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レーダ装置
説明

レーダ装置

【課題】レンジサイドローブを抑圧できるレーダ装置を提供する。
【解決手段】互いに異なる無線信号をL回空間に送信するM(Mは2以上の自然数)個の送信手段10−1〜10−Mと、前記無線信号が空間中に存在する物体により反射された反射信号を受信するN(Nは2以上の自然数)個の受信手段20−1〜20−Nと、受信手段20−1〜20−Nから出力される信号を合成する信号合成手段30と、を具備し、信号合成手段30は、受信手段20−1〜20−Nの信号分離部から出力される、l(エル)番目のサブパルス位相変調信号に由来したM×N個のサブパルス位相変調信号成分の位相及び振幅を調整し、調整後の各サブパルス位相変調信号成分のL個の合成波形を出力する信号合成部31と、信号合成部31から出力されたL個の合成波形を積算する信号積算部32と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置に係り、特に、MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)レーダ方式を用いたレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MIMOレーダ方式を利用したフェーズドアレイレーダ(以下、MIMOレーダと記す)が知られている(例えば、特許文献1参照)。MIMOレーダは、無指向性の複数の送信アンテナから互いに異なる信号を物体(ターゲット)に向けて送信し、ターゲットからの反射波を複数の受信アンテナで受信し、さらに、マッチドフィルタにより受信した信号から各送信信号を分離し、分離した信号の振幅、位相を調節してビーム整形することにより、物体の位置を検出するレーダシステムである。
【0003】
図6は、MIMOレーダ方式を利用した従来のレーダ装置100の機能構成を示すブロック図である。従来のレーダ装置100は、図6に示すように、互いに異なる無線信号を空間に送信するM(Mは2以上の自然数)個の送信手段50−1〜50−Mと、送信手段50−1〜50−Mより空間に送信された無線信号が空間中に存在する物体(ターゲット)により反射された反射波の合成波(反射信号)を受信するN(Nは2以上の自然数)個の受信手段60−1〜60−Nと、受信手段60−1〜60−Nから出力される信号を合成する信号合成部70と、を具備する。
【0004】
各送信手段50−m(m=1,・・・,M)は、複数のサブパルスからなるパルス信号を保存する信号保存部51−mと、パルス信号を空間に送信可能な無線信号に変換する信号送信部52−mと、信号送信部52−mにより無線信号に変換されたパルス信号を空間に送信する送信アンテナ53−mと、を備える。
【0005】
ここで、各信号保存部51−m(m=1,・・・,M)に保存されたパルス信号は、他の信号保存部51−m'(m'≠m)に保存されたパルス信号と互いに異なるものであり、一般的には、同一周波数帯域を有し、互いの直交性が高いものである。
【0006】
図7(a)〜(d)は、パルス信号の一例を示すグラフである。これらのパルス信号は、周波数ホッピング方式を用いたものであり、非特許文献1で述べられているアルゴリズムを元に作成されたものである。ここでは、4つの送信アンテナから、パルス長T、パルス長Tに含まれるサブパルス数が8、サブパルスの周波数の数が8のパルス信号が送信されるものとしている。
【0007】
各受信手段60−n(n=1,・・・,N)は、ターゲットにより反射された反射信号を受信する受信アンテナ61−nと、受信アンテナ61−nにより受信された反射信号に対して周波数変換、増幅などの受信処理を施す信号受信部62−nと、信号受信部62−nにより受信処理された反射信号を、M個の送信手段50−1〜50−Mの信号保存部51−1〜51−Mからそれぞれ出力されたM個のパルス信号を基準信号としてパルス圧縮することにより、反射信号から各送信手段50−1〜50−Mに由来するM個のパルス信号成分を分離するマッチドフィルタとして機能する信号分離部63−nと、を備える。
【0008】
信号合成部70は、N個の受信手段60−1〜60−Nから出力されるM×N個のパルス信号成分の位相及び振幅を調整し、調整後の各パルス信号成分の合成波形を出力する。
【0009】
次に、図6に示した従来のレーダ装置100の動作を説明する。
まず、各信号保存部51−m(m=1,・・・,M)からパルス信号が、信号送信部52−mに出力されるとともに、信号分離部63−1〜63−Nに基準信号として出力される。パルス信号は、信号送信部52−mにおいて周波数変換、増幅などの処理が施された後に、送信アンテナ53−mを介して空間に向けて送信される。
【0010】
各送信アンテナ53−1〜53−Mから送信されたパルス信号が、空間中に存在するターゲットにより反射された場合には、その反射信号が各受信アンテナ61−1〜61−Nに受信される。各受信アンテナ61−n(n=1,・・・,N)により受信された反射信号は、信号受信部62−nによって受信処理を施された後に、信号分離部63−nにおいて、信号保存部51−1〜51−Mから出力された基準信号を用いたパルス圧縮により、M×N個のパルス信号成分に分離される。
【0011】
分離されたM×N個のパルス信号成分は、信号合成部70において、位相、振幅が調整された後に全て合成されて出力される。
【0012】
ここで、信号分離部63−1〜63−Nによって分離されるM×N個のパルス信号成分は、送信アンテナ53−m(m=1,・・・,M)から出力されたパルス信号(以下、単に送信信号と記す)をxT、受信アンテナ61−n(n=1,・・・,N)により受信された反射信号(以下、単に受信信号と記す)をxRとするとき、次式のように表される。
【0013】
【数1】

