説明

ローソニアイントラセルラリスの診断方法

本発明は、動物の健康の分野に関し、特にローソニアイントラセルラリスに関する。特に、本発明は、ローソニアイントラセルラリス感染を診断する方法及びローソニアイントラセルラリス特異的抗体を使用する診断試験キットに関する。本発明はまた、ローソニアイントラセルラリス感染を診断するための、前記方法または試験キットの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は動物の健康の分野に関し、特にローソニアイントラセルラリスに関する。より詳細には、本発明は、ローソニアイントラセルラリス感染を診断する方法及びローソニアイントラセルラリスに特異的な抗体を使用する診断試験キットに関する。本発明はまた、ローソニアイントラセルラリス感染を診断するための前記方法または試験キットの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
豚増殖性腸炎(porcine proliferative enteropathy(“PPE”))の原因病原体であるL.イントラセルラリスは、実質的に全ての動物(ヒト、ラビット、フェレット、ハムスター、キツネ、馬及び他の動物並びにオーストリッチ及びエミューのような様々な動物を含む)に影響する。L.イントラセルラリスは、欧州並びに米国における豚の群れにおける損害の特に大きな要因である。
【0003】
PPEの一致した性質は、腸内の感染部位における腸細胞内に、細胞質内非膜結合性湾曲バチルスが存在することである。PPEに関連する細菌は、“カンピロバクター様微生物”と呼ばれている(S.McOrist et al.,Vet.Pathol.,Vol.26,260−264(1989))。その後、原因細菌は分類学的に新規な属及び種であると同定され、学名を“Ileal symbiont(IS)intracellularis”と命名された(C.Gebhart et al.,Int’l.J.of Systemic Bacteriology,Vol.43,No.3,533−538(1993))。更に最近、これらの新規な細菌に、分類学的名称ローソニア(またはラウソニア)(Lawsonia)(L.)イントラセルラリスが与えられた(S.McOrist et al.,Int’l.J.of Systemic Bacteriology,Vol.45,No.4,820−825(1995))。これらの三種の名前は本明細書において同じ微生物を意味するのに互換的に使用されている。L.イントラセルラリスは、偏性細胞内細菌であり、従来の細胞を含まない媒体上で通常の細菌学的な方法により培養することができず、生育のために結合した上皮細胞が必要であると考えられてきた。S.McOrist et al.,Infection and Immunity,Vol.61,No.19,4286−4292(1993)及びG.Lawson et al.,J.of Clinical Microbiology,Vol.31,No.5,1136−1142(1993)には、慣用的に用いられている組織培養フラスコ中でIEC−18ラット腸上皮細胞単層を用いたL.イントラセルラリスの培養について記載されている。更に、H.Stills,Infection and Immunity,Vol.59,No.9,3227−3236(1991)には、慣用的な組織培養フラスコ中で腸407ヒト胚性腸細胞単層とGPC−16モルモット結腸線癌細胞単層を用いることについて記載されている。
【0004】
特に、L.イントラセルラリスは、当該技術分野において公知の方法、好ましくは米国特許第5,714,375及び5,885,823に記載の方法により培養することができる。例えば、培養細胞は第一に、L.イントラセルラリス細菌を含む接種材料を接種して、細胞を細菌感染させてもよい。様々な細胞系を用いて本発明を実施することができ、そのような細胞系としては以下に限定されないが、IEC−18(ATCC1589)−ラット腸上皮細胞、HEp−2(ATCC23)−ヒト類表皮カルシノーマ細胞、McCoys(ATCC1696)−マウス(非特定)細胞、BGMK(Biowhittaker #71−176)−バッファローミドリザル腎臓細胞、及びブタ腸上皮細胞が上げられる。好ましい培養細胞はHEp−2、McCoysまたはIEC−18細胞である。
【0005】
接種する前に、培養細胞を用いる場合には、細胞は単層形状であってもよい。単層を形成するには、細胞を慣用的なフラスコ内に播種してもよい。各フラスコには、フラスコまたはローラーボトルの25、75、150、850cm2あたり、通常1×105〜10×105の細胞を、生育媒体と混合して播種する。生育媒体はいずれの生育媒体でもよく、窒素源、選択した培養細胞のために必要な生育因子、及び炭素源(例えば、グルコースまたはラクトース)が挙げられる。他の市販されている媒体でも良好な結果を得られるが、好ましい媒体はハム(Ham’s)F12と1〜5%ウシ胎仔血清で強化されたDMEMである。
【0006】
