ロック解除装置
【課題】携帯機を携帯する操作者にロック解除の意思がないときに誤ってロック解除が行われてしまうことを抑制することが可能なロック解除装置を提供すること。
【解決手段】車載器10は、携帯機50から人体を伝送路として運転者90の左手91および右手92へ伝達された第1、第2基準信号を受信インターフェース16、17で受信してロック解除を許可するための左手用の第1判定条件および右手用の第2判定条件を設定する。シフトレバーが操作されようとすると、シフトレバーの受信インターフェース18で受信した第1判定信号の受信強度レベルが第1判定条件に合致しかつ受信インターフェース17で受信した信号を第2判定信号の受信強度レベルが第2判定条件に合致した場合に、ロック機構2によるシフトレバーのロック状態の解除を行う。
【解決手段】車載器10は、携帯機50から人体を伝送路として運転者90の左手91および右手92へ伝達された第1、第2基準信号を受信インターフェース16、17で受信してロック解除を許可するための左手用の第1判定条件および右手用の第2判定条件を設定する。シフトレバーが操作されようとすると、シフトレバーの受信インターフェース18で受信した第1判定信号の受信強度レベルが第1判定条件に合致しかつ受信インターフェース17で受信した信号を第2判定信号の受信強度レベルが第2判定条件に合致した場合に、ロック機構2によるシフトレバーのロック状態の解除を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作者が携帯する携帯機からの信号を、人体を伝送路として機器へ伝え、機器のロック機構のロック解除を行うロック解除装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両のドアハンドルに乗員が触れた際に、乗員が携帯する携帯機から車両に設けられたロック機構を制御する車載機へ人体を伝送路としてID等の信号を伝達し、チャイルドロック機構のロック解除を行うロック解除装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−138325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術のロック解除装置では、例えば携帯機を保持していない小児の乗員が、携帯機を保持する乗員に触れつつドアハンドルに触れた場合であっても、チャイルドロック機構のロック解除が行われる。また、携帯機を保持する乗員が、例えば車室内で姿勢を変えるときなどに、意図せずにドアハンドルに触れてしまった場合であっても、チャイルドロック機構のロック解除が行われる。
【0005】
このように、従来技術のロック解除装置では、携帯機を携帯する機器の操作者に触れた他の人が、操作者にロック解除の意思がないときであってもロック解除操作部を操作してロック解除を行ったり、携帯機を携帯する操作者が意図せずにロック解除操作部を操作してしまい、誤ってロック解除を行ったりする場合があるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、携帯機を携帯する操作者にロック解除の意思がないときに誤ってロック解除が行われてしまうことを抑制することが可能なロック解除装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、
機器に設けられたロック解除操作部が操作された際に機器に設けられたロック機構のロック解除を制御する制御手段と、
機器を操作する操作者に携帯された状態で信号を出力する携帯機と、を備え、
操作者がロック解除操作部を操作してロック機構のロック解除をするときに、操作者の第1部位が機器の第1所定位置に置かれ、操作者の第1部位とは異なる第2部位が第1所定位置とは異なる機器の第2所定位置に置かれるロック解除装置であり、
制御手段は、
機器が起動された際に、
携帯機から人体を伝送路として操作者の第1部位へ伝達された信号を第1基準信号として受信し、この第1基準信号の受信強度レベルに基づいてロック解除を許可するための第1判定条件を設定するとともに、携帯機から人体を伝送路として操作者の第2部位へ伝達された信号を第2基準信号として受信し、この第2基準信号の受信強度レベルに基づいてロック解除を許可するための第2判定条件を設定する判定条件設定ステップを実行し、
判定条件設定ステップが実行された後にロック解除操作部が操作された際には、
機器の第1所定位置で受信した信号を第1判定信号とし、この第1判定信号の受信強度レベルが第1判定条件に合致し、かつ、機器の第2所定位置で受信した信号を第2判定信号とし、この第2判定信号の受信強度レベルが第2判定条件に合致した場合に、ロック機構へロック解除指示を行うロック解除指示ステップを実行することを特徴としている。
【0008】
これによると、制御手段は、機器が起動された際の判定条件設定ステップにおいて、携帯機から人体を伝送路として操作者の第1部位へ伝達された信号の強度レベルから第1判定条件を設定して、ロック解除操作部が操作された際にはロック解除指示ステップにおいて、機器の第1所定位置で受信した第1判定信号の強度レベルが第1判定条件に合致しているか否か判定する。また、制御手段は、機器が起動された際の判定条件設定ステップにおいて、携帯機から人体を伝送路として操作者の第2部位へ伝達された信号の強度レベルから第2判定条件を設定して、ロック解除操作部が操作された際にはロック解除指示ステップにおいて、機器の第2所定位置で受信した第2判定信号の強度レベルが第2判定条件に合致しているか否か判定する。そして、ロック解除指示ステップでは、第1判定信号の強度レベルが第1判定条件に合致しており、かつ、第2判定信号の強度レベルが第2判定条件に合致している場合に、ロック機構へロック解除指示を行う。
【0009】
したがって、ロック解除操作部が操作されたときに、操作者の第1部位が機器の第1所定位置に置かれ、かつ、操作者の第2部位が機器の第2所定位置に置かれていると判定された場合に、ロック機構のロック解除を行うことができる。
【0010】
操作者がロック解除操作部を操作して意思を持ってロック機構のロック解除をするときには、操作者の第1部位が機器の第1所定位置に置かれ、操作者の第1部位とは異なる第2部位が第1所定位置とは異なる機器の第2所定位置に置かれるので、携帯機を携帯する操作者に触れた他の人が、操作者にロック解除の意思がないときにロック解除操作部を操作したり、携帯機を携帯する操作者が、ロック解除の意思があるときにとる姿勢以外の姿勢で、意図せずにロック解除操作部を操作してしまったりした場合には、ロック機構のロック解除は行われ難い。
【0011】
このようにして、携帯機を携帯する操作者にロック解除の意思がないときに誤ってロック解除が行われてしまうことを抑制することができる。
【0012】
また、請求項2に記載の発明では、
制御手段は、
第1基準信号の受信強度レベルよりも第2基準信号の受信強度レベルが高いときであって、第1判定信号の受信強度レベルよりも第2判定信号の受信強度レベルが低い場合、および、第1基準信号の受信強度レベルよりも第2基準信号の受信強度レベルが低いときであって、第1判定信号の受信強度レベルよりも第2判定信号の受信強度レベルが高い場合には、
ロック解除指示ステップにおいて、第1判定信号の受信強度レベルが第1判定条件に合致し、かつ、第2判定信号の受信強度レベルが第2判定条件に合致していても、ロック機構へのロック解除指示を中止することを特徴としている。
【0013】
第1基準信号の受信強度レベルと第2基準信号の受信強度レベルとが近似している等により、第1判定条件と第2判定条件とが一部重複している場合には、操作者の第2部位が機器の第1所定位置に置かれ、操作者の第1部位が機器の第2所定位置に置かれときに、第1判定信号の受信強度レベルが第1判定条件に合致し、第2判定信号の受信強度レベルが第2判定条件に合致してしまうことがある。ところが、操作者の第1、第2部位における信号強度レベルの大小関係は、環境等が変化しても逆転し難い。
【0014】
したがって、本請求項に記載の発明によれば、第1判定条件と第2判定条件とが一部重複しているときに、操作者がロック解除の意思があるときにとる姿勢以外の姿勢となって、第2部位を機器の第1所定位置に置き、第1部位を機器の第2所定位置に置いて、第1判定信号の受信強度レベルが第1判定条件に合致し、第2判定信号の受信強度レベルが第2判定条件に合致したとしても、ロック解除が行われることを防止できる。このようにして、携帯機を携帯する操作者にロック解除の意思がないときに誤ってロック解除が行われてしまうことを確実に抑制することができる。
【0015】
また、請求項3に記載の発明のように、機器を車両とし、操作者を車両の運転者とすることができる。
【0016】
また、請求項4に記載の発明のように、第1部位を運転者の左手とし、第2部位を運転者の右手とすることができる。
【0017】
また、請求項5に記載の発明のように、第1部位を運転者の手とし、第2部位を運転者の足とすることができる。
【0018】
また、請求項6に記載の発明では、車両は、運転席に運転者が着座しているか否かを検出する着座検出手段を備えており、制御手段は、着座検出手段が運転者の着座を検出していない場合には、ロック機構へのロック解除指示を中止することを特徴としている。
【0019】
これによると、ロック解除操作部が操作されたときに、運転者の第1部位が車両の第1所定位置に置かれ、かつ、運転者の第2部位が車両の第2所定位置に置かれていると判定した場合であっても、運転席に運転者が着座していない場合には、ロック解除は行われない。運転者の第1、第2部位が、ロック機構のロック解除を行う意思を持つときに置かれる第1、第2所定位置にあったとしても、運転者が運転席に着座していない場合には、運転者にロック解除の意思がない場合が多いので、誤ってロック解除が行われてしまうことを防止することができる。
【0020】
また、請求項7に記載の発明では、制御手段は、車両が起動された後であって、車両の自動変速機シフトレバーのシフト位置がパーキング位置に設定された後にこの設定が解除された場合、もしくは、車両が起動された後であって、車両のパーキングブレーキが制動状態に設定された後にこの制動状態が解除された場合には、判定条件設定ステップを再度実行して、第1判定条件および第2判定条件を更新することを特徴としている。
【0021】
車両が起動された後に、車両の自動変速機シフトレバーのシフト位置がパーキング位置に設定された後にこの設定が解除された場合、もしくは、車両のパーキングブレーキが制動状態に設定された後にこの制動状態が解除された場合、すなわち、車両の運転が一旦中断された場合には、車両の運転を中断している間に運転者は携帯機の携帯位置を容易に変更することができる。ところが、本請求項に記載の発明のように、車両の運転が一旦中断された場合には、判定条件設定ステップを再度実行して、第1判定条件および第2判定条件を更新することで、運転中断中に携帯機の携帯位置が変更されたとしても、運転再開後携帯機を携帯する運転者にロック解除の意思がないときに誤ってロック解除が行われてしまうことを抑制することができる。
【0022】
また、請求項8に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載のロック解除装置において、機器を工作機械とすることができる。
【0023】
また、請求項9に記載の発明のように、第1部位を工作機械操作者の左手とし、第2部位を工作機械操作者の右手とすることができる。
【0024】
また、請求項10に記載の発明では、工作機械は、操作者が操作位置に立っているか否かを検出する立ち位置検出手段を備えており、制御手段は、立ち位置検出手段が操作者が操作位置に立っていることを検出していない場合には、ロック機構へのロック解除指示を中止することを特徴としている。
【0025】
これによると、ロック解除操作部が操作されたときに、操作者の第1部位が工作機械の第1所定位置に置かれ、かつ、操作者の第2部位が工作機械の第2所定位置に置かれていると判定した場合であっても、操作者が操作位置に立っていない場合には、ロック解除は行われない。操作者の第1、第2部位が意思を持ってロック機構のロック解除をする第1、第2所定位置にあったとしても、操作者が工作機械の操作位置に立っていない場合には、操作者にロック解除の意思がない場合が多いので、誤ってロック解除が行われてしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明を適用した第1の実施形態におけるロック解除装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】車両1内におけるロック解除装置の受信インターフェースの配設位置を示す斜視図である。
