説明

ロボット変位装置

【課題】操作者による直接的な接触によって装着式の外骨格ロボット変位システムを提供すること。
【解決手段】センサと人体の四肢の間の調整可能な制御する界接面の力の状態の関係を感知し、力の信号を出力するように構成される、ロボット骨組の四肢に沿ってロボット骨組に取り付けられた複数の力センサ110と、センサから上記力の信号を受信し、ロボット骨組に対する重力の力および重力の方向を計算し、上記制御する力の状態の関係を維持するのに必要とされる動きの力を計算し、動きの力に対応する作動信号を発生して送信するように構成される、ロボット骨組に取り付けられた力計算システム160と、力計算システムからの送信された作動信号を継続的に受信し、制御する力の状態の関係を維持するために、ロボット骨組の一部分を変位させるように構成される、ロボット骨組に取り付けられた駆動システムとを備えたロボット変位装置である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願)
本願は、その全体がすべての目的について本明細書に援用される、2006年7月17日出願の米国仮特許出願第60/831,476号、および2007年7月16日出願の通し番号不明の米国非仮特許出願に対する優先権を主張する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
人体の形状に近似し、操作者の所定の軌跡の動きに依存することなく、人間の動きを反映させて、外骨格の骨組の複数の肢部を、人間の操作者による直接的な接触によって、同時におよびリアルタイムで変位させることが可能である、装着式の外骨格ロボット変位システムを開発することが有利であることが認識されている。
【0003】
本発明は、少なくとも人体の一部分に近似し、少なくとも人体の一部分に連結可能である形状にされ、人体による動きを模倣するように構成されたロボット骨組に使用されるロボット変位装置を提供する。前記ロボット骨組は、本明細書ではまた、外骨格と称される。この動きを達成するために、装置は、ロボット骨組の骨組の手および足の近くに取り付けられた複数の線形および回転の力センサを用いる。このセンサは、接触関係ならびに変位された非接触関係を含む、センサと人間の操作者の四肢との間における、基準線を制御する界接面の力の状態の関係を検出する。次にセンサは、ロボット骨組に組み込まれた計算システムへと力の信号を出力する。センサから出力された力の信号、ならびにロボット骨組に対する重力の力および方向に基づいて、計算システムは、制御する力の状態の関係を維持するのに必要である線形および回転の力を計算する。次に、このシステムは、作動信号を発生して、ロボット骨組に取り付けられた駆動システムに送信する。次に、駆動システムが、制御する力の状態の関係を維持するために、ロボット骨組の一部分を変位させる。代替として、変位は望まれないが、ロボット骨組への荷重が変化した場合、駆動システムは、制御する力の状態の関係を維持するのに必要であるように、ロボット骨組への線形および回転の力を増加させる。
【0004】
本発明の追加の特徴および利点は、発明の特徴を例によって共に示す添付の図面とともに、以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0005】
ここで、図面に示される例示的な実施形態が参照され、本明細書においては特定の用語は同じものを説明するために用いられる。いずれにせよ、それによる本発明の範囲の限定は全く意図されないことが理解されよう。当業者または本開示を入手した者が思いつくであろう、本明細書に示される本発明の特徴の変更例およびさらなる修正例、ならびに本明細書に示される本発明の原理の追加の用途は、本発明の範囲内にあると考えられるべきである。
【0006】
本発明は、一般に、装着式のロボット変位システムに関する。より詳細には、本発明は、それを用いる使用者によって掛けられる力に比例して機械的に変位するロボット骨組および作動装置システムに関する。
【0007】
人間およびロボット機械を1つのシステムに一体化することは、生医学、工業、軍事、および航空宇宙の用途に使用可能である援助技術の新世代を創造する無限の機会を与える。人間の構成要素は、進んだ意思決定および感知の機構を与える、その自然であり高度に発達した制御アルゴリズムを付与し、一方で、ロボットの構成要素は、力、正確さ、および速度のような技術的な利点を提供する。
