説明

ロボットハンド及び移送ロボット

【課題】基板Wの重量、ロボットハンド1の加減速が大きくなっても、基板Wに傷が発生することを十分に抑えつつ、基板Wを移送すること。
【解決手段】ハンド本体7に基板Wの裏面当接可能な複数の当接ピン13が設けられ、ハンド本体7における各当接ピン13の周縁部に基板Wの裏面側の空気を吸い込み可能な吸込孔21が形成され、各吸込孔21が空気を吸い込む送風器19に接続されていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばガラス基板、ウエハ基板等の基板の裏面又は表面を保持するロボットハンド等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的なロボットハンドについて図4を参照して説明する。
【0003】
ここで、図4は、従来の一般的なロボットハンドの斜視図である。
【0004】
図4に示すように、従来の一般的なロボットハンド101は、ガラス基板等の基板Wを移送(ハンドリング)する際に用いられる移送ロボット(ハンドリングロボット)103の構成要素の1つであって、基板Wの裏面を保持するものである。そして、従来のロボットハンド101の具体的な構成等は、次のようになる。
【0005】
即ち、移送ロボット103における多関節構造のロボットアーム105の先端部には、ハンド本体107が設けられており、このハンド本体107は、複数本のフォーク109を備えている。また、各フォーク109の表面には、基板Wの裏面を吸着可能な複数の吸着パッド111が長手方向(フォーク109の長手方向)に間隔を置いて設けられており、各吸着パッド111は、対応関係にありかつ真空圧を発生させるエジェクタ113(真空発生器の一例)にエア配管115を介して接続されている。ここで、複数のエジェクタ113は、ロボットアーム105の適宜位置に取付台117を介して搭載されている。
【0006】
従って、基板Wを第1基板位置から第2基板位置に移送するには、まず、ロボットアーム105の先端部を第1基板位置に接近させて、複数本のフォーク109及び複数の吸着パッド111を基板Wの裏面側に位置させる。そして、複数のエジェクタ113の駆動により複数の吸着パッド111内に真空圧を発生させて、複数の吸着パッド111によって基板Wの裏面を吸着する。これにより、ロボットハンド101によって基板Wの裏面を保持することができる。
【0007】
ロボットハンド101によって基板Wの裏面を保持した後に、ロボットアーム105の先端部を第2基板位置に接近させることにより、基板Wを第1基板位置から第2基板位置に移送する。そして、複数のエジェクタ113の駆動を停止して複数の吸着パッド111による吸着状態を解除することにより、ロボットハンド101の保持状態を解除する。これにより、基板Wをロボットハンド101から取り外して、一連の基板Wの移送作業を終了する。
【0008】
なお、本発明に関連する先行技術として特許文献1に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3900228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、移送対象である基板Wの重量、ロボットハンド101の加減速(ロボットアーム105の先端部の加減速)が大きくなると、基板Wに作用する慣性力も大きくなる。そのため、移送中の基板Wがロボットハンド101から落下しないように、ロボットハンド101の保持力を十分確保する必要がある。
【0011】
一方、ロボットハンド101の保持力は、吸着パッド111の吸着面積及び吸着パッド111内の到達負圧等によって決定され、ロボットハンド101の保持力を十分確保しようとすると、吸着パッド111の吸着面積が増えて、ロボットハンド101と基板Wとの接触面積が増大して、基板Wに傷が発生し易くなる。
【0012】
つまり、基板Wの重量、ロボットハンド101の加減速が大きくなると、基板Wに傷が発生することを十分に抑えつつ、基板Wを安定的に移送することが困難であるという問題がある。
【0013】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成のロボットハンド等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の特徴は、基板の裏面又は表面を保持するロボットハンドにおいて、ハンド本体と、前記ハンド本体に設けられ、基板の裏面又は表面に当接可能な複数の当接ピンと、を備え、前記ハンド本体における各当接ピンの周縁部(周辺部)に基板の裏面側又は表面側の空気を吸い込み可能な吸込孔が形成され、各吸込孔が空気を吸い込む吸込器に接続されていることを要旨とする。
【0015】
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲において、「設けられ」とは、直接的に設けられたことの他に、ブラケット等の介在部材を介して間接的に設けられたことを含む意である。また、前記吸込器とは、送風器(吸込ファン)の他に、真空ポンプ、エジェクタ等の真空発生器を含む意である。
