説明

ロッドの製造方法

【課題】直径及び直線性の点で寸法精度が高いロッド、とりわけそのような円形ロッドの製造を可能にすること。
【解決手段】最外層を形成し、かつ少なくとも50質量%が部分結晶性の熱可塑性樹脂から成る第一のプラスチック成形材料から、プラスチック異形材を押出成形する工程、キャリブレーターの内部で、押出成形されたばかりの異形材を、第二のプラスチック成形材料で充填する工程、及び新たに形成されたロッドをサイジングし、引き取り、冷却する工程を有する、ロッドの製造方法において、前記第一のプラスチック成形材料が、クリスタリット融点Tmが少なくとも170℃であり、結晶化温度Tkが、Tmを最大70K下回り、かつ溶融エンタルピーΔHが、少なくとも20J/gであるという特性値を有することを特徴とする、前記製造方法。
【効果】本発明によるロッドはとりわけ、完成部材の切削製造用半製品として適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部分結晶性の熱可塑性樹脂製ロッドを押出成形するための方法に関する。このようなロッドは緻密であってよく、この場合これを「完全ロッド」と呼ぶ。これの特別な場合が、円形ロッドである。EN ISO 15860によれば円形ロッドとは、その全長にわたって一定の円形断面を有する、押出成形、注型、又は圧力成形された、長い直線状の中実な製品である。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性プラスチック製のロッドは、好適には完成部材の切削製造のために使用され、とりわけロット数が少ない完成部材の切削製造に、また射出成形法若しくは他のプラスチック加工法によって製造が困難であるか、又はほとんど製造できない原型部品又は部材の切削製造に使用される。
【0003】
高融点の熱可塑性樹脂(例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK))からのこのような部材の作製は、使用者の観点からは、むしろ古典的な金属加工に似ている。規格化された半製品、例えば管、異形材、又はロッドは、切削により、基準に則った所望の形態になる。古典的なプラスチック作製に相応して、半製品のみが製造される。よって異形材、管、又は完全ロッドは、押出装置で原則的には、PP又はPEから相応する半製品を製造する際に慣用のように押出成形される。
【0004】
より直径の小さなロッドは、熱可塑性成形材料を慣用的に押出成形することによって良好な品質で得られる。使用する成形材料によっては、直径約20mmから、この方法が困難になる。と言うのも、押出成形されたロッドから冷却により排出される熱エネルギーが高いため、充分な変形安定性は、長い冷却時間の後にしか得られず、これにより、ロッドが自重でへたったり、このため断面積が変わってしまったり、又はたわみにつながったりと、不利に作用する。ロッドに改善された冷却条件をもたらすため、押出成形速度を低下させると、経済的な作製コストが、現実的には不可能な値に高まってしまう。
【0005】
独国特許出願公開第102004015072A1号の出願では、押出成形時に型の中で溶融プラスチックを2つの流れに分け、ここで外側に配置された溶融物から、従来の方法に従って管が押出成形される。第二の溶融物は、注入管により管に満たされる。管が崩壊しないように、支持空気がヘッドを介して供給され、かつサイジング(Kalibrierung)で減圧が適用される。さらに、この方法によって、優れた光学特性を有し、かつ断面では寸法精度が特に高い円形ロッドが製造できると指摘されている。
【0006】
独国特許出願公開第3718036A1号の出願には、断面寸法が大きい成形部材を、多層押出成形で製造する方法が記載されており、当該成形部材の例は、ポリエチレン製の衝撃吸収材又は保護カバーである。ここで、溶融された材料の第一の流れは、中空異形材を成形するために用いられ、この異形材はサイジングジャケットで冷却され、そして溶融された材料の第二の流れは、中空空間へと押出成形される。ここで溶融物は、異形材がサイジングを出る場所とほぼ同じところで注入される。しかしながら、硬化した外部の中空異形材は、なお一定の可撓性を有し、この際に、内部空間形成(Bauchbildung)によって拡張し、本来望まれていたよりも多くの材料体積を受け入れることになる。引き続き冷却時に収縮することにより、中空空間若しくは空洞(Lunker)の形成が、打ち消される。
【0007】