ここで、Tはパルス長、tはパルス信号が送信アンテナ53−1〜53−Mから送信された時刻を基準(t=0)とした時刻を意味する。また、送信信号と受信信号はいずれも複素信号である。なお、[数1]及び以降の数式において、*は複素共役を示す。
【0014】
また、信号合成部70が出力する合成信号y(t)は次式のように表される。
【数2】

ここで、[数2]中のベクトルx(t)は、分離された全てのパルス信号成分からなり、次式のように表される。
【数3】

【0015】
また、[数2]中のベクトルwは、各パルス信号成分に対する振幅、位相の乗数(複素数)となるM×N個の値を要素に持つベクトルで、M×N個の複素数はそれぞれ形成したいビームの指向性に応じて適宜決定される。
【0016】
なお、ターゲットまでの距離rは、[数2]の合成信号y(t)が所定値以上の値を持つ時刻tを用いて次式で表される。ここで、cは送信信号及び受信信号の速度である。
【数4】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2010−203965号公報
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Chun-Yang Chen and P. P. Vaidyanathan, "MIMO Radar Ambiguity Properties and Optimization Using Frequency-Hopping Waveforms", IEEE Transactions on Signal Processing, vol. 56, no. 12, pp. 5926-5936, 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、上述のマッチドフィルタによるパルス圧縮を利用した信号分離では、自己相関及び相互相関の影響により、例えば図8に示す合成信号y(t)においてターゲットが存在する位置(時刻tT)前後にレンジサイドローブが検出されてしまうという問題がある。
【0020】
ここで、a番目の送信アンテナからの送信信号と、b番目の送信アンテナからの送信信号との相関関数は、次式のように表される。
【数5】

【0021】
自己相関(a=b)のときは、ターゲットが存在する距離(レンジ)に対応する時刻tTに関して[数6]が成り立つことが好ましいが、実際には[数7]のようになる点が存在する。
【数6】

【数7】

【0022】
よって、マッチドフィルタにより送信信号と受信信号の相関をとった場合、ターゲットが存在するレンジ以外にも信号が現れてしまうことになる。即ち、l(エル)番目の送信アンテナからの送信信号と、k番目の送信アンテナからの送信信号の受信信号との相関に関して、相互相関l(エル)≠kについても[数8]が成り立つことが好ましいが、実際には[数9]のようになる点が存在する。このことにより、ターゲットの検出精度が低下する恐れがある。
【数8】

