説明

ロボット及びロボット制御方法

【課題】アームの停止後に手部の振動を短時間で減衰させることができるロボットを提供する。
【解決手段】複数のリンクとリンク間を接続する複数の関節部とを備え、関節部と接続する第1手部を移動させる第1腕部16と、第1腕部16の姿勢を制御する制御部4と、を備え、制御部4は、第1手部を移動開始場所から移動終了場所へ移動した後の移動終了場所における第1腕部16の姿勢を移動後姿勢とするときに移動後姿勢の中で移動終了後の第1手部14の振動が減衰する時間が短い移動後姿勢である最適移動後姿勢を記憶するメモリー45と、メモリー45に記憶された最適移動後姿勢データ58の中から移動終了場所に対応する最適移動後姿勢を検索する検索部66、とを有し、移動後姿勢が最適移動後姿勢となるように姿勢制御部64が第1腕部16の姿勢を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット及びロボット制御方法にかかわり、特にロボットの振動に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多関節のリンク(以下アームと称す)を有するロボットが組み立て装置等の多くの装置に活用されている。ロボットがアームを移動させて停止するとき、アームが振動する。アームが振動している間はアームの先端に配置されたロボットハンドも振動する。そして、ロボットハンドが振動している間はロボットハンドがワークを把持する等の作業を行うことが難しいので、ロボットハンドの振動が停止するまで待機する必要がある。
【0003】
ロボットがシリコンウエハーを振動させずに移動させる方法が特許文献1に開示されている。それによると、関節には波動歯車減速装置が設置されている。そして、波動歯車減速装置の回転中心軸線の方向とハンドの表裏方向とのなす角度が所定の角度範囲内で交差するかを判断している。そして、波動歯車減速装置の回転中心軸線の方向とハンドの表裏方向とのなす角度が直角に近いときには、波動歯車減速装置の角速度を調整するようにティーチングすることにより、ハンドの振動を抑えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−168053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロボットが行う作業の効率を高めるには、アームの動作を早くする必要がある。アームの動作には加速、等速移動、減速停止のステップがある。そして、停止後にアームが静止するまでが減速停止の動作である。そして、アームを精度良く作動させるには、停止後に振動していない状態で次の動作に移行する必要がある。特許文献1の方法はシリコンウエハーの搬送には有効であるが、ハンドを移動させて停止するときの振動を減衰させる有効な方法とはいい難い方法であった。そこで、アームの停止後に手部の振動を短時間で減衰させることができるロボットが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
本適用例にかかるロボットであって、複数のリンクと前記リンク間を接続する複数の関節部とを備え前記リンクまたは前記関節部と接続する手部を移動させる可動部と、前記可動部の姿勢を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記手部を移動開始場所から移動終了場所へ移動した後の前記移動終了場所における前記可動部の姿勢を移動後姿勢とするときに前記移動後姿勢の中で移動終了後の前記手部の振動が減衰する時間が短い前記移動後姿勢である最適移動後姿勢を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記最適移動後姿勢の中から前記移動終了場所に対応する前記最適移動後姿勢を検索する検索部、とを有し、前記移動後姿勢が前記最適移動後姿勢となるように前記制御部が前記可動部の姿勢を制御することを特徴とする。
【0008】
本適用例によれば、可動部は複数のリンクと関節部とを備えており、関節を曲げる角度を制御することにより可動部の姿勢を変えることができる。そして、制御部は可動部の姿勢を制御することにより可動部に手部を移動させる。手部を移動開始場所から移動終了場所へ移動するときに移動終了後に実施する姿勢は複数の移動後姿勢の中から選択することができる。そして、移動後姿勢によって移動終了後の手部の振動が減衰する時間が異なっている。記憶部には手部の振動が減衰する時間の短い最適移動後姿勢が移動終了後の場所に対応して記憶されている。
【0009】
そして、検索部は記憶部に記憶された最適移動後姿勢の中から移動終了場所に対応する最適移動後姿勢を検索する。そして、制御部は移動後姿勢が最適移動後姿勢となるように可動部を移動させる。従って、手部が移動して停止した後で手部の振動が減衰する時間を短くすることができる。
【0010】
[適用例2]
上記適用例にかかるロボットにおいて、前記手部の振動を検出する振動検出部と、前記最適移動後姿勢を前記記憶部に記憶させる学習部と、を有し、前記学習部は、前記移動終了場所へ移動するときの前記移動後姿勢を複数作成し、各前記移動後姿勢にて前記可動部を移動させたときの前記手部の振動を前記振動検出部に検出させた検出結果を前記記憶部に記憶し、複数の前記検出結果の中から前記最適移動後姿勢を選択して登録することを特徴とする。
【0011】
本適用例によれば、ロボットは振動検出部と学習部とを有している。振動検出部は手部の振動を検出する。学習部は最適移動後姿勢を記憶部に記憶させる。学習部は、移動終了場所へ移動するときに実施可能な移動後姿勢を複数作成する。次に、学習部は、各移動後姿勢となるように可動部を移動させる。続いて、各移動後姿勢で動作したときの手部の振動を振動検出部が検出し、学習部が移動後姿勢と手部の振動とを記憶部に記憶する。次に、学習部は、複数の検出結果の中から最適移動後姿勢を選択して記憶部に登録している。従って、学習部は確実に最適移動後姿勢を登録することができる。
【0012】
[適用例3]
上記適用例にかかるロボットにおいて、前記振動検出部はジャイロセンサーであることを特徴とする。
【0013】
本適用例によれば、振動検出部はジャイロセンサーである。ジャイロセンサーは振動による角速度の変化を精度良く検出できる。従って、振動検出部は振動による角速度の変化を精度良く検出することができる。
【0014】
[適用例4]
上記適用例にかかるロボットにおいて、前記振動検出部は3軸ジャイロセンサーであることを特徴とする。
【0015】
本適用例によれば、振動検出部は3軸ジャイロセンサーである。可動部は複数のリンクとリンク間を接続する複数の関節部を備えているので、可動部は3次元の動作をすることができる。3軸ジャイロセンサーは直交する3軸方向の角速度を検出する。従って、可動部が3次元の動作をするときにも所望の方向における角速度を検出することができる。
【0016】
[適用例5]
上記適用例にかかるロボットにおいて、前記可動部が所定の姿勢をとるときに前記関節部が回動する範囲である通常回動範囲と、前記手部の振動を減衰するときに前記関節部が回動する範囲である制振回動範囲と、が設定され、前記通常回動範囲は前記制振回動範囲より小さい範囲に設定されていることを特徴とする。
【0017】
本適用例によれば、関節部には回動可能な範囲が設定されており、通常回動範囲は制振回動範囲より小さい範囲に設定されている。従って、通常回動範囲の境界に関節部が位置するときにも、さらに、前記手部の振動を減衰させるために関節を回動させることができる。従って、可動部の関節を通常回動範囲の中で駆動させることにより手部の振動を減衰させることができる。
【0018】
[適用例6]
上記適用例にかかるロボットにおいて、前記可動部は前記関節部を7個以上備えていることを特徴とする。
【0019】
本適用例によれば、可動部には7個以上の関節部が設置されている。従って、可動部は可動範囲内で手部に所望の姿勢をとらせることができる。
【0020】
[適用例7]
上記適用例にかかるロボットにおいて、前記記憶部に記憶された前記移動終了場所と前記最適移動後姿勢とを他のロボットに出力する出力部と、前記移動終了場所と前記最適移動後姿勢とを前記他のロボットから入力する入力部と、を備えることを特徴とする。
【0021】
本適用例によれば、ロボットは出力部と入力部とを備えている。そして、出力部は、移動終了場所と最適移動後姿勢とを他のロボットに出力する。従って、本適用例と同様な機能を有する他のロボットに移動終了場所と最適移動後姿勢を出力することができる。さらに、入力部は移動終了場所と最適移動後姿勢とを入力する。従って、本適用例を同様な機能を有する他のロボットから移動終了場所と最適移動後姿勢を入力することができる。その結果、記憶部に最適移動後姿勢が記憶されていない他のロボットに最適移動後姿勢を伝達することができる。
