説明

レール締結構造

【課題】脱線車輪によるレール締結部材の破損を防止することを可能とするレール締結構造を提供する。
【解決手段】レール締結構造に、ボルトにより固定され、鉄道車両の車輪を支持するレール1を下方に付勢して固定するばね部材と、前記ばね部材が装着された状態で固定され、前記ボルトが上面側に露出しないように保護する保護部材とを設ける。前記ばね部材は、長尺状の板材料を中央部に環状空間を形成するように側面形状つ字状に曲成した板ばね11とし、保護部材7のレール1に対向する面の下方角部には、板ばね11の環状部分及びボルトのボルト頭を受け入れるばね用切欠き部8を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レール締結構造に関し、特に脱線車輪によるレール締結部材の破損を防止する保護部材を備えたレール締結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両(鉄道車両)が橋梁・高架橋上で地震力を受けると、その上を走行する車両は脱線する可能性があった。
【0003】
そこで、曲線軌道あるいは分岐器のある軌道部分などにおいて、軌道の内側に脱線防止用のガードレールを設置することにより脱線防止機能を強化する手段が提案されている。また、脱線防止レールを取り付けるのが不都合な箇所、落石や降雪の多い箇所などには、安全レールを敷設し、万が一脱線した場合でもこの安全レールと基本レールによって車輪をガイドし、被害を最小限にくい止める手段が提案されている。
【0004】
また、脱線防止レールや脱線防止ガード、安全レールなどが設置されていない軌道上を走行中に、例えば大規模地震などの自然災害や列車妨害などによって車両が脱線した場合に、その車両が軌道のまくらぎのある道床や路盤、スラブなどの上を走行するように案内することにより車両の転倒を防止する手段が提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平9−076679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の脱線防止レールや安全レールはいずれも車両の脱線後もレール締結部材が破損しないことを前提に、これらのレールに車両をガイドさせて脱線自体を防止する手段であった。さらに、転覆防止のための案内も基本レール自体の破損を防止するものではなく、また基本レール以外に別途敷設が必要なものであるから設置も容易ではなかった。
【0006】
一方、特に高速車両脱線の事例においては、脱線車輪によってレール締結部材が破損してレール締結機能を失うという問題があった。
【0007】
本発明の課題は、脱線車輪によるレール締結部材の破損を防止することを可能とするレール締結構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1記載の発明は、レール締結構造であって、ボルトにより固定され、鉄道車両の車輪を支持するレールを下方に付勢して固定するばね部材と、前記ばね部材が装着された状態で固定され、前記ボルトが上面側に露出しないように保護する保護部材と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、保護部材にばね部材が装着された状態で固定され、ボルトは上面側に露出しないように保護されることから、車両が脱線した場合でも、脱線車両は保護部材の上面部に落下する一方で、ボルトは保護部材によって保護される。これにより、レールの固定状態が保持される。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載のレール締結構造であって、前記ばね部材は、長尺状の板材料を中央部に環状空間を形成するように側面形状つ字状に曲成した板ばねであり、前記保護部材の前記レールに対向する面の下方角部には、前記ばね部材の環状部分及び前記ボルトのボルト頭を受け入れる切欠き部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、車両が脱線した場合でも、脱線車両は保護部材の上面部に落下する一方で、板ばね及びその板ばねを固定するボルトは保護部材の切欠き部に位置することから、板ばね及びボルトが脱線車両により破損することはない。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載のレール締結構造であって、前記ばね部材は、線状の材料を2カ所において下方向にほぼU字状に曲げ、その両側を水平方向にほぼ直角に折り曲げた上で、先端部を水平方向の逆方向に折り曲げることによって形成した線ばねであり、前記保護部材の一側面には前記線ばねの先端部を挿入して側面から前記ボルトで固定するための線ばね挿入孔が形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、線ばねの両先端が保護部材の線ばね挿入孔に挿入されて固定されることから、脱線車輪によって線ばねが衝撃を受けても、線ばねが横方向にずれることはない。