L.イントラセルラリスの培養は、培養細胞を一定の生育段階に維持することにより、良好に行うことができる。従って、培養細胞単層は接種時の約20〜約50%の密度(confluency)でなければならない。好ましくは、細胞は接種時の約30%〜約40%の密度でなければならず、最も好ましくは、約30%の密度である。
または、以下に記載するように、接種する前に細胞を懸濁液中で生育させてもよい。好ましくは、細胞は最初に、接着型システム、例えばローラーボトルシステム、中で単層の形態で100%の密度まで生育させ、次に3〜3000リットルに移して、懸濁中で生育させる。
接種材料は、感染ブタまたは他の動物から得たL.イントラセルラリスの培養物であってもよい。
【0007】
接種材料は、PPEに感染したブタまたは他の動物の回腸の粘膜をこすり落とすことにより作成した腸ホモジネートであってもよい。腸ホモジネートを作成する場合には、培養のために選択する回腸動脈部分は、内臓の全体的な肥厚を伴う重篤な障害を示すべきである。細菌は脆弱な性質を有するため、試料は解剖後できるだけ迅速に−70℃に保存することが好ましい。L.イントラセルラリスが耐性である抗生物質、例えばバンコマイシン、アンホテリシンBまたはアミノグリコシド系抗生物質(2〜3例をあげると、ゲンタマイシン及びネオマイシン)を接種材料に添加して、L.イントラセルラリスの生育を行う間、細菌による汚染を抑制することが好ましい。接種材料は精製された培養であるかまたは腸ホモジネートであり、培養細胞の接種は、当該技術分野で知られている様々な技術により行うことができる。
【0008】
細菌及び/または接種した培養細胞を次に、低下した溶解O2濃度の下でインキュベートする。10%より高い溶解酸素濃度では、L.イントラセルラリスの生育は、最良よりは低く、この範囲外の酸素濃度で最終的に生じる生育の停止を伴う。好ましくは、細菌および/または接種細胞を、約0%〜約10%の範囲の溶解酸素濃度でインキュベートする。さらに好ましくは、細菌および/または細胞を、約0%〜約8%の範囲の溶解酸素濃度でインキュベートし、最も好ましくは約0%〜約3.0%の範囲の溶解酸素濃度で行う。
【0009】
二酸化炭素の適切な濃度も、L.イントラセルラリス.の適切な生育に重要である。0%より高く、4%より低い二酸化炭素濃度では、最適な生育は起こらず、この範囲外の二酸化炭素濃度において最終的に起こる生育の停止が起こる。好ましくは、二酸化炭素濃度は、約6%〜約10%であり、最も好ましくは約8.8%である。
【0010】
更に、細胞を約73%〜約96%の水素濃度でインキュベートすることが好ましい。窒素を、存在する水素の一部または全てに置き換えて用いてもよい。細胞を、約0〜約8.0%のO2、約8.8%のCO2、及び約83.2%のH2の存在下でインキュベートすることが最も好ましい。
【0011】
接種した細胞を、適切な水素、酸素及び二酸化炭素濃度を有しかつインキュベーションの間細胞を懸濁状態にさせる、二重ガスインキュベーターまたは他のガスチャンバー中でインキュベートしてもよい。チャンバーは、懸濁液中に接種された細胞を維持するための手段、ガスモニター、及び適切なガス濃度を供給し、維持するための供給源を有していなければならない。インキュベーション温度は、30℃〜約45℃の範囲であり、より好ましくは約36℃〜約38℃の範囲である。最も好ましくは、温度は約37℃である。培養と希釈(attenuation)に必要な器具は、本明細書を参照すれば、当該技術分野における当業者あるいは通常の技術者に容易に入手可能である。本発明を行うのに適切な器具の一例は、二重ガスインキュベーター、例えば、懸濁液中に細胞を維持するスピナーフラスコとつないだモデル480(Lab−Line,Melrose Park,IL)である。現時点の好ましい器具としては、媒体を含みかつ適切な濃度のスパージングガスを介してあるいは他の機械的攪拌手段により培養細胞を懸濁液中に維持することができ及び連続的に媒体中の溶解O2レベルをモニターすることができる、攪拌プレートまたは回転振とう機、発酵槽、バイオリアクターを含む。ニューブルンズウィック(New Brunswick)、ブラウン(Braun)及び他の企業がこの目的に適切な発酵槽及びバイオリアクターを作成する。
【0012】
インキュベーションの間、接種した細胞を懸濁状態で維持することにより、細胞、そしてL.イントラセルラリスの最大成育を、生育媒体及び水素、酸素及び二酸化炭素の適切な混合物への各細胞の暴露を増加させることにより、達成することができる。培養細胞を攪拌し、当該技術分野において知られている様々な方法により懸濁状態に維持する。そのような方法としては、例えば、培養フラスコ、ローラーボトル、メンブレン培養、バイオバッグ、ウェーブ(WAVETM)バイオリアクターシステム及びスピナーフラスコが挙げられる。内部が二重ガスインキュベーターまたは同様の装置であるスピナーフラスコ中で細胞をインキュベートすることにより、インキュベーションの間、細胞を懸濁状態で維持していもよい。“スピナーフラスコ”という用語は、本明細書では、パドル、プロペラまたは培養物を攪拌して細胞を懸濁状態で維持する他の手段を有するフラスコまたは他の容器を意味する。
