説明

ロキソプロフェン含有経口用組成物3

【課題】
胃粘膜障害の危険性が低減されたロキソプロフェン含有経口組成物の提供。
【解決手段】
ロキソプロフェンと制酸剤とを含有することを特徴とする経口用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロキソプロフェン及び制酸剤を含有する経口用組成物又はロキソプロフェン及び制酸剤に乳糖又はキサンチン誘導体を含有する経口用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ロキソプロフェン、イブプロフェン、アスピリン等の非ステロイド解熱鎮痛消炎剤(NSAID)は感冒などの症状にも広く処方されている。しかし、NSAIDはプロスタグランジンの生合成を抑制する薬理作用機序を有するため、必然的に胃粘膜障害という副作用を引き起こすことがよく知られている。NSAIDによる胃粘膜障害を軽減するために、制酸剤、胃粘膜保護剤、プロトンポンプ阻害剤又はヒスタミンH2受容体拮抗剤等を併用する方法が一般的に知られている。
【0003】
一方、ロキソプロフェンはプロドラッグであるため、他のNSAIDと比較すれば胃粘膜障害は少ないとされているものの、実際の医療の現場においては、事前に胃粘膜障害を回避すべく、他のNSAIDと同様に、上記の併用処方が行われることがある。しかしながら、これまでに、ロキソプロフェンに制酸剤を含有した組成物は知られておらず、ロキソプロフェンと制酸剤に乳糖又はキサンチン誘導体を含有した組成物も知られていない。
【0004】
なお、本発明に関連した組成物として、以下のものが挙げられる。
1)ロキソプロフェンに充填剤として乳糖及び/又はトウモロコシ澱粉を配合した組成物が開示されている(特許文献1参照)。
2)ロキソプロフェンにカフェインを併用すると鎮痛作用等が相乗的に増強することが報告されている(特許文献2参照)。
3)ロキソプロフェンと去痰薬を配合する内服液剤の調製技術として、界面活性剤、増粘剤、pH調整剤、必要に応じて溶解補助剤、緩衝剤、保存剤、香料、色素、甘味料等を使用することができる旨が開示され、その中で、増粘剤の具体例として合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等の記載がある(特許文献3参照)が、具体的な製剤実施例は開示されてはいない。
【0005】
しかし、上記のいずれの先行技術も本発明内容とは本質的に異質なものであるため、本発明内容を示唆する記載もなく、暗示されてもいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−255569号公報
【特許文献2】特開平11−139971号公報
【特許文献3】特開2001−172175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ロキソプロフェンが引き起こす胃粘膜障害を軽減することができれば有用であり、簡便かつ安価に胃粘膜障害軽減が実現できるならば一層有益である。
【0008】
本発明者はこのような目的のもとに鋭意研究を進めてきた。その結果、どのNSAIDでも、それによる胃粘膜障害が制酸剤で抑制できるというこれまでの論法は必ずしも成り立たないこと、さらに、制酸剤の添加量によって胃粘膜障害に対する効果は大きく異なること等も本研究により初めて明らかとなった。
【0009】
具体的には、ロキソプロフェン及び制酸剤を含有した経口用組成物において、胃粘膜障害抑制効果は、同じフェニルプロピオン酸系NSAIDであるイブプロフェンの場合とは異なる挙動を示すことが判明した。従って、仮にイブプロフェンに対する制酸剤の配合比率と胃粘膜障害の関係が知ることができたとしても、その結果からロキソプロフェンの結果を類推することは不可能であること。更に、イブプロフェンと比較してロキソプロフェンでは制酸剤の胃粘膜障害軽減作用が顕著に発現することを見出した(後述の表5参照)。
【0010】
また、ロキソプロフェン及び制酸剤に、更に乳糖を加えることにより、制酸剤による胃粘膜障害軽減作用が顕著に増幅されることを見出して(後述の表6参照)、本発明を完成するに至った。
【0011】
一方、OTC薬(特に感冒薬)においては、NSAID(例えば、イブプロフェン)に加えて、キサンチン誘導体のカフェインが配合されているものが既に市販されている。本発明者らは、このような処方と同様に、ロキソプロフェンとキサンチン誘導体との併用についても検討したところ、胃粘膜障害の危険性が高まる傾向にあることを始めて確認した。そこで、このような併用による好ましくない現象を解消するための手段についても併せて研究を進めてきた。
【0012】
