説明

ロスバスタチンの特性評価のためのリファレンス・スタンダード

ロスバスタチン分解生成物、及びロスバスタチンの分析のためのリファレンス・スタンダード(リファレンス・マーカーを含む)としてのこれらの使用を供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロスバスタチン分解生成物、及びロスバスタチンの分析のためのリファレンス・スタンダードとしてのこれらの使用に関する。
【0002】
本願は、2003年12月2日に出願され、本明細書において、その開示が全体における引例として組み入れられている、米国仮出願第60/526,449号の利益を主張する。
【背景技術】
【0003】
スタチンは、現在、循環器疾患のリスクにおける患者の血流中の低密度リポタンパク質(LDL)の粒子濃度を低下させるための、最も治療的に有効な薬物である。従って、スタチンは、高コレステロール血症、高リポ蛋白血症、及び粥状動脈硬化の治療において使用される。血流中の高レベルのLDLは、血液の流れを妨げ、血栓症を破裂させ、そして促進しうる、冠動脈病変の形成に結び付けられてきた。Goodman 及び Gilman, The Pharmacological Basis of Therapeutics, 879頁(9th Ed. 1996)。
【0004】
スタチンは、競合的に、3−ヒトロキシ−3−メチル−グルタリル−補酵素A(「HMG−CoA」)レダクターゼ酵素を阻害することにより、ヒトにおけるコレステロール生合成を阻害する。HMG−CoAレダクターゼは、HMGのメバロン酸への変換を触媒し、これはコレステロールの生合成における律速段階である。コレステロールの減少した産生は、LDLレセプターの数の増加、及び血流中のLDL粒子の濃度に対応する低下を生じる。血流中のLDLレベルの低下は、冠動脈疾患のリスクを減少させる。J. A. M. A. 1984, 251, 351-74。
【0005】
現在入手可能なスタチンは、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、セリバスタチン、及びアトルバスタチンを含む。ロバスタチン(米国特許第4,231,938号に開示されている)、及びシムバスタチン(米国特許第4,444,784号に開示されている)は、ラクトン形態において投与される。吸収後、ラクトン環は、化学的又は酵素的加水分解により肝臓中で開環し、そして活性ヒドロキシ酸が産生する。プラバスタチン(米国特許第4,346,227号に開示されている)は、ナトリウム塩として投与される。フルバスタチン(米国特許第4,739,073号に開示されている)、及びセリバスタチン(米国特許第5,006,530号及び第5,177,080号に開示されている)もまた、ナトリウム塩として投与され、ヘキサヒドロナフタレン環を含む当該クラスの殺真菌誘導体と部分的に構造的に異なる、全合成化合物である。アトルバスタチン及び2つの新規な「スーパースタチン」、ロスバスタチン及びピタバスタチン、はカルシウム塩として投与される。
【0006】
ロスバスタチンカルシウム(モノカルシウム ビス(+)7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メチル−N−メチルスルホニルアミノピリミジン)−5−イル]−(3R,5S)−ジヒドロキシ−(E)−6−ヘプテノアート)は、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤であり、抗高脂血症の1日1回の経口処置のために、Sionogi により開発された(Ann Rep, Shionogi, 1996; Direct communications, Shionogi, 8 Feb 1999 & 25 Feb 2000)。ロスバスタチンカルシウムは、スーパースタチンであり、最初に産生した薬物よりも小さなLDL−コレステロール及びより有効なトリグリセリドとなりうる。ロスバスタチンカルシウムは、以下の化学式を有する:
【化1】