しかしながら、この従来技術は、満足のいくものではない。独国特許出願公開第102004015072A1号の出願は、非晶質の熱可塑性樹脂のみに関する。この方法で部分結晶性の熱可塑性樹脂を加工しようとすれば、この材料の収縮性が高いため、さらなる加工に耐えられない中空空間が、冷却時に形成されるという危険がある。中空空間の形成を適切に拡張することで対抗制御される独国特許出願公開第3718036A1号明細書の試験では、正確な寸法精度が実現できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第102004015072A1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第3718036A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、以下の要求を満たす部分結晶性の熱可塑性樹脂製ロッドを製造することである:
・直径が約20mm〜のロッドで、直径における寸法精度の観点から、慣用の押出成形よりも改善がもたらされるべきであった。理想的な場合には、DIN 16980及びEN ISO 15860の基準に記載の許容性が、ほぼ達成されるか、又はこれを下回る;
・軸線からのロッドの逸脱が、その外縁及び1mの長さに対して、同様にできる限り僅かであるべきであった。直線性からの逸脱は、切削加工では問題に繋がることがある;
・完全ロッドは、中空空間も、空洞も有してはならない。と言うのも、これらはさらなる加工時、及び後の完成部品の機能にとって、非常に問題となり得るからである;
・完全ロッドはさらに、切削作業を容易にするため、そして同作業により生じ得る歪みを減少させるため、内部応力ができる限り僅かであることが望ましかった。内部応力は、完全ロッドから注意深く切り出した薄いディスクの歪みによって評価できる;
・最後に、様々な材料から成る多層のロッドを製造する可能性が達成されるべきであった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、以下の工程a)〜c)を有する、ロッドの製造方法により解決された:
a)最外層を形成し、かつ少なくとも50質量%、好適には少なくとも60質量%、特に好適には少なくとも70質量%、とりわけ好ましくは少なくとも80質量%が部分結晶性の熱可塑性樹脂から成る第一のプラスチック成形材料から、プラスチック異形材を押出成形する工程、
b)キャリブレーターの内部で、押出成形されたばかりの異形材を、第二のプラスチック成形材料で充填する工程、及び
c)新たに形成されたロッドをサイジングし、引き取り、冷却する工程
を有する、ロッドの製造方法において、前記第一のプラスチック成形材料が、以下の特性値:
・クリスタリット融点Tmが少なくとも170℃、少なくとも185℃、特に好ましくは少なくとも200℃、とりわけ好適には少なくとも215℃であること、
・結晶化温度Tkが、Tmを最大70K下回り、好適にはTmを最大60K下回り、特に好ましくはTmを最大55K下回り、とりわけ好ましくはTmを最大50K下回ること、
・結晶化度に対する基準としての溶融エンタルピーΔHが、少なくとも20J/g、好ましくは少なくとも25J/g、特に好ましくは少なくとも30J/g、とりわけ好ましくは少なくとも35J/g、極めて特に好ましくは少なくとも40J/gであること、
ここで、ISO 11357準拠のTm、Tk、及びΔHは、室温から最大390℃へと、20K/分の加熱速度で加熱し、20K/分の冷却速度で−60℃まで冷却し、そして二度目の加熱で最大390℃まで20K/分の加熱速度で加熱することによって、測定される。Tm、及びΔHが、二度の加熱時に測定されるのに対して、Tkは冷却時に測定される。最大加熱温度は、熱安定性に、またTmに依存する;ここでは、少なくとも約60K、Tmを越えることが推奨される。
【0011】
第一のプラスチック成形材料のクリスタリット融点Tmは、押出成形された異形材の充分に迅速な硬化を保証するため、少なくとも170℃でなければならない。しかしながら、この条件だけでは充分ではない。結晶化が遅くなると、異形材はサイジングを出た後になお、充填物の溶融圧力により拡張が引き起こされるほどに、可撓性であろう。この理由からさらに、冷却時の結晶化はできるだけ早く始める、つまりTkができるだけ高くなければならない。結晶化度はさらに、所望の硬化を保証するため、充分に高くなければならない。このことは、実験によって、溶融エンタルピーと相関関係を示すことがわかる。
【0012】
本発明により製造されるロッドは、円形ロッドであり得る;しかしながらまた、他の形状、例えば楕円形、長円形、又は多角形(例えば三角形、四角形、長方形、菱形、台形、五角形、又は六角形)の断面も考慮される。円形ロッドの場合、工程a)で押出成形された異形材は、管である。異形材は一層であってよく、よってこの異形材は第一の成形材料から成るか、又は多層であり、ここで少なくとも最外層は第一のプラスチック成形材料から成る。
【0013】
第一のプラスチック成形材料は、部分結晶性熱可塑性樹脂をベースとし、当該樹脂は例えば、ポリアミド、部分芳香族ポリエステル、フルオロポリマー(例えば、PFA、ETFE、EFEP、PVDF、PTFE)、ポリフェニレンスルフィド、又はポリアリーレンエーテルケトンであり得る。熱可塑性樹脂を選択する際に考慮しなければならないのは、特に結晶化温度Tk、及び溶融エンタルピーが、成形材料の他の成分に影響を受けることである。Tkは例えば、核形成剤の添加により、著しく高めることができる。
