説明

レーダ装置

【課題】アンテナに供給する高周波信号が減衰せず、かつ高周波信号のリークも生じることがないこと。
【解決手段】レーダ装置は、対象物を検出するための各ビームをそれぞれ送信する複数のアンテナと、複数のアンテナから各ビームを送信するための複数のモードの高周波信号を切り替えて発振する発振器と、発振器により発振された各モードの高周波信号をそれぞれ増幅して対応する複数のアンテナにそれぞれ供給する複数の増幅器と、複数の増幅器の各入力側にそれぞれ接続された複数の可変減衰器と、発振器により発振される各モードに応じて複数の増幅器の動作をそれぞれオン又はオフに切り替えると共に、複数の可変減衰器の減衰量をそれぞれ制御する切替制御回路とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えば車載用に適用され、複数のアンテナを切り替えて車体等の対象物の検出を行うレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車載用のレーダ装置では、限られた送信パワーで例えば30m以内の近距離に走行する車体を広角に検出しながら例えば150m程度の遠距離に走行する車体も検出することが困難になっている。
このため、レーダ装置では、通常、広角な送信ビームパターン(以下、広角ビームと称する)を持つアンテナと、狭角な送信ビームパターン(以下、狭角ビームと称する)を持つアンテナとをそれぞれ用意し、これらアンテナを高周波のアナログスイッチを用いて切り替える方式が採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−282228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記方式では、アナログスイッチを用いて各アンテナを切り替えているので、このアナログスイッチにより生じるロスによってアンテナに供給する高周波信号が減衰したり、アナログスイッチのアイソレーション量によって高周波信号のリークが生じてしまう。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、アンテナに供給する高周波信号が減衰せず、かつ高周波信号のリークも生じることがないレーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、対象物を検出するための各ビームをそれぞれ送信する複数のアンテナと、前記複数のアンテナから前記各ビームを送信するための複数のモードの高周波信号を切り替えて発振する発振器と、前記発振器により発振された前記各モードの高周波信号をそれぞれ増幅して対応する前記複数のアンテナにそれぞれ供給する複数の増幅器と、前記複数の増幅器の各入力側にそれぞれ接続された複数の可変減衰器と、前記発振器により発振される前記各モードに応じて前記複数の増幅器の動作をそれぞれオン又はオフに切り替えると共に、前記複数の可変減衰器の減衰量をそれぞれ制御する切替制御回路とを具備したレーダ装置である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態のレーダ装置を示す構成図。
【図2】同装置における送信系を示す構成図。
【図3】同装置における近距離用と遠距離用との各アンテナの検出範囲を示す図。
【図4】同装置における各モード変更時における切り替え動作のタイミングを示す図。
【図5】第2の実施形態のレーダ装置を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(1)以下、第1の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1はレーダ装置の全体構成図示す。このレーダ装置1は、例えば車体に搭載される車載用ミリ波レーダである。このレーダ装置1は、発振器2と、送信アンテナ群3と、受信アンテナ群4とを備える。発振器2には、複数の増幅器5を介して送信アンテナ群3が接続され、かつ複数の混合器Mを介して受信アンテナ群4が接続されている。複数の混合器Mは、受信アンテナ群4で受信した高周波信号を発振器2により発振された高周波信号で周波数変換を行って受信信号として出力する。
【0009】
図2は同装置の送信系の構成図を示す。送信アンテナ群3は、例えば車体等の対象物を検出するための各ビームをそれぞれ送信するもので、車体を検出するための距離に応じてそれぞれ異なる角度の各ビームをそれぞれ送信する。具体的に送信アンテナ群3は、近距離用の第1のアンテナ(以下、近距離用アンテナと称する)3−1と、遠距離用の第2のアンテナ(以下、遠距離用アンテナと称する)3−2とを備える。
