説明

ロフルミラストを含有する水性医薬調剤

僅かに可溶性のPDE4インヒビターの投与のための水性医薬調剤を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品工学の分野に関連し、そして有効成分として僅かに可溶性のPDE4インヒビターを含有する水性医薬調剤を記載している。更に本発明は、該医薬調剤の製造方法並びに疾患の治療のための医薬調剤の使用にも関する。
【0002】
従来技術
環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ(PDE)インヒビター(特に4型)は、炎症性疾患、特に気道の疾患、例えば喘息又は気道閉塞(例えばCOPD=慢性閉塞性肺疾患)の治療のための新世代の有効成分として最近では特に関心が持たれている。幾つかのPDE4インヒビター、例えば有効成分N−(3,5−ジクロロピリジ−4−イル)−3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロ−メトキシベンザミド(INN:ロフルミラスト)を含有する経口投与用の剤形は、最近では、上級の臨床試験が行われている。ベンザミド構造を有する前記化合物及びその他の化合物並びに環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ(PDE)インヒビターとしてのそれらの使用は、WO95/01338号に記載されている。これらの有効成分は、WO95/01338号において、一定の皮膚疾患(例えば皮膚病)の治療のためにも提案されている。WO00/53182号は、ロフルミラスト又はそのN−オキシドを多発性硬化症の治療のために用いる使用を提案している。WO03/099334号は、僅かに可溶性のPDE4インヒビターについての医薬調剤、例えば軟膏及び水性懸濁液もしくは油性懸濁液及びエマルジョンを記載している。
【0003】
経口剤形の他にも、有効成分を、非経口形(注射用に意図された調剤)として、特に経口剤形の摂取に問題がある患者の群のために提供する必要がありかつそれが好ましいことがある。
【0004】
非経口調剤は、刺激が無いことを保証するために、かつ微生物汚染と微粒子汚染を回避するために、特別な配慮を以て製造せねばならない。最も重要な溶剤又は分散剤は、水である。薬局方によれば、これらの場合には常に、注射用の水を使用せねばならない。静脈内投与されるべき有効成分は、完全に溶解されていなければならない。更に、該調剤の形成を通じて、注射の間に沈殿が起こらないことが保証されねばならない。更に、非経口調剤について挙げられる必要条件は、患者に対する特に良好な認容性である。これは、水性調剤が等張性又はほぼ等張性となり、かつほぼ生理学的なpHを有することと、特定の微粒子汚染が存在しないこととに依存することがある。
【0005】
僅かに水溶性の有効成分の非経口調剤又は一般的な液剤の製造は、従って特定の問題をはらんでいる。例えば、WO95/01338号に記載されるPDE4インヒビター、つまりN−(3,5−ジクロロピリジ−4−イル)−3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシベンザミド(INN:ロフルミラスト)については、水溶性は、21℃でたったの0.53mg/lであると観察される。しかしながら、水を他の溶剤によって置換するか又は可溶化剤[例えば可溶化剤、例えばレシチン及びポロキサマー188(Pluronic F68(登録商標))]を使用することは、非経口用の調剤又は液剤の製造に関しては、前記の理由のための他の目的のために限られた範囲まで可能であるに過ぎない。ロフルミラストの、例えば注射用の水溶液を製造する試みは、非経口調剤に関して通常使用される可溶化剤であるポロキサマー188を添加するにも拘わらず、注射用に許容されるロフルミラスト濃度を有する溶液をもたらさない。
【0006】
発明の開示
ここで驚くべきことに、ロフルミラストは、アルコキシル化された脂肪を助溶剤として使用する場合に、注射用に十分な量で水中に溶解させることができると判明した。これに基づき、非経口調剤に必要な特性(特に患者への良好な認容性、微粒子汚染なし)を有する澄明な溶液を得ることが可能である。特に、該溶液は、貯蔵の間にも安定であり、かつ有効成分の沈殿も観察されない。更に、容器材質との適合性も良好である。
【0007】