【0008】
人間の操作者以外の動力源によって駆動される外骨格は、人間の筋力を増幅する一方で、操作者の目的についての人間的制御を維持する、ある種のロボットマニュピュレータである。外骨格の関節システムは、人体のシステムに近似し、あるタイプの人間/外骨格の界接面を介して、人間の操作者の力の振幅および方向の両方に理想的に応答すべきである。
【0009】
動力付きの外骨格を製作する実際的な努力は1960年代まで遡るが、構成の研究は、明らかにそのかなり前に始まっていた。以前のプロジェクトは、結果として、油圧技術および電気によって動力を供給される自立式の外骨格の構成となり、不恰好で珍妙な装置として復活した。自動車と同じくらい重いロボットは、おそらく、人が冷蔵庫をまるでそれがジャガイモの袋であるように持ち上げることを可能にしたであろう。しかしながら、複数の肢部を同時に操作する試みは、狂暴で制御不能な動きにつながりかねなかった。それ以来、大部分の開発は、完全なシステムよりもむしろ、外骨格用の構成要素に焦点が置かれてきた。
【0010】
ロボットの外骨格の研究努力の一部分は、筋電図計の信号をシステムへの一次指令信号として用いる、神経筋レベルにおけるバイオポート(bioport)を介する人間/外骨格の界接面を開発することに焦点が置かれてきた。このシステムは、脳から筋肉へと送信される信号を監視するために、脚部の皮膚に取り付けられた生体電気センサを使用する。人が立とうまたは歩こうとするとき、脳から筋肉への神経信号が、皮膚の表面に検出可能な電流を発生する。この電流がセンサによって拾われ、神経信号を外骨格の股関節部および膝のところの電気モータを制御する信号に変換するコンピュータへと送られる。しかしながら、人間の操作者が発汗したり、走ったり、跳んだり、および/または横たわったりしている極端な条件の下で作動するとき、生体電気センサの精度は、かなり減少することがある。
【0011】
さらなる研究努力は、人間/外骨格の界接面における人間の操作者による直接的な接触の概念を使用する外骨格の制御に焦点が置かれた。この概念の実施を試みる多くの方式は、動的な運動方程式を導き、解くことに依存する軌跡追跡法を使用していた。この方程式の解は、次に、人間の操作者の動きを反映させるのに必要とされる外骨格の所望の軌跡を決定するために使用される。適応性のある要素をしばしば用いる、高利得の位置制御器が、操作者の所定の軌跡を追うために使用される。軌跡追跡法は、2つの主な欠点を有する。第1に、この方法はコンピュータを多用するものである。第2に、この方法は、環境における障害または変化に強くない。外骨格が物体、あるいはその環境または荷重の変化に遭遇した場合、力学および軌跡が再計算されなければならず、さもなければ外骨格は倒れてしまう。
【0012】
全体的に図1A−図2Bおよび2を参照すると、外骨格骨組100は、少なくとも人体の一部分に近似し、少なくとも人体の一部分に連結可能である形状にされ、人体による動きを模倣するように構成される。この動きを達成するために、装置は、中央制御システム160および駆動システム150に作動的に連結された骨組の手110および足120の近くのロボット骨組100に取り付けられた複数の力センサを用いる。力センサは、ロボット骨組100に働く線形または回転の力を検出可能である。本発明の一態様では、力センサの感度は調整可能である。たとえば、センサは、所定のレベルを超える力が力センサに掛けられたときにのみ応答するように構成可能である。
【0013】
本明細書に使用される「界接面の力の状態の関係」(IFSR)は、その近似的な人間の解剖学的構造に対する外骨格の構成要素の好ましい位置関係に関するものである。たとえば、本発明の一実施形態では、着用者の手首は、動いていないとき、外骨格の前腕/手首の対応する部分と強力に接触していなくてもよい。この場合、使用者は、動きが望まれる(腕を上げるか、または腕を脇に押す)ときに、外骨格に対して力を掛ける必要がある。この動きの結果、IFSRの非接触状態が、外骨格と使用者の手首との間の物理的接触の状態へと変化する。外骨格は、「脇に寄る」適切な動きによって、この接触に反応する。この反応は、手首/前腕の動きが完了するまで、多数回連続して繰り返されてよい。この点において、力の状態の関係は、再び、非接触位置において安定し、動きが停止される。
【0014】
