説明

ロボットステーション

【課題】 ワークを搬送するアームおよびハンド部の動作範囲に死角が生じないようにし、全方位に等しくワークを送り出し尚かつどの方位の作業ステーションからもワークを受け取ることができるようにする。
【解決手段】 ロボット移動ステーション1を中心として各作業ステーション2がワーク10に対し組立・加工・洗浄等の各工程が行われる各作業ステーション2にワーク10を送り出しあるいは各作業ステーション2からワーク10を受け取り又はワーク10に対して作業を行う産業用ロボットMを載置する回転テーブル5と、回転テーブル5の中央に配置され、これと一体となって回転可能な回転軸3と、回転軸3近傍に配置した回転軸3を回転させる回転軸用駆動装置4とを備え、回転テーブル5を中心として各作業ステーション2がその周囲に配置されるとともに、産業用ロボットMは、回転テーブル5とは独立の駆動ユニットとなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットを載置して作業位置へ移動させるロボットステーションに関する。
【背景技術】
【0002】
生産ライン上で製品・部品等の物品(本明細書ではこれらを「ワーク」と呼ぶ)を搬送し又は組立加工作業をするために産業用ロボットが利用されている。産業用ロボットは、ワークの組立・加工・洗浄等の各工程が行われる各作業ステーションに対しワークを送り出したり受け取ったりしてワークを順次搬送し又は組立加工作業をする。
【0003】
従来の産業用ロボットとして、ワークを保持するためのアームおよびハンドを有するものが広く使用されてきている。一例を挙げて説明すれば、例えば、回転自在なベース上でその回転中心から偏心した位置に設けられた回動可能な第1アーム、この第1アームの先端部に回動可能に取り付けられた第2アーム、この第2アームの先端部に回動可能に取り付けられたハンド部を備えた、スカラー型とも呼ばれる関節型のロボットがある(例えば、特許文献1参照)。あるいは、鉛直方向に積み上げられたワークの一つひとつを搬送するべく、アーム機構を昇降させるためのZ軸を備えたいわばZ軸付きスカラーロボットも利用されている。ちなみに、ハンド部の先端にはワークの種類等に応じて種々のものが適用され、例えばワークを把持して運ぶチャック装置が取り付けられるなどしている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、簡易小型の産業用ロボットして、Z軸及び旋回軸により構成するとともに、搬送移動のための機構として、リニアモータ等の水平スライド機構を有する産業用のロボットもある(特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平11−138474号公報
【特許文献2】特開平11−123675号公報
【特許文献3】特開2004−9152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような特許文献1または2に示す構成のスカラー型ロボットの場合、各アームおよびハンド部の動作範囲に死角が生じるという問題がある。すなわち、スカラー型ロボットにおいては例えば第1アームを支持する部分が円筒状になっていることがあり、各アームおよびハンド部を動作させる際にこの円筒状部分が邪魔になる結果、動作範囲に死角が生じてしまうことがある。
【0007】
また、特許文献3に示すZ軸及び旋回軸により構成した産業用のロボットでは、搬送移動のための機構を個別にロボット毎に設けており、水平移動させるためにロボット本体の他にレール等の移動ガイドを別個に設ける必要がある。このため、レール等ガイドの歪みによりロボット本体を精度良く安定姿勢で移動させることが困難であり、余分なコストもかかる。更に、一定の移動範囲を確保するためにレールを長くしたり、生産ラインや装置内の他の機構との干渉を避けてレールの設置場所を工夫したりする必要があり、一層、設計上及びコスト上の問題が顕著である。
【0008】
そこで、本発明は、ワークを搬送するアームおよびハンド部の動作範囲に死角が生じないようにし、全方位に等しくワークを送り出し尚かつどの方位の作業ステーションからもワークを受け取ることができるロボットステーションを提供することを目的とする。さらに、本発明は、生産ラインや装置内の他の機構と干渉することなく、自在に複数のロボット配置ができるとともに、一定の移動範囲を確保できるロボットステーションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、ロボットステーションが、ワークに対し組立・加工・洗浄等の各工程が行われる各作業ステーションにワークを送り出しあるいは各作業ステーションからワークを受け取り又はワークに対して作業を行う産業用ロボットを載置する回転テーブルと、回転テーブルの中央に配置され、これと一体となって回転可能な回転軸と、該回転軸近傍に配置した回転軸を回転させる回転軸用駆動装置とを備え、回転テーブルを中心として各作業ステーションがその周囲に配置されるとともに、産業用ロボットは、回転テーブルとは独立の駆動ユニットであることを特徴とするものである。