従って、本発明は、有効成分を治療学的に効果的かつ薬理学的に許容される量で含有し、かつアルコキシル化された脂肪を含有する水性医薬調剤であって、有効成分が、ロフルミラスト、ロフルミラストの塩、ロフルミラストのピリジン残基のN−オキシド又はそれらの塩からなる群から選択される水性医薬調剤に関する。該水性調剤は、特に有効成分が完全に溶解された溶液である。
【0008】
ロフルミラストは、式I
【化1】

[式中、
R1は、ジフルオロメトキシであり、
R2は、シクロプロピルメトキシであり、かつ
R3は、3,5−ジクロロピリジ−4−イルである]で示される化合物についてのINNである。
【0009】
前記化合物は、化学名N−(3,5−ジクロロピリジ−4−イル)−3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシベンザミド(INN:ロフルミラスト)を有する。ロフルミラストのN−オキシドは、化学名3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−N−(3,5−ジクロロピリジ−4−イル 1−オキシド)ベンザミドを有する。
【0010】
式Iの化合物、その塩、そのN−オキシド、その塩及びこれらの化合物のホスホジエステラーゼ(PDE)4インヒビターとしての使用は、国際特許出願WO95/01338号に記載されている。
【0011】
式Iの化合物についての適当な塩は、置換に依存して、全ての酸付加塩であるが、特に塩基との全ての塩である。医薬品工学において通常使用される無機酸及び有機酸並びに無機塩基及び有機塩基の薬理学的に認容性の塩を特に挙げることができる。例えば本発明の化合物を工業的規模で製造するための方法の初期生成物でありうる薬理学的に非認容性の塩は、当業者に公知の方法によって薬理学的に認容性の塩に変換される。これらの好適なものは、一方で、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、酢酸、クエン酸、D−グルコン酸、安息香酸、2−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、酪酸、スルホサリチル酸、マレイン酸、ラウリン酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、酒石酸、エンボン酸、ステアリン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸又は3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸のような酸との水溶性及び水不溶性の酸付加塩であり、その際、前記の酸は塩調製のために(酸が一塩基酸又は多塩基酸のどちらであるかに依存して、そしてどの塩が望ましいかに依存して)等モル量比又はそれとは異なる比で使用される。
【0012】
他方では、塩基との塩も特に適当である。挙げることができる塩基性塩の例は、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、メグルミン塩又はグアニジニウム塩であり、同様に、前記塩基は、塩調製に等モル量比又はそれとは異なる比で使用される。
【0013】
本発明によれば、アルコキシル化された脂肪は、有利にはポリオキシエチル化された脂肪酸、特にポリオキシエチル化された12−ヒドロキシステアリン酸である。これはまた、15−ヒドロキシステアリン酸マクロゴール又は15−ヒドロキシステアリン酸ポリエチレングリコールとも呼称される。これを基礎とする製品は、例えばBASF社から名称Solutol(登録商標)HS15として入手することができる。Solutol(登録商標)HS15は、12−ヒドロキシステアリン酸のポリグリコールモノエステル及びジエステルと、約30%の遊離のポリエチレングリコールとからなり、その際、12−ヒドロキシ基の部分は、ポリエチレングリコールとエーテル化されていてもよい(BASF社による2002年11月のSolutol(登録商標)HS15の技術情報を参照)。アルコキシル化された脂肪は、有利には、本発明による剤形中に製剤学的に許容される量で存在する。
【0014】
本発明による調剤は、有利には水を基礎とする調剤、特に有利には注射用の水を基礎とする調剤である。
【0015】
本発明による調剤は、所望であれば更に、非経口調剤に適した医薬品賦形剤を含有してよい。挙げられるべき例は、ここでは、可溶性の向上のための物質(例えば助溶剤及び可溶化剤)、等張性を付与するための物質、緩衝剤、酸化防止剤、キレート化剤、保存剤、乳化剤、生理学的pHに調整するための塩基もしくは酸又は効果延長のための賦形剤である。
