノンコヒーレント積分部36からの出力、即ち、Nmax回の送信周期T毎に2N−1個の異なるドップラ周波数成分fに応じて得られた自乗加算値E(k,f,z)を入力する。ピークドップラ周波数検出部28xは、入力された各ドップラ周波数成分fに応じて得られた自乗加算値E(k,f,z)のうち、離散時刻k毎にコヒーレント積分利得が最大の自乗加算値のドップラ周波数成分fselect(k,z)を選択する。
【0353】
具体的には、ピークドップラ周波数検出部28xは、入力された自乗加算値E(k,f,z)のうち、コヒーレント積分後の平均受信電力成分に相当する自乗加算値の成分が最大となる自乗加算値のドップラ周波数成分fselect(k,z)を選択する。即ち、ピークドップラ周波数検出部28xは、数式(62)に従って、コヒーレント積分後の平均受信電力成分に相当する自乗加算値の成分が最大となる自乗加算値のドップラ周波数成分fselect(k,z)を選択する。
【0354】
【数62】

【0355】
ピークドップラ周波数検出部28xは、離散時刻k毎に選択されたドップラ周波数成分fselect(k,z)の情報を、速度推定部29及び出力選択部30xにそれぞれ出力する。
【0356】
なお、距離推定部37は、ピークドップラ周波数検出部28xが、離散時刻kにおける自乗加算値E(k,f,z)が所定レベルを満たさないと判断した場合、離散時刻kにおけるターゲットまでの距離を推定しなくても良い。
【0357】
又は、ピークドップラ周波数検出部28xは、離散時刻kにおける自乗加算値E(k,f,z)が所定レベルを満たさない場合、ドップラ周波数成分fselect(k,z)をヌルとする。これにより、レーダ装置1xは、ターゲットが検出されない離散時刻kにおいて、冗長な算出を不要とし、レーダ受信部3xにおける処理遅延を低減できる。
【0358】
なお、加算部27xには、ピークドップラ周波数検出部28xからの出力が入力される(図6参照)。加算部27xは、ピークドップラ周波数検出部28xが、離散時刻kにおける自乗加算値E(k,f,z)が所定レベルを満たさないと判断した場合、加算処理を行わなくても良い。これにより、レーダ装置1xは、ターゲットが検出されない離散時刻kにおいて、冗長な算出を不要とし、レーダ受信部3xにおける処理遅延を低減できる。
【0359】
出力選択部30は、離散時刻k毎に、ピークドップラ周波数検出部28xにより出力されたドップラ周波数fselect(k,z)、及び加算部27xにより出力された加算結果(数式(58)、数式(59)又は数式(60)参照)が入力される。
【0360】
出力選択部30は、加算部27xからの加算結果から、ピークドップラ周波数検出部28xから出力されたドップラ周波数fselect(k,z)に応じた自乗加算値AE(k,fselect(k,z),z)を離散時刻k毎に選択する。出力選択部30は、離散時刻k毎に選択された自乗加算値AE(k,fselect(k,z),z)を距離推定部37に出力する。
【0361】
距離推定部37は、離散時刻k毎に出力選択部30により出力された自乗加算値の加算値AE(k,fselect(k,z),z)が入力される。距離推定部37は、入力された自乗加算値の加算値AE(k,fselect(k,z),z)を基に、ターゲットまでの距離を推定する。
【0362】
具体的には、距離推定部37は、離散時刻k毎に得られた自乗加算値の加算値AE(k,fselect(k,z),z)が所定のしきい値を超える場合に、ターゲットからの反射波が存在すると判定する。距離推定部37は、ターゲットからの反射波の存在の判定時における離散時刻kを基に、数式(63)に従って、レーダ装置からターゲットまでの距離に換算し推定結果を出力する。
【0363】
なお、所定のしきい値は、誤警報率(CFAR:Constant False Alarm Rate)が所定以下となる様に設定される。数式(63)において、パラメータcは光速[m/s]である。
【0364】
【数63】

【0365】
また、ピークドップラ周波数検出部28xは、複数のドップラ周波数のピークが検出される場合には、g(k,z)個のドップラ周波数成分を用いたfselectG(k,z)を出力しても良い。パラメータGは、自然数であり、1〜g(k、z)である。
【0366】
出力選択部30は、離散時刻k毎のピークドップラ周波数検出部28の選択結果であるfselectG(k,z)を基に、加算部27xの出力のうち、g(k,z)個のドップラ周波数成分fselectG(k,z)の各相関行列A(k,fselectG(k,z),z)を距離推定部37に出力する。
【0367】