【0014】
ポリアミドはジアミンとジカルボン酸の組み合わせから、ω−アミノカルボン酸又は相応するラクタムから製造可能である。基本的には、充分な部分結晶性を有するあらゆるポリアミドが使用でき、それは例えばPA6、PA66、又はこれらがベースの、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸から誘導される単位を有するコポリアミド(一般的にはPPAと呼ばれる)、並びにPA9T、及びPA10T、及びこれらと他のポリアミドとのブレンドである。適切なポリアミドはさらに例えば、PA610、PA88、PA8、PA612、PA810、PA108、PA9、PA613、PA614、PA812、PA128、PA1010、PA10、PA814、PA148、PA1012、PA11、PA1014、PA1212、及びPA12である。もちろんまた、これらがベースのコポリアミドも使用できる。ポリアミドの製造は、従来技術である。
【0015】
同様に、様々なポリアミドの混合物も、充分な相容性を有するのであれば使用できる。相容性のポリアミドの組合せは、当業者に公知である;ここでは例えば、PA12/PA1012、PA12/PA1212、PA612/PA12、PA613/PA12、PA1014/PA12、及びPA610/PA12、並びにPA11との相応する組み合わせが挙げられる。疑わしい場合には、相容性の組合せは、ルーチン試験によって調査することができる。
【0016】
熱可塑性ポリエステルは、ジオールと、ジカルボン酸若しくはポリエステル形成性誘導体(例えばジメチルエステル)の重縮合によって製造される。適切なジオールは、式HO−R−OHを有し、ここでRは、2〜18個、好適には2〜12個のC原子を有する、二価の分枝状又は非分枝状の脂肪族及び/又は脂環式基である。適切なジカルボン酸は、式HOOC−R’−COOHを有し、ここでR’は、6〜20個、好適には6〜12個のC原子を有する二価の芳香族基である。
【0017】
ジオールの例として挙げられるのは、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、2−ブテンジオール−1,4、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、並びにシクロヘキサンジメタノールである。ジオールは単独で、又はジオール混合物として使用できる。
【0018】
芳香族ジカルボン酸としては例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−、1,5−、2,6−、若しくは2,7−ナフタリンジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、及びジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸が考慮される。これらのジカルボン酸のうち最大で30mol%は、3〜50個のC原子を有する、好ましくは6〜40個のC原子を有する脂肪族又は脂環式のジカルボン酸、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、又はシクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸で置き換えることができる。
【0019】
適切なポリエステルの例は、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリプロピレン−2,6−ナフタレート、及びポリブチレン−2,6−ナフタレートである。
【0020】
これらのポリエステルの製造は従来技術に属する(独国特許出願公開第2407155号明細書、独国特許出願公開第2407156号明細書、Ullmann's Enzyklopaedie der technischen Chemie, 4. Auflage, Band 19, 65pp., Verlag Chemie, Weinheim, 1980)。
【0021】
フルオロポリマーは例えば、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、三成分(例えばプロペン、ヘキサフルオロプロペン、ビニルフルオリド、又はビニリデンフルオリド)で変性されたETFE(例えばEFEP)、又はテトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー(PFA)であり得る。
【0022】
ポリフェニレンスルフィドは、式
(−C64−S−)
の単位を有する。
【0023】