別の実施形態では、使用者の足がセンサの上に立ち、その結果、所与の力が掛けられていてよい。このIFSRは、足とセンサとの間の実際の接触に基づく。使用者が足を上げると、非接触関係が起こる。次に、外骨格は、足とその関連する外骨格の構成要素との間の荷重の掛かった接触を回復する努力に応答する。したがって、この場合、IFSRは、使用者の足が外骨格と強力に接触している接触関係にある。
【0015】
センサは、センサと人間の操作者の四肢との間において、基準線を制御する界接面の力の状態の関係を検出することができる。次にセンサは、ロボット骨組100に一体化された中央制御ユニットおよび計算システム160へ、力の信号を出力する。センサから出力された力の信号ならびにロボット骨組100に対する重力の力および方向に基づいて、それが接触関係であるかまたは非接触関係であるかにかかわりなく、計算システム160は、制御する力の状態の関係を維持するのに必要とされる線形および回転の力を計算する。次に、このシステムは、作動信号を発生して、ロボット骨組100に取り付けられた駆動システム150に送信する。次に、駆動システム150は、制御する力の状態の関係を維持するために、ロボット骨組100の一部分を変位させる。代替として、変位は望まれないが、ロボット骨組100に掛かる荷重が変化した場合、駆動システム150は、動作が完了するまで、制御する力の状態の関係を維持するのに必要であるように、ロボット骨組100に掛かる線形および回転の力を増加または減少させる。
【0016】
より一般には、本発明は、着用者が、通常不可能であろう、または、さもなければ行うのにかなりの時間およびエネルギーを消費しなければならないであろう活動を行うことができるようにする。このシステムは、軍人、建築作業員、警察官、医療従事者、および人体の機能を援助する、または人体の形状を修正する他の人々によって着用可能である。装着式の骨組は、危険または有害な作業において必要とされる人員の数を縮小し、そのような仕事を行うときに人員によって経験される身体的なストレスを低減することが可能である。装着式の骨組は、また、放射線、ガス、化学物質または生物兵器への暴露にかかわる可能性のある用途に特化した作業用に構成可能である。装着式の骨組は、また、身体的に障害のある人が、座る、立つまたは歩くといった、そうでなければ不可能な作業を行うのを援助するのに使用可能である。変位装置は、小さい動きおよび力を、制御された大きい動きおよび力に増幅する動力増幅器として働くことができる。骨組上の様々な位置にセンサおよび制御装置を戦略的に配置することによって、非常に小さい量の力しか掛けられない人が、骨組の動きを制御できるようになる。さらに、身体的に障害のある人が、動力源につながれることなく、動きの自由を与えられることができる。動力中断のような安全装置が、骨組の意図しない動き、および骨組を装着している人へのなんらかの損害を防止するようにシステムに組み込み可能である。本発明の例示的な実施形態に関連した主題は、各特許および/または特許出願がその全体において本明細書に引用により援用される、米国特許第6,957,631号および第7,066,116号、ならびに米国特許出願第11/292,908号、第11/293,413号、第60/904,245号、第60/904,246号、および第11/293,726号に見出されるであろう。
【0017】
本発明のより詳細な態様によると、図1A−図2Bは、ロボット骨組100に取り付けられ、手110および足120の近くで人間の操作者に隣接または接触して配設された複数のセンサを用いるロボット変位装置を含むシステムを示す。別の態様では、センサは、股関節部130および肩140の近くで人間の操作者に隣接または接触して配設される。センサ110、120、130および140は、複数軸における人間の操作者の動きの複数方向を同時に検出することができる。図3から8を概ね参照して、本発明の例示的な一実施形態では、人間の操作者は、ロボット骨組100の足部分101の中に、操作者の足が対応する力センサ120と接触するように操作者の足を配置することによって、ロボット変位装置に入ることができる。人間の操作者の各部分は、また、ロボット骨組100の様々な位置に配設された力センサと接触する。たとえば、図6は、ロボット骨組の股関節部の部分102および対応する力センサ130を示す。操作者52は、腰回りの帯103または他の適切な連結装置によって骨組100に連結されてよい。図7に示されるように、操作者52は、さらに、肩の帯104によってロボット骨組100に連結される。一態様では、力センサ140は、操作者の肩領域の近くのロボット骨組100に取り付けられる。さらに、図8に示されるように、操作者53の手は、ロボット骨組100に連結された取手105を把持する。力センサ110は、取手105とロボット骨組100との間に配設される。本明細書ではロボット骨組100上の特定の位置に配設された力センサを述べているが、力センサは、ロボット変位装置の正しい作動を容易にするために、ロボット骨組100の多くの位置に戦略的に配置可能であることを理解されたい。
