説明

ロッキングピペットチップ及び取付けシャフト

一態様において、本発明はピペットチップ取付けシャフト構造及び適合構造を有する使い捨てピペットチップに係る。取付けシャフトは、下方密封部の上方に位置決めされるロッキング部を有する。ロッキング部は、ストップ部材の上方に位置決めされる外方向に延在するロッキングローブ、及びストップ部材の下方に位置決めされる下方密封部を有する。取付けシャフトが接合使い捨てピペットチップのつば部へと完全に挿入される際、チップは、取付けシャフト上へとロックする。ピペットチップの穴は、円周シェルフ又は肩部を有し、円周シェルフの下方に位置決めされるチップ密封範囲から上方つば部を分離する。チップつば部は望ましくは、取付けシャフトに対するつば部の上方開口又はその近くにおいて位置決めされるロッキングリングを有する。つば部の寸法、及び特には円周シェルフとロッキングリングとの間の距離は、ストップ部材とロッキングローブの上方端との間の取付けシャフトにおける寸法に適合するよう選択され、故に人間工学的な挿入及び排出力を使用する一方、安全で信頼性の高い位置及び向きにおいてピペットチップをロックする。ロッキングローブは望ましくは、取付けシャフトがピペットチップに挿入される際に、チップつば部を伸張するのではなく、ピペットチップつば部を緩やかに屈曲させ、円形から変形させる、傾斜部を有する。チップつば部とバレルとの間におけるピペットチップ上の円周シェルフは、バレルの上方端における密封範囲を変形から隔離し、故に、取付けシャフトの下方密封部とピペットチップのバレルの上方端における密封リングとの間における信頼性の高い係合を容易にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピペット及び自動液体処理システムにおける改善に係る。本発明はより具体的に、ピペットチップ取付けシャフト及び使い捨てピペットチップの構造にかかり、該使い捨てピペットチップは、意図的ではない取外しに対する更なる抵抗性並びに低い挿入及び排出(ejection)力を有する堅固な密封係合を与え、また、チップがピペットチップ取付けシャフト上に取り付けられる際に最善の位置及び向きにおいて取り付けられるチップを保持する。
【背景技術】
【0002】
自動液体処理システム及び処理される(handled)ピペットを有する使い捨てピペットチップの使用は、周知である。使い捨てピペットチップは、持ち越される汚染物質を有することなく異なる流体又は異なる流体試料を移送するよう、かかるピペットシステムの反復使用を可能にする。使い捨てピペットチップは通常、ポリプロピレン等であるプラスチック材料を有して形成され、中空で細長い概して円錐の形状を有する。ピペットチップの上方端は典型的に、ピペットチップ装置上のチップ取付けシャフトに対して取り付けられるつば部(collar)を有する。取付けシャフトは、内部穴(internal bore)を有し、該内部穴を介して空気は、液体試料をピペットチップへと吸引するよう、またピペットチップから液体試料をディスペンスするよう、移動される(displaced)。ピペットチップの遠端は、小さな開口を有し、液体試料は、該開口を介してピペットチップのバレルへと受容され、またピペットチップのバレルからディスペンスされる。
【0003】
使い捨てピペットチップは従来、ピペットチップを取付けシャフトに対して固定及び密封するためには、取付けシャフトとピペットチップつば部との間におけるテイパされた嵌合(tapered fits)、及びピペットチップつば部の内側円周(inside circumference)における密封リングに依存してきた。大半の場合において、取付けシャフトと使い捨てチップとの間の嵌合は、テイパされた取付けシャフトをテイパされたピペットチップへとチップへと割り込むまで押し込むことによって達成される。この時点において、密封は、密封リングの圧壊(crushing)及び/又はつば部の直径の伸張の結果として、チップつば部と取付けシャフトとの間において達成される。適切な密封を達成することに加えて、取り付けられるチップの位置及び向きは、導管(vessel)の側壁における接触中(during touch−off)等である通常の使用中に典型的である僅かなノッキング力又は横方向運動量に直面しても安定している、ことも重要である。チップの安定性を確保するよう、ユーザは、過剰な力を有してピペット取付けシャフトをチップへと詰め込む傾向がある。
【0004】
多種のシステムは、過剰な取付け及び排出力を有さずに適切な密封及び安定性を与えるよう考案されてきている。例えば、円筒形の取付けシャフト及び円筒形のチップつば部の使用は、取付け及び排出力を低減させる。また、ピペットチップ取付けシャフトに対する深さ制限手段としてピペットチップつば部内においてステップを使用することは、周知である。それでも、かかるシステムは典型的に、ピペットチップの安定した係合を保持し且つ取付けシャフトに対するつば部の信頼性高い密封を確実なものとするよう、ピペットチップつば部の伸張又は締まり嵌めの力を必要とする。