【0016】
好適な助溶剤は、特にエタノール、グリセロール、プロピレングリコール及びポリエチレングリコール又は1,3−ブタンジオールである。この関連において、プロピレングリコール及びポリエチレングリコール(特にマクロゴール300/400)が好ましい。挙げられるべき可溶化剤は、レシチン及びポロキサマー188(Pluronic F68(登録商標))であり、その際、ポロキサマー188が好ましい。
【0017】
等張性を付与するために使用される特に挙げられるべき物質は、塩化ナトリウム、グルコース、マンニトール、グリセロール、あるいはプロピレングリコール及びポリエチレングリコールである。
【0018】
特に挙げられる保存剤は、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、ベンジルアルコール、フェニル水銀塩又はクロロクレゾールである。
【0019】
有利な一実施態様では、本発明による調剤は、更なる医薬品賦形剤として、ポロキサマー188及び/又はポリエチレングリコールを含有する。
【0020】
100mlの溶液は、0.001〜0.1質量部(グラム)、有利には0.005〜0.09グラムのロフルミラスト、特に有利には0.01〜0.08グラムを含有する。15−ヒドロキシステアリン酸ポリエチレングリコールは、100mlの溶液当たりに、0.5〜15グラム、有利には1〜12グラム、殊に有利には2〜8グラムの量で使用される。ポロキサマー188は、100mlの溶液当たりに、0.01〜5グラム、有利には0.1〜4グラム、殊に有利には0.2〜4グラムの量で使用される。ポリエチレングリコール300もしくは400又はプロピレングリコールの量は、有利には100mlの溶液当たりに、3〜15グラムである。定量的なデータは、有利には注射用の溶液に関連するデータである。
【0021】
本発明による医薬調剤は、当業者によく知られた方法によって製造することができる。有効成分は、有利にはアルコキシル化された脂肪中に、場合により加熱をしつつ溶解させる。アルコキシル化された脂肪は、所望であれば付加的にポロキサマー188を含有してよい。ポリエチレングリコール(マクロゴール300/400)及び/又はプロピレングリコールを添加することによって、有効成分の溶解における改善を達成することができる。同時に、ポリエチレングリコール(マクロゴール300/400)及び/又はプロピレングリコールを使用して、調剤に等張性を付与することもできる。有効成分をアルコキシル化された脂肪中に溶かした溶液に水を添加した後に、澄明な溶液が得られる。こうして得られた溶液を、次いで濾過によって滅菌して、引き続きバイアルもしくはアンプルのような好適な容器中に配量することができる。選択的に、該溶液を、まず好適な容器中に導入し、そして次いでこの溶液を最終容器中で、例えばオートクレーブ処理によって滅菌に供することもできる。本発明による調剤を、マルチドーズ容器中に配量する場合には、保存剤を添加することが好ましい。
【0022】
以下の実施例は本発明を説明するものであり、それを制限するものではない。
【0023】
本発明による剤形の製造
実施例1
4グラムのポリエチレングリコール400と、8グラムのSolutol HS15と、2gのポロキサマー188を加熱することで、澄明な溶解物を得る。0.04グラムのロフルミラストを添加し、そして該混合物を澄明な溶液が得られるまで撹拌する。撹拌しつつ、水をゆっくりと添加して、100mlとする。必要に応じて、該溶液のpHを、好適な塩基を用いて7.0〜7.4に調整する。こうして得られた澄明な溶液を濾過により滅菌し、そして無菌条件下で瓶詰めする。この溶液は、点眼剤又は鼻内投与用の組成物においても使用できる。
【0024】
実施例2
2グラムのSolutol HS15を加熱することで、澄明な溶解物を得て、そして4ミリグラムのロフルミラストを溶解させることで、そこに溶かされた澄明な溶液が得られる。生理学的食塩溶液を使用して、100mlとする。必要に応じて、該溶液のpHを、好適な塩基を用いて7.0〜7.4に調整する。こうして得られた澄明な溶液を濾過により滅菌し、そして非経口投与用のアンプル中に又は眼に使用するための単回使用容器中に又は鼻内で使用するための容器中に配量することができる(マルチドーズ容器中の点眼剤は、保存剤を必要とする)。
【0025】
