説明

ロボットおよび成形装置

【課題】動作時にアームが通過するための広い空間を必要とすることがなく、かつアームを高速で移動させることが可能なロボットを提供する。
【解決手段】ロボット10は、基端側に固定されたベース部11と、ベース部11に設けられた駆動部12と、ベース部11に連結され、駆動部12からの動力により軸線方向(Z方向)に沿って伸縮自在な伸縮アーム20とを備えている。伸縮アーム20の先端には、軸線方向(Z方向)に平行なエンドエフェクタ取付面13を有するスライダ14が設けられている。伸縮アーム20は、互いに連動して軸線方向(Z方向)に沿って進退するとともに軸線方向に垂直な方向(X方向)に互いに積層された複数の移動体40、60、80からなっている。スライダ14は、移動体80に対して、軸線方向(Z方向)に沿って相対移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットおよび成形装置に係り、とりわけ動作時にアームが通過するための広い空間を必要とすることがなく、かつアームを高速で移動させることが可能なロボットおよびこのようなロボットを備えた成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ロボットを用いて、例えば射出成形機などの成形装置から、成形後の成形品を取り出すことが行われている。
【0003】
しかしながら、従来のこのようなロボットにおいては、成形品を取り出す際にアームが通過する範囲が広いため、アームとの干渉を防止するために射出成形装置内で広い空間が必要となっている。またロボットの非動作時に、アームを収納しておくための空間も必要となる。さらに、従来のロボットにおいては、それぞれのアーム毎に各アームを制御するための駆動用サーボモータを設けたものが多い。この場合、コントローラによりこれらのアームを制御するための機構は複雑となり、かつ動作の高速化を図ることが難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−190260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、動作時にアームが通過するための広い空間を必要とすることがなく、かつアームを高速で移動させることが可能なロボットおよびこのようなロボットを備えた成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基端側に固定されたベース部と、ベース部に設けられた駆動部と、ベース部に連結され、駆動部からの動力により軸線方向に沿って伸縮自在な伸縮アームと、伸縮アームの先端に設けられ、軸線方向に平行なエンドエフェクタ取付面を有するスライダとを備え、伸縮アームは、互いに連動して軸線方向に沿って進退するとともに軸線方向に垂直な方向に互いに積層された複数の移動体からなり、スライダは、伸縮アーム先端の移動体に対して、軸線方向に沿って相対移動することを特徴とするロボットである。
【0007】
本発明は、各移動体は、本体と、本体に回転自在に設けられ、本体が移動することにより回転する基端側プーリと、基端側プーリに連結され、基端側プーリと連動して回転する中間プーリと、中間プーリと連動して回転する先端側プーリと、中間プーリと先端側プーリとの間に巻装された伝達ベルトとを有し、伝達ベルトは、先端側に隣接する移動体またはスライダに連結されていることを特徴とするロボットである。
【0008】
本発明は、各移動体は、本体に張設されるとともに軸線方向に沿って延びるプーリ駆動ベルトを有し、プーリ駆動ベルトは、先端側に隣接する移動体の移動に伴って、当該先端側に隣接する移動体の基端側プーリを回転させることを特徴とするロボットである。
【0009】
本発明は、各移動体の基端側プーリと中間プーリとは、軸線方向に垂直かつ複数の移動体の積層方向に垂直に配置された回転ロッドを介して互いに連結されていることを特徴とするロボットである。
【0010】
本発明は、伝達ベルトは無端ベルトからなることを特徴とするロボットである。
【0011】
本発明は、プーリ駆動ベルトは有端ベルトからなり、その両端が本体に対して固定されていることを特徴とするロボットである。
【0012】
本発明は、各移動体の本体に、先端側に隣接する移動体またはスライダを軸線方向に沿って案内する案内部材が取り付けられていることを特徴とするロボットである。