距離推定部37は、離散時刻k毎に出力選択部30から入力された自乗加算値AE(k,fselectgg(k,z),z)を基に、g(k,z)個のfselectG(k,z)成分毎に、ターゲットまでの距離を推定する。
【0368】
以上により、レーダ装置1xは、ターゲットからの反射波に含まれるドップラスペクトルの広がりの大小に拘わらず、コヒーレント積分及びノンコヒーレント積分による積分利得を改善し、ターゲットまでの距離の推定精度を向上できる。
【0369】
(第3の実施形態の変形例1)
第3の実施形態の変形例1では、第3の実施形態のレーダ装置1xの信号処理部13が、パラメータNmaxを更に複数の区間に分割した送信区間Nsub毎に、コヒーレント積分する第2バッファ部を更に含む。
【0370】
更に、第3の実施形態の変形例1では、第3の実施形態のレーダ装置1xのレーダ受信部3xが、第2バッファ部からの出力を基に自乗加算値を算出する第3ノンコヒーレント積分部を更に含む。
【0371】
但し、パラメータNmax、Nsub及びNは、自然数であり、数式(37)が成立する。更に、Nmax/Nsubが整数であることが好ましい。
【0372】
以下、第3の実施形態の変形例1のレーダ装置において、上述した第2バッファ部及び第3ノンコヒーレント積分部の動作について説明する。但し、第3の実施形態の変形例1のレーダ装置において、第2バッファ部及び第3ノンコヒーレント積分部を除く他の各部の構成及び動作は、第3の実施形態のレーダ装置1xと同一であるため、説明を省略する。
【0373】
なお、第3の実施形態の変形例1において、加算部の動作が第3の実施形態と異なるため、加算部の動作も説明する。
【0374】
第3の実施形態の変形例1において、係数乗算部23の出力は、第1バッファ部及び第2バッファ部にそれぞれ出力される。
第2バッファ部への入力は、送信周期TのNmax×(z−1)からNmax×z回のうち、送信周期Tの(N×N)×(w−1)から(N×N)×w回の間に得られたFFT処理部21からの各出力と、係数生成部22により出力された各係数との乗算結果である。
【0375】
第2バッファ部は、Nmax回の送信周期Tにわたり、パラメータw=1〜Dpc_subの期間において離散時刻k毎に係数乗算部23により出力されたDpc_sub個の乗算結果を加算する。なお、パラメータDpc_subは、数式(38)によって示される。
【0376】
第2バッファ部の加算処理は、積分数Dpc_sub個のコヒーレント積分に相当する。即ち、第2バッファ部は、送信周期TのNmax×(z−1)回目からNmax×z回目において、第2バッファ部のFloor[Nmax/Nsub]回のコヒーレント積分の結果として、数式(39)に示すコヒーレント積分結果を第3ノンコヒーレント積分部に出力する。
【0377】
第3ノンコヒーレント積分部には、アンテナ系統処理部11の第2バッファ部が出力したコヒーレント積分結果(Buf(k,f,z,y))が入力される。
【0378】
第3ノンコヒーレント積分部は、入力されたコヒーレント積分結果(Buf(k,f,z,y))を基に、離散時刻k毎に自乗加算値E(k,f,z)を算出する。自乗加算値E(k,f,z)は、数式(64)に従って算出される。
【0379】
第3ノンコヒーレント積分部は、Nmax回の送信周期T毎に、自乗加算値E(k,f,z)を加算部27xに出力する。
【0380】
【数64】

【0381】
加算部は、第1ノンコヒーレント積分部、第2ノンコヒーレント積分部及び第3ノンコヒーレント積分部からの各出力である自乗加算値が入力される。加算部は、入力された各ノンコヒーレント積分部からの出力を基に、数式(65)に従って各出力の加算結果を算出する。
【0382】
具体的には、加算部は、第1ノンコヒーレント積分部35,第2ノンコヒーレント積分部36,第3ノンコヒーレント積分部により離散時刻k毎の2N−1個の異なるドップラ周波数成分f毎に算出された各自乗加算値E(k,f,z),E(k,f,z),E(k,f,z)を加算する。
【0383】
【数65】

【0384】
加算部は、各ノンコヒーレント積分部からの出力である各自乗加算値の加算時に、自乗加算値の成分の大きさに比例した重み付け係数αを乗じて加算しても良い(数式(66)、数式(67)参照)。加算部は、数式(66)又は数式(67)の加算結果を出力選択部30xに出力する。出力選択部30x以降の動作は、第3の実施形態のレーダ装置1xと同様のため、説明を省略する。
【0385】
【数66】

【0386】
【数67】

【0387】