実施例3
4グラムのポリエチレングリコール400と、8グラムのSolutol HS15を加熱することで、澄明な溶液を得て、0.02gのロフルミラストを添加し、そして溶解が完了した後に、水を用いてゆっくりと100mlとする。必要に応じて、該溶液のpHを、好適な塩基を用いて7.0〜7.4に調整する。こうして得られた澄明な溶液を濾過により滅菌し、そして次いで点眼剤用のアンプルもしくは容器中に又は鼻内投与用の容器中に配量することができる。
【0026】
比較試験 − 水とポロキサマー188とポリエチレングリコールとを基礎とするロフルミラストの溶液の製造
実施例4
4グラムのポリエチレングリコール400と2グラムのポロキサマー188とから澄明な溶液を製造する(実施例1に基づく)。0.04gのロフルミラストを添加し、そして該混合物を澄明な溶液が得られるまで撹拌する。撹拌しつつ、水をゆっくりと添加して、100mlとする。粗大な沈殿物が形成する。
【0027】
実施例5
4グラムのポリエチレングリコール400と4グラムのポロキサマー188とから澄明な溶液を製造する。0.02グラム又は0.04グラムのロフルミラストを添加し、そして該混合物を澄明な溶液が得られるまで撹拌する。撹拌しつつ、水をゆっくりと添加して、100mlとする。両方の場合において粗大な沈殿物が形成する。
【0028】
実施例6
4グラムのポリエチレングリコール400と20グラムのポロキサマー188とから澄明な溶液を製造する。0.02グラム又は0.04グラムのロフルミラストを添加し、そして該混合物を澄明な溶液が得られるまで撹拌する。撹拌しつつ、水をゆっくりと添加して、100mlとする。両方の場合において粗大な沈殿物が形成する。
【0029】
産業上利用可能性
本発明の調剤は、PDE4インヒビターの使用を通じて治療可能又は予防可能であると見なされる全ての疾病の治療及び予防のために使用することができる。選択的環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ(PDE)インヒビター(特にタイプ4)は、一方で気管支治療薬(拡張作用を原因とするが、その呼吸数又は呼吸力の増大作用をも原因とする気道閉塞の治療のため)として、そしてその血管拡張作用のため勃起不全の解除のために適しているが、他方では、特に疾患、特に例えば気道(喘息予防)、皮膚、中枢神経系、腸管、眼及び関節の炎症状態の治療のために適しており、これらはメディエーター、例えばヒスタミン、PAF(血小板活性因子)、アラキドン酸代謝物、例えばロイコトリエン類及びプロスタグランジン類、サイトカイン類、インターロイキン類、ケモカイン類、α−インターフェロン、β−インターフェロン及びγ−インターフェロン、腫瘍壊死因子(TNF)又は酸素フリーラジカル及びプロテアーゼ類によって促進される。従って、本発明の医薬調剤は、ヒト医学及び獣医学において、例えば以下の疾病:種々の病因の急性及び慢性の(特に炎症性及びアレルギー誘発性の)気道疾患(気管支炎、アレルギー性気管支炎、気管支喘息、COPD);皮膚病(特に増殖性、炎症性及びアレルギー性)、例えば乾癬(尋常性)、中毒性湿疹及びアレルギー接触性湿疹、アトピー性湿疹、脂漏性湿疹、単純苔癬、日焼け、肛門性器領域の痒み症、円形脱毛症、肥厚性瘢痕、円板状エリテマトーデス、ろ胞性及び広範囲の膿皮症、内因性及び外因性座瘡、酒土性座瘡及び他の増殖性、炎症性及びアレルギー性の皮膚疾患;TNF及びロイコトリエン類の過剰放出に基づく疾患、例えば関節炎型の疾患(リウマチ様関節炎、リウマチ様脊椎炎、骨関節炎及び他の関節炎状態)、免疫系の疾患(AIDS、多発性硬化症)、ショック症状[敗血症性ショック、エンドトキシンショック、グラム陰性菌性敗血症、トキシックショック症候群及びARDS(成人呼吸窮迫症候群)]、及び胃腸領域における全身性炎症(クローン病及び潰瘍性大腸炎);上部気道(咽頭、鼻)領域及び隣接領域(副鼻腔、目)でのアレルギー性及び/又は慢性の異常免疫反応に基づく疾患、例えばアレルギー性鼻炎/アレルギー性副鼻腔炎、慢性鼻炎/慢性副鼻腔炎、アレルギー性結膜炎、細菌、ウイルス又は真菌により引き起こされる結膜炎、眼内レンズ移植後の炎症状態、視神経の炎症(視神経炎)、角膜炎、ドライアイ症候群(乾性角膜炎)、ブドウ膜炎、緑内障、網膜浮腫、色素性網膜炎、糖尿病性網膜症及び鼻ポリープ;さらにはPDEインヒビターによって治療することができる心臓疾患、例えば心不全、又はPDEインヒビターの組織弛緩作用により治療することができる疾患、例えば、勃起機能不全又は腎臓結石に関連する腎臓及び尿管の疝痛;あるいはCNSの疾患、例えば鬱病又は動脈硬化性痴呆の治療及び予防のために使用することができる。