ロスバスタチンカルシウムは、哺乳類、例えば、ヒトの治療のためにCRESTORの名称で市販されている。CRESTORの製造者によれば、それは、約5mg〜約40mgの一日量において投与される。低い攻撃性のLDL−Cの低下を必要とする患者、又は筋疾患のための前処理因子を有する患者のために、5mgの投与量が推奨されるが、平均的な患者には10mgの投与量、顕著な高コレステロール血症及び攻撃的な脂質標的(>190mg/dL)を伴う患者には20mgの投与量、及び低用量に応答性でない患者には40mgの投与量が推奨される。
【0007】
米国特許第5,260,440号は、ロスバスタチン、そのカルシウム塩(2:1)、及びそのラクトン形態を開示し、要求する。’440特許のプロセスは、還流温度下においてアセトニトリル中で、4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メチル−N−メチルスルホニルアミノ)−5−ピリミジンカルバルデヒドとメチル(3R)−3−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−5−オキソ−6−トリフェニルホスホラニリデン ヘキサナートを反応させることによりロスバスタチンを調製する。それからロスバスタチンのメチルエステルを得るために、当該シリル基を、THF中フッ化水素で切断し、続いてNaBH4とジエチルメトキシボランで還元する。
【0008】
それから上記エステルを、水酸化ナトリウムで室温においてエタノール中で加水分解し、続いてエタノールを除去し、そしてエーテルを添加し、ロスバスタチンのナトリウム塩を得る。当該ナトリウム塩を水に溶解し、そして窒素雰囲気下に維持する。それから塩化カルシウムを当該溶液に添加し、ロスバスタチンカルシウム(2:1)の沈殿が生じる。当該中間体の調製プロセスは、引例により本明細書に組み入れられている’440特許に開示されている。
【0009】
米国特許第6,316,460号は、ロスバスタチンの医薬組成物を開示する。当該医薬組成物はロスバスタチン、又はその塩、及び多価の三塩基性リン酸塩を含む。
【0010】
稀に、上記反応の生成混合物は、医薬スタンダードとして十分に純粋な単一の化合物である。当該反応の副生成物及び副産物、並びに反応において使用した補助試薬は、大抵の場合存在するであろう。生成混合物に含まれるロスバスタチンの活性医薬成分(「API」)へのプロセスにおける一定の段階において、当該ロスバスタチンは、医薬製品における使用のための連続的なプロセス又は最終的に適当であるかを決定するために、典型的にはHPLC又はGC分析により純度を分析しなければならない。当該ロスバスタチンは完全に純粋である必要はない。完全な純度は、達成することが不可能な理論的な理想である。むしろ、純度スタンダードは、不純物の存在により、臨床的な使用のために安全性が低いAPIが産生されないことを確認するために意図される。米国において、食品医薬品局ガイドラインは、いくつかの不純物を0.1%以下に制限することを奨励している。
【0011】
一般的に、副生成物、副産物、及び調整剤(集団的に「不純物」)は、分光学的に、及び他の物理的方法により同定され、それから当該不純物は、クロマトグラム(又はTCLプレート上のスポット)中のピーク位置に関係する(Strobel p. 953) (Strobel, H. A.; Heineman, W. R., Chemical Instrumentation: A Systematic Approach, 3rd dd. (Wiley & Sons: New York 1989)) 。その後、当該不純物はクロマトグラム中の位置により同定され、これは「保持時間」として知られる、カラムにおける試料の注入と検出器を通る特定の成分の溶出時間として慣習的に測定される。当該時間は、機器の状態及び多くの他の要因に基づき毎日変化する。不純物の正確な同定においてこのような変化が有する影響を軽減するために、実施者は不純物を同定するための「相対的保持時間」(「RRT」)を使用する(Strobel p. 922)。不純物のRRTはいくつかのリファレンス・マーカーの保持時間により分けられたその保持時間である。理論においては、ロスバスタチンそれ自体がリファレンス・マーカーとして使用することができるが、実際的な問題として、それは非常に圧倒的な割合で存在するために、カラムを飽和する傾向があり、再現不可能な保持時間に導く。即ち、ロスバスタチンに対応するピークの最大値が不明となる傾向にある(Strobel Fig. 24.8 (b) p. 879, は、カラムがオーバーロードすると、観察される非対称のピークの選別の説明を含む) 。従って、検出可能であるために十分量であり、且つカラムが飽和しないように十分少ない量において混合物に添加され又は存在する他の化合物を選択すること、及びリファレンス・マーカーとして化合物を使用することが、しばしば所望される。
【0012】
薬物製造における研究者及び開発者は、比較的純粋な状態における化合物が、既知の混合物中の化合物の量を定量化するために「リファレンス・スタンダード」(「リファレンス・マーカー」は、リファレンススタンダードと類似するが、定性分析に使用される)として使用できることを理解する。当該化合物が「外部スタンダード」として使用される場合、既知の濃度の化合物の溶液は、既知の混合物として同技術により分析される。(Strobel p. 924, Snyder p. 549) (Snyder, L. R.; Kirkland, J. J. Introduction to Modern Liquid Chromatography, 2nd ed. (John Wiley & Sons: New York 1979) )。当該混合物中の化合物の量は、検出器の応答の大きさを比較することにより測定することができる。引用として本明細書に組み入れられている、USP6,333,198号もまた参照のこと。
【0013】
また、リファレンス・スタンダード化合物は、2つの化合物に対する検出器の感度における相違を代償する「応答因子」があらかじめ測定されている場合、混合物中の他の化合物の量を定量化するために使用することができる。(Strobel p. 894)。当該目的のために、当該リファレンス・スタンダード化合物は、当該混合物に直接添加することができ、かかる場合には「内部スタンダード」と称される。(Strobel p. 925, Snyder p. 552)。
【0014】
リファレンス・スタンダード化合物は、既知の混合物がいくつかのリファレンス・スタンダード化合物を含む場合、「標準添加」と称される技術を使用することにより、内部スタンダードとしても使用することができる。ここで少なくとも2つの試料が、既知で異なる量の内部スタンダードを添加することにより調製される(Strobel pp. 391-393, Snyder pp. 571,572)。混合物中に最初から存在するリファレンス・スタンダードによる検出器応答の割合は、各試料に添加されるリファレンス・スタンダード化合物の量に対する検出器応答のプロットをゼロに外挿することより測定することができる。
【0015】
本発明は、ロスバスタチンの分析のためにリファレンス・スタンダードとして使用することができるロスバスタチン分解生成物を供する。
【発明の開示】
【0016】
発明の概要
ある観点において、本発明は、以下の構造を有するロスバスタチン分解生成物を供する:
【化2】