【0013】
または、接種した細胞を、細胞がコンフルエント(集密)となるまでインキュベートし、次に細胞を生育媒体を含むスピナーフラスコ中にいれ、フラスコを回転させながら二重ガスインキュベーター中でインキュベートする。好ましくは、接種した細胞を集めるかまたはトリプシン処理を行い、スピナーフラスコ中へ継代培養する。これは当該技術分野において知られている様々な方法、例えば細胞スクレーパーを用いて細胞を引き離す方法、により行うことができる。一度、細胞をスピナーフラスコに導入すれば、スピナーフラスコのパドルを通常約30〜60rpmの範囲で、磁気攪拌プレート上で攪拌させ、感染細胞を懸濁状態で維持する。
【0014】
培養したL.イントラセルラリスの一部を次に、フレッシュな培養に継代して、L.イントラセルラリスバクテリアの生産を向上させる。用語“継代”またはその類語は本明細書において、培養したL.イントラセルラリスの一部を、フレッシュな培養細胞に移し、フレッシュ細胞を当該バクテリアにより感染させることをいう。用語“フレッシュ”は、本明細書では、L.イントラセルラリスに感染していない新鮮な細胞を意味する。そのような細胞の日齢は、平均して、約1日より長くないことが好ましい。
【0015】
懸濁培養中のL.イントラセルラリスの継代は、原培養の一部を除去し、それをフレッシュな培養細胞を含む新しいフラスコ中へ添加することにより、行ってもよい。もし、原培養中の1mlのバクテリア数が多い場合、例えば、約104バクテリア/mlより多い場合には、フレッシュな細胞を含む新しいフラスコへ、感染フラスコから約1〜10%(体積/体積)の培養物を添加することが好ましい。これは50〜100%の細胞が感染した場合に好ましく行われる。もし、50%より少ない細胞が感染した場合には、継代は好ましくは、培養を1:2にわけて新しいフラスコへいれ、フレッシュ媒体を添加することにより体積をスケールアップする。いずれの場合も、従来の単層培養の継代と対照的に、細胞溶解及び他の工程を必要としない。
【0016】
間接蛍光抗体(IFA)染色、TCID50または他の同等の方法により測定することにより、培養細胞の十分な成育及びその後のL.イントラセルラリスによる感染の後、少なくとも一部の培養L.イントラセルラリスバクテリアを次に回収する。本明細書の記載を考慮して、当業者に知られている様々な方法により懸濁液からバクテリアを分離することにより回収工程を行ってもよい。好ましくは、全てまたは一部の懸濁液の内容物を遠心分離して培養細胞のペレットとし、得られた細胞ペレットを再懸濁し、さらに感染細胞を溶解することにより、L.イントラセルラリスバクテリアを回収してもよい。典型的には、少なくとも一部の含有物を約3000xgで約20分間遠心分離し、細胞及びバクテリアをペレット化する。ペレットを次に、例えば、シュークロース−ホスフェート−グルタメート(SPG)溶液中に再懸濁し、25ゲージの針に約20回通し、細胞を溶解させる。更に精製が必要な場合には、試料を約145xgで約5分間遠心分離して、細胞の核と残渣を除去することができる。上澄みを次に約3000xgで約20分間遠心分離して、得られたペレットを適する希釈剤(例えばウシ胎児血清を含むSPG)中に懸濁するか(凍結乾燥、冷凍処理に適した回収バクテリアを作成するため、あるいは接種物として使用するため)、または生育媒体中に懸濁する(フレッシュ細胞への継代により適する採取バクテリアを作成するため)。
【0017】
上述したように、組織細胞の活性な成育を維持することにより、大スケール生産に有効なL.イントラセルラリスの生育が強化される。懸濁培養物を使用することにより、細胞の活性な生育の維持を大きく促進し、連続的な培養拡大及びスケールアップを可能にする。発酵槽と上述した約0〜3%の溶解させたO2を用いることにより、108バクテリア/mlまでの生育を可能にする。
【0018】
McCoysまたはIEC−18細胞を用いる場合には、ゼラチン、アガロース、コラーゲン、アクリルアミドまたはシリカビーズ、例えば、Cultisphere−G多孔性マイクロキャリア(HyClone Laboratories,Logan Utah)を生育媒体と共に添加することが好ましい。しかし、HEp−2細胞及び他の細胞は、本明細書で使用する方法に従ってマイクロキャリアを用いる必要はない。
培養維持の目的において、HEp−2培養物を用いる場合、1週間に1度の間隔で、好ましくは25%〜50%の培養物を除去し、フレッシュな媒体に置換する。マイクロキャリアまたはビーズと細胞培養物の場合には、1週間に1〜2回の間隔で、好ましくは25%〜50%の培養物を除去し、フレッシュな媒体に置換する。スケールアップの目的では、培養物に、追加の25%〜50%の媒体、またはマイクロキャリアを含む媒体を添加してもよい。
【0019】
培養細胞が感染する比率に依存して、フレッシュな細胞への継代は通常、約2〜約7日毎に起こる。培養細胞が2〜7日間に少なくとも70%が感染するとすれば、好ましくは継代は約5〜7日間毎に起こることが好ましい。
