説明

レール清掃装置

【課題】清掃体の重力と清掃面の摩擦力により、回動軸を介して清掃体の向きを変更させ、堆積物を片側のみに摺り寄せて清掃面上を走行する清掃装置を提供する。
【解決手段】レール上を走行する走行体に取り付けられてレールの上面を移動して清掃するレール清掃装置であって、走行体に設けられた取り付け金具に固着される取付部材1と、取付部材1と回動可能に連結される回動部材2と、回動部材2に取り付けられる台座部材3と、台座部材3に連結される清掃部材4とを備え、取付部材1は板状取り付け台座11と取り付け台座11から突出した二股状ブロック部材12からなり、二股状ブロック部材12を貫通する回動軸25を介して回動部材2と連結してなり、回動軸25の回動により清掃部材4をレール施設方向に対して斜め方向に回動させ、レール上面に押圧してレール上面の付着物或いは堆積物を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行クレーン等のレール上を走行する走行体に装着されて該走行体の走行と共にレール上面を清掃するためレール清掃装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、レール上を走行するクレーンやガイドレール、搬送用ガイドレールや床面等の上を車輪を介して移行する走行体が移行するとき、その軌条面、床面に堆積した堆積物(例えば、ダストやミスト、雨水、冷却水、メッキ槽等によって発生する蒸気、塵埃等)が、車輪の踏面との間に介在することにより、その車輪が空転、停止、スリップ等を引き起こし、直接走行体に影響を及ぼして、スリップしたり、時には重大な事故を引き起こす原因にもなっている。
【0003】
従って、常時レールの清掃が必要となるが、清掃用具或いは専用の清掃装置を用いてレールの清掃を行う場合には、走行体に清掃装置を装着し、走行体の走行時にレールの清掃を行う方式が種々提案されている。
【0004】
例えば、特許第3249980号公報には、走行クレーンの車輪前部にブラシ板を配置し、走行体の走行によってレール上面の堆積物を除去する方式が示されている。
【特許文献1】特許第3249980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この装置は、例えば、レール方向に走行体が進行してレールの上面の清掃が行なわれている場合には、主としてブラシ板の前部植設部のブラシ部材Bにより清掃が行われ、レール上面に堆積していた塵埃はワイヤブラシでレール上面から払拭されてレール側部に払い落とされるが、一部はワイヤブラシの植設部の間に入り込み、次第に蓄積されると共に後方に移動して空間部に押し出される。この空間部に押し出された塵埃は、その後方に位置して前進してくる後部植設部のブラシ群によって払拭され、レールの側部に払い落とされる。ブラシによってレール上面の付着物や堆積物を払拭するものであり、ブラシによってレールの長手方向に対して斜めに交差するように配置し、レール側部に落下させる場合がある。
【0006】
しかしながら、ブラシは、箱状の枠体内に挿入されていて、清掃装置が進行方向に対して固定されているので、走行体の進行方向の両側に摺り寄せられて、しかも、清掃面の進行方向の片面下に設置されているメッキ槽、製造部品、保管品等に落下し、もしくは堆積し、その事後処理の対策が必要であった。
【0007】
また、特許文献1には、支持棹を取付板に対して回動可能に連結する連結部材の構造を示すものが記載されている。すなわち、取付板のブラケットの側から六角穴付ボルトが挿入され、支持棹側の端部は平ワッシャとスプリングワッシャとナットとで締結されている。前記ボルトのシャフト部は、前記ブラケットに形成されている開孔に遊嵌され、その外周部にはスリーブが嵌合されている。又、該シャフトの前記ブラケットの内側にはベアリングが嵌合され、その外側にベアリングカバーが配設されている。これにより、シャフトに固定されている支持棹は、ブラケット、即ち取付板に対して回動自在となっている。
【0008】
しかしながら、回動自在となす連結部材の構造は、ブラケットと支持棹との間にベアリングを設けたり、取付板に対して支持棹が回動可能に連結されるための特別の構成が必要になる。
【0009】
更に、ブラシ部材をレールの長手方向と斜めに交差するように配置するに当り、ブラシユニット自体をブラシ板に斜めに装着する方式の他、支持棹に対して斜めに配置して取り付けることも特許文献1に記載されている。
【0010】