【0010】
近距離用アンテナ3−1は、広角ビームを送信して近距離に存在する車体を検出する。この近距離用アンテナ3−1は、例えば80°以上の広角ビームを送信して近距離、例えば30m以内に存在する車体を検出する。図3に示すように例えば車体100に本装置1が搭載されていると、本装置1の近距離用アンテナ3−1は、本車体100の前方に走行する各車体101、102を検出する。
【0011】
遠距離用アンテナ3−2は、近距離用アンテナ3−1から送信される広角ビームよりも狭い狭角ビーム、例えば40°以下の狭角ビームを送信して近距離よりも遠距離、例えば150m程度離れて走行する車体を検出する。例えば図3に示すように車体100に本装置1が搭載されていると、本装置1の遠距離用アンテナ3−2は、本車体100の前方に走行する各車体103、104、…、107を検出する。
【0012】
これら近距離用と遠距離用との各アンテナ3−1、3−2は、それぞれ複数のアンテナ素子を一列に配列してアンテナ素子列を形成し、このアンテナ素子列を複数列設けてなる。このうち近距離用アンテナ3−1は、例えばアンテナ素子列を2列配列して成り、遠距離用アンテナ3−2は、例えばアンテナ素子列を4列配列して成る。このような各アンテナ3−1、3−2は、アンテナ素子列の列数と、これらアンテナ素子列の間隔とによりビーム角が決まるもので、列数が多い程ビーム角が狭くなり、遠距離に走行する車体等の対象物を検出できる。
【0013】
発振器2には、複数の増幅器5として近距離用の増幅器5−1と、遠距離用の増幅器5−2とが並列接続されている。このうち近距離用の増幅器5−1には、近距離用のアンテナ3−1が接続されている。遠距離用の増幅器5−2には、遠距離用のアンテナ3−2が接続されている。
さらに、近距離用の増幅器5−1の入力側には、近距離用の可変減衰器6−1が接続されている。遠距離用の増幅器5−2の入力側には、遠距離用の可変減衰器6−2が接続されている。
【0014】
近距離用と遠距離用との各増幅器5−1、5−2には、増幅器用の直流電源Eが接続されている。この直流電源Eは、各増幅器5−1、5−2にそれぞれ直流電力を供給して各増幅器5−1、5−2を動作状態にする。
この直流電源Eと近距離用及び遠距離用の各増幅器5−1、5−2との各間には、それぞれ切替回路を構成する各切替スイッチ7−1、7−2が接続されている。これら切替スイッチ7−1、7−2は、切替制御回路8によって切り替え制御される。
又、本装置1は、制御系として周波数タイミングコントローラ90と、切替制御回路8と、近距離用と遠距離用との各減衰量制御系9、10とを備えている。
【0015】
周波数タイミングコントローラ90は、発振器2に発振制御信号を送って当該発振器2の周波数制御を行うもので、複数のモードの高周波信号、例えば近距離に存在する車体101等を検出するために広角ビームを送信するための第1のモード(以下、近距離モードと称する)の高周波信号と、遠距離に存在する車体103等を検出するために狭角ビームを送信するための第2のモード(以下、遠距離モードと称する)の高周波信号とを時分割で切り替えて発振制御する。
又、周波数タイミングコントローラ90は、切替制御回路8に切替制御信号を送り、発振器2を発振させる近距離モードと遠距離モードとに応じて切替制御回路8における切り替えタイミングを制御する。
又、周波数タイミングコントローラ90は、発振器2を発振させる近距離モードと遠距離モードとに応じて各減衰量制御系9、10による減衰量、後述するように発振器2から各増幅器5−1、5−2にそれぞれ供給する高周波信号の減衰量を規定減衰量と最大減衰量とに時分割で切り替え制御する。具体的に周波数タイミングコントローラ90は、各減衰量制御系9、10に備えられている各出力レベルコントローラ9−2、10−2に減衰量制御信号を送って減衰量の制御を行う。
なお、周波数タイミングコントローラ90は、近距離モードと遠距離モードとを切り替える切替制御信号を発振器2、切替制御回路8及び各減衰量制御系9、10に通知しているが、ここでは例えば近距離モードをハイレベル(high)の切替制御信号、遠距離モードをローレベル(low)の切替制御信号により通知している。
【0016】
具体的に、発振器2は、周波数タイミングコントローラ90から送られてくる近距離モード又は遠距離モードの切替制御信号を受けて近距離用と遠距離用との各アンテナ3−1、3−2から車体101等を検出するための距離に応じてそれぞれ異なる角度の各ビームを送信するための複数のモードの高周波信号として近距離モードの高周波信号と、遠距離に存在する車体103等を検出するために狭角ビームを送信するための遠距離モードの高周波信号とを時分割で切り替えて発振する。