なお、パラメータNmaxをパラメータNsubよりも更に複数の区間に分割した送信区間を設けるとする。コヒーレント積分する第3,第4,…バッファ部と、各バッファ部からの出力を基に相関行列を生成する第4,第5,…相関行列生成部を同様に設ければ良い。
【0388】
以上により、第3の実施形態の変形例2のレーダ装置は、レーダ装置1の効果に加え、ターゲットからの反射波に含まれるドップラスプレッドが比較的広い場合において、ドップラスプレッドが中程度の大きさを有する反射波の到来方向の推定精度を改善できる。
【0389】
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、レーダ装置1yは、第2の実施形態のレーダ装置1vの構成を基に、レーダ装置1yからターゲットまでの距離を推定する。
【0390】
図14は、第4の実施形態のレーダ装置1yの内部構成を簡単に示すブロック図である。図15は、第4の実施形態のレーダ装置1yの内部構成を詳細に示すブロック図である。レーダ装置1yと第2の実施形態のレーダ装置1vとの各部の構成及び動作が同一のブロックには、同一の符号が付されている。以下、レーダ装置1yの構成及び動作の説明において、同一の構成及び動作の内容に関しては省略し、レーダ装置1vの構成及び動作と異なる内容に関して説明する。
【0391】
レーダ装置1yは、図14に示す様に、レーダ送信部2及びレーダ受信部3yを含む構成である。レーダ送信部2は、送信信号生成部4、及び、送信アンテナAN1と接続される送信RF部5を含む構成である。レーダ送信部2及びレーダ受信部3yは、基準信号発振器Loに接続され、基準信号発振器Loから信号が供給され、レーダ送信部2及びレーダ受信部3yが同期して動作する。
【0392】
レーダ受信部3yは、アンテナ系統処理部11−1、第1ノンコヒーレント積分部35、第2ノンコヒーレント積分部36、ピークドップラ周波数検出部28y、出力選択部30y及び距離推定部37yを含む構成である。レーダ受信部3yは1個以上のアンテナ系統処理部を有し、図14には1個のアンテナ系統処理部11−1が図示されている。
【0393】
アンテナ系統処理部11−1は、受信アンテナAN2と接続される受信RF部12、相関値算出部19、コヒーレント積分部20、及びFFT処理部21を少なくとも有する。
【0394】
次に、レーダ受信部3yの各部の構成について、図15を参照して詳細に説明する。
【0395】
レーダ受信部3yは、図15に示す様に、アンテナ系統処理部11−1、第1ノンコヒーレント積分部35、第2ノンコヒーレント積分部36、ピークドップラ周波数検出部28y、速度推定部29、出力選択部30y及び距離推定部37yを含む構成である。
【0396】
次に、レーダ受信部3yの各部の動作について、第2の実施形態のレーダ装置1vと異なる部分について詳細に説明する。
【0397】
第1ノンコヒーレント積分部35及び第2ノンコヒーレント積分部36の動作は第3の実施形態のレーダ装置1xと同様であるため、説明を省略する。
【0398】
ピークドップラ周波数検出部28yは、第2ノンコヒーレント36からの出力、即ち、Nmax回の送信周期T毎に2N−1個の異なるドップラ周波数成分fに応じて得られた自乗加算値E(k,f,z)を入力する。ピークドップラ周波数検出部28yは、入力された各ドップラ周波数成分fに応じて得られた自乗加算値E(k,f,z)のうち、離散時刻k毎にコヒーレント積分利得が最大の自乗加算値E(k,f,z)のドップラ周波数成分fselect(k,z)を選択する。
【0399】
具体的には、ピークドップラ周波数検出部28yは、自乗加算値E(k,f,z)のうち、コヒーレント積分後の平均受信電力成分に相当する自乗加算値E(k,f,z)の成分が最大となる自乗加算値E(k,f,z)のドップラ周波数成分fselect(k,z)を選択する。即ち、ピークドップラ周波数検出部28yは、数式(68)に従って、コヒーレント積分後の平均受信電力成分に相当する自乗加算値E(k,f,z)の成分が最大となる自乗加算値E(k,f,z)のドップラ周波数成分fselect(k,z)を選択する。
【0400】
【数68】

【0401】
ピークドップラ周波数検出部28yは、離散時刻k毎に選択されたドップラ周波数成分fselect(k,z)を、速度推定部29及び出力選択部30yにそれぞれ出力する。
【0402】
更に、ピークドップラ周波数検出部28yは、選択されたドップラ周波数成分fselect(k,z)を中心とし、ドップラ周波数成分fselect(k,z)に隣接する所定の周波数範囲におけるドップラスプレッドを検出する。ピークドップラ周波数検出部28yは、数式(69)又は数式(70)に従って、ドップラスプレッドを検出する。