【0013】
本発明は、ベース部内部に、駆動部からの動力を最も基端側の移動体に伝達する直動装置が設けられていることを特徴とするロボットである。
【0014】
本発明は、装置本体と、装置本体上に設けられ、成形品を成形するための開閉可能な金型と、装置本体上に固定され、ロボットと、ロボットのスライダのエンドエフェクタ取付面に取り付けられ、金型からの成形品を取り出すためのハンドとを備えたことを特徴とする成形装置である。
【0015】
本発明は、金型は、固定ダイと、固定ダイに対して移動可能な可動ダイとを有し、可動ダイが固定ダイに対して移動することにより金型が開となった際、ロボットのスライダが、可動ダイと固定ダイとの間に進入することを特徴とする成形装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、伸縮アームは、互いに連動して軸線方向に沿って進退するとともに軸線方向に垂直な方向に互いに積層された複数の移動体からなっている。このことにより、伸縮アームの動作時に広い空間を必要とすることがなく、かつ伸縮アームを高速で移動させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態によるロボットを示す斜視図(伸長状態)。
【図2】本発明の一実施の形態によるロボットを示す斜視図(縮退状態)。
【図3】本発明の一実施の形態によるロボットを示す正面図(図1のIII方向矢視図)。
【図4】本発明の一実施の形態によるロボットを示す左側面図(図1のIV方向矢視図)。
【図5】本発明の一実施の形態によるロボットを示す背面図(図1のV方向矢視図)。
【図6】本発明の一実施の形態によるロボットを示す右側面図(図1のVI方向矢視図)。
【図7】本発明の一実施の形態による成形装置を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態について、図1乃至図7を参照して説明する。ここで、図1乃至図7は、本発明の一実施の形態を示す図である。
【0019】
(ロボットの構成)
まず、図1乃至図6により、本発明の一実施の形態によるロボットの概略について説明する。図1乃至図6は、本実施の形態によるロボットを示す図である。
【0020】
図1乃至図6に示すように、本実施の形態によるロボット10は、基端側に固定されたベース部11と、ベース部11に設けられた例えば電気サーボモータからなる駆動部12と、ベース部11に連結され、駆動部12からの動力により軸線方向(Z方向)に沿って伸縮自在な伸縮アーム20とを備えている。伸縮アーム20の先端には、軸線方向(Z方向)に平行なエンドエフェクタ取付面13を有するスライダ14が設けられている。
【0021】
このうち伸縮アーム20は、図1に示す伸長位置と、図2に示す縮退位置との間で伸縮自在となっている。また伸縮アーム20は、互いに連動して軸線方向(Z方向)に沿って進退する複数(本実施の形態においては3つ)の移動体40、60、80から構成されている。
【0022】
以下、3つの移動体40、60、80のうち、基端側の移動体を第1移動体40といい、中間の移動体を第2移動体60といい、先端側の移動体を第3移動体80という。なお、伸縮アーム20を構成する移動体の個数は、2個以上であれば良く、3個に限られるものではない。移動体の個数は、ロボット10の作業内容やスライダ14の移動距離等に応じて、適宜設定することができる。
【0023】
一方、スライダ14は、伸縮アーム20先端に位置する移動体80に対して、軸線方向(Z方向)に沿って相対移動するようになっている。スライダ14のエンドエフェクタ取付面13には、後述するハンド19等、適当なエンドエフェクタを取付け可能となっている。
【0024】
以下、このようなロボット10の構成について、図1乃至図6を用いて更に詳述する。
【0025】
図1乃至図6に示すように、駆動部12は、略直方体形状からなり、ベース部11と平行に配置されている。この駆動部12は、接続コード25を介して図示しない電源に接続されており、この電源からの電流によって駆動するようになっている。また、駆動部12の回転軸にはプーリ23が直結されており、このプーリ23にはタイミングベルト24が巻き掛けられている。なおプーリ23およびタイミングベルト24は、ベース取付部15内に収納されている。
【0026】