【数9】

【0023】
1つの解決法としては、送信信号のパルス長Tを長くし、直交度の高い信号を用いることが考えられ、これにより、異なるパルス信号間の相互干渉の影響を低減できる。さらに、受信信号に混入した干渉波に対する抑圧度が高くなるという効果も得ることができる。ただし、この場合でも相関関数は完全に0にはならない。また、一般に、送信アンテナと受信アンテナが同一である場合には、アンテナから信号を送信している時にはターゲットからの信号を受信できない。このため、送信信号のパルス長Tが長いと、レーダ装置としての最小探知距離も長くなってしまうという問題が発生する。
【0024】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、レンジサイドローブを抑圧できるレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記課題を解決するために、本発明のレーダ装置は、互いに異なる無線信号を空間に送信するM(Mは2以上の自然数)個の送信手段と、前記無線信号が空間中に存在する物体により反射された反射信号を受信するN(Nは2以上の自然数)個の受信手段と、前記受信手段から出力される信号を合成する信号合成手段と、を具備するレーダ装置において、各前記送信手段は、複数のサブパルスからなるパルス信号を保存する信号保存部と、前記パルス信号のサブパルス毎に位相変調を施したサブパルス位相変調信号を、所定の時間間隔でL(Lは2以上の自然数)回出力する信号変調部と、前記サブパルス位相変調信号を空間に送信可能な前記無線信号に変換する信号送信部と、前記信号送信部により前記無線信号に変換されたサブパルス位相変調信号を空間に送信する送信アンテナと、を備え、各前記受信手段は、前記反射信号を受信する受信アンテナと、前記反射信号に受信処理を施す信号受信部と、前記信号受信部により受信処理された反射信号を、前記M個の送信手段の前記信号変調部から出力されたL個の前記サブパルス位相変調信号を基準信号としてパルス圧縮することにより、前記反射信号から各前記送信手段に由来するM×L個のサブパルス位相変調信号成分を分離する信号分離部と、を備え、前記信号合成手段は、前記N個の受信手段の前記信号分離部から出力される、l(エル)(=1,・・・,L)番目の前記サブパルス位相変調信号に由来したM×N個の前記サブパルス位相変調信号成分の位相及び振幅を調整し、調整後の各サブパルス位相変調信号成分のL個の合成波形を出力する信号合成部と、前記信号合成部から出力されたL個の前記合成波形を積算する信号積算部と、を備える構成を有している。
【0026】
この構成により、本発明のレーダ装置は、レンジサイドローブを抑圧することができる。
【0027】
また、本発明のレーダ装置は、互いに異なる無線信号を空間に送信するM(Mは2以上の自然数)個の送信手段と、前記無線信号が空間中に存在する物体により反射された反射信号を受信するN(Nは2以上の自然数)個の受信手段と、前記受信手段から出力される信号を合成する信号合成手段と、を具備するレーダ装置において、各前記送信手段は、複数のサブパルスからなるパルス信号を保存する信号保存部と、前記パルス信号のサブパルス毎に位相変調を施したサブパルス位相変調信号を、所定の時間間隔でL(Lは2以上の自然数)回出力する信号変調部と、前記サブパルス位相変調信号を空間に送信可能な前記無線信号に変換する信号送信部と、前記信号送信部により前記無線信号に変換されたサブパルス位相変調信号を空間に送信する送信アンテナと、を備え、各前記受信手段は、前記反射信号を受信する受信アンテナと、前記反射信号に受信処理を施す信号受信部と、前記信号受信部により受信処理された反射信号を、前記M個の送信手段の前記信号変調部から出力されたL個の前記サブパルス位相変調信号を基準信号としてパルス圧縮することにより、前記反射信号から各前記送信手段に由来するM×L個のサブパルス位相変調信号成分を分離する信号分離部と、を備え、前記信号合成手段は、前記N個の受信手段の各前記信号分離部の後段に配置され、各前記送信手段に由来するL個のサブパルス位相変調信号成分の積算波形を出力するM×N個の信号積算部と、前記積算波形の位相及び振幅を調整し、調整後の各積算波形の合成波形を出力する信号合成部と、を備える構成を有している。
【0028】
また、本発明のレーダ装置は、各前記信号変調部から前記サブパルス位相変調信号が出力される回数Lが、前記送信手段の個数Mと、各前記信号保存部が保存する1つの前記パルス信号に含まれる前記サブパルスの個数との積で与えられ、前記信号変調部が、m(=1,・・・,M)番目の前記信号保存部に保存された前記パルス信号の各サブパルスsk(m)(t)に対して、以下の式(1)で与えられる位相因子pαkm(αは1からLまでの自然数)を乗じて位相変調を行うことにより、以下の式(2)で与えられるl(エル)番目の前記サブパルス位相変調信号x'l T(m)を生成するものであり、式(2)におけるαとl(エル)の組み合わせは任意であるが、該組み合わせにはL個のαの全てが用いられる構成を有している。
【数10】