その結果、驚くべきことに、ロキソプロフェンとキサンチン誘導体の併用による胃粘膜障害の増悪は、制酸剤を更に添加することにより、ロキソプロフェンと制酸剤の併用時にみられた制酸剤による胃粘膜障害抑制作用からは類推できないほどに、顕著に抑制されることを見出して(後述の表7参照)、本発明を完成するに至った。
【0013】
一般的に、NSAIDは食後に服用すれば胃粘膜障害はある程度軽減することが可能であることが知られている。しかし、解熱消炎鎮痛剤というものは本質的に頓用であり、本来、食後服用に限定することはなじみにくいものである。従って、胃腸障害が軽減されたロキソプロフェン製剤を具現化することは有意義であり、特に、長期間にわたり服用する必要のある患者や、食事や水分の摂取が制限されている患者に対してはより有用である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、
(1)ロキソプロフェンと制酸剤とを含有することを特徴とする経口用組成物、
(2)乳糖をさらに含有することを特徴とする上記(1)に記載の経口用組成物、
(3)キサンチン誘導体をさらに含有することを特徴とする上記(1)乃至(2)に記載の経口用組成物、
(4)ロキソプロフェンがロキソプロフェンナトリウムである上記(1)乃至(3)から選択されるいずれか1項に記載の経口用組成物、
(5)ロキソプロフェンがロキソプロフェンナトリウム・2水和物である上記(1)乃至(3)から選択されるいずれか1項に記載の経口用組成物、
(6)制酸剤が乾燥水酸化アルミニウムゲル、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、天然ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム、水酸化アルミナマグネシウム、水酸化アルミニウムゲル、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、無水リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、ボレイ及びアミノ酢酸からなる群より選ばれる1種又は2種以上である上記(1)乃至(5)から選択されるいずれか1項に記載の経口用組成物、
(7)制酸剤が酸化マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム及びアミノ酢酸からなる群より選ばれる1種又は2種以上である上記(1)乃至(5)から選択されるいずれか1項に記載の経口用組成物、
(8)制酸剤が酸化マグネシウムである上記(1)乃至(5)から選択されるいずれか1項に記載の経口用組成物、
(9)キサンチン誘導体が、カフェイン類、テオフィリン、アミノフィリン、テオブロミン、ジプロフィリン、プロキシフィリン及びペントキシフィリンからなる群より選ばれる1種又は2種以上である上記(3)乃至(8)から選択されるいずれか1項に記載の経口用組成物、
(10)キサンチン誘導体が、カフェイン類、テオフィリン及びアミノフィリンからなる群より選ばれる1種又は2種以上である上記(3)乃至(8)から選択されるいずれか1項に記載の経口用組成物、
(11)キサンチン誘導体並びにカフェイン類がカフェイン、無水カフェイン、安息香酸ナトリウムカフェイン、カフェイン塩酸塩、クエン酸カフェインである上記(3)乃至(8)から選択されるいずれか1項に記載の経口用組成物、
(12)キサンチン誘導体並びにカフェイン類が、カフェイン及び無水カフェインより選ばれる1種又は2種である上記(11)に記載の経口用組成物、
(13)ロキソプロフェンによる胃粘膜障害が軽減された上記(1)乃至(12)から選択されるいずれか1項に記載の経口用組成物、
(14)解熱剤として用いるための上記(13)に記載の経口用組成物、
(15)鎮痛剤として用いるための上記(13)に記載の経口用組成物、
(16)炎症治療剤として用いるための上記(13)に記載の経口用組成物、
(17)感冒剤として用いるための上記(13)に記載の経口用組成物、
(18)ロキソプロフェンによる胃粘膜障害の軽減剤として用いるための上記(1)乃至(12)から選択されるいずれか1項に記載の経口用組成物、
(19)食間に投与されることを特徴とする上記(1)乃至(18)から選択されるいずれか1項に記載の経口用組成物、
(20)長期間にわたり服用する必要のある患者に対して投与されることを特徴とする上記(1)乃至(18)から選択されるいずれか1項に記載の経口用組成物、
(21)食事や水分の摂取が制限されている患者に対して投与されることを特徴とする上記(1)乃至(18)から選択されるいずれか1項に記載の経口用組成物、
(22)ロキソプロフェン及び制酸剤を併用することを特徴とする解熱剤、
(23)さらに、乳糖若しくはキサンチン誘導体を併用することを特徴とする(22)に記載の解熱剤、
(24)ロキソプロフェン及び制酸剤を併用することを特徴とする鎮痛剤、