【0017】
他の観点において、本発明は、以下の構造を有するロスバスタチン分解生成物を供する:
【化3】

【0018】
他の観点において、本発明は、以下の構造を有するロスバスタチン分解生成物を供する:
【化4】

式中、Mはアルカリ又はアルカリ土類金属である。
【0019】
他の観点において、本発明は、以下の構造を有するロスバスタチン分解生成物を供する:
【化5】

式中、Mはアルカリ又はアルカリ土類金属である。好ましくはMはカルシウムである。当該カルシウム塩は、ラクトンを得るためにアセトニトリル、塩酸、及びカルシウムを組み合わせることによりラクトン形態に;又はアセトニトリルと水の混合物中にカルシウム塩を溶解させること、及び当該カルシウム塩をシリカカラムに接触させること含んで成り、遊離酸に変換することができる。
【0020】
他の観点において、本発明は、以下の構造を有するロスバスタチン分解生成物を供する:
【化6】

【0021】
他の観点において、本発明は、以下の構造を有するロスバスタチン分解生成物を供する:
【化7】

【0022】
他の観点において、本発明は、水性塩基性条件下においてラクトンを加水分解する工程、及び当該加水分解したラクトンをカルシウム源と反応させる工程を含んで成る、ラクトンをカルシウム塩に変換するためのプロセスを供する。
【0023】
他の観点において、本発明は、金属塩を得るためにラクトンを水性塩基性条件下で加水分解する工程、及び当該金属塩をシリカカラムと接触させる工程を含んで成る、ラクトンを遊離酸に変換するためのプロセスを供する。
【0024】
好ましくは、上記生成物は、6位におけるその対応する立体異性体の約95重量%が取り除かれている。当該ロスバスタチン分解生成物は単離又は精製することができる。
【0025】
他の観点において、本発明は、以下の工程を含んで成るロスバスタチンの試料を分析するための方法を供する:
a)データを得るために、当該試料においてクロマトグラフィーを行う工程;及び
b)上記データと分解生成物のクロマトグラフィーデータを比較する工程。
【0026】
他の観点において、本発明は、可視光を、ロスバスタチン酸、ロスバスタチンアルカリ若しくはアルカリ土類金属塩、又はロスバスタチンラクトンに照射する工程を含んで成る、分解生成物を調製するためのプロセスを供する。
【0027】
他の観点において、本発明は、スタンダードとして以下の化合物でクロマトグラフィーを行う工程を含んで成る、ロスバスタチンのためのクロマトグラフィーカラムの保持時間を測定するための方法を供する。
【化8】