【0030】
また本発明の医薬調剤は、皮膚の疾患、例えば皮膚病(特に増殖性、炎症性及びアレルギー性)、例えば乾癬(尋常性)、中毒性湿疹及びアレルギー接触性湿疹、アトピー性湿疹、脂漏性湿疹、単純苔癬、日焼け、肛門性器領域の痒み症、円形脱毛症、肥厚性瘢痕、円板状エリテマトーデス、ろ胞性及び広範囲の膿皮症、内因性及び外因性座瘡、酒土性座瘡及び他の増殖性、炎症性及びアレルギー性の皮膚疾患の治療のためにも適している。
【0031】
本発明による調剤であって溶液の形の調剤は、非経口的に(例えば注射又は点滴として)、又は局所的に、例えば点眼剤の形でもしくは鼻内投与(鼻内粘膜での使用のために)として、前記の疾病の治療のために投与することができる。
【0032】
更に本発明は前記の疾患の1つ以上に罹患するヒトを含む哺乳動物の治療のための方法に関する。該方法は、化合物のロフルミラスト、ロフルミラストの塩、ロフルミラストのN−オキシド及びそれらの塩からなる群から選択される有効医薬成分の治療学的に効果的かつ薬理学的に好適な量を、疾病を有する哺乳動物に投与することを特徴とし、その際、該有効医薬成分は、本発明の医薬調剤において投与される。該方法は、その投与を、非経口投与(注射又は点滴)によって行うことを特徴とする。
【0033】
更に本発明は前記の疾患の1つ以上に罹患するヒトを含む哺乳動物の治療のための方法に関する。該方法は、化合物のロフルミラスト、ロフルミラストの塩、ロフルミラストのN−オキシド及びそれらの塩からなる群から選択される有効医薬成分の治療学的に効果的かつ薬理学的に好適な量を、疾病を有する哺乳動物に投与することを特徴とし、その際、該有効医薬成分は、本発明の医薬調剤において投与される。該方法は、その投与を、鼻内投与によって行うことを特徴とする。
【0034】
もう一つの有利な実施態様では、本発明は、ヒトを含む哺乳動物であって、PDE4インヒビターの使用を通じて治療可能又は予防可能であると見なされる眼疾患に罹患する哺乳動物を治療することに関する。該眼疾患は、有利にはアレルギー性結膜炎、細菌、ウイルス又は真菌により引き起こされる結膜炎、眼内レンズ移植後の炎症状態、視神経の炎症(視神経炎)、角膜炎、ドライアイ症候群(乾性角膜炎)、ブドウ膜炎、緑内障、網膜浮腫、色素性網膜炎及び糖尿病性網膜症の群から選択される。該眼疾患は、有利にはアレルギー性結膜炎、細菌、ウイルス又は真菌により引き起こされる結膜炎、眼内レンズ移植後の炎症又はブドウ膜炎である。該方法は、その投与を、本発明による調剤を眼に、特に点眼剤の形で投与することにより行うことを特徴とする。
【0035】
更に、本発明の医薬調剤は、前記の疾病に罹患し、かつ経口で投与されるべき医薬調剤の摂取に問題がある患者群、例えば寝たきり患者、集中医学治療にある患者、嚥下障害を伴う患者及び児童に投与するのに特に適している。
【0036】
更に本発明は前記の疾患の1つ以上に罹患するヒトを含む哺乳動物の治療のための方法に関する。該方法は、化合物のロフルミラスト、ロフルミラストの塩、ロフルミラストのN−オキシド及びそれらの塩からなる群から選択される有効医薬成分の治療学的に効果的かつ薬理学的に好適な量を、疾病を有する哺乳動物に投与することを特徴とし、その際、該有効医薬成分は、本発明の局所的医薬調剤において投与される。
【0037】
該疾病は、有利には急性及び慢性の(特に炎症性及びアレルゲン誘発性の)種々の病因の気道疾患(気管支炎、アレルギー性気管支炎、気管支喘息、COPD)並びに関節炎型の疾患(リウマチ様関節炎、リウマチ様脊椎炎、骨関節炎及び他の関節炎状態)である。
【0038】
本発明の剤形は、該有効医薬成分を、前記特定の疾病の治療に慣用の用量で含有する。有効成分の用量は、PDEインヒビターに慣用のオーダーであり、その際、日用量を1つ以上の投与単位で投与することが可能である。慣用の投与量は、例えばWO95/01338号に開示されている。全身治療(経口)での通常の用量は、1kgと1日とにつき0.001mg〜3mgである。本発明による非経口投与用の剤形は、投与単位当たり、0.005mg〜5mgのロフルミラスト、有利には0.01mg〜2.5mgのロフルミラスト、特に有利には0.1mg〜0.5mgのロフルミラストを含有する。本発明の医薬調剤の例は、投与単位当たりに、0.01mg、0.1mg、0.125mg、0.25mg、そして0.5mgのロフルミラストを含有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分を治療学的に効果的かつ薬理学的に許容される量で含有し、かつアルコキシル化された脂肪を含有する水性医薬調剤であって、有効成分が、ロフルミラスト、ロフルミラストの塩、ロフルミラストのピリジン残基のN−オキシド又はそれらの塩からなる群から選択される医薬調剤。