【0020】
L.イントラセルラリス抗原の診断は、今日、直接免疫蛍光法及びPCRを用いて行われる。L.イントラセルラリスに特異的な抗体の診断は、免疫蛍光法を用いて行われる。これらの方法は、面倒であり、時間がかかり、大きなスケールでのスクリーニングには適さない。
【0021】
PPEの効果的な診断はまた、原因バクテリアの培養に必要な時間により妨げられてきた。本発明により、PPE感受性の豚及び他の動物から採取した生物試料中のL.イントラセルラリスの、迅速かつ正確なアッセイを促進する診断ツールの開発が可能になった。
従って、本発明の技術的課題は、改良されたL.イントラセルラリス疾病の診断方法を提供することである。
【発明の開示】
【0022】
本発明の簡単な要約
本発明は、動物の健康の分野、特にローソニアイントラセルラリスに関する。特に、本発明はローソニアイントラセルラリス感染を診断する方法、及びローソニアイントラセルラリス特異的抗体を用いる診断試験キットに関する。本発明はまた、ローソニアイントラセルラリスの感染を診断するための、前記方法または試験キットの使用に関する。
【0023】
発明の詳細な説明
本発明の実施態様の説明の前に、本明細書及び請求項において使用される用語について以下のように定義する。単一のものとして表現される場合でも(英文では“a”,“an”,“the”を用いて表現されるもの)、文脈から明確にそのように理解できない限り、複数のものを含むものとする。従って、例えば、“バクテリア(単数、a bacterium)”は複数のバクテリア(bacteria)を含み、“細胞(単数、cell)”は一または複数の細胞並びに当業者に既知のその等価物を含む。以下、同様である。他に定義されない限り、本明細書で使用する全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野における通常の技術者により一般に理解されるものと同じ意味で用いられる。本明細書で記載されるのと同様または等価ないずれの方法及び材料も、本発明の実施または試験において使用することが出来るが、好ましい装置及び材料を以下に述べる。本明細書において述べる全ての文献に報告されているように、細胞系、ベクター、及び方法を記載し開示する目的で、これらの文献を全て本明細書に組み入れるものとする。そのような開示が本発明の先行技術であることを認めるものではない。
【0024】
本明細書において、用語“L.イントラセルラリス”は、細胞内湾曲グラム陰性バクテリア(C.Gebhart et al.,Int’l.J.of Systemic Bacteriology,Vol.43,No.3,533−538(1993)及びS.McOrist et al.,Int’l.J.of Systemic Bacteriology,Vol.45,No.4,820−825(1995)にその詳細が開示されている。これらの文献を全て本明細書に組み入れるものとする。);当業技術分野及び本明細書に開示される、PPE感染豚または他の動物から得られる原因バクテリア;及び自然あるいは人工的に得られる、上記バクテリアの変異体若しくは変異株、並びにDNA、RNA及びL.イントラセルラリスに特異的なバクテリアタンパク質(ベクター中あるいはインビボ適用後に発現されたタンパク質を含む)、及びさらにL.イントラセルラリスのフラグメントまたは抗原性の誘導体、を含む。この用語はまた、以下に定義する、改変単離体及び弱毒化単離体を含む。
【0025】
本明細書において、用語“改変単離体”は、細胞培養または他の技術における培養及び継代技術に従い製造され、抗原製造のために複製したL.イントラセルラリス単離体を意味する。本明細書において、用語“弱毒化単離体”は、細胞培養または他の技術における培養及び継代技術に従い製造され、宿主動物に投与した場合、免疫原性を維持しながら弱毒化を達成するL.イントラセルラリス単離体を意味する。
【0026】
本明細書において、用語“大スケール培養”は、L.イントラセルラリスの培養レベルが、約2.0〜3.0リットルより多い場合を意味し、100リットル以上のスケールの生産を含む。本明細書において“培養”は、L.イントラセルラリスの生育、再生産および/または増殖を促進するプロセスを意味する。
【0027】
発明の開示
上記技術課題は、請求項中の記載及び実施態様により解決される。
本発明の目的は、臨床前(病状発現前)または臨床におけるL.イントラセルラリス感染の診断方法を提供することである。さらに、L.イントラセルラリスの免疫応答を検出すること、及びL.イントラセルラリス疫学のためのツールを提供することである。
【0028】
上記目的は、本明細書及び請求項の観点に従う本発明、すなわち臨床前または臨床におけるL.イントラセルラリス感染の診断方法、により達成された。