【発明の効果】
【0029】
本発明は、サブパルス毎に位相変調を施したパルス信号を複数回送信し、反射信号の複数のパルス信号成分に対して積算処理を行うことにより、レンジサイドローブを抑圧できるレーダ装置を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1の実施形態に係るレーダ装置の構成を示すブロック図
【図2】送信手段から送信されるサブパルス位相変調信号のタイミングチャート
【図3】送信手段が2つの場合のサブパルス位相変調信号の一例を示すグラフ
【図4】信号合成手段から出力される合成信号を模式的に示すグラフ
【図5】第2の実施形態に係るレーダ装置の構成を示すブロック図
【図6】従来のレーダ装置の構成を示すブロック図
【図7】従来のレーダ装置が保存するパルス信号を模式的に示すグラフ
【図8】従来のレーダ装置から出力される合成信号を模式的に示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係るレーダ装置の実施形態について図面を用いて説明する。なお、各図面上の各構成の寸法比は、実際の寸法比と必ずしも一致していない。
【0032】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るレーダ装置1の構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態のレーダ装置1は、互いに異なる無線信号を空間に送信するM(Mは2以上の自然数)個の送信手段10−1〜10−Mと、送信手段10−1〜10−Mより空間に送信された無線信号が空間中に存在する物体(ターゲット)により反射された反射信号を受信するN(Nは2以上の自然数)個の受信手段20−1〜20−Nと、受信手段20−1〜20−Nから出力される信号を合成する信号合成手段30と、を具備する。
【0033】
各送信手段10−m(m=1,・・・,M)は、複数のサブパルスからなるパルス信号を保存する信号保存部11−mと、信号保存部11−mに保存されているパルス信号のサブパルス毎に位相変調を施したサブパルス位相変調信号x'l T(m)(t)を、所定の時間間隔でL(Lは2以上の自然数)回出力する信号変調部12−mと、サブパルス位相変調信号を空間に送信可能な無線信号に変換する信号送信部13−mと、信号送信部13−mにより無線信号に変換されたサブパルス位相変調信号を空間に送信する送信アンテナ14−mと、を備える。
【0034】
ここで、各信号保存部11−m(m=1,・・・,M)に保存されたパルス信号は、他の信号保存部11−m'(m'≠m)に保存されたパルス信号と互いに異なるものであっても良く、例えば、同一周波数帯域を有し、互いに直交性が高いものであっても良い。また、パルス信号は、位相シフトキーイング信号であっても良く、周波数ホッピング方式を用いた信号であっても良い。例えば、周波数ホッピング方式のパルス信号は、図7に例示したように、従来技術(C.Y.Chen et al)のアルゴリズムに基づいて、サブパルス、及び、サブパルスの組み合わせの順序が決定されるものであっても良い。なお、信号保存部11−1〜11−Mは、パルス信号を生成し、生成したパルス信号を保存するものであっても良い。
【0035】
信号変調部12−m(m=1,・・・,M)は、サブパルス位相変調信号を、対応する信号送信部13−mに出力するとともに、各受信手段20−1〜20−Nにも出力するようになっている。
【0036】
信号送信部13−mは、信号変調部12−mから出力されたサブパルス位相変調信号に対して周波数変換、増幅などの処理を施して、信号送信部13−mに接続された無指向性の送信アンテナ14−mから電波として空間に出力できる信号に変換するようになっている。
【0037】
図2は、送信アンテナ14−1〜14−Mから送信されるサブパルス位相変調信号のタイミングチャートである。各送信アンテナ14−1〜14−Mは、時刻t1に1番目のサブパルス位相変調信号を送信し、以降時刻t2,・・・,tLに2番目からL番目のサブパルス位相変調信号を送信するようになっている。ここで、隣り合う2つのサブパルス位相変調信号が送信される時間間隔は一定であっても良い。
【0038】
なお、サブパルス位相変調信号は、パルス長がT、パルス長Tに含まれるサブパルス数がK、チップ長TcがT/Kの信号である。ここで、Lは、サブパルス数Kに送信手段の数Mを乗じたものであるとする。また、1つのサブパルス位相変調信号に含まれるサブパルスの周波数は互いに異なっていても良い。
【0039】
各受信手段20−n(n=1,・・・,N)は、ターゲットにより反射された反射信号を受信する受信アンテナ21−nと、受信アンテナ21−nにより受信された反射信号に対して周波数変換、増幅などの受信処理を施す信号受信部22−nと、信号受信部22−nにより受信処理された反射信号を、送信手段10−1〜10−Mの信号変調部12−1〜12−Mからそれぞれ出力されたL個のサブパルス位相変調信号を基準信号としてパルス圧縮することにより、反射信号から各送信手段10−1〜10−Mに由来するM×L個のサブパルス位相変調信号成分を分離するマッチドフィルタとして機能する信号分離部23−nと、を備える。
【0040】
信号合成手段30は、N個の受信手段20−1〜20−Nの信号分離部23−1〜23−Nから出力される、l(エル)(=1,・・・,L)番目のサブパルス位相変調信号に由来したM×N個のサブパルス位相変調信号成分の位相及び振幅を調整し、調整後の各サブパルス位相変調信号成分の合成波形を出力する信号合成部31と、信号合成部31から出力されたL個の合成波形を積算する信号積算部32と、を備える。
【0041】
以下、送信手段10−1〜10−Mの信号変調部12−1〜12−Mで生成されるサブパルス位相変調信号について詳しく述べる。
【0042】
各信号保存部11−m(m=1,・・・,M)に保存されたパルス信号のサブパルスをsk(m)(t)(k=0,・・・,K−1)と記す。ここで、添え字kは1つのパルス信号に含まれるサブパルスの番号を表す。sk(m)(t)は、kTc≦t<(k+1)Tcで値を持つ信号である。
【0043】
複数個のパルスのうち、信号変調部12−mから出力されるl(エル)(=1,・・・,L)番目のサブパルス位相変調信号x'l T(m)(t)は、次式で表される。
【数11】