【0403】
【数69】

【0404】
【数70】

【0405】
数式(69)は、ドップラスプレッドを、±Δf離れた2点を基に検出する方式である。数式(70)は、ドップラスプレッドを、所定の周波数範囲2Δf内におけるドップラスペクトルを用いて検出する方式である。
【0406】
ピークドップラ周波数検出部28yは、数式(69)又は数式(70)に従って算出されたドップラスプレッドDS(k,fselect,z)と所定値THとの比較結果DS_LEV(k,fselect,z)を出力選択部30yに出力する。比較結果DS_LEV(k,fselect,z)は、例えば1ビットの情報によって示される。
【0407】
所定値TH及び所定値THは、ドップラ周波数成分毎に生成された相関行列の対角成分の和が最大となる相関行列の選択によってSNRの改善が見込めるかどうかを示すしきい値である。
【0408】
具体的には、ピークドップラ周波数検出部28yは、ドップラスプレッドDS(k,fselect,z)が所定値TH以上である場合には、比較結果DS_LEV(k,fselect,z)を「0(ゼロ)」として出力選択部30yに出力する(数式(49)参照)。
【0409】
同様に、ピークドップラ周波数検出部28vは、ドップラスプレッドDS(k,fselect,z)が所定値TH未満である場合には、比較結果DS_LEV(k,fselect,z)を「1」として出力選択部30vに出力する(数式(49)参照)。
【0410】
また、第4の実施形態において上述した第3ノンコヒーレント積分部を有する場合、ピークドップラ周波数検出部28yは、ドップラスプレッドDS(k,fselect,z)と所定値THと所定値THとの比較結果DS_LEV(k,fselect,z)を出力選択部30yに出力する。比較結果DS_LEV(k,fselect,z)は、例えば2ビットの情報によって示される。なお、所定値THは所定値THより小さいとする。
【0411】
具体的には、ピークドップラ周波数検出部28yは、ドップラスプレッドDS(k,fselect,z)が所定値TH以上である場合には、比較結果DS_LEV(k,fselect,z)を「0(ゼロ)」として出力選択部30yに出力する(数式(50)参照)。
【0412】
同様に、ピークドップラ周波数検出部28yは、ドップラスプレッドDS(k,fselect,z)が所定値TH以上であって所定値TH未満である場合には、比較結果DS_LEV(k,fselect,z)を「2」として出力選択部30yに出力する(数式(50)参照)。
【0413】
同様に、ピークドップラ周波数検出部28yは、ドップラスプレッドDS(k,fselect,z)が所定値TH未満である場合には、比較結果DS_LEV(k,fselect,z)を「1」として出力選択部30yに出力する(数式(50)参照)。
【0414】
また、第4の実施形態においてレーダ装置1yがN個のノンコヒーレント積分部を有する場合、ピークドップラ周波数検出部28yは、ドップラスプレッドDS(k,fselect,z)とN−1個の所定値THを用いて数式(49)、数式(50)と同様に比較する。ピークドップラ周波数検出部28yは、ドップラスプレッドDS(k,fselect,z)が大きいほどコヒーレント積分数が少ないノンコヒーレント積分部の出力が出力選択部30yにより選択される様にドップラスプレッドDS(k,fselect,z)を出力する。
【0415】
なお、第4の実施形態のレーダ装置1yにおいては、第1ノンコヒーレント積分部35のコヒーレント積分数は、第2ノンコヒーレント積分部36のコヒーレント積分数より少ない。
【0416】
出力選択部30yは、離散時刻k毎に、ピークドップラ周波数検出部28yにより出力されたドップラ周波数成分fselect(k,z)及び比較結果DS_LEV(k,fselect,z)、並びに各ノンコヒーレント積分部により出力されたドップラ周波数成分毎の各自乗加算値を入力する。
【0417】
出力選択部30yは、ドップラ周波数成分fselect(k,z)及び比較結果DS_LEV(k,fselect,z)を基に、入力された自乗加算値のうち自乗加算値AEDS_LEV(k,fselect,z)(k,fselect,z)を、離散時刻k毎に距離推定部37yに出力する(数式(71)参照)。
【0418】
【数71】

【0419】
なお、ピークドップラ周波数検出部28yは、離散時刻kにおいてg(k,z)個のドップラ周波数のピークが検出される場合には、g(k,z)個のドップラ周波数成分を用いたfselectG(k,z)を出力しても良い。パラメータGは、自然数であり、1〜g(k、z)である。