【0016】
ロボットアームの先端部に第1の特徴からなる前記ロボットハンドを装備した移送ロボットを用いて、基板を第1基板位置から第2基板位置に移送するには、まず、前記ロボットアームの先端部を前記第1基板位置に接近させて、前記ハンド本体及び及び複数の前記当接ピンを基板の裏面側又は表面側に位置させる。そして、前記吸込器の駆動により複数の前記吸込孔から基板の裏面側又は表面側の空気を吸い込んで、基板の裏面又は表面を複数の前記当接ピンに当接させる。これにより、前記ロボットハンドによって基板の裏面又は表面を保持することができる。
【0017】
前記ロボットハンドによって基板の裏面又は表面を保持した後に、前記ロボットアームの先端部を前記第2基板位置に接近させることにより、基板を前記第1基板位置から前記第2基板位置に移送する。そして、前記吸込器の駆動を停止して複数の前記当接ピンとの当接状態を解除することにより、前記ロボットハンドの保持状態を解除する。これにより、基板を前記ロボットハンドから取り外して、一連の基板の移送作業を終了する。
【0018】
要するに、前記ハンド本体に複数の前記当接ピン設けられ、前記ハンド本体における各当接ピンの周縁部に前記吸込孔が形成され、各吸込孔が前記吸込器に接続されているため、前記ロボットハンドの保持力は、前記吸込器の駆動によって吸い込まれる空気の吸込流量によって決定され、複数の前記当接ピンの当接面積(接触面積)に依存しなくなる。これにより、複数の当接ピンの当接面積、換言すれば、前記ロボットハンドと基板との接触面積を低減しても、前記吸込器による空気の吸込流量を増やすことによって、前記ロボットハンドの保持力を十分に確保することができる。
【0019】
本発明の第2の特徴は、基板を移送する際に用いられる移送ロボット(ハンドリングロボット)において、第1の特徴からなるロボットハンドを備えたことを要旨とする。
【0020】
第2の特徴によると、第1の特徴による作用と同様の作用を奏する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、前記ロボットハンドと基板との接触面積を低減しても、前記ロボットハンドの保持力を十分に確保することができるため、基板の重量、前記ロボットハンドの加減速が大きくなっても、基板に傷が発生することを十分に抑えつつ、基板を安定的に移送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係るロボットハンドの斜視図である。
【図2】図2(a)は、本発明の実施形態に係るロボットハンドの部分平面図、図2(b)は、図2(a)におけるIIB-IIBに沿った断面図である。
【図3】図3(a)(b)(c)は、吸込孔の他の態様を示す平面図である。
【図4】従来の一般的なロボットハンドの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態について図1から図3を参照して説明する。
【0024】
図1に示すように、本発明の実施形態に係るロボットハンド1は、ガラス基板等の基板Wを移送(ハンドリング)する際に用いられる移送ロボット(ハンドリングロボット)3の構成要素の1つであって、基板Wの裏面を保持するものである。そして、本発明の実施形態に係るロボットハンド1の具体的な構成等は、次のようになる。
【0025】
即ち、移送ロボット3における多関節構造のロボットアーム5の先端部には、ハンド本体7が少なくとも3方向の自由度を有するリスト部9を介して設けられており、このハンド本体7は、2本のフォーク11を備えている。なお、フォーク11の本数は、2本に限られるものでなく、適宜に変更可能である。
【0026】
各フォーク11の表面には、基板Wの裏面に当接可能な複数の当接ピン13が長手方向(フォーク11の長手方向)に間隔を置いて設けられており、各当接ピン13の先端面(当接面)の形状は、円形状になっている。なお、当接ピン13の先端面の形状を円形状にする代わりに、四角形状又は三角形状等にしても構わない。
【0027】
図1及び図2(a)(b)に示すように、各フォーク11の内部には、空気を収容するチャンバー15が形成されており、各フォーク11の裏面おける各当接ピン13に対向する位置には、取付口(吸込口)17が形成されている。また、各フォーク11の裏面には、チャンバー15内の空気を吸い込む吸込器として複数(当接ピン13と同数)の送風器(吸込ファン)19が長手方向に間隔を置いて設けられている。換言すれば、各フォーク11の裏面おける各当接ピン13に対向する位置には、送風器(吸込ファン)19が取付口17を覆うように設けられている。なお、各フォーク11の裏面に当接ピン13と同数の送風器19が設けられる代わりに、各フォーク11の裏面の1つの送風器19が設けられるようにしたり、送風器19の代わりに、別の吸込器として真空ポンプ又はエジェクタ等の真空発生器を用いても構わない。
【0028】