【0022】
[適用例8]
上記適用例にかかるロボットにおいて、前記記憶部には前記移動終了場所へ移動するときの前記移動後姿勢に加え前記手部を移動する最高速度を限定する限定速度が記憶されていることを特徴とする。
【0023】
本適用例によれば、記憶部には最適移動後姿勢に加え限定速度が記憶されている。従って、ロボットは最適移動後姿勢に沿って可動部を移動させてさらに限定速度で移動させることにより、手部が移動して停止した後で手部の振動が減衰する時間を短くすることができる。
【0024】
[適用例9]
本適用例にかかるロボット制御方法は、複数のリンクと前記リンク間を接続する複数の関節部とを備えた可動部が手部を移動させるロボットのロボット制御方法であって、前記手部を移動終了場所へ移動した後の前記可動部の姿勢を移動後姿勢とし、前記移動後姿勢の中で移動終了後の前記手部の振動が減衰する時間が短い前記移動後姿勢を最適移動後姿勢とするとき、前記移動終了場所に対応する前記最適移動後姿勢を検索する検索工程と、前記検索工程において前記最適移動後姿勢が検索されたときには前記移動後姿勢が前記最適移動後姿勢となるように前記可動部を移動する移動工程と、前記検索工程において前記最適移動後姿勢が検索されないときには前記移動後姿勢の中から前記最適移動後姿勢を選択して登録する学習工程と、を有することを特徴とする。
【0025】
本適用例によれば、可動部は複数のリンクと関節部とを備えており、関節を曲げる角度を制御することにより可動部の姿勢を変えることができる。検索工程では移動終了場所に対応する最適移動後姿勢を検索する。そして、検索工程において最適移動後姿勢が検索されたときには、移動工程にて検索された最適移動後姿勢となるように可動部を移動する。従って、手部が移動して停止した後で手部の振動が減衰する時間を短くすることができる。
【0026】
検索工程において最適移動後姿勢が検索されないときには、学習工程において移動後姿勢の中から最適移動後姿勢が選択されて登録される。従って、最適移動後姿勢が登録された後からは手部が移動して停止した後で手部の振動が減衰する時間を短くすることができる。その結果、ロボットが稼動するにつれて登録された最適移動後姿勢の数が増加する為、手部が移動して停止した後で手部の振動が減衰する時間を短くすることができる。
【0027】
[適用例10]
上記適用例にかかるロボット制御方法において、前記学習工程は、前記移動後姿勢の中から複数の試行姿勢を設定する試行姿勢設定工程と、前記試行姿勢に従って前記可動部を移動させる試行移動工程と、前記移動終了場所へ移動した後の前記手部の振動を検出し検出結果を出力する振動測定工程と、前記試行移動工程と前記振動測定工程とが複数行われ、複数の前記検出結果を比較して前記最適移動後姿勢を選択して登録する登録工程と、を有することを特徴とする。
【0028】
本適用例によれば、学習工程は試行姿勢設定工程、試行移動工程、振動測定工程及び登録工程を有している。試行姿勢設定工程では移動後姿勢の中から複数の試行姿勢を設定している。そして、試行移動工程では試行姿勢に従って可動部を移動する。続いて、振動測定工程では移動終了場所へ移動した後の手部の振動を検出し検出結果を出力している。試行移動工程と振動測定工程とを複数行うことにより、複数の試行姿勢における振動の検出結果が出力される。
【0029】
登録工程では複数の振動の検出結果を比較して最適移動後姿勢を選択して登録している。従って、所定の移動終了場所における最適移動後姿勢を設定することができる。その結果、移動終了場所が変わるときにも、各移動終了場所における最適移動後姿勢を登録することができる。
【0030】
[適用例11]
上記適用例にかかるロボット制御方法において、前記試行移動工程は、前記ロボットが行う作業の中で前記移動終了場所にて前記試行姿勢を実施可能な作業となるときに行われることを特徴とする。
【0031】
本適用例によれば、ロボットが行う作業の中で試行移動工程が行われる。従って、ロボットの作業で可動部を移動させる行為が試行移動工程の可動部を移動させる行為となる。その結果、ロボットが作業を行う工程とは別に試行移動工程を行うときに比べて生産性良く学習工程を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】(a)は、双腕ロボットの構成を示す模式正面図、(b)は、双腕ロボットの構成を示す模式平面図。
【図2】角速度検出器の構造を示す概略斜視図。
【図3】第1腕部の動作範囲を説明するための模式平面図。
【図4】組立装置の電気制御ブロック図。
【図5】(a)は、第1腕部の可動範囲を示す腰部模式正面図、(b)は、第1腕部の可動範囲を示す腰部模式平面図。
【図6】最適移動後姿勢データの一部を示す図。
【図7】第1腕部がワークを移動する作業のフローチャート。
【図8】第1腕部がワークを移動する作業を説明するための図。
【図9】第1腕部がワークを移動する作業を説明するための図。
【図10】第1腕部がワークを移動する作業を説明するための図。
【図11】第1腕部がワークを移動する作業を説明するための図。
【図12】第1腕部がワークを移動する作業を説明するための図。
【図13】第1腕部がワークを移動する作業を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、実施例について図面に従って説明する。尚、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて図示している。
(実施形態)
本実施形態では、双腕ロボットと、この双腕ロボットの姿勢を制御する方法の特徴的な例について、図1〜図13に従って説明する。
【0034】
図1(a)は、双腕ロボットの構成を示す模式正面図であり、図1(b)は、双腕ロボットの構成を示す模式平面図である。図1に示すように、ロボット1は床2に設置された直方体の基台3を備え、基台3は鉛直方向に長い形状となっている。そして、鉛直方向で床2から離れる方向をZ方向とし、水平方向で基台3の側面を構成する面のうち直交する2面が向く方向をX方向とY方向とする。−Y方向はロボット1の正面であり、X方向はロボット1の横側の面となっている。
【0035】
基台3の内部の床2側にはロボット1の姿勢を制御する制御部4が設置されている。基台3の内部のZ方向には胴体回動機構5が設置されている。胴体回動機構5はモーター、ロータリーエンコーダー、減速装置等から構成されている。そして、ロータリーエンコーダーがモーターの出力軸の回転角度を検出し、減速装置がモーターの出力軸の回転を減速して回転軸としての出力軸5aに出力する。これにより、胴体回動機構5は精度良く所定の回転角度にて出力軸5aを回動させることができる。
【0036】
出力軸5aはZ方向に突出して設置され、出力軸5aには直方体の胴体部6が接続されている。胴体回動機構5により胴体部6は基台3に対して回動することが可能になっている。胴体部6の一面が正面を向くとき、胴体部6の内部のX方向の場所には第1肩用回動機構6aが設置されている。そして、第1肩用回動機構6aはX方向を回転軸として回動する出力軸を有し、該出力軸にはリンクとしての第1肩部7が接続されている。これにより、第1肩部7はX方向を回転軸として回動可能になっている。
【0037】
第1肩部7にはZ方向を回転軸として回動する出力軸を備える第1肩関節用回動機構7aが設置されている。そして、第1肩関節用回動機構7aの出力軸7bにはリンクとしての第1肩関節部8が設置されている。第1肩関節用回動機構7aにより第1肩関節部8はZ方向を回転軸として回動可能になっている。
【0038】
第1肩関節部8の胴体部6の反対側には第1肩関節部8と接続してリンクとしての第1元側腕部9が設置されている。第1元側腕部9の内部の第1肩関節部8側には第1腕捻り用回動機構9aが設置されている。そして、第1腕捻り用回動機構9aは回動する出力軸を有し、該出力軸の軸方向は第1元側腕部9の長手方向となっている。第1腕捻り用回動機構9aの出力軸は第1肩関節部8と接続されている。そして、第1腕捻り用回動機構9aにより第1元側腕部9は第1元側腕部9の長手方向を回転軸として回動可能になっている。
【0039】
第1元側腕部9において第1肩関節部8の反対側にはリンクとしての第1先側腕部10が設置されている。第1先側腕部10の一端にはZ方向を回転軸として回動する出力軸を備える第1腕関節用回動機構10aが設置されている。そして、第1腕関節用回動機構10aの出力軸10bには第1元側腕部9が接続されている。第1腕関節用回動機構10aにより第1元側腕部9に対して第1先側腕部10が回動可能になっている。
【0040】