【0420】
ピークドップラ周波数検出部28yは、g(k,z)個のドップラ周波数成分を用いたfselectG(k,z)に対し、それぞれドップラスプレッドDS(k,fselectG(k,z),z)を数式(69)又は数式(70)に従って算出する。
【0421】
更に、ピークドップラ周波数検出部28yは、算出されたドップラスプレッドDS(k,fselectG(k,z),z)と所定値THとの比較結果DS_LEV(k,fselectG(k,z),z)を出力選択部30yに出力する。
【0422】
なお、距離推定部37yは、ピークドップラ周波数検出部28yが、離散時刻kにおける自乗加算値E(k,f,z)が所定レベルを満たさないと判断した場合、離散時刻kにおけるターゲットまでの距離を推定しなくても良い。
【0423】
又は、ピークドップラ周波数検出部28yは、離散時刻kにおける自乗加算値E(k,f,z)が所定レベルを満たさない場合、ドップラ周波数成分fselect(k,z)をヌルとする。これにより、レーダ装置1yは、ターゲットが検出されない離散時刻kにおいて、冗長な算出を不要とし、レーダ受信部3yにおける処理遅延を低減できる。
【0424】
出力選択部30yは、ピークドップラ周波数検出部28yから入力されるfselectG(k,z)を基に、g(k,z)個のfselectG(k,z)成分における各比較結果DS_LEV(k,fselectG(k,z),z)に応じた各自乗加算値EDS_LEV(k,fselect,z)(k,fselect(k,z),z)を離散時刻k毎に距離推定部37yに出力する。なお、g(k,z)=0では、出力選択部30yは、離散時刻kにおける自乗加算値E(k,f,z)の出力を「0(ゼロ)」としても良い。
【0425】
距離推定部37yは、離散時刻k毎に出力選択部30yから出力された自乗加算値AE(k,fselectG(k,z),z)が入力される。距離推定部37yは、離散時刻k毎に入力された自乗加算値AE(k,fselectG(k,z),z)を基に、ターゲットまでの距離を推定する(数式(63)参照)。
【0426】
以上により、レーダ装置1yは、ターゲットからの反射波に含まれるドップラスペクトルの広がりに応じて、コヒーレント積分及びノンコヒーレント積分による最大の積分利得を得る場合に自乗加算値を選択する。これにより、レーダ装置1yは、ターゲットからの反射波の受信時におけるSNRを改善し、ターゲットまでの距離の推定精度を向上できる。
【0427】
(第4の実施形態の変形例1)
第4の実施形態の変形例1では、ドップラ成分加算部は、ピークドップラ周波数検出部により選択されたドップラ周波数成分を中心とした所定の周波数範囲成分における各自乗加算値を加算し、距離推定部に出力する。
【0428】
図16は、第4の実施形態の変形例1のレーダ装置1zの内部構成を詳細に示すブロック図である。レーダ装置1zと第4の実施形態のレーダ装置1yとの各部の構成及び動作が同一のブロックには、同一の符号が付されている。以下、レーダ装置1zの構成及び動作の説明において、同一の構成及び動作の内容に関しては省略し、レーダ装置1yの構成及び動作と異なる内容に関して説明する。
【0429】
図16において、レーダ装置1zは、レーダ装置1yにドップラ成分加算部34zを更に含む構成である。図16において、出力選択部30zは、図15の出力選択部30yと異なる動作をする。
【0430】
ピークドップラ周波数検出部28yから出力されるドップラ周波数成分fselect(k,z)及び比較結果DS_LEV(k,fselect,z)は、速度推定部29、出力選択部30z及びドップラ成分加算部34zにそれぞれ入力される。
【0431】
出力選択部30zは、離散時刻k毎に、ピークドップラ周波数検出部28yにより出力されたドップラ周波数成分fselect(k,z)及び比較結果DS_LEV(k,fselect,z)、並びに各ノンコヒーレント積分部により出力されたドップラ周波数成分毎の各自乗加算値を入力する。
【0432】
出力選択部30zは、ドップラ周波数成分fselect(k,z)及び比較結果DS_LEV(k,fselect,z)を基に、ドップラ周波数成分fselect(k,z)及び隣接する所定の周波数範囲成分[−DF[DS_LEV(k,fselect,z)],+DF[DS_LEV(k,fselect,z)]]における各自乗加算値を、離散時刻k毎にドップラ成分加算部34zに出力する。
【0433】