ベース部11は、全体として、軸線方向(Z方向)に延びる細長形状の部材からなり、その内部には、軸線方向(Z方向)に沿ってボールねじ(直動装置)16が設けられている。このボールねじ16は、駆動部12からの動力を、最も基端側の第1移動体40に伝達するためのものである。ボールねじ16は、一対の軸受26、27によって軸支されたねじ軸17と、ねじ軸17に沿って軸線方向(Z方向)に沿って直線移動可能なナット18と、ねじ軸17の一端に取り付けられたプーリ28とを有している。このうちプーリ28と、駆動部12のプーリ23とには、上述したタイミングベルト24が巻き掛けられている。
【0027】
またベース部11のうち、第1移動体40側の側面には、軸線方向(Z方向)に沿って細長いスリット31が形成されている。さらにボールねじ16のナット18には、連結具32が連結されている。この連結具32は、スリット31を介して第1移動体40の第1移動体本体41(後述)に連結されている。したがって、ナット18がねじ軸17に沿って移動するのに伴って、第1移動体本体41も軸線方向(Z方向)に沿って移動するようになっている。
【0028】
またベース部11側面には、軸線方向(Z方向)に沿って、ベースプーリ駆動ベルト35が張設されている。このベースプーリ駆動ベルト35は有端ベルトからなり、その両端において、それぞれブラケット36、37を介してベース部11に固定されている。
【0029】
一方、伸縮アーム20は、上述したように、互いに連動して軸線方向(Z方向)に沿って進退する3つの移動体40、60、80からなっている。これらの移動体40、60、80は、軸線方向に垂直な方向(すなわちX方向)に向けて互いに積層された構造を有している。なお、図1乃至図6に示すように、これらの移動体40、60、80は、互いに略同一の構成からなっている。
【0030】
以下、伸縮アーム20を構成する3つの移動体40、60、80の構成について更に説明する。なお本明細書中、「先端側に隣接する移動体」とは、ある移動体に隣接する2つの移動体のうち、ベース部11(あるいは基端側)から遠い方に位置する移動体をいい、具体的には、第1移動体40から見た第2移動体60、あるいは第2移動体60から見た第3移動体80のことをいう。
【0031】
まず、第1移動体40について説明する。第1移動体40は、略平板状の第1移動体本体41と、第1移動体本体41に回転自在に設けられ、第1移動体本体41が軸線方向(Z方向)に移動することにより回転する第1基端側プーリ42とを有している。
【0032】
第1基端側プーリ42の両側には、ベースプーリ駆動ベルト35を案内する一対のガイドプーリ43、44が設けられている。そして上述したベースプーリ駆動ベルト35は、一対のガイドプーリ43、44に案内されて、第1基端側プーリ42に密接する。このような構成により、第1移動体本体41が移動する際、ベースプーリ駆動ベルト35によって第1基端側プーリ42が回転するようになっている。
【0033】
第1基端側プーリ42は、第1回転ロッド51を介して、第1中間プーリ45に連結されている。これにより第1基端側プーリ42は、第1中間プーリ45と連動して回転するようになっている。なお、第1回転ロッド51は、軸線方向に垂直かつ移動体40、60、80の積層方向に垂直(すなわちY方向に平行)に配置されている。
【0034】
また第1移動体40には、第1中間プーリ45と連動して回転する第1先端側プーリ46が設けられている。これら第1中間プーリ45と、第1先端側プーリ46との間には、無端ベルトからなる第1伝達ベルト47が巻装されている。さらに、第1伝達ベルト47は、L字状の第1連結部材48を介して、先端側に隣接する第2移動体60の第2移動体本体61に連結されている。
【0035】
また第1移動体本体41には、軸線方向(Z方向)に沿って延びる第1プーリ駆動ベルト55が張設されている。第1プーリ駆動ベルト55は有端ベルトからなり、その両端において、それぞれブラケット56、57を介して第1移動体本体41に固定されている。第1プーリ駆動ベルト55は、先端側に隣接する第2移動体60が移動する際、この第2移動体60の第2基端側プーリ62を回転させるものである。
【0036】
さらに第1移動体本体41の側面には、第2移動体60を軸線方向(Z方向)に沿って案内する第1ガイドレール(案内部材)53が取り付けられている。
【0037】