(25)さらに、乳糖若しくはキサンチン誘導体を併用することを特徴とする(24)に記載の鎮痛剤、
(26)ロキソプロフェン及び制酸剤を併用することを特徴とする炎症治療剤、
(27)さらに、乳糖若しくはキサンチン誘導体を併用することを特徴とする(26)に記載の炎症治療剤、
(28)ロキソプロフェン及び制酸剤を併用することを特徴とする感冒剤及び
(29)さらに、乳糖若しくはキサンチン誘導体を併用することを特徴とする(28)に記載の感冒剤
を提供する。
【0015】
さらに、本発明は、
上記(1)乃至(12)から選択されるいずれか1項に記載の経口用組成物を、食間に投与することを特徴とする解熱方法、鎮痛方法、炎症治療方法又は感冒治療方法、
上記(1)乃至(12)から選択されるいずれか1項に記載の経口用組成物を、長期間にわたり服用する必要のある患者に対して投与することを特徴とする解熱方法、鎮痛方法、炎症治療方法又は感冒治療方法、
上記(1)乃至(12)から選択されるいずれか1項に記載の経口用組成物を、食事や水分の摂取が制限されている患者に対して投与することを特徴とする解熱方法、鎮痛方法、炎症治療方法又は感冒治療方法、
ロキソプロフェン及び制酸剤を併用すること又はロキソプロフェン及び制酸剤に乳糖又はキサンチン誘導体を併用することによる解熱方法、鎮痛方法、炎症治療方法又は感冒治療方法及び
上記(1)乃至(12)から選択されるいずれか1項に記載の経口用組成物を投与することを特徴とするロキソプロフェンによる胃粘膜障害の軽減方法
を提供する。
【0016】
本発明において、「ロキソプロフェン」とは、ロキソプロフェンまたはその塩(含水塩を含む)であり、好適には、ロキソプロフェンナトリウムであり、さらに好適には、ロキソプロフェンナトリウム・2水和物である。
【0017】
本発明において、「制酸剤」とは酸中和作用を有するものであり、好適には、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、天然ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム、水酸化アルミナマグネシウム、水酸化アルミニウムゲル、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、無水リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、ボレイ及びアミノ酢酸であり、
好適には、酸化マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム及びアミノ酢酸であり、
さらに好適には、酸化マグネシウムである。
【0018】
本発明において、「乳糖」とは、乳汁中に含まれる糖分であり、オリゴ糖である。
【0019】
本発明において、「キサンチン誘導体」とは、コーヒー、茶、ココアに含まれるプリン塩基であり、カフェイン類、テオフィリン、アミノフィリン、テオブロミン、ジプロフィリン、プロキシフィリン又はペントキシフィリン等である。なお、「カフェイン類」としては、カフェイン、無水カフェインの他、安息香酸ナトリウムカフェイン、カフェイン塩酸塩、クエン酸カフェイン等である。「キサンチン誘導体」として、好適には、カフェイン類、テオフィリン又はアミノフィリンであり、さらに好適には、カフェイン類であり、
より更に好適には、カフェイン又は無水カフェインである。
【0020】
本発明において、「胃粘膜障害」とは、急性及び慢性胃炎からくる胃粘膜病変(糜爛、出血、浮腫)及び胃潰瘍、並びに胃部の近接部位である十二指腸を含む上部消化管の障害のことである。
【0021】
本発明において、「食間」とは、食事と食事の間や空腹時のことである。
【0022】
本発明において、「長期間にわたり服用する必要のある患者」とは、慢性的な疾病の予防・治療の目的で服用する患者であれば特に限定はないが、例えば、慢性関節リウマチ、変形性膝関節症、慢性の肩こりや腰痛症等の患者を挙げることができる。
【0023】
本発明において、「食事や水分の摂取が制限されている患者」とは、疾病の予防・治療の目的で食事や水分の摂取が通常の場合と比較して制限されている場合であれば特に限定はないが、例えば、急性及び慢性腎炎患、人工透析、腹膜透析、糖尿病性腎疾患等の患者を挙げることができる。
【0024】
本発明の「ロキソプロフェン及び制酸剤を併用すること」又はロキソプロフェン及び制酸剤に、「さらに、乳糖若しくはキサンチン誘導体を併用すること」を特徴とする解熱剤、鎮痛剤、炎症治療剤又は感冒治療剤とは、ロキソプロフェン及び制酸剤又はロキソプロフェン及び制酸剤に乳糖若しくはキサンチン誘導体を同時に若しくはほぼ同じ時間に、別々に投与するための解熱剤、鎮痛剤、炎症治療剤又は感冒治療剤である。
【発明の効果】
【0025】