【0005】
更なる手法は、米国特許出願US2005/0175511 A1(特許文献1)において記載される。該特許文献1において、ピペットチップつば部は、取付けシャフトの円周リムにわたってラッチする(掛け金をかける)内方向に突出するカンチレバーフィンガーを有する。この手法において、密封は、ラッチ係合の位置の下方に位置決めされる取付けシャフト上のOリングによって達成される。チップの排出は、ピペットチップにおける排出機構を修正することによって達成され、取付けシャフトからチップを排出するよう力を加える前にピペットチップにおける内方向に突出するフィンガーを解放することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US2005/0175511 A1
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様において、本発明はピペットチップ取付けシャフト構造及び適合(マッチング)構造を有する使い捨てピペットチップに係る。望ましい形状において、ピペットチップ取付けシャフトは、下方密封部の上方に位置決めされるロッキング部を有する。ロッキング部は、下方ストップ部材、及び該ストップ部材の上方に位置決めされる2つ又はそれより多くの外方向に延在するロッキングローブ(locking lobes)を有する。ピペットチップつば部は、取付けシャフトが接合ピペットチップのつば部へと完全に挿入される際、取付けシャフト上へとロックする。ピペットチップの穴は、チップバレルの上方領域において位置決めされるチップの密封範囲から上方つば部を分離する円周シェルフ(circumferential shelf)又は肩部を有する。つば部は望ましくは、つば部の上方開口又はその近くにおいて位置決めされるロッキングリングを有する。つば部の寸法、及び特には円周シェルフとロッキングリングとの間の距離は、ストップ部材とロッキングローブの上方端との間の取付けシャフトにおける寸法に適合するよう選択される。ロッキングローブは、望ましくは、取付けシャフトがピペットチップつば部へと挿入される際にピペットチップを円形から緩やかに屈曲又は変形させる傾斜部を有する。ローブ間の取付けシャフトの解放部分によって、チップつば部は、ロッキングローブにわたる締まり嵌めに適応する(accommodate the inteference fit)よう、チップつば部を伸張するのではなく屈曲し、円形から変形させる。この構造は、人間工学的なオーバーセンターロッキング係合をもたらす。係合の感覚(feel)は、部分的には、ロッキングリングがロッキング係合へと取付けシャフトにおけるローブを通過する際の上方つば部の屈曲の結果として、ハンドヘルドピペットチップのユーザに対して触知性フィードバックを与える。同時に、取付けシャフト上のストップ部材は、ストップ部材がチップにおけるシェルフに係合する際にチップへの取付けシャフトの貫通を制限し、故にチップが完全に取り付けられることを明示する。
【0008】
取付けシャフトにおける下方密封範囲は、ストップ部材の下方に延在する。下方密封部は望ましくは、裁頭円錐形状(frustoconical shape)にテイパされるが、接合ピペットチップの形状に依存して、円筒形であってもよい。同様に、ピペットチップは望ましくは、ピペットチップバレルの上方端における円周シェルフの下方に位置決めされる密封範囲において密封リングを有する。チップ密封範囲の形状は、取付けシャフトの下方密封部の形状に適合するべきである。ピペットチップにおける円周シェルフは、チップが取付けシャフトにおいて取り付けられる際に密封範囲からつば部の変形を隔離(isolates)し、故に密封リングが位置決めされる密封範囲(即ち、ピペットチップバレルの内側表面に対する円形円周)の丸みを保持する。このことは、取付けシャフトの下方密封部の周囲における密封リングの信頼性高い係合を促進するよう、重要である。
【0009】
