説明

ロック装置

【課題】操作感を向上する。
【解決手段】ロック装置20は、各ラッチ24に設けられた軸部32と、作動体22に設けられ、作動体22の動作に応じて該軸部32と当接したもとでラッチ24を解除方向に移動させる第1ガイド部28と、作動体22に第1ガイド部28に対向するように設けられ、該軸部32と当接したもとで対応のラッチ24の解除方向への移動に連動して別のラッチ24を解除方向に移動させる第2ガイド部30とを備えている。第2ガイド部30に当接した軸部32と第1ガイド部28との間に、ラッチ24の係合方向への移動を許容し得る揺動隙が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車は、インストルメントパネルに設けられたグローブボックスや運転席と助手席との間に設けられたコンソールボックスなどの収納ボックスを備えている。これらの収納ボックスは、該ボックス自体や該ボックスを塞ぐ蓋等を開放規制するロック装置を備えており、ロック装置によって自動車の走行時の蓋等のがたつきを防止したり、蓋等の意図しない開放を防止している。
【0003】
特許文献1に開示のロック装置は、操作ハンドルを揺動することで回転する円筒形の筒部と、この筒部に一端部が挿入されると共に他端部がロック孔に挿脱されるラッチとを備え、筒部に開設されたカム溝のカム面にラッチの他端部に設けられたピンが係合するようになっている。特許文献1のロック装置は、操作ハンドルの操作による筒部の回転によってカム溝のカム面にピンが案内されることで、ラッチがロック孔から後退するように移動されてロックが解除され、グローブボックスの開放が可能になる。またグローブボックスを閉じる際には、ラッチをロック孔の開口縁に押し当てることで、筒部にラッチの後退方向に延在するように形成された逃げ溝においてピンの移動が許容されるから、ラッチを後退移動させるができる。すなわち、操作ハンドルを操作することなく、グローブボックスを閉じることが可能になっている。特許文献1のロック装置は、左右一対のラッチのピンが対応の逃げ溝において後退移動が可能であるので、左右のラッチを互いに独立して後退移動させることができる。しかしながら、前記ロック装置の構成であると、左右のラッチを互いに独立して後退移動させることができるが故に、寸法精度や経時変化による位置ずれ等に起因して、一方のラッチがロック孔に係合しても、他方のラッチがロック孔に係合しない不都合が生じることがある。
【0004】
そこで、特許文献2に開示のロック装置のように、一方のラッチのロック孔から後退する移動に連動して、他方のラッチも対応のロック孔から後退移動する構成が提案されている。特許文献2のロック装置は、操作子に「ハ」の字状に設けられた左右のカム溝に、左右のラッチの一端部に夫々設けられたピンが挿入されており、操作子を操作することで、カム溝における外側のカム面にピンが案内されてラッチが後退移動するようになっている。また蓋を閉じる際には、ラッチが押されることで、カム溝において外側のカム面と平行に設けられた内側のカム面にピンが当接して操作子を移動させることで、左右両側のラッチが連動して後退移動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−13647号公報
【特許文献2】特開2006−76344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2のロック装置は、蓋を閉じる際にラッチを後退移動させることで、片方のラッチだけがロック孔に係合することを防止することができる。しかしながら、寸法精度や経時変化による位置ずれ等に起因して、左右両側のラッチがロック孔に同時に当接しないときがあり、この場合に片方のラッチを後退させるだけではなく、操作子や他方のラッチを片方のラッチの押圧に伴って移動させることになる。従って、蓋を閉じる際に負荷が大きくかかって、操作感が悪化することがある。
【0007】
すなわち本発明は、従来の技術に係るロック装置に内在する前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、操作感がよいロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明のロック装置は、
作動体と、該作動体に連係手段を介して夫々連係されると共に、先端が係合孔部に挿入し得るように前進した係合位置および先端が係合孔部から離脱し得るように後退した解除位置の間で移動可能に配設され、係合位置に向けて付勢された一対のラッチとを備えたロック装置であって、
