説明

レーダ高度計

【課題】より正確なレーダ高度計の値を生成するために閉ループ変調を用いたレーダ高度計システムを提供する。
【解決手段】アンテナ、サーキュレータ、受信器、および送信器を含む。送信器は、逓倍されたクロック信号と制御信号に基づいて基準信号を発生する直接デジタル・シンセサイザ82と、直接デジタル・シンセサイザにより生成される前記基準信号を入力するためのローパスフィルタ78と、基準信号と逓倍されたクロック信号を組み合わせることにより前記ローパスフィルタ78から前記基準信号を入力し且つ基準信号をオフセットする混合器76と、混合器からオフセット基準信号を入力するためのバンドパスフィルタ72と、を備え、直接デジタル・シンセサイザの直線周波数ランプはVHFまたはUHF周波数のひとつまで変換され、位相ロックループ回路はオフセット基準信号に基づいてレーダ信号を発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーダ高度計に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な航空機レーダ高度計は、商用または私用航空機の胴体の下部に設置された別々の受信アンテナ、および送信アンテナを含む。別々の送受信アンテナは、レーダ信号の連続送受信中に送信器と受信器の分離を行うために、歴史的に使用されてきた。マイクロ波信号発生源の技術不足、およびマイクロ波デバイスの実装技術不足のために、送信器と受信器の分離が必要であった。同様に、現在のレーダ高度計に使用されたマイクロ波発生源は、閉位相ロックループを使用できるマイクロ波デバイスが存在しなかったので、開ループ法を使用した。現在容易に利用可能な技術によれば、事実上どんな負荷条件または環境条件のもとでも、ひときわ特性の良い直線周波数変調を用いて位相ノイズがひときわ低い信号が可能になる。
【0003】
既存のレーダ高度計の動作は、送信アンテナ信号が地表から受信アンテナへ反射することに依拠する。高い高度では、送信アンテナと受信アンテナの離隔距離により生じる送信信号と受信信号の間の反射角度が小さくなり、非常に良い信号受信がもたらされる。航空機が着陸するときのずっと低い高度では、送信アンテナと受信アンテナの間の反射角度が非常に大きくなり、それによって、アンテナビーム幅の中心から外れた区域で信号受信が減衰する。低高度閾値より下では、この反射角は、送信または受信アンテナのビーム幅を超えることになり、高度計の動作が停止する。したがって、低高度では、従来のレーダ高度計の2アンテナ間の離隔距離により受信信号強度が低減されて、信号対雑音比および高度精度が損なわれる。低高度では、従来の2アンテナ高度計は、正しい地表反射ではなく、エンジンや車輪装置などの航空機の構成要素からの反射を誤って捕捉することもある。単一アンテナレーダ高度計は、高度、すなわち航空機の高度による影響を受けない単一垂直反射経路を地表との間で使用する。航空機尾部衝撃防護システムなどの特殊な用途では、地表まで1フィート(30.48cm)未満の、2アンテナ高度計が機能しない距離を測定する要件がある。したがって、単一アンテナFMレーダ高度計の需要が多い。
【0004】
Maloratskiの米国特許第6,426,717号は、連続波(FM/CW)変調ならびに断続連続波変調を行う、単一アンテナFMレーダ高度計を提示している。図1は、Maloratskiのレーダ高度計を示す。Maloratskiは、送信信号をアンテナに導く、または受信信号をレーダ処理部に通すように導くサーキュレータを含めている。高度計の高周波構成要素をアンテナから遠く隔てて配置することが特許の意図であるので、Maloratskiは、同軸ケーブルを介してサーキュレータをアンテナに接続している。高精度低域高度計の応用例では、ひときわ安定した高度データが必要である。しかし、増大する挿入損失、増大する反射係数、および伝搬遅延時間の変化によって、温度および湿度が同軸ケーブルに影響を及ぼす。したがって、接続ケーブルの真の電気的長さを継続的に較正する方法が存在しない。同軸ケーブルを介してその1つまたは複数のアンテナに接続されたどんなレーダ高度計も、各航空機の装備用同軸ケーブルの電気的長さによって生じる送信アンテナと受信アンテナの間の固定距離を知るために、伝搬遅延を較正しなければならない。
【0005】