しかしながら、ブラシユニットをレールの長手方向に対して傾めに交差させるようにしたり、前記支持棹を取付板に対して斜めに取り付けたるために、そのたびごとに調節手段を用いて調節しなければならない。
【0011】
本発明は、係る従来技術の問題点に鑑み、清掃体の重力と清掃面の摩擦力により、回動軸を介して清掃体の向きを変更させ、堆積物を片側のみに摺り寄せて清掃面上を走行する清掃装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のレール清掃装置は レール上を走行する走行体に取り付けられて該走行体の走行と共に前記レールの上面を移動して清掃するレール清掃装置であって、前記レール清掃装置は、前記走行体に設けられた取り付け金具に固着される取付部材と、該取付部材と回動可能に連結される回動部材と、該回動部材に取り付けられる台座部材と、該台座部材に連結される清掃部材とを備えるレール清掃装置において、
前記取付部材は、板状取り付け台座と該取り付け台座から突出した二股状ブロック部材からなり、該二股状ブロック部材を貫通する回動軸を介して回動部材と連結してなり、前記回動軸の回動により前記清掃部材を前記レール施設方向に対して斜め方向に回動させ、前記レール上面に押圧して前記レール上面の付着物或いは堆積物を除去するようにしてなるレール清掃装置を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のレール清掃装置は、走行体をレール施設方向に移行させると、回動体は所定角度だけ回動し、清掃体がレール施設方向に対して所定角度だけ斜交し、レール堆積物は片側に摺り寄せられ、排出される。
【0014】
前記回動可能な回動軸を中心に回動する回動部材と回動軸を貫通する連結部材の構造としては、前記回動部材と回動可能に連結するために、中央に軸孔を設け、該軸孔には前記回動部材の上部突出部と下部突出部とに設ける嵌合孔に貫通して設けた回動軸により、前期取り付け部材と回動部材とは回動可能に結合され前記支持棹を前記取付板に対してベアリングを介して回動自在となすのが好ましい方式である。特に、連結部材の近傍に、前記ブラシ板の回動下限を規定するストッパを配設することにより、ブラシ板がレールに接触して支持体の二股状ブロック体の端部が回動体と当接することにより回動角度が所定角に設定される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明に係るレール清掃装置の構成を、図面に基づいて説明する。
先ず図1は、本発明に係るレール清掃装置の代表例を示す斜視図であり、図2は、その正面図、図3は、その平面図、図4はその側面図である。
これらの図面において、レール清掃装置は、走行クレーン等の走行体(図示せず)の車輪の前部にレール清掃装置を取り付けるための取付穴が形成されている。取付板Tに取付穴にボルト、ナット等の連結部材を介して取り付けられる取り付け部材1と、取り付け部材1と回動可能に連結される回動部材2と、回動部材12の下端に台座部材3と、台座部材3にボルト、ナット等の連結部材を介して取り付けられる清掃部材4とを主要構成部材としてなる。
【0016】
取り付け部材1は、板状取り付け部11と取り付け部11から直角方向に突出する支持部12とからなっている。取り付け部11には取付板Tとボルト、ナット等によって連結されるように連結孔111を設けている。
【0017】
支持部12は取り付け部11から直角方向に突出する二股状ブロック体からなり、後述する回動部材2と回動可能に連結するために、中央に軸孔13を設ける。軸孔13には後述する回動部材2の上部突出部22と下部突出部23とに設ける嵌合孔24に貫通して設けた回動軸25により、取り付け部材1と回動部材2とは回動可能に結合されている。
【0018】
支持部12の二股状ブロック体の先端には、回動部材2の胴部21に接触してストッパ作用を奏する緩衝ゴム14が張設されている。
軸孔13に貫通する回動軸25と上部突出部22と下部突出部23の嵌合孔24とにはベアリング26,27が設けられている。嵌合孔24には開口部にめくら蓋28が被覆されている。
回動軸25と支持部12とは支持部12の側面から軸止めピン29によって、回動軸25と支持部12と一体に回動可能にされている。
【0019】
回動部材2は、円筒状胴部21と、円筒状胴部21の上部から水平方向に取り付け部材1に向かって突出する上部突出部22と、円筒状胴部21の下部から水平方向に取り付け部材1に向かって突出する下部突出部23とからなり、円筒状胴部21は、内部に貫通孔211が設けられている。貫通孔211の内壁には、後述するガイドピン212が案内される溝213が設けられている。