この発振器2は、例えば図4に示すように近距離モードの高周波信号F1と、遠距離モードの高周波信号F2とを時分割で発振する。近距離モードの高周波信号F1は、送信周波数f0を中心に周波数の変化の勾配が大きい。遠距離モードの高周波信号F2は、送信周波数f0を中心に周波数の変化の勾配が近距離モードの高周波信号F1の周波数の変化の勾配よりも小さい。
【0017】
この発振器2には、上記の通り複数の増幅器5として近距離用の増幅器5−1と、遠距離用の増幅器5−2とが並列接続されている。近距離用の増幅器5−1は、近距離モードの高周波信号F1の電圧を規定レベル範囲内の電圧に増幅して近距離用のアンテナ3−1に送信する。遠距離用の増幅器5−2は、遠距離モードの高周波信号F2の電圧を規定レベル範囲内の電圧に増幅して遠距離用のアンテナ3−2に送信する。
【0018】
近距離用の可変減衰器6−1は、発振器2により発振された近距離モードの高周波信号F1の電圧値の減衰量を規定減衰量又は最大減衰量に切り替えて減衰する。遠距離用の増幅器5−2は、発振器2により発振された遠距離モードの高周波信号F2の電圧値の減衰量を規定減衰量又は最大減衰量に切り替えて減衰する。
【0019】
切替制御回路8は、周波数タイミングコントローラ90から送られてくる近距離モード又は遠距離モードの切替制御信号を受けて各増幅器5−1、5−2の動作をそれぞれオン又はオフに切り替える。
具体的に、切替制御回路8は、周波数タイミングコントローラ90から送られてくる近距離モードの切替制御信号を受けると、図4に示すように一方の切替スイッチ7−1をオンに切り替えることにより近距離用の増幅器5−1に直流電源Eからの電力を供給して当該増幅器5−1の動作をオンに切り替える。これと共に、切替制御回路8は、他方の切替スイッチ7−2をオフに切り替えることにより遠距離用の増幅器5−2に直流電源Eからの電力の供給を遮断して当該増幅器5−2の動作をオフに切り替える。
又、切替制御回路8は、周波数タイミングコントローラ90から送られてくる遠距離モードの切替制御信号を受けると、図4に示すように一方の切替スイッチ7−1をオフに切り替えることにより近距離用の増幅器5−1に直流電源Eからの電力の供給を遮断して当該増幅器5−1の動作をオフに切り替える。これと共に、切替制御回路8は、他方の切替スイッチ7−2をオンに切り替えることにより遠距離用の増幅器5−2に直流電源Eからの電力を供給して当該増幅器5−2の動作をオンに切り替える。
【0020】
さらに、近距離用の可変減衰器6−1と遠距離用の可変減衰器6−2とには、それぞれ切替回路を構成する近距離用と遠距離用との各減衰量制御系9、10が設けられている。これら減衰量制御系9、10は、それぞれ周波数タイミングコントローラ90から送られてくる近距離モード又は遠距離モードの切替制御信号を受けて近距離用の可変減衰器6−1と遠距離用の可変減衰器6−2との各減衰量を規定減衰量又は最大減衰量に制御する。
【0021】
なお、規定減衰量は、近距離又は遠距離の各モードの高周波信号F1、F2を各増幅器5−1、5−2を通して近距離用や遠距離用アンテナ3−1、3−2に供給して広角ビームや狭角ビームを送信するために最適な減衰量である。
最大減衰量は、近距離又は遠距離の各モードの高周波信号F1、F2に対する最大の減衰量で、近距離又は遠距離用の各可変減衰器6−1、6−2において最大のインピーダンスに設定された場合の減衰量である。この場合、各可変減衰器6−1、6−2は、無限大のインピーダンスに設定することを可能とする。
【0022】
具体的に、近距離用の減衰量制御系9は、周波数タイミングコントローラ90から送られてくる近距離モードの切替制御信号を受けると、近距離用の可変減衰器6−1を規定減衰量に制御し、遠距離モードの高周波信号F2を検出すると、近距離用の可変減衰器6−1を最大減衰量に制御する。
この近距離用の減衰量制御系9は、出力レベル検出器9−1と、出力レベルコントローラ9−2とを備える。出力レベル検出器9−1は、図4に示すように近距離用の増幅器5−1の出力レベルを検出してその出力レベル検出信号を出力する。