第1先側腕部10の第1元側腕部9と反対側の端には第1先側腕部10の内部に第1手首用回動機構10cが設置されている。そして、第1手首用回動機構10cは回動する出力軸を有し、該出力軸は第1先側腕部10の長手方向を回転軸として回動可能になっている。第1手首用回動機構10cの出力軸はリンクとしての第1手首元部11と接続されている。そして、第1手首用回動機構10cにより第1手首元部11は第1先側腕部10の長手方向を回転軸の方向にして回動可能になっている。
【0041】
第1手首元部11の内部には第1手首先部用回動機構11aが設置されている。第1手首先部用回動機構11aは回動する出力軸を有し、該出力軸は第1手首用回動機構10cの出力軸と直交する方向を回転軸として回動可能になっている。第1手首先部用回動機構11aの出力軸を軸方向から挟むように門型のリンクとしての第1手首先部12が設置されている。第1手首先部用回動機構11aにより第1手首先部12は第1手首先部用回動機構11aの出力軸を回転軸として回動可能になっている。
【0042】
第1手首先部12には第1腕用角速度検出器13が設置されている。第1腕用角速度検出器13は第1手首先部12の角速度を検出する。第1腕用角速度検出器13が備えるセンサーの種類は第1手部14の振動を検出可能であれば良く特に限定されない。本実施形態では水晶振動子を用いたジャイロセンサーを採用している。水晶振動子を用いたジャイロセンサーは周波数の高い角速度の変化を検出することができる。従って、振動を検出するためのセンサーとしては水晶振動子を用いたジャイロセンサーが好ましい。
【0043】
第1手首先部12の内部には第1手部用回動機構12aが設置されている。そして、第1手部用回動機構12aは回動する出力軸を有し、該出力軸は第1手首先部用回動機構11aの出力軸と直交する方向を回転軸として回動可能になっている。第1手部用回動機構12aの出力軸は第1手部14と接続されている。そして、第1手部用回動機構12aにより第1手部14は回動可能になっている。また、第1腕用角速度検出器13は設置された第1手首先部12を介して第1手部14の振動を検出する。
【0044】
第1手部14の内部には第1指用直動機構14aが設置されている。そして、第1指用直動機構14aには一対の直方体の第1指部15が設置されている。そして、第1指用直動機構14aは第1指部15の間隔を変更することが可能になっている。これにより、第1指部15はワークを挟んで把持することができる。
【0045】
第1肩部7、第1肩関節部8、第1元側腕部9、第1先側腕部10、第1手首元部11、第1手首先部12、第1手部14及び第1指部15等により可動部としての第1腕部16が構成されている。胴体部6において第1肩部7の反対側には第1腕部16の同様な機能と構造とを備えた可動部としての第2腕部17が設置されている。
【0046】
つまり、胴体部6において第1肩部7の反対側には第1肩用回動機構6a、第1肩部7、第1肩関節用回動機構7a、出力軸7bに対応して第2肩用回動機構6b、リンクとしての第2肩部18、第2肩関節用回動機構18a、出力軸18bが設置されている。
【0047】
さらに、第1腕部16の第1肩関節部8、第1元側腕部9、第1腕捻り用回動機構9aに対応して第2腕部17にはリンクとしての第2肩関節部19、リンクとしての第2元側腕部20、第2腕捻り用回動機構20aが設置されている。さらに、第1腕部16の第1先側腕部10、第1腕関節用回動機構10a、出力軸10b、第1手首用回動機構10cに対応して第2腕部17にはリンクとしての第2先側腕部23、第2腕関節用回動機構23a、出力軸23b、第2手首用回動機構23cが設置されている。
【0048】
さらに、第1腕部16の第1手首元部11、第1手首先部用回動機構11a、第1手首先部12、第1手部用回動機構12aに対応して第2腕部17にはリンクとしての第2手首元部24、第2手首先部用回動機構24a、リンクとしての第2手首先部25、第2手部指用回動機構25a、が設置されている。さらに、第1腕用角速度検出器13、第1手部14、第1指用直動機構14aに対応して第2腕部17には第2腕用角速度検出器26、第2手部27、第2指用直動機構27aが設置されている。さらに、第1腕部16の第1指部15に対応して第2腕部17には第2指部28が設置されている。
【0049】
ロボット1は基台3に対して胴体部6を回動させることができる。そして、胴体部6に対して第1腕部16及び第2腕部17を移動させることができる。図1(b)において第1移動範囲1aは胴体部6を固定した状態で第1腕部16が移動可能な範囲を示している。そして、第2移動範囲1bは胴体部6を固定した状態で第2腕部17が移動可能な範囲を示している。第3移動範囲1cは胴体部6を回動させて第1腕部16及び第2腕部17が移動可能な範囲を示している。
【0050】
制御部4は、第1腕部16の第1肩用回動機構6a、第1肩関節用回動機構7a、第1腕関節用回動機構10a、第1手首先部用回動機構11aを駆動させることにより第1指部15を第1移動範囲1aの所望の場所へ移動させることができる。そして、制御部4、は第1腕捻り用回動機構9a及び第1手首用回動機構10cを駆動させることにより第1手部14を上下に移動させたり水平に移動させたりすることができる。さらに、制御部4は、第1手首用回動機構10c及び第1手首先部用回動機構11aを駆動することにより、第1指部15の長手方向をZ方向、X方向、Y方向等の所望の方向に向けさせることができる。さらに、制御部4は、第1手部用回動機構12aを駆動させることにより、第1指部15の開閉方向を変えることができる。従って、制御部4は第1指部15を所望の姿勢にして、第1指部15がワークを挟んで把持することが可能になっている。
【0051】
同様に、制御部4は、第2腕部17の第2肩用回動機構6b、第2肩関節用回動機構18a、第2腕関節用回動機構23a、第2手首先部用回動機構24aを回動させることにより第2指部28を第2移動範囲1bの所望の場所へ移動させることができる。さらに、制御部4は、第2腕捻り用回動機構20a、第2手首用回動機構23c、第2手部指用回動機構25aを駆動することにより、第2腕部17を所望の姿勢に制御することができる。第2腕部17は第1腕部16と同様な構造となっている。従って、制御部4は第2指部28を所望の姿勢にして、第2指部28がワークを挟んで把持することが可能になっている。さらに、制御部4は基台3に対して胴体部6を回動させることにより第3移動範囲1cの所望の場所へ第1指部15または第2指部28を移動させることができる。
【0052】
第1腕部16は胴体部6から第1手部14に向けて第1肩用回動機構6a、第1肩関節用回動機構7a、第1腕捻り用回動機構9a、第1腕関節用回動機構10a、第1手首用回動機構10c、第1手首先部用回動機構11a、第1手部用回動機構12aの7つの機構を備えている。以下、説明を容易にするために、第1肩用回動機構6a、第1肩関節用回動機構7a、第1腕捻り用回動機構9a、第1腕関節用回動機構10a、第1手首用回動機構10c、第1手首先部用回動機構11a、第1手部用回動機構12aの7つの回動機構を関節部としての第1関節29〜第7関節35と称す。
【0053】
つまり、第1関節29が第1肩用回動機構6aであり、第2関節30が第1肩関節用回動機構7aである。第3関節31が第1腕捻り用回動機構9aであり、第4関節32が第1腕関節用回動機構10aである。第5関節33が第1手首用回動機構10cであり、第6関節34が第1手首先部用回動機構11aである。そして、第7関節35が第1手部用回動機構12aである。
【0054】
図2は角速度検出器の構造を示す概略斜視図である。第1腕用角速度検出器13及び第2腕用角速度検出器26は同様の構造となっている。第1腕用角速度検出器13について説明し、第2腕用角速度検出器26の説明は省略する。
【0055】
図2に示すように、第1腕用角速度検出器13は支持部36を備え、支持部36は直交する3つの方向を向く第1面36a、第2面36b、第3面36cを備えている。そして、第1面36a、第2面36b、第3面36cの各面の法線方向をそれぞれX方向、Y方向、Z方向とする。第1面36a、第2面36b、第3面36cにはそれぞれ第1ジャイロセンサー37、第2ジャイロセンサー38、第3ジャイロセンサー39が設置されている。
【0056】
各ジャイロセンサーには角速度を検出する水晶振動子が内蔵されている。そして、第1ジャイロセンサー37はX方向を回転中心とする角速度を検出し、第2ジャイロセンサー38はY方向を回転中心とする角速度を検出する。第3ジャイロセンサー39はZ方向を回転中心とする角速度を検出する。従って、第1腕用角速度検出器13が回転するときに、回転角度のXYZ方向の各成分をそれぞれ第1ジャイロセンサー37、第2ジャイロセンサー38、第3ジャイロセンサー39が検出する。従って、第1腕用角速度検出器13は3次元の回転速度を検出する3軸ジャイロセンサーとなっている。