本発明は、L.イントラセルラリスに対する抗体の検出、及びL.イントラセルラリスそれ自身の検出に関する。そのような抗体は、当業者に既知のいずれの抗体型をも含み、特にサブタイプIgA、可溶性IgA、IgM、IgG(IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3)、及び更にIgD、IgEである免疫グロブリンを含む。
本発明に従って、L.イントラセルラリスに特異的な抗体を検出するには、前記方法は下記の事実を基礎とする。
a)液体試料を哺乳類から採取する。
b)そのような液体試料のL.イントラセルラリス抗原への特異的結合を検出する。
c)得られた結果をコントロールと比較する。
【0029】
上述したように、L.イントラセルラリスは、L.イントラセルラリスのフラグメントまたは抗原性誘導体を含み、それらは上記方法において使用してもよい。
同様に、本発明に従えば、L.イントラセルラリスを検出するためには、下記の事実を基礎とする。
a)液体試料を哺乳類から採取する。
b)そのような液体試料のL.イントラセルラリス抗体への特異的結合を検出する。
c)得られた結果をコントロールと比較する。
【0030】
液体試料は、唾液、汗、尿、血液、分泌物、排出物、または当業技術分野の専門家に既知の他の体液試料を含む、いずれの体液を含んでいてもよい。好ましい実施態様において、液体試料は、採集容器(尿または他の液体用)、シリンジ/収集チューブ(血液用)またはある種の収集綿棒(唾液、汗、等)のいずれかを用いて収集される。もし工程中の試料がa)血液である場合には、血清またはプラズマをその血液試料から単離し、工程b)を、液体試料の代わりに血清またはプラズマで行うことが好ましい。次に工程c)を上述したように行う。
【0031】
好ましい実施態様において、本発明の方法は免疫試験である。免疫試験では、L.イントラセルラリスに特異的なモノクローナル抗体またはポリクローナル抗血清を用いる。本発明の免疫試験は、ELISA試験(酵素結合した免疫吸着剤アッセイ)またはいわゆるサンドイッチELISA試験、ドットブロット、免疫ブロット、放射線免疫試験(放射線免疫アッセイ、RIA)、拡散−ベースのオークタロニー試験またはロケット免疫蛍光アッセイのような当業技術において既知の検出方法を含む。他の免疫試験は、間接または直接免疫蛍光抗体試験(“IFA”)である。他の免疫試験は、いわゆるウェスタンブロット法(ウェスタン転写法またはウェスタンブロッティング法ともいう)である。ウェスタンブロット法の目的は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離したタンパク質またはポリペプチドを、ニトロセルロースフィルターまたは他の適切な担体上に転写し、同時にゲル電気泳動から得られるタンパク質またはポリペプチドの相対位置を保持することである。ウェスタンブロット法は、次に、検討中のタンパク質またはポリペプチドに特異的に結合する抗体とインキュベートを行う。平均的な当業者はこれらの検出方法を用いて、本発明を実施することができる。当業者が上記方法及び他の検出方法を見出すことができる文献は以下のとおりである:An Introduction to Radioimmunoassay and Related Techniques,Elsevier Science Publishers(アムステルダム、オランダ)(1986); Bullock et al.,Techniques in Immunocytochemistry,Academic Press(オーランド、フロリダ)Vol.1(1982),Vol.2(1983),Vol.3(1985); Tijssen,Practice and Theory of Enzyme Immunoassays:Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology,Elsevier Science Publishers(アムステルダム、オランダ)(1985)。固形及び液体タンパク質チップ技術またはラベル化または非ラベル化試薬を用いるマイクロアレー技術もまた、本発明に従う免疫試験法である。そのような試験は、例えば、下記文献に広く記載されている:Kozak KR,et al.,Identification of biomarkers for ovarian cancer using strong anion−exchange ProteinChips:potential use in diagnosis and prognosis..Proc Natl Acad Sci U S A.2003 Oct 14;100(21):12343−8(2003),またはby Fulton,RJ.,et al.,Advanced multiplexed analysis with the FlowMetrix(TM)system.Clinical Chemistry 43(9),1749−1756(1997)。
【0032】
本発明は、L.イントラセルラリス感染を検出する診断試験キットに関連する。前記キットは、本明細書において述べる臨床前または臨床におけるL.イントラセルラリス感染の診断方法を行うのに必要な全ての要素を含む。本発明は更に、L.イントラセルラリスに特異的な抗体を含む診断試験キットに関する。