【図3】車載器10が行うロック解除制御の概略制御動作を示すフローチャートである。
【図4】初期設定処理S110の制御動作を示すフローチャートである。
【図5】初期設定処理S110の処理動作の例を説明するためのブロック図である。
【図6】記憶手段15に記憶される情報の例を説明するためのグラフである。
【図7】左右判定処理S120の制御動作を示すフローチャートである。
【図8】一人操作判定処理S130の制御動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明を適用した第2の実施形態におけるロック解除装置の概略構成を示すブロック図である。
【図10】他の実施形態において、車両1の信号受信位置の組み合わせの例を説明するための図である。
【図11】他の実施形態において、車両1の信号受信位置の組み合わせの例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0028】
(第1の実施形態)
図1は、本発明を適用した第1の実施形態におけるロック解除装置の概略構成を示すブロック図であり、図2は、車両1内におけるロック解除装置の受信インターフェースの配設位置を示す斜視図である。
【0029】
本発明は、各種のロック解除装置に適用可能であるが、ここでは、車両のシフトレバーロックの解除を行うロック解除装置に本発明を適用した場合について説明する。
【0030】
図1に示すように、本実施形態のロック解除装置は、車両1に搭載されたシフトレバー用のロック機構2のロック解除を制御する制御手段である車載器10と、車両1の運転者90によって携帯される携帯機50とにより構成されている。携帯機50は電気的な信号を出力可能となっており、車載器10は、携帯機50から出力され運転者90の人体を伝送路として伝達された信号を受信し、ロック機構2を制御するようになっている。
【0031】
本実施形態の携帯機50は、運転者90の中心線よりも左右いずれかにずれた位置(左手91への距離と右手92への距離が異なる位置)に携帯されるべきものであって、図1に示す本例では、運転者90の左腕に装着されている。携帯機50が出力する信号は、人体の表面および表面近傍のみに微弱な電界を発生させることができる周波数の信号であり、比較的ノイズに強いFM変調(周波数変調)の信号としている。
【0032】
車載器10は、図示を省略したマイクロプロセッサやメモリ等によって構成されており、例えば、車室内のインストルメントパネル6(図2参照)の内側に配設されている。車載器10は、携帯機50からの信号を受信するための受信インターフェース16〜19を備えている。
【0033】
受信インターフェース16は、図2に示すステアリングホイール(以下、ステアリング)4の左側部(例えば車両直進状態のステアリング位置における左側部)4aに設けられ、受信インターフェース17は、図2に示すステアリング4の右側部(例えば車両直進状態のステアリング位置における右側部)4bに設けられている。また、受信インターフェース18は、図2に示すシフトレバー3に設けられ、受信インターフェース19は、図2に示す運転席5の例えば座面部に設けられている。
【0034】
次に、上記構成のロック解除装置の作動について説明する。図3は、車載器10が行うロック解除制御の概略制御動作を示すフローチャートである。図4は、図3に示す初期設定処理S110の制御動作を示すフローチャート、図7は、図3に示す左右判定処理S120の制御動作を示すフローチャート、図8は、図3に示す一人操作判定処理S130の制御動作を示すフローチャートである。
【0035】
図3に示すように、車載器10は、車両1の例えばイグニッションスイッチが操作されてエンジンが始動されると、まず初期設定処理S110を実行する。初期設定処理S110の実行は、機器である車両1が起動した際に行われるものであり、車両1が、例えば電気自動車やハイブリッド自動車である場合には、当該車両の走行を可能とするスタートスイッチが操作された際に実行される。
【0036】
初期設定処理S110は、図4に示すように、まず、ステップS111において、エンジン始動後に運転者90が両手でステアリング4に触れたか否か(左手がステアリング4の左側部4aに右手がステアリング4の右側部4bに触れたか否か)を判定する。ステップS111で運転者90が両手でステアリング4に触れたことを検出したら、ステップS112において、受信インターフェース16、17で受信した左右の信号受信レベルをそれぞれ検出し、ステップS113において、車載器10の記憶手段に左右の信号受信レベルをそれぞれ記憶させる。
【0037】
初期設定処理S110の上記した処理動作の具体例を、図5を用いて説明する。図5に示すように、車載器10は、接触検知信号生成手段11、接触判別手段12、起動信号生成手段13、受信手段14および記憶手段15を有している。
【0038】
接触検知信号生成手段11は、車載器10に設けられており、車両1に搭載された容量が大きい蓄電手段から給電を受けることが可能であるので、エンジン始動後は常時微弱な信号を発生している。接触検知信号生成手段11は、受信インターフェース16、17へIDを含まない微弱な交流電流を流す。
【0039】
これにより、インピーダンス計測と同じ要領で、運転者90の左手がステアリング4の左側部4aに、右手がステアリング4の右側部4bに接触した時に、両受信インターフェース16、17間に初めて電流が流れ、接触判別手段12が、運転者90が両手でステアリング4に触れたことを検知する。このとき、両受信インターフェース16、17は出力インターフェースとして機能している。なお、運転者90が両手でステアリング4に触れたことを検知する方法は、静電センサ、圧力センサ、温度センサなどの人の近接を検知する方法を採用してもかまわない。
【0040】
接触判別手段12は、運転者90の左手がステアリング4の左側部4aに右手がステアリング4の右側部4bに接触していると判断した場合には、運転者90が携帯する携帯機50を起動させるためのウェイクアップ信号を生成させるように起動信号生成手段13に命令を出す。起動信号生成手段13は、この命令を受けてウェイクアップ信号を出力し、ウェイクアップ信号がステアリング4の受信インターフェース16、17にまで送られる。ウェイクアップ信号は、操作手段の受信インターフェース16、17から手を介して携帯機50まで伝わる。これにより、これまでスリープモードであった携帯機50が起動しオン状態となる。このときも、両受信インターフェース16、17は出力インターフェースとして機能している。
【0041】
本例では、携帯機50が備える蓄電手段は比較的小容量であるので、省電力のために、ウェイクアップ信号を受信するまで携帯機50をスリープモードとしていたが、携帯機50は、常時オン状態であってもよく、その場合にはここまでの手順は不要である。
【0042】
起動した携帯機50は、前述した周波数変調の信号を出力する。この信号は、運転者90の人体を減衰しながら伝わって、左手から受信インターフェース16で受信され、右手から受信インターフェース17で受信され、受信手段14まで一対の信号が伝わる。そして、受信手段14は、各信号の受信レベル(信号強度レベル)をそれぞれ記憶手段15に保持する。
【0043】
車載器10は、図4に示すステップS113を実行したら、ステップS114へ進み、ロック機構2のロック解除を許可する際に用いる左右の判定条件(信号強度レベルの範囲)を設定し、これも記憶手段15に保持する。図4に示したステップS112〜ステップS114が実行されたときには、記憶手段15には、例えば、図6に示す情報が記憶される。
【0044】
携帯機50から出力され、人体を伝送路として減衰しつつ運転者90の左手91へ伝達された第1基準信号に相当する信号は、受信インターフェース16から受信手段14へ伝わって、受信インターフェース16で受信した第1基準信号の信号強度レベルが記憶手段15に記憶される。また、携帯機50から出力され、人体を伝送路として減衰しつつ運転者90の右手92へ伝達された第2基準信号に相当する信号は、受信インターフェース17から受信手段14へ伝わって、受信インターフェース17で受信した第2基準信号の信号強度レベルが記憶手段15に記憶される。本例では、携帯機50は運転者90の左腕に装着されているので、第1基準信号の強度レベルよりも第2基準信号の強度レベルの方が小さくなる。
【0045】
さらに、第1基準信号の受信強度レベルに基づいて、人体を信号が伝わるときの減衰誤差等を加味して、ロック解除を許可するか否かを判定する際に用いる左手用の第1判定条件を設定するとともに、第2基準信号の受信強度レベルに基づいて、人体を信号が伝わるときの減衰誤差等を加味して、ロック解除を許可するか否かを判定する際に用いる右手用の第2判定条件を設定する。
【0046】
ステップS111において、運転者90が両手でステアリング4に触れたことを検出しなかった場合には、何もせずにリターンし、運転者90が両手でステアリング4に触れるまで監視を継続する。
【0047】
以上説明したように、図3に示す初期設定処理S110を実行したら、ステップS120へ進んで左右判定処理を実行するとともに、ステップS130へ進んで一人操作判定処理を実行する。左右判定処理S120および一人操作判定処理S130は、並行して実行するものであってもよいし、順次実行するものであってもよい。
【0048】
左右判定処理S120は、図7に示すように、まず、ステップS121においてステアリング4の右側部4bとシフトレバー3とで信号を受信した際に開始される。
【0049】
右ハンドルの車両において運転者90がシフトレバー3を操作するときには、運転者90の右手92がステアリング4の右側部4bに触れ、運転者90の左手91がシフトレバー3に触れている状態が、運転者90の一般的な姿勢である。したがって、ステップS121でステアリング4の右側部4bの受信インターフェース17とシフトレバー3の受信インターフェース18とで信号を受信したら、シフトレバー3が操作されようとしていることになる。
【0050】
ここで、操作者である運転者90がロック解除操作部であるシフトレバー3を操作してロック機構2のロック解除をするときに、運転者90の第1部位である左手91が置かれるシフトレバー3が、本実施形態における第1所定位置に相当し、運転者90の第2部位である右手92が置かれるステアリング4の右側部4bが、本実施形態における第2所定位置に相当する。
【0051】
ステップS121においてステアリング4の右側部4bの受信インターフェース17とシフトレバー3の受信インターフェース18とで信号を受信したら、ステップS122において、受信インターフェース18で受信した左手側の信号受信レベルが受信インターフェース17で受信した右手側の信号受信レベルよりも大きいか否か判断する。
【0052】
ステップS122において、受信インターフェース18で受信した左手側の信号受信レベルが受信インターフェース17で受信した右手側の信号受信レベルよりも大きいと判断した場合、すなわち、受信インターフェース18で受信した左手側の信号受信レベルと受信インターフェース17で受信した右手側の信号受信レベルとの大小関係が、初期設定処理S110で記憶した左手用の第1基準信号の強度レベルと右手用の第2基準信号の強度レベルとの大小関係と同一であると判断した場合には、ステップS123において左右は正しい(左手と右手とが逆になっていない)とする。
【0053】
一方、ステップS122において、受信インターフェース18で受信した左手側の信号受信レベルが受信インターフェース17で受信した右手側の信号受信レベルよりも小さいと判断した場合、すなわち、受信インターフェース18で受信した左手側の信号受信レベルと受信インターフェース17で受信した右手側の信号受信レベルとの大小関係が、初期設定処理S110で記憶した左手用の第1基準信号の強度レベルと右手用の第2基準信号の強度レベルとの大小関係と逆であると判断した場合には、ステップS124において左右は正しくない(左手と右手とが逆になっている)とする。
【0054】
そして、ステップS123、S124のいずれかを実行したら、ステップS125へ進んで、ステップS123もしくはステップS124で決定した左右が正しいもしくは左右が間違っているという情報を記憶する。
【0055】