また、線ばねを保護部材に固定するボルトは保護部材の側面に位置するので、脱線車輪の落下によって破損することはない。また、線ばねは保護部材の上面より下方に位置することから、脱線車輪による線ばねの破損を防止することができる。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項3に記載のレール締結構造であって、前記レールの敷設される方向とほぼ垂直方向を向いた前記線ばね挿入孔が、前記レールに向かって下方に傾くように角度をつけて形成されたことを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、線ばね挿入孔に挿入された線ばねの先端部はレールに向かって下方に傾く一方で、線ばねのうちレールを押さえている部分はレールに乗る分タイプレートの位置より上がる。これにより、線ばねにねじれが生じ、レールは線ばねによって下方に付勢された状態で固定される。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載のレール締結構造であって、前記ばね部材は一端部に近づくに従って両辺の幅が狭くなるテーパ形状とされた板状のナブラ板ばねであり、前記保護部材の底面部には、前記ナブラ板ばねのテーパ形状とされた一端部及び前記ボルトのボルト頭を受け入れる切欠き部が形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、ナブラ板ばねの一端部が保護部材の板ばね挿入用切欠きに挿入されて固定されることから、脱線車輪によってナブラ板ばねが衝撃を受けても、ナブラ板ばねが横方向にずれることはない。また、ナブラ板ばね及びそのナブラ板ばねを固定するボルトは保護部材によって覆われるため、脱線車輪による破損を防止することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のレール締結構造であって、前記保護部材の上面及び側面から成る角部は曲面状に形成されると共に、前記保護部材の高さ寸法は所定の値以上とされていることを特徴とする。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、保護部材の上面及び側面から成る角部は曲面状に形成され、また、保護部材の高さ寸法は所定の値以上とされていることから、車両の脱線があった場合、外軌脱線した車輪のフランジは、内側が保護部材の曲面状の角部に当接した状態でレールと保護部材の内側面との間に保持されることになる。また、内軌脱線した車輪は、フランジの内側が保護部材の曲面状の角部に当接して、車輪が保護部材に載置された状態で止まる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明によれば、保護部材によってばね部材及びそのばね部材を固定するボルトの脱線車輪による破損を防止することにより、ばね部材のレール締結機能が破壊されるのを防止することができる。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、板ばね及びその板ばねを固定するボルトは保護部材によって覆われるため、脱線車輪による破損は防止される。
【0022】
請求項3に記載の発明によれば、脱線車輪によって線ばねが衝撃を受けても横方向にずれることはない。また、線ばね及びその板ばねを固定するボルトは保護部材の上面より下方に位置するため、脱線車輪による破損は防止される。
【0023】
請求項4に記載の発明によれば、線ばねにねじれが生じ、レールは線ばねによって下方に付勢された状態で固定される。
【0024】
請求項5に記載の発明によれば、脱線車輪によってナブラ板ばねが衝撃を受けても、ナブラ板ばねが横方向にずれることはない。また、ナブラ板ばね及びそのナブラ板ばねを固定するボルトは保護部材によって覆われるため、脱線車輪による破損は防止される。
【0025】
請求項6に記載の発明によれば、外軌脱線及び内軌脱線のいずれの場合も脱線車輪がレールから大きく外れることはなく、車両の脱線による被害は最小限に抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0027】
(第1の実施形態)
図1〜図6は、本発明に係るレール締結構造の第1実施形態を示したものである。
【0028】
図1に示すように、図示しないスラブ板の上面には、絶縁板2を介してレール1を敷設するタイプレート3が配置されている。
【0029】
タイプレート3の上面には、各レール1を両側から保持する保持突起4が形成されている。図2に示すように、各保持突起4の上方角部には切欠き部が形成されており、その切欠き部の上面にねじ穴5が形成されている。さらに、各保持突起4の両外側端部にはねじ穴6が形成されている。また、図1及び図2に示すように、タイプレート3のレール1を挟んだ両側上面には、ほぼ矩形に形成された保護部材7が配設されるようになっている。