取付けシャフトがチップつば部へと押される際、第1の接触点は、取付けシャフトの先端エッジ、即ち下方密封部がピペットチップにおける円周シェルフを通って入り、密封リングに接触するところ、である。取付けシャフトがピペットチップ穴へと更に押圧される際、密封リング干渉は、つば部の上方部を円形から変形させるよう、取付けシャフトのローブの傾斜範囲がチップつば部におけるロッキングリングに係合するのと同時に増大する。上述された通り、全体的な挿入力が比較的小さく且つ人間工学に基づくものである一方、力は、顕著に増大し、チップが略完全に取り付けられることを示す触知性フィードバックをユーザに対して与える。この挿入力における増大は、チップへの取付けシャフトの更なる運動を突然(abruptly)止めるよう取付けシャフトにおけるストップ部材がピペットチップにおける円周シェルフに係合するまで継続し、その時点においてローブもつば部の穴におけるロッキングリングの下方においてスナップ係合する(snap engage)。故に、ユーザは、チップを取り付けるための更なる過剰な力を使用しないよう、警告される。かかる相互に関連付けられる取付け状態は、密封リングにおいて一貫した密封を有する確実で安定した取付けをもたらす。あるいは、密封リングの初期係合は、挿入力を低減するよう、ロッキングリングの係合に対してずらされ得る(staggered)。
【0010】
更には、チップは、比較的低い排出力を必要とする。ピペットストリッパースリーブがチップつば部の上方端に対して押される際、比較的小さな排出力は、取付けシャフトにおけるロッキングローブからつば部上のロッキングリングを解放するよう、必要とされる。取付けシャフトにわたってロックされる際の変形された形状におけるつば部の屈曲は、エネルギを蓄積する。チップがローブから解放される際に、ストリッパーからの圧力と蓄積されたエネルギの解放との組合せは、チップを取付けシャフトから切り離し(throw)、それによって使用後のチップの取付けシャフトからの便利な排出を促進する。
【0011】
他の態様において、本発明は、密封リングを有する密封範囲が上方取り付けつば部から密封範囲を分離及び隔離する円周シェルフの下方に位置決めされる使い捨てピペットチップの構造に係る。密封機能をつば部又はシェルフ範囲から離れてバレルの上方範囲へと動かすことによって、ピペットチップつば部の取付け構造に対する設計制限は、より限定的ではない。例えば、本発明の望ましい実施例の場合、つば部は、取付けシャフト上に取り付けられる際に屈曲され、円形から変形される。密封範囲を変形から孤立させるよう、円周シェルフの下方におけるピペットチップ上に密封範囲を位置決めすることは、この取付け配置を容易にする。
【0012】
本発明のこれらの及び他の態様、特徴、及び利点は、これより添付の図面を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の概念を組み込むハンドヘルド電子空気移動ピペットチップの斜視図である。
【図2】本発明の望ましい一実施例に従った使い捨てピペットチップ及びピペットチップ取付けシャフトを示す斜視図である。
【図3】図2中の取付けシャフト及びピペットチップの側面図である。
【図4】図3中の線4−4に沿って取られる長手方向断面図である。
【図5】図4中の線5−5によって囲まれた範囲の詳細図であり、図2中に示される使い捨てピペットチップの円周シェルフ、密封範囲、上方ロッキングつば部を図示する。
【図6】図4中の線6−6によって囲まれた範囲の詳細図であり、図2中に示される取付けシャフトのストップ部材、密封部、及びロッキング部を図示する。
【図7】使い捨てピペットチップへと挿入される取付けシャフトを図示する側面図である。
【図8】図7中の線8−8に沿って取られた長手方向断面図である。
【図9】図8中の線9−9によって囲まれた範囲にわたる詳細図であり、最終係合の直前のピペットチップへの取付けシャフトの挿入を図示する。
【図10】ピペットチップへの取付けシャフトの完全な挿入を図示する図9に類似する詳細図である。
【図11】図10中の線11−11に沿って取られた図であり、ピペットチップが取付けシャフト上へと完全に取り付けられる際に円形から変形されるピペットチップつば部及びロッキングリングを図示する。
【図12】ピペットチップが取付けシャフトから取り除かれていることを図示する図10に類似する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、ハンドヘルド(手持ち式)の電子空気移動ピペット(electric air displacement pipette)10を示し、該ピペット10は、本発明の望ましい実施例に従って構成されるピペット取付けシャフト12及び使い捨てピペットチップ14を組み込む。ピペット10は、ユーザの手のひらに持たれるよう設計される筐体16を有する。ピペットの内部構成要素(図示せず)は、吸引及びディスペンスシリンダ内における空気を移動するよう密封組立体を介して延在するピストンを駆動させる。ピペット取付けシャフト12は、ねじ山を付けられるか、あるいはピペットの下方端に対して取り付けられ、吸引及びディスペンスチャンバと流体連通する。ピペットに対する取付けシャフトの取付けは、本発明の概念に特に関連せず、技術的に周知である。ボタン18は、ユーザが電子ピペットに吸引及びディスペンスを指示するよう、与えられる。ピペット10はまた、使い捨てピペットチップ14を取付けシャフト12から排出するよう、排出機構スリーブ24を下方向に動かすよう矢印22の方向において始動させるレバー20を有する。