【0010】
本発明にかかるロボットステーションは、その周囲に各種作業ステーションが配置され、これら作業ステーションの中心にて回転テーブルを回転させて、この回転テーブル上に載置した産業用ロボットを所定位置に移動させるので、レール等の特別の手段を要さず、単純な構成によって、生産ラインに必要な一定の範囲での産業用ロボットの移動を確保することができる。また、回転テーブルの回転軸及び駆動装置は回転テーブルのほぼ中心にあるので産業用ロボットの移動と干渉することもなく、生産ラインの必要に応じて回転テーブル上の任意の位置に複数のロボットを配置することができる。
【0011】
更に、産業用ロボットは、回転テーブル、回転軸及び回転軸用駆動装置よりなる一組のユニット(テーブルユニット)とは別の独立の駆動ユニットとして構成されているので、機械設計のみならず制御システムの設計についても、上述の任意配置が一層容易なものとなっている。
【0012】
また、請求項2に記載の発明のように、産業用ロボットは、回転テーブルの回転中心以外の位置に自転可能に設けられ回転軸を中心としてその周りを移動するハンド支持軸と、該ハンド支持軸を回転テーブル上で自転させる旋回用駆動装置と、回転テーブルに対してハンド支持軸を昇降させる昇降用駆動装置と、各作業ステーションとの間でワークを授受のためワークを保持し、又はワークに対して作業を行うためにハンド支持軸に設けられたハンド部とを備え、回転テーブルの回転軸は、少なくとも360°回転可能であることが好ましい。
【0013】
本発明にかかるロボットステーションはその周囲に各種作業ステーションが配置され、これら作業ステーションの中心にて回転テーブルを回転させて回転テーブル上に載置した産業用ロボットを所定位置に移動させる。このとき、産業用ロボットのハンド支持軸およびハンド部は当該回転テーブルの回転軸を中心としたいわば公転運動をし、各作業ステーションの前を周状に移動する。また、ハンド支持軸はそれ自身が回転つまり自転運動をすることによってハンド部を旋回させることができる。要するに、このロボットステーションは、産業用ロボットを載置することにより、回転軸からハンド支持軸までの要素をスカラー型ロボットにおける第1アームのごとく動作させ、さらに、ハンド支持軸から先の部分をスカラー型ロボットにおける第2アームおよびハンド部のごとく動作させることができる。
【0014】
しかも、このようにロボットステーションに産業用ロボットを載置すると、回転テーブルという360°以上回転可能な機構によって第1アームに相当する要素を構成していることから、従来のスカラー型ロボットのような複数のアームを有することに起因する死角を生じることがない。このため、全方位に等しくワークを送り出し尚かつどの方位の作業ステーションからもワークを受け取ることが可能となる。
【0015】
以上のようなロボットステーションには、請求項3に記載のように、ハンド支持軸、旋回用駆動装置、昇降用駆動装置およびハンド部を含んだ産業用ロボットが複数設けられていても好ましい。こうした場合、1つのシステムにおいて種類(大きさや形状)の異なるワークを同時に取り扱うことが可能となることから、例えば同一システム内で大きさ・種類の異なるワークを産業用ロボットによって同時に搬送して組立用ステーションに送り込み、当該組立用ステーションにてこれらワークを組み立てるといったシステムを構築することも可能となる。
【0016】
また、請求項4に記載のように、搬送対象であるワークとして大きさまたは形状の異なる複数種を同時に取り扱うことも好ましい。従来の産業用ロボットにおいては、複数のハンドモジュールを備えている場合であってもハンド部には大きさや形状の等しい同一種のものが使用されているのが通常であったため、同一種のワーク、あるいは種類が異なっているとしても大きさや形状が多少異なる程度のワークしか取り扱うことができないという実情があった。これに対し、複数の産業用ロボットを備えた本発明にかかるロボットステーションにおいては、ハンド部の大きさや形状を変えれば複数種のワークを同時に取り扱うことも可能となる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1にかかるロボットステーションによると、ワークに対し組立・加工・洗浄等の各工程が行われる各作業ステーションにワークを送り出しあるいは各作業ステーションからワークを受け取り又はワークに対して作業を行う産業用ロボットを載置する回転テーブルと、回転テーブルの中央に配置され、これと一体となって回転可能な回転軸と、該回転軸近傍に配置した回転軸を回転させる回転軸用駆動装置とを備え、回転テーブルを中心として各作業ステーションがその周囲に配置されるとともに、産業用ロボットは、回転テーブルとは独立の駆動ユニットであることを特徴とするものである。