ここで、tは、送信アンテナ14−mからサブパルス位相変調信号の送信が開始される時刻t1,t2,・・・,tLをそれぞれ基準(t=0)とした時刻であり、x'l T(m)は、0<t<Tで値を持つ信号となる。なお、pαkmはサブパルスsk(m)(t)に掛け合わせられる位相因子であり、次式のように表される。
【0044】
【数12】

ここで、αは1からLまでの自然数である。また、qはαをKで割ったときの余り、sはαをKで割ったときの商の整数値である。即ち、[数12]は、位相因子がp1kmからpLkmまでのL個のセットを構成し、各セットがK×M個の位相因子からなることを示している。
【0045】
L個のサブパルス位相変調信号と位相因子のL個のセットとの組み合わせは任意で良いが、この組み合わせには位相因子のセットがL個全て用いられるものとする。言い換えれば、[数11]におけるαとl(エル)の組み合わせは任意であるが、該組み合わせにはL個のαの全てが用いられる。一例としては、l(エル)(=1,・・・,L)番目のサブパルス位相変調信号x'l T(m)(t)を構成するサブパルスに、l(エル)番目のセットの位相因子plkmが掛け合わせられても良い。
【0046】
上記の位相因子により位相変調されたl(エル)番目のサブパルス位相変調信号に対する相関関数は、次式で表される。
【数13】

ここで、添え字a、bは、送信アンテナ14−a、14−bに対応している。
【0047】
さらに、各送信アンテナ14−1〜14−Mから出力されるL個(=K×M)の変調パルスの全てについて、[数13]の相関関数の和を取る。自己相関については[数14]、相互相関については[数15]のようになる。
【数14】

