説明

ロック装置を備えた取付具

板状の取付具部品(1a、1b)から成る、部材を結合するための取付具であって、これら取付具部品が結合すべき部材に固定ボルトを用いて締め付けられており、その際、 各取付具部品(1a、1b)が平らであり、かつ、少なくとも側面のスリット状の1つの凹部(2)を有し、 前記スリット状凹部(2)と向かい合わせに第1の孔(3.1)が設けられており、この孔を貫通して、組立状態で第1の引張ボルト(4)が、ボルト頭部が前もって定められた程度に張り出すようにねじ込まれており、その際、 前記スリット状凹部(2)が前もって定められた程度にアンダーカットされており、その結果、組立状態で一方の取付具部品(1a)の凹部(2)がもう一方の取付具部品(1b)の張り出したボルト頭部を裏から把持し、2つの板状の取付具部品(1a、1b)が平らに押し合わされており、 前記スリット状凹部(2)の末端にて前記第1の孔(3.1)の方向に第2の孔(3.2)が設けられており、この孔を貫通して第2の引張ボルト(5)が頭部を埋め込み状にねじ込まれており、かつ、少なくとも1つのロック装置(6)が次の特徴を有し、 取付具部品(1a)の外側端部(7)が楔形に形成されており、楔形フランク(8)の後端に凹部(9)が設けられており、かつ、取付具部品(1b)に線材形のばね部材(10)が取り付けられており、その際、前記ばね部材(10)の少なくとも部分がロック部(11)として形成されており、取付具を組み合わせる際に、前記ロック部(11)が前記凹部(9)にはまり込むまで前記楔形フランク(8)が前記ロック部(11)をばね部材(10)のばねの力に抗して押すように前記ロック部が前記楔形フランク(8)に対応している、取付具である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二部材を結合するための取付具に関する。
【背景技術】
【0002】
既に、このような結合のための多くの取付具が公知である。例えば西独国特許出願公告第1779745号明細書(特許文献1)には、比較的深い凹部に埋め込まれた雁首状に曲げられたスプリングストリップ(Federleiste)を備えた取付具が記載されている。このスプリングストリップの雁首状に曲げられた端部には、取付ボルトを受け入れるための細長いスリットがある。この取付ボルトは結合すべき対向ピースにねじ込まれており、その際、その細長いスリットがこの取付ボルトの頭を結合状態で裏から把持する。しかしながら、このような配置は小さな負荷に対してしか適しておらず、この場合、剛性の雁首状の曲げも負荷下にその曲げが広げられる傾向にある。雁首状に曲げられた端部を用いた結合の更なる欠点は比較的深い取付け深さであり、その結果、その必要となるフライス加工によって板材の材料断面または角材の長い側面の材料断面が弱くなる。このような取付具構造は通常、差込んで一つにすることによってその結合が行なわれ、そして反対方向に引張ることでこの結合が解除されるように設計されている。この結合の望ましくない解除は別個のロック装置によって防止されるのが一般的である。
【0003】
部材を結合するための更なる取付具は、独国特許出願公開第4421398号明細書(特許文献2)に記載されている。この取付具は、それぞれが取付具の片側として部材に結合される少なくとも2つの棒状もしくは板状の取付具要素を有する。これら取付具の片側は本質的に一つの矩形の断面を有しかつ一様の材料強度を有し、その際、この取付具要素の端部は雁首状に曲げられた結合用舌片として形成されており、この舌片は固定用ベースとして使用される取付具要素の残り部分に対して平行にオフセットされている。この取付具は西独国特許出願公告第1779749号明細書の取付具よりかなり安定しているが、しかしながら、この取付具も望ましくない解除に対して別個にロックされなければならない。