各フォーク11の表面における各当接ピン13の周縁部(周辺部)には、基板Wの裏面側の空気を吸い込み可能な8つの吸込孔21が周方向に間隔を置いて形成されている。また、各吸込孔21は、チャンバー15に連通してあって、チャンバー15を介して送風器19に接続されている。なお、各フォーク11の表面における各当接ピン13の周縁部に形成される吸込孔21の数は、8つに限るものでなく、図3(a)(b)(c)に示すように適宜に変更可能であり、吸込孔21の形状は、図3(b)(c)に示すような円弧形状又はリング形状であっても構わない。
【0029】
続いて、本発明の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0030】
基板Wを第1基板位置から第2基板位置に移送するには、まず、ロボットアーム5の先端部を第1基板位置に接近させて、ハンド本体7及び及び複数の当接ピン13を基板Wの裏面側に位置させる。そして、複数の送風器19の駆動により複数の吸込孔21から基板Wの裏面側の空気を吸い込んで、基板Wの裏面を複数の当接ピン13に当接させる。これにより、ロボットハンド1によって基板Wの裏面を保持することができる。
【0031】
ロボットハンド1によって基板Wの裏面を保持した後に、ロボットアーム5の先端部を第2基板位置に接近させることにより、基板Wを第1基板位置から第2基板位置に移送する。そして、複数の送風器19の駆動を停止して複数の当接ピン13との当接状態を解除することにより、ロボットハンド1の保持状態を解除する。これにより、基板Wをロボットハンド1から取り外して、一連の基板Wの移送作業を終了する。
【0032】
要するに、各フォーク11の表面に複数の当接ピン13が長手方向に間隔を置いて設けられ、各フォーク11の表面における各当接ピン13の周縁部に複数の吸込孔21が形成され、各吸込孔21が送風器19に接続されているため、ロボットハンド1の保持力は、複数の送風器19の駆動によって吸い込まれる空気の吸込流量によって決定され、複数の当接ピン13の当接面積(接触面積)に依存しなくなる。これにより、複数の当接ピン13の当接面積、換言すれば、ロボットハンド1と基板Wとの接触面積を低減しても、複数の送風器19による空気の吸込流量を増やすことによって、ロボットハンド1の保持力を十分に確保することができる。特に、各フォーク11の裏面における各当接ピン13に対向する位置に送風器19が設けられているため、送風器19の吸込効率が高くなって、ロボットハンド1の保持力をより十分に確保することができる。
【0033】
従って、本発明の実施形態によれば、ロボットハンド1と基板Wとの接触面積を低減しても、ロボットハンド1の保持力をより十分に確保することができるため、基板Wの重量、ロボットハンド1の加減速(ロボットアーム5の先端部の加速度)が大きくなっても、基板Wに傷が発生することを十分に抑えつつ、基板Wを安定的に移送することができる。
【0034】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、例えば、ロボットハンド1が基板Wの裏面を保持する代わりに、基板Wの表面を保持するように構成したり、ハンド本体7が複数本のフォーク11を備える代わりに、ハンド本体7をテーブル状又は格子状に構成したりする等、その他、種々の態様で実施可能である。また、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。
【符号の説明】
【0035】
W 基板
1 ロボットハンド
3 移送ロボット
5 ロボットアーム
7 ハンド本体
9 リスト部
11 フォーク
13 当接ピン
15 チャンバー
17 取付口
19 送風器
21 吸込孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の裏面又は表面を保持するロボットハンドにおいて、
ハンド本体と、
前記ハンド本体に設けられ、基板の裏面又は表面に当接可能な複数の当接ピンと、を備え、
前記ハンド本体における各当接ピンの周縁部に基板の裏面側又は表面側の空気を吸い込み可能な吸込孔が形成され、各吸込孔が空気を吸い込む吸込器に接続されていることを特徴とするロボットハンド。
【請求項2】
前記ハンド本体の内部に空気を収容するチャンバーが形成され、各吸込孔が前記チャンバーに連通され、各吸込孔が前記チャンバーを介して前記吸込器に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記吸込器が送風器であって、前記送風器の個数が前記当接ピンと同数であって、前記送風器が前記ハンド本体における各当接ピンに対向する位置に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のロボットハンド。
【請求項4】
基板を移送する際に用いられる移送ロボットにおいて、
請求項1から請求項3のうちのいずれかの請求項に記載のロボットハンドを備えたことを特徴とする移送ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−240806(P2010−240806A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94879(P2009−94879)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】