【0018】
これにより、ロボットステーションは、その周囲に各種作業ステーションが配置され、これら作業ステーションの中心にて回転テーブルを回転させて、この回転テーブル上に載置した産業用ロボットを所定位置に移動させるので、レール等の特別の手段を要さず、単純な構成によって、生産ラインに必要な一定の範囲での産業用ロボットの移動を確保することができる。また、回転テーブルの回転軸及び駆動装置は回転テーブルのほぼ中心にあるので産業用ロボットの移動と干渉することもなく、生産ラインの必要に応じて回転テーブル上の任意の位置に複数のロボットを配置することができる。
【0019】
更に、産業用ロボットは、回転テーブル、回転軸及び回転軸用駆動装置よりなる一組のユニット(テーブルユニット)とは別の独立の駆動ユニットとして構成されているので、機械設計のみならず制御システムの設計についても、上述の任意配置が一層容易なものとなっている。
【0020】
請求項2記載のロボットステーションによると、ワークを搬送するアームおよびハンド部の動作範囲に死角が生じることがなく、全方位に等しくワークを送り出し尚かつどの方位の作業ステーションからもワークを受け取ることが可能となる。しかも、このロボットステーションによれば回転テーブルを回転させることによってハンド支持軸やハンド部などを各作業ステーション前の所定位置まで移動させることができるため、比較的単純な構成とすることができる。
【0021】
しかも、ハンド部、ハンド支持軸、旋回用駆動装置、昇降用駆動装置などは一つのモジュールとして構成することができ、さらに、このモジュールを構成するハンド支持軸は鉛直方向に延びる細いシャフトによって構成することができるから、各パーツがこのハンド支持軸の周囲にコンパクトに配置されたモジュールを構成することもできる。従来のスカラー型ロボットの場合だと重量バランスや強度などの点で種々の制約を受ける場面もありえたが、本発明にかかるロボットステーションにおいては、回転テーブル上に産業用ロボットを設置する構成であるから比較的自由度があり、各パーツの配置という点でも種々の方法がとりえる。したがって産業用ロボットを複数設置する場合における設計の自由度は大きく、産業用ロボットどうしの干渉、あるいは産業用ロボットと回転軸等との干渉を避けるような構造にしやすい。加えて、上述のように産業用ロボットをコンパクトにすれば、回転テーブル上に例えば複数の産業用ロボットを設置するのにも有利となる。
【0022】
請求項3の搬送用ロボットによると、複数の産業用ロボットを備えていることから搬送動作の同時進行が可能となり、その分だけ作業に要する時間(タクトタイム)を短縮することが可能となる。
【0023】
請求項4のロボットステーションによると、上述したように複数種のワークを同時に取り扱うことも可能となる。こうした場合、1つのシステムにおいて種類(大きさや形状)の異なるワークを同時に取り扱うことが可能となることから、例えば同一システム内で大きさ・種類の異なるワークを各産業用ロボットによって同時に搬送して組立用ステーションに送り込み、当該組立用ステーションにてこれらワークを組み立てるといったシステムを構築することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0025】
図1〜図3に本発明の一実施形態を示す。本発明にかかるロボットステーションは、例えば、ワーク10に対し組立・加工・洗浄等の各工程が行われる各作業ステーション2にワーク10を送り出しあるいは各作業ステーション2からワーク10を受け取るというものである。本実施形態にかかるロボットステーション1は、当該ロボットステーション1を中心としてその周囲に各作業ステーション2が配置されていて、これら各作業ステーション2との間でワーク10の授受を行う装置として機能する。一例を示せば、当該ロボット移動ステーション1を中心としてその周囲に60°おきに作業ステーション2を設置するための6つのスペースSを設け、これらスペースSに組立用ステーション、加工用ステーション、洗浄用ステーションといった各種作業ステーション2を適宜配置することによって種々の生産システムを構築できるようになっており、その中心に配置されるロボット移動ステーション1は各作業ステーション2にワーク10を送り出しあるいは各作業ステーション2からワーク10を受け取る働きをする(図2参照)。この場合における生産システムの態様としては種々のものがあるが、本実施形態では、2機の搬送用ステーション2a,2dが中央のロボットステーション1を挟んで対向している2つのスペースSにそれぞれ設置され、両搬送用ステーション2a,2d間の隣り合う2つのスペースSに2機の洗浄用ステーション2b,2cが隣接するように設置されたシステムを例として説明する(図2参照)。各洗浄用ステーション2b,2cと対向する位置にある2つのスペースSにはどの作業ステーション2も設置されていない。