Maloratskiはまた、一定周波数の受信信号を発生するために変調速度を連続的に調整する閉ループ・アナログ回路も提示しているが、この閉ループは、レーダ変調の直線性または位相ノイズを制御しない。どんな周波数変調レーダ高度計も、時間に対する周波数変化の、ほぼ理想的な直線変調関数に依拠する。Maloratskiの閉ループ・アナログ回路は、それが受信信号の周波数を制御するだけであるので、変調関数が時間、温度、または他の環境の影響の関数としてほぼ理想的に直線であることを検証する手段を提供しない。このように、Maloratskiの手法は開ループ変調システムを使用する。
【0006】
多くの種類の無線周波数発生源は、負荷インピーダンスの関数としての周波数プリングの影響を受ける。その結果、開ループ変調システムは、同軸ケーブルの劣化、またはアンテナ整合がよくないことで変動する電圧定在波比(VSWR)が生じるために、周波数変調関数の直線性に歪みを受ける。変調直線性がよくないために信号対雑音比および高度精度が低下することになり、また変調速度の測定に誤差が生じる。
【0007】
Maloratskiによって提案された単一アンテナ高度計を含めて多くの従来のレーダ高度計が、一定の受信差周波数を得るために、直線周波数変調波形の周期を高度の関数として連続的に調整する。この一定受信差周波数は、Maloratskiのレーダ高度計、および最も普及しているレーダ高度計の高度トラッキング機構の鍵である。この設計の特徴は、アナログ高度トラッキング・サブシステムを容易にする手段を提供する一方で、それはまた、高度および地表からの反射輝度の関数として受信信号の振幅を調節する自動利得制御回路を高度計が設けることも強いる。こうした設計の特徴は、高度計の設計を複雑にし、地表の高さが急速に変化する場合の高度計回路全体の応答時間に対し制限を加える。
【0008】
単一アンテナを備えた周波数変調/連続波(FM/CW)レーダの基本的な問題は、レーダのアンテナまたは接続同軸ケーブルからの大きな信号反射である。アンテナまたは接続同軸ケーブルからの大振幅反射のために連続送信レーダがそれ自体を妨害することになり、それによって感度が制限される。Maloratskiらは、FM/CW自己妨害を防止しようとして、専用の相殺回路を利用した。
【0009】
したがって、現在の単一アンテナレーダ高度計システムは、Maloratskiのように、あまりにも複雑で、開ループ変調を利用するものであり、また、時間変化および温度変化と、同軸ケーブルの経時劣化により低下する高周波性能とのために相対的に不正確である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、時間に対して高周波性能の劣化がなく、アンテナとレーダ高度計の他のハードウェアとの間の接続距離に関連する問題がなく、また、変調誤差が生じにくく、長期にわたりより正確な再現可能性のある単一アンテナFMレーダ高度計が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、デジタル式プログラム可能閉ループ変調を用いたレーダ高度計システムを提供し、このシステムは、ほぼ理想的な直線性を実現しながら一定の掃引速度および帯域幅を提示する。送受信器の構造体の中にアンテナを直接組み込むことによって、その設計は、同軸ケーブルの接続を不要にし、また、FM/CW自己妨害を制御するために、意図的にほぼ理想的なアンテナ・インピーダンス整合(例えば、電圧定在波比(VSWR)≒1.2:1)を実現する。本発明は、距離分解能および信号対雑音比を最適化し、また、正確に設定された周波数オフセットおよび変調速度で動作することによって、近傍の高度計との相互妨害が回避される。
【0012】
このシステムは、アンテナ、サーキュレータ、受信器、および送信器を含む。サーキュレータは、アンテナとの間でレーダ信号を受信または送信する。受信器は、受信されたレーダ信号をサーキュレータを介して受け取る。送信器は、レーダ信号を発生する位相ロックループ(PLL)回路を含む。
【0013】
本発明の別の態様によれば、送信器は、既定のクロック信号および制御信号に基づきPLL基準信号を発生する直接デジタル・シンセサイザを含む。
本発明の他の態様によれば、システムは、デジタル信号プロセッサ(DSP)を含み、このDSPは、制御信号を発生し、受信器によって受け取られた信号を処理する。
【0014】
本発明のさらに別の態様によれば、システムは、デジタル信号プロセッサと通信する高度計算プロセッサを含む。この高度計算プロセッサは、デジタル信号プロセッサおよび高度計算プロセッサによって処理されるレーダ信号に基づき、地表に対する高度計アンテナの位置を求める。本発明の単一アンテナは、着陸を支援するために着陸装置の近くに設置することができ、あるいは、離陸時にあまりに大きな角度で航空機が縦揺れする場合に尾部と地表との差し迫った衝突を警報するために、航空機尾部の下方に設置することができる。この応用例では、航空機飛行制御システムと通信する出力デバイスは、尾部と地表との所定の離間距離に基づく尾部衝撃警報システムとして機能する。