【数15】

【0048】
ここで、[数15]は次式に示すように変形される。
【数16】

【0049】
ここで、次式が成り立つ。
【数17】

即ち、a≠bの場合には、[数16]の左辺は零に等しくなるため、[数15]が成り立つことが証明される。なお、[数16]は、a=bの場合にk=k'で値を持つが、既に述べたようにsk(m)(t)は、kTc≦t<(k+1)Tcで値を持つ信号であるので、次式が成り立つ。
【0050】
【数18】

従って、a=bかつk=k'の場合においては、[数14]が成り立つことが証明される。
【0051】
図3は、送信手段が2つ(M=2)の場合に、信号変調部12−1、12−2で生成されるサブパルス位相変調信号の一例を示すグラフである。ここでは、サブパルス位相変調信号は、パルス長Tに含まれるサブパルス数Kが2で、チップ長Tc(=T/2)の信号であるとしている。
【0052】
ここで、サブパルスsk(m)(t)(k=0,1)は次式で表されるとしている。
【数19】

【0053】
また、上記のサブパルスに掛け合わせられる位相因子は[数12]より、次式のようになる。
【数20】

【0054】
このようにして構成される各サブパルス位相変調信号x'l T(m)(t)([数11])は、[数14]及び[数15]の相関関係を満たすものとなる。
【0055】
次に、図1に示した本実施形態のレーダ装置1の動作を説明する。
まず、信号保存部11−m(m=1,・・・,M)により、パルス信号が、信号変調部12−mに出力されるとともに、受信手段20−1〜20−Nの信号分離部23−1〜23−Nに基準信号として出力される。信号変調部12−mに入力されたパルス信号は、[数12]の位相因子でサブパルス毎に位相変調されて、サブパルス位相変調信号として信号送信部13−mに出力される。
【0056】
サブパルス位相変調信号は、信号送信部13−mにおいて周波数変換、増幅などの処理が施された後に、送信アンテナ14−mを介して空間に向けて送信される。
【0057】
各送信アンテナ14−1〜14−Mから送信されたサブパルス位相変調信号が、空間中に存在するターゲットにより反射された場合には、その反射信号が各受信アンテナ21−1〜21−Nに受信される。各受信アンテナ21−n(n=1,・・・,N)により受信された反射信号は、信号受信部22−nによって周波数変換、増幅などの受信処理を施された後に、各信号分離部23−nにおいて、送信手段10−1〜10−Mの各信号変調部12−1〜12−Mから出力されたL個の基準信号を用いたパルス圧縮により、M×L個のサブパルス位相変調信号成分に分離される。
【0058】
ここで、サブパルス位相変調信号成分は、送信アンテナ14−m(m=1,・・・,M)から出力されたサブパルス位相変調信号をx'l T(m)(t)とし、受信アンテナ21−n(n=1,・・・,N)により受信された反射信号をx'l R(n)(t)として次式のように表される。
【数21】

ここで、Tはパルス長、tはサブパルス位相変調信号が送信アンテナ14−1〜14−Mから送信された時刻を基準(t=0)とした時刻を指している。なお、サブパルス位相変調信号(送信信号)と反射信号(受信信号)はいずれも複素信号である。
【0059】
上記のようにして得られた、l(エル)番目のサブパルス位相変調信号に由来したM×N個のサブパルス位相変調信号成分は、信号合成手段30の信号合成部31に入力され、位相及び振幅が調整された後に合成される。ここで、信号合成部31が出力する合成波形は次式のように表される。
【数22】

【0060】
ここで、[数22]中のベクトルx'l(t)は次式のように表される。
【数23】

また、[数22]中のベクトルwは、各サブパルス位相変調信号成分に対する振幅、位相の乗数(複素数)となるM×N個の値を要素に持つベクトルで、M×N個の複素数は、形成したいビームの指向性に応じて適宜決定される。
【0061】
このようにして得られたL個の合成波形y'l(t)(l=1,・・・,L)は、信号積算部32に出力され、次式に従って積算される。なお、ここでは、各サブパルス位相変調信号が送信順l(エル)に関わらず、全て同時刻t=0に送信アンテナ14−1〜14−Mから出力されたものと見なして積算処理を行っている。
【数24】