式中、R1及びR2は独立に水素又は加水分解性の保護基であり;R3は水素、C1〜C4アルキル基、又はアルカリ若しくはアルカリ土類金属であり;あるいは式中C1及びC5はラクトンを形成する。
【0028】
発明の詳細な説明
本明細書に使用される場合、「リファレンス・スタンダード」の語は、活性な医薬成分の定量及び定性分析の両方に使用することができる化合物を意味する。例えば、HPLCにおける当該化合物の保持時間は、相対的保持時間を設定することを許容し、従って定性分析を可能にする。HPLCカラムへの注入前の溶液中の化合物濃度は、HPLCクロマトグラム中のピークにおける面積の比較を許容し、従って定量分析を可能にする。
【0029】
「リファレンス・マーカー」は、これらの位置、例えば、クロマトグラム、又は薄層クロマトグラフィー(TLC)プレートにおけるに位置に基づき、混合物の成分を同定するために定性分析において使用される。(Strobel pp. 921,922, 953)。当該目的のために、混合物中に存在している場合には、当該化合物を必ずしも当該混合物に添加しなければならないわけではない。「リファレンス・マーカー」は、定性分析のためだけに使用され、一方リファレンス・スタンダードは、定量若しくは定性分析、又はその両方に使用することができる。それ故、リファレンス・マーカーはリファレンス・スタンダードの部分集合であり、リファレンス・スタンダードの定義中に含まれる。
【0030】
リファレンス・スタンダードに関して当業者に既知ないくつかのものは、現在までに一般的に記述されているが、当業者はまた、検出器応答が、例えば、UV又は屈折率検出により、HPLCシステムの溶出から、あるいは、例えば、水素炎イオン化検出、又は熱伝導度検出、ガスクロマトグラフから、あるいは他の検出器応答、例えば、蛍光TCLプレートのUV吸収から得られたクロマトグラムのピークの高さ又は積分されたピーク面積であってよいことを理解する。リファレンス・スタンダードの当該位置は、ロスバスタチン及び他の不純物の相対的保持時間を計算するために使用することができる。
【0031】
ロスバスタチンカルシウムが可視光の照射に暴露されると、ロスバスタチンの分解生成物が得られ、これはリファレンス・スタンダードとして使用することができる。当該2つの分解生成物は、以下のとおり、6位において付加的な不斉中心の生成を伴うジアステレオマーの環式生成物(II)及び(III )である:
【化9】