前記連係手段は、
前記作動体または前記ラッチの一方に設けられた軸部と、
前記作動体または前記ラッチの他方に、前記軸部に対応するように設けられ、前記作動体の動作に応じて該軸部と当接したもとでラッチを係合位置から解除位置に向けた解除方向に移動させる第1ガイド部と、
前記作動体または前記ラッチの他方に、対応の軸部を挟んで前記第1ガイド部に対向するように設けられ、該軸部と当接したもとで対応のラッチの解除方向への移動に連動して別のラッチを解除方向に移動させる第2ガイド部とを備え、
前記ラッチの先端が前記係合孔部の開口縁に重なる係脱境界において、前記第2ガイド部に当接した軸部と前記第1ガイド部との間に、該ラッチの解除位置から係合位置へ向けた移動を許容し得る隙間があくように、第2ガイド部が形成されたことを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、ラッチを移動させる際に最も荷重がかかる係脱境界において、一対のラッチを非連動にすることができるので、ラッチを移動させる際の負荷を軽減し、全体として操作感を向上することができる。
【0009】
請求項2に係る発明では、前記第1ガイド部および前記第2ガイド部は、前記軸部の移動ラインと交差するよう形成され、
前記第2ガイド部は、前記解除方向に向かうにつれて前記第1ガイド部から離れるように形成されることを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、例えばラッチが係合孔部に係合するような通常状態において、軸部とガイド部との隙を小さくできるのでガタを少なくできる。
【0010】
請求項3に係る発明では、前記第2ガイド部は、曲線的に延在するよう形成されることを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、ラッチの解除方向の移動に伴って軸部から第2ガイド部に力を伝達する際に伝達ロスを抑えることができる。
【0011】
請求項4に係る発明では、前記一対のラッチは、通常位置と操作位置との間で移動する前記作動体の作動方向と交差する方向に該作動体を挟んで対称な関係で移動するよう構成され、
前記軸部が各ラッチにおける前記作動体に重なる基端側に設けられる一方、前記第1ガイド部および前記第2ガイド部が前記作動体に設けられ、
前記第1ガイド部は、対応の軸部に対して前記ラッチの先端側に位置して、前記作動体の操作位置側から通常位置側に向かうにつれて前記ラッチの先端から離れるように形成され、
前記第2ガイド部は、対応の軸部に対して前記ラッチの基端側に位置して、前記作動体の操作位置側から通常位置側に向かうにつれて前記第1ガイド部との間隔が広がるように形成されたことを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、例えばラッチを係合孔部に係合させた通常状態で、軸部とガイド部との隙を小さくできるのでガタを少なくできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るロック装置によれば、ラッチを移動させる際の負荷を抑えることができるので、操作感を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の好適な実施例に係るロック装置を示す概略平面図であって、ロック状態にある。
【図2】実施例のロック装置を示す概略正面図であって、ロック状態にある。
【図3】実施例のロック装置を示す概略平面図であって、ロック解除状態にある。
【図4】実施例のロック装置を示す概略正面図であって、ロック解除状態にある。
【図5】実施例のガイド部と軸部との関係を示す説明図であって、(a)はロック状態を示し、(b)は係脱境界にある状態を示す。
【図6】実施例のラッチと係合孔部との関係を示す説明図であって、(a)はラッチの先端がスロープに案内される状態を示し、(b)は係脱境界にある状態を示し、(c)はラッチが係合孔部に挿入された状態を示す。
【図7】実施例のロック装置を適用したコンソールボックスを示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係るロック装置につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。なお、実施例では、車両における運転席と助手席との間に設けられるコンソールボックス(図7参照)に本発明に係るロック装置を適用する場合を例示して説明する。そして、特に断りのない場合は、コンソールボックス10の蓋部材14を閉じた状態において、車両における上下前後左右方向を基準として方向を指称する。