【0015】
本発明は、ハンドヘルドの電子空気移動ピペット10における使用に対して図示及び説明されるが、本発明は、他の種類のハンドヘルドピペット、及び使い捨てピペットチップを使用する自動液体処理機に関連しても有用である。例えば、本発明によって与えられる人間工学上の特徴は、ハンドヘルドの手動ピペット及び電子ピペットに対して特に有用である。加えて、取付けシャフトに対するピペットチップの係合の確実性及び安定性に関連する本発明の特徴は、自動液体処理システム及びハンドヘルドピペットに対して大変有用である。
【0016】
図2に示される通り、取付けシャフト12は望ましくは、取付けシャフト12を吸引及びディスペンスシリンダ(図示せず)の下方端に対して取り付けるようねじ山26を有する。本願に記載される通り、取付けシャフト12の寸法は、ピペットチップ14の寸法に適合し、適切な寸法を有するピペットチップ14のみが取付けシャフト12上へと嵌め合い得る。つば部及び密封領域において異なる穴寸法を有するピペットチップを使用するよう、取付けシャフト12及び/又は管状ストリッパーシャフト24を適切な寸法を有するものと交換することは、必要である。
【0017】
図2−6を参照すると、取付けシャフト12は、技術的に周知である通り、ピペット10における吸引及びディスペンスシリンダとピペットチップ14との間において空気通路を与える中心穴28を有する。取付けシャフト12は、上方ロッキング部30、下方密封部32、及びロッキング部30と下方密封部32との間において位置決めされるストップ部材34を有する。ピペットチップ14は一般的に、つば部36、バレル38、及びチップ14の内部穴の周囲に延在し、且つつば部36の下方端部をバレル38の上方端部に対して接続する円周シェルフ40を有する。つば部36の上方端は、ピペット取付けシャフト12を受容するよう開口42を有する。バレル38の下方端は小さな開口44を有し、該小さな開口を介して液体は、ピペット10の通常動作中に、チップバレル38へと吸引され、またチップバレル38からディスペンスされる。支持リブ46は、つば部36からピペットチップ14の外側表面上で下方向に延在する。支持リブ46は、技術的に周知である通り、チップ14又はチップ14のアレイをその後の使用に対してトレイ等において保持するよう機能する。
【0018】
ピペットチップ14の内部表面は、特に図5を参照してより詳細に説明される。つば部36の内側表面は望ましくは、円周ロッキングリング48を有するが、本発明の態様は、ロッキングリング48を有さなくても達成され得る。ロッキングリング48は望ましくは、つば部36の開口42又はその僅か下方に位置決めされる。ロッキングリング48は、つば部36の内壁から内方向に僅かに、望ましくは0.001インチ乃至0.010インチの範囲において延在し、取付けシャフト12においてローブ50にわたるロッキング嵌合を与えるようにする。しかしながら、ロッキングリング48は、使用後の取付けシャフト12から使い捨てチップ14の効率的且つ効果的な排出を妨げるほど内方向に延在しない、ことが重要である。ロッキングリング48は、1つ又はそれより多くの空気抜き52を任意で有し得る。空気抜きは、ピペットチップのロッキングリング48の代りに、あるいはそれに加えて、取付けシャフト12において組み込まれ得る。かかる空気抜きの第1の目的は、不適切な寸法のピペットチップが取付けシャフト上へと取り付けられる場合に液体の吸引を防ぐこと、である。これは、例えば多量の液体が少量の液体に対して設計されたチップへと意図的ではなく吸引される場合、ピペットシリンダが汚染される可能性を低減するよう重要である。
【0019】
つば部36の内側表面は、望ましくはテイパされているか、あるいは僅かに裁頭円錐であるが、本発明に従った円筒形でもあり得る。望ましくは、テイパは0°乃至10°である。いずれにしても、つば部36の主要部を通る水平方向断面は、望ましくは円形である。
【0020】
バレル38の上方部39は、ピペットチップ14の密封範囲である。円周密封リング54は望ましくは、密封範囲におけるバレル38の上方部39の内側表面から内方向に延在する。あるいは、密封は、密封リング54を有さずに達成され得る。バレル38における密封範囲39は、望ましくは裁頭円錐であるが、本発明に従って、実質的に円筒形であり得る。望ましいテイパは、1/2°乃至4°である。望ましくは、密封リング54は、バレル38の表面から内方向に0.003インチ延在し、その長手方向厚さは0.10インチである。
【0021】