ロスバスタチンカルシウムに追加して、ロスバスタチンの他の形態も照射されることができ、ラクトン、遊離酸、及び塩、例えば、ナトリウム塩を含む。
【0032】
上記照射は、溶液又は固体において行うことができる。溶液を照射する場合、当該照射は、好ましくはおよそ室温〜およそ還流温度において行うことができる。溶解のために使用される有機溶媒は、水を伴う混合物中、極性プロトン性(C1〜C4アルコール、例えば、メタノール又はエタノール)、又は非プロトン性(アセトニトリル、テトラヒドロフラン)のいずれかであってよい。約35℃におけるロスバスタチンカルシウムの水性アセトニトリル溶液における約7時間の約750wの可視光の照射は、1:1の割合における化合物(II及びIII )の混合物を与える。固体において照射する場合、当該温度は、好ましくは約20EC〜約100ECである。当業者は、これらのスペクトル又は多様な混合物のスペクトル中において、更により狭いスペクトルを選択することができる。多様な分解生成物の本明細書に供されるスペクトルの説明に基づき、当業者は、当該分解生成物を得るための合成経路を調製することができる。
【0033】
他の態様において、対応するラクトンは、ロスバスタチンのラクトン形態を照射すること、又はリファレンス・スタンダードとして使用することができる対応する化合物IV及びVを得るために、ラクトン形態化合物II及びIII を調製することのいずれかにより得られる。化合物IVは、以下を有する。1H NMR (300MHz, CDCl3) δ(ppm): 1.24, 1.34, 1.68, 2.47, 2.53, 2.64, 3.15, 3.35, 3.46, 3.56, 3.60, 4.28, 4.45, 6.99, 7.14, 8.31 ;13C NMR (75MHz,CDCl3) δ(ppm): 20.87, 21.26, 23.29, 31.41, 33.26, 34.03, 38.23, 42.07, 43.00, 62.23, 74.53, 115.61, 116.08 (J=26Hz), 116.25 (J=22Hz), 129.08, 128.91(J=9Hz), 139.28 (J=8Hz), 157.64, 157.86, 163.96 (J=253Hz), 169.47, 174.48 ; FAB+m/z(MH+) : 464. 化合物Vは、以下を有する。lH NMR (300MHz, CDCl3) δ (ppm): 1.24, 1.29, 1.52, 1.70, 2.58, 3.02, 3.21, 3.27, 3.41, 3.55, 3.60, 4.26, 4.78, 7.05, 7.12, 8.34 ; FAB+m/z (MH+) : 464.
【0034】
化合物II及びIII からの対応するラクトン化合物IV及びVの調製は、適当な溶媒に化合物II及びIII を溶解する工程、及び例えば、水性塩酸でラクトン環を形成する工程を含む。ラクトンを形成するために他の酸を使用することもできる。化合物II及びIII からのラクトンの調製のための適当な溶媒は、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトニトリル、又はテトラヒドロフランである。好ましくは、当該適当な溶媒は、アセトニトリルである。当該生成物を回収するために、当該溶媒を、いずれかの慣習的なプロセス、例えば、蒸発により除去することができる。得られた化合物IV及びVは、例えば、カラムクロマトグラフィー、及び結晶化の方法により、分離することができる。
【0035】
ロスバスタチンラクトンからの対応するラクトン化合物IV及びVの調製は、同じ溶媒中における可視光の照射によっても行うことができる。照射特性は上述の通りである。当該ラクトン化合物IV及びVは、溶媒の存在下において、対応する塩を得るために、当量の水性塩基、例えば、水酸化ナトリウム又はカルシウムで加水分解してよい。ある態様において、当該ラクトンはアセトニトリル中において、水酸化ナトリウム水溶液で加水分解され、続いてアセトニトリルが除去され、そしてカルシウム源、例えば、塩化カルシウムが添加される。
【0036】