【0030】
保護部材7のレール1に対向する面の下方角部には、図3に示すように、ほぼ矩形に切欠いてなるばね用切欠き部8が形成されており、ばね用切欠き部8の上部には、ボルトを締結するためのボルト用切欠き部9が形成されている。また、ばね用切欠き部8の内側には、レール1の設置方向とほぼ平行に延在する支持ピン10が突設されている。
【0031】
レール1を固定するための板ばね11は、長尺状の板材料を中央部に環状空間を形成するように側面形状つ字状に曲成されており、この環状空間部分を支持ピン10に挿入することにより、板ばね11を支持ピン10に対して装着するようになっている。また、板ばね11には板ばね用ボルト挿通孔12が形成されている。
【0032】
また、図3に示すように、保護部材7の上面にはボルトのボルト頭受用孔13が形成されている。さらに、図4の断面図に示すように、保護部材7にはボルト頭受用孔13に連接してボルトを挿入するための保護部材ボルト挿通孔14が形成されている。
【0033】
また、保護部材7の上面及び側面から成る角部は、曲率Rの曲面となるように形成されている。また、保護部材7の高さ寸法は所定の値以上とされている。
【0034】
そして、本実施形態に係るレール締結構造では、ボルト頭をボルト頭受用孔13に落とし込んだ状態で、保護部材ボルト挿通孔14を貫通するボルトをねじ穴6に螺合することによって、保護部材7がタイプレート3に固定されるようになっている。また、板ばね11の環状空間部分を支持ピン10に挿入して板ばね11を支持ピン10に対して装着し、板ばね11をタイプレート3の保持突起4の切欠き部に載置して板ばね11の先端部でレール1を押さえた状態で、板ばね用ボルト挿通孔12を貫通するボルトをねじ穴5に螺合することによって、レール1が下方に付勢された状態で固定されるようになっている。
【0035】
次に、本実施形態に係るレール締結構造の作用を説明する。
【0036】
まず、タイプレート3のレール1を挟んだ両側上面に保護部材7を配置する。そして、板ばね11を支持ピン10に対して装着して、板ばね11をタイプレート3の保持突起4の切欠き部に載置して板ばね11の先端部でレール1を押さえた状態で、板ばね用ボルト挿通孔12を貫通するボルトをねじ穴5に螺合する。これにより、板ばね11がレール1を下方に付勢した状態で、板ばね11がタイプレート3に固定される。また、ボルト頭をボルト頭受用孔13に落とし込んだ状態で、保護部材ボルト挿通孔14を貫通するボルトをねじ穴6に螺合すると、保護部材7はタイプレート3に固定される。
【0037】
図5は、本実施形態に係るレール締結構造を上面からみた図である。レール1を挟んで保護部材7を対向させて固定することにより、板ばね11をタイプレート3の保持突起4に固定するボルトと、保護部材7をタイプレート3に固定するボルトとが交互に現れている。このうち、板ばね11をタイプレート3の保持突起4に固定するボルトは保護部材7のばね用切欠き部8の内部に位置しており、また、保護部材7をタイプレート3に固定するボルトのボルト頭はボルト頭受用孔13の内部に位置している。したがって、いずれのボルトも保護部材7の上面より下方に位置している。
【0038】
このような構成をとることにより、板ばね11及び板ばね11を固定するボルトは保護部材7に覆われるため、車両の脱線があった場合でも、脱線車輪は保護部材7の上面に落下する。したがって、板ばね11及びボルトが脱線車輪によって破損することはない。また、保護部材7を固定するボルトも、ボルト頭受用孔13によって保護部材7の上面より下方に位置することから、脱線車輪に当たることはなく、破損することはない。
【0039】
さらに、保護部材7の上面及び側面から成る角部は曲率Rの曲面として形成され、保護部材7の高さ寸法は所定の値以上とされている。したがって、図1に示すように、車両の脱線があった場合、外軌脱線した車輪Aのフランジは、内側が保護部材7の曲面状の角部に当接した状態でレール1と保護部材7の内側面との間に保持されることになる。また、内軌脱線した車輪Bは、フランジの内側が保護部材7の曲面状の角部に当接して、車輪Bが保護部材7に載置された状態で止まる。このように、外軌脱線及び内軌脱線のいずれの場合も、保護部材7がレール1の案内部材として機能することから、脱線車輪がレール1から大きく外れることはなく、車両の脱線による被害は最小限に抑えられる。
【0040】
なお、本実施形態のレール締結構造はタイプレート3の上面にレール1を挟んで対向するように保護部材7を固定する構造であるが、図6に示すように、保護部材7及びタイプレート3を一体として保護部材15としてもよい。
【0041】
(第2の実施形態)
図7〜図11は、本発明に係るレール締結構造の第2実施形態を示したものである。
【0042】
本実施形態では、レール1を敷設する図示しないスラブ板の上面に、絶縁板2を介して板状のタイプレート3が配置されている。