【特許文献1】西独国特許出願公告第1779745号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第4421398号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って本発明の課題は、極めて簡単かつ安価に製造可能でありかつ同時に著しくわずかな取付け深さしか必要としない、部材を結合するための取付具を提供することである。さらにこの取付具は著しく安定であるべきであり、また意図しない解除に対して安全でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、特許請求項1に従った取付具によって解決される。部材を結合するための取付具は、特に金属から成る板状の取付具部品で構成される。これら取付具部品のそれぞれは部材の結合すべき箇所に固定ボルトを用いて締め付けられる。これら取付具部品は平らであり、かつ、少なくとも一つの側面にスリット状の凹部を有する。このスリット状の凹部と向かい合わせに第1の孔が設けられており、この孔を貫通して、組立状態で第1の引張ボルトが、ボルト頭部が前もって定められた程度に張り出すようにねじ込まれている。そのスリット状の凹部は前もって定められた程度にアンダーカットされており、その結果、組立状態では、一方の取付具部品の凹部が他方の取付具部品の張り出したボルト頭部の裏側に食い込み、2つの板状の取付具部品が互いに、平らに押し合わされている。スリット状の凹部からはずれた位置で、第1の孔の方向に第2の孔が設けられており、この孔を貫通して第2の引張ボルトが頭部を埋め込み状にねじ込まれており、即ちこのボルトは取付具部品の平らであることが妨げられない程度に埋め込まれている。さらにこの取付具は、次の特徴をもつ少なくとも1つのロック装置を有する。すなわち、この取付具は、外側端部にて取付具部品が楔形に形成されており、その際、少なくとも反対の位置にある外側面の一方が楔形に形成されていなければならない。しかしながら、好ましくは部品端部の両側面が前向き斜めに、即ち互いに接近しながら延びている。その斜めに延びる側面、以下、楔形フランクと称する、には、その後端に、即ち部品中央に向かって、ロック用の凹部がある。対応する取付具部品に線材状のばね部材が取り付けられている。少なくともそのばね部材の1部分がロック部として形成されており、次にその機能について以下のとおり説明する。
【0006】
ロック部は、ばね部材の1部分、例えば端部である。ばね部材は、使用されている状態でロック部がロック用の凹部に当たるように形成されておりかつ固定されている。取付具部品を互いに組み合わせるようにずらすと、進んでいく楔形フランクは、前記ロック部をばね部材のばねの力に抗して押し、その場合、前記ロック部は楔形フランク上を、楔形フランクの端のロック用の凹部に達し、かつ前記ロック部がロック用の凹部にかちっと掛かるまで滑っていく。当業者には、ロック部を有するばね部材の形状に関して様々な可能性があることは明らかである。この技術的な教示によれば、ばね部材が自由に可動であること、即ちばねの機能があらゆる運転条件下で保証されていなければならないことのみが確実でなければならない。
【発明の効果】
【0007】
この取付具は次の一連の利点を有する。
主な利点は、特別に平らな構造である、即ち、結合すべき部材の断面を弱めることになる深いフライス加工が結合箇所に必要ないことである。更なる利点は、取付具のその大きさに関しての多様性である。種々の厚さの金属板が半製品として利用され、かつこれに適合する標準のボルトが利用される。この取付具は著しく簡単な構造であり、かつ適切に計算することができる、即ち、取付具の保持力を計算するのに、木材またはプラスチックにおける建築技術的に標準化されたボルトの保持力ないしは引抜き力のみを見積もればよい。このことによって建築技術上の認可を短縮することもできるし、この認可を完全に省略することもできる。ボルトを他の固定エレメント、例えば大きな力を受けなければならない場合には通しボルト、で置換してもよい。ロック装置によって取付具の意図しない解除が確実に防止され、それというのも、ばね部材が破壊、即ち塑性的に曲げが広げられることによってしか除去され得ないからである。ばね部材が取付具自体に取り付けられており、かつ組み合わされた際にロックが自動的に行なわれるため、高い機能信頼性が保証されている。
【0008】
請求項2によれば、ロック用の凹部がアンダーカットされている。このアンダーカットによって嵌合による結合が生じ、その結果、ばねの力に抗してロック部が取り外されることが阻止される。
【0009】