【0018】
本発明の一態様では、システムに掛かる操作者の力の測定と同時に、中央制御ユニット160は、ロボット骨組の現在の関節位置および速度、ならびに骨組の位置に対する重力の力および重力の方向を検出することができる。次に、操作者の動きに応答する、外骨格の所望の関節位置および速度の値が計算される。その後、ロボット骨組100上の複数の位置に配置された複数の駆動機構を含むことのある、装置の駆動システム150は、ロボット骨組100を変位させるように操作者の動きと協調して働く。例示的な一実施形態では、駆動機構は、ロボット骨組100の関節106の近傍に配設され、所望の変位を生じるためにロボット骨組100の部材上で線形または回転の力を生じるように構成されてよい。操作者の動きに基づいて、外骨格の骨組100は、複数方向に、および複数軸において変位可能である。中央制御ユニット160は、また、燃料保管装置、動力発生センタおよび/または信号発生/処理センタとして働くことができる。外骨格の実際の動きは、ロボット骨組100の変位を起こすように、調節弁を介して油圧液を送達することによって達成可能である。本明細書には油圧液作動装置システムについて特に参照されているが、外骨格の各部分を動かすことのできる任意の作動装置システムが、本明細書において使用を考慮されることを理解されたい。
【0019】
さらなる実施形態では、中央制御ユニット160は、人間の操作者に及ぼされる外骨格構造体100の力、およびまた、ロボット骨組100によって人間の操作者に及ぼされる計算された力に対抗するのに必要とされる駆動システム150の関節回転力を計算することができる。その後、駆動システム150は、ロボット構造体100によって人間の操作者に及ぼされた力に対抗するように、ロボット骨組100の関節構成要素に計算された回転力を及ぼす。たとえば、ロボット骨組100の操作者は、ロボット骨組100の背中に掛けられた荷重を有することがある。この荷重は、そうでなければロボット骨組100および人間の操作者を下および/または後ろに引くであろう、ロボット骨組100に対するモーメントの力を生じることがある。本発明の一実施形態では、中央制御ユニット160は、ロボット骨組100を直立位置に保持するために、ロボット骨組100に外部的に掛けられる力に対抗するように構成される。しかしながら、中央制御システム160は、任意の所望される(たとえば、うつ伏せになった、かがんでいる、および/または座っている)位置にロボット骨組100を保持するように構成されてよいことを理解されたい。
【0020】
本発明の一態様では、ロボット変位装置の制御ユニット160は、すべての力センサよりも少ない群から、またはその群へと動力を導くように構成可能である。これによって、装置が、着用者が所望する作動モードを最適化するために、ロボット骨組100の一定の部分を本質的に「シャットダウン」できるようにする。本発明のさらに別の態様では、制御システム160は、さらに、遠隔観察装置からの作動モードでの自動切換を容易にするために、通信装置からのリモート信号を受信するように構成される。たとえば、遠隔観察装置は、ロボット変位装置に停止するように、またはロボット変位装置自体を起動させ、それによって、遠隔観察装置によって指定された位置へ、または所定の位置へと移動するように命令(すなわち、力センサからのすべての指令信号を無効化)する制御信号を制御システム160に送信することができる。
【0021】