出力レベルコントローラ9−2は、周波数タイミングコントローラ90から送られてくる近距離モード又は遠距離モードの切替制御信号を受けて近距離用の可変減衰器6−1の減衰量を規定減衰量又は最大減衰量に制御し、かつ近距離モードのときに出力レベル検出器9−1から出力される出力レベル検出信号に応じて近距離用の増幅器5−1の出力レベルを予め設定された規定レベル範囲内に制御する。すなわち、増幅器5−1の出力レベルは、直流電源Eの投入時からの経時変化、又は温度変化等により変化し、予め設定された規定レベル範囲内から外れる可能性がある。出力レベルコントローラ9−2は、出力レベル検出器9−1から出力される出力レベル検出信号を入力し、増幅器5−1の出力レベルが規定レベル範囲から外れたか否かを判定し、出力レベルが規定レベル範囲から外れると、規定レベル範囲から外れた差異の出力レベルを無くすように可変減衰器6−1の減衰量を制御する。
【0023】
一方、遠距離用の減衰量制御系10は、出力レベル検出器10−1と、出力レベルコントローラ10−2とを備える。出力レベル検出器10−1は、遠距離用の増幅器5−2の出力レベルを検出してその出力レベル検出信号を出力する。
出力レベルコントローラ10−2は、周波数タイミングコントローラ90から送られてくる近距離モード又は遠距離モードの切替制御信号を受けて近距離用の可変減衰器6−2の減衰量を最大減衰量又は規定減衰量に制御し、かつ遠距離モードのときに出力レベル検出器10−2から出力される出力レベル検出信号に応じて近距離用の増幅器5−2の各出力レベルを規定レベル範囲内に制御する。すなわち、増幅器5−2の出力レベルも、増幅器5−1の出力レベルと同様に、直流電源Eの投入時からの経時変化、又は温度変化等により変化し、予め設定された規定レベル範囲内から外れる可能性がある。出力レベルコントローラ10−2は、出力レベル検出器10−1から出力される出力レベル検出信号を入力し、増幅器5−2の出力レベルが規定レベル範囲から外れたか否かを判定し、出力レベルが規定レベル範囲から外れると、規定レベル範囲から外れた差異の出力レベルを無くすように可変減衰器6−2の減衰量を制御する。
【0024】
次に、上記の如く構成された装置の動作について説明する。
発振器2は、周波数タイミングコントローラ90から送られてくる近距離モード又は遠距離モードの切替制御信号を受けて、例えば図4に示すように近距離モードの高周波信号F1と、遠距離モードの高周波信号F2とを時分割で繰り返し発振する。
切替制御回路8は、周波数タイミングコントローラ90から送られてくる近距離モード又は遠距離モードの切替制御信号を受け、例えば近距離モードであると、図4に示すように一方の切替スイッチ7−1をオンに切り替えると共に、他方の切替スイッチ7−1をオフに切り替える。
【0025】
一方の切替スイッチ7−1がオンに切り替わることにより、近距離用の増幅器5−1には、直流電源Eから電力が供給されて動作状態(オン状態)になる。この近距離用の増幅器5−1が動作状態になると、発振器2から発振された近距離モードの高周波信号F1は、可変減衰器6−1を通って近距離用の増幅器5−1に入力し、この増幅器5−1により増幅されて近距離用アンテナ3−1に供給される。この近距離用アンテナ3−1は、例えば80°以上の広角ビームを送信して近距離、例えば30m以内に存在する車体を検出する。
【0026】
この状態に、出力レベル検出器9−1は、近距離用の増幅器5−1の出力レベルを検出してその出力レベル検出信号を出力する。
出力レベルコントローラ9−2は、周波数タイミングコントローラ90から送られてくる近距離モードの切替制御信号を受けると、近距離用の可変減衰器6−1の減衰量を規定減衰量に制御する。
これと共に出力レベルコントローラ9−2は、出力レベル検出器9−1から出力される出力レベル検出信号を入力し、増幅器5−1の出力レベルが規定レベル範囲から外れたか否かを判定し、出力レベルが規定レベル範囲から外れると、規定レベル範囲から外れた差異の出力レベルを無くすように可変減衰器6−1の減衰量を制御する。この制御により増幅器5−1の出力レベルは、直流電源Eの投入時からの経時変化、又は温度変化等を受けても、予め設定された規定レベル範囲内から外れることがない。
【0027】
この近距離モード時、他方の切替スイッチ7−1は、上記の通りオフに切り替わっている。他方の切替スイッチ7−1がオフであれば、遠距離用の増幅器5−2には、直流電源Eから電力が遮断された状態(オフ状態)になっている。遠距離用の増幅器5−2がオフ状態であれば、当該増幅器5−2は、無限大のインピーダンスになっているのと同等であり、発振器2から発振された近距離モードの高周波信号F1は、遠距離用の増幅器5−2で遮断されて遠距離用アンテナ3−2に供給されない。又、増幅器5−2が無限大のインピーダンスになっているのと同等であるので、高周波信号のリークも生じることがない。
【0028】