【0020】
貫通孔211の内部には、円筒状保持部材214が挿通されている。保持部材214の上端近傍にはガイドピン212が貫通されており、ガイドピン212の両端は回動部材2の内壁に設けられる案内溝213に嵌合されている。また、回動部材2の下方円筒内面には、円筒状保持部材214との間にボールブッシュ215が装着されて、ボールベアリング216が嵌着されている。
【0021】
回動部材2の上端近傍で円筒状保持部材214の上端より上方の内壁には上方スプリング懸架用ピン217が突設されているとともに、台座部材3の円筒状台座部31にも内壁には下方スプリング懸架用ピン218が突設されている。上方スプリング懸架用ピン217と方スプリング懸架用ピン218との間にスプリング219が張設されている。スプリング219は、その収縮力によって、レール等の軌条面と清掃体との摩擦力を軽減させる効果を奏するものである。また、前記スプリング219を張架することにより、前記ブラシ部材4の前記レール上面への押圧力を調整可能となし、ブラシ部材4のレール上面への過度の押圧によるブラシ部材の不要な消耗を防止するようになすことも好ましい態様である。本発明によると、ブラシ部材4が、ブラシ部材自体の重量のみならず、これを保持した回動部材2の自重を加味した大きな自重の押圧力によってレールに押圧されるので、レールに強固に付着した堆積物も比較的容易に払拭することが可能となる。
【0022】
ブラシ部材の材質としては、ステンレスワイヤやナイロンワイヤのように硬質の線材を所定長に切断したものを束ねて形成したステンレスワイヤブラシやナイロンワイヤブラシ、或いはフェルト材や平ベルトを積層して所定形状に成形したフェルトブラシやベルト材ブラシが使用することができ、堆積物の種類や状況に応じて適宜使い分けることが可能である。
【0023】
特に、ブラシ部材を前述のブラシユニットとなすことにより、ステンレスワイヤブラシとフェルトブラシ或いは平ベルトの積層体との組合せのように、種々のブラシ材を堆積物の性状に応じて単種或いは複数の種類の組合が可能となるので、レール堆積物への適用範囲が広がり、その結果レール清掃装置の有効性が一段と向上することになる。
【0024】
更に、ステンレスワイヤブラシを用いる場合には、取付台座Tとブラシ部材3との間をアース用リード線で接続しておくことにより、走行体の車輪とレールとの接触状態が悪く、車輪によるアース作用が期待し難い場合でも、該アース用リード線とステンレスワイヤブラシとを経由したアースラインが確保できるので、静電気による運転者の感電が防止され、走行体の安全性の向上も期待されることになる。
【0025】
ここで、走行体が図3に示す矢印Y方向に走行すると、回動部材2は停止位置Cから回動軸を中心に所定回動角(例えば22度)xになるまで回動し、ストッパ兼緩衝ゴムパット29に当接して制止され、その位置で清掃体Bが走行する。これによりレール上の堆積物は常時図2で示すレールの右方向に摺り寄せられ落下する。
【0026】
また、走行体が図3に示す矢印X方向に走行すると、回動部材2は停止位置Cから回動軸を中心に所定回動角(例えば22度)yになるまで回動し、ストッパ兼緩衝ゴムパット29に当接して制止され、その位置で清掃体4が走行する。これによりレール上の堆積物は常時図3で示すレールの右方向に摺り寄せられ落下する。
なお、清掃装置の取り付け台座を図3に示すレールの右側に取り付け位置を変更すると、堆積物は左側に摺り寄せられる。
【0027】
その他の実施例として、図5に示すように、取り付け部材1に直接上部突出部22と下部突出部23とを設け、取り付け部材1と回動部材2が一体に形成されたものでは、レールの長さ方向と交差する方向に形成される様にブラシの植設を行うのが好ましいが、回動部材2の貫通孔11の内部に挿通されている円筒状保持部材214がベアリング216を介して回動自在にされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るレール清掃装置の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示した装置の一部断面正面図である。
【図3】図1に示した装置の平面図である。
【図4】図1に示した装置の左側面図である。
【図5】本発明に係るレール清掃装置の他の例を示す一部断面正面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 取り付け部材