【0057】
図3は、第1腕部の動作範囲を説明するための模式平面図である。図3に示すように、第1腕部16は第4関節32にて回動可能となっている。そして、第4関節32が回動する範囲は通常回動範囲40と制振回動範囲41とが設定されている。通常回動範囲40は第1腕部16を目標とする姿勢にするために第4関節32が回動する範囲である。そして、制振回動範囲41は第1指部15の振動を減衰させるために第4関節32を回動させる範囲である。制振回動範囲41は通常回動範囲40より大きな角度となっている。従って、第4関節32が通常回動範囲40の境界となる角度になっているときにも、第1手部14の振動を減衰させるために制振回動範囲41の範囲内で回動させることができる。第1関節29〜第3関節31及び第5関節33〜第7関節35においても第4関節32と同様に、通常回動範囲と制振回動範囲41とが設定されている。そして、制振回動範囲は通常回動範囲より大きな角度となっている。これにより、各関節とも第1手部14の振動を減衰させるために制振回動範囲の範囲内で回動させることができる。
【0058】
図4は、組立装置の電気制御ブロック図である。図4において、ロボット1は動作を制御する制御部4を備えている。そして、制御部4はプロセッサーとして各種の演算処理を行うCPU(中央演算処理装置)44と、各種情報を記憶する記憶部としてのメモリー45とを備えている。
【0059】
本体駆動装置46、第1腕部駆動装置47、第2腕部駆動装置48は入出力インターフェイス49及びデータバス50を介してCPU44に接続されている。さらに、第1腕用角速度検出器13、第2腕用角速度検出器26、入力部としての入力装置51、出力部としての出力装置52も入出力インターフェイス49及びデータバス50を介してCPU44に接続されている。
【0060】
本体駆動装置46は胴体回動機構5を駆動する装置である。本体駆動装置46は胴体回動機構5を駆動することにより、胴体部6を基台3に対して所定の相対角度で回動させることができる。第1腕部駆動装置47は第1腕部16を駆動する装置である。第1腕部駆動装置47は第1腕部16に設置させた各回動機構を駆動することにより第1腕部16を所望の姿勢に動かすことができる。同様に、第2腕部駆動装置48は第2腕部17を駆動する装置である。第2腕部駆動装置48は第2腕部17に設置させた各回動機構を駆動することにより第2腕部17を所望の姿勢に動かすことができる。
【0061】
入力装置51はキーボードや外部機器との接続インターフェイス等のデータを入力する装置である。他にも入力装置51にはロボット1の動作を入力するティーチング用の装置が含まれる。出力装置52はロボット1の状態や各種データを表示する表示装置や、外部機器に出力する接続インターフェイス等の装置である。操作者は入力装置51を用いて各種データを入力して出力装置52にて確認することができるようになっている。
【0062】
ロボット1と同等の機能を備えるロボット53が存在し、ロボット53は入力部としての入力装置54及び出力部としての出力装置55を備えている。このとき、入力装置51と出力装置55とを接続し、出力装置52と入力装置54とを接続する。そして、メモリー45に記憶したデータをロボット53に送信し、ロボット53が記憶するデータをメモリー45に受信することができる。
【0063】
メモリー45は、RAM、ROM等といった半導体メモリーや、ハードディスク、DVD−ROMといった外部記憶装置を含む概念である。機能的には、ロボット1の動作の制御手順が記述されたプログラムソフト56を記憶する記憶領域や、第1腕部16及び第2腕部17の長さや可動域等の情報であるロボット属性データ57を記憶する記憶領域が設定される。他にも、第1腕部16の移動後姿勢の中で移動終了後の第1手部14の振動が減衰する時間が短い移動後姿勢である最適移動後姿勢のデータである最適移動後姿勢データ58を記憶するための記憶領域が設定される。最適移動後姿勢データ58には第2腕部17の最適移動後姿勢のデータも記憶される。さらに、第1腕部16の姿勢を変えたときに第1腕用角速度検出器13が検出する振動のデータである試行振動データ59を記憶するための記憶領域が設定される。他にも、移動する場所に対応して設定された速度のデータである限定速度データ60を記憶するための記憶領域が設定される。さらに、第1腕用角速度検出器13が出力する振動の程度から移動速度を選択するための振動判定データ61を記憶するための記憶領域が設定される。他にも、CPU44のためのワークエリアやテンポラリーファイル等として機能する記憶領域やその他各種の記憶領域が設定される。
【0064】
CPU44は、メモリー45内に記憶されたプログラムソフト56に従って、ロボット1の制御を行うものである。具体的な機能実現部としてロボット1の姿勢を制御する制御部としての姿勢制御部64を有する。ロボット1が備える各回動機構は回転角度を検出するセンサーを備えている。そして、本体駆動装置46、第1腕部駆動装置47、第2腕部駆動装置48は各センサーが出力する各回動機構の出力軸の角度情報を姿勢制御部64に伝送する。そして、姿勢制御部64は胴体部6、第1腕部16、及び第2腕部17の姿勢を認識することが可能になっている。姿勢制御部64はロボット1の姿勢を認識して姿勢を変更する指示を本体駆動装置46、第1腕部駆動装置47、第2腕部駆動装置48に出力する。そして、本体駆動装置46、第1腕部駆動装置47、第2腕部駆動装置48がそれぞれ胴体回動機構5、第1腕部16、第2腕部17を駆動することにより姿勢制御部64はロボット1の姿勢を制御する。
【0065】
他にも、CPU44は第1腕部16及び第2腕部17の振動を検出する振動検出部65を有する。振動検出部65は第1腕用角速度検出器13が出力する信号を入力して基台3に対する第1手部14の振動を演算する。さらに、振動検出部65は第2腕用角速度検出器26が出力する信号を入力して基台3に対する第2手部27の振動を演算する。そして、振動検出部65は振動のデータを姿勢制御部64に出力し、姿勢制御部64は第1手部14及び第2手部27の振動を減衰させる駆動をする。
【0066】
他にも、CPU44は最適移動後姿勢データ58から移動終了場所に対応する最適移動後姿勢を検索する検索部66を有する。検索部66は検索結果が得られるときには、振動が減衰し易い姿勢のデータを姿勢制御部64に出力する。そして、姿勢制御部64は腕部の振動が小さくなる姿勢で第1腕部16及び第2腕部17を駆動する。
【0067】
さらに、CPU44は最適移動後姿勢データ58をロボット53に出力し、最適移動後姿勢データ58をロボット53から入力するデータ転送部67を有する。そして、ロボット1とロボット53との間で共有されていない最適移動後姿勢データ58があるときには、データ転送を行うことにより同じデータを持つようにすることができる。
【0068】
他にも、CPU44は最適移動後姿勢データ58にデータがないときに、学習する学習部68を有する。学習部68は、試行姿勢設定部69、振動時間管理部70、最適姿勢設定部71等を有する。試行姿勢設定部69は移動後の姿勢と振動が減衰するまでの時間を検出するときに実施する姿勢を複数設定する機能を備えている。振動時間管理部70は複数設定された姿勢で停止したときの姿勢と振動が停止するまでの時間とのデータを管理する機能を備えている。最適姿勢設定部71は振動のデータを用いて腕部の振動が減衰し易い姿勢を選択して最適移動後姿勢データ58に登録する機能を備えている。
【0069】
図5(a)は、第1腕部の可動範囲を示す腰部模式正面図であり、図5(b)は、第1腕部の可動範囲を示す腰部模式平面図である。図5は最適移動後姿勢データを説明するための模式図である。図5(a)に示すように、第1移動範囲1aが水平方向に広がる面にて14段に分割されている。そして、床2に近い段から順に、第1段72a〜第14段72pと各段に名前が付与されている。各段のZ方向の幅は同じ長さに設定されており、各段における第1移動範囲1aの水平方向の面積は異なっている。各段には段番号が設定され、この番号を段番号と称す。第1段72aの段番号は”1”であり、第2段72bの段番号は”2”である。このように、各段の順番と段番号とが一致するように設定されている。
【0070】
図5(b)は第7段72gにおける第1移動範囲1aを示している。各段の第1移動範囲1aは格子状に領域が区分けされ各行及び各列に番号が付与されている。例えば、第7段72gの第1移動範囲1aはY方向に12行に分割されている。そして、−Y方向からY方向に向けて第1行73a〜第12行73mと各行に行番号が付与されている。同様に、第7段72gの第1移動範囲1aはX方向に10列に分割されている。そして、−X方向からX方向に向けて第1列74a〜第10列74jと各列に列番号が付与されている。
【0071】