ピペットチップ14の円周シェルフ40は、つば部36の下方部をバレル38の上方部39に対して接続する。シェルフ40は、図示される通り、角度を有し、チップ14の内部円周の周囲に継続的である。しかしながら、シェルフ40は、角度を有する必要はなく、例えば水平であってもよい。シェルフ40は、ピペットチップ14のつば部36又はロッキング領域をバレル38の上方部におけるピペットチップ14の密封範囲39から分離する役割を有する。図11において最もよく示される通り、つば部36は、取付けシャフト12がピペットチップ14へと完全に挿入される際に円形から変形される。シェルフ40は、バレル38の上方部における密封範囲をこの変形から隔離する役割を有し、それによって、取付けシャフト12の密封部32に対する密封リング54の効果的な密封を促進する。また該シェルフは、チップを取付けシャフト上に正確に位置決めする役割を有する。複数のチャネル装置(channel devices)を有して、チップシェルフは、チップからチップへの同一の垂直方向取付け距離を保証する。これは、ピペット中の正確且つ一貫したチップ位置を可能にする。
【0022】
本発明に従って製造されるピペットチップ14は典型的に、技術的に既知である通り、通常は多種の添加剤を有するかあるいは有さないポリエチレン又はポリプロピレンである、成型プラスチックを有して作られる、と考えられる。この設計は、射出成型行程を支援するロッキングリング48及び密封リング54を具現化する。それらは、この工程に対して引きリング(puller ring)を使用する代りにモールドのコアにおいて成型されたチップを維持する方途としての役割を有する。
【0023】
図2,3,4及び6を特に参照すると、取付けシャフト14の密封部32は、ピペットチップバレル38の上方部分におけるピペットチップの密封範囲に対応する量をテイパされる。ピペットチップバレル38への並びに該バレルからの液体の正確な吸引及びディスペンスを達成するよう、気密密封を与えるために、取付けシャフト12の密封部32の外側表面は、ピペットチップ14における密封リング54との締まり嵌めを形成する。取付けシャフトのロッキング部30は望ましくは、ストップ部材34のすぐ上方並びに近接して位置決めされる、中心の円筒形安定部56を有する。ピペットチップ14が取付けシャフト12において取り付けられる際、取付けシャフト12上の中心円筒形安定部56は、チップ14を安定した真っ直ぐの向きにおいて支持するよう支援する。本発明の利点の1つは、接合ロッキング機構がチップ14を一貫して真っ直ぐな向きにしっかりと取り付け得る、ことである。これは、特定の用途において特に所望され得るより長いピペットチップ14の使用を可能にする。取付けシャフト12の直径は、円周シェルフ40における適合ピペットチップ14の直径の低減と比例して、中心安定部56と密封部32の上方部分との間におけるストップ部材34において低減する。上述された通り、この低減は望ましくは、約0.004乃至0.040インチの範囲である。円筒形安定部56及びストップ部材34が取付けシャフトの円周の周囲に継続的であることは、かかる構成要素の目的が取付けシャフト12におけるピペットチップ14のしっかりとした安定的なロッキング係合を与えることであり、密封を与えることではないため、必須ではない、ということが留意されるべきである。円筒形安定部56の上方において、取付けシャフト12の直径は、ピペットチップ14のつば部36と取付けシャフト12との間において間隔を与えるよう、僅かに低減し得るか、あるいは低減し得ない。取付けシャフト12のロッキング部30の上部は望ましくは、取付けシャフト12の周囲に等間隔に離間された2つ又はそれより多くのロッキングローブ50、並びにロッキングローブ50間に広がる対応する凹状範囲58を有する。ローブ50は、比較的緩やかな勾配である斜めの傾斜60を有する。取付けシャフト12の垂直軸に対して傾く傾斜60の望ましい勾配は、10°乃至20°である。ローブ50は、ローブ50がキャッチ表面62を形成するよう突然に内方向に曲がるまで、ロッキング部30の上部に向かって傾斜60に沿って外方向に延在する。各ローブ50のピークにおける傾斜表面60とキャッチ表面62との間における交差は、望ましくは僅かに曲線的にされる。そのピークにおいて、ローブ50は望ましくは、円筒形安定部56の外側表面を越えて外方向に延在するが、正確な望ましい寸法は、対応する適合ピペットチップ14におけるつば部36のテイパ量、及びチップの壁の厚さに依存する
取付けシャフト12は、望ましくは切削スチールから作られるか、あるいはPEEK等である耐薬品性プラスチックから機械加工又は成型され、特定の寸法は、適合ピペットチップ14の寸法に対応するよう選択される。例えば、ストップ部材34と取付けシャフト12のローブ50のキャッチ表面62との間における距離は、ピペットチップ14のつば部上のロッキングリング48と円周シェルフ40との間における距離に対応するよう選択される。