本発明は更に、本発明の抗体がポリクローナルである診断試験キットに関する。
本発明はまた、本発明の抗体がモノクローナルである診断試験キットに関する。
【0033】
診断試験キットは、本発明に従う診断法のための全ての成分を集めたものである。本発明の方法を行うための他の要素の例としては(網羅的なリストではない)、96ウェルプレートまたはマイクロタイタープレート、テストチューブ等の容器、他の適切な容器、面及び支持体、ニトロセルロースフィルターのようなメンブレン、洗浄試薬及びバッファーが挙げられる。診断試験キットは、結合した抗体を検出しえる試薬を含んでいてもよい。試薬の例としては、ラベル化二次抗体、発色団、酵素(例えば、抗体と結合したもの)及びその基質または抗体を結合しえる他の基質が挙げられる。
【0034】
本明細書に記載の、あるいは当業者に既知の、L.イントラセルラリスバクテリア、またはそのバクテリアから誘導される成分を、ELISAまたは他の免疫アッセイ(たておば、免疫蛍光抗体試験(“IFA”)の抗原として用いて、当該バクテリアに感染していると疑われる動物の血清または他の体液中のL.イントラセルラリスに対する抗体を検出することができる。本発明において好ましい免疫アッセイは、下記例で示すようにIFAである。または、本発明のバクテリアをウェスタンブロットアッセイにおいて用いることができる。
【0035】
好ましいウェスタンブロットプロトコールは以下のとおりである。
1.SDS−PAGE、好ましくは12%SDS−PAGE上で抗原を泳動させ、ニトロセルロースメンブレン上へ転写する。
2.メンブレンをブロッキングバッファー中に2時間置く。
3.ブロッキングバッファーを除き、PBSで1分間リンスする。
4.ブロッキングバッファーにより血清を希釈し、メンブレンへ添加する。室温で2時間インキュベートする。
5.洗浄バッファーで3回洗浄する(各洗浄につき5分間)。
6.ブロッキングバッファーにより、結合した抗L.イントラセルラリス特異的抗体、好ましくはモノクローナル抗体を希釈し、メンブレンへ添加する。室温で1時間インキュベートする。
7.洗浄バッファーで3回洗浄する。
8.10分間または強力なバンドが生じるまで基質を添加する
9.PBSでリンスする。
10.風乾し、暗室に保存する。
抗体に結合させたコンジュゲートは、例えば、ホースラディッシュパーオキシダーゼ(HRP)またはアルカリホスファターゼ(AP)のような酵素である。または、発色団あるいは他の基質存在下に定量化できる検出可能な物質である。
【0036】
本発明の最も好ましい免疫試験はELISA法である。最も好ましくは、サンドイッチELISA法(=捕捉ELISA法)である。そのようなELISA法は、同じ抗原上の二つの異なるエピトープに特異的な二つの抗体を検出できるので、より特異的である。サンドイッチELISA法では、非ラベル化抗体をミクロタイタープレート上に被覆する。抗原であるL.イントラセルラリスを次に添加する。洗浄工程後、結合したL.イントラセルラリス抗原を、L.イントラセルラリスの異なるエピトープと反応性の第二のラベル化L.イントラセルラリス−特異的抗体で検出する。
被覆工程の例は以下のとおりである。例えば、ddH2O溶液中の10%シュークロース/10%正常ウマ血清中の、非ラベル化抗体でプレートを被覆し、ローソニアイントラセルラリス抗原と共にインキュベートする。プレートを次に乾燥し、密閉し、37℃で保存する。または、抗体被覆プレートを保存し、ELISAを行う際に抗原を添加する。
【0037】
本発明の好ましいELISAプロトコールは以下のとおりである(抗体被覆プレートの使用)。
1.被覆バッファーで希釈した抗原0.1ml/ウェルを添加する。4℃で18時間インキュベートする。
2.PBSで3回洗浄する。
3.プレートの各ウェルに0.25mlのブロッキングバッファーを添加する。37℃で1〜2時間インキュベートする。
4.洗浄バッファーで3回洗浄する。
5.ブロッキングバッファーで血清を希釈し、プレートの第一ウェルに0.1ml添加する。プレートにわたって連続的に1:2希釈を作成する。37℃で1時間インキュベートする。
6.洗浄バッファーで3〜5回洗浄する。
7.結合した抗−L.イントラセルラリス特異的抗体、好ましくはモノクローナル抗体、をブロッキングバッファーで希釈し、プレートのウェルに0.1ml添加し、37℃で1時間インキュベートする。
8.洗浄バッファーで3〜5回洗浄する。
9.基質を添加する。
10.分光光度計により光の吸収を測定する。
11.抗原を添加しなかったウェルをブランクとして用いる。
12.また各試験において、陽性及び陰性コントロール豚血清を使用しなければならない。
【0038】
好ましいELISA法は以下のとおり行う。例えばddH2O溶液中の10%シュークロース/10%正常ウマ血清被覆中の非ラベル化抗体で、プレートを被覆し、ローソニアイントラセルラリス抗原と共にインキュベートする。プレートを次に乾燥し、密閉し、37℃で保存する。