ラクトン形態IV及びVは、塩を得るために塩基で加水分解することができ、その後、それぞれ酸形態VI及びVII に変換することができ、これらはリファレンス・スタンダードとして使用することができる。当該ラクトンの塩への変換は、塩基性水溶液を使用することにより行うことができる。ある態様において、当該ラクトンは、アセトニトリルと水性NaOH溶液の混合物中に溶解される。それから当該アセトニトリルが除去され、そしてカルシウム塩を沈殿させるためにカルシウム源、例えば、塩化カルシウムが添加される。
【0037】
上記酸形態は、シリカゲルにおけるカラムクロマトグラフィーにより上記塩生成物を精製した後に得られる(実施例1に記載されるとおり)。当該シリカカラムの酸性度は、変換に関係する。化合物VIは以下を有する。1H NMR (600 MHz, CDCl3+CD3OD 5: 1) δ (ppm): 1.25, 1.33, 1.39, 1.58, 2.22, 2.80, 2.89, 3.36, 3.52, 3.58, 3.61, 3.95, 7.01, 7.09, 8.26;13C NMR (150 MHz, CDCl3+CD3OD 5: 1) δ (ppm): 21.14, 21.31, 23.32, 31.56, 33.47, 40.15, 42.16, 42.97, 44.62, 68.99, 71.45, 115.17(J=21Hz), 116.32 (J=22Hz), 117.77, 128.87 (J=9Hz), 129.20, 142.34 (J=8Hz), 157.71, 158. 57,164. 26(J=251Hz), 174.30 ; Cl+m/z(MH+) : 482. 化合物VIIは以下を有する 1H NMR (600 MHz, CDCl3+CD3OD 5: 1) δ (ppm): 1.24, 1.31, 1.43, 2.25, 2.95, 3.05, 3.19, 3.30, 3.56, 3.60, 3.85, 4.03, 7.02,7. 08, 7.31 ; 13C NMR (150 MHz, CDCl3+CD3OD 5: 1) δ (ppm): 21.15, 21.23, 22.98, 31.22, 33.36, 38.83, 42.08, 43.45, 68.82, 73.86, 114.95(J=21Hz), 116.31(J=21Hz), 117.41, 128.56 (J=8Hz), 128.91, 142.02 (J=8Hz), 157.58, 158.45, 164.28 (J=252Hz), 173.19, 178; Cl+m/z (MH+) : 482.
【0038】
上記分解生成物の多様な形態は、1つのだけの立体異性体が存在するように精製することができる。6位における当該R立体異性体は、好ましくは、少なくとも約95重量%のS立体異性体を取り除かれている。逆に、6位における当該S立体異性体は、好ましくは、少なくとも約95重量%のR立体異性体を取り除かれている。精製は、カラムクロマトグラフィー、TLC、HPLC、又は他の既知の精製方法により行うことができる。
【0039】
機器
クロマトグラフィーのために、酸化アルミニウム、又は好ましくは、シリカゲルは、パッキングのために使用することができる。溶出剤として、異なる有機溶媒、又はこれらの混合物を使用することができる。酢酸エチルが好ましい。
【0040】
対応する酸(VI及びVII )として単離される化合物II及びIII 、ラクトン(IV及びV)は、これらの構造を決定するために、1H NMR、13C NMR、COSY NMR、及びマススペクトル分析で調べることができる。
【実施例】
【0041】
実施例1.ロスバスタチン(カルシウム塩)の照射によるロスバスタチン分解生成物の調製。
【0042】
1.ロスバスタチン(Ca塩)(4.0g)をアセトニトリル−水(380ml−140ml)の混合物中に溶解させ、そして可視光(750w、35℃)で7時間照射した。アセトニトリル及び水を真空下で留去した。
【0043】
2.上記の得られた固体を、40mlのアセトニトリル中に溶解させ、そして40mlの1Nの塩酸を添加した。当該混合物を室温で一昼夜撹拌した。アセトニトリル及び水を留去後、真空下で乾燥させ、得られた生成物を、シリカゲルにおけるカラムクロマトグラフィー(溶出剤 ヘキサン−酢酸エチル 1:2)により分離し、ラクトンIV(0.8g)及びラクトンV(0.6g)を得た。シリカゲルにおけるTLC、溶出剤 ヘキサン−酢酸エチル(1:2) 化合物IVのRf=0.30、化合物VのRf=0.25。
【0044】
化合物IV
【表1】