続いて、第2移動体60について説明する。第2移動体60は、第1移動体40と略同一の構成を有しており、略平板状の第2移動体本体61と、第2移動体本体61に回転自在に設けられ、第2移動体本体61が軸線方向(Z方向)に移動することにより回転する第2基端側プーリ62とを有している。
【0038】
第2基端側プーリ62の両側には、第1プーリ駆動ベルト55を案内する一対のガイドプーリ63、64が設けられている。そして第1プーリ駆動ベルト55は、一対のガイドプーリ63、64に案内されて、第2基端側プーリ62に密接する。このような構成により、第2移動体本体61が移動することに伴って、第1プーリ駆動ベルト55によって第2基端側プーリ62が回転するようになっている。
【0039】
第2基端側プーリ62は、第2回転ロッド71を介して第2中間プーリ65に連結されており、これにより第2中間プーリ65と連動して回転するようになっている。なお、第2回転ロッド71は、Y方向に平行に配置されている。
【0040】
また第2移動体60には、第2中間プーリ65と連動して回転する第2先端側プーリ66が設けられている。これら第2中間プーリ65と、第2先端側プーリ66との間には、無端ベルトからなる第2伝達ベルト67が巻装されている。さらに、第2伝達ベルト67は、L字状の第2連結部材68を介して、先端側に隣接する第3移動体80に連結されている。
【0041】
また第2移動体本体61には、軸線方向(Z方向)に沿って延びる第2プーリ駆動ベルト75が張設されている。第2プーリ駆動ベルト75は有端ベルトからなり、その両端において、それぞれブラケット76、77を介して第2移動体本体61に固定されている。第2プーリ駆動ベルト75は、先端側に隣接する第3移動体80が移動する際、この第3移動体80の第3基端側プーリ82を回転させるものである。
【0042】
さらに第2移動体本体61の側面には、第3移動体80を軸線方向(Z方向)に沿って案内する第2ガイドレール(案内部材)73が取り付けられている。
【0043】
続いて、第3移動体80について説明する。第3移動体80は、第1移動体40および第2移動体60と略同一の構成を有している。すなわち第3移動体80は、略平板状の第3移動体本体81と、第3移動体本体81に回転自在に設けられ、第3移動体本体81が軸線方向(Z方向)に移動することにより回転する第3基端側プーリ82とを有している。
【0044】
第3基端側プーリ82の両側には、第2プーリ駆動ベルト75を案内する一対のガイドプーリ83、84が設けられている。そして第2プーリ駆動ベルト75は、一対のガイドプーリ83、84に案内されて、第3基端側プーリ82に密接する。これにより、第3移動体本体81が移動する際、第2プーリ駆動ベルト75によって第3基端側プーリ82が回転するようになっている。
【0045】
第3基端側プーリ82は、第3回転ロッド91を介して、第3中間プーリ85に連結されている。これにより第3基端側プーリ82は、第3基端側プーリ82と連動して回転するようになっている。なお、第3回転ロッド91は、Y方向に平行に配置されている。
【0046】
また第3移動体80には、第3中間プーリ85と連動して回転する第3先端側プーリ86が設けられている。これら第3中間プーリ85と、第3先端側プーリ86との間には、無端ベルトからなる第3伝達ベルト87が巻装されている。さらに、第3伝達ベルト87は、L字状の第3連結部材88を介してスライダ14に連結されている。
【0047】
さらに第3移動体本体81の側面に、スライダ14を軸線方向(Z方向)に沿って案内する第3ガイドレール(案内部材)93が取り付けられている。
【0048】
(本実施の形態の作用)
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0049】
まず、図示しない制御装置により、ロボット10の動作が開始される。この場合、まず図示しない電源から、接続コード25を介して駆動部12に電流が流れ、駆動部12の駆動軸が所定の方向に回転する。駆動部12の回転軸が回転することにより、駆動部12からの動力は、プーリ23およびタイミングベルト24を介して、ボールねじ16のプーリ28に伝達される。これにより、ボールねじ16のねじ軸17が所定の方向に回転する。
【0050】
この際、ナット18は、ねじ軸17に沿って、基端側から先端側へ軸線方向(Z方向)に沿って移動する。このようにナット18が移動することにより、ナット18に連結された連結具32と、連結具32に連結された第1移動体40の第1移動体本体41とが、一体となって軸線方向(Z方向)に沿って移動する。