【0062】
図4は、[数24]により積算された合成信号y'(t)を模式的に示すグラフである。なお、比較のために、図4では位相変調を行わない従来の方式で得られた合成信号を点線で示している。図4から、従来の方式と比較して、本実施形態の方式で得られた合成信号においてレンジサイドローブが抑圧されていることが分かる。
【0063】
なお、ターゲットが動いている場合はドップラシフトにより、受信信号の位相が回転する。時間的に隣り合うサブパルス位相変調信号間の位相回転量がθである場合、合成波形y'l(t)は次式のように表される。
【数25】

ここで、Y(t)はターゲットが静止している場合の合成波形である。
【0064】
そこで、ターゲットが動いている場合には、信号積算部32は、次式に従って、位相回転量θを補正してから積算処理を行う。
【数26】

[数26]の積算処理により、合成波形からドップラシフトの影響を取り除いて合成信号y'(t)を算出することが可能となる。
【0065】
以上説明したように、本発明に係るレーダ装置は、サブパルス毎に位相変調を施したパルス信号を複数回送信し、それらの反射信号の複数の信号成分に対して積算処理を行うことにより、レンジサイドローブを抑圧することができる。
【0066】
また、本発明においては、基本的な条件を満たしていれば、各信号保存部が保存するパルス信号は、どのような信号でも構わず、例えば、全て同一のパルス信号であっても良い。このため、本発明は、直交信号の生成に従来技術(C.Y.Chen et al)のような複雑なアルゴリズムを用いなくて良く、手間がかからなくて済むという利点を有する。さらに、本発明は、レーダシステム仕様や他のレーダ等への干渉等を考慮して、パルス信号を自由に設計できるという利点を有する。
【0067】
(第2の実施形態)
本発明に係るレーダ装置の実施形態を図面を参照しながら説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成及び動作については適宜説明を省略する。本実施形態のレーダ装置2の構成は、第1の実施形態と信号合成手段の構成が異なっている。図5は、第2の実施形態のレーダ装置2の構成を示すブロック図である。
【0068】
本実施形態のレーダ装置2は、図5に示すように、互いに異なる無線信号を空間に送信するM個の送信手段10−1〜10−Mと、送信手段10−1〜10−Mより空間に送信された無線信号が空間中に存在するターゲットにより反射された反射信号を受信するN個の受信手段20−1〜20−Nと、受信手段20−1〜20−Nから出力される信号を合成する信号合成手段40と、を具備する。
【0069】
信号合成手段40は、N個の受信手段20−1〜20−Nの各前記信号分離部23−1〜23−Nから出力され、各送信手段10−1〜10−Mに由来するL個のサブパルス位相変調信号成分の積算波形をそれぞれ出力するM×N個の信号積算部41−1−1〜41−N−Mと、信号積算部41−1−1〜41−N−Mから出力されたM×N×L個の積算波形の位相及び振幅を調整し、調整後の各積算波形の合成信号y'(t)を出力する信号合成部42と、を備える。
【0070】
即ち、信号積算部41−n−1〜41−n−M(n=1,・・・,N)は、受信手段20−nの直後にM個ずつ配置される。例えば、信号積算部41−n−m(m=1,・・・,M)は、次式に示すようにL個のサブパルス位相変調信号成分を積算する。
【数27】