請求項3によれば、ばね部材の特に簡単な、かつ機能的に著しく安全な実施が開示されており、その場合、前記ばね部材がU字形に曲げられたばね用鋼線であり、その両端は上向き直角に折り曲げられている。ばね部材は、取付具部品の下面にあって凹部に取り付けられており、その際、その折り曲げられた両端は取付具部品の側面のスリットに入れられており、かつ前記取付具部品の表面上に、対応する取付具部品の対向する2つの楔形フランクと係合(Wirkverbindung)できるように突出している。
【0010】
請求項4によれば、線材状のばね部材の断面は円形または矩形であり、その結果、前記ばね部材が市販のばね用鋼線から製造可能である。
【0011】
請求項5によれば、ロック装置には、ばね部材を取り外すための差込用凹部(Eingriffsausnehmung)があり、その結果、結合状態でばね部材を除去することができるが、その際、前記ばね部材は塑性変形されるかまたは破壊される。
【0012】
請求項6によれば、ロック装置は相互に2つの取付具部品に備えられており、このことによって不意の解除に対する結合の安定性が増大する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に本発明を図面と関連した実施例につき詳細に説明する。
図1a及び図1bは、開いた位置および閉じた位置での取付具を示す説明図。
図2は、取付具の片側を示す説明図。
図3は、ロック装置のばね部材を示す説明図。
【0014】
図1a、bは、2枚の板状で矩形の取付具部品1a、1bから成る取付具を示す。これら取付具部品は平らであり、その幅が狭くなる前面に、えん尾形の傾斜切り込みを有するスリット状の凹部2を有する。皿頭をもつ引張ボルト4が孔3を通して部材(示されていない)に、前記皿頭の側面が前記凹部のえん尾形のフランクに接するまで締め込まれており、その際、皿頭の傾斜角度はフランクの傾斜角度と対応している。このような据付けによって、これら2つの取付具部品が押し合わされることが同時に保証される。前記取付具の締付け力を高めるために第2の引張ボルト5が孔4に備えられている。この引張ボルトの頭は、これら2つの取付具部品の据付けの際の妨げが回避されるようにはまり込んでいる。
【0015】
次にロック装置の構造および機能は、以下の通りに説明される。
外側端部にて取付具部品1aは二重楔形に形成されている。斜めに延びる側面、以下、楔形フランク8と称する、にはその後端に、即ち取付具の中央に向かって、各1つのロック用の凹部9を有する。対応する取付具部品1bにばね部材10が取り付けられており、その際、前記ばね部材はU字形に曲げられたばね用鋼線であり、その両端は上向き直角に折り曲げられている。ばね部材10は取付具部品の下面で凹部13に、前記ばね部材の可動性が妨げられない程度に取り付けられている。その折り曲げられた両端11は、取付具部品の側面のスリット14に入れられ、かつ前記取付具部品の表面上に、対応する取付具部品の対向する2つの楔形フランク8と係合できるように突出している。ロック用の凹部9におけるロック部11の特に確実な保持を保証するために、ロック用の凹部9にはアンダーカット12が設けられている。これは、ばね部材10が容易に抜き出され得ることを防止する。ばね部材10は、工具、例えばドライバまたは差込用凹部15に差し込むことができる鉤を用いた場合にのみ除去することができる。しかしながら、そのためには前記ばね部材の曲げを完全に広げる必要がある。
【0016】
図2では、ばね部材10の取付がもっとよく見えるように、取付具の下の片側のみが示されている。
【0017】
図3は、両端11が折り曲げられているばね部材10を示す。
【0018】
当業者には、開示された技術的な教示に従って本発明を、例えば、スリット状凹部に適合させて選択されたボルト頭部と結合したそのスリット状凹部2の他の形状によって、変更することもできることは明らかである。さらに2つ以上の凹部2をもつ取付具部品を使用してもよく、その場合、ロック装置6の数は建築技術的な要求に従って選択される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1a】開いた位置および閉じた位置での本発明の取付具を示す説明図である。
【図1b】開いた位置および閉じた位置での本発明の取付具を示す説明図である。
【図2】本発明の取付具の片側を示す説明図である。
【図3】本発明におけるロック装置のばね部材を示す説明図である。
【符号の説明】
【0020】
1 取付具
1a、1b 取付具部品