【0051】
第1移動体本体41が軸線方向(Z方向)に移動することにより、第1基端側プーリ42は、ベース部11に対して固定されたベースプーリ駆動ベルト35によって、所定の方向(例えば図5の時計回り方向)に回転する。この際、第1回転ロッド51を介して第1中間プーリ45も同一の方向(図3の反時計回り方向)に回転し、さらに、第1伝達ベルト47および第1先端側プーリ46も同一の方向(図3の反時計回り方向)に回転する。
【0052】
第1伝達ベルト47が所定の方向に回転することにより、第1伝達ベルト47に連結された第1連結部材48が、軸線方向(Z方向)に沿って第1移動体本体41に対して基端側から先端側へ移動する。これにより、第2移動体本体61が軸線方向(Z方向)に沿って移動する。
【0053】
第2移動体本体61が軸線方向(Z方向)に移動することにより、第2基端側プーリ62は、第1移動体40に対して固定された第1プーリ駆動ベルト55によって、所定の方向(図5の時計回り方向)に回転する。この際、第2回転ロッド71を介して第2中間プーリ65も同一の方向(図3の反時計回り方向)に回転し、同時に、第2伝達ベルト67および第2先端側プーリ66も同一の方向(図3の反時計回り方向)に回転する。
【0054】
第2伝達ベルト67が所定の方向に回転することにより、第2伝達ベルト67に連結された第2連結部材68は、軸線方向(Z方向)に沿って第2移動体本体61に対して基端側から先端側へ移動する。これにより、第3移動体本体81が軸線方向(Z方向)に沿って移動する。
【0055】
第3移動体本体81が軸線方向(Z方向)に移動することにより、第3基端側プーリ82は、第2移動体60に対して固定された第2プーリ駆動ベルト75によって、所定の方向(図5の時計回り方向)に回転する。この際、第3回転ロッド91を介して第3中間プーリ85も同一の方向(図3の反時計回り方向)に回転し、同時に、第3伝達ベルト87および第3先端側プーリ86も同一の方向(図3の反時計回り方向)に回転する。
【0056】
第3伝達ベルト87が所定の方向に回転することにより、第3伝達ベルト87に連結された第3連結部材88は、軸線方向(Z方向)に沿って第3移動体本体81に対して基端側から先端側へ移動する。これにより、スライダ14が軸線方向(Z方向)に沿って第3移動体本体81に対して移動する。
【0057】
このようにして、駆動部12からの動力により、伸縮アーム20が縮退位置(図2参照)から伸長位置(図1参照)まで伸長する。またこのとき、スライダ14は、第3移動体80に対して軸線方向(Z方向)に沿って基端側から先端側に相対移動する。
【0058】
スライダ14が最も先端の位置まで移動し、伸縮アーム20が伸長位置(図1参照)に達したとき、図示しない制御装置により駆動部12が停止され、これにより伸縮アーム20の動作も停止する。この間、図示しない制御装置は、駆動部12の回転軸の回転量が所定の値に到達したことにより、伸縮アーム20が伸長位置に達したと判断し、駆動部12を停止させるようにする。
【0059】
次に、伸縮アーム20を伸長位置(図1参照)から縮退位置(図2参照)まで縮退させる。この場合、図示しない制御装置は、駆動部12の駆動軸を上記所定の方向と逆方向に回転させることにより、各プーリおよび伝達ベルトを逆方向(すなわち図3の時計回り方向)に回転させる。このようにして、上述したステップと逆のステップにより、移動体40、60、80を軸線方向に沿って先端側から基端側へ移動し、伸縮アーム20を縮退させる。またこのとき、スライダ14は、第3移動体80に対して、軸線方向(Z方向)に沿って先端側から基端側に相対移動する。
【0060】
このように本実施の形態によれば、伸縮アーム20は、3つの移動体40、60、80からなり、これら3つの移動体40、60、80は、互いに連動して軸線方向(Z方向)に沿って進退するとともに、軸線方向に垂直な方向(X方向)に互いに積層されている。このことにより、伸縮アーム20の動作時に、伸縮アーム20が通過するための広い空間を必要とすることがない。またそれぞれの移動体40、60、80の長さを短くすることができるので、縮退位置(図2参照)において、伸縮アーム20をコンパクトに収納することができる。
【0061】
