説明

ロ−タリ−アクチユエ−タ

【目的】 電気−機械変換素子を使用した小型で伝達効率のよいアクチユエ−タを提供する。
【構成】 固定部材1上の軸2には、スラスト軸受4、可動部材5、摩擦円盤6、ロ−タ7、スラスト軸受8、ばね9が順次配置される。固定部材1の受け部の面1bと可動部材5の切欠き部の面5bとの間に圧電素子15が接着固定される。軸2のねじ部11に螺合するナツト10の締め付け調整により、可動部材5、摩擦円盤6、及びロ−タ7間の摩擦結合力を調整する。所望の周波数及び振幅の鋸歯状波を圧電素子15に供給すると、鋸歯状波の立ち上がり部で圧電素子15の厚みが伸長し、固定部材1に対して可動部材5及び摩擦円盤6を介して摩擦結合するロ−タ7が回動する。鋸歯状波の立ち下がり部では、圧電素子15は急速に厚みが縮み、可動部材5は逆方向に動くがロ−タ7はその位置に留まる。ロ−タ7は鋸歯状波の周波数と振幅で制御されて駆動される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、圧電素子、磁歪素子などを使用したロータリーアクチユエータに関する。
【0002】
【従来の技術】カメラや複写機などでは、各種の内部機構の駆動に多数のモータが使用されている。例えばカメラでは、フイルム巻き上げ機構、撮影レンズの焦点調節機構などに、それぞれモータを組み込み、所定の制御指令に応じて駆動されるように構成されている。このような各種機構を駆動するモータは、所望のトルクや所望の駆動速度を得るために歯車減速機構などを使用して回転数を落として使用されることが多いが、モータと歯車減速機構による駆動機構は、構造が簡単である利点を有するが、一方、装置を大型にするばかりでなく、伝達効率が悪いという欠点がある。
【0003】このため、圧電素子などを利用した動力源が提案されている。即ち、圧電素子に電圧を加えると長さ方向の歪みが生ずる現象を利用し、慣性体に固定された圧電素子に衝撃電圧を加えて慣性体に衝撃力を与え、その衝撃力による慣性体の運動を利用して被駆動体を駆動しようとするするものである(特開昭63−11074号公報、特開昭63−299785号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記した圧電素子を利用した動力源は、従来のモータと歯車減速機構とを利用した駆動機構に比較して小型で伝達効率も改善されるが、なお、移動量、回転角度、移動方向などの制御が容易に行え、また慣性体が移動することによる圧電素子への給電手段の制約などを受けることのない、より優れた構成の開発が求められていた。この発明は上記課題を解決することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】この発明は上記課題を解決するもので、回転軸を備えた固定部材と、前記回転軸上に回転自在に配置された回転部材と、前記固定部材に対して前記回転部材を回転方向に変位させるように固定部材と回転部材との間に配置された電気−機械変換素子と、前記回転軸上に回転自在に配置され、前記回転部材に摩擦結合する駆動要素とから構成され、前記電気−機械変換素子に、緩やかな立上り部と急速な立下り部を持つ波形の駆動電気信号を供給することにより駆動要素を駆動することを特徴とするものである。
【0006】
【作用】圧電素子、磁歪素子などの電気−機械変換素子に緩やかな立上り部を持つ駆動信号を供給すると伸び変位を生じ、固定部材に対して回転部材を回転方向に変位させる。これにより回転部材に摩擦結合する駆動要素は回転部材とともに回転し、駆動される。電気−機械変換素子に急速な立下り部を持つ復帰信号を供給すると、急速な縮み変位を生じ、固定部材に対して回転部材は先と逆方向に急速に変位するが、このとき回転部材に摩擦結合する駆動要素はその位置に留まる。電気−機械変換素子に供給する駆動電気信号の波形を調整することにより、所望の速度で駆動要素を駆動することができる。
【0007】
【実施例】以下、この発明の実施例について説明する。図1はこの発明を実施したロータリーアクチユエータの外観を示す斜視図、図2はその側面の一部を切欠いた断面図、図3は図2のA−A線に沿った切断平面図である。
【0008】まず、全体の構成を説明する。図1乃至図2R>2において、1は固定部材、2は固定部材1に設けられた軸である。軸2上には、固定部材1側から第1のスラスト軸受4、可動部材5、摩擦円盤6、駆動力を取り出す駆動要素であるロータ7、第2のスラスト軸受8、ばね9が順次配置されている。ロータ7はその外周に歯形が形成された歯車であつて、図示しない動力伝達機構などに結合して駆動力を取り出すように構成されている。
【0009】また、軸2の端部にはねじ部11が形成されており、ねじ部11にはナツト10が螺合しており、ナツト10の締め付けによりばね9の圧縮力を調整して、可動部材5、摩擦円盤6、及びロータ7間の摩擦結合力を調整することができるように構成されている。
【0010】圧電素子の配置を説明する。図1乃至図3R>3、特に図3を参照すると明らかなように、固定部材1には軸2と並行な方向に突出し、略法線方向の面1bを持つ受け部1aが設けられており、また可動部材5には前記受け部1aに対応する部分に、略法線方向の面5bを持つ切り欠き部5aが設けられている。そして、受け部1aの前記の面1bと、切り欠き部5aの前記の面5bとの間には圧電素子15が配置され、圧電素子15の上下両端部は、それぞれ面5b及び面1bに接着により固定されている。
【0011】圧電素子15は、その両端の電極に電圧を印加すると、厚み方向の変位が生じるものを使用する。
【0012】次に、その動作について説明する。図示しない鋸歯状波発振器から、所望の周波数及び振幅の鋸歯状波(図5参照)を圧電素子15に供給する。