図1A−図2Bを概ね参照すると、本発明の一実施形態では、ロボット骨組100の動きは、特に油圧管路および弁を有する、ロボット骨組の関節106の近傍に配設された駆動システム150によって達成される。駆動システム150内のシリンダ(図示せず)は、ロボット骨組の相対位置を調整するように伸張または収縮可能である。油圧液管路および駆動機構は、内部燃焼(IC)機関または他の動力変換装置によって、加圧または駆動されることができる。動力変換装置の一例は、一次ピストンを有するチャンバ、高速応答応構成要素、およびチャンバに動作可能に相互接続された制御器を備えた機関を含む。チャンバは、また、チャンバに流体を供給する少なくとも1つの流体口と通気口とを含むことができる。流体口と組み合わさった一次ピストンは、チャンバに可変圧力を与え、チャンバの燃焼部にエネルギーを生じるために少なくとも部分的に燃焼を容易にするように構成される。一次ピストンは、チャンバ内で往復運動するように構成可能である。制御器は、チャンバ内の燃焼を制御するように構成可能である。高速応答構成要素は、高速応答構成要素がチャンバの燃焼部分に隣接して置かれるようにチャンバと流体連通することができる。システムは、駆動システム150および動力変換装置180が、ロボット骨組100の各関節に配置され、中央制御ユニット130からの信号によって制御されるように構成可能である。また、ロボット骨組を装着する人の安全を守るように、動力中断のような安全装置が含まれることができる。
【0022】
図9に概ね示される例示的な別の実施形態では、ロボット骨組の制御を与える一方で、ロボット骨組の操作者によってロボット骨組自体に掛けられる相互作用の力を最小にする、制御システムおよび計算手段のブロック図が示される。計算手段によって用いられる測定された入力パラメータは、
1.ロボット関節角度のベクトルθ200、
2.ロボット関節速度のベクトルθ210、
3.測定された関節トルクのベクトルτ220、
4.重力のベクトルg230(典型的に、外骨格に取り付けられたある基準の骨組において、たとえば骨盤に取り付けられた慣性測定ユニットを使用して測定される)、
5.操作者と外骨格との間の相互作用から生じる、Fベクトル240として示される力およびモーメントを含むことができる。相互作用の力およびモーメントのベクトルFは、たとえば、以下のような位置で測定される。
【0023】
(i)操作者および外骨格の足の間、操作者に取り付けられた骨盤のハーネスの間、
(ii)外骨格の骨盤と操作者に取り付けられた骨盤のハーネスとの間、
(iii)外骨格の脊柱構造体と操作者に取り付けられた肩のハーネスとの間、
(iv)操作者の手および/または手首と外骨格の腕との間、および
(v)他の位置も可能である。
【0024】
一実施形態において、足センサに基づいた制御では、重力補償を含む制御則が、所望の結果をもたらす所望のトルクコマンド(τ220)を計算するのに用いられる。より具体的には、所望の結果は、自然で直観的な制御を達成する一方で、操作者と外骨格との間の相互作用の力を、システムによって運搬されるペイロードの重量より、(地面に立っている間、操作者の足によって支持されなければならない操作者自身の重量の成分を除いて)数倍少なく保つ。一態様では、足センサに基づいた制御に適するこのような一制御則は、以下のように、
左の脚部には、
【0025】
【数1】

【0026】
右の脚部には、
【0027】
【数2】

【0028】
と書き込み可能である。上記の式で用いられる関数および記号は、以下の段落で定義される。
上記の方程式1および2を参照し、図9に概ね示されるように、J260は、ある基準のシステム(たとえば足の力/モーメントセンサ)に対する別の基準のシステム(たとえば骨盤に取り付けられた基準のシステム)の変位速度および角速度と、外骨格の関節速度θ210とを関連づける、それ自体がヤコビ行列式を有する外骨格関節角度θ200の関数である転置ヤコビ行列である。
【0029】
項g(θ)280は、重力補償トルクのコマンドに対応する。この重力補償コマンドは、定常状態の重量補償を与えるフィードフォワードコマンドであり、ペイロードおよび外骨格が、制御ループの力/モーメントセンサに基づくポートを使用することなく支持されることができるようにする。このコマンドはまた、関節トルクセンサの較正の利得およびゼロオフセットの自動的なフィールド内検証を実施するのに使用可能である。重力補償トルクコマンドg(θ)280は、重力が存在する際の全体的な外骨格およびペイロードの構成、リンクおよびペイロードの質量特性、外骨格と地面との間の相互作用の力およびモーメント、ならびに操作者と外骨格との間の力/モーメントの相互作用に依存する。
【0030】