【実施例】
【0015】
図7に示すように、コンソールボックス10は、上方へ開放する収納部12aが内部に画成された本体部材(第2部材)12と、この本体部材12の上部にヒンジを介して回動可能に取り付けられて、収納部12aを開閉する蓋部材(第1部材)14とを備えている。本体部材12および蓋部材14は、平面視で前後方向に長い略矩形状に形成され、蓋部材14の後縁部が、本体部材12の後縁部上面に対してヒンジ接続されている。コンソールボックス10は、蓋部材14を本体部材12の上部に倒伏した姿勢で収納部12aが蓋部材14で塞がれ、蓋部材14を本体部材12の後縁部に上方へ起立した姿勢で収納部12aが開放される。また、コンソールボックス10は、蓋部材14の前端部にロック装置20を備えており、ロック装置20によって蓋部材14が開放規制されるようになっている。蓋部材14には、該蓋部材14の上部を構成するアッパ部材15と該蓋部材14の下部を構成するロア部材16との間に設置空間14aが画成され(図2または図4参照)、この設置空間14aにロック装置20が配設されている。
【0016】
図1〜図4に示すように、ロック装置20は、蓋部材14に対して移動可能に配設された作動体22と、蓋部材14に対して移動可能に配設され、連係手段28,30,32を介して作動体22に夫々連係された一対のラッチ24,24とを備えている。作動体22および一対のラッチ24,24は、蓋部材14の設置空間14aに設置されるベース26に夫々スライド移動可能に配設され、ロック装置20はベース26を介して1つのユニットとして取り扱い可能となっている。ロック装置20は、蓋部材14から突出したラッチ24の先端を本体部材12の係合孔部18に係合させて、蓋部材14の本体部材12に対する姿勢変位を規制する一方、作動体22を動作させるロック解除操作によってラッチ24を係合孔部18から退避させることで、蓋部材14の開放を許容するようになっている。そして、ロック装置20は、開放した蓋部材14を閉める際には、ラッチ24の先端が本体部材12における係合孔部18の周辺部に設けられたスロープ17に案内されることでラッチ24が係合孔部18から退避する側に移動され、ラッチ24の先端が係合孔部18の開口縁18aに重なる位置(係脱境界)を乗り越えて係合孔部18に係合される(図6参照)。
【0017】
前記作動体22は、使用者によるロック解除操作前に保持される通常位置(図1参照)と、使用者によるロック解除操作時の操作位置(図3参照)との間で、前後方向へスライド移動可能にベース26に支持されている。作動体22は、略矩形状に形成された板状部材であって、通常位置において前端部(操作端部)が蓋部材14の前縁部中央に開設された操作開口14b(図7参照)を介して外方へ露出している。そして、作動体22は、通常位置において操作端部を使用者が後方へ押すように指先操作することで、操作位置に移動される。なお、作動体22は、後述する付勢体34によって操作位置から通常位置へ向けて弾力的に付勢されている。
【0018】
図1または図3に示すように、前記一対のラッチ24,24は、作動体22の作動方向(実施例では前後方向)に対して交差する方向(実施例では左右方向)へ移動可能にベース26に配設されている。各ラッチ24は、左右方向に長手を延在させた棒状部材である。一対のラッチ24,24は、左右方向に直列に並んで、作動体22(作動体22の作動ライン)を挟んで対称な関係で配置されている。各ラッチ24は、一端(基端)がベース26と該ベース26における左右方向中央部に配置された作動体22との間に位置しており、他端(先端)が蓋部材14の側面に開設されたラッチ開口14c(図7参照)を介して外側方に突出するようになっている。そして、各ラッチ24は、先端が本体部材12の側面に設けられた係合孔部18に挿入し得るように前進した係合位置(図1および2参照)と、先端が係合孔部18から離脱し得るように後退した解除位置(図6(b)参照)との間で、左右方向にスライド移動され、対応の係合孔部18に対して進退動可能になっている。すなわち、一対のラッチ24,24は、作動体22の下側で向かい合う基端が互いに接離するようにスライド移動される。各ラッチ24の先端は、円弧状に面取りされており、係合孔部18の開口縁18aも円弧状に面取りされ(図6(a)参照)、前記係脱境界において互いの面取り部分が重なってラッチ24の先端が開口縁18aに掛かる。ここで、ラッチ24における先端のラッチ面取り曲率R1は、係合孔部18における開口縁面取り曲率R2よりもが大きく設定されている。なお、各ラッチ24および該ラッチ24を作動する連係手段28,30,32の構成の説明において、係合位置から解除位置へ向けた方向を解除方向といい、解除位置から係合位置へ向けた方向を係合方向という。