さらに、格子状の各領域は行番号の小さい番号から大きい番号の順でさらに列番号の小さい番号から大きい番号の順に番号が付与されている。この番号を平面番号と称す。第1行73aでは第2列74bの平面番号が”1”であり、第7列74gの平面番号が”6”となる。第2行73bでは第1列74aの平面番号が”7”であり、第8列74hの平面番号が”14”となる。このように各領域に平面番号が設定されている。
【0072】
図6は最適移動後姿勢データの一部を示す図である。図6に示すように、最適移動後姿勢データ58には腕番号が設定されている。腕番号は第1腕部16と第2腕部17とを示し、第1腕部16の腕番号は”1”に設定され、第2腕部17の腕番号は”2”に設定されている。図中の表で段番号の欄に”1”と記載されているのは、第1腕部16におけるデータであることを示している。
【0073】
腕番号の隣の列には”段番号”が記載されている。”段番号”は第1移動範囲1aが区切られた段の番号である。図中の表の”段番号”の欄に”8”と記載されているのは、この”段番号”が第8段72hのデータであることを示している。”段番号”の隣の列には”平面番号”が記載されている。この”平面番号”は各段における平面位置を示している。従って、図中の表の”平面番号”の欄に”9”と記載されているのは、第8段72hの”平面番号”が9番のデータであることを示している。
【0074】
”腕番号”が”1”、”段番号”が”8”、”平面番号”が”9”のデータは第1手部14の重心の位置が第8段72hの”平面番号”が”9”の領域に位置するときのデータであることを示している。そして、”関節角度”の欄には指定された領域に第1手部14が移動したときの第1腕部16における第1関節29〜第7関節35のデータが設定されている。この第1関節29〜第7関節35のデータは各関節における出力軸の角度を示すデータとなっている。各関節の角度が設定されることにより第1腕部16の姿勢が設定される。そして、第8段72hの平面番号が”9”に示される場所に第1手部14が移動するときには”関節角度”の欄に示される角度に各関節が移動する。”関節角度”の欄に示される姿勢は移動後の振動が短時間で減衰する姿勢である最適移動後姿勢となっている。
【0075】
”関節角度”の欄の隣の欄には”限定速度”の欄が設置されている。”限定速度”の欄には第1手部14を移動させるときの最高速度を限定する速度が設置されている。例えば、”限定速度”が80のときには第1手部14の移動速度を80m/s以下の速度で移動させる制御を行う。第1腕部16が振動し易い姿勢になるときには”限定速度”は遅い速度に設定され、第1腕部16が振動し難い姿勢になるときには”限定速度”は速い速度に設定されている。
【0076】
第1移動範囲1aの場所で”関節角度”及び”限定速度”が設定されていない場所が存在することがある。例えば、図中で”腕番号”が”1”、”段番号”が”8”、”平面番号”が”14”のデータでは”関節角度”及び”限定速度”が設定されていない。”関節角度”及び”限定速度”が設定されている場所は、この場所での第1腕部16の姿勢と振動の減衰との関係が解析されている場所となっている。そして、”関節角度”及び”限定速度”が設定されていない場所は、この場所での第1腕部16の姿勢と振動の減衰との関係が解析されていない場所となっている。尚、第2腕部17における最適移動後姿勢データ58と第1腕部16における最適移動後姿勢データ58とは同様のデータであり説明を省略する。
【0077】
次に上述した第1腕部16がワークを移動するときの制御方法について図7〜図13にて説明する。図7は、第1腕部がワークを移動する作業のフローチャートであり、図8〜図13は第1腕部がワークを移動する作業を説明するための図である。
【0078】
図7のフローチャートにおいて、ステップS1は移動先設定工程に相当し、CPU44が第1手部14を移動させる場所を設定する工程である。次にステップS2に移行する。ステップS2は検索工程に相当し、最適移動後姿勢データ58を用いて第1手部14を移動させる場所に対応する”関節角度”のデータを検索する工程である。”関節角度”のデータは第1腕部16の最適移動後姿勢を示すデータである。次にステップS3に移行する。ステップS3は検索判断工程に相当し、最適移動後姿勢データ58に最適移動後姿勢を示すデータが登録されていたかを判断する工程である。最適移動後姿勢を示すデータが登録されているときステップS4に移行する。最適移動後姿勢を示すデータが登録されていないときステップS5に移行する。
【0079】
ステップS4は移動工程に相当する。この工程は、姿勢制御部64が第1手部14を設定された移動先に移動させる工程である。このとき、第1腕部16の姿勢をステップS2にて検索した最適移動後姿勢に変形させながら姿勢制御部64が第1手部14を移動先に移動させる。次にステップS5に移行する。ステップS5は試行姿勢設定工程に相当する。この工程は、試行姿勢設定部69が移動後姿勢の候補である試行姿勢を複数設定する工程である。すでに試行姿勢が設定されているときには何も行わない。次にステップS6に移行する。ステップS6は試行移動工程に相当する。この工程では、第1腕部16の姿勢を試行姿勢に変形させながら姿勢制御部64が第1手部14を移動先に移動させる。次にステップS7に移行する。ステップS7は振動測定工程に相当する。この工程は、第1手部14が移動終了場所へ移動した後の第1手部14の振動を振動検出部65が第1腕用角速度検出器13に検出させて検出結果をメモリー45に出力する工程である。次にステップS8に移行する。
【0080】
ステップS8は登録工程に相当する。この工程は、ステップS5で設定された総ての試行姿勢における検出結果が揃ったときに行われる工程である。ステップS6ではステップS5で設定された試行姿勢のうち検出結果が出力されていない試行姿勢を選択して行われる。従って、ステップS5で設定された試行姿勢の個数と同じ回数のステップS6とステップS7とが行われる。そして、ステップS8は複数の検出結果を比較して移動後に振動が減衰するのにかかる時間の短い最適移動後姿勢を選択して最適移動後姿勢データ58に登録する工程である。ステップS5〜ステップS8のステップをあわせてステップS11の学習工程とする。次にステップS9に移行する。
【0081】
ステップS9は、作業工程に相当する。この工程は、第1指部15がワークを把持し続ける動作や離す動作を行う工程である。次にステップS10に移行する。ステップS10は終了判断工程に相当する。この工程は、作業を継続するか否かを判断する工程である。作業を継続するときには次にステップS1に移行する。作業を終了するときには第1腕部がワークを移動する作業の工程を終了する。
【0082】
次に、図8〜図12を用いて、図7に示したステップと対応させて、第1腕部16の制御方法を詳細に説明する。
図8はステップS1の移動先設定工程、ステップS2の検索工程及びステップS3の検索判断工程に対応する図である。図8に示すように、基台3の前面側と両側面側とを囲んで作業台77が設置されている。そして、第1指部15は円筒状のワーク78を挟んで把持している。ステップS1ではロボット1が行う作業を行うためにワーク78を移動させる場所である移動終了場所79が設定される。移動終了場所79は第1指部15が移動可能な範囲内に設定される。
【0083】
ステップS2では移動終了場所79に第1指部15が位置するときに第1手部14の重心がどの領域に位置するかの演算が検索部66によって行われる。まず、移動先の第1手部14の重心が第1移動範囲1aの第1段72a〜第14段72pのうちのどの段に属するかの演算が行われる。次に、移動先の第1手部14の重心が属する段で区切られた領域のうちのどの領域に位置するかの演算が行われる。その結果、第1手部14の移動先の”段番号”及び”平面番号”が算出される。
【0084】
続いて、検索部66は算出した、”段番号”及び”平面番号”に対応する”関節角度”のデータを最適移動後姿勢データ58から検索する。ステップS3では”関節角度”のデータの有無に応じて次に行うステップを切り換える。検索した”関節角度”のデータが登録されているときにはステップS4に移行する。
【0085】
図9はステップS4の移動工程に対応する図である。図9に示すように、姿勢制御部64は第1腕部駆動装置47に第1腕部16を駆動させる。そして、第1指部15はワーク78を把持したまま移動終了場所79に移動する。このとき、姿勢制御部64は第1腕部16の移動後姿勢が検索した最適移動後姿勢となるように第1腕部16の姿勢を変えながら移動させる。これにより、第1手部14が移動終了場所79に移動した後の姿勢は最適移動後姿勢となるため、第1手部14の振動を短時間で減衰させることができる。
【0086】