【0045】
化合物V
【表2】

【0046】
3.ラクトンIV(0.8g)をアセトニトリル中に溶解させ、そして1Nの水性水酸化ナトリウム(4ml)を添加した。当該混合物を室温で一昼夜撹拌した。アセトニトリル及び水の留去後、真空下で乾燥させ、得られた生成物をシリカゲルにおけるカラムクロマトグラフィー(溶出剤 ジクロロメタン−メタノール 65ml:10ml)で精製し、純粋な化合物VI(0.4g)を得た。
【0047】
化合物VI(化合物IVの対応する酸)
【表3】

【0048】
4・同様に、化合物VII (0.3g)をラクトンVから得た。
【0049】
化合物VII (化合物Vの対応する酸)
【表4】

【0050】
実施例2.ロスバスタチンラクトンの照射によるロスバスタチン分解生成物の調製
【0051】
1.ロスバスタチンラクトン(2.0g)を200mlのアセトニトリル中に溶解させ、そして可視光(750w、35℃)で7時間照射した。アセトニトリルの留去後、真空下で乾燥させ、得られた生成物をシリカゲルにおけるカラムクロマトグラフィー(溶出剤 ヘキサン−酢酸エチル 1:2)により分離し、ラクトンIV(1.1g)及びラクトンV(0.6g)を得た。
【0052】
2.ラクトンIV(1.0g)を5mlのアセトニトリル中に溶解させ、2mlの1Nの水性NaOHを添加した。当該混合物を室温で4時間撹拌した。アセトニトリルの留去後、1mlの2Nの水性CaCl2を添加し、そして当該混合物を室温で1時間撹拌した。当該沈殿物をろ過し、そして真空下で乾燥させ、化合物IIを得た。
【0053】
3.同様に、ラクトンVから化合物III を得た。
【0054】
実施例3.ロスバスタチンカルシウムのHPLC不純物プロフィール測定
化合物IV、V、VI、及びVII の純度を、HPLC分析により測定した。
【0055】
HPLC
カラム:C18
溶出剤:ギ酸バッファー及びアセトニトリルの勾配
流速:1ml/分
検出器:245nm
試料容積:10μl
希釈剤:アセトニトリル:水=50:50
【0056】
移動相組成物及び流速は、必要なシステムの適合性を達成するために変化させてもよい。
【0057】
試料調製物
約10mgのロスバスタチンカルシウム試料を、20mlのアンバーメスフラスコで秤量した。当該試料は10mlのアセトニトリルに溶解させ、そして水で希釈する。
【0058】
スタンダードの調製
約10mgの各化合物、IV、V、VI、及びVII を20mlのアンバーメスフラスコ中で秤量し、10mlのアセトニトリルで溶解させ、そして水で希釈する。1mlの調製した溶液を希釈剤で100mlに希釈する。
【0059】
方法
新鮮に調製した試料溶液を上記クロマトグラフに注入し、そして試料のクロマトグラムを勾配の終わりまで継続させる。各溶液における各ピークの面積を、適当なインテグレーターを使用して測定する。
【0060】
特に好ましい態様に関して本発明を記載し、そして実施例を伴い説明したことにより、当業者は、開示され、説明される発明の改変が、明細書中に開示される発明の精神及び範囲から離れていないことが理解できるはずである。上記実施例は、本発明の理解を助けるために記載されており、如何なる様にも発明の範囲を構成し、制限するべきでない。当該実施例は、慣習的な方法の詳細な説明を含まない。本明細書に言及されている全ての参考文献はこれらの全体において組み入れられている。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】化合物VIのHPLCクロマトグラムである。
【図2】化合物VII のHPLCクロマトグラムである。
【図3】ロスバスタチン、化合物VI、及び化合物VII の混合物のHPLCクロマトグラムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造:
【化1】

を有するロスバスタチン分解生成物。
【請求項2】
以下の構造:
【化2】

を有するロスバスタチン分解生成物。
【請求項3】
以下の構造:
【化3】

であって、式中Mがアルカリ又はアルカリ土類金属である構造を有する、ロスバスタチン分解生成物。
【請求項4】
以下の構造:
【化4】

であって、式中Mがアルカリ又はアルカリ土類金属である構造を有する、ロスバスタチン分解生成物。
【請求項5】
前記式中、Mがカルシウムである、請求項3又は4に記載のロスバスタチン分解生成物。
【請求項6】
ラクトンを得るために、アセトニトリル、塩酸、及び前記カルシウム塩を組み合わせることを含んで成る、請求項5に記載のカルシウム塩をラクトンに変換するための方法。
【請求項7】
溶液を得るためにアセトニトリルと水の混合物中に前記カルシウム塩を溶解させる工程、及び当該溶液をシリカカラムと接触させる工程を含んで成る、請求項5に記載のカルシウム塩を遊離酸に変換するための方法。
【請求項8】
前記方法が、残渣を得るために溶液を留去する工程、第二溶液を得るために当該残渣を水とアセトニトリルの混合物に溶解させる工程、当該第二溶液をシリカカラムに注入する工程、及び当該カラムをジクロロメタンとメタノールの混合物で溶出させる工程、を含んで成る、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
以下の構造:
【化5】