【0026】
ここでまず各作業ステーション2の概略を説明しておく。第1の搬送用ステーション2aは、複数のワーク10が載置されたトレイ25を外部からこのシステム内へと運び入れ、洗浄等を終えた後のワーク10を再びトレイ25に載せてシステム外に運び出す装置である。特に図示していないが、この第1の搬送用ステーション2aにはトレイ25を移動させるためのレール等の各種装置が設けられている。
【0027】
第2の搬送用ステーション2dは、搬送車26を所定位置に待機させ、複数のワーク10を載せた後にシステムの外部へと運び出し、あるいは逆にこの搬送車26を使って複数のワーク10を外部から運び入れるために利用される作業ステーションである。この第2の搬送用ステーション2dは搬送車26が走行する軌道レール27を備えており、さらに、この軌道レール27の一部を方向転換するための転換装置28も備えている(図1参照)。転換装置28によって方向転換した軌道レール27は他のレールと接続されて搬送車26をそのレールの方向へと導くことになるが、本実施形態では第2の搬送用ステーション2dの概略構成のみを図示し、他のレール等については図示を省略している。
【0028】
洗浄用ステーション2b,2cは各ワーク10を洗浄する装置によって構成されているもので、例えば本実施形態では第1洗浄用ステーション2bおよび第2洗浄用ステーション2cの2機の作業ステーションを隣接するように配置している(図2参照)。一般的に洗浄に要する時間は比較的長くなる場合があるが、本実施形態ではこのように2つの洗浄用ステーション2b,2cを並べて配置し、両装置にて同時に洗浄できる構成とすることによって洗浄に要する時間を短縮できるようにしている。
【0029】
本実施形態における洗浄用ステーション2b,2cの洗浄装置は、4つの槽を備えた回転洗浄槽28を有し、ワーク10をこれら4つの槽に順次浸漬させることによって洗浄するという装置である。洗浄剤には例えば脱脂力が高い炭化水素系洗浄剤や揮発性の高いフッ素系洗浄剤など、あるいは有機溶媒を使用しない場合であれば浄水などが洗浄対象となるワーク10の種類や用途に応じて使用される。また、洗浄装置にはワーク10を回転洗浄槽28の各洗浄槽に浸漬するためのワークホルダ29が設けられている(図1参照)。ワークホルダ29は、ロボットステーション1から受け取ったワーク10を保持したまま昇降して各洗浄槽に順次浸漬させていく。このようにワークホルダ29が昇降するタイミングに合わせて回転洗浄槽28が回転し、例えば第1槽→第2槽→第3槽→第4槽というように各槽にワーク10を順次浸漬させて洗浄を行う。
【0030】
本実施形態におけるロボットステーション1の周囲には4機の各作業ステーション2a〜2dが60°おきに配置されている(図2参照)。これら各作業ステーション2a〜2dに対してワーク10を送り出しあるいは各作業ステーション2a〜2dからワーク10を受け取る本実施形態のロボットステーション1は、回転軸3と、回転軸用駆動装置4と、回転テーブル5及び産業用ロボットMを備えたロボットとして構成されている。
【0031】
さらに、産業用ロボットMは、ハンド支持軸6と、ハンド支持軸6用の旋回用駆動装置7と、ハンド支持軸6用の昇降用駆動装置8と、ワーク10を把持等するハンド部9とから構成され、これらは、上述した回転軸3、回転軸用駆動装置4、回転テーブル5とは独立の駆動ユニットで構成されている。各部の構成は以下のようになっている。
【0032】
回転軸3は、当該ロボットステーション1のほぼ中央に配置された鉛直のシャフトによって構成されているもので、回転テーブル5を回転させる際の回転中心として機能する(図1参照)。図1においては、この回転軸3の中心軸をθ1軸として示している。
【0033】