【0024】
図7−9を参照すると、取付けシャフト12がチップ14へと押される際、第1の接触点は、取付けシャフト12上の密封部32の先端エッジがピペットチップ14上の円周シェルフ40を通って入り、密封リング54に接触するところ、である。取付けシャフト12がチップ14へと更に挿入される際、取付けシャフト12の密封部32に対する密封リング54の干渉力(sealing ring 54 interference force)は増大する。同時に、ローブ50の傾斜範囲60は、チップつば部36の上方部分に係合し始める。あるいは、上述された通り、密封リング54の初期係合は、挿入力を減少させるよう、チップつば部36の上方部分の係合に対してずらされ得る。取付けシャフト12がチップ14へと更に挿入される際、ローブ50の傾斜60は、チップ14のつば部36上のロッキングリング48に対して押され、つば部36を緩やかに屈曲させ、円形から変形させる。取付けシャフト12上の凹状領域58は、ローブ50間において発生するつば部30の整列に対して十分な間隔を与える。つば部36を伸張するのではなく、ローブ50がつば部36を屈曲させることが意図される。
【0025】
図10及び11を参照すると、取付けシャフト12がピペットチップつば部36へと完全に挿入される際、取付けシャフト上のストップ部材34は、ピペットチップ14上の円周シェルフ40に係合し、故にシャフト12のチップ14への更なる運動を防ぐ。係合の時点において、チップつば部36の内側表面上のロッキングリング48は、取付けシャフト12上のローブ50にわたっておおよそ同時にスナップ留めする(snaps over)。故に、ピペットチップ14は、取付けシャフト12上へと適所にしっかりとロックされ、一方では取付けシャフト12上のストップ部材34とピペットチップ14上の円周シェルフ40との間、他方では取付けシャフト12上のローブ50のキャッチ表面62とチップつば部36のロッキングリング48の下面との間において、正の(positive)係合がなされる。図11は、ローブ50にわたって取付けシャフト12上へとロックされるチップつば部36を見下ろす状態の断面図である。つば部36は、屈曲され、真円から変形される。点破線70は、つば部36の外側表面が取付けシャフト12において取り付けられる前に望ましい円形状態において開放する、ことを示す。点破線72は、取付けシャフト12上のローブ50にわたって取り付けられる前に望ましい円形状態におけるつば部36のロッキングリング48の内側表面の位置を示す。取り付けられたつば部36が屈曲され、円形から変形される一方、つば部36の下方の円周シェルフ40は、構造上の完全性(structrual integrity)により円形のまま残る。
【0026】
チップ14を取り付けるようつば部36を伸張するのではなくチップつば部36を屈曲及び変形することによって、所望される挿入力は、チップつば部の伸張及びきつい締まり嵌めを必要とする他の設計と比較して、比較的小さい。取付けシャフト12がチップ14へと挿入される際、チップ上の密封リング54との干渉の耐性が僅かに増大し、傾斜ローブ50の直径が増大するため、ユーザは、完全な係合に近付いていることに気付く。完全係合の明確なフィードバックは、ストップ部材34が円周シェルフ40に係合し且つロッキングリング48がローブ50にわたってスナップ留めする際に、発生する。ロッキング係合は、堅固であり、例えば接触手順(touching−off procedures)中に横力がチップに対して適用される際、チップが意図されずに取り外されることを低減する。
【0027】
加えて、システムは、特にはハンドヘルドピペットに対して有利である、低い排出力を可能にする。上述された通り、取り付けられたつば部36においてエネルギを蓄積するつば部36の真円ではない変形は、使用後にチップ14を外すよう有用である。従来の排出又は回収機構は、チップ14を排出するために、つば部36の上部において押し、且つローブ50にわたってロッキングリング48を押すよう、使用され得る。図12は、チップ14を排出するようつば部36の上部上を押すために下方向(矢印22a)に動くストリッパーチューブ24を示す。ロッキングリング48がローブ50のピークを通過する(clear)際、変形されたつば部36において蓄積されるエネルギは、解放され、取付けシャフト12からのチップ14の効果的な排出を容易にする。
【0028】
本発明の望ましい一実施例は、図面に関連して説明されてきたが、本発明の多種の態様及び特徴は、他の形状において実施され得る。例えば、取付けシャフト12が2つより多くのローブを有する、ことは必須ではない。更には、前述された通り、本発明の望ましい実施例は、取付けシャフトがピペットチップへと挿入される際に触知性フィードバック、並びに低い挿入及び排出力を与える一方、本発明は、これらの特性が重要なものとされ得ない自動液体処理システムにおいても大変有用である。