これと共に、出力レベルコントローラ10−2は、周波数タイミングコントローラ90から送られてくる近距離モードの切替制御信号を受けると、この近距離モードに応じて遠距離用の可変減衰器6−2の減衰量を最大減衰量に制御する。この遠距離用の可変減衰器6−2の減衰量が最大減衰量になることにより、当該可変減衰器6−2は、増幅器5−2と同様に、無限大のインピーダンスになっているのと同等である。
【0029】
従って、近距離モード時、遠距離用の増幅器5−2が直流電源Eから電力が遮断されて無限大のインピーダンスになっているのと同等な状態になると共に、可変減衰器6−2も無限大のインピーダンスになり、2重に無限大のインピーダンスになり、高周波信号のリークが生じることがない。
【0030】
一方、周波数タイミングコントローラ90から遠距離モードの切替制御信号が送出されると、切替制御回路8は、図4に示すように一方の切替スイッチ7−1をオフに切り替えると共に、他方の切替スイッチ7−2をオンに切り替える。
他方の切替スイッチ7−2がオンに切り替わることにより、遠距離用の増幅器5−2には、直流電源Eから電力が供給されて動作状態(オン状態)になる。この遠距離用の増幅器5−2が動作状態になると、発振器2から発振された遠距離モードの高周波信号F2は、可変減衰器6−2を通って遠距離用の増幅器5−2に入力し、この増幅器5−2により増幅されて遠距離用アンテナ3−2に供給される。この遠距離用アンテナ3−2は、例えば40°の狭角ビームを送信して遠距離、例えば150m程度に存在する車体を検出する。
【0031】
この状態に、出力レベル検出器10−1は、遠距離用の増幅器5−2の出力レベルを検出してその出力レベル検出信号を出力する。
出力レベルコントローラ10−2は、周波数タイミングコントローラ90から送られてくる遠距離モードの切替制御信号を受けて遠距離用の可変減衰器6−2の減衰量を規定減衰量に制御する。
これと共に出力レベルコントローラ10−2は、出力レベル検出器10−1から出力される出力レベル検出信号を入力し、増幅器5−2の出力レベルが規定レベル範囲から外れたか否かを判定し、出力レベルが規定レベル範囲から外れると、規定レベル範囲から外れた差異の出力レベルを無くすように可変減衰器6−2の減衰量を制御する。この制御により増幅器5−2の出力レベルは、直流電源Eの投入時からの経時変化、又は温度変化等を受けても、予め設定された規定レベル範囲内から外れることがない。
【0032】
この遠距離モード時、一方の切替スイッチ7−1は、上記の通りオフに切り替わっている。他方の切替スイッチ7−1がオフであれば、近距離用の増幅器5−1には、直流電源Eから電力が遮断された状態(オフ状態)になっている。近距離用の増幅器5−1がオフ状態であれば、当該増幅器5−1は、無限大のインピーダンスになっているのと同等であり、発振器2から発振された遠距離モードの高周波信号F2は、近距離用の増幅器5−1で遮断されて近距離用アンテナ3−1に供給されない。又、増幅器5−1が無限大のインピーダンスになっているのと同等であるので、高周波信号のリークも生じることがない。
【0033】
これと共に、出力レベルコントローラ9−2は、周波数タイミングコントローラ90から送られてくる遠距離モードの切替制御信号を受けて近距離用の可変減衰器6−1の減衰量を最大減衰量に制御する。この近距離用の可変減衰器6−1の減衰量が最大減衰量になることにより、当該可変減衰器6−1は、増幅器5−1と同様に、無限大のインピーダンスになっているのと同等である。
【0034】
従って、遠距離モード時、近距離用の増幅器5−1が直流電源Eから電力が遮断されて無限大のインピーダンスになっているのと同等な状態になると共に、可変減衰器6−1も無限大のインピーダンスになり、2重に無限大のインピーダンスになり、高周波信号のリークが生じることがない。
【0035】
このように上記第1の実施の形態によれば、直流電源Eと近距離用及び遠距離用の各増幅器5−1、5−2との各間にそれぞれ各切替スイッチ7−1、7−2を接続し、これら切替スイッチ7−1、7−2を近距離モード用又は遠距離モード用の高周波信号F1、F2に応じて切り替えて各増幅器5−1、5−2の動作をそれぞれオン又はオフに切り替える。
【0036】
これにより、近距離モード時、遠距離用の増幅器5−2が直流電源Eから電力が遮断されて無限大のインピーダンスになっているのと同等な状態になると共に、可変減衰器6−2も無限大のインピーダンスになり、2重に無限大のインピーダンスになり、高周波信号のリークが生じることがない。同様に、遠距離モード時でも、近距離用の増幅器5−1が直流電源Eから電力が遮断されて無限大のインピーダンスになっているのと同等な状態になると共に、可変減衰器6−1も無限大のインピーダンスになり、2重に無限大のインピーダンスになり、高周波信号のリークが生じることがない。