1.90μlバッファーを全てのウェルに添加する。
2.選択したウェル中に10μlの血清を添加する。
3.37℃で1時間プレートをインキュベートする。
4.PBSTにより3回プレートを洗浄する。
5.CDS−C+0.5M NaClで希釈した、HRPが結合した抗−L.イントラセルラリス特異的抗体、好ましくはモノクローナル抗体、100μl/ウェルを添加する。
6.37℃で1時間インキュベートする。
7.PBSTで3回プレートを洗浄する。
8.基質100μl/ウェルを添加し、室温で10分間インキュベートする。
9.50μlの停止液(stop)/ウェルを添加する。
10.分光光度計により450nmでプレートを読む。
【0039】
本発明に従う、最も好ましいサンドイッチELISAプロトコールは以下のとおりである。
1.被覆バッファーで希釈した0.1ml/ウェルのmAbを添加する。4℃で18時間インキュベートする。
2.PBSにより3回洗浄する。
3.バッファーに希釈した0.1ml/ウェル抗原を、プレートの各ウェルに添加する。37℃で1〜2時間インキュベートする。
4.洗浄バッファーにより3回洗浄し、および/または0.25mlのブロッキングバッファーをプレートの各ウェルに直接添加する。37℃で1〜2時間インキュベートする。
5.洗浄バッファーにより3回洗浄する。
6.ブロッキングバッファーで血清を希釈し、プレートの第一ウェルに0.1mlを添加する。プレートを横方向に、連続1:2希釈を行う。37℃で1時間インキュベートする。
7.洗浄バッファーで3〜5回洗浄する。
8.結合した抗L.イントラセルラリス特異的抗体、好ましくはモノクローナル抗体、をブロッキングバッファーにより希釈し、プレートのウェルへ0.1mlを添加し、37℃で1時間インキュベートする。
9.洗浄バッファーにより3〜5回洗浄する。
10.基質を添加する。
11.分光光度計により光の吸収を測定する。
12.抗原を添加していないウェルをブランクとして使用する。
13.陽性及び陰性コントロール豚血清を、各試験において使用する。
【0040】
本明細書における抗原は、上記で定義したL.イントラセルラリスである。mAbは、L.イントラセルラリスに特異的なモノクローナル抗体に関する。好ましくは、そのような抗体は後述する抗体である。
驚くべきことに、顕著な抗体が産生され、本発明のELISA法において使用された。抗体は、下記番号を有する:301:39、287:6、268:29、110:9、113:2及び268:18。全ての抗体は、L.イントラセルラリスバクテリア抗原に特異的である。好ましくは、サンドイッチELISAにおける捕捉抗体は、110:9、113:2または287:6であり、結合抗体としては268:18、268:29または287:6である。捕捉抗体としては抗体110:9が、結合抗体としては抗体268:29が、最も好ましい。上述した抗体の全ての特性を有する抗体もまた好ましい。すなわち、上述した抗体とほとんど同じ結合特性を有するか、および/または上述した抗体と比較して同じローソニアイントラセルラリス抗原に対するものか、および/または上述した抗体と比較して同じエピトープを認識するものに関する。
【0041】
本発明の抗体は、ハイブリドーマ細胞により生産される。本発明の前記ハイブリドーマ細胞は、アプライドマイクロビオロジーアンドリサーチセンター(the Centre for Applied Microbiology and Research(CAMR))と欧州細胞培養コレクション(European Collection of Cell Cultures(ECACC),Salisbury,Wiltshire SP4 OJG,UK)に、ブダペスト条約に従って寄託されている。寄託日は、2004年5月11日である。ハイブリドーマセルライン(HYBRIDOMA CELL LINE)110:9は、ECACC Ace.No.04092204として登録されている。ハイブリドーマセルライン113:2は、ECACC Ace.No.04092201として登録されている。ハイブリドーマセルライン268:18は、ECACC Ace.No.04092202として登録されている。ハイブリドーマセルライン268:29は、ECACC Ace.No.04092206として登録されている。ハイブリドーマセルライン287:6は、ECACC Ace.No.04092203として登録されている。ハイブリドーマセルライン301:39は、ECACC Ace.No.04092205として登録されている。
【0042】
本発明は更に、下記実施例により説明される。下記実施例は、例示の目的においてのみ示されるものであって限定するものではない。本発明の他の改変は、当業者に自明である。本明細書で引用する全ての文献及び特許文献を本明細書に全て組み入れるものとする。
【実施例】
【0043】
実施例1
1.0 材料
抗ローソニアハイブリドーマ細胞系:372:13,113:2,268:18,287:6,110:9,268:29,301:39.