本発明の、ロキソプロフェン及び制酸剤を含有する経口用組成物並びにロキソプロフェン及び制酸剤に乳糖又はキサンチン誘導体を含有する経口用組成物は、ロキソプロフェンによる胃粘膜障害に対して優れた軽減作用を有する。従って、本発明の解熱剤、鎮痛剤、炎症治療剤又は感冒治療剤は、食間に投与することや、長期間にわたり服用する必要のある患者及び、食事や水分の摂取が制限されている患者に対して投与することがより安全となる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ロキソプロフェン、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、天然ケイ酸アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、ボレイ、アミノ酢酸(グリシン)、乳糖、カフェイン、無水カフェイン、安息香酸ナトリウムカフェイン、テオフィリン及びアミノフィリンは日本薬局方XIVに収載されている。
【0027】
また、ロキソプロフェンのその他の塩、水和物は、公知の方法で製造することができる。
【0028】
ケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、水酸化マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ジプロフィリン及びプロキシフィリンは、日本薬局方外医薬品規格2002に収載されている。
【0029】
さらにまた、水酸化アルミニウムゲルは医薬品添加物規格2003に収載されており、テオブロミンは医薬品試験用標準品として入手でき、その他のものも公知の方法で製造することができる。
【0030】
本発明の「ロキソプロフェン及び制酸剤を併用すること」又はロキソプロフェン及び制酸剤に、「さらに、乳糖若しくはキサンチン誘導体を併用すること」を特徴とする解熱剤、鎮痛剤、炎症治療剤又は感冒治療剤において、制酸剤、乳糖及びキサンチン誘導体とロキソプロフェンとは、配合剤の形態で投与することができる。或いは、制酸剤、乳糖、キサンチン誘導体及びロキソプロフェンを、それぞれについて調剤した製剤として同時に若しくはほぼ同時に投与することもできる。
【0031】
ロキソプロフェンの1回投与量は、適応症や年齢により異なるが、通常、20mg乃至180mgであり、これを1日に、1乃至3回投与する。
【0032】
本発明の組成物が固形製剤の場合において、含有されるロキソプロフェンの含有量は、通常、10mg乃至400mgであり、好適には、20mg乃至180mgである。
【0033】
本発明の組成物が液剤の場合において、含有されるロキソプロフェンの含有量は通常、0.1mg/mL乃至200mg/mLであり、好適には、1mg/mL乃至100mg/mLである。
【0034】
制酸剤の含有比は、ロキソプロフェン1重量部に対し、好適には、0.01重量部以上であり、さらに好適には、0.02重量部以上である。上限の限定は特にないが、好適には、100重量部以下であり、さらに好適には、30重量部以下である。
【0035】
上記ロキソプロフェン及び制酸剤に乳糖をさらに含有する場合、乳糖の含有比は、ロキソプロフェン1重量部に対し、好適には0.01重量部乃至1重量部であり、さらに好適には、0.05重量部乃至0.9重量部である。
【0036】
また、上記ロキソプロフェン及び制酸剤にキサンチン誘導体を含有する場合、キサンチン誘導体の含有比は、ロキソプロフェン1重量部に対し、好適には0.01重量部乃至10重量部であり、さらに好適には、0.1重量部乃至2重量部である。
【0037】
本発明においては、上記有効成分の他、必要に応じて催眠鎮静薬、鎮咳薬、去痰薬、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、交感神経興奮薬、副交感神経遮断薬、消炎酵素類、ビタミン類、生薬類等を本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。
【0038】
これらの具体的な剤形としては、例えば、錠剤、細粒剤(散剤を含む)、カプセル、液剤(シロップ剤を含む)等をあげることができ、各剤形に適した添加剤や基材を適宜使用し、日本薬局方等に記載された通常の方法に従い、製造することができる。
【0039】
上記各剤形において、その剤形に応じ、通常使用される各種添加剤を使用することもできる。例えば、賦形剤、安定化剤、コーテイング剤、滑沢剤、吸着剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、着色剤、pH調節剤及び香料等を添加することができる。
【実施例】
【0040】
以下に、実施例及び試験例を示し、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)錠剤
