説明

レールジャッキ

【課題】レールを不用意に落下させることのない、安全なレールジャッキを提供する。
【解決手段】ジャッキ本体11に、レール載置用昇降爪13および爪降下用ペダル14がそれぞれ設けられている。ペダル14は、上方姿勢および下方姿勢の間で揺動自在である。ペダル14が上方姿勢に保持された状態で、爪13によるレールの持上げが可能である。ペダル14を上方姿勢から下方姿勢に押下げることによって、爪13が自重によって降下させられうるようになされている。ペダル14の下方に対し進退しうるように可動ストッパ15が配置されている。進入時の可動ストッパ15がペダル14の上方姿勢からの押下げを規制するとともに、退去時の可動ストッパ15が上方姿勢からの押下げを自由とするようになされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、新幹線の保線作業等において、レール軌道の調整作業あるいはレールの交換作業の際に使用されるレールジャッキに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のレールジャッキとしては、ジャッキ本体に、レール載置用昇降爪および爪降下用ペダルがそれぞれ設けられており、ペダルは、上方姿勢および下方姿勢の間で揺動自在であり、ペダルが上方姿勢に保持された状態で、爪によるレールの持上げが可能であり、ペダルを上方姿勢から下方姿勢に押下げることによって、爪が自重によって降下させられうるようになされているものが知られている。
【0003】
通常の作業においては、レールの下に、レールジャッキのレール載置用昇降爪をセットし、爪を上昇させることによって、爪上に載置されたレールを持ち上げる。
【0004】
爪上にレールを載置して持上げている際に、作業員がペダルを誤って踏んだ場合、爪およびレールが不用意に急降下してしまう。降下する爪やレールに作業員が手足を詰めたりすると、傷害事故となって危険である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の目的は、爪やレールを不用意に落下させることのない、安全なレールジャッキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明によるレールジャッキは、ジャッキ本体に、レール載置用昇降爪および爪降下用ペダルがそれぞれ設けられており、ペダルは、上方姿勢および下方姿勢の間で揺動自在であり、ペダルが上方姿勢に保持された状態で、爪によるレールの持上げが可能であり、ペダルを上方姿勢から下方姿勢に押下げることによって、爪が自重によって降下させられうるようになされているレールジャッキにおいて、ペダルの下方に対し進退しうるように可動ストッパが配置されており、進入時の可動ストッパがペダルの上方姿勢からの押下げを規制するとともに、退去時の可動ストッパが上方姿勢からの押下げを自由とするようになされているものである。
【0007】
この発明によるレールジャッキでは、可動ストッパによってペダルの不用意な押下げを規制することができる。したがって、レールジャッキのレール載置用昇降爪や、爪上に載せられたレールを不用意に落下させることのない、安全なレールジャッキを提供することができる。
【0008】
さらに、ペダルは、ジャッキ本体外に突出させられかつ踏板を固定した揺動端部と、ジャッキ本体内で水平軸によって揺動自在に支持された支持端部とを有しており、可動ストッパは、ペダルの下方をこれと交差する水平方向にスライド自在に支持されていると、可動ストッパをスライドさせるだけの簡単な操作によって、ペダルの不用意な押下げを規制することができる。
【0009】
また、上方姿勢のペダルをロック解除自在にロックしうるようにロック部材が水平軸によって揺動自在に支持されており、ロック部材に入力歯車が支持されており、爪にラックが一体的に設けられており、ラックに出力歯車が噛み合わされており、入力歯車および出力歯車が中間歯車にそれぞれ噛み合わされており、ペダルを上方姿勢から下方姿勢に押下げることによって、ペダルおよびロック部材のロックが解除されかつ入力歯車および中間歯車の噛み合いが解除されるようになされていると、ペダルの押下げによって、ペダルのロックを解除すると同時に、入力歯車から出力歯車まで動力伝達を遮断し、出力歯車および中間歯車を空転させることによって、爪を急降下させることができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、レールジャッキのレール載置用昇降爪や、爪上に載せられたレールを不用意に落下させることのない、安全なレールジャッキが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明の実施の形態を図面を参照しながらつぎに説明する。