【0029】
また望ましくはないが、ピペットチップ上の密封範囲をシェルフの下方からシェルフの上方へと動かすこと、及び、ストップの下方ではなく上方において密封に適応する(accommodates sealing)よう取付けシャフトを構成すること、が所望され得る。これは望ましい設計ではないが、かかる設計は望ましくは、本発明に従って、上述されたロッキングローブを備える取付けシャフトを有する。しかしながら、チップ上の密封範囲は依然として、変形から十分に隔離されなければならない。これは通常、密封範囲が、シェルフに近接し且つ取付けシャフトローブによって変形されるつば部の上方部から比較的離れて位置決めされる、ことを必要とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペットシステムであって、
使い捨てピペットチップと、ピペット取付けシャフトとを有し、
前記使い捨てピペットチップは、下方開口を備えるバレルと、ピペットチップ取付けシャフトを受容するよう上方開口を有するつば部と、円周シェルフとを有し、
前記ピペット取付けシャフトは、下方密封部と、上方ロッキング部とを有し、
前記下方開口を介して液体は、バレルへと吸引され且つバレルからディスペンスされ、該バレルは、該バレルの上方端において密封範囲を有し、
前記つば部の内側表面は、円周ロッキングリングを有し、該つば部の下方端は、前記バレルの前記上方端における内径より大きい内径を有し、
前記円周シェルフは、前記つば部の前記下方端を前記バレルの前記上方端に対して接続し、
前記取付けシャフトの前記ロッキング部は、前記取付けシャフトがピペットチップの前記つば部へと完全に挿入される際に前記ピペットチップの前記シェルフに係合するストップと、前記つば部の前記内側表面上の前記ロッキングリングに係合するよう前記取付けシャフトにおける前記ストップの上方に位置決めされる2つ又はそれより多くの外方向に延在するローブと、該ローブ間における解放部と、を有し、該解放部によって前記つば部は、前記ピペットチップが前記ストップ及び前記ローブにわたって前記取付けシャフト上でロックされる際に、前記解放部においては内方向に、前記ローブにおいては外方向に変形する、
ピペットシステム。
【請求項2】
前記ピペットチップバレルの前記内側表面は、前記円周シェルフの下方において円周密封リングを有し、
前記取付けシャフトにおける前記下方密封部は、前記ロッキング部の下方に位置決めされ、前記取付けシャフトが前記ピペットチップへと完全に挿入される際に前記円周密封リングに係合する、
請求項1記載のピペットシステム。
【請求項3】
ハンドヘルドの空気移動ピペットシステムである、
請求項1記載のピペットシステム。
【請求項4】
前記ピペットチップ上の前記円周シェルフは、前記ピペットチップの内側円周表面の周りに連続的に延在する、
請求項1記載のピペットシステム。
【請求項5】
前記ピペットチップ上の前記ロッキングリングは、前記ピペットチップの前記つば部の上方開口のリムの僅かに下方において位置決めされる、
請求項1記載のピペットシステム。
【請求項6】
前記ピペットチップバレルの密封範囲は、裁頭円錐形である、
請求項1記載のピペットシステム。
【請求項7】
前記取付けシャフトにおける前記下方密封部は、裁頭円錐形である、
請求項6記載のピペットシステム。
【請求項8】
各ローブは、前記取付けシャフトが前記ピペットチップへと挿入される際に前記ピペットチップの変形を促進する斜めにされた傾斜部を有する、
請求項1記載のピペットシステム。
【請求項9】
前記取付けシャフトは、少なくとも3つのローブを有する、
請求項1記載のピペットシステム。
【請求項10】
前記ピペットチップに対する前記取付けシャフトのロッキング係合は、空気抜きを有する、
請求項1記載のピペットシステム。
【請求項11】
前記ピペットチップ上の前記円周シェルフは、前記ピペットチップの穴直径を約0.004乃至0.040インチ低減する、
請求項1記載のピペットシステム。
【請求項12】
前記取付けシャフトの前記ロッキング部と前記ピペットチップとの間における特定の寸法関係は、不適切に寸法取りをされたピペットチップが取付けシャフトに対して適切に取り付けられないよう、定められる、
請求項1記載ピペットシステム。
【請求項13】
前記取付けシャフトの前記ロッキング部は、実質的に円筒形である密封部を有し、前記ピペットチップの前記シェルフの下方における前記ピペットチップバレルの対応する密封範囲も、実質的に円筒形である、
請求項1記載のピペットシステム。
【請求項14】
