説明

レール開先保持器

【課題】現場での二次溶接時においてレールの開先保持を確実に行うレール開先保持器を提供する。
【解決手段】一方側レールRのレール基部R2の裏面に脱着自在に取り付けられる第1のレール支持手段1と、他方側レールRのレール基部R2の裏面に脱着自在に取り付けられる第2のレール支持手段2と、突合せた2本のレール端部R1の下方位置にてこれらレール支持手段1・2を連結する支持金具20とを具備し、レール支持手段1・2のそれぞれに、突合せた2本のレールRのレール基部R2を固定保持するためのレール締結手段6を有してなる。レール締結手段6によって、支持金具20を介して連結されたレール支持手段1・2に対して、突合せたレールRを、端部R1の開先Aが基準開先寸法となるように調整しつつ固定保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突き合わせた2本の長尺レールを溶接する際に使用するレール開先保持器であって、現場での二次溶接時においてレールの開先保持を確実に行うことができる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特開平2−104471号公報(特許文献1)に示されるレールの突き合わせ溶接治具が知られている。この示されるレールの突き合わせ溶接治具は、相対向するように突き合わせた2本のレールの各端部を傾斜させた状態で下方から支持する傾斜支持面を有し、この傾斜支持面上に載置した2本のレールの間隙となる開先部を、溶接により互いに接続するものである。
【特許文献1】特開平2−104471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、突き合わせた2本の長尺レールは互いの連結のために、現場で実施する二次溶接、例えば、ゴールドサミット溶接では25mm、EA溶接では17mmの開先を確保する必要がある。これらの開先寸法は、レール溶接の品質を一定に保持するための基準値となるものであるが、上述した公報に示されるレールの突き合わせ溶接治具では、傾斜支持面上に2本のレールの端部を載置した状態で、これらレールの開先部を互いに溶接するものであるので、溶接時の温度上昇による鉄の膨脹、温度低下による縮小によってレールがずれて、基準となる開先寸法が確保できず、開先縮小による欠陥溶接が発生する恐れがあった。
【0004】
本発明は、従来の有していた問題を解決しようとするものであって、現場での二次溶接時においてレールの開先保持を確実に行うことができるレール開先保持器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そして、上記目的を達成するために本発明の課題解決手段では、溶接時に突き合わせた2本のレール端部の開先を基準開先寸法に保持するレール開先保持器であって、一方側レールのレール基部の裏面に脱着自在に取り付けられる第1のレール支持手段と、他方側レールのレール基部の裏面に脱着自在に取り付けられる第2のレール支持手段と、突き合わせた2本のレール端部の下方位置にてこれらレール支持手段を連結保持する支持金具とを具備し、前記第1、第2のレール支持手段のそれぞれに、突き合わせた2本のレールのレール基部を固定保持するための締結手段を有してなる。
【0006】
また、本発明の課題解決手段では、前記レール支持手段を、レール基部の下方に配置されるレール支持板と、このレール支持板の上面に設けられてレール基部の底面を支持する締結板と、レール支持板に設けられてレール基部の各側縁部を挟持する一対の挟持手段と、これら挟持手段及び締結板をレール支持板に対して固定する締結手段とから構成する。
【0007】
また、本発明の課題解決手段では、前記締結板の上面及び下面に、レールの長さ方向に対して交差する方向に多数の溝を形成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のレール開先保持器では、第1及び第2のレール支持手段により、突き合わせた2本のレールの各端部に位置するレール基部の裏面それぞれに、これらレール支持手段を固定保持させるようにするが、その際、これらレール支持手段の各締結手段により、互いに突き合わせた2本のレール端部の開先が基準開先寸法となるように調整する。すなわち、このような締結手段を有する2組のレール支持手段、及びこれらレール支持手段を連結固定する支持金具によって、互いに突き合わせた2本のレール端部の開先が基準開先寸法となるように調整かつ保持され、これによって溶接時の温度上昇による鉄の膨脹、温度低下による鉄の縮小により、レールがずれて基準となる開先が確保できずに、開先縮小による欠陥溶接が発生するというトラブルを未然に防止することができる。また、上記レール開先保持器では、突き合わせた2本のレールの各端部を固定保持する第1、第2のレール支持手段を、これら2本のレール端部の下方位置において支持金具により連結保持するようにしたので、突き合わせた2本のレール端部の上方位置にて、支持金具が邪魔することなく、溶接機材をセッティングすることができる、すなわち、2本のレール間の開先部周辺にて十分な作業ペースを確保することができ、レールの溶接作業を効率良く行うことが可能となる。
【0009】