一人操作判定処理S130は、図8に示すように、まず、左右判定処理S120と同様に、ステップS121においてステアリング4の右側部4bとシフトレバー3とで信号を受信した際に開始される。
【0056】
ステップS121においてステアリング4の右側部4bの受信インターフェース17とシフトレバー3の受信インターフェース18とで信号を受信したら、ステップS132において、受信した各信号の受信強度レベルが判定レベルの範囲内にあるか否か判断する。受信インターフェース18で受信した左手側の信号受信レベルが、ステップS114で設定した左手用の第1判定条件に合致し(例えば図6に示した第1判定条件の強度レベル範囲に入り)、かつ、受信インターフェース17で受信した右手側の信号受信レベルが、ステップS114で設定した右手用の第2判定条件に合致する(例えば図6に示した第2判定条件の強度レベル範囲に入る)か否か判断する。
【0057】
ステップS132において、両信号の受信強度レベルが判定レベルの範囲内にあると判断した場合には、ステップS133において、一人で操作しているものとする。受信信号強度レベルが人体を伝達する際の減衰誤差等を加味した判定条件範囲内にあることから、運転者90以外の人が介在して信号が伝達されたものではないとする。
【0058】
一方、ステップS132において、両信号の受信強度レベルの少なくともいずれかが判定レベルの範囲内にないと判断した場合には、ステップS134において、一人で操作されていないものとする。受信信号強度レベルが人体を伝達する際の減衰誤差等を加味した判定条件範囲外にあることから、例えば運転者90以外の人が介在する等して信号が伝達され、減衰量が変化したものとする。
【0059】
そして、ステップS133、S134のいずれかを実行したら、ステップS135へ進んで、ステップS133もしくはステップS134で決定した一人操作であるもしくは一人操作でないという情報を記憶する。
【0060】
図1に示すように、左右判定処理S120および一人操作判定処理S130を実行したら、ステップS140へ進み、ステップS125およびステップS135で記憶した情報から、左右が正しく一人操作であるか否かを判断する。すなわち、シフトレバー3に運転者90の左手91が置かれ、ステアリング4の右側部4bに運転者90の右手92が置かれて、運転者90が一人でステアリング4を握りつつシフトレバー3を操作しようとしているか否かを判断する。
【0061】
ステップS140において、左右が正しく一人操作であると判断した場合には、ステップS150へ進んで、ロック機構2をアンロック状態とする。シフトレバー3に運転者90の左手91が置かれ、ステアリング4の右側部4bに運転者90の右手92が置かれて、運転者90が一人でステアリング4を握りつつシフトレバー3を操作しようとしているので、シフトレバー3用のロック機構2を解除して、シフトレバー3によるシフト操作を可能にする。
【0062】
一方、ステップS140において、少なくとも、左右が正しくない、もしくは、一人操作でないと判断した場合には、ステップS160へ進んで、ロック機構2のロック状態を維持する。シフトレバー3に運転者90の右手92が触れステアリング4の右側部4bに運転者90の左手91が触れるという、シフト操作する際に運転者90がとる正常な姿勢ではないか、運転者90がシフトレバー3およびステアリング4の右側部4bに直接触れておらず他の人が介在している(運転者90に触れた人が、シフトレバー3およびステアリング4の右側部4bの少なくともいずれかに触れている)ことが想定されるので、ロック機構2を解除せず、シフトレバー3によるシフト操作を可能としない。
【0063】
ここで、図3に示すステップS110が、本実施形態における判定条件設定ステップに相当し、図3に示すステップS120、S130、S140、S150、S160が、本実施形態におけるロック解除指示ステップに相当する。
【0064】
上述の構成および作動によれば、本実施形態のロック解除装置の車載器10は、車両1が起動された際には、携帯機50から人体を伝送路として運転者90の左手91へ伝達された信号を第1基準信号としてステアリング4の左側部4aの受信インターフェース16で受信し、この第1基準信号の受信強度レベルに基づいてロック解除を許可するための第1判定条件を設定するとともに、携帯機50から人体を伝送路として運転者90の右手92へ伝達された信号を第2基準信号としてステアリング4の右側部4bの受信インターフェース17で受信し、この第2基準信号の受信強度レベルに基づいてロック解除を許可するための第2判定条件を設定する。
【0065】
そして、判定条件が設定された後にシフトレバー3が操作されようとすると、シフトレバー3の受信インターフェース18で受信した信号を第1判定信号とし、この第1判定信号の受信強度レベルが第1判定条件に合致し、かつ、ステアリング4の右側部4bの受信インターフェース17で受信した信号を第2判定信号とし、この第2判定信号の受信強度レベルが第2判定条件に合致し、さらに、第1判定信号と第2判定信号との受信強度レベルの大小関係が、第1基準信号と第2基準信号との受信強度レベルの大小関係と一致した場合に、ロック機構2によるシフトレバー3のロック状態の解除を行う。
【0066】
したがって、シフトレバー3に人が触れたときには、運転者90が単独で、かつ、運転者90がシフトレバー3によるシフト操作する意思があるときにとる姿勢である場合に、ロック機構2のロック状態を解除することができる。運転者90に触れた他の人が、運転者90にシフト操作の意思がないときにシフトレバー3を操作したり、運転者90が、シフト操作の意思がないときにとる姿勢で意図せずにシフトレバー3に触れてしまったりした場合には、ロック機構2のロック解除は行われない。このようにして、携帯機50を携帯する運転者90にシフトレバー3のシフト操作の意思がないときに誤ってロック機構2のロック解除が行われてしまうことを防止することができる。
【0067】
また、車載器10は、携帯機50が出力する信号の受信レベルに基づいてロック解除の制御を行っており、信号にIDを含ませて照合することは行っていない。したがって、ID等が破損してロック解除が不可能になることを確実に防止することができる。
【0068】
上述した実施形態では説明を省略していたが、車載器10は、運転席に運転者が着座しているか否かを検出する着座検出手段となる受信インターフェース19を備えており、携帯機50から人体を伝わり受信インターフェース19で受信した信号の受信強度レベルから運転者90の着座の有無を確認し、ステップS140において、左右および一人操作に加え着座も確認できたときにはロック解除を許可し、着座が確認できなかったときには、ロック解除を行わないものとすることができる。これによれば、運転者90が着座しておらず運転者90にシフト操作の意思がない場合に、誤ったロック解除を確実に防止することができる。また、運転者90が、腰を浮かせてシフト操作をする等の安全上問題がある姿勢では、シフト操作を禁止することができ、安全性を高めることができる。
【0069】
なお、受信インターフェース19で受信した信号による運転者の着座検出は、初期設定処理S110を行う際に、基準信号を受信して判定条件を設定するものであってもよいし、基準信号を受信せずに予め所定の判定条件を設定するものであってもよい。また、運転者の着座検出は、運転席シート内に設けられた例えば感圧式の着座センサからの信号等を利用するものであってもかまわない。
【0070】
また、車載器10は、初期設定処理ステップS110を、車両1が起動した際に行うことのみ説明していたが、車両1が起動された後であって、車両1のシフトレバー3のシフト位置がパーキング位置に設定された後にこの設定が解除された場合、もしくは、車両1が起動された後であって、車両1のパーキングブレーキが制動状態に設定された後にこの制動状態が解除された場合には、ステップS110を再度実行して第1基準信号および第2基準信号を受信し、第1判定条件および第2判定条件を更新することが好ましい。
【0071】
車両1が起動された後に、車両1の自動変速機のシフトレバー3のシフト位置がパーキング位置に設定された後にこの設定が解除された場合、もしくは、車両1のパーキングブレーキが制動状態に設定された後にこの制動状態が解除された場合には、車両1の運転を中断している間に、運転者90は携帯機50の携帯位置を容易に変更することができる。したがって、このようなときに、ステップS110を再度実行して第1基準信号および第2基準信号を受信し第1判定条件および第2判定条件を更新すれば、携帯機50の携帯位置が変更されたとしても対応することができる。
【0072】
なお、第1基準信号および第2基準信号を受信し第1判定条件および第2判定条件を更新するための初期設定処理の再実行は、所定時間毎に行うものであってもよい。所定時間毎の初期設定処理の再実行は、ステアリング4に両手が触れている場合に限り、触れていなければ触れるまで待機して触れた時点で行うものであってもよいし、触れていなければその回の再実行をキャンセルするものであってもよい。
【0073】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について図9に基づいて説明する。
【0074】
本第2の実施形態は、本発明を工作機械に適用した例である。なお、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。
【0075】
図9に示すように、本実施形態のロック解除装置は、工作機械201の作動部のロック機構2のロック解除を制御する制御手段である制御器210と、工作機械201の操作者290の例えば左腕に装着されて携帯される携帯機50とにより構成されている。本実施形態では、工作機械201が機器に相当し、工作機械201を操作する操作者290の左手91が第1部位に、操作者290の右手92が第2部位に相当する。
【0076】
工作機械201は、左手で操作されるべき第1操作釦203と右手で操作されるべき第2操作釦204とからなる所謂両手スイッチで作動部が作動するようになっており、第1操作釦203に受信インターフェース16が、第2操作釦204に受信インターフェース17が設けられている。したがって、本実施形態においては、第1操作釦203が第1所定位置に相当し、第2操作釦204が第2所定位置に相当する。また、第1、第2操作釦203、204の少なくともいずれかがロック解除操作部に相当する。
【0077】
制御器210は、第1の実施形態の車載器10と同様の制御を行うようになっている。ただし、左右判定処理S120および一人操作判定処理S130のステップS121では、第1操作釦203の受信インターフェース16と第2操作釦204の受信インターフェース17とでそれぞれ信号を受信する。
【0078】
上述の構成および作動によれば、本実施形態のロック解除装置の制御器210は、工作機械201が起動された際には、携帯機50から人体を伝送路として操作者290の左手91へ伝達された信号を第1基準信号として第1操作釦203の受信インターフェース16で受信し、この第1基準信号の受信強度レベルに基づいてロック解除を許可するための第1判定条件を設定するとともに、携帯機50から人体を伝送路として操作者290の右手92へ伝達された信号を第2基準信号として第2操作釦204の受信インターフェース17で受信し、この第2基準信号の受信強度レベルに基づいてロック解除を許可するための第2判定条件を設定する。
【0079】
そして、判定条件が設定された後に第1、第2操作釦203、204が操作されようとすると、受信インターフェース16で受信した信号を第1判定信号とし、この第1判定信号の受信強度レベルが第1判定条件に合致し、かつ、受信インターフェース17で受信した信号を第2判定信号とし、この第2判定信号の受信強度レベルが第2判定条件に合致し、さらに、第1判定信号と第2判定信号との受信強度レベルの大小関係が、第1基準信号と第2基準信号との受信強度レベルの大小関係と一致した場合に、ロック機構2のロック状態の解除を行う。
【0080】
したがって、第1、第2操作釦203、204に人が触れたときには、操作者290が単独で、かつ、操作者290が第1、第2操作釦203、204による操作意思があるときにとる姿勢である場合に、ロック機構2のロック状態を解除することができる。例えば、操作者290が第1、第2操作釦203、204の一方に触れているときに、操作者290に触れた他の人が第1、第2操作釦203、204の他方に触れてしまったり、操作者290が、例えば工作機械201を背にするような操作意思がないときにとる姿勢で意図せずに第1、第2操作釦203、204の両方に触れてしまったりした場合には、ロック機構2のロック解除は行われない。このようにして、携帯機50を携帯する操作者290に工作機械201の作動部を作動させる操作の意思がないときに誤ってロック機構2のロック解除が行われてしまうことを防止することができる。