又、アナログスイッチを用いて近距離用と遠距離用との各アンテナ3−1、3−2を切り替えないので、当該アナログスイッチにより生じるロスによって各アンテナ3−1、3−2に供給する高周波信号が減衰することがない。
【0037】
さらに、各増幅器5−1、5−2の各出力レベルは、直流電源Eの投入時からの経時変化、又は温度変化等により変化し、予め設定された規定レベル範囲内から外れる可能性があるが、各出力レベルコントローラ9−2、10−2によって各出力レベル検出器9−1、10−1から出力される各出力レベル検出信号を入力し、各増幅器5−1、5−2の各出力レベルが規定レベル範囲から外れたか否かを判定し、出力レベルが規定レベル範囲から外れると、規定レベル範囲から外れた差異の出力レベルを無くすように各可変減衰器6−1、6−2の減衰量を制御できる。
従って、上記第1の実施の形態であれば、遠距離に走行する車体を検出することが出来、かつ車体を検出するときの不要なクラッタノイズを低減できる。
【0038】
(2)次に、第2の実施の形態について図面を参照して説明する。
図5はレーダ装置の全体構成図示す。なお、図2と同一部分には同一符号を付してその詳しい説明は省略する。
送信アンテナ群3は、例えば左側用のアンテナ3−10と、中央用のアンテナ3−20と、右側用のアンテナ3−30とを備える。これらアンテナ3−10、3−20、3−30は、それぞれ送信ビームパターンの異なるビームを送信する。これらアンテナ3−10、3−20、3−30は、それぞれ複数のアンテナ素子を一列に配列してアンテナ素子列を形成し、このアンテナ素子列を複数列設けてなるもので、それぞれ例えばアンテナ素子列を4列配列して成る。
【0039】
発振器2には、複数の増幅器5として左右側・中央用の各増幅器5−10、5−20、50−3とが並列接続されている。左側用の増幅器5−10には、左側用のアンテナ3−10が接続されている。この増幅器5−10は、左側用に設定された送信ビームパターンの高周波信号の電圧を規定レベル範囲内の電圧に増幅して左側用のアンテナ3−10に送信する。
中央用の増幅器5−20には、中央用のアンテナ3−20が接続されている。この中央用の増幅器5−20は、中央用に設定された送信ビームパターンの高周波信号の電圧を規定レベル範囲内の電圧に増幅して中央用のアンテナ3−20に送信する。
右側用の増幅器5−30には、右側用のアンテナ3−20が接続されている。この右側用の増幅器5−20は、右側用に設定された送信ビームパターンの高周波信号の電圧を規定レベル範囲内の電圧に増幅して右側用のアンテナ3−20に送信する。
【0040】
左側用の増幅器5−10の入力側には、左側用の可変減衰器6−10が接続され、かつ中央用の増幅器5−20の入力側には、中央用の可変減衰器6−20が接続され、右側用の増幅器5−30の入力側には、右側用の可変減衰器6−30が接続されている。
左側用の可変減衰器6−10は、発振器2により発振された左側用に設定された送信ビームパターンの高周波信号の電圧値の減衰量を規定減衰量又は最大減衰量に切り替えて減衰する。中央用の可変減衰器6−20は、発振器2により発振された中央用に設定された送信ビームパターンの高周波信号の電圧値の減衰量を規定減衰量又は最大減衰量に切り替えて減衰する。右側用の可変減衰器6−30は、発振器2により発振された右側用に設定された送信ビームパターンの高周波信号の電圧値の減衰量を規定減衰量又は最大減衰量に切り替えて減衰する。
【0041】
左側用と右側用との各増幅器5−10、5−20には、増幅器用の直流電源Eが接続されている。この直流電源Eは、各増幅器5−1、5−2にそれぞれ直流電力を供給して各増幅器5−1、5−2を動作状態にする。
この直流電源Eと右側用及び中央用の各増幅器5−10、5−20との各間には、それぞれ左側用と中央用との各切替スイッチ7−10、7−20が接続されている。又、直流電源Eと右側用の増幅器5−30との間には、右側用の切替スイッチ7−30が接続されている。
【0042】
切替制御回路80は、周波数タイミングコントローラ90から送られてくる左側用、中央用又は右側用に設定された送信ビームパターンの切替制御信号を受けて、左側用の切替スイッチ7−10をオンに切り替えると共に、他の各切替スイッチ7−20、7−30をオフに切り替える。同様に、この切替制御回路80は、中央用の切替スイッチ7−20をオンに切り替えると共に、他の各切替スイッチ7−10、7−30をオフに切り替える。この切替制御回路80は、右側用の切替スイッチ7−30をオンに切り替えると共に、他の各切替スイッチ7−10、7−20をオフに切り替える。