ポリフェニレンスルフィドは好適には、少なくとも50質量%、少なくとも70質量%、若しくは少なくとも90質量%が、上記単位から成る。残りの単位は、例えばポリアリーレンエーテルケトンの場合に以下で記載されるもの、又は三官能性若しくは四官能性の分枝単位(合成の際にトリクロロベンゼン又はテトラクロロベンゼンを併用して生成するもの)であり得る。ポリフェニレンスルフィドは、様々な種類若しくは成形材料で市販されている。
【0024】
ポリアリーレンエーテルケトンは、式
(−Ar−X−)、及び(−Ar’−Y−)
の単位を有し、
ここで、Ar及びAr’は、二価の芳香族基、好適には1,4−フェニレン、4,4’−ビフェニレン、並びに1,4−、1,5−、若しくは2,6−ナフチレンである。Xは電子抽出基、好ましくはカルボニル、又はスルホニルであり、Yは、O、S、CH2、イソプロピリデン等の別の基を表す。ここで、基Xの少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、特に好ましくは少なくとも80%がカルボニル基であり、基Yの少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、特に好ましくは少なくとも80%が酸素から成る。
【0025】
好ましい実施態様では、基Xの100%がカルボニル基から成り、かつ基Yの100%が酸素から成る。この実施態様においてポリアリーレンエーテルケトンは、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK;式I)、ポリエーテルケトン(PEK;式II)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK;式III)、又はポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK;式IV)であり得るが、しかしながら当然、カルボニル基及び酸素基を別に配置することもできる。
【0026】
【化1】

【0027】
ポリアリーレンエーテルケトンは部分結晶性であり、このことは例えばDSC分析で、クリスタリット融点Tmの検出により表されるが、この融点は大きさにもよるが大抵の場合、300℃以上である。
【0028】
成形材料はさらなる成分を含むことができ、その例は耐衝撃性変性剤、他の熱可塑性樹脂、可塑剤、及び他の慣用の添加剤、例えば顔料若しくは充填材、例えばカーボンブラック、二酸化チタン、硫化亜鉛、補強材、例えばガラス繊維、炭素繊維、若しくはウィスカー、潤滑剤、例えば黒鉛、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、若しくはPTFE、核形成剤、例えばタルク、加工助剤、例えばワックス、ステアリン酸亜鉛、若しくはステアリン酸カルシウム、抗酸化剤、UV安定剤、並びに生成物に帯電防止特性をもたらす添加剤、例えば炭素繊維、黒鉛繊維、ステンレス鋼繊維、及び/又は導電性カーボンブラックである。
【0029】
第一の実施態様では、第一の成形材料と、第二の成形材料とが、同一である。この場合、溶融流は有利には、独国特許出願公開第102004015072A1号明細書に記載されているように分流される。
【0030】
第二の実施態様では、これら第一及び第二の成形材料は同一ではないが、この第二の成形材料は、請求項に記載された、第一の成形材料と同じ定義に入る。このことがとりわけ当てはまるのは、ベースとなる熱可塑性樹脂がともに同一の場合であるが、これらの成形材料は、その他の成分の種類若しくは量の点で異なる。別の場合には、2つの熱可塑性樹脂は異なるが、相互に相容性である。
【0031】
第三の実施態様では、第二の成形材料が、請求項に記載された、第一の成形材料と同じ定義には入らない。第二の成形材料は、部分結晶性であるか、又は非晶質であり得る。例として挙げられるのは、透明なポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、完全芳香族のポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、若しくはポリイミドであるか、又はポリアリーレンエーテルケトンと、場合により比較的多い割合のポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルイミド、及び/又はポリイミドとのブレンドである。第二の成形材料は、慣用の添加剤を含むことができるが、これらについては、第一の成形材料のところでかなり前に上述してある。2つの材料の良好な接着という観点では、2つの成形材料の間で、充分な接着相容性が必要となる。
【0032】