(1)成分
(表1)
1乃至2錠中(mg) (1a) (1b) (1c) (1d) (1e)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ロキソプロフェンナトリウム・2水和物
60 60 60 60 60
酸化マグネシウム 60 240 − − −
沈降炭酸カルシウム − − 60 − −
アミノ酢酸 − − − 480 −
炭酸水素ナトリウム − − − − 240
乳糖 15 − − − −
カフェイン又はテオフィリン − 30 − − −
ヒドロキシプロピルセルロース 40 50 30 80 70
ステアリン酸マグネシウム 適量 適量 適量 適量 適量
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0042】
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「錠剤」の項に準じて錠剤を製する。
【0043】
(実施例2)細粒剤
(1)成分
(表2)
1包中(mg) (2a) (2b) (2c) (2d) (2e)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ロキソプロフェンナトリウム・2水和物
60 60 60 60 60
酸化マグネシウム 60 240 − − −
沈降炭酸カルシウム − − 60 − −
アミノ酢酸 − − − 480 −
炭酸水素ナトリウム − − − − 240
乳糖 15 − − − −
カフェイン又はテオフィリン − 30 − − −
ヒドロキシプロピルセルロース 200 100 200 150 100
ステアリン酸マグネシウム 5 10 7 9 10
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース
適量 適量 適量 適量 適量
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0044】
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「顆粒剤」の項に準じて細粒剤を製する。
【0045】
(実施例3)カプセル剤
(1)成分
(表3)
1乃至2カプセル中(mg) (3a) (3b) (3c) (3d) (3e)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ロキソプロフェンナトリウム・2水和物
60 60 60 60 60
酸化マグネシウム 60 240 − − −
沈降炭酸カルシウム − − 60 − −
アミノ酢酸 − − − 480 −
炭酸水素ナトリウム − − − − 240
乳糖 15 − − − −
カフェイン又はテオフィリン − 30 − − −
ヒドロキシプロピルセルロース 40 50 30 80 70
ステアリン酸マグネシウム 5 10 7 9 10
ポリソルベート80 10 15 10 10 20
トウモロコシデンプン 適量 適量 適量 適量 適量
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0046】
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「顆粒剤」の項に準じて細粒剤を製した後、カ
プセルに充てんして硬カプセル剤を製する。
【0047】
(実施例4)シロップ剤
(1)成分
(表4)
60mL中(mg) (4a) (4b) (4c) (4d) (4e)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ロキソプロフェンナトリウム・2水和物
60 60 60 60 60
酸化マグネシウム 60 240 − − −
沈降炭酸カルシウム − − 60 − −
アミノ酢酸 − − − 480 −
炭酸水素ナトリウム − − − − 240
乳糖 15 − − − −
カフェイン又はテオフィリン − 30 − − −
ヒドロキシプロピルセルロース 40 50 30 80 70
安息香酸ナトリウム 130 140 130 110 140
クエン酸 50 80 60 70 80
濃グリセリン 460 530 510 490 540
ポリビニルアルコール 100 100 100 100 100
エタノール(95%) 200 220 200 230 260
精製水 残部 残部 残部 残部 残部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0048】
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「シロップ剤」の項に準じてシロップ剤を製した後、褐色ガラス瓶に充てんしてシロップ剤を製する。