【0015】
本発明のさらに別の態様によれば、アンテナは、マイクロストリップ・アンテナであり、レーダ送受信器回路の一体化部分である。送受信器回路は、マイクロ波回路基板の一方の面に配置され、送受信器回路の反対面に配置されたアンテナに直接接続される。それによって、送受信器とアンテナの間の距離が実現可能な最小限まで低減され、アンテナ伝搬遅延時間に対する高度計の較正の必要がなくなる。したがって本発明では、送受信器とともにアンテナを組み込むことに応じて、アンテナ取付けの位置による較正がなくなり、一体化したアンテナと受信器/送信器が航空機胴体のどこでも許容される。
【0016】
本発明のさらに別の態様によれば、アンテナおよび送受信器回路は密封されたハウジング内に取り込まれる。
本発明のさらに別の態様によれば、変調周期が一定であるために、高度の変化がFM/CW受信器の差周波数の直線的な変化をもたらす。本発明では、所与のレーダ断面反射の振幅が高度の関数として一定のままになるように、受信器内にオクターブ当たり6dBのハイパスフィルタを設ける。このハイパスフィルタにより、自動利得制御が不要になり、高度の関数としての信号振幅変化を即座に補償する手段が実現する。本発明は、地表の広範囲の反射率によって生じる反射信号の振幅の変化を表すのに十分なビット数のアナログ−デジタル変換器を含む。
【0017】
本発明のさらに別の一態様によれば、高度計のデジタル信号プロセッサ(DSP)機能と、高度計算および他のすべての高度機能と、入力/出力機能とが、一体化したアンテナと送受信器の密封アセンブリから遠く隔てて配置されるように設計される。簡単なシリアル通信方法により、アンテナ・アセンブリとDSP機能および高度計算機能との間で、デジタル化したデータ信号および制御信号を伝送する。デジタル制御機能および信号処理機能は、航空機のどこにでも配置でき、あるいは、他の航行機能と一体化することができる。したがって、本発明は、同軸ケーブル相互接続を必要としないで、どんな航空機にもレーダ高度計の取付けを可能にし、それによって、取付け費用および重量が低減する。
【0018】
本発明の好ましい実施形態および代替実施形態を、添付の図面を参照して以下で詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図2は、より正確なレーダ高度計測定値および尾部衝撃警報を提供するシステム30を示す。システム30は、レーダ高度計34、および信号処理システム32を含む。信号処理システム32は、プロセッサ36、高度計算プロセッサ(ACP)37、および入力/出力デバイス38を含む。一実施形態では、プロセッサ36は、高速フーリエ変換(FFT)または書替え可能ゲートアレイ(FPGA)を用いたデジタル信号プロセッサ(DSP)である。レーダ高度計34は、信号処理システム32、および地表接近警報システムなどの他の航空機システムと通信する。レーダ高度計34は、アナログ−デジタル(A/D)変換器60によって生成されたシリアルデータをプロセッサ36へ送出し、次いでプロセッサ36は、高度2値データをACP37へ転送する。ACP37は、地表までの距離値を解析し、その解析に基づき尾部衝撃警報を発生することができる。ACP37が尾部衝撃警報を発生した場合には、入力/出力デバイス38は航空機搭乗員に警報を与える。ACP37は、デジタル信号の位置を求めることによって高度計の値を決定する。
【0020】
レーダ高度計34は、サーキュレータ52に結合された単一アンテナ50を含む。サーキュレータ52は、送信器56および受信器58とアンテナ50との結合を行うための、また送信器56と受信器58の分離を行うための市販されている従来のサーキュレータである。送信器56は、プログラム可能論理デバイス66と通信する。受信器58は、A/D変換器60と通信する。
【0021】
DSP36の例としては、Texas InstrumentのTI320C33が適当である。あるいは、書替え可能ゲートアレイ(FPGA)により、高度距離ゲートを形成するのに必要な高速フーリエ変換の計算をすることもできる。
【0022】