回転軸用駆動装置4は上述した回転軸3を回転させるための装置である。例えば本実施形態においては、ハンド支持軸6を各作業ステーション2a〜2dの正面に精度よく位置決めできるようにステッピングモータを利用することとしているが、装置の駆動源がステッピングモータに限定されるということではなくこれ以外のモータ等を使用することもできる。ただ、どのような駆動源を用いるにせよ、回転軸3および回転テーブル5の可動域は制限を受けるものではないが、本実施形態では少なくとも1回転以上(360°以上)確保されていることが望ましい。こうすることにより、回転軸3を中心としてハンド支持軸6およびハンド部9をいずれの方向にも向かせることができ、ハンド支持軸6が移動できない領域がなくなっていわゆる動作の死角がなくなることになる。ただし、回転軸3周りにハンド支持軸6を移動させる際には、回転軸3および回転テーブル5を時計回り、半時計回りの両方向に適宜回転させて移動させるようにすることが望ましい。すなわち、本実施形態のロボットステーション1においては旋回用駆動装置7の駆動源や昇降用駆動装置8の駆動源が回転テーブル5に取り付けられている関係上、回転軸3および回転テーブル5を一方向にのみ回転させ続けるとこれら各駆動源への配線が回転軸3の周りに絡み付くことが起こりうるが、上述したように両方向に適宜回転させればこのように回転軸3の周りに絡み付くのを防止することができる。
【0034】
回転テーブル5は、ハンド支持軸6を保持しながら回転するいわば回転卓であり、上述した回転軸3に取り付けられこの回転軸3と一体となって回転するようになっている(図1参照)。また、この回転テーブル5のうち回転中心以外の部分には、産業用ロボットMのハンド支持軸6を回転(自転)可能な状態で取り付けるための取付孔5aが設けられている。
【0035】
この回転テーブル5は、平板状の回転卓となっているので、生産ラインのニーズに応じて適宜の位置に、産業用ロボットMを取り付ける取付孔5aを設けることができる。より具体的には、回転テーブル5の回転軸3の回転中心から取付孔5aまでの距離を変更することも可能であり、複数の産業用ロボットMを配置した場合には各産業用ロボットMの間隔を変更することも可能である。また、回転テーブル5は産業用ロボットMが取り付けられるフレームとしても機能しており、フレームに適する適宜の板厚及び堅固な構成とされている。
【0036】
さらに、取付孔5aは、円形でなくても、長孔でもよく、回転テーブル5の径方向または周方向に産業用ロボット5を移動可能にしてもよい。
【0037】
ハンド支持軸6はハンド部9を支持し尚かつ旋回させるために設けられている軸であり、回転テーブル5の回転中心以外に設けられた取付孔5aに取り付けられている。例えば本実施形態におけるハンド支持軸6は鉛直な丸軸であり、回転テーブル5を上下に貫くようにして上述の取付孔5aに回転可能な状態で取り付けられている(図1参照)。したがって、本実施形態のハンド支持軸6は回転テーブル5上で自身が回転することによってハンド部9を旋回運動させるいわば自転運動と、回転テーブル5とともに回転軸3の周りを回るいわば公転運動との両方を行うことができる。なお、図1においてはこのハンド支持軸6の中心軸をθ2軸として示している(図1参照)。
【0038】
このようなハンド支持軸6とともに、ハンド支持軸6を回転テーブル5上で自転させる旋回用駆動装置7と、ハンド支持軸6を昇降させる昇降用駆動装置8とがそれぞれ設けられている。さらには、回転テーブル5上でハンド支持軸6を昇降させるための機構(ハンド昇降機構)12と、回転テーブル5上でハンド支持軸6を回転(自転)させてハンド部9を旋回させるための機構(ハンド旋回機構)13とがそれぞれ設けられている。以下、ハンド昇降機構12とハンド旋回機構13のそれぞれについて説明する(図3参照)。なお、図3においてはこれらハンド昇降機構12やハンド旋回機構13を解りやすく示すために回転テーブル5を想像線で表すこととしている。
【0039】
ハンド昇降機構12は、ハンド支持軸6とこのハンド支持軸6を支承するブシュ14とハンド支持軸6を昇降させる昇降用駆動装置8とからなる。昇降用駆動装置8はハンド支持軸6を昇降させてハンド部9を上下に移動させるための装置で、内部にモータを有している。ブシュ14はハンド支持軸6を回転可能かつ軸滑り可能に支持する軸受であり、回転テーブル5の取付孔5aに装着されている(図1参照)。例えば本実施形態のブシュ14は、ハンド支持軸6を貫通させる旋回用駆動装置7の中空部分にフランジ部が引っ掛かるまで嵌め合わせられ、この旋回用駆動装置7と一体的な状態となっている。また、ブシュ14とは異なる位置を支承するベアリング16がこのブシュ14よりも下方側に設けられている(図1参照)。さらに本実施形態では、ハンド支持軸6のうち回転テーブル5よりも下部分の一部にねじ部6aを設けるともに、このねじ部6aと噛み合う雌ねじを内周に有する回転筒15をこのねじ部6aの周囲に設けている(図1参照。図3においてはこの回転筒15の図示を省略している)。回転筒15はベアリング16によって回転可能ではあるが軸方向へは移動しないように支持されている。回転筒15の周りにはこの回転筒15を回転させるプーリ17が固着されている(図1参照)。このプーリ17と、昇降用駆動装置8のモータ軸に取り付けられたプーリ18との間にはタイミングベルト19が掛け渡されている(図3参照)。昇降用駆動装置8を駆動してプーリ18,17を回転させると、これに伴い回転筒15が回転し、噛み合うねじの作用によってハンド支持軸6が昇降する。