【0071】
また、信号合成部42が出力する合成信号y'(t)は次式のように表される。
【数28】

【0072】
ここで、[数28]中のベクトルx'(t)は次式のように表される。
【数29】

【符号の説明】
【0073】
1、2 レーダ装置
10−1〜10−M 送信手段
11−1〜11−M 信号保存部
12−1〜12−M 信号変調部
13−1〜13−M 信号送信部
14−1〜14−M 送信アンテナ
20−1〜20−N 受信手段
21−1〜21−N 受信アンテナ
22−1〜22−N 信号受信部
23−1〜23−N 信号分離部
30、40 信号合成手段
31、42 信号合成部
32、41−1−1〜41−N−M 信号積算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる無線信号を空間に送信するM(Mは2以上の自然数)個の送信手段と、前記無線信号が空間中に存在する物体により反射された反射信号を受信するN(Nは2以上の自然数)個の受信手段と、前記受信手段から出力される信号を合成する信号合成手段と、を具備するレーダ装置において、
各前記送信手段は、
複数のサブパルスからなるパルス信号を保存する信号保存部と、
前記パルス信号のサブパルス毎に位相変調を施したサブパルス位相変調信号を、所定の時間間隔でL(Lは2以上の自然数)回出力する信号変調部と、
前記サブパルス位相変調信号を空間に送信可能な前記無線信号に変換する信号送信部と、
前記信号送信部により前記無線信号に変換されたサブパルス位相変調信号を空間に送信する送信アンテナと、を備え、
各前記受信手段は、
前記反射信号を受信する受信アンテナと、
前記反射信号に受信処理を施す信号受信部と、
前記信号受信部により受信処理された反射信号を、前記M個の送信手段の前記信号変調部から出力されたL個の前記サブパルス位相変調信号を基準信号としてパルス圧縮することにより、前記反射信号から各前記送信手段に由来するM×L個のサブパルス位相変調信号成分を分離する信号分離部と、を備え、
前記信号合成手段は、
前記N個の受信手段の前記信号分離部から出力される、l(エル)(=1,・・・,L)番目の前記サブパルス位相変調信号に由来したM×N個の前記サブパルス位相変調信号成分の位相及び振幅を調整し、調整後の各サブパルス位相変調信号成分のL個の合成波形を出力する信号合成部と、
前記信号合成部から出力されたL個の前記合成波形を積算する信号積算部と、を備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
互いに異なる無線信号を空間に送信するM(Mは2以上の自然数)個の送信手段と、前記無線信号が空間中に存在する物体により反射された反射信号を受信するN(Nは2以上の自然数)個の受信手段と、前記受信手段から出力される信号を合成する信号合成手段と、を具備するレーダ装置において、
各前記送信手段は、
複数のサブパルスからなるパルス信号を保存する信号保存部と、
前記パルス信号のサブパルス毎に位相変調を施したサブパルス位相変調信号を、所定の時間間隔でL(Lは2以上の自然数)回出力する信号変調部と、
前記サブパルス位相変調信号を空間に送信可能な前記無線信号に変換する信号送信部と、
前記信号送信部により前記無線信号に変換されたサブパルス位相変調信号を空間に送信する送信アンテナと、を備え、
各前記受信手段は、
前記反射信号を受信する受信アンテナと、
前記反射信号に受信処理を施す信号受信部と、
前記信号受信部により受信処理された反射信号を、前記M個の送信手段の前記信号変調部から出力されたL個の前記サブパルス位相変調信号を基準信号としてパルス圧縮することにより、前記反射信号から各前記送信手段に由来するM×L個のサブパルス位相変調信号成分を分離する信号分離部と、を備え、
前記信号合成手段は、
前記N個の受信手段の各前記信号分離部の後段に配置され、各前記送信手段に由来するL個のサブパルス位相変調信号成分の積算波形を出力するM×N個の信号積算部と、
前記積算波形の位相及び振幅を調整し、調整後の各積算波形の合成波形を出力する信号合成部と、を備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項3】
各前記信号変調部から前記サブパルス位相変調信号が出力される回数Lが、前記送信手段の個数Mと、各前記信号保存部が保存する1つの前記パルス信号に含まれる前記サブパルスの個数との積で与えられ、
前記信号変調部は、m(=1,・・・,M)番目の前記信号保存部に保存された前記パルス信号の各サブパルスsk(m)(t)に対して、以下の式(1)で与えられる位相因子pαkm(αは1からLまでの自然数)を乗じて位相変調を行うことにより、以下の式(2)で与えられるl(エル)番目の前記サブパルス位相変調信号x'l T(m)を生成するものであり、
式(2)におけるαとl(エル)の組み合わせは任意であるが、該組み合わせにはL個のαの全てが用いられる請求項1または請求項2に記載のレーダ装置。
【数30】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−88313(P2013−88313A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229844(P2011−229844)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】