図3は、送信器56の構成要素を示す。送信器56は、位相ロックループ(PLL)回路などの閉ループ回路70を含む。一実施形態では、回路70は、出力レーダ信号を発生する電圧制御発振器(VCO)90、および分周器88を含み、この分周器は、VCO90の出力をマイクロ波またはミリメートル波の周波数からVHFまたはUHFの高周波に一定率で低くする。回路70は、直接デジタル・シンセサイザ82、ローパスフィルタ78、バンドパスフィルタ(BPF)72、混合器76、および周波数逓倍器74によって発生された基準信号と分周器88の出力を比較し、かつVCO90の出力周波数を調整し、その結果、VCO90がデジタル合成された基準信号の周波数および位相に追従するようになる。周波数逓倍器74、混合器76、ならびにフィルタ72および78を使用して、直接デジタル・シンセサイザ82の直線周波数ランプをUHF周波数まで変換し、その周波数で、位相/周波数検出器84において分周器88のUHF周波数出力と直接比較する。ループフィルタおよび増幅器86は、検出器84で行われた比較に基づき、VCO90用の同調制御信号を発生する。VCO90の出力の閉ループ変調は、アンテナ50を介して出力するために、増幅器92およびサーキュレータ52へと流れる。
【0023】
図4Aは、レーダ高度計34の単一アンテナ実施形態を示す。送信器56は、クロック信号を生成する第1の発振器100を含む。2つの信号が混合器108で一緒にされ、バンドパスフィルタ122によってフィルタリングされる場合、周波数逓倍回路102は、クロック信号周波数が直接デジタル・シンセサイザ104を動作させるのに十分なだけ、かつシンセサイザ104の出力をUHF帯域までオフセットするのに十分なだけ高くなるように、クロック信号周波数を逓倍率Nで高くする。DSP60は、DSP60のコマンドをDDS104のコマンドに変換するプログラム可能論理デバイス(PLD)112へ制御信号を送出し、このDDS104のコマンドは、特定の帯域幅および周期の直線周波数変調、あるいは較正または自己試験プロセスに変換される。DDS104は、逓倍回路102で発生されたクロック周波数信号の速度で正確な離散正弦波振幅サンプルを発生することによって、特性の良い直線FMランプを発生する。DDS104によって生成された直線FMランプを含む離散正弦波振幅サンプルは、ローパスフィルタ(LPF)120を通過し、その出力がVHF周波数の連続アナログ信号になる。この連続直線周波数変調は、混合器108で周波数逓倍回路102の出力に付加される。混合器108の出力は、バンドパスフィルタ(BPF)122によって帯域制限され、位相ロックループ(PLL)回路126の位相および周波数検出器154の入力部でUHF基準信号になる。この位相および周波数検出器は、分周器152の周波数を低くした入力とバンドパスフィルタ122の直線周波数変調出力との間の瞬間誤差を測定する。増幅された誤差信号は、ループフィルタおよび増幅器156によって帯域制限される。ループ増幅器およびフィルタ156の出力は、マイクロ波またはミリメートル波VCO150の電圧同調入力に加えられる。このようにして、VCO150の瞬時周波数は、DDS104の直線周波数変調に追従する。逓倍クロック周波数によってもたらされる内部DDSデジタル計算およびタイミングが、DDS104の出力を決定する。VCO同調特性の固有の非直線性、あるいは外部負荷条件または外部環境によって誘起される非直線性は、位相および周波数検出器154で行われる測定によって自動的に補正される。PLL126によって生成される直線周波数変調は、必要な送信電力レベルまで増幅器130によって増幅される。
【0024】
受信器の混合器140は、増幅器130の出力のごく一部を受信器58内の混合器140の基準入力として受け取る。混合器140は、アンテナ50によって受信されサーキュレータ52を経由した信号から、送信器増幅器130によって供給された基準信号を減算する。混合器140によって発生された周波数差は、ハイパスフィルタ(HPF)142中を流れ、このHPF142は、受け取ったアナログ信号をフィルタリングし、アナログ−デジタル(A/D)変換器144に送出する。A/D変換器144のデジタル出力は、DSP60の入力部に達する。DSP60は、サンプルデータの高速フーリエ変換(FFT)の計算をする。得られたFFTの周波数2進数は、増分高度2進数に相当する。ACP37は、高度周波数2進数を求めるアルゴリズムを使用して、地表からの航空機の高さを決定する。これらのアルゴリズムはまた、離陸中に尾部衝撃の可能性があるかどうかも判定し、その情報を入力/出力デバイス38を介して、飛行制御や飛行管理システムなどの他の航空機システムに伝える。
【0025】