【0040】
ハンド旋回機構13は、ハンド支持軸6の上端部に水平方向を向くように取り付けられた旋回アーム11、およびこの旋回アーム11の先端に取り付けられたハンド部9をハンド支持軸6ごと回転させるための機構である。本実施形態のハンド旋回機構13は、シャフト旋回ガイド20、旋回片21、フレーム22、旋回用駆動装置7などで構成されている。旋回用駆動装置7は、シャフト旋回ガイド20と旋回片21を介してハンド支持軸6を所定量回転させるモータを内部に有している。シャフト旋回ガイド20はハンド支持軸6の途中に設けられた大径部であり、ハンド支持軸6に対し回転不可能なように一体化されている。旋回片21はハンド支持軸6と同心円上を回転する例えば半円筒形状やL字形状等とされた部材で、内面側にシャフト旋回ガイド20の側縁と係合する溝部を有している。この溝部はハンド支持軸6の軸方向に延びる溝からなり、シャフト旋回ガイド20が垂直方向に移動するのを許容するが自由な回転は規制する。また旋回片21の上部側には旋回用駆動装置7が設けられており、この旋回用駆動装置7を駆動することによって旋回片21を回転させ、この旋回片21を介してシャフト旋回ガイド20およびハンド支持軸6を同量回転させ、旋回アーム11およびハンド部9を旋回させることができるようになっている。
【0041】
旋回アーム11は、回転可能なハンド支持軸6の上端から水平方向に延びるように取り付けられていて、このハンド支持軸6が回転するのに伴い同量だけ旋回する。本実施形態ではこの旋回アーム11の先端に設けられたハンド部9によって部品等を把持(または吸引)し、各作業ステーション2a〜2d間を搬送するようにしている。さらに、本実施形態における旋回アーム11は水平軸Cを中心として回転可能であり、モータ23を駆動すれば把持したワーク10を回転させることができるのはもちろん、例えば異形のワーク10を掴んだり離したりする際に僅かにハンド部9を傾けることもできるようになっている。
【0042】
ハンド部9は、ワーク10を把持等して持ち上げ移動させるための装置であり、例えば本実施形態では、一対の把持片でワーク10の側部等を挟み込む構造としている(図3参照)。ここで、図3に示しているのは板状の一対の把持片からなるハンド部9であるが、形状は一例にすぎず、例えばこれら把持片を途中で直角に折り曲げてL字形のハンド部9とするなど、取り扱うワーク10や各作業ステーション2の形態に応じて種々変更することが可能である(図1、図2参照)。また、本願では特に図示はしないが、例えばワーク10を吸引して把持するようにしたいわゆるエアーチャックをハンド部9として使用することもできる。さらには、ハンド部9から発生することのある塵埃を吸入して作業ステーション2などに塵埃が舞い降りないようにするための塵埃吸入装置を備えることも好ましい。本願では特に図示していないが、例えば、旋回アーム11の下部であってハンド部9の近傍位置に塵埃吸入孔を設け、この吸入孔から塵埃を吸引するようにすれば塵埃が拡散するのを防止でき、特に洗浄用ステーション2b,2cにてワークの洗浄処理を行う場合に有効的である。
【0043】
上述したように本実施形態のロボットステーション1は、旋回アーム11やハンド部9といったワーク10を実際に把持して搬送する部材がブシュ14よりも上方に配置され、さらに、ハンド昇降機構12やハンド旋回機構13の主要部分はこのブシュ14よりも下方に配置されていることから、ハンド支持軸6の軸方向に関し重量配分が均等化されてブシュ14に対する重量バランスが保たれている。
【0044】
また本実施形態のロボットステーション1は、回転テーブル5を回転させることによって、この回転テーブル5上に設けられたハンド支持軸6やハンド部9などを各作業ステーション2a〜2dの前の所定位置で停止させることができる。つまり、本実施形態のロボットステーション1においては、必要量のみ回転するという比較的単純な構成の回転テーブル5があたかも従来の搬送用ロボットにおける第1のアームのように機能することから、回転量を微調整するだけで第1アームとしての機能をまかなうことができる。
【0045】