【0043】
図7は、本実施形態においてレール1を固定する線ばね16である。線ばね16は、線状の材料を2カ所において下方向にほぼU字状に曲げ、その両側を水平方向にほぼ直角に折り曲げた上で、先端部を水平方向の逆方向に折り曲げることによって形成されている。
【0044】
また、図8は、本実施形態に係る保護部材17である。保護部材17はほぼ矩形に形成されている。また、保護部材17の上面及び側面から成る角部は曲率Rの曲面となるように形成され、保護部材17の高さ寸法は所定の値以上とされている。
【0045】
また、保護部材17の一側面には線ばね16の両先端部を挿入する2つの線ばね挿入孔18が形成されている。線ばね挿入孔18は、保護部材17の底面をタイプレート3に水平に固定した状態で、レール1の敷設される方向とほぼ垂直方向の線ばね挿入孔18がレール1に向かって下方に傾くように角度をつけて形成されている。なお、線ばね挿入孔18を保護部材17の底面と水平に形成した上で、レール1に向かって線ばね挿入孔18が下方に傾くように保護部材17を傾けてタイプレート3に固定してもよい。さらに、2つの線ばね挿入孔18のほぼ中間には、1つのボルト挿入孔19が線ばね挿入孔18と平行に形成されている。また、押さえ金具20は略T字状に形成され、T字の上面中央付近から突設部分を貫通するボルト挿通孔21が形成されている。
【0046】
そして、本実施形態に係るレール締結構造では、図9に示すように、線ばね16の2点のU字状の部分によってレール1が押さえられ、線ばね16の両先端部がタイプレート3に固定された保護部材17の線ばね挿入孔18に挿入された状態で、線ばね16が保護部材17の側面からボルトで固定されるようになっている。このとき、図10に示すように、線ばね挿入孔18に挿入された線ばね16の先端部はレール1に向かって下方に傾く一方で、線ばね16のうちレール1を押さえている部分はレール1に乗る分タイプレート3の位置より上がることから、線ばね16にねじれが生じ、レール1は線ばね16により下方に付勢された状態で固定されるようになっている。
【0047】
次に、本実施形態に係るレール締結構造の作用を説明する。
【0048】
図9に示すように、線ばね16の2点のU字状に曲げた部分でレール1を押さえ、線ばね16の両先端部を保護部材17の線ばね挿入孔18に挿入して保護部材17をボルトなどでタイプレート3に固定する。そして、保護部材17の横方向から押さえ金具20で線ばね16を押さえた状態で、ボルト挿通孔21を挿通するボルトを保護部材17の線ばね挿入孔18に挿入することにより線ばね16を保護部材17に固定する。すると、図10に示すように、線ばね挿入孔18に挿入された線ばね16の先端部はレール1に向かって下方に傾く一方で、線ばね16のうちレール1を押さえている部分はレール1に乗る分タイプレート3の位置より上がる。これにより、線ばね16にねじれが生じ、レール1は線ばね16によって下方に付勢された状態で固定される。
【0049】
このような構成により、線ばね16の両先端が保護部材17の線ばね挿入孔18に挿入されて固定されることから、脱線車輪が当たって線ばね16が衝撃を受けても、線ばね16が横方向にずれることはない。また、線ばね16を保護部材17に固定するボルトは保護部材17の側面に固定されており、脱線車輪は保護部材17の上面に落下するので、ボルトが脱線車輪に当たって破損することもない。また、保護部材17の高さ寸法が所定以上の値とされており、線ばね16は保護部材17の上面より下方に位置することから、脱線車輪が保護部材17の上面に落下しても、脱線車輪が線ばね16に当たることはない。したがって、脱線車輪によって線ばね16が破損することもない。また、図11に示すように、バールによって押さえ金具20のボルトを引き抜くことにより、簡単に線ばね16を保護部材17から取り外すことができる。
【0050】
さらに、保護部材17の上面及び側面から成る角部は曲率Rの曲面として形成され、保護部材17の高さ寸法は所定の値以上とされている。したがって、図10に示すように、車両の脱線があった場合、外軌脱線した車輪Cのフランジは、内側が保護部材17の曲面状の角部に当接した状態でレール1と保護部材17の内側面との間に保持されることになる。また、内軌脱線した車輪Dは、フランジの内側が保護部材17の曲面状の角部に当接して、車輪Dが保護部材17に載置された状態で止まる。このように、外軌脱線及び内軌脱線のいずれの場合も、保護部材17がレール1の案内部材として機能することから、脱線車輪がレール1から大きく外れることはなく、車両の脱線による被害は最小限に抑えられる。
【0051】
(第3の実施形態)
図12〜図14は、本発明に係るレール締結構造の第3実施形態を示したものである。
【0052】
本実施形態では、レール1を敷設する図示しないスラブ板の上面に、絶縁板2を介して板状のタイプレート3が配置されている。
【0053】