図4Bに示されているように、送信アンテナ50aおよび受信アンテナ50bが、図4Aに示された単一アンテナ50およびサーキュレータ52に取って代わる。この2アンテナ構成は、単一アンテナシステムに使用される送信出力レベルが低いために高度計の必要最大高度範囲が限定される場合に有用である。この場合には、サーキュレータ52が取り除かれ、送信器と受信器の間で必要な分離は、単一密封パッケージ内の別々の送信アンテナおよび受信アンテナによって達成される。この実施形態では、本発明は、引き続き直線周波数変調の閉ループ・デジタル合成を組み込むが、非常に低い高度の測定が、隣接アンテナのビーム幅が継続して重なり合う範囲に限定される。高度計の信号処理部は、一体化したアンテナとマイクロ波のパッケージへのシリアルデータ接続によって、引き続き航空機のどこにでも配置することができる。
【0026】
送信器56の特定の一実施形態では、送信器56の出力は、4200〜4400MHzの200MHz変調帯域幅の直線周波数掃引である。この所望の出力を得るために、DSP60は、PLD112を介してDDS104に、82.7〜104.9MHzの帯域幅を有する信号を発生するように命令する。クロック発振器100の周波数は128MHzであり、周波数逓倍器102の逓倍率は3である。したがって、逓倍回路102の出力は384MHzになり、混合器108で混合されたときに466.7〜488.9MHz(中心が477MHz)の帯域幅を有する信号がBPF122の出力に生成される。PLL回路126は、約4300MHzを中心に少なくとも300MHzの調整ができる電圧制御発振器(VCO)150を含む。分周器152は、VCO150で発生した4300MHz信号を分周率9で分周し、その結果、VCO150の同調範囲が4200MHz〜4400MHzにある場合に、466.7MHz〜488.9MHzの出力周波数範囲が得られる。分周器152の出力は、DDS104によって発生された基準の466.7〜488.9MHz直線周波数掃引と、周波数逓倍器102の逓倍周波数出力とを含むバンドパスフィルタ122の出力と比較される。基準信号と分周されたVCO150の信号との間のいかなる周波数または位相誤差も、誤差増幅器およびフィルタ156によりVCO150を同調することによって補正されて、正確な周波数または位相がPLL126内に得られる。
【0027】
送信器56によって生成された出力レーダ信号は、従来技術のシステムよりも明確に限定して定められた範囲を有し、それによってレーダ信号の中心の、サイドローブとの差異がより大きくなる。加えて、経時的に出力されるレーダ信号は、歪みが少ないために周波数と時間の間により直線的な関係を示す。
【0028】
図5は、航空機での使用のためにパッケージ化されたレーダ高度計200の側面図を示す。レーダ高度計200は、単一マイクロストリップ・アンテナ202を含み、ハウジング204がアンテナ202の裏面に取り付けられている。ハウジング204内には、(単一送受信アンテナ構成での)サーキュレータ52、送信器56、および受信器58が含まれる。一実施形態では、ハウジング204は、アンテナ202に対し密封した溶接カバーである。DSP60から延びる導線は防水コネクタ210を通り、それによってハウジング204内の電子回路が環境から保護されることが保証される。別の実施形態では、DSP60がハウジング204内に含まれる。
【0029】
レーダ高度計200の構成要素がアンテナ202に直接取り付けられるので、サーキュレータ52をマイクロストリップ・アンテナ202に接続する同軸ケーブルが不要である。この実施形態では、マイクロストリップ・アンテナ202は、サーキュレータ52、送信器56、受信器55、およびDSP60を含む回路基板にできるだけ近接して接続される。一実施形態では、サーキュレータ52(回路基板)とマイクロストリップ・アンテナ202の間の距離は約0.1インチ(2.54mm)である。本発明では、一定した変調特性および信号対雑音比が長期にわたり示され、したがって、設置後、またはもっと後に再較正する必要がなくなる。送信器によって生成される変調レーダ信号は、直線性誤差値が0.5%未満である。
【0030】
一実施形態では、回路基板および回路構成要素は、シリコン・ゲルマニウム(SiGe)モノリシック・マイクロ波集積回路(MMIC)である。他の構成も可能であることが理解されるはずである。
【0031】
レーダ高度計34が航空機の尾部に配置されない場合には、飛行管理システム(FMS)や飛行制御システム(FCS)などの他の航空機システムから受け取られる縦揺れや横揺れなどの他の情報を尾部衝撃処理に含めてよい。
【0032】