【0081】
また、制御器210は、携帯機50が出力する信号の受信レベルに基づいてロック解除の制御を行っており、信号にIDを含ませて照合することは行っていない。したがって、ID等が破損してロック解除が不可能になることを確実に防止することができる。
【0082】
上述した実施形態では説明を省略していたが、制御器210は、操作者290が正規の操作位置に立っているか否か検出する立ち位置検出手段となる受信インターフェース219を備えており、携帯機50から人体を伝わり受信インターフェース219で受信した信号の受信強度レベルから操作者290が正規の立ち位置にいるか否かを確認し、ステップS140において、左右および一人操作に加え正規の立ち位置にいることも確認できたときにはロック解除を許可し、正規の立ち位置にいることが確認できなかったときには、ロック解除を行わないものとすることができる。これによれば、操作者290が正常な操作位置に立っておらず操作者290が不自然な姿勢をとっている場合には、第1、第2操作釦203、204を操作していたとしても、作動部が作動することを禁止でき、安全性を高めることができる。
【0083】
なお、受信インターフェース219で受信した信号による操作者の立ち位置検出は、初期設定処理S110を行う際に、基準信号を受信して判定条件を設定するものであってもよいし、基準信号を受信せずに予め所定の判定条件を設定するものであってもよい。また、操作者の立ち位置検出は、床面に設けられた例えば感圧式の立ち位置センサからの信号等を利用するものであってもかまわない。
【0084】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0085】
上記各実施形態では、初期設定処理S110において、第1、第2基準信号の受信レベルを記憶するとともに、第1基準信号の受信レベルに基づいてロック解除を許可するか否かを判定する際に用いる左手用の第1判定条件を設定するとともに、第2基準信号の受信強度レベルに基づいてロック解除を許可するか否かを判定する際に用いる右手用の第2判定条件を設定していた。そして、図6において、それぞれ上下限値を有し、基準信号受信レベルと上限値との差が、基準信号受信レベルと下限値との差よりも大きい判定条件を例示していたが、これに限定されるものではない。
【0086】
例えば、基準信号受信レベルと上限値との差が基準信号受信レベルと下限値との差と等しい判定条件、すなわち、上下限値の中央に基準信号受信レベルがあるような判定条件を設定するものであってもよい。また、上限値を設けずに下限値のみの判定条件を設定するものであってもよい。下限値を一人分の信号伝搬損失およびそのばらつきを考慮した閾値とすることで、携帯機50を携帯した当人のみがロック解除を行うことが可能となり、誤ったロック解除を防止して安全性を高めることが可能となる。
【0087】
また、上記第1の実施形態では、車両1のシフトレバーロックの解除を行うロック解除装置に本発明を適用した場合について説明していたが、他のロック機構のロック解除を行うロック解除装置にも本発明は適用可能である。例えば、チャイルドロックのロック解除やウィンドロックのロック解除を行う場合にも本発明は適用することができる。また、複数のロック機構のロック解除を行う場合にも適用でき、複数のロック解除を許可するため判定条件を共通化することも可能である。例えば、車両1のステアリング4に運転者90の両手が触れた際に初期設定処理S110を実行して第1、第2判定条件を設定し、シフトレバーロックの解除、チャイルドロックの解除およびウィンドロックの解除の判定条件として、共通の第1、第2判定条件を用いることが可能である。
【0088】
また、上記各実施形態では、左右判定処理S120および一人操作判定処理S130を実行し、ステップS140では、左右判定処理S120および一人操作判定処理S130の結果に基づいて左右が正しく一人操作であるか否かを判断していたが、左右判定処理S120および左右判定処理S120の結果に基づく左右が正しいか否かを判断することは省略することも可能である。例えば、図6に示した第1判定条件の下限値が第2判定条件の上限値よりも確実に高くなるような場合には、左右判定処理S120および左右判定処理S120の結果に基づく左右が正しいか否かの判断は省略することができる。
【0089】
また、上記第1の実施形態では、第1基準信号の受信を受信インターフェース16で行い、第1判定信号の受信を受信インターフェース18で行い、第2基準信号および第2判定信号の受信を受信インターフェース17で行っていた。第2の実施形態では、第1基準信号および第1判定信号の受信を受信インターフェース16で行い、第2基準信号および第2判定信号の受信を受信インターフェース17で行っていた。しかしながら、各信号を受信する受信インターフェース、すなわち、信号の受信位置はこれらに限定されるものではなく、各信号を受信する受信インターフェースは、一部を共用してもよいし、各信号毎に全て別の受信インターフェースを用いてもかまわない。
【0090】
第1、第2基準信号を受信する位置は、機器を操作する操作者が機器を起動したときにとりやすい姿勢において、操作者の第1部位および第2部位が触れる位置が好ましく、機器が車両1である場合には、第1の実施形態のように、ステアリング4の左側部4aと右側部4bとすることができる。また、第1、第2判定信号を受信する位置、すなわち、本発明で言うところの第1、第2所定位置は、操作者がロック解除操作部を操作してロック解除を行おうとするときに、操作者の第1、第2部位が触れる位置であり、少なくとも一方は、ロック解除操作部とすることが好ましい。例えば、ウィンドロック解除の場合には、ウィンドロック解除スイッチを、第1、第2所定位置のいずれかとすることができる。
【0091】
操作者の第1、第2部位は、左手および右手に限定されるものではなく、手および足とすることも可能である。機器が車両1である場合に、第1、第2部位を、手および足とした場合には、信号を受信するための受信インターフェースの1つは乗員の足元に設ける必要があり、例えばフットペダルやフットレストに設けることができる。フットペダルに受信インターフェースを設ける場合には、ブレーキペダルとすることが好ましいが、ウィンドロックのロック解除やシフトレバーのロック解除を行うときには、走行中に操作する可能性があるため、アクセルペダルとすることも可能である。
【0092】
以下、図10および図11を用いて、車両1において、上記第1の実施形態で示した例以外に、信号を受信する位置(基準信号もしくは判定信号を受信する受信インターフェース配設位置)として採用することが可能な位置の組み合わせの例を説明する。
【0093】
図10に示すように、ステアリングの右側部とアームレストとの組み合わせ901、ステアリングの右側部とフットペダル(ブレーキペダル、アクセルペダル)との組み合わせ902を採用することが可能である。また、図11に示すように、ステアリングの右側部と室内灯・ミラー付近との組み合わせ903、ステアリングの右側部とフロントドアとの組み合わせ904、ステアリングの右側部とセンターコンソールもしくはインストルメントパネルに設けられたナビゲーション、オーディオ、エアコン操作部等との組み合わせ905、リアドアとルーフ・室内灯付近との組み合わせ906、左右のリアドア同士の組み合わせ907等を採用することが可能である。
【0094】
また、上記各実施形態では、機器は車両もしくは工作機械であったが、これらに限定されるものではなく、ロック機構を備える機器であれば、本発明は広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 車両(機器)
2 ロック機構
3 シフトレバー(ロック解除操作部、第1所定位置)
4 ステアリングホイール
4b 右側部(第2所定位置)
5 運転席
10 車載器(制御手段)
19 受信インターフェース(着座検出手段)
50 携帯機
90 運転者(操作者)
91 左手(第1部位)
92 右手(第2部位)
201 工作機械(機器)
203 第1操作釦(ロック解除操作部、第1所定位置)
204 第2操作釦(ロック解除操作部、第2所定位置)
210 制御器(制御手段)
219 受信インターフェース(立ち位置検出手段)
290 操作者
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作者が携帯する携帯機からの信号を、人体を伝送路として機器へ伝え、機器のロック機構のロック解除を行うロック解除装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両のドアハンドルに乗員が触れた際に、乗員が携帯する携帯機から車両に設けられたロック機構を制御する車載機へ人体を伝送路としてID等の信号を伝達し、チャイルドロック機構のロック解除を行うロック解除装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−138325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術のロック解除装置では、例えば携帯機を保持していない小児の乗員が、携帯機を保持する乗員に触れつつドアハンドルに触れた場合であっても、チャイルドロック機構のロック解除が行われる。また、携帯機を保持する乗員が、例えば車室内で姿勢を変えるときなどに、意図せずにドアハンドルに触れてしまった場合であっても、チャイルドロック機構のロック解除が行われる。
【0005】
このように、従来技術のロック解除装置では、携帯機を携帯する機器の操作者に触れた他の人が、操作者にロック解除の意思がないときであってもロック解除操作部を操作してロック解除を行ったり、携帯機を携帯する操作者が意図せずにロック解除操作部を操作してしまい、誤ってロック解除を行ったりする場合があるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、携帯機を携帯する操作者にロック解除の意思がないときに誤ってロック解除が行われてしまうことを抑制することが可能なロック解除装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、
機器に設けられたロック解除操作部が操作された際に機器に設けられたロック機構のロック解除を制御する制御手段と、
機器を操作する操作者に携帯された状態で信号を出力する携帯機と、を備え、
操作者がロック解除操作部を操作してロック機構のロック解除をするときに、操作者の第1部位が機器の第1所定位置に置かれ、操作者の第1部位とは異なる第2部位が第1所定位置とは異なる機器の第2所定位置に置かれるロック解除装置であり、
制御手段は、
機器が起動された際に、
携帯機から人体を伝送路として操作者の第1部位へ伝達された信号を第1基準信号として受信し、この第1基準信号の受信強度レベルに基づいてロック解除を許可するための第1判定条件を設定するとともに、携帯機から人体を伝送路として操作者の第2部位へ伝達された信号を第2基準信号として受信し、この第2基準信号の受信強度レベルに基づいてロック解除を許可するための第2判定条件を設定する判定条件設定ステップを実行し、
判定条件設定ステップが実行された後にロック解除操作部が操作された際には、
機器の第1所定位置で受信した信号を第1判定信号とし、この第1判定信号の受信強度レベルが第1判定条件に合致し、かつ、機器の第2所定位置で受信した信号を第2判定信号とし、この第2判定信号の受信強度レベルが第2判定条件に合致した場合に、ロック機構へロック解除指示を行うロック解除指示ステップを実行することを特徴としている。
【0008】
これによると、制御手段は、機器が起動された際の判定条件設定ステップにおいて、携帯機から人体を伝送路として操作者の第1部位へ伝達された信号の強度レベルから第1判定条件を設定して、ロック解除操作部が操作された際にはロック解除指示ステップにおいて、機器の第1所定位置で受信した第1判定信号の強度レベルが第1判定条件に合致しているか否か判定する。また、制御手段は、機器が起動された際の判定条件設定ステップにおいて、携帯機から人体を伝送路として操作者の第2部位へ伝達された信号の強度レベルから第2判定条件を設定して、ロック解除操作部が操作された際にはロック解除指示ステップにおいて、機器の第2所定位置で受信した第2判定信号の強度レベルが第2判定条件に合致しているか否か判定する。そして、ロック解除指示ステップでは、第1判定信号の強度レベルが第1判定条件に合致しており、かつ、第2判定信号の強度レベルが第2判定条件に合致している場合に、ロック機構へロック解除指示を行う。