【0013】まず、圧電素子15の電極に鋸歯状波が印加されていない状態では、固定部材1と可動部材5とは図3に示す位置にあるものとする。
【0014】圧電素子15の電極に鋸歯状波が印加されると、まず、鋸歯状波の立ち上がり部分で示される緩やかに増加する電圧により、圧電素子15はその厚みが伸長する。すると、固定部材1の受け部1aの面1bと可動部材5の欠き部5aの面5bとの間隙が開かれ、可動部材5は固定部材1に対して一定角度回動する。可動部材5に摩擦円盤6を介して圧接しているロータ7も可動部材5と共に一定角度回動し、その外周の歯車部分は図示しない動力伝達機構を回転駆動する。図4は、図3と同一部分の切断平面図であるが、圧電素子15の厚みが伸長した状態の固定部材1と可動部材5との位置を示している。
【0015】鋸歯状波の波形が立ち上がり部分のピークに達すると、圧電素子15の電極には鋸歯状波の立ち下がり部分で示される急激に減少する電圧が印加され、圧電素子15は急速にその厚みが縮む。これにより、可動部材5は図3に示す位置に復帰するが、このとき、圧電素子15の急速な縮み動作による可動部材5の逆方向の動きはロータ7と可動部材5との間の摩擦結合よりも大きいので、可動部材5の逆方向の動きにも拘らず、ロータ7はその位置に留まる。
【0016】なお、上記の動作はロータ7と可動部材5との間の摩擦結合力に依存するから、予め軸2上のナツト10によるばね9の圧縮力を調整して、適当な摩擦結合力が得られるようにしておく。
【0017】圧電素子15の電極に鋸歯状波を印加し続けると、可動部材5及びロータ7は上記の動作を繰り返し、可動部材5は一定の角度範囲で往復回動を繰り返すが、ロータ7は一定の方向に間欠的に回転駆動される。
【0018】また、ロータ7の質量や動力伝達機構のトルク、あるいは摩擦結合力を適切に設定することにより、慣性を利用して連続駆動させることもできる。
【0019】圧電素子15の電極に印加される鋸歯状波の波形Vと、圧電素子15に発生するの変位量δの関係を図5に示す。鋸歯状波の波形は立ち上がり部分のピークに達した後、急速に立ち下がる波形であるが、これに対して圧電素子15の変位量は、緩やかに伸長した後、鋸歯状波の立ち下がり波形よりも時間遅れのある縮み方向の変位を示す。これは圧電素子の特性によるものである。
【0020】圧電素子15の電極に印加される鋸歯状波の周波数を変えることにより、ロータ7の単位時間当たりの駆動回数、即ち回転数を変えることができる。また、鋸歯状波の振幅を変えることにより、ロータ7の1パルス当たり駆動量を変えることができ、これにより回転数、及び回転停止位置の精度を変えることが可能である。
【0021】また、圧電素子15の電極に印加される鋸歯状波の極性を変えることにより、ロータ7の回転方向を反転させることもできる。
【0022】圧電素子15は、固定部材1と一定の角度範囲で往復回動する可動部材5とに取り付けられており、軸2の回りに何回も回転することがないので、圧電素子15への配線は極めて簡単に行うことができる。
【0023】なお、以上の実施例では、駆動源の電気−機械変換素子として圧電素子を使用したが、その他の電気−機械変換素子、例えば磁歪素子などを使用しても、全く同様に構成することができる。
【0024】
【発明の効果】以上説明したとおり、この発明によれば、駆動源の電気−機械変換素子に供給する電気信号の周波数、振幅、極性を調整するだけで、移動量、回転角度、回転方向などの制御を容易に行うことができ、また、電気−機械変換素子への給電手段などに制約を受けることなく、小型で伝達効率のよいアクチユエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のロ−タリ−アクチユエ−タの外観を示す斜視図。
【図2】ロ−タリ−アクチユエ−タの側面断面図。
【図3】図2に示すロ−タリ−アクチユエ−タのA−A線断面図。
【図4】ロ−タリ−アクチユエ−タの可動部材が動作した位置を示す動作説明図。
【図5】圧電素子に印加される鋸歯状波波形と圧電素子変位量の関係を示す図。
【符号の説明】
1 固定部材
2 軸
4 第1スラスト軸受
5 可動部材
6 摩擦円盤
7 ロ−タ
8 第2スラスト軸受
9 ばね
10 ナツト
15 圧電素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】 回転軸を備えた固定部材と、前記回転軸上に回転自在に配置された回転部材と、前記固定部材に対して前記回転部材を回転方向に変位させるように固定部材と回転部材との間に配置された電気−機械変換素子と、前記回転軸上に回転自在に配置され、前記回転部材に摩擦結合する駆動要素とから構成され、前記電気−機械変換素子に、緩やかな立上り部と急速な立下り部を持つ波形の駆動電気信号を供給することにより駆動要素を駆動することを特徴とするロータリーアクチユエータ。
【請求項2】 請求項1記載のロータリーアクチユエータにおいて、前記電気−機械変換素子は圧電素子であることを特徴とするロータリーアクチユエータ。
【請求項3】 請求項1記載のロータリーアクチユエータにおいて、前記電気−機械変換素子は磁歪素子であることを特徴とするロータリーアクチユエータ。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【公開番号】特開平6−261559
【公開日】平成6年(1994)9月16日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−72852
【出願日】平成5年(1993)3月9日
【出願人】(000006079)ミノルタカメラ株式会社 (155)