前記取付けシャフト上の前記ストップは、前記ロッキング部と前記下方密封部との間において角度を有するステップである、
請求項1記載のピペットシステム。
【請求項15】
前記取付けシャフト上の前記ストップは、前記取付けシャフトが前記ピペットチップへと完全に挿入される際、前記ピペットチップの前記円周シェルフの上方において前記ピペットチップつば部を係合させる前記取付けシャフト上の円筒形安定部のすぐ下方にあり且つ近接する、
請求項1記載のピペットシステム。
【請求項16】
ハンドヘルドピペットである、
請求項1記載のピペットシステム。
【請求項17】
自動液体移送システムの一部である、
請求項1記載のピペットシステム。
【請求項18】
各々が前記ピペット取付けシャフトに対して請求項1に記載される制限に従った複数のピペット取付けシャフトを有する、
請求項1記載のピペットシステム。
【請求項19】
ピペットシステムであって、
使い捨てピペットチップと、ピペット取付けシャフトとを有し、
前記使い捨てピペットチップは、下方開口を備えるバレルと、ピペットチップ取付けシャフトの下方端を受容するよう上方開口を有するつば部と、円周シェルフとを有し、
前記ピペット取付けシャフトは、上方ロッキング部を有し、
前記下方開口を介して液体は、バレルへと吸引され且つバレルからディスペンスされ、
前記つば部は、下方端が前記バレルの上方端の内径より大きい内径を有し、
前記円周シェルフは、前記つば部の前記下方端を前記バレルの前記上方端に対して接続し、
前記取付けシャフトの前記ロッキング部は、前記取付けシャフトがピペットチップの前記つば部へと完全に挿入される際に前記ピペットチップの前記シェルフに係合するストップと、前記つば部の前記内側表面に係合するよう前記取付けシャフト上の前記ストップの上方に位置決めされる2つ又はそれより多くの外方向に延在するローブと、該ローブ間における解放部とを有し、該解放部によって前記つば部は、前記ピペットチップが前記ストップ及び前記ローブにわたって前記取付けシャフト上でロックされる際に、前記解放部においては内方向に、前記ローブにおいては外方向に変形する、
ピペットシステム。
【請求項20】
使い捨てピペットチップであって、
下方開口を有するバレルと、ピペット取付けシャフトを受容するよう開口を有するつば部と、円周シェルフとを有し、
前記下方開口を介して液体は、前記バレルへと吸引され且つ前記バレルからディスペンスされ、前記ピペットチップバレルの内側表面は、その上方部において、前記ピペットチップの前記内側表面を取り囲む密封範囲を有し、
前記つば部の下方端は、前記バレルの上方端の内径より大きい内径を有し、
前記円周シェルフは、前記つば部の前記下方端を前記バレルの上方端に対して接続し、前記ピペットチップバレルの前記密封範囲は、前記円周シェルフの下方に位置決めされる、
使い捨てピペットチップ。
【請求項21】
前記密封範囲は、円周密封リングを有する、
請求項20記載の使い捨てピペットチップ。
【請求項22】
前記ピペットチップの前記円周シェルフの前記内側表面は、前記つば部から前記バレルまで延在する際に下向きの角度において延在する、
請求項20記載の使い捨てピペットチップ。
【請求項23】
前記密封リングが位置決めされる前記ピペットチップバレルの前記密封範囲は、裁頭円錐形である、
請求項21記載の使い捨てピペットチップ。
【請求項24】
前記密封リングが位置決めされる前記ピペットチップバレルの前記密封範囲は、円筒形である、
請求項21記載の使い捨てピペットチップ。
【請求項25】
前記円周シェルフは、前記ピペットチップの内部穴の直径を約0.04乃至0.040インチ低減する、
請求項20記載の使い捨てピペットチップ。
【請求項26】
前記つば部の前記内側表面は、前記つば部の前記上方開口のリムの僅かに下方において円周ロッキングリングを有する、
請求項20記載の使い捨てピペットチップ。
【請求項27】
前記ロッキングリングは、空気抜きを有する、
請求項26記載の使い捨てピペットチップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2010−507479(P2010−507479A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−534743(P2009−534743)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【国際出願番号】PCT/US2007/080064
【国際公開番号】WO2008/051683
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(509116990)ヴィアフロ コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】