2 凹部
3 孔
4、5 引張ボルト
6 ロック装置
7 取付具部品(1a)の外側端部
8 楔形フランク
9 凹部
10 ばね部材
11 ロック部
12 アンダーカット
13 凹部
14 スリット
15 差込用凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の取付具部品(1a、1b)から成る、部材を結合するための取付具であって、これら取付具部品が結合すべき部材に固定ボルトを用いて締め付けられるものであり、その際、
各取付具部品(1a、1b)が平らであり、かつ少なくとも1つの側面にスリット状の凹部(2)を有し、
前記スリット状の凹部(2)と向かい合わせに第1の孔(3.1)が設けられており、この孔を貫通して、組立状態で第1の引張ボルト(4)が、ボルト頭部が前もって定められた程度に張り出すようにねじ込まれており、その際、
前記スリット状の凹部(2)が前もって定められた程度にアンダーカットされており、その結果、組立状態では、一方の取付具部品(1a)の凹部(2)が他方の取付具部品(1b)の張り出したボルト頭部の裏側に食い込み、2つの板状の取付具部品(1a、1b)が互いに平らに押し合わされており、
前記スリット状の凹部(2)からはずれた位置で、前記第1の孔(3.1)の方向に第2の孔(3.2)が設けられており、この孔を貫通して第2の引張ボルト(5)が頭部を埋め込み状にねじ込まれており、かつ、
少なくとも1つのロック装置(6)が次の特徴を有し、すなわち、
一方の取付具部品(1a)の外側端部(7)が楔形に形成されており、
楔形フランク(8)の後端に凹部(9)が設けられており、かつ、他方の取付具部品(1b)に線材形のばね部材(10)が取り付けられており、その際、少なくとも前記ばね部材(10)の1部分がロック部(11)として形成されており、取付具を組み合わせる際に、前記ロック部(11)が前記凹部(9)にはまり込むまで前記楔形フランク(8)が前記ロック部(11)をばね部材(10)のばねの力に抗して押すように、前記ロック部が前記楔形フランク(8)に関係づけられている、取付具。
【請求項2】
ばねの力に抗しての前記ロック部(11)の取り外しが阻止されるように、前記凹部(9)がアンダーカット(12)を有することを特徴とする、請求項1に記載の取付具。
【請求項3】
前記ばね部材(10)がU字形に曲げられたばね用鋼線であり、その両端が上向き直角に折り曲げられており、その際、前記ばね部材が前記取付具部品(1b)の下面にあって凹部(13)に取り付けられており、前記折り曲げられた両端が前記取付具部品(1b)の側面のスリット(14)に入れられており、かつ前記取付具部品(1b)の表面上で、前記取付具部品(1a)の対向する2つの前記楔形フランク(8)と係合できるように突出していることを特徴とする、請求項1または2に記載の取付具。
【請求項4】
線材状の前記ばね部材(10)の断面が円形または矩形であることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の取付具。
【請求項5】
前記ロック装置は、結合状態で前記ばね部材(10)を取り外すための差込用凹部(15)を有し、その際、前記ばね部材(10)が塑性変形されるかまたは破壊されることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の取付具。
【請求項6】
前記ロック装置(6)が相互に前記2つの取付具部品(1a、1b)に備えられていることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の取付具。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−518438(P2006−518438A)
【公表日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501501(P2006−501501)
【出願日】平成16年2月13日(2004.2.13)
【国際出願番号】PCT/DE2004/000275
【国際公開番号】WO2004/072494
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(503381981)
【Fターム(参考)】