また本実施の形態によれば、駆動部12からの動力が、伸縮アーム20の先端に設けられたスライダ14に機械的に伝達される。この場合、伸縮アーム20は、単一の駆動部12によって駆動され、かつ伸縮アーム20を構成する移動体40、60、80が、同時に移動するようになっている。これにより、伸縮アーム20を高速で移動させることができる。また、伸縮アーム20を移動させるための機構を簡単なものとすることができる。
【0062】
また本実施の形態によれば、各移動体40、60、80は、移動体本体41、61、81と、基端側プーリ42、62、82と、中間プーリ45、65、85と、先端側プーリ46、66、86と、伝達ベルト47、67、87とを有しており、伸縮アーム20を構成する移動体40、60、80の構成が、互いに略同一となっている。このことにより、スライダ14の移動距離に応じて、移動体40、60、80の個数を変化させ、伸縮アーム20の長さを柔軟に変更することができる。また、ロボット10を構成する部品の種類を減らすことができるので、ロボット10の製造コストを抑えることができる。
【0063】
また本実施の形態によれば、移動体40、60は、移動体本体41、61に張設されるとともに軸線方向(Z方向)に沿って延びるプーリ駆動ベルト55、75を有し、このプーリ駆動ベルト55、75は、当該先端側に隣接する移動体60、80の移動に伴って、当該移動体60、80の基端側プーリ62、82を回転させるようになっている。このことにより、駆動部12からの動力を、各移動体40、60、80を介して、スライダ14に迅速かつ効率的に伝達することができる。
【0064】
さらに本実施の形態によれば、各移動体40、60、80の基端側プーリ42、62、82と、中間プーリ45、65、85とは、軸線方向に垂直かつ複数の移動体の積層方向に垂直に(すなわちY方向に平行に)配置された回転ロッド51、71、91を介して互いに連結されているので、各種伝達機構(例えばベルト、プーリ)を各移動体本体41、61、81の両側に分散して配置することができ、各移動体40、60、80をコンパクトに構成することができる。
【0065】
さらに本実施の形態によれば、各移動体40、60、80の移動体本体41、61、81に、先端側に隣接する移動体60、80またはスライダ14を軸線方向(Z方向)に沿って案内するガイドレール53、73、93が取り付けられているので、移動体60、80またはスライダ14の移動方向を正確に規定することができる。
【0066】
(成形装置の構成)
次に、図7により、このようなロボット10を備えた、例えば、プラスチック射出成形機や金属ダイカスト成形機等の成形装置の一実施の形態について説明する。図7は、本実施の形態による成形装置の全体を示す概略図である。なお、図1乃至図6に示すロボット10の用途は、これに限定されるものではないことは勿論である。
【0067】
図7に示すように、プラスチック射出成形機や金属ダイカスト成形機等の成形装置100は、装置本体101と、装置本体101上に設けられ、成形品Mを成形するための開閉可能な金型102とを備えている。このうち金型102は、固定ダイプレート105に取り付けられた固定ダイ103と、可動ダイプレート106に取り付けられ、固定ダイ103に対して離接する方向に移動可能な可動ダイ104とを有している。また装置本体101上に、金型102内に向けて溶融樹脂を射出する射出ユニット107が設けられている。
【0068】
図7において、装置本体101上には、図1乃至図6に示すロボット10が固定されている。このロボット10において、スライダ14のエンドエフェクタ取付面13には、金型102からの成形品Mを取り出すためのハンド19が取り付けられている。
【0069】
この場合、射出成形が完了し、可動ダイ104が固定ダイ103に対して移動することにより、金型102が開となった際、ロボット10の伸縮アーム20は、縮退位置(図2)から伸長位置(図1)まで伸長する。このとき、ロボット10のスライダ14は、可動ダイ104と固定ダイ103との間に進入し、スライダ14に取り付けられたハンド19が成形品Mを把持することにより、成形品Mが可動ダイ104から取り出される。次いで、ロボット10の伸縮アーム20が伸長位置(図1)から縮退位置(図2)まで縮退し、その後、成形品Mはハンド19から放されて、成形装置100外方へ排出される。
【0070】
このように本実施の形態によれば、伸縮アーム20が縮退位置と伸長位置との間で伸縮動作する際、成形装置100の内部に広い空間が必要とされることがないので、成形装置100をコンパクトな構造とすることができる。