さらに、回転テーブル5の可動域として少なくとも1回転以上(360°以上)を確保することによりハンド部9をいずれの方向にも向けることができるようになり、ワーク搬送時における死角がなくなるという利点がある。したがって、このような構成のロボットステーション1によればどの方向に配置された作業ステーション2に対してもワーク10を無理なく送り出し、またこれら各作業ステーション2から洗浄や加工を終えたワーク10を受け取りさらに搬送することができるというように、従来のスカラー型搬送ロボットでは困難であった領域まで届くことになる。
【0046】
しかも、図1や図3から明らかなように、ハンド部9、ハンド支持軸6、旋回用駆動装置7、昇降用駆動装置8などからなる装置(以下「産業用ロボット」といい、図3中において符号Mで示す)は駆動装置や駆動源までもを含んだ独立した駆動ユニットとして構成されており、回転テーブル5上に設置された場合に占める面積ないしは領域が少ない。すなわち、産業用ロボットMを構成するハンド支持軸6は鉛直方向に延びる細いシャフトによって構成され、尚かつ旋回用駆動装置7や昇降用駆動装置8を構成する各パーツはこのハンド支持軸6の周囲にコンパクトに配置されていることから(図3参照)、回転テーブル5上で旋回運動(あるいは昇降運動)した場合に他の装置(例えば回転テーブル5の真下に設けられている回転軸3や回転軸用駆動装置4など)と干渉するようなことがない。したがって作業中に故障が生ずるおそれが皆無であり、例えば回転テーブル5やハンド支持軸6を高速動作させる場合に干渉等を問題にせずに済む。また、このように産業用ロボットMがコンパクトで他の部品と干渉しがたい構成になっているということは、本実施形態にかかるロボットステーション1を組み立てたり保守したりする作業者にとっても扱いやすい装置ということになる。
【0047】
加えて、上述のように産業用ロボットMがコンパクトであることは、回転テーブル5上に複数の産業用ロボットMを設置するのにも有利である。この場合における産業用ロボットMの配置は特に対称的な位置に限定されるわけではない。すなわち、例えば2機の産業用ロボットMを回転テーブル5上に設置する場合、回転軸3を挟んだ対称位置に各産業用ロボットMを配置すれば重量バランスといった点からは有利となりうるがこれは配置の一例にすぎない。本実施形態で説明したロボットステーション1によれば、組立・加工・洗浄等の各工程が行われる作業ステーションを当該ロボットステーション1の周囲に自由に配置することができ、システムに応じて自由にレイアウトできる点が特徴的である。そして、こうした場合において、ロボットステーション1が複数の産業用ロボットMを備えていることは搬送動作の同時進行が可能になるという点で有利であり、その分だけ作業に要する時間(タクトタイム)を短縮することが可能となる。例えば本実施形態のように洗浄用ステーション2b,2cを並列させたシステムであれば、各洗浄用ステーション2b,2cに対してほぼ同時にワーク10を送り出し、洗浄が終了すれば各ワーク10を同時に受け取るというような並列した作業も可能となるから、時間差を設けてワーク10を送り出したり受け取ったりする場合よりもタクトタイムが短縮される。また、複数のワーク10を同時に取り扱うようにすればその分だけ回転テーブル5の回転量や各ハンド部9の動作量が少なくて済むことになるから、各装置に対する負担が減少することにつながる。
【0048】
また、従来のスカラー型(関節型)のロボットアームの場合であれば多関節構造をとるが、本実施形態のロボットステーション1の場合には各産業用ロボットMが回転テーブル5上で昇降および回転(旋回)するという構造をとるために、関節どうしの干渉を考慮する必要がなく小型化しやすいという利点もある。
【0049】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば本実施形態においては、ロボットステーション1の周囲に設けられた6つのスペースSに2機の搬送用ステーション2a,2dと2機の洗浄用ステーション2b,2cを設置した形態を例として説明したがこれは一例であり、上述したように各スペースSには各種作業ステーション2を適宜配置することができる。他の例を挙げれば、図2に示す2つのスペースSにさらに2機の洗浄用ステーションを設置することができるし、あるいは「かしめ」などの加工ステーションや組立ステーションといった他の作業ステーションを設置することもできる。
【0050】