【0043】
さらに、左右側用及び中央用の各可変減衰器6−10、6−20、6−30には、それぞれ各減衰量制御系9−20、10−20、11−20が設けられている。これら減衰量制御系9−20、10−20、11−20は、それぞれ周波数タイミングコントローラ90から送られてくる左側用、中央用又は右側用に設定された送信ビームパターンの切替制御信号を受けて、左右側用、中央用の各可変減衰器6−10、6−20、6−30の各減衰量を規定減衰量又は最大減衰量に制御する。これら減衰量制御系9−20、10−20、11−20は、それぞれ上記減衰量制御系9、10と同様に、出力レベル検出器9−1,10−1と、出力レベルコントローラ9−2、10−2と同様の出力レベル検出器と出力レベルコントローラとを備えるが、図5では図示する煩雑を避けるために省略する。
【0044】
なお、上記第2の実施の形態のレーダ装置においても、上記第1の実施の形態と同様に、周波数タイミングコントローラ90を備えており、この周波数タイミングコントローラ90は、発振器2に対して左側用、中央用又は右側用に設定された送信ビームパターンに切り替える切替制御信号を送り、当該発振器2の周波数制御を行うもので、左側用、中央用又は右側用の各モードの高周波信号を時分割で切り替えて発振制御する。
又、周波数タイミングコントローラ90は、切替制御回路8に対して左側用、中央用又は右側用の各モードの切替制御信号を送り、これらモードに応じて切替制御回路8における切り替えタイミングを制御する。
又、周波数タイミングコントローラ90は、左側用、中央用又は右側用の各モードに応じて各減衰量制御系9−20、10−20、11−20による減衰量、すなわち発振器2から各増幅器5−1、5−2にそれぞれ供給する高周波信号の減衰量を規定減衰量と最大減衰量とに時分割で切り替え制御する。
【0045】
このような上記第2の実施の形態であれば、左側用、中央用及び右側用の各増幅器5−10、5−20、5−3−と直流電源Eとの間にそれぞれ各切替スイッチ7−10、7−20、7−30を接続し、これら切替スイッチ7−10、7−20、7−30を発振器2により発振された左側用、中央用、右側用に設定された各送信ビームパターンの高周波信号に応じてオン・オフに切り替える。
これにより、左側用、中央用又は右側用に設定された送信ビームパターンの高周波信号が発振されたとき、各増幅器5−10、5−20又は5−30が直流電源Eから電力が遮断されて無限大のインピーダンスになっているのと同等な状態になると共に、可変減衰器6−10、6−20又は6−30も無限大のインピーダンスになり、2重に無限大のインピーダンスになり、高周波信号のリークが生じることがない。
【0046】
又、アナログスイッチを用いて各アンテナ3−10、3−20、3−30を切り替えないので、当該アナログスイッチにより生じるロスによって各アンテナ3−10、3−20、3−30に供給する高周波信号が減衰することがない。
さらに、各増幅器5−10、5−20、5−30の各出力レベルは、直流電源Eの投入時からの経時変化、又は温度変化等により変化し、予め設定された規定レベル範囲内から外れる可能性があるが、各減衰量制御系9−20、10−20、11−20において各出力レベル検出器から出力される各出力レベル検出信号を入力し、各増幅器5−10、5−20、5−30の各出力レベルが規定レベル範囲から外れたか否かを判定し、出力レベルが規定レベル範囲から外れると、規定レベル範囲から外れた差異の出力レベルを無くすように各可変減衰器6−10、6−20、6−30の減衰量を制御できる。
【0047】
本実施の形態は、上記第1及び第2の実施の形態に限定されるものでなく、例えば切替制御回路8と各出力レベルコントローラ9−2、10−2とは、1つの制御回路に統合してもよい。