を有するロスバスタチン分解生成物のラクトン形態。
【請求項10】
以下の構造:
【化6】

を有するロスバスタチン分解生成物のラクトン形態。
【請求項11】
水性塩基性条件下において前記ラクトンを加水分解する工程、及び当該加水分解したラクトンとカルシウム源を反応させる工程を含んで成る、請求項9又は10に記載の前記ラクトンをカルシウム塩に変換するための方法。
【請求項12】
前記塩基性水溶液がアセトニトリル中におけるラクトンの溶液と組み合わされ、続いてアセトニトリルを除去し、そしてカルシウム源を添加し、そして前記カルシウム塩が回収される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、前記ラクトンをアセトニトリルと水性水酸化ナトリウムの混合物に溶解させる工程、当該アセトニトリルを留去する工程、前記カルシウム塩を沈殿させるために塩化カルシウムを、残存する水に添加する工程を含んで成る、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
塩を得るために水性塩基性条件下においてラクトンを加水分解する工程、及び遊離酸を得るために当該塩をシリカカラムに接触させる工程を含んで成る、請求項9又は10に記載のラクトンを遊離酸形態に変換させる方法。
【請求項15】
前記分解生成物が、6位におけるその対応する立体異性体の約95重量%を取り除かれている、請求項1、2、3、4、9又は10に記載のロスバスタチン分解生成物。
【請求項16】
前記ロスバスタチン分解生成物が単離又は精製される、請求項1、2、3、4、9又は10に記載のロスバスタチン分解生成物。
【請求項17】
a)データを得るために、試料においてクロマトグラフィーを行う工程;及び
b)上記データと請求項1、2、3、4、9又は10に記載の分解生成物のクロマトグラフィーデータを比較する工程、
を含んで成る、ロスバスタチンの試料を分析するための方法。
【請求項18】
前記方法が、以下の工程:
(a)前記分解生成物を含むロスバスタチン溶液を調製する工程、
(b)クロマトグラムを得るために、上記溶液を高速液体クロマトグラフィーにかける工程、
(c)上記クロマトグラムにおいて得られたピークを、前記分解生成物から生じるピークと比較する工程、
を含んで成る、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記方法が、以下の工程:
(a)前記分解生成物を含むロスバスタチン溶液を調製する工程、
(b)クロマトグラムを得るために、上記溶液を薄層クロマトグラフィーにかける工程、
(c)上記クロマトグラムにおいて得られたバンド又はスポットを、前記分解生成物から生じるピーク又はバンドと比較する工程、
を含んで成る、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
ロスバスタチン酸、ロスバスタチンアルカリ若しくはアルカリ土類金属塩、又はロスバスタチンラクトンを可視光で照射する工程を含んで成る、請求項1、2、3、4、9又は10に記載の分解生成物を調製するための方法。
【請求項21】
以下の化合物:
【化7】

又は、
【化8】

であって、式中、Mがカルシウムである化合物、
を調製するための方法であって、有機溶媒と水の混合物における溶液中のロスバスタチンカルシウムを可視光で照射することを含んで成る、方法。
【請求項22】
前記有機溶媒が、アセトニトリルである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記可視光の照射が、約35℃において約750wで行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
以下の化合物
【化9】

又は、
【化10】

のラクトン形態を調製するための方法であって、溶媒中のロスバスタチンラクトンを可視光で照射することを含んで成る、方法。
【請求項25】
前記可視光の照射が、約20℃〜約100℃において行われる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記溶媒が、アセトニトリルである、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
ロスバスタチンのためのクロマトグラフィーカラムの保持時間を測定するための方法であって、スタンダードとして以下の化合物、
【化11】

であって、式中、R1及びR2が、独立に水素、又は加水分解性の保護基であり;R3が、水素、C1〜C4アルキル基、又はアルカリ若しくはアルカリ土類金属であり;あるいは、式中C1とC5が、ラクトンを形成する化合物、でクロマトグラフィーを行う工程を含んで成る、方法。
【請求項28】
前記リファレンス・スタンダードがリファレンス・マーカーである、請求項27に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−512354(P2007−512354A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541502(P2006−541502)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/040329
【国際公開番号】WO2005/056534
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(501079705)テバ ファーマシューティカル インダストリーズ リミティド (283)