以下の説明において、前後とは、図1の右側を前、これと反対側を後といい、左右とは、後方より見て、その左右の側を左右(図4の左右の側)というものとする。また、時計方向、反時計方向とは、図1を基準としていうものとする。
【0012】
図1を参照すると、レールジャッキは、中空状ジャッキ本体11と、ジャッキ本体11内に昇降自在に支持されている後向きラック12と、ラック12の下端部にこれと一体的に設けられかつジャッキ本体11から前向きに突出させられているレール載置用昇降爪13と、ジャッキ本体11から後向きに突出させられて爪13の下降操作に用いられる爪降下用ペダル14と、ペダル14の下降を規制するための可動ストッパ15と、爪13の上昇操作に用いられるハンドル16とを備えている。
【0013】
ジャッキ本体11は、水平板状ベース21と、ベース21上に相対して立てられている左右一対の垂直状側板22,23 と、両側板22,23 間の頂部から後部にかけての部分を被覆しているカバー24とよりなる。
【0014】
両側板22,23 の頂部前端には、ラック12の前側面に接触させられた水平ガイドローラ31が取付られている。両側板22,23 の頂部後端近くには左右方向にのびた水平吊持軸32が渡されている。吊持軸32にはロック部材33が揺動自在に吊下げられている。ロック部材33は、左右一対の垂直対向状ロック板34よりなりかつロック解除ばね35によって時計方向に揺動するように付勢されている。両ロック板34の下端部には係合凹部36が後向きに形成されている。
【0015】
両ロック板34の高さの中程には左右方向にのびた水平入力軸41が支持されている。入力軸41の右端部は、右側板23を貫通してその右方に突出させられている。右側板23の、入力軸41貫通カ所には長孔42が形成されている。入力軸41の突出端部にはソケット43が固定され、これに、ハンドル16の下端部が抜き差し自在に装着されている。ソケット43には、図示しないが、ハンドル16の反時計方向の揺動は入力軸41に伝達するが、その時計方向の揺動は空転させるクラッチが備えられている。入力軸41の前方には、中間軸44および出力軸45が入力軸41と平行に設けられている。
【0016】
入力軸41には入力歯車51および爪車52が並列状に固定されている。爪車52には、これの時計方向の回転を妨げる爪53が備えられている。中間軸44には大径中間歯車54および小径中間歯車55が並列状に固定されている。入力歯車51に大径中間歯車54が噛み合わされている。出力軸45には大径出力歯車56および小径出力歯車57が並列状に固定されている。小径中間歯車55に大径出力歯車56が噛み合わされている。小径出力歯車57は、ラック12に噛み合わされている。
【0017】
ペダル14は、左右方向にのびた水平軸61に支持され後向きにのびた左右一対のアーム62,63 と、左アーム62の先端部から後向きにのびた延長アーム64と、両アーム62,63 を上向きに付勢しているペダル押上げばね65とよりなる。両アーム62,63 の先端部には、左右方向にのびた水平角棒状係合部材66が渡されている。延長アーム64の先端部には踏板67が固定されている。
【0018】
可動ストッパ15は、両アーム62,63 の下を潜って左右方向にのびかつベース21上にスライド自在に支持されている垂直帯板状ストッパ部材71と、ストッパ部材71の前面中央に前向きに突出すように設けられている水平棒状抜止突条72とを有している。ストッパ部材71の上縁部中央には切欠73が形成されている。ストッパ部材71の左端部は、ジャッキ本体左側板22を貫通してその左方に突出させられている。ストッパ部材71の突出端部にはハンドル取付筒74が設けられている。
【0019】
図1および図2は、ラック12とともに爪13を上昇させて、爪13の上面に載せられたレール(図示略)を持上げ可能となった状態を示すものである。入力歯車51および大径中間歯車54は、噛み合わされている。ペダル14は、上方姿勢に保持されて、係合凹部36に係合部材66が係合させられている。さらに、図4に示すように、ストッパ部材71は、そのスライドストロークの右限に位置させられ、切欠73は左アーム62の右側に位置させられている。ストッパ部材71の切欠73の左側の部分は、左アーム62の下縁部と僅かな間隔をおいて相対させられている。この状態では、ペダル14を押下げようとしても、ストッパ部材71の切欠73の左側の部分に、左アーム62の下縁部が当接して、ペダル14を押下げることはできない。