図12は、本実施形態においてレール1を固定するナブラ板ばね22である。ナブラ板ばね22は、板状であって、一端部に近づくに従って両辺の幅が狭くなるテーパ形状となるように形成されている。また、ナブラ板ばね22の中央付近には板ばね用ボルト挿通孔23が形成されている。
【0054】
図13は、本実施形態に係る保護部材24である。保護部材24はほぼ矩形で、上面及び側面から成る角部は曲率Rの曲面となるように形成され、高さ寸法は所定の値以上とされている。また、底面部にはほぼ矩形状に切り欠いた板ばね挿入用切欠き25が形成されている。また、保護部材24のレール1に対向する側にはほぼ半円柱状に切り欠いたボルト用切欠き26が形成されている。また、保護部材24の上面にはボルトのボルト頭受用孔27が形成されており、さらに、ボルト頭受用孔27に連接してボルトを挿入するための保護部材ボルト挿通孔28が形成されている。
【0055】
そして、本実施形態に係るレール締結構造では、図14に示すように、ボルト頭をボルト頭受用孔27に落とし込んだ状態で、保護部材ボルト挿通孔28を貫通するボルトをタイプレート3に形成されたボルト挿入孔(図示せず)に挿入することによって、保護部材24がタイプレート3に固定されるようになっている。また、ナブラ板ばね22の一端部でレール1を押さえて、両辺の幅が狭くなるテーパ形状の他端部を保護部材24の板ばね挿入用切欠き25に挿入し、板ばね用ボルト挿通孔23に挿通したボルトをタイプレート3に形成されたボルト挿入孔(図示せず)に挿入することによって、レール1が下方に付勢された状態で固定されるようになっている。
【0056】
次に、本実施形態に係るレール締結構造の作用を説明する。
【0057】
図14に示すように、ナブラ板ばね22の一端部でレール1を押さえた状態で、両辺の幅が狭くなるテーパ形状の他端部を保護部材24の板ばね挿入用切欠き25に挿入する。そして、板ばね用ボルト挿通孔23に挿通したボルトをタイプレート3のボルト挿入孔(図示せず)に挿入して、ナブラ板ばね22の一端部によりレール1を下方に付勢した状態でナブラ板ばね22をタイプレート3に固定する。また、ボルト頭をボルト頭受用孔27に落とし込んだ状態で、保護部材ボルト挿通孔28を貫通するボルトをタイプレート3のボルト挿入孔(図示せず)に挿入して保護部材24をタイプレート3に固定する。
【0058】
このような構成をとることにより、ナブラ板ばね22の一端部が保護部材24の板ばね挿入用切欠き25に挿入されて固定されていることから、脱線車輪によってナブラ板ばね22が衝撃を受けても、ナブラ板ばね22が横方向にずれることはない。また、ナブラ板ばね22は保護部材24によって覆われるため、脱線車輪によって破損することはない。
【0059】
また、ナブラ板ばね22を固定するボルトは保護部材24の上面より下がった位置にあり、保護部材24を固定するボルトもボルト頭受用孔27により保護部材24の上面より下がった位置にあることから、脱線車輪によってボルトが破損することもない。
【0060】
さらに、保護部材24の上面及び側面から成る角部は曲率Rの曲面として形成され、高さ寸法は所定の値以上とされている。したがって、図15に示すように、車両の脱線があった場合、外軌脱線した車輪Eのフランジは、内側が保護部材24の曲面状の角部に当接した状態でレール1と保護部材24の内側面との間に保持されることになる。また、内軌脱線した車輪Fは、フランジの内側が保護部材24の曲面状の角部に当接して、車輪Fが保護部材24に載置された状態で止まる。このように、外軌脱線及び内軌脱線のいずれの場合も、保護部材24がレール1の案内部材として機能することから、脱線車輪がレール1から大きく外れることはなく、車両の脱線による被害は最小限に抑えられる。
【0061】
以上詳細に説明したように本発明のレール締結構造によれば、保護部材によってばね部材及びそのばね部材を固定するボルトの脱線車輪による破損を防止することにより、ばね部材のレール締結機能が破壊されるのを防止することができる。
【0062】
すなわち、ばね部材及びそのばね部材を固定するボルトが保護部材によって覆われることにより、あるいは、ばね部材及びそのばね部材を固定するボルトが保護部材の上面より下方に位置することにより、脱線車輪によるばね部材及びボルトの破損が防止される。
【0063】
また、ばね部材は保護部材に固定されることから、脱線車輪によってばね部材が衝撃を受けても、横方向にずれることはない。これにより、ばね部材のレール締結機能が脱線車輪から保護される。
【0064】