また、本発明のレール開先保持器では、締結板によりレール基部の底面を支持し、かつ一対の挟持手段によりレール基部の各側縁部を挟持した状態で、これら締結板及び挟持手段を、締結手段によってレール支持板に固定する。これにより各レール支持手段を、突き合わせた2本のレールの各端部に位置するレール基部に対して確実に固定することができる。
【0010】
また、本発明のレール開先保持器では、レール基部の底面に接する締結板の上面、及び該締結板の下面には、レールの長さ方向に対して交差する方向に多数の溝が形成されているので、この溝が抵抗となって、レールの長さ方向へのずれを防止することができ、これによって溶接時においてレールの基準開先寸法を正確に保持することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を図1〜図4に基づいて説明する。図1は、溶接時に突き合わせた2本のレールRの端部R1に設けられて、これらレール端部R1の開先(符号Aで示す)を基準開先寸法となるように保持するレール開先保持器の全体を示す斜視図である。この図において符号1は一方側レールRのレール基部R2の裏面側に脱着自在に設けられる第1のレール支持手段であり、符号2は他方側レールRのレール基部R2の裏面に脱着自在に設けられる第2のレール支持手段である。これら第1のレール支持手段1、第2のレール支持手段2は、いずれも2本のレールRの各端部R1に取り付けられるものであって、その構成は同じであるので、構成を同じくする構成要素には同一符号を付して重複した説明を省略する。
【0012】
レール支持手段1・2は、図2の正面図、図2を矢印III―IIIで切断した図3の側断面図に示されるように、レール基部R2の下方にレール基部R2を横断するように配置されたレール支持板3と、このレール支持板3の上面中央部に設けられてレール基部R2の底面を支持する締結板4と、レール支持板3の両側に設けられてレール基部R2の各側縁部R3を挟持する一対の挟持手段5と、これら挟持手段5及び締結板4をレール支持板3に対して固定する一対のレール締結手段6とを具備する。
【0013】
レール支持板3は図4に示されるように平面視、長方形状に形成されたものであって、その中央部には、締結板4を載置するための凹部7が設けられている。また、この凹部7内には、締結板4をボルト・ナットからなる締結板締結手段(図示略)によりレール支持手段3に固定するためのボルト孔8が設けられ、この凹部7の両側には、レール締結手段6のボルトが貫通されるボルト孔9が設けられている。また、このレール支持板3の下面中央部には、図3に示すように、支持金具20を取り付けるための支持金具取付片10が間隔をおいて設けられている(後述する)。
【0014】
締結板4は、平面視、長方形状に形成されたものであって、その上面及び下面には、レール基部R2に取り付けた場合、該レールRの長さ方向に対して直交する方向の溝が多数設けられている。これら溝11は、レール支持手段1・2をレール基部R2に取り付けた場合に、レールRの長さ方向へのずれを防止するためのものである。
【0015】
挟持手段5は全体として棒状に形成されているものであって、その中央部には、レール締結手段6のボルト6Aが貫通されるボルト孔12が設けられている。そして、レール締結手段6によってレール支持板3に締結された場合に、挟持手段5の先端側がレール基部R2上面を上方から押さえ、該挟持手段5の後端側がレール支持板3の段部13上に押し付けられるようになっている。
【0016】
レール締結手段6は、ボルト6Aとナット6Bとから構成されるものであって、その締結によって、レール基部R2を支持した挟持手段5をレール支持板3へ固定し、かつレール基部R2の底面に位置する締結板4を、該レール基部R2の底面とレール支持板3の上面との間に挟み込む。
【0017】
上述したレール支持手段1・2には、支持金具20が脱着自在に設けられている。この支持金具20は、図2の正面図に示すよう全体としてU字状に形成されたものであって、一端部がレール支持手段1の支持金具取付片10に取り付けられ、かつ他端部がレール支持手段2の支持金具取付片10に取り付けられる。これら各支持金具取付片10は間隔をおいて設けられるものであって、その間隙内10Aに配置された支持金具20の端部を、金具締結手段21で締結することにより、該支持金具20をレール支持板3の下部に固定する。なお、金具締結手段21はボルトとナットから構成される。また、支持金具20は、レール支持手段1・2に取り付けられた場合には、図1及び図2に示されるようにレールRの下方位置にて該レールRの端部R1を下方から跨ぐように配置される。
【0018】
そして、このようなレール開先保持器では、まず、金具締結手段21を有する支持金具20によって、第1のレール支持手段1及び第2のレール支持手段2を連結した後、それぞれのレール締結手段6により、これらレール支持手段1・2に対して、突き合わせた2本のレールRを、端部R1の開先(符号Aで示す)が基準開先寸法となるように調整しつつ固定保持する。なお、レール開先保持器では、2本のレールRの開先Aが基準開先寸法(ゴールドサミット溶接では25mm、EA溶接では17mm)になったか否かは、スケール、ノギス等の測定手段により計測する。また、レール支持手段1・2において、2本のレール端部R1の開先Aが基準開先寸法となった場合の固定保持は、レール締結手段6のボルト6Aを締めることにより行う。そして、レール開先保持器によってレールRの開先Aを基準開先寸法に固定保持した後には、レール端部R1の上方位置にて溶接機材(図示略)をセッティングし、これらレールRの溶接作業を実施する。