【0019】
前記ロック装置20では、作動体22およびラッチ24,24に設けられた連係手段28,30,32によって作動体22の移動とラッチ24,24の移動とが移動向きを変えて連係される。ロック装置20には、作動体22とラッチ24とを連動させる連係手段28,30,32の構成および後述する第1規制部の構成が、夫々のラッチ24に対応して設けられており、これらの構成が作動体22の作動ラインを挟んで対称な関係で配置されている。そこで、以下の説明では、一方のラッチ24に対応する連係手段28,30,32や第1規制部の構成だけ基本的に説明し、他方のラッチ24に対応する構成についても同じ符号を付して説明を省略する。
【0020】
図1〜図5に示すように、連係手段は、作動体22に設けられたガイド部28,30と、各ラッチ24の基端側に設けられ、ガイド部28,30に係合可能な軸部32と、ラッチ24を付勢する付勢体34とを備えている。ここで、ガイド部としては、作動体22の動作をラッチ24に伝えるための第1ガイド部28と、一方のラッチ24の解除方向への動作を他方のラッチ24に伝えるための第2ガイド部30とを有している。ここで、連係手段は、係合位置から解除方向へ向かうラッチ24の初期動作に際して両ラッチ24,24を連動させ、ラッチ24が係合境界近傍に至った終期動作に際して両ラッチ24の非連動を許容するよう構成される。第1ガイド部28および第2ガイド部30は、作動体22に上下に貫通するよう形成された案内開口部36のなす壁面で形成されている。また軸部32は、ラッチ24の上面に上方へ突出形成された円柱状部分であって、案内開口部36に下方から挿入されてガイド部28,30に当接可能になっている。
【0021】
前記第1ガイド部28は、作動体22の通常位置から操作位置への移動に際して軸部32に当接したもとで、ラッチ24を係合位置から解除位置へ向けた解除方向に移動させるよう構成されている。より具体的には、第1ガイド部28は、作動体22の操作位置側から通常位置側に向かうにつれてラッチ24の先端側から離れるように形成されて、ラッチ24の移動に伴う軸部32の移動ラインと交差するよう延在している(図1,図2または図5参照)。また、第1ガイド部28は、対応の軸部32に対して係合方向側(ラッチ24の先端側)に延在するよう配置されている。すなわち、作動体22において左右一対の第1ガイド部28,28は、作動体22の通常位置側から操作位置側へ向かうにつれて拡開する略「ハ」の字状になっている。そのため、作動体22を通常位置から作動位置へ移動することによって、両方のラッチ24,24が同期して解除方向へ移動される。
【0022】
前記第2ガイド部30は、対応の軸部32を挟んで第1ガイド部28に対向するように設けられ、軸部32と当接したもとで対応のラッチ24の解除方向への移動に連動して他方のラッチ24を解除方向に移動させるよう構成されている。すなわち、第2ガイド部30は、対応の軸部32に対して解除方向側(ラッチ24の基端側)に延在している(図1、図3または図5参照)。第2ガイド部30は、対応のラッチ24が少なくとも前記係脱境界に位置した際に、該第2ガイド部30に当接した軸部32と第1ガイド部28との間に、ラッチ24の解除位置から係合位置へ向けた係合方向の移動を許容し得る揺動隙(隙間)S1があくように形成されている(図5(b)参照)。より具体的には、第2ガイド部30は、ラッチ24の移動に伴う軸部32の移動ラインに交差するように形成され、第1ガイド部28と同様に作動体22の操作位置側から通常位置側に向かうにつれてラッチ24の先端側から離れるように基本的に延在している。ここで、第2ガイド部30は、第1ガイド部28と平行ではなく、前記解除方向に向かうにつれて第1ガイド部28から離れるように形成されている。更に、第2ガイド部30は、直線的に延在する第1ガイド部28と異なって曲線的に延在するように形成されている。ここで、曲線的な第2ガイド部30とは、接線連続形状であっても曲率連続形状であってもその他の湾曲形状であってもよく、実施例では曲率連続形状で形成されている。
【0023】