【0009】
したがって、ロック解除操作部が操作されたときに、操作者の第1部位が機器の第1所定位置に置かれ、かつ、操作者の第2部位が機器の第2所定位置に置かれていると判定された場合に、ロック機構のロック解除を行うことができる。
【0010】
操作者がロック解除操作部を操作して意思を持ってロック機構のロック解除をするときには、操作者の第1部位が機器の第1所定位置に置かれ、操作者の第1部位とは異なる第2部位が第1所定位置とは異なる機器の第2所定位置に置かれるので、携帯機を携帯する操作者に触れた他の人が、操作者にロック解除の意思がないときにロック解除操作部を操作したり、携帯機を携帯する操作者が、ロック解除の意思があるときにとる姿勢以外の姿勢で、意図せずにロック解除操作部を操作してしまったりした場合には、ロック機構のロック解除は行われ難い。
【0011】
このようにして、携帯機を携帯する操作者にロック解除の意思がないときに誤ってロック解除が行われてしまうことを抑制することができる。
【0012】
また、請求項2に記載の発明では、
制御手段は、
第1基準信号の受信強度レベルよりも第2基準信号の受信強度レベルが高いときであって、第1判定信号の受信強度レベルよりも第2判定信号の受信強度レベルが低い場合、および、第1基準信号の受信強度レベルよりも第2基準信号の受信強度レベルが低いときであって、第1判定信号の受信強度レベルよりも第2判定信号の受信強度レベルが高い場合には、
ロック解除指示ステップにおいて、第1判定信号の受信強度レベルが第1判定条件に合致し、かつ、第2判定信号の受信強度レベルが第2判定条件に合致していても、ロック機構へのロック解除指示を中止することを特徴としている。
【0013】
第1基準信号の受信強度レベルと第2基準信号の受信強度レベルとが近似している等により、第1判定条件と第2判定条件とが一部重複している場合には、操作者の第2部位が機器の第1所定位置に置かれ、操作者の第1部位が機器の第2所定位置に置かれときに、第1判定信号の受信強度レベルが第1判定条件に合致し、第2判定信号の受信強度レベルが第2判定条件に合致してしまうことがある。ところが、操作者の第1、第2部位における信号強度レベルの大小関係は、環境等が変化しても逆転し難い。
【0014】
したがって、本請求項に記載の発明によれば、第1判定条件と第2判定条件とが一部重複しているときに、操作者がロック解除の意思があるときにとる姿勢以外の姿勢となって、第2部位を機器の第1所定位置に置き、第1部位を機器の第2所定位置に置いて、第1判定信号の受信強度レベルが第1判定条件に合致し、第2判定信号の受信強度レベルが第2判定条件に合致したとしても、ロック解除が行われることを防止できる。このようにして、携帯機を携帯する操作者にロック解除の意思がないときに誤ってロック解除が行われてしまうことを確実に抑制することができる。
【0015】
また、請求項3に記載の発明のように、機器を車両とし、操作者を車両の運転者とすることができる。
【0016】
また、請求項4に記載の発明のように、第1部位を運転者の左手とし、第2部位を運転者の右手とすることができる。
【0017】
また、請求項5に記載の発明のように、第1部位を運転者の手とし、第2部位を運転者の足とすることができる。
【0018】
また、請求項6に記載の発明では、車両は、運転席に運転者が着座しているか否かを検出する着座検出手段を備えており、制御手段は、着座検出手段が運転者の着座を検出していない場合には、ロック機構へのロック解除指示を中止することを特徴としている。
【0019】
これによると、ロック解除操作部が操作されたときに、運転者の第1部位が車両の第1所定位置に置かれ、かつ、運転者の第2部位が車両の第2所定位置に置かれていると判定した場合であっても、運転席に運転者が着座していない場合には、ロック解除は行われない。運転者の第1、第2部位が、ロック機構のロック解除を行う意思を持つときに置かれる第1、第2所定位置にあったとしても、運転者が運転席に着座していない場合には、運転者にロック解除の意思がない場合が多いので、誤ってロック解除が行われてしまうことを防止することができる。
【0020】
また、請求項7に記載の発明では、制御手段は、車両が起動された後であって、車両の自動変速機シフトレバーのシフト位置がパーキング位置に設定された後にこの設定が解除された場合、もしくは、車両が起動された後であって、車両のパーキングブレーキが制動状態に設定された後にこの制動状態が解除された場合には、判定条件設定ステップを再度実行して、第1判定条件および第2判定条件を更新することを特徴としている。
【0021】
車両が起動された後に、車両の自動変速機シフトレバーのシフト位置がパーキング位置に設定された後にこの設定が解除された場合、もしくは、車両のパーキングブレーキが制動状態に設定された後にこの制動状態が解除された場合、すなわち、車両の運転が一旦中断された場合には、車両の運転を中断している間に運転者は携帯機の携帯位置を容易に変更することができる。ところが、本請求項に記載の発明のように、車両の運転が一旦中断された場合には、判定条件設定ステップを再度実行して、第1判定条件および第2判定条件を更新することで、運転中断中に携帯機の携帯位置が変更されたとしても、運転再開後携帯機を携帯する運転者にロック解除の意思がないときに誤ってロック解除が行われてしまうことを抑制することができる。
【0022】
また、請求項8に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載のロック解除装置において、機器を工作機械とすることができる。
【0023】
また、請求項9に記載の発明のように、第1部位を工作機械操作者の左手とし、第2部位を工作機械操作者の右手とすることができる。
【0024】
また、請求項10に記載の発明では、工作機械は、操作者が操作位置に立っているか否かを検出する立ち位置検出手段を備えており、制御手段は、立ち位置検出手段が操作者が操作位置に立っていることを検出していない場合には、ロック機構へのロック解除指示を中止することを特徴としている。
【0025】
これによると、ロック解除操作部が操作されたときに、操作者の第1部位が工作機械の第1所定位置に置かれ、かつ、操作者の第2部位が工作機械の第2所定位置に置かれていると判定した場合であっても、操作者が操作位置に立っていない場合には、ロック解除は行われない。操作者の第1、第2部位が意思を持ってロック機構のロック解除をする第1、第2所定位置にあったとしても、操作者が工作機械の操作位置に立っていない場合には、操作者にロック解除の意思がない場合が多いので、誤ってロック解除が行われてしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明を適用した第1の実施形態におけるロック解除装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】車両1内におけるロック解除装置の受信インターフェースの配設位置を示す斜視図である。
【図3】車載器10が行うロック解除制御の概略制御動作を示すフローチャートである。
【図4】初期設定処理S110の制御動作を示すフローチャートである。
【図5】初期設定処理S110の処理動作の例を説明するためのブロック図である。
【図6】記憶手段15に記憶される情報の例を説明するためのグラフである。
【図7】左右判定処理S120の制御動作を示すフローチャートである。
【図8】一人操作判定処理S130の制御動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明を適用した第2の実施形態におけるロック解除装置の概略構成を示すブロック図である。
【図10】他の実施形態において、車両1の信号受信位置の組み合わせの例を説明するための図である。
【図11】他の実施形態において、車両1の信号受信位置の組み合わせの例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0028】
(第1の実施形態)
図1は、本発明を適用した第1の実施形態におけるロック解除装置の概略構成を示すブロック図であり、図2は、車両1内におけるロック解除装置の受信インターフェースの配設位置を示す斜視図である。
【0029】
本発明は、各種のロック解除装置に適用可能であるが、ここでは、車両のシフトレバーロックの解除を行うロック解除装置に本発明を適用した場合について説明する。
【0030】
図1に示すように、本実施形態のロック解除装置は、車両1に搭載されたシフトレバー用のロック機構2のロック解除を制御する制御手段である車載器10と、車両1の運転者90によって携帯される携帯機50とにより構成されている。携帯機50は電気的な信号を出力可能となっており、車載器10は、携帯機50から出力され運転者90の人体を伝送路として伝達された信号を受信し、ロック機構2を制御するようになっている。
【0031】
本実施形態の携帯機50は、運転者90の中心線よりも左右いずれかにずれた位置(左手91への距離と右手92への距離が異なる位置)に携帯されるべきものであって、図1に示す本例では、運転者90の左腕に装着されている。携帯機50が出力する信号は、人体の表面および表面近傍のみに微弱な電界を発生させることができる周波数の信号であり、比較的ノイズに強いFM変調(周波数変調)の信号としている。
【0032】
車載器10は、図示を省略したマイクロプロセッサやメモリ等によって構成されており、例えば、車室内のインストルメントパネル6(図2参照)の内側に配設されている。車載器10は、携帯機50からの信号を受信するための受信インターフェース16〜19を備えている。
【0033】
受信インターフェース16は、図2に示すステアリングホイール(以下、ステアリング)4の左側部(例えば車両直進状態のステアリング位置における左側部)4aに設けられ、受信インターフェース17は、図2に示すステアリング4の右側部(例えば車両直進状態のステアリング位置における右側部)4bに設けられている。また、受信インターフェース18は、図2に示すシフトレバー3に設けられ、受信インターフェース19は、図2に示す運転席5の例えば座面部に設けられている。
【0034】
次に、上記構成のロック解除装置の作動について説明する。図3は、車載器10が行うロック解除制御の概略制御動作を示すフローチャートである。図4は、図3に示す初期設定処理S110の制御動作を示すフローチャート、図7は、図3に示す左右判定処理S120の制御動作を示すフローチャート、図8は、図3に示す一人操作判定処理S130の制御動作を示すフローチャートである。
【0035】
図3に示すように、車載器10は、車両1の例えばイグニッションスイッチが操作されてエンジンが始動されると、まず初期設定処理S110を実行する。初期設定処理S110の実行は、機器である車両1が起動した際に行われるものであり、車両1が、例えば電気自動車やハイブリッド自動車である場合には、当該車両の走行を可能とするスタートスイッチが操作された際に実行される。
【0036】
初期設定処理S110は、図4に示すように、まず、ステップS111において、エンジン始動後に運転者90が両手でステアリング4に触れたか否か(左手がステアリング4の左側部4aに右手がステアリング4の右側部4bに触れたか否か)を判定する。ステップS111で運転者90が両手でステアリング4に触れたことを検出したら、ステップS112において、受信インターフェース16、17で受信した左右の信号受信レベルをそれぞれ検出し、ステップS113において、車載器10の記憶手段に左右の信号受信レベルをそれぞれ記憶させる。
【0037】
初期設定処理S110の上記した処理動作の具体例を、図5を用いて説明する。図5に示すように、車載器10は、接触検知信号生成手段11、接触判別手段12、起動信号生成手段13、受信手段14および記憶手段15を有している。
【0038】
接触検知信号生成手段11は、車載器10に設けられており、車両1に搭載された容量が大きい蓄電手段から給電を受けることが可能であるので、エンジン始動後は常時微弱な信号を発生している。接触検知信号生成手段11は、受信インターフェース16、17へIDを含まない微弱な交流電流を流す。
【0039】