11 取り付け部
12 支持部
2 回動部材
21 胴部
22 上部突出部
23 下部突出部
24 軸孔
25 回動軸
3 台座部材
4 清掃部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール上を走行する走行体に取り付けられて該走行体の走行と共に前記レールの上面を移動して清掃するレール清掃装置であって、
前記レール清掃装置は、前記走行体に設けられた取り付け金具に固着される取付部材と、該取付部材と回動可能に連結される回動部材と、該回動部材に取り付けられる台座部材と、該台座部材に連結される清掃部材とを備えるレール清掃装置において、
前記取付部材は、板状取り付け台座と該取り付け台座から突出した二股状ブロック部材からなり、該二股状ブロック部材を貫通する回動軸を介して回動部材と連結してなり、前記回動軸の回動により前記清掃部材を前記レール施設方向に対して斜め方向に回動させ、前記レール上面に押圧して前記レール上面の付着物或いは堆積物を除去するようにしてなることを特徴とするレール清掃装置
【請求項2】
前記取り付け部材は、板状取り付け部と該取り付け部から直角方向に突出する支持部とからなり、前記取り付け部には走行体と連結されるように連結孔を設けてなる請求項1に記載のレール清掃装置
【請求項3】
前記支持部は、前記取り付け部から直角方向に突出する二股状ブロック体からなり、前記回動部材と回動可能に連結するために、中央に軸孔を設け、該軸孔には前記回動部材の上部突出部と下部突出部とに設ける嵌合孔に貫通して設けた回動軸により、前期取り付け部材と回動部材とは回動可能に結合されてなる請求項2に記載のレール清掃装置
【請求項4】
前記支持部の二股状ブロック体の先端には、前記回動部材の胴部に接触してストッパ作用を奏する緩衝ゴムが張設されてなる請求項1乃至3のいずれかに記載のレール清掃装置
【請求項5】
前記軸孔に貫通する前記回動軸と前記上部突出部と下部突出部の嵌合孔とにはベアリングが設けられ、前記嵌合孔には開口部にめくら蓋が被覆されてなる請求項1乃至3のいずれかに記載のレール清掃装置
【請求項6】
前記回動軸と前記支持部とは該支持部の側面から軸止めピンによって、前記回動軸と支持部と一体に回動可能にされてなる請求項1乃至5のいずれかに記載のレール清掃装置
【請求項7】
前記回動部材の貫通孔の内部には、円筒状保持部材が挿通されており、該保持部材の上端近傍にはガイドピンが貫通されており、該ガイドピンの両端は前記回動部材の内壁に設けられる案内溝に嵌合されてなる請求項1乃至6のいずれかに記載のレール清掃装置
【請求項8】
前記回動部材の下方円筒内面には、前記円筒状保持部材との間にボールブッシュが装着されて、ボールベアリングが嵌着されている請求項1乃至5のいずれかに記載のレール清掃装置
【請求項9】
前記回動部材の上端近傍で前記円筒状保持部材の上端より上方の内壁には上方スプリング懸架用ピンが突設されているとともに、前記台座部材の円筒状台座部にも内壁には下方スプリング懸架用ピンが突設されており、前記上方スプリング懸架用ピンと下方スプリング懸架用ピンとの間にスプリングが張設されてなり、該スプリングは、その収縮力によって、レール等の軌条面と清掃体との摩擦力を軽減させるとともに、前記スプリングを張架することにより、前記ブラシ部材の前記レール上面への押圧力を調整可能としてなる請求項6乃至8のいずれかに記載のレール清掃装置
【請求項10】
レール上を走行する走行体に取り付けられて該走行体の走行と共に前記レールの上面を移動して清掃するレール清掃装置であって、
前記レール清掃装置は、前記走行体に設けられた取り付け金具に固着される取付部材と、該取付部材と回動可能に連結される回動部材と、該回動部材に取り付けられる台座部材と、該台座部材に連結される清掃部材とを備えるレール清掃装置において、
前記取り付け部材に直接上部突出部と下部突出部とを設け、該上部突出部と下部突出部に回動部材が一体に形成されたことを特徴とするレール清掃装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−189959(P2010−189959A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36563(P2009−36563)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(509049182)
【Fターム(参考)】