前記軸部32は、ラッチ24が係合位置にあるときに、第1ガイド部28および第2ガイド部30の操作位置側に相対的に配置され、作動体22を通常位置から操作位置に操作したときあるいはラッチ24が解除方向に押されたときに、第1ガイド部28および第2ガイド部30の通常位置側に相対的に配置される。第1ガイド部28および第2ガイド部30の間隔は、ラッチ24が係合位置にあるときに軸部32が位置するロック部位(案内開口部36の操作位置側)において、軸部32の外形寸法におおよそ合わせて設定されている。ロック部位の間隔は、軸部32の外形寸法に加えて、軸部32の移動を許容するための僅かな初動隙S2が見込まれる(図5(a)参照)。第1ガイド部28および第2ガイド部30は、ラッチ24の先端が係脱境界にあるときに軸部32が位置する掛かり部位(案内開口部36の中途位置)において、軸部32の外形寸法に対して前記初動隙S2よりも大きい揺動隙S1を加えた間隔になるよう設定されている(S1>S2)。すなわち、第2ガイド部30は、作動体22の操作位置側から通常位置側に向かうにつれて第1ガイド部28との間隔を広げるように形成されている。
【0024】
ここで、前記揺動隙S1は、係脱境界においてラッチ24の係合孔部18に対する挿脱に影響を与えるラッチ面取り曲率R1と係合孔部18の開口縁面取り曲率R2とを勘案して(図6(b)参照)、ラッチ面取り曲率R1と開口縁面取り曲率R2とを足し合わせた寸法よりも揺動隙S1が僅かに小さくなるよう設定されている(R1+R2>S1)。また、ロック部位と掛かり部位との軸部32の移動ラインに沿う方向の間隔Dは、係合孔部18に挿入されたラッチ24を該係合孔部18から離脱させるためのストロークDと同じになる(図6(c)参照)。すなわち、第2ガイド部30は、初動隙S2を設定することでロック部位での第1ガイド部28からの間隔が決まる。また、第2ガイド部30は、ラッチ24のストロークDが決まれば、ロック部位からの掛かり部位(係脱境界)の位置が決まり、軸部32の外形寸法、ラッチ面取り曲率R1および開口縁面取り曲率R2から設定された揺動隙S1によって、掛かり部位において必要な第1ガイド部28との間隔が決まる。そして、ロック位置から掛かり部位までを例えば曲率連続となるように滑らかな曲線で結ぶように、第2ガイド部30を形成すればよい。
【0025】
図5に示すように、前記第1ガイド部28および第2ガイド部30には、通常位置側に逃げ部38が連設されており、逃げ部38によって案内開口部36における通常位置側の閉塞端が形成されている。逃げ部38における第2ガイド部30に連設する部位は、第2ガイド部30よりも軸部32の移動ラインに対して略沿うような浅い角度で交差するように形成されており、ラッチ24の解除方向の移動に伴って移動する軸部32が第2ガイド部30を越えると負荷を受け難くなっている。前記逃げ部38によって形成された案内開口部36の領域は、ロック装置20の組み立てまたは分解時等に軸部32が逃げるスペースとなり、係合孔部18に対するラッチ24の係脱させるという観点からは必須ではなく省略することも可能である。
【0026】
前記付勢体34は、ラッチ24の夫々に対応して設けられ、実施例ではコイルばねが採用されている。付勢体34は、ラッチ24を係合方向(外側方)へ向けて常に弾性付勢するよう構成されている。そして、ロック装置20は、付勢体34によって係合方向へ向けてラッチ24が付勢されるのに軸部32と第1ガイド部28との当接下に連係して、作動体22が操作位置から通常位置に向けて付勢される。すなわち、ロック装置20は、外部から力が加わっていない通常状態において、作動体22が通常位置にあると共に、ラッチ24が係合位置にあるように、付勢体34によって保持されている。
【0027】
前記ロック装置20は、ガイド部28,30と軸部32とからなる連係組の夫々に対応して、部材同士の干渉音の発生を抑える規制部40を備えている(図1〜図4参照)。規制部40は、作動体22の下面に突出形成され、作動体22が通常位置にあると共にラッチ24が係合位置にある通常状態において、軸部32に設けられたゴム製のOリング33と弾力的に当接するようになっている。そして、規制部40は、作動体22の移動に伴い軸部32に対して相対的に接離すると共に、ラッチ24の移動に伴い軸部32に対して相対的に接離するように設けられている。
【0028】
〔実施例の作用〕
次に、実施例に係るロック装置20の作用について説明する。ロック装置20は、前記通常状態において、軸部32が案内開口部36における操作位置側(ロック部位)に位置し、付勢体34の付勢によって当該状態が保たれている。この際、係合孔部18に挿入されたラッチ24の先端が係合孔部18に引っ掛かって、本体部材12に対して蓋部材14が開放規制される。作動体22を通常位置から操作位置へ向けて押してロック解除操作を行うことで、操作位置側に変位する第1ガイド部28に案内されて軸部32が解除方向に移動するのに伴ってラッチ24が係合孔部18から離脱する。これにより、ロック装置20によるロックが解除されて、蓋部材14の開放が許容される。