図10及び図11はステップS5の試行姿勢設定工程に対応する図である。試行姿勢設定工程では実施可能な移動後姿勢の中から複数の試行姿勢を設定する。既に設定されているときにはステップS5では何も行われずステップS6に移行する。試行姿勢の数は特に限定されないが本実施形態では例えば第1姿勢〜第7姿勢の7つの試行姿勢を設定している。図10には7つの試行姿勢の内第1姿勢、第4姿勢、第7姿勢の3つの姿勢を示している。
【0087】
図10(a)は第1腕部の第1姿勢を示す模式正面図であり、図10(b)は第1腕部の第1姿勢を示す模式平面図である。図10(a)及び図10(b)に示すように、第1指部15は鉛直方向に延在するように位置している。従って、第6関節34の平面位置は移動終了場所79と同じ位置となっている。そして、第1姿勢16aでは、第4関節32が第2関節30及び第6関節34よりZ方向に位置する姿勢となっている。つまり、第1姿勢16aは第1腕部16の中程を曲げてZ方向に上げた姿勢となっている。
【0088】
図10(c)は第1腕部の第4姿勢を示す模式正面図であり、図10(d)は第1腕部の第4姿勢を示す模式平面図である。図10(c)及び図10(d)に示すように、第2関節30及び第6関節34の位置は第1姿勢16aのときと同じ位置となっている。第4姿勢16bでは、第4関節32のZ方向の位置が第2関節30と略同じ位置の姿勢となっている。そして、第4姿勢16bは第1腕部16の中程を曲げて第4関節32をX方向に突出した姿勢となっている。
【0089】
第2姿勢と第3姿勢とは第1姿勢16aと第4姿勢16bとの中間の姿勢である。従って、第2姿勢及び第3姿勢の第4関節32の位置は第1姿勢16aにおける第4関節32の位置と第4姿勢16bにおける第4関節32の位置との間の位置に設定されている。そして、第2姿勢の第4関節32の位置は第3姿勢の第4関節32の位置より第1姿勢16aの第4関節32に近い場所に設定されている。
【0090】
図10(e)は第1腕部の第7姿勢を示す模式正面図であり、図10(f)は第1腕部の第7姿勢を示す模式平面図である。図10(e)及び図10(f)に示すように、第2関節30及び第6関節34の位置は第1姿勢16aのときと同じ位置となっている。そして、第7姿勢16cでは、第4関節32が第2関節30及び第6関節34より−Z方向に位置する姿勢となっている。つまり、第7姿勢16cは第1腕部16の中程を曲げて−Z方向に下げた姿勢となっている。
【0091】
第5姿勢と第6姿勢とは第4姿勢16bと第7姿勢16cとの中間の姿勢である。従って、第5姿勢及び第6姿勢の第4関節32の位置は第4姿勢16bにおける第4関節32の位置と第7姿勢16cにおける第4関節32の位置との間の位置に設定されている。そして、第6姿勢の第4関節32の位置は第5姿勢の第4関節32の位置より第7姿勢16cの第4関節32に近い場所に設定されている。
【0092】
図11は第1手部を移動する移動速度の推移を示すグラフである。図の縦軸は移動速度を示し、図中上側が下側より速い速度となっている。横軸は時間の経過を示し、時間は左側から右側に推移する。そして、第1速度推移線80、第2速度推移線81、第3速度推移線82は第1手部14を移動開始場所から移動終了場所79に移動するときの速度推移の設定を示している。各速度推移線ともに移動を開始後に加速し、所定の速度になったところで等速移動する。そして、等速移動した後で減速して停止する。そして、等速移動する時間を制御することにより所定の距離を移動するようになっている。
【0093】
移動速度の設定は3段階に設定され、第1速度推移線80では最高速度が80m/sに設定されており、第3速度推移線82では最高速度が60m/sに設定されている。そして、第2速度推移線81の最高速度は第1速度推移線80と第3速度推移線82との中間の速度であり、最高速度が70m/sに設定されている。これらの移動速度は最適移動後姿勢データ58の”限定速度”に示された速度と同じ速度が設定されている。尚、速度設定の段階は3段階によらず、2段階でも良く4段階以上でも良い。
【0094】
図12はステップS6の試行移動工程及びステップS7の振動測定工程に対応する図であり、移動にともなって生じる第1手部14の振動を示すグラフである。ステップS6において学習部68は第1姿勢16aから第7姿勢16cの1つを選択し、第1速度推移線80から第3速度推移線82の1つを選択する。このとき、過去にすでに試行した組合せを排除して選択する。速度推移線は第1速度推移線80が優先して選択され、次ぎに、第2速度推移線81、第3速度推移線82の順番に選択される。従って、まず、第1速度推移線80の条件で第1姿勢16aから第7姿勢16cが選択される。そして、第1速度推移線80の条件の各姿勢が総て行われた後、第2速度推移線81の条件で第1姿勢16aから第7姿勢16cが選択される。次に、第2速度推移線81の条件の各姿勢が総て行われた後、第3速度推移線82の条件で第1姿勢16aから第7姿勢16cが選択される。
【0095】
次に、選択した姿勢と速度推移線との条件にて姿勢制御部64が第1腕部16を移動させる。図12において縦軸は第1手部14の位置を示し、移動開始場所から移動終了場所79まで第1手部14の軌跡に沿った場所の位置を示している。そして、横軸は時間の経過を示し、時間は左側から右側に推移する。
【0096】
第1手部14の位置を各関節が備えるエンコーダーが検出する。さらに、第1腕用角速度検出器13が第1手首先部12の角速度の推移を検出する。このとき、第1腕用角速度検出器13は第1手部14が振動する様子も検出するので、エンコーダーの出力と第1腕用角速度検出器13の出力とを合成することにより、第1手部14の動作を示す振動推移線83を得ることができる。
【0097】
振動推移線83を移動前区間83a、移動中区間83b、移動後区間83cに分割して説明する。振動推移線83が示すように、移動前区間83aでは第1手部14は移動開始場所に位置し静止している。このとき各関節が備えるモーターや外部から伝わる振動により第1手部14は微細な振動を繰り返す。
【0098】
移動中区間83bでは第1手部14の移動が開始するときに加速度が加わるので、第1手部14は振動しながら移動する。移動中では時間が経過するのに従い第1手部14の振動は減衰する。そして、移動後区間83cで移動終了場所79に到達するときに減速するので、第1手部14に加速度が加わる。これにより第1手部14は振動する。そして、時間の経過にともなって、振幅が減少する。振動検出部65は振動判定データ61の1つである振動判定振幅84をメモリー45から入力する。振動判定振幅84は予め実験により設定された値である。そして、振動検出部65は第1手部14が移動終了場所79に到達した時から振動推移線83の振幅が振動判定振幅84以下となるまでの時間である減衰時間85を検出する。そして、振動時間管理部70は移動終了場所79、試行姿勢及び減衰時間85を試行振動データ59の1つとしてメモリー45に記憶する。
【0099】
ステップS6とステップS7とはステップS5で設定した試行姿勢と速度推移線との総ての組合せについておこなわれる。そして、各条件における減衰時間85が試行振動データ59としてメモリー45に記憶される。ただし、ステップS8において移動終了場所79に対応する最適移動後姿勢データ58が登録されたときには、ステップS11の学習工程は行われない。
【0100】
ステップS6とステップS7とはロボット1が行う作業の中で試行姿勢を実施可能な作業となるときに行う。ロボットが作業を行う工程とは別にデータを取得するために試行移動を行うときに比べて生産性良く学習工程を行うことができる。尚、この方法によらずにステップS6とステップS7とを反復して試行振動データ59を揃えても良い。
【0101】
図13はステップS8の登録工程に対応する図である。ステップS8はステップS5で設定した1つの速度推移線の条件で総ての姿勢の組合せにおける減衰時間85が揃ったときに行われる。そして、複数の減衰時間85を比較して最適移動後姿勢を選択して登録する。1つの速度推移線の条件で総ての姿勢の組合せにおける減衰時間85が揃っていないときにはステップS8では何も行われずにステップS9に移行する。
【0102】
図13は速度推移線と姿勢との組合せにおける減衰時間85を示すグラフである。縦軸は減衰時間85を示し、横軸は試行姿勢を示している。そして、説明を分かりやすくするために総ての速度推移線と姿勢との組合せにおける減衰時間85のデータが揃った状態を示している。
【0103】
第1減衰時間線86は、速度条件を第1速度推移線80にしたときの各試行姿勢における減衰時間85を示す線である。第1減衰時間線86に示すように第4姿勢16bのときの減衰時間85が長く、第1姿勢16a及び第7姿勢16cのときの減衰時間85が短くなっている。そして、第1姿勢16aと第7姿勢16cとでは第7姿勢16cの減衰時間85が短くなっている。従って、第1速度推移線80の条件では第7姿勢16cが最も減衰時間85を短くすることができる姿勢となっている。