これにより、レーダ装置の構成を簡単化できる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1:レーダ装置、2:発振器、3:送信アンテナ群、4:受信アンテナ群、5:増幅器、M:混合器、3−1:第1のアンテナ(近距離用アンテナ)、3−2:第2のアンテナ(遠距離用アンテナ)、100,101,102,103,104,…,107:車体、5−1:近距離用の増幅器、5−2:遠距離用の増幅器、6−1:近距離用の可変減衰器、6−2:遠距離用の可変減衰器、7−1,7−2:切替スイッチ、8:切替制御回路、9,10:減衰量制御系、9−1:出力レベル検出器、9−2:出力レベルコントローラ、10−1:出力レベル検出器、10−2:出力レベルコントローラ、3−10:左側用のアンテナ、3−20:中央用のアンテナ、3−30:右側用のアンテナ、5−10:左側用の増幅器,5−20:中央用の増幅器,50−3:右側用の増幅器、6−10:左側用の可変減衰器、6−20:中央用の可変減衰器、5−30:右側用の増幅器、7−10,7−20,7−30:切替スイッチ、80:切替制御回路、9−20,10−20,11−20:減衰量制御系、90:周波数タイミングコントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を検出するための各ビームをそれぞれ送信する複数のアンテナと、
前記複数のアンテナから前記各ビームを送信するための複数のモードの高周波信号を切り替えて発振する発振器と、
前記発振器により発振された前記各モードの高周波信号をそれぞれ増幅して対応する前記複数のアンテナにそれぞれ供給する複数の増幅器と、
前記複数の増幅器の各入力側にそれぞれ接続された複数の可変減衰器と、
前記発振器により発振される前記各モードに応じて前記複数の増幅器の動作をそれぞれオン又はオフに切り替えると共に、前記複数の可変減衰器の減衰量をそれぞれ制御する切替回路と、
を具備したことを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記複数のアンテナは、前記対象物を検出するための距離に応じてそれぞれ異なる角度の前記各ビームをそれぞれ送信し、
前記発振器は、前記対象物を検出するための前記距離に応じてそれぞれ異なる角度の前記各ビームを送信するための複数のモードの高周波信号を切り替えて発振する、
ことを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記複数のアンテナは、広角ビームを送信して近距離に存在する対象物を検出するための第1のアンテナと、前記広角ビームよりも狭い狭角ビームを送信して前記近距離よりも遠距離に存在する対象物を検出するための第2のアンテナとを有し、
前記発振器は、前記広角ビームを送信するための第1のモードの高周波信号と前記狭角ビームを送信するための第2のモードの高周波信号と切り替えて発振し、
前記複数の増幅器は、前記発振器により発振された前記第1のモードの高周波信号を増幅して前記第1のアンテナに供給する第1の増幅器と、前記発振器により発振された前記第2のモードの高周波信号を増幅して前記第2のアンテナに供給する第2の増幅器とを有し、
前記複数の可変減衰器は、前記第1の増幅器の入力側に接続された第1の可変減衰器と、前記第2の増幅器路の入力側に接続された第2の可変減衰器とを有し、
前記切替回路は、前記発振器により発振される前記第1又は前記第2のモードの高周波信号に応じて前記第1又は前記第2の増幅器の動作をオン又はオフに切り替えると共に、前記第1又は前記第2の可変減衰器の減衰量を規定減衰量又は最大減衰量に切り替える、
ことを特徴とする請求項2記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記切替回路は、前記第1のモードの高周波信号を検出すると、前記第1の増幅器の動作をオンに切り替えると共に前記第2の増幅器の動作をオフに切り替え、かつ前記第1の可変減衰器を前記規定減衰量に制御すると共に前記第2の可変減衰器を前記最大減衰量に制御し、
前記第2のモードの高周波信号を検出すると、前記第2の増幅器の動作をオンに切り替えると共に前記第1の増幅器の動作をオフに切り替え、かつ前記第2の可変減衰器を前記規定減衰量に制御すると共に前記第1の可変減衰器を最大減衰量に制御する、
ことを特徴とする請求項3記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記切替回路は、前記複数の増幅器の各出力レベルをそれぞれ検出する複数の出力レベル検出器と、
前記発振器から発振される前記第1又は前記第2のモードの高周波信号に応じて前記複数の可変減衰器の各減衰量をそれぞれ前記規定減衰量又は前記最大減衰量に制御し、かつ前記複数の出力レベル検出器から出力される各検出信号に応じて前記複数の増幅器の各出力レベルを規定レベル範囲内に制御する出力レベルコントローラと、
を有することを特徴とする請求項4記載のレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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