【0029】
前記蓋部材14を閉じる前には、付勢体58の付勢によって作動体22および両ラッチ24,24が前記通常状態にある(図7参照)。蓋部材14の閉成変位に伴って、蓋部材14の外側方に突出したラッチ24の先端が、係合孔部18の周辺部に設けられたスロープ17に案内されて(図6(a)参照)、ラッチ24と共に解除方向に移動される軸部32に第2ガイド部30が押されることで、作動体22が通常位置から操作位置へ向けて移動される。例えば一方のラッチ24が解除方向に移動しているのに拘わらず他方のラッチ24がまたスロープ17に案内されず移動していない場合に、一方のラッチ24が解除方向に移動すれば第2ガイド部30と軸部32との当接下に作動体22が通常位置から操作位置に移動される。そして、他方のラッチ24の軸部32と対応の第1ガイド部28との間の初動隙S2が小さく設定されているので、他方のラッチ24の軸部32と対応の第1ガイド部28との当接により他方のラッチ24が解除方向に直ちに移動される。これにより、ラッチ24の初期動作において、左右のラッチ24,24が連動される。第1ガイド部28と第2ガイド部30との間隔が操作位置側から通常位置側へ向かうにつれて次第に拡開する構成であるので、ラッチ24の先端がスロープ17に案内されているような初期動作において、両ラッチ24,24の連動タイミングのずれを小さくすることができる。なお、ラッチ24の先端がスロープ17に案内されているような初期動作では、蓋部材14を閉めるときの勢いがラッチ24にかかっているので、両ラッチ24,24を連動させても蓋部材14の操作感を損なうことはない。
【0030】
前記ラッチ24の先端が係合孔部18の開口縁18aと重なる係脱境界において、ラッチ24が係合孔部18から最も後退した状態となり(図6(b)参照)、付勢体34の付勢力が大きくかかると共に、蓋部材14を閉めるときの勢いを失っているので、蓋部材14を閉めるために要する荷重が最も必要とされる。そして、ラッチ24の先端が係合孔部18の開口縁18aを乗り越えることで、付勢体34の付勢によりラッチ24が前進して係合孔部18に挿入され(図6(c)参照)、係合孔部18に係合したラッチ24によって蓋部材14が開放規制される。
【0031】
前記ロック装置20は、第2ガイド部30を第1ガイド部28との間に揺動隙S1があくように形成しているので、係脱境界に到来するタイミングが左右のラッチ24,24でずれたとしても、揺動隙S1の存在によってラッチ24の位置に応じて軸部32が第2ガイド部30から離れることが許容される。すなわち、最も荷重がかかる係脱境界において、一対のラッチ24,24のずれに対応して両ラッチ24,24を非連動状態にすることができ、他方のラッチ24を連動させることによりかかる他方のラッチ24の摺動抵抗および作動体22の摺動抵抗やカタギ抵抗などの負荷を軽減することができる。更に、片方のラッチ24bの先端が係合孔部18の開口縁18aを乗り越えなくても、他方のラッチ24の先端が係合孔部18の開口縁18aを乗り越えて該係合孔部18に係合することができる。このように、ロック装置20は、ラッチ24がスロープ17に案内されている初期段階では、連係手段28,30,32によって一対のラッチ24,24を積極的に連動させる一方、ラッチ24が係脱境界にある段階では、一対のラッチ24,24の移動タイミングがずれても連係手段28,30,32により一対のラッチ24,24を積極的に連動させない。ここで、連係手段は、第2ガイド部30によって揺動隙S1を形成する構成であるので、揺動隙S1を考慮することなく第1ガイド部28を作動体22の動作に応じて軸部32を解除方向に効率よく移動させ得る最適な形状に設定すればよく、作動体22のロック解除操作時の操作感を良好に設定できる。
【0032】
前記ロック装置20は、第2ガイド部30が第1ガイド部28から解除方向に向かうにつれて離れるように形成されて、作動体22の操作位置側から通常位置側へ向かうにつれて第1ガイド部28と第2ガイド部30との間隔が次第に広がるように構成されている。すなわち、前記通常状態にある軸部32が位置するロック部位において第1ガイド部28および第2ガイド部30の間隔を狭小に設定して軸部32とガイド部28,30との隙を小さくすることができる。従って、前記通常状態において連係手段28,30,32のガタツキを抑えることができ、これらの構成要素の位置ずれや異音の発生等を防止できる。また、第2ガイド部30は、曲線的に延在するように形成されているので、ラッチ24の解除方向の移動に伴って軸部32から該第2ガイド部30に力を伝達する際に伝達ロスを抑えることができる。