filtered290は、右足または左足の力/モーメントセンサによって測定された低域フィルタ済みの力およびモーメントのベクトルであり、制御システムの入力パラメータとして用いられる。実際は、システムの応答性を増すため、および同時にシステムの安定性を維持するために、いくつかの非線形の、力学的に調整された低域フィルタのパラメータが使用される。この概念の多くの異なる実施例が可能である。
【0031】
項mfoot270は、基準の右足または左足の力/モーメントセンサの骨組における操作者の重量に近い量である。腕、骨盤、または背中に取り付けられたロードセルの場合、この値は、概ね、ゼロまたは別の所望の目標とされる力/モーメント(たとえば外骨格によって人に及ぼされる前方への押しになる可能性のある値)に設定される。
【0032】
300およびS310として示されるパラメータは、計算手段によって使用されなければならない、外骨格と操作者との間の所望の力を計算するために用いられる基準化係数である。複数の異なる関数がこの目的のために使用されてよく、外骨格を制御するのに用いられるいくつかの例が以下に説明される。
【0033】
左足および右足の重量配分係数(S300およびS310)は、関節トルクを基準化する測定基準を与えるように、どちらの足が地面上にあるか、または両足が地面上にある場合はそれぞれの足の相対的な重量に依存して、足センサを使用してそれぞれ計算される。以下に説明される単純な計算は、それぞれの標示された足センサの示度(正数は重力の方向に押す力を意味する)を取り、それを、左および右両方の標示された足センサの示度の合計で割ることからなる。値が負数になった場合(機械が反応できるより速く足を持ち上げたときなど)には、それはゼロに等しく設定される。値がプラス1より大きくなった場合、それは1に等しく設定される。たとえば、Sが1に等しいおよびSがゼロに等しいとき、人はその左足で立っており、右足は上がっている。S=0.5およびS=0.5のとき、人は両方の足に等しく体重を掛けている。S足すSは、必ずしも厳密に1に等しくはなく(この計算における分子および分母は両方とも標示された値を使用することに注意)、他の公式も可能であるが、相対的な(常に正の)大きさは、動作を制御する関節トルクを基準化するための有用な手段を与える。
【0034】
上述の特徴を有するいくつかの関数が、基準化係数であるSおよびSを計算するために使用されてよい。外骨格システムがおよそ水平面で作動される特定の場合では、基準のセンサの骨組で測定されるx軸に沿った力の成分は、基準の足の骨組における重力ベクトルの向きと一致する。
【0035】
方程式3として以下に示される次のアルゴリズムが、基準化係数を計算するのに用いられてよい。
【0036】
【数3】

【0037】
外骨格の脚部、ならびに体全体の外骨格システムでは、力モーメントセンサによって感知された力の所望の成分の基準化係数が、足センサの基準の骨組で測定された重力ベクトルに沿って左右の足センサによって測定された力の成分の標示された値を使用して概算可能である。
【0038】
【数4】

【0039】
この目的では、単位重力ベクトル
【0040】
【数5】

【0041】
は、評価された回転行列を用いて基準の足センサの骨組において表された慣性測定単位(IMU)の座標系である。このベクトルは、ロボットの運動回路およびロボットの関節角度に依存する。左右の脚の重力ベクトルの計算は、それぞれ方程式4および5において上記に示される。
【0042】
基準化係数SおよびSを計算するのに用いられる力の成分は、上記で定義された方程式の組によって説明されるやり方と同様のやり方で獲得可能であるが、このとき、スカラFx,LおよびFx,R
【0043】
【数6】

【0044】
および
【0045】
【数7】

【0046】
によってそれぞれ置き換えられ、式中、FPE,LおよびFPE,Rは、人と外骨格との間のそれぞれ基準の左右の足センサの骨組における力の3つの成分である。基準の骨盤の骨組における重力ベクトルを表した場合、およびまた、基準の骨盤の骨組における相互作用力を表した場合、同じ結果が獲得可能である。
【0047】