第四の実施態様では、工程a)で押出成形された異形材が発泡されている。この発泡は、分解性発泡剤を添加することによって化学的に、又は計量供給された発泡ガスによって物理的に行うことができる。発泡密度対発泡していない成形材料の密度の比の値によって定義される膨張度は、好適には1.01〜10である。この発泡体は、開孔型であっても、閉孔型であってもよい。第四の実施態様は、第一の、第二の、又は第三の実施態様と組み合わせることができる。
【0033】
第五の実施態様では、工程b)で充填される第二のプラスチック成形材料が発泡されている。ここでは、第四の実施態様の場合と同じことが当てはまる。第五の実施態様は、第一の、第二の、第三の、又は第四の実施態様と組み合わせることができる。
【0034】
企図された適用のためには、完成ロッドで、工程a)で押出成形された異形材と、工程b)で充填されたコアとが、相互に強固に接着することが望ましい。このためには、双方の成形材料が、相互に充分に相容性でなければならない。充分な相容性がもたらされない場合には、異形材を多層で共押出することができ、ここでその最内層は適切な接着性改善剤から成る。PA12(異形材)とPA6(コア)の場合、相容性は例えば、PA612から得られる接着性改善層によって改善でき、またPA612(異形材)とポリエチレンテレフタレート(PET、コア)の場合、相容性は例えばPA612/PETブレンドから得られる接着性改善層(PA612−PETのブロックコポリマーを含有するもの)によって、作り出せる。
【0035】
良好な接着性を達成するためには、さらに工程b)で充填されたコア材料の溶融物が、少なくとも、押出成形された異形材の内部表面を形成する材料のTmの範囲にある温度基準にあるべきである。
【0036】
押出機の後方に接続されたキャリブレーターは、外層の成形に用いる。ここでは例えば、管の押出成形で使用されるような、通常の真鍮製サイジング(Messing-Kalibrierung)が使用できる。サイジングは、所望の場合には、熱を迅速に排出するため激しく冷却することができ、また比較的ゆっくりとした冷却によりロッド内で生じる応力を減少させるために、加熱することができる。キャリブレーターの温度調整により、押出成形されたプラスチック異形材の温度を、第二の成形材料の強固な接着が保証されるように調節することが推奨される。このことはとりわけ、異形材の肉厚(Wandstaerke)が薄い場合に、考慮すべきである。
【0037】
第二のプラスチック成形材料は、溶融物として、キャリブレーターの長さの好適には約1〜約99%の位置、特に好ましくは約10〜約90%の位置、とりわけ好適には約20〜約80%の位置、極めて特に好ましくは約30〜約70%の位置で導入する。特別な場合、つまり、押出成形された異形材の肉厚が比較的厚い場合、及び/又は第一のプラスチック成形材料のEモジュールが比較的高い場合、よって剛性が高い場合、第二のプラスチック成形材料は、キャリブレーターの後で初めて、異形材を拡張させずに導入する。これらの前提のもとでは、このような実施態様は、本発明による方法と同等である。第二のプラスチック成形材料の溶融圧力は、2〜8barの範囲にある;この圧力には、確実な生産で空洞のないロッドを製造するため、非常に僅かな変動しか許されない。発泡したコアを製造するため、圧力は比較的低いことがある。
【0038】
キャリブレーターの後には、様々な冷却媒体若しくは加熱媒体を有する冷却区間及び/又は温度処理区間が設置されていてよい。ここでは、完全水浴、スプレー浴、及び/又は吹き込み空気を用いることができる。とりわけ、比較的大きな直径を有するロッド、又は繊維充填された成形材料製の完全ロッドは、温度処理、若しくは体系的に冷却され、このため内部応力が大きく成りすぎず、また同じ理由から、ロッドの事前崩壊につながることはない。
【0039】
引き取り速度は一般的に、直径と、使用される成形材料による。直径が小さいほど、より高速で製造される。
【0040】
本発明による方法は、柔軟なサイジングと組み合わせることができ、これによって段階無く、様々なロッド直径が製造可能になる。このようなサイジングは既に、管の押出成形で用いられている(例えば、国際公開第2004/091891号、独国特許発明第102004/029498B3号明細書、欧州特許出願公開第1627724A2号明細書、国際公開第00/16963号、及び国際公開第2005/018910号)。柔軟なサイジングの使用は、経済的に非常に関心が高い。と言うのも、部材の作製時に、ロッドは切削加工法によって所望の寸法になるからである。ここでとりわけ、高価な成形材料製の価値の高いロッドの場合には、外径をできるだけ僅かに切削加工して削り取ることが、経済性の観点から重要となる。このことは、完全ロッドを市販で、例えば約5mm〜約40mmという直径範囲で、直径を1mm刻みで提供し、かつ適切に僅かなロットサイズで多様に製造することにつながる。
【0041】