パラメータDF[DS_LEV(k,fselect,z)]は、数式(52)に示す値である。なお、range_fは、所定の値である。
【0434】
また、第4の実施形態の変形例1において、上述した第3ノンコヒーレント積分部を有する場合には、パラメータDF[DS_LEV(k,fselect,z)]は、数式(53)に示す値である。なお、第1ノンコヒーレント積分部35の入力は第3ノンコヒーレント積分部の入力よりもコヒーレント積分数が少ないため、range_f及びrange_fは、所定の正の値であって、range_f>range_fとする。
【0435】
ドップラ成分加算部34zは、出力選択部30zからの出力を基に、ピークドップラ周波数検出部28yにより選択されたドップラ周波数成分fselect(k,z)を中心とした所定の周波数範囲成分[−DF[DS_LEV(k,fselect,z)],+DF[DS_LEV(k,fselect,z)]]における各自乗加算値を加算する(数式(72)参照)。
【0436】
ドップラ成分加算部34zは、数式(72)に従って加算された加算結果を距離推定部37yに出力する。
【0437】
【数72】

【0438】
距離推定部37zは、離散時刻k毎にドップラ成分加算部34zからの出力sum_E(k,fselect(k,z),z)を入力する。距離推定部37zは、離散時刻k毎に入力された出力sum_E(k,fselect(k,z),z)を基に、fselect(k,z)毎に、ターゲットまでの距離を推定する。
【0439】
以上により、レーダ装置1zは、ピークドップラ周波数検出部において検出されたドップラスプレッドが大きい場合に、ドップラスプレッドの範囲に広がった受信信号に含めてターゲットまでの距離を推定できる。これにより、レーダ装置1zは、ピークドップラ周波数検出部において検出されたドップラスプレッドが大きい場合でも、ターゲットまでの距離の推定精度を改善できる。
【0440】
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本発明のレーダ装置はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0441】
本発明は、ターゲットからの反射波に含まれるドップラスペクトルの広がりに拘わらず、簡易な構成を用いてコヒーレント積分利得あるいはノンコヒーレント利得を高め、反射波の到来方向あるいは距離の推定精度を向上するレーダ装置として有用である。
【符号の説明】
【0442】
1、1r、1s、1u、1v、1w、1x、1y、1z レーダ装置
2 レーダ送信部
3、3r、3s、3u、3v、3w、3x、3y、3z レーダ受信部
4 送信信号生成部
5 送信RF部
6 符号生成部
7 変調部
8 LPF
9、15 周波数変換部
10、14 増幅器
11−1、11−2、11−3、11−4、11u−1、11u−2、11u−3、11u−4 アンテナ系統処理部
12 受信RF部
13、13s、13u 信号処理部
16 直交検波部
17、18 A/D変換部
19 相関値算出部
20 コヒーレント積分部
21、21u FFT処理部
22 係数生成部
23 係数乗算部
24、24u バッファ部
24s 第1バッファ部
25 第1相関行列生成部
26 第2相関行列生成部
27、27r、27s、27x 加算部
28、28r、28v、28x、28y ピークドップラ周波数検出部
29 速度推定部
30、30r、30v、30w、30y、30z 出力選択部
31、31v、31w 到来方向推定部
32 第2バッファ部
33 第3相関行列生成部
34、34z ドップラ成分加算部
35 第1ノンコヒーレント積分部
36 第2ノンコヒーレント積分部
37、37y、37z 距離推定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信信号を高周波送信信号に変換し、前記高周波送信信号を送信アンテナから送信するレーダ送信部と、
複数の受信アンテナを用いて、ターゲットにより反射された前記高周波送信信号である反射波を基に、前記反射波の到来方向を推定するレーダ受信部と、を含み、
前記レーダ受信部は、
受信信号と前記送信信号との相関値を基に、異なる複数のドップラ周波数に応じた位相変動の補正量を用いてコヒーレント積分する複数のアンテナ系統処理部と、
複数の前記コヒーレント積分の各出力を基に、前記複数の受信アンテナの配置に起因する位相差情報である相関行列を、前記異なる複数のドップラ周波数毎に生成する複数の相関行列生成部と、
前記複数の相関行列生成部の出力を、加算する加算部と、