【0049】
(試験例1)
ロキソプロフェンの胃粘膜障害に対する制酸剤の抑制効果試験
(1)被験物質
ロキソプロフェンナトリウム・2水和物は三共(株)製のものを、イブプロフェンはSigma Chemical製のものを、乳糖は日局乳糖(小境製薬(株)製)を、無水カフェインは和光純薬工業(株)製のものを、日局酸化マグネシウムは吉田製薬(株)のものを使用した。
【0050】
各被験物質は、試験当日に0.5%トラガント液に懸濁もしくは溶解して調製した。投与液量は、体重1Kgあたり5mLを経口投与し、対照群には同量の0.5%トラガント液を投与した。
【0051】
(2)動物
Wistar−Imamichi雄性ラット(動物繁殖研究所)5週齢を購入し、温度20〜26℃、湿度30〜70%、照明時間7時〜19時に制御された環境制御飼育装置(日本クレア製)内で、ステンレス製ラット飼育ゲージに5〜6匹入れ、飼料(マウス・ラット飼育用F−2、船橋農場製)および水フィルターを通した水道水を自由に摂取させて飼育した。8日間の予備飼育後、試験前日に肉眼的に健康状態を観察し良好な動物を選別後、無作為に1群5匹に群分けして用いた。
【0052】
(3)方法
予め、ロキソプロフェンナトリウム・2水和物単剤およびイブプロフェン単剤における100%胃粘膜障害発現用量を求め、その用量に基づいて以下の試験を行った。
【0053】
試験前日16時より絶食した動物に被験物質を経口投与して3.5時間後、エーテル麻酔下で頚動脈放血死させて胃を摘出する。胃は大弯沿いに切り開き、生理食塩液で軽く洗浄後、実体顕微鏡(オリンパス製10×10倍)下で出血斑の有無を観察した。
【0054】
潰瘍指数として、出血斑の長径を0.5mm単位で測定して各動物の合計を求めた。ロキソプロフェンナトリウム・2水和物またはイブプロフェン単独投与群の潰瘍指数と、酸化マグネシウム等の併用群における潰瘍指数とを基に、潰瘍抑制率を次式より求めた。
【0055】
【数1】

A:100%胃粘膜障害発現量に基づくロキソプロフェンナトリウム・2水和物またはイブプロフェン単独投与群の潰瘍指数
B:添加剤併用群の潰瘍指数
【0056】
なお、ロキソプロフェンナトリウム・2水和物の100%胃粘膜障害発現量は50mg/Kgであり、イブプロフェンのそれは100mg/Kgであった。以下の試験結果はこれらの用量に基づく結果である。
【0057】
(4)試験結果
得られた各併用群の潰瘍抑制率の結果を表5乃至表7及び図1乃至図3に示す。なお、各値とも1群5匹の平均値である。
【0058】
表中及び図中のLxNaはロキソプロフェンナトリウム・2水和物、Ibuはイブプロフェン、酸化Mgは酸化マグネシウム、Cafはカフェインであり、含有比はロキソプロフェンナトリウム・2水和物に対する各薬剤の投与量である。
【0059】
(表5−1)
被験物質(投与量:mg/Kg) [含有比] 潰瘍抑制率(%)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
LxNa(50)+酸化Mg(1) [1/50] 22
LxNa(50)+酸化Mg(3) [1/17] 36
LxNa(50)+酸化Mg(10) [1/5] 31
LxNa(50)+酸化Mg(25) [1/2] 27
LxNa(50)+酸化Mg(50) [1/1] 55
LxNa(50)+酸化Mg(100) [2/1] 46
LxNa(50)+酸化Mg(200) [4/1] 81
LxNa(50)+酸化Mg(400) [8/1] 100
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
表5−1中、[含有比]はLxNa1重量部に対する酸化Mgの含有比を示す。
【0060】
(表5−2)
被験物質(投与量:mg/Kg) [含有比] 潰瘍抑制率(%)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
Ibu(100)+酸化Mg(2) [1/50] −51
Ibu(100)+酸化Mg(6) [1/17] −37
Ibu(100)+酸化Mg(20) [1/5] −151
Ibu(100)+酸化Mg(50) [1/2] −114
Ibu(100)+酸化Mg(100) [1/1] 32
Ibu(100)+酸化Mg(200) [2/1] 29
Ibu(100)+酸化Mg(400) [4/1] 71
Ibu(100)+酸化Mg(800) [8/1] 91
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
表5−2中、[含有比]はIbu1重量部に対する酸化Mgの含有比を示す。
【0061】