【0104】
第2減衰時間線87は、速度条件を第2速度推移線81にしたときの各試行姿勢における減衰時間85を示す線である。そして、第3減衰時間線88は、速度条件を第3速度推移線82にしたときの各試行姿勢における減衰時間85を示す線である。第2減衰時間線87及び第3減衰時間線88ともに第1減衰時間線86と同じ傾向となっている。そして、第1減衰時間線86、第2減衰時間線87、第3減衰時間線88の順に減衰時間85が短くなっている。
【0105】
減衰時間判定値89は振動が減衰する時間を判定する値であり、振動が減衰するまで待機可能な時間を示す。そして、減衰時間85が減衰時間判定値89以下となる条件を登録することができるものとする。この条件を満たす範囲で、第1腕部16が高速に移動する条件を選択する。つまり、第1腕部16が高速で移動できて減衰時間85を短い条件を選択することにより生産性よくワーク78を移動して、次の作業を行うことができる。
【0106】
第1減衰時間線86では総ての試行姿勢で減衰時間85が減衰時間判定値89より長い時間であることから第1速度推移線80は登録できない条件となっている。第2減衰時間線87では第7姿勢16cの条件にて減衰時間85が減衰時間判定値89より短い時間となっている。従って、第2速度推移線81で第7姿勢16cの条件を登録することができる。そこで、最適姿勢設定部71は移動終了場所79に第1手部14を移動するときの姿勢を第7姿勢16cとし”限定速度”を第2速度推移線81の70m/sとして登録する。
【0107】
尚、第1減衰時間線86、第2減衰時間線87の順に減衰時間85のデータを取得し、第2減衰時間線87で登録している。このとき、第3減衰時間線88のデータは取得せずにステップS6とステップS7を省略しても良い。この方法の方が、総てのデータを取得する方法に比べて生産性良く”関節角度”及び”限定速度”を設定することができる。
【0108】
ステップS9の作業工程では、第1指部15の間隔を広げてワーク78を作業台77に載置する。そして、ステップS10の終了判断工程において次に行う作業がないときには第1腕部16がワーク78を移動する作業の工程を終了する。
【0109】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、移動終了場所79に移動した後の姿勢によって移動終了後の第1手部14の振動が減衰する減衰時間85が異なっている。メモリー45には第1手部14の振動が減衰する時間の短い最適移動後姿勢データ58が移動終了場所79の場所に対応して記憶されている。
【0110】
そして、検索部66はメモリー45に記憶された最適移動後姿勢データ58の中から移動終了場所79に対応する最適移動後姿勢を検索する。そして、姿勢制御部64は移動後姿勢が最適移動後姿勢となるように第1腕部16を移動させる。従って、第1手部14が移動して停止した後で第1手部14の振動が減衰する時間を短くすることができる。
【0111】
(2)本実施形態によれば、ロボット1は振動検出部65と学習部68とを有している。振動検出部65は第1手首先部12を介して第1手部14の振動を検出する。学習部68は最適移動後姿勢をメモリー45に記憶させる。学習部68は、移動終了場所79へ移動するときの試行姿勢を複数作成する。次に、学習部68は各試行姿勢となるように第1腕部16を繰り返して移動させる。続いて、各試行姿勢で動作したときの第1手部14の振動を第1手首先部12を介して第1腕用角速度検出器13が検出し、学習部68が移動後姿勢と第1手部14の振動とをメモリー45に記憶する。次に、最適姿勢設定部71は、複数の試行姿勢の中から振動が減衰し易い最適移動後姿勢を選択して最適移動後姿勢データ58を登録している。従って、学習部68は確実に振動が減衰し易い最適移動後姿勢を登録することができる。
【0112】
(3)本実施形態によれば、第1腕用角速度検出器13はジャイロセンサーである。ジャイロセンサーは振動による角速度の変化を精度良く検出できる。従って、第1腕用角速度検出器13は振動による角速度の変化を精度良く検出することができる。
【0113】
(4)本実施形態によれば、第1腕用角速度検出器13は3軸ジャイロセンサーである。第1腕部16は複数のリンクとリンク間を接続する複数の関節部を備えているので、第1腕部16は3次元の動作をすることができる。3軸ジャイロセンサーは直交する3軸方向の角速度を検出する。従って、第1腕部16が3次元の動作をするときにも所望の方向における角速度を検出することができる。
【0114】
(5)本実施形態によれば、第1関節29〜第7関節35には回動可能な範囲が設定されており、通常回動範囲40は制振回動範囲41より小さい範囲に設定されている。従って、通常回動範囲40の境界に関節が位置するときにも、さらに、第1手部14の振動を減衰させるために関節を回動させることができる。従って、第1腕部16の関節を通常回動範囲40の中で駆動させることにより第1手部14の振動を減衰させることができる。
【0115】
(6)本実施形態によれば、第1腕部16には7個の関節が設置されている。従って、第1腕部16は可動範囲内で第1手部14に所望の姿勢をとらせることができる。
【0116】
(7)本実施形態によれば、ロボット1は出力装置52と入力装置51とを備えている。そして、出力装置52は移動終了場所79に対応する最適移動後姿勢を出力する。従って、本実施形態と同様の機能を有するロボット53に移動終了場所79と移動終了場所79に対応する最適移動後姿勢を出力することができる。さらに、入力装置51は移動終了場所79と最適移動後姿勢とを入力する。従って、本実施形態と同様な機能を有するロボット53から移動終了場所79と最適移動後姿勢を入力することができる。その結果、メモリー45に最適移動後姿勢が記憶されていないロボット53に最適移動後姿勢を伝達することができる。これにより、ロボット53から最適移動後姿勢を入力することでステップS11の学習工程を行うことを省略することができる。
【0117】
(8)本実施形態によれば、メモリー45には最適移動後姿勢に加え”限定速度”が記憶されている。従って、最適移動後姿勢になるように変形させながら第1腕部16を移動させてさらに”限定速度”で移動させることにより、第1手部14が移動して停止した後で第1手部14の振動が減衰する時間を短くすることができる。
【0118】
(9)本実施形態によれば、ステップS2の検索工程では移動終了場所79に対応する最適移動後姿勢を検索している。そして、検索工程において最適移動後姿勢が検索されたときには、ステップS4の移動工程にて検索された最適移動後姿勢となるように第1腕部16を変形させながら移動する。従って、第1手部14が移動して停止した後で第1手部14の振動が減衰する時間を短くすることができる。
【0119】
(10)本実施形態によれば、ステップS2の検索工程において最適移動後姿勢が検索されないときには、ステップS11の学習工程において最適移動後姿勢が選択して登録される。従って、最適移動後姿勢が登録された後からは第1手部14が移動して停止した後で第1手部14の振動が減衰する時間を短くすることができる。その結果、ロボット1が稼動するにつれて登録された最適移動後姿勢が増加する為、第1手部14が移動して停止した後で第1手部14の振動が減衰する時間を短くすることができる。
【0120】
(11)本実施形態によれば、ステップS11の学習工程はステップS5の試行姿勢設定工程、ステップS6の試行移動工程、ステップS7の振動測定工程及びステップS8の登録工程を有している。試行姿勢設定工程では実施可能な移動後の姿勢の中から複数の試行姿勢を設定している。そして、試行移動工程では試行姿勢となるように第1腕部16を移動する。続いて、振動測定工程では移動終了場所へ移動した後の第1手部14の振動を検出し試行振動データ59を出力している。試行移動工程と振動測定工程とを複数行うことにより、複数の試行姿勢における振動の試行振動データ59が出力される。登録工程では複数の試行振動データ59を比較して最適移動後姿勢を選択して登録している。従って、移動終了場所79が変わるときにも、各移動終了場所79における最適移動後姿勢を登録することができる。
【0121】
(12)本実施形態によれば、ロボット1が行う作業の中でステップS6の試行移動工程が行われる。従って、ロボット1が作業で第1腕部16を移動させる行為が試行移動工程の第1腕部16を移動させる行為となる。その結果、ロボット1が作業を行う工程とは別に試行移動工程を行うときに比べて生産性良くステップS11の学習工程を行うことができる。
【0122】