【請求項2】
請求項1記載の水性医薬調剤であって、ロフルミラストが、式I
【化1】

[式中、
R1は、ジフルオロメトキシであり、
R2は、シクロプロピルメトキシであり、かつ
R3は、3,5−ジクロロピリジ−4−イルである]で示される化合物である医薬調剤。
【請求項3】
請求項1記載の医薬調剤であって、それが注射用調剤である医薬調剤。
【請求項4】
請求項1記載の医薬調剤であって、それが澄明な溶液である医薬調剤。
【請求項5】
請求項1記載の医薬調剤であって、それが等張性溶液である医薬調剤。
【請求項6】
請求項1記載の医薬調剤であって、その溶液が生理学的pHを有する医薬調剤。
【請求項7】
請求項1記載の医薬調剤であって、アルコキシル化された脂肪がポリオキシエチル化された脂肪酸である医薬調剤。
【請求項8】
請求項7記載の医薬調剤であって、ポリオキシエチル化された12−ヒドロキシステアリン酸が使用される医薬調剤。
【請求項9】
請求項1記載の医薬調剤であって、アルコキシル化された脂肪が、12−ヒドロキシステアリン酸のポリグリコールモノエステル及びジエステルと遊離のポリエチレングリコールとを含有する混合物である医薬調剤。
【請求項10】
請求項1記載の医薬調剤であって、該調剤が、可溶性の向上のための物質(例えば助溶剤及び可溶化剤)、等張性を付与するための物質、緩衝剤、酸化防止剤、キレート化剤、保存剤、乳化剤、生理学的pHに調整するための塩基もしくは酸又は効果延長のための賦形剤からなる群から選択される1種以上の更なる賦形剤を含有する医薬調剤。
【請求項11】
請求項10記載の医薬調剤であって、ポロキサマー188、ポリエチレングリコール及びプロピレングリコールの群から選択される1種以上の物質が存在する医薬調剤。
【請求項12】
請求項1記載の医薬調剤であって、ポロキサマー188が更に存在する医薬調剤。
【請求項13】
請求項1記載の医薬調剤であって、ポリエチレングリコールが更に存在する医薬調剤。
【請求項14】
請求項1記載の医薬調剤であって、0.001〜0.1質量部(グラム)、有利には0.005〜0.09グラムのロフルミラスト、殊に有利には0.01〜0.08グラムのロフルミラストが、100mlの溶液中に存在する医薬調剤。
【請求項15】
請求項1記載の医薬調剤であって、それが点眼剤の形である医薬調剤。
【請求項16】
請求項1記載の医薬調剤であって、それが鼻内投与用の組成物である医薬調剤。
【請求項17】
請求項1記載の医薬調剤の製造方法において、(a)有効成分をアルコキシル化された脂肪中に溶解させること、及び(b)水を添加することを含む製造方法。
【請求項18】
請求項17記載の方法において、工程(a)において、ポロキサマー188、ポリエチレングリコール及びプロピレングリコールからなる群から選択される1種以上の物質の調製物を更に添加する製造方法。
【請求項19】
請求項17記載の方法において、工程(b)で得られた溶液を濾過により滅菌し、そして好適な容器中に配量する製造方法。

【公表番号】特表2008−513416(P2008−513416A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−531767(P2007−531767)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【国際出願番号】PCT/EP2005/054723
【国際公開番号】WO2006/032675
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(507229021)ニコメッド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (90)
【氏名又は名称原語表記】Nycomed GmbH
【住所又は居所原語表記】Byk−Gulden−Str. 2, D−78467 Konstanz, Germany
【Fターム(参考)】