2つの連続する帰還利得の行列が、この開示で説明される実施形態において使用可能である。これらは、向きK、K320および力/モーメント帰還利得行列K330である。一実施形態では、向きKおよび力/モーメント帰還行列が対角である。さらに、K320の対角の各要素は、ゼロに等しいか、または値において実質的に等しい。向きKの帰還利得行列の特徴によって、基本的に、制御システムが起動されるかまたは(たとえば要素がゼロであるとき)オフにされ、包括的な利得スカラ値が適用されることができるようになる。別の態様では、力/モーメントの利得行列が対角である。しかしながら、対角のすべての要素が、かなり異なる値を有してもよい。
【0048】
本発明の別の実施形態では、装置の安定性および力を最適化するために、滑り利得方式が実施されてよい。高利得は、たやすい可動性および物体の操作のために望まれる。システムの非荷重支持部分に使用される。しかしながら、高利得の結果、力が不十分になる。低利得は、重いペイロードの下での不安定さを防ぐために望まれ、システムの荷重支持部分に使用される。しかしながら、低利得の結果、可動性および速度が減少する。作動の際に、システムの荷重支持部分と非荷重支持部分との間で、利得を滑らせることによって、装置は、力および可動性を最適化する。歩行サイクルの片方の脚部または2つの脚部での支持部分、ならびにこのサイクルの揺動期におけるシステムの性能を改善するため、滑り利得アルゴリズムが、以下のように、制御利得を計算するために実施可能であり、
(s)=KLOW+(KHIGH−KLOW)f(s
(5)
式中、j=FまたはSであり、力/モーメント(F)利得、「向きK」(S)、およびi=RまたはL(右または左の脚)を示し、式中、KHIGH、KLOWは利得の上下の限界値である。s(すなわち以前に定義された基準化係数SまたはS)が0から1へと変化するにつれて、関数f(s)は1から0へと単調に変化する。このような滑り利得アルゴリズムの一例が図7に示され、下記に方程式6として示される。
SlideGain=KHIGH+S*(KLOW−KHIGH)/(thresh+ε)
(6)
左脚の滑り利得は方程式6で上記に示される。しかしながら、同様の式(SをSによって置き換え)が、右脚に使用されてもよい。threshはこれを超えると利得が一定となる値であり、εは約10−3から10−6の小さい数であり得る。
【0049】
滑り利得方式が実施可能である一例は、ロボット装置の変位が望まれる場合の制御する界接面の力の状態の関係における変化を感知することを含む。その後、システムは、外骨格の動かない荷重支持部分をロックし、外骨格の動く非荷重支持部分をアンロックする。続いて、制御システムは、重力を含む、以前に感知された制御する界接面の力の状態の関係を回復するために必要である、外骨格のアンロックされた非荷重支持部分の関節の回転力を計算する。システムはまた、人体に掛かる外骨格の力が確実にゼロになるのに必要とされる、外骨格のロックされた荷重支持部分の関節の回転力を計算する。制御システムは、信号を発生して、装置の作動装置の構成要素に送信し、計算された関節の回転力で、外骨格のアンロックされた非荷重支持部分を変位させる。制御システムはまた、外骨格のロックされた荷重支持部分における計算された関節の回転力を維持するように、外骨格に連結された変位装置を作動させる。外骨格の関節がロックまたはアンロックされる角度は、上述の計算された利得の関数である。
【0050】
さらに図9を参照すると、最終的な計算されたトルクτ220は、計算された速度の利得K360および位置の利得K370に対する、所望のロボットの関節速度θ340および所望の関節位置θ350を計算するために用いられる。次に、前記値は、ロボットシステム100の中央制御ユニット160に送信され、センサと人体の四肢と間における、制御する界接面の力の状態の関係を維持するために実施される。
【0051】
上記の用途に加えて、本発明は、操作者を固定動力源または制御源につなぐことなく、強度、スタミナ、および精度の強化を必要とする多くの用途において使用可能である。