尚、本実施形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更や改良を加えることも可能である。変形例を以下に述べる。
(変形例1)
前記実施形態では、第1腕用角速度検出器13は第1手首先部12に設置されたが、第1手部14に設置する場所があるときには第1手部14に設置されるのが好ましい。また、第1手首先部12に設置する場所が確保できないときには、第1手首元部11に設置されても良い。第1手部14の振動を検出できる場所に設置されれば良い。設置可能な場所が多い方が設計の自由度を大きくすることができる。
【0123】
(変形例2)
前記実施形態では、第1腕用角速度検出器13を用いて第1手部14の振動を検出し、第1手部14の振動を減衰させた。同様に、第2腕用角速度検出器26を用いて第2手部27の振動を検出し、第2手部27の振動を減衰させても良い。第2手部27による作業も生産性良く行うことができる。
【0124】
(変形例3)
前記実施形態では、ロボット1は第1腕部16と第2腕部17との2つの腕部を備えていた。腕部は1つでもよく、3つ以上備えていても良い。各腕部において第1腕部16と同様の制御を行っても良い。これにより、各腕の手部を生産性良く移動させて作業することができる。
【0125】
(変形例4)
前記実施形態では、第1腕部16に第1関節29〜第7関節35の7つの関節が設置されていた。関節の個数は8個以上でも良い。さらに、複雑な動作を行うことができる。そして、この場合にも、上記の方法を用いて腕部を制御することにより、生産性良く作業を行うことができる。
【0126】
(変形例5)
前記実施形態では、第1ジャイロセンサー37〜第3ジャイロセンサー39に水晶振動子を用いたセンサーを採用したが、他の方法を用いたジャイロセンサーでも良い。静電容量型、圧電型、ピエゾ型 、電磁型、光学式の各種方式のジャイロセンサーを用いることができる。
【0127】
(変形例6)
前記実施形態では、最適移動後姿勢データ58に”限定速度”を記載したが、移動速度を限定しないときには、”限定速度”を必ずしも設定しなくても良い。速度を規制しない方が制御を容易にすることができる。
【0128】
(変形例7)
前記実施形態では、第1手部14に第1指部15が設置されていた。第1手部14に工具が設置されていても良い。このときにも、第1手部14の振動が減衰する時間が短いので、生産性良く作業することができる。
【符号の説明】
【0129】
1,53…ロボット、4…制御部、7…リンクとしての第1肩部、8…リンクとしての第1肩関節部、9…リンクとしての第1元側腕部、10…リンクとしての第1先側腕部、11…リンクとしての第1手首元部、12…リンクとしての第1手首先部、14…第1手部、16…可動部としての第1腕部、17…可動部としての第2腕部、18…リンクとしての第2肩部、19…リンクとしての第2肩関節部、20…リンクとしての第2元側腕部、23…リンクとしての第2先側腕部、24…リンクとしての第2手首元部、25…リンクとしての第2手首先部、27…第2手部、29…関節部としての第1関節、30…関節部としての第2関節、31…関節部としての第3関節、32…関節部としての第4関節、33…関節部としての第5関節、34…関節部としての第6関節、35…関節部としての第7関節、37…ジャイロセンサーとしての第1ジャイロセンサー、38…ジャイロセンサーとしての第2ジャイロセンサー、39…ジャイロセンサーとしての第3ジャイロセンサー、40…通常回動範囲、41…制振回動範囲、45…記憶部としてのメモリー、51,54…入力部としての入力装置、52,55…出力部としての出力装置、64…制御部としての姿勢制御部、65…振動検出部、66…検索部、68…学習部、79…移動終了場所。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリンクと前記リンク間を接続する複数の関節部とを備え前記リンクまたは前記関節部と接続する手部を移動させる可動部と、
前記可動部の姿勢を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記手部を移動開始場所から移動終了場所へ移動した後の前記移動終了場所における前記可動部の姿勢を移動後姿勢とするときに前記移動後姿勢の中で移動終了後の前記手部の振動が減衰する時間が短い前記移動後姿勢である最適移動後姿勢を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記最適移動後姿勢の中から前記移動終了場所に対応する前記最適移動後姿勢を検索する検索部、とを有し、
前記移動後姿勢が前記最適移動後姿勢となるように前記制御部が前記可動部の姿勢を制御することを特徴とするロボット。
【請求項2】
請求項1に記載のロボットであって、
前記手部の振動を検出する振動検出部と、
前記最適移動後姿勢を前記記憶部に記憶させる学習部と、を有し、
前記学習部は、前記移動終了場所へ移動するときの前記移動後姿勢を複数作成し、各前記移動後姿勢にて前記可動部を移動させたときの前記手部の振動を前記振動検出部に検出させた検出結果を前記記憶部に記憶し、複数の前記検出結果の中から前記最適移動後姿勢を選択して登録することを特徴とするロボット。
【請求項3】
請求項2に記載のロボットであって、
前記振動検出部はジャイロセンサーであることを特徴とするロボット。
【請求項4】
請求項3に記載のロボットであって、
前記振動検出部は3軸ジャイロセンサーであることを特徴とするロボット。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のロボットであって、
前記可動部が所定の姿勢をとるときに前記関節部が回動する範囲である通常回動範囲と、前記手部の振動を減衰するときに前記関節部が回動する範囲である制振回動範囲と、が設定され、前記通常回動範囲は前記制振回動範囲より小さい範囲に設定されていることを特徴とするロボット。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のロボットであって、
前記可動部は前記関節部を7個以上備えていることを特徴とするロボット。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のロボットであって、
前記記憶部に記憶された前記移動終了場所と前記最適移動後姿勢とを他のロボットに出力する出力部と、
前記移動終了場所と前記最適移動後姿勢とを前記他のロボットから入力する入力部と、を備えることを特徴とするロボット。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のロボットであって、
前記記憶部には前記移動終了場所へ移動するときの前記移動後姿勢に加え前記手部を移動する最高速度を限定する限定速度が記憶されていることを特徴とするロボット。
【請求項9】
複数のリンクと前記リンク間を接続する複数の関節部とを備えた可動部が手部を移動させるロボットのロボット制御方法であって、
前記手部を移動終了場所へ移動した後の前記可動部の姿勢を移動後姿勢とし、前記移動後姿勢の中で移動終了後の前記手部の振動が減衰する時間が短い前記移動後姿勢を最適移動後姿勢とするとき、
前記移動終了場所に対応する前記最適移動後姿勢を検索する検索工程と、
前記検索工程において前記最適移動後姿勢が検索されたときには前記移動後姿勢が前記最適移動後姿勢となるように前記可動部を移動する移動工程と、
前記検索工程において前記最適移動後姿勢が検索されないときには前記移動後姿勢の中から前記最適移動後姿勢を選択して登録する学習工程と、を有することを特徴とするロボット制御方法。
【請求項10】
請求項9に記載のロボット制御方法であって、
前記学習工程は、前記移動後姿勢の中から複数の試行姿勢を設定する試行姿勢設定工程と、
前記試行姿勢に従って前記可動部を移動させる試行移動工程と、
前記移動終了場所へ移動した後の前記手部の振動を検出し検出結果を出力する振動測定工程と、
前記試行移動工程と前記振動測定工程とが複数行われ、複数の前記検出結果を比較して前記最適移動後姿勢を選択して登録する登録工程と、を有することを特徴とするロボット制御方法。
【請求項11】
請求項10に記載のロボット制御方法であって、
前記試行移動工程は、前記ロボットが行う作業の中で前記移動終了場所にて前記試行姿勢を実施可能な作業となるときに行われることを特徴とするロボット制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−107138(P2013−107138A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251343(P2011−251343)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】