さらに、外軌脱線及び内軌脱線のいずれの場合も脱線車輪がレールから大きく外れることはなく、車両の脱線による被害は最小限に抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るレール締結構造を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るタイプレート及び保護部材の構造を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る保護部材の構造を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る保護部材の構造を示す断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るレール締結構造を示す平面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るタイプレート及び保護部材の構造の変形例を示す斜視図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る線ばねの構造を示す斜視図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る保護部材の構造を示す斜視図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係るレール締結構造を示す斜視図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係るレール締結構造を示す断面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る保護部材を取り外す様子を示す断面図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係るナブラ板ばねの構造を示す斜視図である。
【図13】本発明の第3の実施形態に係る保護部材の構造を示す斜視図である。
【図14】本発明の第3の実施形態に係るレール締結構造を示す斜視図である。
【図15】本発明の第3の実施形態に係るレール締結構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 レール
2 絶縁板
3 タイプレート
4 保持突起
5 ねじ穴
6 ねじ穴
7 保護部材
8 ばね用切欠き部
9 ボルト用切欠き部
10 支持ピン
11 板ばね
12 板ばね用ボルト挿通孔
13 ボルト頭受用孔
14 保護部材ボルト挿通孔
15 保護部材
16 線ばね
17 保護部材
18 線ばね挿入孔
19 ボルト挿入孔
20 押さえ金具
21 ボルト挿通孔
22 ナブラ板ばね
23 板ばね用ボルト挿通孔
24 保護部材
25 板ばね挿入用切欠き
26 ボルト用切欠き
27 ボルト頭受用孔
28 保護部材ボルト挿通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルトにより固定され、鉄道車両の車輪を支持するレールを下方に付勢して固定するばね部材と、
前記ばね部材が装着された状態で固定され、前記ボルトが上面側に露出しないように保護する保護部材と、
を備えることを特徴とするレール締結構造。
【請求項2】
前記ばね部材は、長尺状の板材料を中央部に環状空間を形成するように側面形状つ字状に曲成した板ばねであり、
前記保護部材の前記レールに対向する面の下方角部には、前記ばね部材の環状部分及び前記ボルトのボルト頭を受け入れる切欠き部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のレール締結構造。
【請求項3】
前記ばね部材は、線状の材料を2カ所において下方向にほぼU字状に曲げ、その両側を水平方向にほぼ直角に折り曲げた上で、先端部を水平方向の逆方向に折り曲げることによって形成した線ばねであり、
前記保護部材の一側面には前記線ばねの先端部を挿入して側面から前記ボルトで固定するための線ばね挿入孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のレール締結構造。
【請求項4】
前記レールの敷設される方向とほぼ垂直方向を向いた前記線ばね挿入孔が、前記レールに向かって下方に傾くように角度をつけて形成されたことを特徴とする請求項3に記載のレール締結構造。
【請求項5】
前記ばね部材は一端部に近づくに従って両辺の幅が狭くなるテーパ形状とされた板状のナブラ板ばねであり、
前記保護部材の底面部には、前記ナブラ板ばねのテーパ形状とされた一端部及び前記ボルトのボルト頭を受け入れる切欠き部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のレール締結構造。
【請求項6】
前記保護部材の上面及び側面から成る角部は曲面状に形成されると共に、前記保護部材の高さ寸法は所定の値以上とされていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のレール締結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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