また、上述した実施形態ではロボットステーション1の周囲に6つのスペースSが等間隔(60°おき)に設けられ、当該スペースSに各種作業ステーション2を放射状に設置できるいわば星型のシステムを例として説明したがこれも一例にすぎず、例えば4つのスペースS、8つのスペースSとするなど、システムの機能や規模、各作業ステーションのサイズなどに応じて適宜形態を変えることができる。等間隔に設けられたスペースSのすべてに作業ステーション2を設置すれば当該作業ステーション2の配置間隔(ないしは配置角度)はある一定の基準間隔ということになるし、作業ステーション2が設置されていないスペースSがあればその部分における作業ステーションの配置間隔(ないしは配置角度)は基準間隔(ないしは基準角度)の2倍、3倍、…というように倍数間隔ということになる。ちなみに、本実施形態で説明したシステムは通常時はロボットステーション1と一体をなすものであるが、必要に応じて各作業ステーション2を他のものに入れ換えることができるなど容易なレイアウト変更が可能であり汎用性が高いシステムである。
【0051】
さらに、本実施形態のようなクラスタ型装置を複数台その供給排出口を接続することにより一貫ラインの構築ができる。すなわち、クラスター型装置の各ステーションには洗浄、組立、加工等のユニットが設置可能である為、本クラスター型装置にある製品の製造工程の装置を工程順に設置しそれを数珠繋ぎに接続すれば一貫ラインが構築できる。
【0052】
また、産業用ロボットMを2機ないしはそれ以上設置することによって搬送動作の同時進行が可能となりタクトタイム短縮が図れることは上述したとおりであるが、このように産業用ロボットMを複数(例えば2機)設置する場合、各産業用ロボットMのハンド部9の種類を変えるようにしてもよい。すなわち、ハンド部9の大きさや形状を異ならせることにより、1つのシステムにおいて種類(大きさや形状)の異なるワーク10を同時に取り扱うことが可能となる。このような場合の1つの実施形態としては、同一システム内で大きさ・種類の異なるワーク10を各産業用ロボットMによって同時に搬送して組立用ステーションに送り込み、当該組立用ステーションにてこれらワーク10を組み立てるといったシステムを挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態におけるロボットステーションおよびその周囲に設けられた作業ステーションの構成を示す部分縦断面図である。
【図2】本実施形態のロボットステーションおよびその周囲に設けられた各作業ステーションを示す平面図である。
【図3】本実施形態のロボットステーションにおける産業用ロボットを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
1 ロボットステーション
2 作業ステーション
3 回転軸
4 回転軸用駆動装置
5 回転テーブル
6 ハンド支持軸
7 旋回用駆動装置
8 昇降用駆動装置
9 ハンド部
10 ワーク
M 産業用ロボット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対し組立・加工・洗浄等の各工程が行われる各作業ステーションに前記ワークを送り出しあるいは前記各作業ステーションから前記ワークを受け取り又は前記ワークに対して作業を行う産業用ロボットを載置する回転テーブルと、前記回転テーブルの中央に配置され、これと一体となって回転可能な回転軸と、該回転軸近傍に配置した前記回転軸を回転させる回転軸用駆動装置とを備え、前記回転テーブルを中心として前記各作業ステーションがその周囲に配置されるとともに、前記産業用ロボットは、前記回転テーブルとは独立の駆動ユニットであることを特徴とするロボットステーション。
【請求項2】
前記産業用ロボットは、前記回転テーブルの回転中心以外の位置に自転可能に設けられ前記回転軸を中心としてその周りを移動するハンド支持軸と、該ハンド支持軸を前記回転テーブル上で自転させる旋回用駆動装置と、前記回転テーブルに対して前記ハンド支持軸を昇降させる昇降用駆動装置と、前記各作業ステーションとの間で前記ワークを授受のため前記ワークを保持し、又は前記ワークに対して作業を行うために前記ハンド支持軸に設けられたハンド部とを備え、前記回転テーブルの回転軸は、少なくとも360°回転可能なことを特徴とする請求項1に記載のロボットステーション。
【請求項3】
前記産業用ロボットが前記回転テーブル上に複数設けられていることを特徴とする請求項2に記載のロボットステーション。
【請求項4】
搬送又は作業の対象である前記ワークとして大きさまたは形状の異なる複数種を同時に取り扱うことを特徴とする請求項3に記載のロボットステーション。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−88293(P2006−88293A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−279320(P2004−279320)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】