本発明の範囲では、直径(円形の断面が存在しない場合には、最小直径)が15〜500mm、好適には20〜400mm、特に好ましくは25〜350mmのロッドを製造することができる。ここで、工程a)で押出成形される異形材の肉厚は通常、直径の0.2〜25%の範囲、好適には直径の0.4〜20%の範囲、特に好ましくは直径の0.6〜16%の範囲、とりわけ好ましくは直径の0.8〜14%の範囲である。円形断面が存在しない場合、「直径」とは、最小直径を意味する。
【0042】
本発明の範囲では、多層のロッド、及びとりわけ多層の円形ロッドが、特に関心の対象となる。ここでは例えば、以下のような実施が可能となる。
【0043】
・耐摩耗性(antiabrasive)の外層、及び粘稠なコアは、例えば、歯車、シャフト、又は軸といった適用に対して優れた前提となり、例えば外側に30%の炭素繊維を有するPEEK成形材料、又はそれぞれ10%の炭素繊維、黒鉛、及びPTFEを有するPEEK成形材料、又は30%のセラミック製充填材を有するPEEK成形材料、及び内部に粘稠ではないPEEK成形材料。
【0044】
・繊維充填されたコア材料と、充填されていない外層とを有する完全ロッドの場合、高い材料強度と、平滑な表面とを組み合わせることができる。
【0045】
・さらなる可能性は、良好な切削性(Zerspanbarkeit)を有する外層を選択することであり、この外層は例えば、コアと同じ材料から、ただし分子量がより小さいものからできている。
【0046】
・材料をより安くするために、完全ロッドが高価な外層(例えばPEEK)と、コスト的に有利なコア成分とから成っていてよく、例えば、PFA、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルイミド、LCP(例えば液晶性ポリエステル)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、及び/又はさらなる耐高温性ポリマーとのPEEKブレンドである。
【0047】
・さらなる実施態様では、硬く緻密な外層、及び発泡させたコアから、ロッドが製造できる。ここで、提供される管空間は、内側へと発泡する;選択されたパラメーター、例えば溶融硬度、発泡剤の量、発泡剤の種類などによって、膨張度とセル度(Zelligkeit)は、公知の方法で制御できる。このようにして均一なセル直径が、断面全体にわたって得られる。ここでの一次的な目的は質量減少であり、例えば航空及び宇宙航行での軽構造適用のための質量減少である。
【0048】
・とりわけ、医薬適用、例えばインプラントにとっても、発泡させた外層と、硬い若しくは粘稠なコアとの組み合わせは、関心の対象となる。発泡させた外層は、血管形成又は骨結合を改善し、ここで硬く安定的なコアは同時に、担持機能を有する。ここでは、開孔型発泡体が有利である。医薬適用のためのさらなる可能性は、請求項に記載のロッドから製造される部材であって、充填されていないPEEK成形材料から得られる緻密なコアと、開孔型の発泡されたPEEK成形材料から得られる外層とを有し、かつその数平均セル直径が1μm〜700μm、好ましくは10μm〜500μmのものである。
【0049】
・さらに、予備押出された管も、またコアも発泡させることができ、それは例えば、異なる発泡構造が望ましい場合である。インプラントの際に様々な骨結合が必要であるか、又はそれが可能であれば、このようにして様々なセル構造を有するインプラントが製造でき、例えばPEEK成形材料から、適切な統合をもたらすために製造できる。
【0050】
本発明の対象はまた、一種又は複数種のPEEK成形材料から得られる、本発明により製造されたロッドを、インプラントの製造に用いる使用である。
【発明の効果】
【0051】
本発明による方法によって、押出成形された異形材で、充分な変形耐性が、従来技術より迅速に達成できる。このため、第二の成形材料による充填は、異形材の拡張が起こらず、かつ溶融圧力下でコア材料の硬化時間が充分に長く得られる限りにおいて、サイジング終了前に行うことができる。よって空洞の形成は、効果的に打ち消される。こうして得られたロッドは、従来技術に従って製造されたロッドよりも、寸法精度が高い。
【実施例】
【0052】
実施例及び比較例では、以下の成形材料を使用した:
・PA12:VESTAMID(登録商標)LX9030(黄)は、それぞれDSC法によりISO 11357準拠で測定した特性値Tmが176℃、Tkが149℃、ΔHは64J/gである。
・PEEK:VESTAKEEP(登録商標)4000G nfは、それぞれDSC法によりISO 11357準拠で測定した特性値Tmが336℃、Tkが281℃、ΔHは42J/gである。
【0053】
比較例1:
直径が65mmの完全ロッドを、PA12から標準的な押出成形機により押出成形。試験条件、及びその結果は、表1に記載してある。
【0054】
実施例1:
直径が65mmの完全ロッドを、PA12から二層型で押出成形;外層の厚さ5mm;注入管は、キャリブレーター長の70%のところで終わる。表1参照。
【0055】
比較例2:
直径が65mmの完全ロッドを、PEEKから、標準的な押出成形機で押出成形:表2参照。
【0056】
実施例2:
直径が65mmの完全ロッドを、PEEKから二層型で押出成形;外層の厚さ5mm;注入管は、キャリブレーター長の70%のところで終わる。表2参照。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程a)〜c):
a)最外層を形成し、かつ少なくとも50質量%が部分結晶性の熱可塑性樹脂から成る第一のプラスチック成形材料から、プラスチック異形材を押出成形する工程、
b)キャリブレーターの内部で、押出成形されたばかりの異形材を、第二のプラスチック成形材料で充填する工程、及び
c)新たに形成されたロッドをサイジングし、引き取り、冷却する工程
を有する、ロッドの製造方法において、
前記第一のプラスチック成形材料が、以下の特性値:
・ISO11357準拠のクリスタリット融点Tmが少なくとも170℃であり、
・ISO11357準拠の結晶化温度Tkが、Tmを最大70K下回り、かつ
・ISO11357準拠の溶融エンタルピーΔHが、少なくとも20J/gである
を有することを特徴とする、前記製造方法。
【請求項2】
前記ロッドが、円形ロッドであることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第一のプラスチック成形材料の熱可塑性樹脂が、ポリアミド、部分芳香族のポリエステル、フルオロポリマー、ポリフェニレンスルフィド、及びポリアリーレンエーテルケトンの群から選択されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第二のプラスチック成形材料の熱可塑性樹脂が、ポリアミド、部分芳香族のポリエステル、フルオロポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリーレンエーテルケトン、透明なポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、完全芳香族のポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、ポリイミド、並びにポリアリーレンエーテルケトンと、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルイミド、及び/又はポリイミドとから得られるブレンドの群から選択されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第一のプラスチック成形材料と、前記第二のプラスチック成形材料とが、同一であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記工程a)で押出成形されるプラスチック異形材が、発泡していることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記工程b)で充填される第二のプラスチック成形材料が、発泡していることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記工程a)で押出成形されるプラスチック異形材が多層であり、かつその最内層が接着性改善剤から成ることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記ロッドの直径、若しくは前記ロッドの最小直径が、15〜500mmの範囲であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記工程a)で押出成形されるプラスチック異形材の肉厚が、前記直径若しくは前記最小直径の0.4〜20%の範囲にあることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の製造方法により製造されたロッドを、完成部材の切削製造に用いる使用。
【請求項12】
前記ロッドが、1種又は複数種のポリエーテルエーテルケトン成形材料から成り、かつ前記完成部材が、インプラントであることを特徴とする、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
請求項12によって得られる、インプラント。
【請求項14】
発泡されていないコアと、数平均セル直径が1〜700μmの発泡した開孔型外層とを有することを特徴とする、請求項13に記載のインプラント。

【公開番号】特開2012−171357(P2012−171357A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−33319(P2012−33319)
【出願日】平成24年2月17日(2012.2.17)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】