前記加算部の出力を基に、前記ターゲットからの前記反射波の到来方向を推定する到来方向推定部と、を有するレーダ装置。
【請求項2】
送信信号を高周波送信信号に変換し、前記高周波送信信号を送信アンテナから送信するレーダ送信部と、
複数の受信アンテナを用いて、ターゲットにより反射された前記高周波送信信号である反射波を基に、前記反射波の到来方向を推定するレーダ受信部と、を含み、
前記レーダ受信部は、
受信信号と前記送信信号との相関値を基に、異なる複数のドップラ周波数に応じた位相変動の補正量を用いて、第1の積分数及び第2の積分数のコヒーレント積分する複数のアンテナ系統処理部と、
複数の前記第1の積分数及び第2の積分数のコヒーレント積分の各出力を基に、前記複数の受信アンテナの配置に起因する位相差情報である相関行列を、前記異なる複数のドップラ周波数毎に生成する複数の相関行列生成部と、
前記複数の相関行列生成部の出力を、前記異なる複数のドップラ周波数毎に加算する加算部と、
前記加算部の出力を基に、前記ターゲットからの前記反射波の到来方向を推定する到来方向推定部と、を有するレーダ装置。
【請求項3】
送信信号を高周波送信信号に変換し、前記高周波送信信号を送信アンテナから送信するレーダ送信部と、
複数の受信アンテナを用いて、ターゲットにより反射された前記高周波送信信号である反射波を基に、前記反射波の到来方向を推定するレーダ受信部と、を含み、
前記レーダ受信部は、
受信信号と前記送信信号との相関値を基に、異なる複数のドップラ周波数に応じた位相変動の補正量を用いてコヒーレント積分する複数のアンテナ系統処理部と、
複数の前記コヒーレント積分の各出力を基に、前記複数の受信アンテナの配置に起因する位相差情報である相関行列を、前記異なる複数のドップラ周波数毎に生成する複数の相関行列生成部と、
前記複数のうちいずれかの前記相関行列生成部の出力を基に、コヒーレント積分利得が最大のドップラ周波数を含む所定の周波数範囲におけるドップラスプレッドを検出するピークドップラ周波数検出部と、
前記ドップラスプレッドを基に、前記生成された各相関行列のうち前記コヒーレント積分利得が最大のドップラ周波数における相関行列を選択する出力選択部と、
前記出力選択部の出力を基に、前記ターゲットからの反射波の前記到来方向を推定する到来方向推定部と、を有するレーダ装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のレーダ装置であって、
前記複数のうちいずれかの相関行列生成部の出力を基に、コヒーレント積分利得が最大のドップラ周波数を選択するピークドップラ周波数検出部と、
前記加算部の各出力のうち、前記ピークドップラ周波数検出部により検出されたドップラ周波数における相関行列を選択する出力選択部と、を更に有するレーダ装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のレーダ装置であって、
前記複数のうちいずれかの相関行列生成部の出力を基に、コヒーレント積分利得が最大のドップラ周波数を選択するピークドップラ周波数検出部と、
前記加算部は、前記複数の相関行列生成部の各出力のうち、前記ピークドップラ周波数検出部により検出されたドップラ周波数に応じた相関行列を加算するレーダ装置。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか一項に記載のレーダ装置であって、
前記複数のアンテナ系統処理部は、それぞれ、
前記ターゲットからの前記反射波を受信する受信アンテナと、
前記受信された反射波の信号をベースバンドの受信信号に変換する受信RF部と、
前記変換された受信信号をデジタルデータに変換するA/D変換部と、
前記変換された受信信号のデジタルデータと前記送信信号との相関値を、前記高周波送信信号の送信周期毎に算出する相関値算出部と、
前記算出された第1所定個の相関値を基に、コヒーレント積分するコヒーレント積分部と、
前記算出された第2所定個の前記コヒーレント積分の出力と、前記異なる複数のドップラ周波数に応じた位相変動の補正量とを用いてコヒーレント積分するFFT処理部と、を有するレーダ装置。
【請求項7】
請求項6に記載のレーダ装置であって、
前記複数のアンテナ系統処理部は、更に、
前記異なる複数のドップラ周波数毎に、第3所定個の前記FFT処理部の出力をコヒーレント積分するための係数を生成する係数生成部と、
前記異なる複数のドップラ周波数毎に生成された係数と、前記FFT処理部の出力とを乗算する係数乗算部と、
前記第3所定個の前記係数乗算部の出力をコヒーレント積分するバッファ部と、を有するレーダ装置。