【0033】
(変更例)
前述した実施例に限定されず、例えば以下のように変更することも可能である。
(1)実施例では、ロック装置のベースを蓋部材と別体に設けたが、蓋部材をベースとして用いてもよい。例えば実施例の蓋部材のロア部材をベースとして、ロック装置の構成部材を配設する構成が例示される。
(2)実施例のロック装置では、使用者が作動体を直接操作する構成であるが、別の操作片を動かすことで、作動体が移動する構成であってもよい。
(3)実施例では、蓋部材にロック装置を配設したが、ロック装置を本体部材に配設し、ラッチの先端を蓋部材に設けた係合孔部に挿脱する構成であってもよい。
(4)実施例では、付勢体としてコイルばねを例示したが、トーションばねやその他のものを採用できる。
(5)実施例では、ラッチに軸部を設け、作動体にガイド部を設けたが、作動体に軸部を設けると共にラッチにガイド部を設けてもよい。
(6)実施例のようにラッチを1つの部品で構成する例に限られず、2以上の複数の部品で構成してもよい。
(7)ロック装置は、コンソールボックスに限定されず、グローブボックスやその他の収納部の蓋に適用可能であり、また車両に限定されない。
【符号の説明】
【0034】
18 係合孔部,18a 開口縁,22 作動体,24 ラッチ,28 第1ガイド部,
30 第2ガイド部,32 軸部,S1 揺動隙(隙間)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動体と、該作動体に連係手段を介して夫々連係されると共に、先端が係合孔部に挿入し得るように前進した係合位置および先端が係合孔部から離脱し得るように後退した解除位置の間で移動可能に配設され、係合位置に向けて付勢された一対のラッチとを備えたロック装置であって、
前記連係手段は、
前記作動体または前記ラッチの一方に設けられた軸部と、
前記作動体または前記ラッチの他方に、前記軸部に対応するように設けられ、前記作動体の動作に応じて該軸部と当接したもとでラッチを係合位置から解除位置に向けた解除方向に移動させる第1ガイド部と、
前記作動体または前記ラッチの他方に、対応の軸部を挟んで前記第1ガイド部に対向するように設けられ、該軸部と当接したもとで対応のラッチの解除方向への移動に連動して別のラッチを解除方向に移動させる第2ガイド部とを備え、
前記ラッチの先端が前記係合孔部の開口縁に重なる係脱境界において、前記第2ガイド部に当接した軸部と前記第1ガイド部との間に、該ラッチの解除位置から係合位置へ向けた移動を許容し得る隙間があくように、第2ガイド部が形成された
ことを特徴とするロック装置。
【請求項2】
前記第1ガイド部および前記第2ガイド部は、前記軸部の移動ラインと交差するよう形成され、
前記第2ガイド部は、前記解除方向に向かうにつれて前記第1ガイド部から離れるように形成される請求項1記載のロック装置。
【請求項3】
前記第2ガイド部は、曲線的に延在するよう形成される請求項1または2記載のロック装置。
【請求項4】
前記一対のラッチは、通常位置と操作位置との間で移動する前記作動体の作動方向と交差する方向に該作動体を挟んで対称な関係で移動するよう構成され、
前記軸部が各ラッチにおける前記作動体に重なる基端側に設けられる一方、前記第1ガイド部および前記第2ガイド部が前記作動体に設けられ、
前記第1ガイド部は、対応の軸部に対して前記ラッチの先端側に位置して、前記作動体の操作位置側から通常位置側に向かうにつれて前記ラッチの先端から離れるように形成され、
前記第2ガイド部は、対応の軸部に対して前記ラッチの基端側に位置して、前記作動体の操作位置側から通常位置側に向かうにつれて前記第1ガイド部との間隔が広がるように形成された請求項1〜3の何れか一項に記載のロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−96055(P2013−96055A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236432(P2011−236432)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】