これにより、インピーダンス計測と同じ要領で、運転者90の左手がステアリング4の左側部4aに、右手がステアリング4の右側部4bに接触した時に、両受信インターフェース16、17間に初めて電流が流れ、接触判別手段12が、運転者90が両手でステアリング4に触れたことを検知する。このとき、両受信インターフェース16、17は出力インターフェースとして機能している。なお、運転者90が両手でステアリング4に触れたことを検知する方法は、静電センサ、圧力センサ、温度センサなどの人の近接を検知する方法を採用してもかまわない。
【0040】
接触判別手段12は、運転者90の左手がステアリング4の左側部4aに右手がステアリング4の右側部4bに接触していると判断した場合には、運転者90が携帯する携帯機50を起動させるためのウェイクアップ信号を生成させるように起動信号生成手段13に命令を出す。起動信号生成手段13は、この命令を受けてウェイクアップ信号を出力し、ウェイクアップ信号がステアリング4の受信インターフェース16、17にまで送られる。ウェイクアップ信号は、操作手段の受信インターフェース16、17から手を介して携帯機50まで伝わる。これにより、これまでスリープモードであった携帯機50が起動しオン状態となる。このときも、両受信インターフェース16、17は出力インターフェースとして機能している。
【0041】
本例では、携帯機50が備える蓄電手段は比較的小容量であるので、省電力のために、ウェイクアップ信号を受信するまで携帯機50をスリープモードとしていたが、携帯機50は、常時オン状態であってもよく、その場合にはここまでの手順は不要である。
【0042】
起動した携帯機50は、前述した周波数変調の信号を出力する。この信号は、運転者90の人体を減衰しながら伝わって、左手から受信インターフェース16で受信され、右手から受信インターフェース17で受信され、受信手段14まで一対の信号が伝わる。そして、受信手段14は、各信号の受信レベル(信号強度レベル)をそれぞれ記憶手段15に保持する。
【0043】
車載器10は、図4に示すステップS113を実行したら、ステップS114へ進み、ロック機構2のロック解除を許可する際に用いる左右の判定条件(信号強度レベルの範囲)を設定し、これも記憶手段15に保持する。図4に示したステップS112〜ステップS114が実行されたときには、記憶手段15には、例えば、図6に示す情報が記憶される。
【0044】
携帯機50から出力され、人体を伝送路として減衰しつつ運転者90の左手91へ伝達された第1基準信号に相当する信号は、受信インターフェース16から受信手段14へ伝わって、受信インターフェース16で受信した第1基準信号の信号強度レベルが記憶手段15に記憶される。また、携帯機50から出力され、人体を伝送路として減衰しつつ運転者90の右手92へ伝達された第2基準信号に相当する信号は、受信インターフェース17から受信手段14へ伝わって、受信インターフェース17で受信した第2基準信号の信号強度レベルが記憶手段15に記憶される。本例では、携帯機50は運転者90の左腕に装着されているので、第1基準信号の強度レベルよりも第2基準信号の強度レベルの方が小さくなる。
【0045】
さらに、第1基準信号の受信強度レベルに基づいて、人体を信号が伝わるときの減衰誤差等を加味して、ロック解除を許可するか否かを判定する際に用いる左手用の第1判定条件を設定するとともに、第2基準信号の受信強度レベルに基づいて、人体を信号が伝わるときの減衰誤差等を加味して、ロック解除を許可するか否かを判定する際に用いる右手用の第2判定条件を設定する。
【0046】
ステップS111において、運転者90が両手でステアリング4に触れたことを検出しなかった場合には、何もせずにリターンし、運転者90が両手でステアリング4に触れるまで監視を継続する。
【0047】
以上説明したように、図3に示す初期設定処理S110を実行したら、ステップS120へ進んで左右判定処理を実行するとともに、ステップS130へ進んで一人操作判定処理を実行する。左右判定処理S120および一人操作判定処理S130は、並行して実行するものであってもよいし、順次実行するものであってもよい。
【0048】
左右判定処理S120は、図7に示すように、まず、ステップS121においてステアリング4の右側部4bとシフトレバー3とで信号を受信した際に開始される。
【0049】
右ハンドルの車両において運転者90がシフトレバー3を操作するときには、運転者90の右手92がステアリング4の右側部4bに触れ、運転者90の左手91がシフトレバー3に触れている状態が、運転者90の一般的な姿勢である。したがって、ステップS121でステアリング4の右側部4bの受信インターフェース17とシフトレバー3の受信インターフェース18とで信号を受信したら、シフトレバー3が操作されようとしていることになる。
【0050】
ここで、操作者である運転者90がロック解除操作部であるシフトレバー3を操作してロック機構2のロック解除をするときに、運転者90の第1部位である左手91が置かれるシフトレバー3が、本実施形態における第1所定位置に相当し、運転者90の第2部位である右手92が置かれるステアリング4の右側部4bが、本実施形態における第2所定位置に相当する。
【0051】
ステップS121においてステアリング4の右側部4bの受信インターフェース17とシフトレバー3の受信インターフェース18とで信号を受信したら、ステップS122において、受信インターフェース18で受信した左手側の信号受信レベルが受信インターフェース17で受信した右手側の信号受信レベルよりも大きいか否か判断する。
【0052】
ステップS122において、受信インターフェース18で受信した左手側の信号受信レベルが受信インターフェース17で受信した右手側の信号受信レベルよりも大きいと判断した場合、すなわち、受信インターフェース18で受信した左手側の信号受信レベルと受信インターフェース17で受信した右手側の信号受信レベルとの大小関係が、初期設定処理S110で記憶した左手用の第1基準信号の強度レベルと右手用の第2基準信号の強度レベルとの大小関係と同一であると判断した場合には、ステップS123において左右は正しい(左手と右手とが逆になっていない)とする。
【0053】
一方、ステップS122において、受信インターフェース18で受信した左手側の信号受信レベルが受信インターフェース17で受信した右手側の信号受信レベルよりも小さいと判断した場合、すなわち、受信インターフェース18で受信した左手側の信号受信レベルと受信インターフェース17で受信した右手側の信号受信レベルとの大小関係が、初期設定処理S110で記憶した左手用の第1基準信号の強度レベルと右手用の第2基準信号の強度レベルとの大小関係と逆であると判断した場合には、ステップS124において左右は正しくない(左手と右手とが逆になっている)とする。
【0054】
そして、ステップS123、S124のいずれかを実行したら、ステップS125へ進んで、ステップS123もしくはステップS124で決定した左右が正しいもしくは左右が間違っているという情報を記憶する。
【0055】
一人操作判定処理S130は、図8に示すように、まず、左右判定処理S120と同様に、ステップS121においてステアリング4の右側部4bとシフトレバー3とで信号を受信した際に開始される。
【0056】
ステップS121においてステアリング4の右側部4bの受信インターフェース17とシフトレバー3の受信インターフェース18とで信号を受信したら、ステップS132において、受信した各信号の受信強度レベルが判定レベルの範囲内にあるか否か判断する。受信インターフェース18で受信した左手側の信号受信レベルが、ステップS114で設定した左手用の第1判定条件に合致し(例えば図6に示した第1判定条件の強度レベル範囲に入り)、かつ、受信インターフェース17で受信した右手側の信号受信レベルが、ステップS114で設定した右手用の第2判定条件に合致する(例えば図6に示した第2判定条件の強度レベル範囲に入る)か否か判断する。
【0057】
ステップS132において、両信号の受信強度レベルが判定レベルの範囲内にあると判断した場合には、ステップS133において、一人で操作しているものとする。受信信号強度レベルが人体を伝達する際の減衰誤差等を加味した判定条件範囲内にあることから、運転者90以外の人が介在して信号が伝達されたものではないとする。
【0058】
一方、ステップS132において、両信号の受信強度レベルの少なくともいずれかが判定レベルの範囲内にないと判断した場合には、ステップS134において、一人で操作されていないものとする。受信信号強度レベルが人体を伝達する際の減衰誤差等を加味した判定条件範囲外にあることから、例えば運転者90以外の人が介在する等して信号が伝達され、減衰量が変化したものとする。
【0059】
そして、ステップS133、S134のいずれかを実行したら、ステップS135へ進んで、ステップS133もしくはステップS134で決定した一人操作であるもしくは一人操作でないという情報を記憶する。
【0060】
図1に示すように、左右判定処理S120および一人操作判定処理S130を実行したら、ステップS140へ進み、ステップS125およびステップS135で記憶した情報から、左右が正しく一人操作であるか否かを判断する。すなわち、シフトレバー3に運転者90の左手91が置かれ、ステアリング4の右側部4bに運転者90の右手92が置かれて、運転者90が一人でステアリング4を握りつつシフトレバー3を操作しようとしているか否かを判断する。
【0061】
ステップS140において、左右が正しく一人操作であると判断した場合には、ステップS150へ進んで、ロック機構2をアンロック状態とする。シフトレバー3に運転者90の左手91が置かれ、ステアリング4の右側部4bに運転者90の右手92が置かれて、運転者90が一人でステアリング4を握りつつシフトレバー3を操作しようとしているので、シフトレバー3用のロック機構2を解除して、シフトレバー3によるシフト操作を可能にする。
【0062】
一方、ステップS140において、少なくとも、左右が正しくない、もしくは、一人操作でないと判断した場合には、ステップS160へ進んで、ロック機構2のロック状態を維持する。シフトレバー3に運転者90の右手92が触れステアリング4の右側部4bに運転者90の左手91が触れるという、シフト操作する際に運転者90がとる正常な姿勢ではないか、運転者90がシフトレバー3およびステアリング4の右側部4bに直接触れておらず他の人が介在している(運転者90に触れた人が、シフトレバー3およびステアリング4の右側部4bの少なくともいずれかに触れている)ことが想定されるので、ロック機構2を解除せず、シフトレバー3によるシフト操作を可能としない。
【0063】
ここで、図3に示すステップS110が、本実施形態における判定条件設定ステップに相当し、図3に示すステップS120、S130、S140、S150、S160が、本実施形態におけるロック解除指示ステップに相当する。
【0064】
上述の構成および作動によれば、本実施形態のロック解除装置の車載器10は、車両1が起動された際には、携帯機50から人体を伝送路として運転者90の左手91へ伝達された信号を第1基準信号としてステアリング4の左側部4aの受信インターフェース16で受信し、この第1基準信号の受信強度レベルに基づいてロック解除を許可するための第1判定条件を設定するとともに、携帯機50から人体を伝送路として運転者90の右手92へ伝達された信号を第2基準信号としてステアリング4の右側部4bの受信インターフェース17で受信し、この第2基準信号の受信強度レベルに基づいてロック解除を許可するための第2判定条件を設定する。
【0065】
そして、判定条件が設定された後にシフトレバー3が操作されようとすると、シフトレバー3の受信インターフェース18で受信した信号を第1判定信号とし、この第1判定信号の受信強度レベルが第1判定条件に合致し、かつ、ステアリング4の右側部4bの受信インターフェース17で受信した信号を第2判定信号とし、この第2判定信号の受信強度レベルが第2判定条件に合致し、さらに、第1判定信号と第2判定信号との受信強度レベルの大小関係が、第1基準信号と第2基準信号との受信強度レベルの大小関係と一致した場合に、ロック機構2によるシフトレバー3のロック状態の解除を行う。
【0066】