本発明の好ましい実施形態を示し、説明してきたが、上述のように、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、多くの変更を加えることができる。したがって、本発明の範囲は、好ましい実施形態の開示によっては限定されない。そうではなく、本発明は、もっぱら添付の特許請求の範囲に即して限定されるべきである。
【0033】
独占的な所有権または特権が主張される本発明の実施形態は、特許請求の範囲で定義される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】従来技術のレーダ高度計システムのブロック図である。
【図2】本発明により構成されたレーダ高度計および尾部衝撃警報システムのブロック図である。
【図3】図2に示されたシステムに含まれる送信器の構成要素を示す図である。
【図4A】本発明により構成されたレーダ高度計の詳細な電子構成要素を示す図である。
【図4B】本発明により構成された代替レーダ高度計の詳細な電子構成要素を示す図である。
【図5】本発明により構成されたレーダ高度計の側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ信号を出力し受信するためのひとつのアンテナ(50)と、
前記アンテナと通信するサーキュレータ(52)と、
前記サーキュレータを介してレーダ信号を受け取るための受信器(58)と、
レーダ信号を発生するための送信器(56)とを含み、前記送信器は、
前記レーダ信号を発生する位相ロックループ回路(70)と、
クロック信号を発生するための発信器(80/100)および逓倍構成要素(74/102)と、
前記逓倍されたクロック信号と制御信号に基づいて基準信号を発生する直接デジタル・シンセサイザ(82/104)と、
前記直接デジタル・シンセサイザにより生成される前記基準信号を入力するためのローパスフィルタ(78/102)と、
前記基準信号と前記逓倍されたクロック信号を組み合わせることにより前記ローパスフィルタ(78)から前記基準信号を入力し且つ前記基準信号をオフセットする混合器(76/108)と
前記混合器からオフセット基準信号を入力するためのバンドパスフィルタ(72/122)と、を備え、前記直接デジタル・シンセサイザの直線周波数ランプは前記逓倍器構成要素、前記ローパスフィルタ、前記混合器および前記バンドパスフィルタによりVHFまたはUHF周波数のひとつまで変換され、前記位相ロックループ回路は前記オフセット基準信号に基づいて前記レーダ信号を発生する、
航空機のレーダシステム。
【請求項2】
回路基板上に形成され、前記受信器によって受信された信号をデジタル信号に変換するためのアナログ−デジタル変換器と、
前記制御信号を生成し、かつ前記デジタル信号を処理するためのデジタル信号プロセッサ(36)と、
を更に含む、請求項1に記載のレーダシステム。
【請求項3】
請求項1に記載の航空機のレーダシステムによって実施される方法であって、
閉ループ回路を有する前記送信器(56)を使用して前記レーダ信号を発生するステップと、
前記発生したレーダ信号を前記アンテナ(50)を介して出力するステップと、
前記アンテナを介して前記レーダ信号を前記受信器(58)で受け取るステップとを含み、
前記レーダ信号を発生するステップはさらに前記基準信号に基づいており、前記基準信号は前記逓倍されたクロック信号、および前記制御信号に基づき発生され、
さらに、前記受信器によって受け取られた信号をデジタル信号に変換するステップと、
前記デジタル信号をデジタル信号プロセッサ(30)に送出するステップと、
前記デジタル信号に基づき高度値を前記デジタル信号プロセッサで求めるステップと、
を含む、方法。
【請求項4】
前記サーキュレータ(52)、前記受信器(58)および前記送信器(56)は、回路基板上に形成され、前記回路基板は前記アンテナ(50)に接続され、前記サーキュレータとアンテナは直接、接続されている、請求項1に記載のレーダシステム。
【請求項5】
前記回路基板と前記アンテナ(50)の間の距離は1インチ(2.54cm)未満である、請求項4に記載のレーダシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−64742(P2013−64742A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−244383(P2012−244383)
【出願日】平成24年11月6日(2012.11.6)
【分割の表示】特願2007−530115(P2007−530115)の分割
【原出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】