【請求項8】
請求項3に記載のレーダ装置であって、
前記出力選択部の出力を基に、前記コヒーレント積分利得が最大のドップラ周波数を含む所定の周波数範囲における各相関行列を加算するドップラ成分加算部と、を更に有するレーダ装置。
【請求項9】
請求項3〜8のうちいずれか一項に記載のレーダ装置であって、
前記ピークドップラ周波数検出部は、前記複数のうちいずれかの前記相関行列生成部により前記異なる複数のドップラ周波数毎に生成された各相関行列のうち、各相関行列の対角成分を基にドップラ周波数を選択するレーダ装置。
【請求項10】
請求項3〜9のうちいずれか一項に記載のレーダ装置であって、
前記ピークドップラ周波数検出部により検出されたドップラ周波数を基に、前記ターゲットの相対移動速度を算出する速度推定部と、を更に有するレーダ装置。
【請求項11】
請求項6〜10のうちいずれか一項に記載のレーダ装置であって、
前記複数のアンテナ系統処理部は、更に、
前記異なる複数のドップラ周波数毎に、第4所定個の前記FFT処理部の出力をコヒーレント積分する第2バッファ部と、を有し、
前記レーダ受信部は、更に、
前記第2バッファ部の前記コヒーレント積分の各出力を基に、前記複数の受信アンテナの配置に起因する位相差情報である相関行列を、前記異なる複数のドップラ周波数毎に生成する第3相関行列生成部と、を有するレーダ装置。
【請求項12】
送信信号を高周波送信信号に変換し、前記高周波送信信号を送信アンテナから送信するレーダ送信部と、
ターゲットにより反射された前記高周波送信信号である反射波を基に、前記ターゲットとの距離を推定するレーダ受信部と、を含み、
前記レーダ受信部は、
受信信号と前記送信信号との相関値を基に、異なる複数のドップラ周波数に応じた位相変動の補正量を用いてコヒーレント積分するアンテナ系統処理部と、
前記コヒーレント積分の各出力を用いて、前記複数のドップラ周波数毎にノンコヒーレント積分する複数のノンコヒーレント積分部と、
前記複数のノンコヒーレント積分部の出力を、加算する加算部と、
前記加算部の出力を基に、前記ターゲットまでの距離を推定する距離推定部と、を有するレーダ装置。
【請求項13】
送信信号を高周波送信信号に変換し、前記高周波送信信号を送信アンテナから送信するレーダ送信部と、
ターゲットにより反射された前記高周波送信信号である反射波を基に、前記ターゲットとの距離を推定するレーダ受信部と、を含み、
前記レーダ受信部は、
受信信号と前記送信信号との相関値を基に、異なる複数のドップラ周波数に応じた位相変動の補正量を用いて第1の積分数及び第2の積分数のコヒーレント積分するアンテナ系統処理部と、
前記第1の積分数及び第2の前記コヒーレント積分の各出力を用いて、前記複数のドップラ周波数毎にノンコヒーレント積分する複数のノンコヒーレント積分部と、
前記複数のノンコヒーレント積分部の出力を、前記異なる複数のドップラ周波数毎に加算する加算部と、
前記加算部の出力を基に、前記ターゲットまでの距離を推定する距離推定部と、を有するレーダ装置。
【請求項14】
送信信号を高周波送信信号に変換し、前記高周波送信信号を送信アンテナから送信するレーダ送信部と、
ターゲットにより反射された前記高周波送信信号である反射波を基に、前記ターゲットとの距離を推定するレーダ受信部と、を含み、
前記レーダ受信部は、
受信信号と前記送信信号との相関値を基に、異なる複数のドップラ周波数に応じた位相変動の補正量を用いてコヒーレント積分するアンテナ系統処理部と、
前記コヒーレント積分の各出力を用いて、前記複数のドップラ周波数毎にノンコヒーレント積分する複数のノンコヒーレント積分部と、
前記複数のうちいずれかのノンコヒーレント積分部の出力を基に、コヒーレント積分利得が最大のドップラ周波数を含む所定範囲のドップラスプレッドを検出するピークドップラ周波数/ドップラスプレッド検出部と、
前記ドップラスプレッドを基に、前記生成された各ノンコヒーレント積分の各出力のうち前記コヒーレント積分利得が最大のドップラ周波数に応じた前記ノンコヒーレント積分の出力を選択する出力選択部と、
前記出力選択部の出力を基に、前記ターゲットとの距離を推定する距離推定部と、を有するレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−225688(P2012−225688A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91425(P2011−91425)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】