したがって、シフトレバー3に人が触れたときには、運転者90が単独で、かつ、運転者90がシフトレバー3によるシフト操作する意思があるときにとる姿勢である場合に、ロック機構2のロック状態を解除することができる。運転者90に触れた他の人が、運転者90にシフト操作の意思がないときにシフトレバー3を操作したり、運転者90が、シフト操作の意思がないときにとる姿勢で意図せずにシフトレバー3に触れてしまったりした場合には、ロック機構2のロック解除は行われない。このようにして、携帯機50を携帯する運転者90にシフトレバー3のシフト操作の意思がないときに誤ってロック機構2のロック解除が行われてしまうことを防止することができる。
【0067】
また、車載器10は、携帯機50が出力する信号の受信レベルに基づいてロック解除の制御を行っており、信号にIDを含ませて照合することは行っていない。したがって、ID等が破損してロック解除が不可能になることを確実に防止することができる。
【0068】
上述した実施形態では説明を省略していたが、車載器10は、運転席に運転者が着座しているか否かを検出する着座検出手段となる受信インターフェース19を備えており、携帯機50から人体を伝わり受信インターフェース19で受信した信号の受信強度レベルから運転者90の着座の有無を確認し、ステップS140において、左右および一人操作に加え着座も確認できたときにはロック解除を許可し、着座が確認できなかったときには、ロック解除を行わないものとすることができる。これによれば、運転者90が着座しておらず運転者90にシフト操作の意思がない場合に、誤ったロック解除を確実に防止することができる。また、運転者90が、腰を浮かせてシフト操作をする等の安全上問題がある姿勢では、シフト操作を禁止することができ、安全性を高めることができる。
【0069】
なお、受信インターフェース19で受信した信号による運転者の着座検出は、初期設定処理S110を行う際に、基準信号を受信して判定条件を設定するものであってもよいし、基準信号を受信せずに予め所定の判定条件を設定するものであってもよい。また、運転者の着座検出は、運転席シート内に設けられた例えば感圧式の着座センサからの信号等を利用するものであってもかまわない。
【0070】
また、車載器10は、初期設定処理ステップS110を、車両1が起動した際に行うことのみ説明していたが、車両1が起動された後であって、車両1のシフトレバー3のシフト位置がパーキング位置に設定された後にこの設定が解除された場合、もしくは、車両1が起動された後であって、車両1のパーキングブレーキが制動状態に設定された後にこの制動状態が解除された場合には、ステップS110を再度実行して第1基準信号および第2基準信号を受信し、第1判定条件および第2判定条件を更新することが好ましい。
【0071】
車両1が起動された後に、車両1の自動変速機のシフトレバー3のシフト位置がパーキング位置に設定された後にこの設定が解除された場合、もしくは、車両1のパーキングブレーキが制動状態に設定された後にこの制動状態が解除された場合には、車両1の運転を中断している間に、運転者90は携帯機50の携帯位置を容易に変更することができる。したがって、このようなときに、ステップS110を再度実行して第1基準信号および第2基準信号を受信し第1判定条件および第2判定条件を更新すれば、携帯機50の携帯位置が変更されたとしても対応することができる。
【0072】
なお、第1基準信号および第2基準信号を受信し第1判定条件および第2判定条件を更新するための初期設定処理の再実行は、所定時間毎に行うものであってもよい。所定時間毎の初期設定処理の再実行は、ステアリング4に両手が触れている場合に限り、触れていなければ触れるまで待機して触れた時点で行うものであってもよいし、触れていなければその回の再実行をキャンセルするものであってもよい。
【0073】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について図9に基づいて説明する。
【0074】
本第2の実施形態は、本発明を工作機械に適用した例である。なお、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。
【0075】
図9に示すように、本実施形態のロック解除装置は、工作機械201の作動部のロック機構2のロック解除を制御する制御手段である制御器210と、工作機械201の操作者290の例えば左腕に装着されて携帯される携帯機50とにより構成されている。本実施形態では、工作機械201が機器に相当し、工作機械201を操作する操作者290の左手91が第1部位に、操作者290の右手92が第2部位に相当する。
【0076】
工作機械201は、左手で操作されるべき第1操作釦203と右手で操作されるべき第2操作釦204とからなる所謂両手スイッチで作動部が作動するようになっており、第1操作釦203に受信インターフェース16が、第2操作釦204に受信インターフェース17が設けられている。したがって、本実施形態においては、第1操作釦203が第1所定位置に相当し、第2操作釦204が第2所定位置に相当する。また、第1、第2操作釦203、204の少なくともいずれかがロック解除操作部に相当する。
【0077】
制御器210は、第1の実施形態の車載器10と同様の制御を行うようになっている。ただし、左右判定処理S120および一人操作判定処理S130のステップS121では、第1操作釦203の受信インターフェース16と第2操作釦204の受信インターフェース17とでそれぞれ信号を受信する。
【0078】
上述の構成および作動によれば、本実施形態のロック解除装置の制御器210は、工作機械201が起動された際には、携帯機50から人体を伝送路として操作者290の左手91へ伝達された信号を第1基準信号として第1操作釦203の受信インターフェース16で受信し、この第1基準信号の受信強度レベルに基づいてロック解除を許可するための第1判定条件を設定するとともに、携帯機50から人体を伝送路として操作者290の右手92へ伝達された信号を第2基準信号として第2操作釦204の受信インターフェース17で受信し、この第2基準信号の受信強度レベルに基づいてロック解除を許可するための第2判定条件を設定する。
【0079】
そして、判定条件が設定された後に第1、第2操作釦203、204が操作されようとすると、受信インターフェース16で受信した信号を第1判定信号とし、この第1判定信号の受信強度レベルが第1判定条件に合致し、かつ、受信インターフェース17で受信した信号を第2判定信号とし、この第2判定信号の受信強度レベルが第2判定条件に合致し、さらに、第1判定信号と第2判定信号との受信強度レベルの大小関係が、第1基準信号と第2基準信号との受信強度レベルの大小関係と一致した場合に、ロック機構2のロック状態の解除を行う。
【0080】
したがって、第1、第2操作釦203、204に人が触れたときには、操作者290が単独で、かつ、操作者290が第1、第2操作釦203、204による操作意思があるときにとる姿勢である場合に、ロック機構2のロック状態を解除することができる。例えば、操作者290が第1、第2操作釦203、204の一方に触れているときに、操作者290に触れた他の人が第1、第2操作釦203、204の他方に触れてしまったり、操作者290が、例えば工作機械201を背にするような操作意思がないときにとる姿勢で意図せずに第1、第2操作釦203、204の両方に触れてしまったりした場合には、ロック機構2のロック解除は行われない。このようにして、携帯機50を携帯する操作者290に工作機械201の作動部を作動させる操作の意思がないときに誤ってロック機構2のロック解除が行われてしまうことを防止することができる。
【0081】
また、制御器210は、携帯機50が出力する信号の受信レベルに基づいてロック解除の制御を行っており、信号にIDを含ませて照合することは行っていない。したがって、ID等が破損してロック解除が不可能になることを確実に防止することができる。
【0082】
上述した実施形態では説明を省略していたが、制御器210は、操作者290が正規の操作位置に立っているか否か検出する立ち位置検出手段となる受信インターフェース219を備えており、携帯機50から人体を伝わり受信インターフェース219で受信した信号の受信強度レベルから操作者290が正規の立ち位置にいるか否かを確認し、ステップS140において、左右および一人操作に加え正規の立ち位置にいることも確認できたときにはロック解除を許可し、正規の立ち位置にいることが確認できなかったときには、ロック解除を行わないものとすることができる。これによれば、操作者290が正常な操作位置に立っておらず操作者290が不自然な姿勢をとっている場合には、第1、第2操作釦203、204を操作していたとしても、作動部が作動することを禁止でき、安全性を高めることができる。
【0083】
なお、受信インターフェース219で受信した信号による操作者の立ち位置検出は、初期設定処理S110を行う際に、基準信号を受信して判定条件を設定するものであってもよいし、基準信号を受信せずに予め所定の判定条件を設定するものであってもよい。また、操作者の立ち位置検出は、床面に設けられた例えば感圧式の立ち位置センサからの信号等を利用するものであってもかまわない。
【0084】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0085】
上記各実施形態では、初期設定処理S110において、第1、第2基準信号の受信レベルを記憶するとともに、第1基準信号の受信レベルに基づいてロック解除を許可するか否かを判定する際に用いる左手用の第1判定条件を設定するとともに、第2基準信号の受信強度レベルに基づいてロック解除を許可するか否かを判定する際に用いる右手用の第2判定条件を設定していた。そして、図6において、それぞれ上下限値を有し、基準信号受信レベルと上限値との差が、基準信号受信レベルと下限値との差よりも大きい判定条件を例示していたが、これに限定されるものではない。
【0086】
例えば、基準信号受信レベルと上限値との差が基準信号受信レベルと下限値との差と等しい判定条件、すなわち、上下限値の中央に基準信号受信レベルがあるような判定条件を設定するものであってもよい。また、上限値を設けずに下限値のみの判定条件を設定するものであってもよい。下限値を一人分の信号伝搬損失およびそのばらつきを考慮した閾値とすることで、携帯機50を携帯した当人のみがロック解除を行うことが可能となり、誤ったロック解除を防止して安全性を高めることが可能となる。
【0087】
また、上記第1の実施形態では、車両1のシフトレバーロックの解除を行うロック解除装置に本発明を適用した場合について説明していたが、他のロック機構のロック解除を行うロック解除装置にも本発明は適用可能である。例えば、チャイルドロックのロック解除やウィンドロックのロック解除を行う場合にも本発明は適用することができる。また、複数のロック機構のロック解除を行う場合にも適用でき、複数のロック解除を許可するため判定条件を共通化することも可能である。例えば、車両1のステアリング4に運転者90の両手が触れた際に初期設定処理S110を実行して第1、第2判定条件を設定し、シフトレバーロックの解除、チャイルドロックの解除およびウィンドロックの解除の判定条件として、共通の第1、第2判定条件を用いることが可能である。
【0088】
また、上記各実施形態では、左右判定処理S120および一人操作判定処理S130を実行し、ステップS140では、左右判定処理S120および一人操作判定処理S130の結果に基づいて左右が正しく一人操作であるか否かを判断していたが、左右判定処理S120および左右判定処理S120の結果に基づく左右が正しいか否かを判断することは省略することも可能である。例えば、図6に示した第1判定条件の下限値が第2判定条件の上限値よりも確実に高くなるような場合には、左右判定処理S120および左右判定処理S120の結果に基づく左右が正しいか否かの判断は省略することができる。
【0089】
また、上記第1の実施形態では、第1基準信号の受信を受信インターフェース16で行い、第1判定信号の受信を受信インターフェース18で行い、第2基準信号および第2判定信号の受信を受信インターフェース17で行っていた。第2の実施形態では、第1基準信号および第1判定信号の受信を受信インターフェース16で行い、第2基準信号および第2判定信号の受信を受信インターフェース17で行っていた。しかしながら、各信号を受信する受信インターフェース、すなわち、信号の受信位置はこれらに限定されるものではなく、各信号を受信する受信インターフェースは、一部を共用してもよいし、各信号毎に全て別の受信インターフェースを用いてもかまわない。
【0090】