【0020】
ハンドル16を揺動させると、入力歯車51は時計方向に回転はできないが、反時計方向に回転させられる。この回転は、大径中間歯車54、小径中間歯車55、大径出力歯車56および小径出力歯車57を順次経由して、最終的にラック12を上昇させる。
【0021】
爪13を降下させるには、ソケット43からハンドル16を抜取る。抜取ったハンドル16はハンドル取付筒74に差込む。ハンドル16を左向きに押動し、ストッパ部材71をそのスライドストロークの左限まで移動させる。そうすると、ストッパ部材71の切欠73は左アーム62の直下に位置させられ、ストッパ部材71の切欠73内に左アーム62が進入可能となる。図3および図5に示すように、ペダル14を押下げると、ペダル14が下方姿勢まで揺動して、係合凹部36と係合部材66の係合が外れる。ロック解除ばね35によって、ロック部材33は時計方向に揺動させられる。入力歯車51および大径中間歯車54の噛合せが解除され、大径中間歯車54、小径中間歯車55、大径出力歯車56および小径出力歯車57を空転させながら、ラック12とともに爪13が自重により急降下させられる。
【0022】
ジャッキ操作を再開するには、ソケット43を前向きに押動して入力歯車51を大径中間歯車54に噛み合わせる。そうすると、ペダル押上げばね65によって、ペダル14が押上げられるから、その下方にストッパ部材71を進入させればよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明によるレールジャッキの側面図である。
【図2】ジャッキ操作可能時の同ジャッキの垂直縦断面図である。
【図3】ジャッキ操作終了時の同ジャッキの垂直縦断面図である。
【図4】図2のIV−IV線にそう垂直横断面である。
【図5】図4に示す状態からストッパ解除したときの垂直横断面である。
【図6】図4のVI−VI線にそう水平断面図である。
【図7】図4のVII −VII 線にそう垂直断面図である。
【符号の説明】
【0024】
11 ジャッキ本体
13 レール載置用昇降爪
14 爪降下用ペダル
15 ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャッキ本体に、レール載置用昇降爪および爪降下用ペダルがそれぞれ設けられており、ペダルは、上方姿勢および下方姿勢の間で揺動自在であり、ペダルが上方姿勢に保持された状態で、爪によるレールの持上げが可能であり、ペダルを上方姿勢から下方姿勢に押下げることによって、爪が自重によって降下させられうるようになされているレールジャッキにおいて、ペダルの下方に対し進退しうるように可動ストッパが配置されており、進入時の可動ストッパがペダルの上方姿勢からの押下げを規制するとともに、退去時の可動ストッパが上方姿勢からの押下げを自由とするようになされているレールジャッキ。
【請求項2】
ペダルは、ジャッキ本体外に突出させられかつ踏板を固定した揺動端部と、ジャッキ本体内で水平軸によって揺動自在に支持された支持端部とを有しており、可動ストッパは、ペダルの下方をこれと交差する水平方向にスライド自在に支持されている請求項1に記載のレールジャッキ。
【請求項3】
上方姿勢のペダルをロック解除自在にロックしうるようにロック部材が水平軸によって揺動自在に支持されており、ロック部材に入力歯車が支持されており、爪にラックが一体的に設けられており、ラックに出力歯車が噛み合わされており、入力歯車および出力歯車が中間歯車にそれぞれ噛み合わされており、ペダルを上方姿勢から下方姿勢に押下げることによって、ペダルおよびロック部材のロックが解除されかつ入力歯車および中間歯車の噛み合いが解除されるようになされている請求項2に記載のレールジャッキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−260626(P2008−260626A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106323(P2007−106323)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(504377002)株式会社アイエム (8)
【出願人】(591065848)名工建設株式会社 (15)