装着式の人間外骨格が人体の動きと協調して動くのを可能にする方法が、本明細書に考慮および開示される。本方法は、人間の外骨格を装着するステップと、外骨格に連結された複数の力センサと人体の四肢の近くの接触位置との間における力の状態を感知するステップとを含む。さらに、本方法は、外骨格の一部分に対する重力の方向を計算するステップと、外骨格の人間/力の応答値を手動で調整するステップとを含む。さらに、本方法は、力センサに対して人体の一部分を変位させるステップと、力の状態における変化を感知するステップとを含む。本方法はまた、外骨格の動かない荷重支持部分をロックするステップと、外骨格の動く非荷重支持部分をアンロックするステップと、重力を含む力の状態を回復するのに必要とされる、外骨格のアンロックされた非荷重支持部分の関節の回転力を計算するステップと、人体に掛かる外骨格の力が確実にゼロになるのに必要とされる、外骨格のロックされた荷重支持部分の関節の回転力を計算するステップと、少なくとも計算された関節の回転力からなる信号を発生するステップと、を含む。さらに、本方法は、前記外骨格に連結された作動装置システムに前記信号を送信するステップと、外骨格のアンロックされた非荷重支持部分を計算された関節の回転力で変位させるように、前記信号に応答して、外骨格に連結された変位装置を作動させるステップと、を含む。さらに、本方法は、外骨格のロックされた荷重支持部分において、計算された関節の回転力を維持するように、前記信号に応答して、外骨格に連結された変位装置を作動させるステップと、人体の動きを模倣するように上記のステップを繰り返すステップと、を含む。
【0052】
上述の構成は、本発明の原理のための用途を例示するものであることを理解されたい。請求項に述べられた本発明の原理および概念から逸脱することなく、多くの修正例が実施可能であることが、当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1A】以下の図に表される断面を示した、ロボット骨組、中央制御ユニット、力センサ、および駆動システムの一実施形態の前面図の上部分である。
【図1B】以下の図に表される断面を示した、ロボット骨組、中央制御ユニット、力センサ、および駆動システムの一実施形態の前面図の下部分である。
【図2A】図1Aに示すロボット骨組の側面図である。
【図2B】図1Bに示すロボット骨組の側面図である。
【図3】ロボット骨組の足部分および関連する力センサの一実施形態を示す、図1BのA−A断面を示す図である。
【図4】ロボット骨組の足部分の一実施形態の斜視図である。
【図5】ロボット骨組の足部分の一実施形態の分解斜視図である。
【図6】ロボット骨組の股関節部分および関連する力センサの断面の一実施形態を示す、図1BのB−B断面の図である。
【図7】ロボット骨組の肩部分および関連する力センサの断面の一実施形態を示す、図1AのD−D断面の図である。
【図8】ロボット骨組の手部分および関連する力センサの断面の一実施形態を示す、図1AのC−C断面の図である。
【図9】外骨格制御システムの一実施形態を示すブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも人体の一部分に近似し、少なくとも人体の一部分に連結可能である形状にされ、前記人体による動きを模倣するように構成されたロボット骨組に使用されるロボット変位装置であって、
センサと前記人体の四肢との間の調整可能な制御する界接面の力の状態の関係を感知し、力の信号を出力するように構成される、前記ロボット骨組の四肢に沿って前記ロボット骨組に取り付けられた複数の力センサと、
前記センサから前記力の信号を受信し、前記ロボット骨組に対する重力の力および重力の方向を計算し、前記制御する力の状態の関係を維持するのに必要とされる動きの力を計算し、前記動きの力に対応する作動信号を発生して送信するように構成される、前記ロボット骨組に取り付けられた力計算システムと、
前記力計算システムからの前記送信された作動信号を継続的に受信し、前記制御する力の状態の関係を維持するために、前記ロボット骨組の一部分を変位させるように構成される、前記ロボット骨組に取り付けられた駆動システムと、を備えたロボット変位装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−82065(P2013−82065A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−248425(P2012−248425)
【出願日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【分割の表示】特願2009−520827(P2009−520827)の分割
【原出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(503455363)レイセオン カンパニー (244)
【Fターム(参考)】