第1、第2基準信号を受信する位置は、機器を操作する操作者が機器を起動したときにとりやすい姿勢において、操作者の第1部位および第2部位が触れる位置が好ましく、機器が車両1である場合には、第1の実施形態のように、ステアリング4の左側部4aと右側部4bとすることができる。また、第1、第2判定信号を受信する位置、すなわち、本発明で言うところの第1、第2所定位置は、操作者がロック解除操作部を操作してロック解除を行おうとするときに、操作者の第1、第2部位が触れる位置であり、少なくとも一方は、ロック解除操作部とすることが好ましい。例えば、ウィンドロック解除の場合には、ウィンドロック解除スイッチを、第1、第2所定位置のいずれかとすることができる。
【0091】
操作者の第1、第2部位は、左手および右手に限定されるものではなく、手および足とすることも可能である。機器が車両1である場合に、第1、第2部位を、手および足とした場合には、信号を受信するための受信インターフェースの1つは乗員の足元に設ける必要があり、例えばフットペダルやフットレストに設けることができる。フットペダルに受信インターフェースを設ける場合には、ブレーキペダルとすることが好ましいが、ウィンドロックのロック解除やシフトレバーのロック解除を行うときには、走行中に操作する可能性があるため、アクセルペダルとすることも可能である。
【0092】
以下、図10および図11を用いて、車両1において、上記第1の実施形態で示した例以外に、信号を受信する位置(基準信号もしくは判定信号を受信する受信インターフェース配設位置)として採用することが可能な位置の組み合わせの例を説明する。
【0093】
図10に示すように、ステアリングの右側部とアームレストとの組み合わせ901、ステアリングの右側部とフットペダル(ブレーキペダル、アクセルペダル)との組み合わせ902を採用することが可能である。また、図11に示すように、ステアリングの右側部と室内灯・ミラー付近との組み合わせ903、ステアリングの右側部とフロントドアとの組み合わせ904、ステアリングの右側部とセンターコンソールもしくはインストルメントパネルに設けられたナビゲーション、オーディオ、エアコン操作部等との組み合わせ905、リアドアとルーフ・室内灯付近との組み合わせ906、左右のリアドア同士の組み合わせ907等を採用することが可能である。
【0094】
また、上記各実施形態では、機器は車両もしくは工作機械であったが、これらに限定されるものではなく、ロック機構を備える機器であれば、本発明は広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 車両(機器)
2 ロック機構
3 シフトレバー(ロック解除操作部、第1所定位置)
4 ステアリングホイール
4b 右側部(第2所定位置)
5 運転席
10 車載器(制御手段)
19 受信インターフェース(着座検出手段)
50 携帯機
90 運転者(操作者)
91 左手(第1部位)
92 右手(第2部位)
201 工作機械(機器)
203 第1操作釦(ロック解除操作部、第1所定位置)
204 第2操作釦(ロック解除操作部、第2所定位置)
210 制御器(制御手段)
219 受信インターフェース(立ち位置検出手段)
290 操作者
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器に設けられたロック解除操作部が操作された際に前記機器に設けられたロック機構のロック解除を制御する制御手段と、
前記機器を操作する操作者に携帯された状態で信号を出力する携帯機と、を備え、
前記操作者が前記ロック解除操作部を操作して前記ロック解除をするときに、前記操作者の第1部位が前記機器の第1所定位置に置かれ、前記操作者の前記第1部位とは異なる第2部位が前記第1所定位置とは異なる前記機器の第2所定位置に置かれるロック解除装置であり、
前記制御手段は、
前記機器が起動された際に、
前記携帯機から人体を伝送路として前記第1部位へ伝達された信号を第1基準信号として受信し、当該第1基準信号の受信強度レベルに基づいて前記ロック解除を許可するための第1判定条件を設定するとともに、前記携帯機から人体を伝送路として前記第2部位へ伝達された信号を第2基準信号として受信し、当該第2基準信号の受信強度レベルに基づいて前記ロック解除を許可するための第2判定条件を設定する判定条件設定ステップを実行し、
前記判定条件設定ステップが実行された後に、前記ロック解除操作部が操作された際には、
前記第1所定位置で受信した信号を第1判定信号とし、当該第1判定信号の受信強度レベルが前記第1判定条件に合致し、かつ、前記第2所定位置で受信した信号を第2判定信号とし、当該第2判定信号の受信強度レベルが前記第2判定条件に合致した場合に、前記ロック機構へロック解除指示を行うロック解除指示ステップを実行することを特徴とするロック解除装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記第1基準信号の受信強度レベルよりも前記第2基準信号の受信強度レベルが高いときであって、前記第1判定信号の受信強度レベルよりも前記第2判定信号の受信強度レベルが低い場合、および、前記第1基準信号の受信強度レベルよりも前記第2基準信号の受信強度レベルが低いときであって、前記第1判定信号の受信強度レベルよりも前記第2判定信号の受信強度レベルが高い場合には、
前記ロック解除指示ステップにおいて、前記第1判定信号の受信強度レベルが前記第1判定条件に合致し、かつ、前記第2判定信号の受信強度レベルが前記第2判定条件に合致していても、前記ロック機構へのロック解除指示を中止することを特徴とする請求項1に記載のロック解除装置。
【請求項3】
前記機器は、車両であり、前記操作者は、前記車両の運転者であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のロック解除装置。
【請求項4】
前記第1部位は左手であり、前記第2部位は右手であることを特徴とする請求項3に記載のロック解除装置。
【請求項5】
前記第1部位は手であり、前記第2部位は足であることを特徴とする請求項3に記載のロック解除装置。
【請求項6】
前記車両は、運転席に前記運転者が着座しているか否かを検出する着座検出手段を備えており、
前記制御手段は、前記着座検出手段が前記運転者の着座を検出していない場合には、前記ロック機構へのロック解除指示を中止することを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれか1つに記載のロック解除装置。
【請求項7】
前記制御手段は、
前記車両が起動された後であって、前記車両の自動変速機シフトレバーのシフト位置がパーキング位置に設定された後に当該設定が解除された場合、もしくは、前記車両が起動された後であって、前記車両のパーキングブレーキが制動状態に設定された後に当該制動状態が解除された場合には、
前記判定条件設定ステップを再度実行して、前記第1判定条件および前記第2判定条件を更新することを特徴とする請求項3ないし請求項6のいずれか1つに記載のロック解除装置。
【請求項8】
前記機器は、工作機械であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のロック解除装置。
【請求項9】
前記第1部位は左手であり、前記第2部位は右手であることを特徴とする請求項8に記載のロック解除装置。
【請求項10】
前記工作機械は、前記操作者が操作位置に立っているか否かを検出する立ち位置検出手段を備えており、
前記制御手段は、前記立ち位置検出手段が前記操作者が前記操作位置に立っていることを検出していない場合には、前記ロック機構へのロック解除指示を中止することを特徴とする請求項8または請求項9に記載のロック解除装置。
【請求項1】
機器に設けられたロック解除操作部が操作された際に前記機器に設けられたロック機構のロック解除を制御する制御手段と、
前記機器を操作する操作者に携帯された状態で信号を出力する携帯機と、を備え、
前記操作者が前記ロック解除操作部を操作して前記ロック解除をするときに、前記操作者の第1部位が前記機器の第1所定位置に置かれ、前記操作者の前記第1部位とは異なる第2部位が前記第1所定位置とは異なる前記機器の第2所定位置に置かれるロック解除装置であり、
前記制御手段は、
前記機器が起動された際に、
前記携帯機から人体を伝送路として前記第1部位へ伝達された信号を第1基準信号として受信し、当該第1基準信号の受信強度レベルに基づいて前記ロック解除を許可するための第1判定条件を設定するとともに、前記携帯機から人体を伝送路として前記第2部位へ伝達された信号を第2基準信号として受信し、当該第2基準信号の受信強度レベルに基づいて前記ロック解除を許可するための第2判定条件を設定する判定条件設定ステップを実行し、
前記判定条件設定ステップが実行された後に、前記ロック解除操作部が操作された際には、
前記第1所定位置で受信した信号を第1判定信号とし、当該第1判定信号の受信強度レベルが前記第1判定条件に合致し、かつ、前記第2所定位置で受信した信号を第2判定信号とし、当該第2判定信号の受信強度レベルが前記第2判定条件に合致した場合に、前記ロック機構へロック解除指示を行うロック解除指示ステップを実行することを特徴とするロック解除装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記第1基準信号の受信強度レベルよりも前記第2基準信号の受信強度レベルが高いときであって、前記第1判定信号の受信強度レベルよりも前記第2判定信号の受信強度レベルが低い場合、および、前記第1基準信号の受信強度レベルよりも前記第2基準信号の受信強度レベルが低いときであって、前記第1判定信号の受信強度レベルよりも前記第2判定信号の受信強度レベルが高い場合には、
前記ロック解除指示ステップにおいて、前記第1判定信号の受信強度レベルが前記第1判定条件に合致し、かつ、前記第2判定信号の受信強度レベルが前記第2判定条件に合致していても、前記ロック機構へのロック解除指示を中止することを特徴とする請求項1に記載のロック解除装置。
【請求項3】
前記機器は、車両であり、前記操作者は、前記車両の運転者であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のロック解除装置。
【請求項4】
前記第1部位は左手であり、前記第2部位は右手であることを特徴とする請求項3に記載のロック解除装置。
【請求項5】
前記第1部位は手であり、前記第2部位は足であることを特徴とする請求項3に記載のロック解除装置。
【請求項6】
前記車両は、運転席に前記運転者が着座しているか否かを検出する着座検出手段を備えており、
前記制御手段は、前記着座検出手段が前記運転者の着座を検出していない場合には、前記ロック機構へのロック解除指示を中止することを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれか1つに記載のロック解除装置。
【請求項7】
前記制御手段は、
前記車両が起動された後であって、前記車両の自動変速機シフトレバーのシフト位置がパーキング位置に設定された後に当該設定が解除された場合、もしくは、前記車両が起動された後であって、前記車両のパーキングブレーキが制動状態に設定された後に当該制動状態が解除された場合には、
前記判定条件設定ステップを再度実行して、前記第1判定条件および前記第2判定条件を更新することを特徴とする請求項3ないし請求項6のいずれか1つに記載のロック解除装置。
【請求項8】
前記機器は、工作機械であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のロック解除装置。
【請求項9】
前記第1部位は左手であり、前記第2部位は右手であることを特徴とする請求項8に記載のロック解除装置。
【請求項10】
前記工作機械は、前記操作者が操作位置に立っているか否かを検出する立ち位置検出手段を備えており、
前記制御手段は、前記立ち位置検出手段が前記操作者が前記操作位置に立っていることを検出していない場合には、前記ロック機構へのロック解除指示を中止することを特徴とする請求項8または請求項9に記載のロック解除装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−169028(P2011−169028A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33964(P2010−33964)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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