【符号の説明】
【0071】
10 ロボット
11 ベース部
12 駆動部
13 エンドエフェクタ取付面
14 スライダ
16 ボールねじ
19 ハンド
20 伸縮アーム
35、55、75 プーリ駆動ベルト
40、60、80 移動体
41、61、81 移動体本体
42、62、82 基端側プーリ
45、65、85 中間プーリ
46、66、86 先端側プーリ
47、67、87 伝達ベルト
48、68、88 連結部材
51、71、91 回転ロッド
53、73、93 ガイドレール
100 成形装置
101 装置本体
102 金型
103 固定ダイ
104 可動ダイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端側に固定されたベース部と、
ベース部に設けられた駆動部と、
ベース部に連結され、駆動部からの動力により軸線方向に沿って伸縮自在な伸縮アームと、
伸縮アームの先端に設けられ、軸線方向に平行なエンドエフェクタ取付面を有するスライダとを備え、
伸縮アームは、互いに連動して軸線方向に沿って進退するとともに軸線方向に垂直な方向に互いに積層された複数の移動体からなり、
スライダは、伸縮アーム先端の移動体に対して、軸線方向に沿って相対移動することを特徴とするロボット。
【請求項2】
各移動体は、
本体と、
本体に回転自在に設けられ、本体が移動することにより回転する基端側プーリと、
基端側プーリに連結され、基端側プーリと連動して回転する中間プーリと、
中間プーリと連動して回転する先端側プーリと、
中間プーリと先端側プーリとの間に巻装された伝達ベルトとを有し、
伝達ベルトは、先端側に隣接する移動体またはスライダに連結されていることを特徴とする請求項1記載のロボット。
【請求項3】
各移動体は、本体に張設されるとともに軸線方向に沿って延びるプーリ駆動ベルトを有し、プーリ駆動ベルトは、先端側に隣接する移動体の移動に伴って、当該先端側に隣接する移動体の基端側プーリを回転させることを特徴とする請求項2記載のロボット。
【請求項4】
各移動体の基端側プーリと中間プーリとは、軸線方向に垂直かつ複数の移動体の積層方向に垂直に配置された回転ロッドを介して互いに連結されていることを特徴とする請求項2または3記載のロボット。
【請求項5】
伝達ベルトは無端ベルトからなることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項記載のロボット。
【請求項6】
プーリ駆動ベルトは有端ベルトからなり、その両端が本体に対して固定されていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか一項記載のロボット。
【請求項7】
各移動体の本体に、先端側に隣接する移動体またはスライダを軸線方向に沿って案内する案内部材が取り付けられていることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか一項記載のロボット。
【請求項8】
ベース部内部に、駆動部からの動力を最も基端側の移動体に伝達する直動装置が設けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項記載のロボット。
【請求項9】
装置本体と、
装置本体上に設けられ、成形品を成形するための開閉可能な金型と、
装置本体上に固定され、請求項1乃至8のいずれか一項記載のロボットと、
ロボットのスライダのエンドエフェクタ取付面に取り付けられ、金型からの成形品を取り出すためのハンドとを備えたことを特徴とする成形装置。
【請求項10】
金型は、固定ダイと、固定ダイに対して移動可能な可動ダイとを有し、
可動ダイが固定ダイに対して移動することにより金型が開となった際、ロボットのスライダが、可動ダイと固定ダイとの間に進入することを特徴とする請求項9記載の成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−235397(P2011−235397A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109204(P2010−109204)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】