【0019】
以上詳細に説明した本実施形態のレール開先保持器では、レール支持手段1・2の各レール締結手段6により、突き合わせた2本のレールRの各端部R1に位置するレール基部R2の裏面に、これらレール支持手段1・2を固定保持させるようにするが、その際、互いに突き合わせた2本のレール端部R1の開先Aが基準開先寸法となるように調整する。すなわち、このようなレール締結手段6を有する2組のレール支持手段1・2及びこれらレール支持手段1・2を連結する支持金具20によって、互いに突き合わせた2本のレール端部の開先Aが基準開先寸法となるように調整かつ保持されることから、これによって溶接時の温度上昇による鉄の膨脹、温度低下による鉄の縮小により、レールがずれて基準となる開先が確保できずに、開先縮小による欠陥溶接が発生するというトラブルを未然に防止することができる。
【0020】
また、上記レール開先保持器では、支持金具20により、突き合わせた2本のレール基部R2の下方位置にて2本のレールRの開先Aが、基準開先寸法となるように各レール支持手段1・2を固定保持するようにしたので、支持金具20が邪魔となることなく、開先Aを挟んでレールRの上方位置にて溶接機材をセッティングすることができる、すなわち、2本のレールR間の開先部A周辺にて十分な作業ペースを確保することができ、レールRの溶接作業を効率良く行うことが可能となる。
【0021】
また、上記レール開先保持器では、締結板4によりレール基部R2の底面を支持し、かつ一対の挟持手段5によりレール基部R2の各側縁部R3を挟持した状態で、これら締結板4及び挟持手段5を、レール締結手段6によってレール支持板3に固定すれば、これら締結板4及び挟持手段5により、各レール支持手段1・2を、突き合わせた2本のレールRの各端部R1に位置するレール基部R2に対して確実に固定することができる。
【0022】
また、上記レール開先保持器では、レール基部R2の底面に接する締結板4の上面、及び該締結板4の下面には、レールRの長さ方向に対して直交する方向に多数の溝11が形成されているので、この溝11が抵抗となって、レールRの長さ方向へのずれを防止することができ、これによってレールRの基準開先寸法を正確に保持することが可能となる。なお、締結板4の溝11は、該締結板4をレール支持板3に取り付けた際、レールRの長さ方向に対して直交する方向に配置されるが、これに限定されず、レールRの長さ方向に対して45度といった傾斜した角度、又は平面視V字状であっても良く、レールRの長さ方向に対する交差角度は直角に限定されるものではない。
【0023】
また、図1〜図3に示されるように、支持金具20、レール支持板3には多数の孔が形成されているが、これらの孔は全体の機械的な強度を低下させない範囲で形成されているものであって、レール開先保持器全体の重量を軽減する効果がある。
【0024】
また、レール開先保持器では、レール支持手段1・2、支持金具20といった構成部材を、熱処理を施した鋼により形成し、溶接時における締結板4の溝11の瞑れ、鉄の膨脹による開先Aの縮小に耐える構造とする。
【0025】
また、上記の実施形態においてレール締結手段6及び締結板締結手段によって請求項に記載の締結手段が構成される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】溶接時に突き合わせた2本のレールRの端部R1を一定の間隔に保持するレール開先保持器の全体を示す斜視図
【図2】図1を矢印IIから見た場合の正面図
【図3】図2を矢印III―IIIで切断した側断面図
【図4】締結板4を載置したレール支持板3の平面図
【符号の説明】
【0027】
1 レール支持手段
2 レール支持手段
3 レール支持板
4 締結板
5 挟持手段
6 レール締結手段
11 溝
20 支持金具
R レール
R1 レール端部
R2 レール基部
R3 レール側縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接時に突き合わせた2本のレール端部の開先を基準開先寸法に保持するレール開先保持器であって、
一方側レールのレール基部に脱着自在に取り付けられる第1のレール支持手段と、他方側レールのレール基部に脱着自在に取り付けられる第2のレール支持手段と、突き合わせた2本のレール端部の下方位置にてこれらレール支持手段を連結保持する支持金具とを具備し、
前記第1、第2のレール支持手段のそれぞれは、突き合わせた2本のレールのレール基部を固定保持するための締結手段を有してなることを特徴とするレール開先保持器。
【請求項2】
前記各レール支持手段は、レール基部の下方に配置されるレール支持板と、このレール支持板の上面に設けられてレール基部の底面を支持する締結板と、レール支持板に設けられてレール基部の各側縁部を挟持する一対の挟持手段と、これら挟持手段及び締結板をレール支持板に対して固定する締結手段とを具備することを特徴とする請求項1記載のレール開先保持器。
【請求項3】
前記締結板の上面及び下面には、レールの長さ方向に対して交差する方向に複数の溝が形成されていることを特徴とする請求項2記載のレール開先保持器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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