表5−1、表5−2及び図1より、ロキソプロフェンナトリウム・2水和物とイブプロフェンとで、制酸剤による潰瘍抑制作用の傾向が大きく異なることが判る。ロキソプロフ
ェンナトリウム・2水和物に酸化マグネシウムを併用した場合、含有比0.02という極めて小さい量から潰瘍抑制作用が発現し、含有比8では潰瘍は確認されなかった。一方、同じフェニルプロピオン酸系NSAIDのイブプロフェンの場合には、酸化マグネシウムを含有しても潰瘍を抑制せず、逆に著しく悪化させる場合(含有比0.02乃至0.75)もあることが判明した。
【0062】
以上、ロキソプロフェンに制酸剤を含有した場合、いずれの含有比においても潰瘍抑制作用が得られることが今回始めて見出された。
【0063】
(表6)
被験物質(投与量:mg/Kg) 乳糖[含有比] 潰瘍抑制率(%)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
LxNa(50)+酸化Mg(50) +乳糖[0] 55
LxNa(50)+酸化Mg(50) +乳糖[1/4] 88
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
Ibu(100)+酸化Mg(100) +乳糖[0] 32
Ibu(100)+酸化Mg(100) +乳糖[1/4] −107
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
表6中、[含有比]は、LxNaまたはIbu1重量部に対する乳糖の含有比を示す。
【0064】
表6に示されたとおり、ロキソプロフェンナトリウム・2水和物と酸化マグネシウムに乳糖をさらに併用した場合、潰瘍抑制作用がさらに高まることが判明した。一方、同じフェニルプロピオン酸系NSAIDのイブプロフェンについて同様の処方で試験を行ったところ、潰瘍は悪化した。
【0065】
(表7)
被験物質(投与量:mg/Kg) Caf[含有比] 潰瘍抑制率(%)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
LxNa(50) +酸化Mg(0) +Caf[1/1] −94
LxNa(50) +酸化Mg(50) +Caf[1/1] 34
LxNa(50) +酸化Mg(100) +Caf[1/1] 95
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
LxNa(50) +酸化Mg(50) +Caf[0] 55
LxNa(50) +酸化Mg(100) +Caf[0] 46
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
Ibu(100) +酸化Mg(0) +Caf[1/1] −2
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
表7中、[含有比]は、LxNaまたはIbu1重量部に対するCafの含有比を示す。
【0066】
表7に示されたとおり、ロキソプロフェンナトリウム・2水和物とカフェインとを併用することにより、ロキソプロフェンナトリウム・2水和物の単独投与に比べて、胃粘膜障害が増悪されたが、制酸剤である酸化マグネシウムを更に併用することにより、胃粘膜障害は低減され、更に制酸剤の量を倍にすることにより、胃粘膜障害はほぼ完全に抑制された。なお、イブプロフェンについては、カフェインと併用しても、特に胃粘膜障害は増悪されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、より胃粘膜障害の危険度が軽減された医薬(特に、食間の投与や長期間投与を要する患者及び、食事や水分の摂取が制限されている患者に対して投与される、解熱剤、鎮痛剤、炎症治療剤又は感冒治療剤)として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロキソプロフェン1重量部あたり、制酸剤としてメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを0.02乃至8重量部含有する胃粘膜障害軽減用の経口用組成物。

【公開番号】特開2012−51950(P2012−51950A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−271074(P2011−271074)
【出願日】平成23年12月12日(2011.12.12)
【分割の表示】特願2005−202378(P2005−202378)の分割
【原出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(307010166)第一三共株式会社 (196)
【出願人】(306014736)第一三共ヘルスケア株式会社 (176)
【Fターム(参考)】