ハイブリドーマ細胞培養のための器具と媒体
モノクローナル抗体(mAb)の精製とHRP結合のための器具とバッファー
ELISAのための器具と溶液
ローソニア抗原SF1289 N343 12/20/00
ローソニア陽性血清:lot#052902pig#26(実験的感染)
lot#052902pig#69(ワクチン接種)
ローソニア陰性血清:p 25.8#273 Day 52 6−30−95
116705
【0044】
1.1 方法
モノクローナル抗体の作成を、スバノババイオテック(Svanova Biotech)における標準操作方法に従い、行った。
1.1.1 ハイブリドーマ細胞の培養とHRP結合モノクローナル抗体の作成
−ハイブリドーマ細胞系を確保するために、各細胞系につき15バイアルづつ作成し、−135℃で保存した。
−各ハイブリドーマ細胞系の1バイアルを解凍し、細胞を細胞培養フラスコ中で生育させた。
−各細胞系からの500ml〜1000 mlの上澄みを精製し、ホースラディッシュパーオキダーゼに結合した。
【0045】
1.1.2 ブロッキングELISA法
精製し、かつHRP結合したmABについて、ELISA法によりローソニア陽性豚血清によりブロックされる能力を試験した。
−ELISAプレートを、希釈率1/200、100μl/ウェルでローソニア抗体により被覆した。
−豚血清を1/10、100μl/ウェルに希釈した。
−HRP結合mAbを希釈し、添加した(100μl/ウェル)
結果を、下記式に従う抑制率(PI)で表した。
PI=1−(OD試料/ODmAb)x100.
【0046】
1.2 結果
1.2.1 ハイブリドーマ細胞の培養とHRP結合モノクローナル抗体の作成
−1つを除き、全てのmAbを首尾よく精製し、HRPと結合した。これらは良好な生産能力を有していた。
−mAb372:13は低い生産能力を有していた。このmAbはHRPと結合できず、そのためブロッキングELISA法において試験できなかった。
1.2.2 ブロッキングELISA法
−二つの陽性血清(#26,#69)及び二つの陰性血清(25.8#273,116705)を実験で使用した。
−実験的に感染した血清(#26)は、全ての6つのHRP結合mAbを抑制したが、それぞれ異なるレベルであった。ワクチン接種した豚からの血清はmAbをより低い程度で抑制した。
−陰性血清は全く抑制しないか非常に低い抑制を示した。
結果を下記表及び図1に示す。
【0047】
mAb
血清 301:39 110:9 268:29 287:6 113:2 268:18
#26(実験的)
+ 57 45 78 74 42 72
#69(ワクチン接種)
+ 18 23 52 43 45 25
25.8#273
− 7 3 27 20 14 21
116705
− −7 −9 −24 −13 18 −19
【0048】
1.3 ディスカッション
本研究の結果は、試験したモノクローナル抗体の一以上がローソニアイントラセルラリスに対するブロッキングELISA試験に適することを明確に示している。MAb268:29,287:6及び268:18は、陽性及び陰性血清の間の最も明確な差異を示している。すなわち、これらはブロッキングELISAの開発における強力な候補である。
【0049】
実施例2
2.0 要約
ローソニアイントラセルラリスに対する抗体検出のための、サンドイッチb−ELISAプロトタイプの開発及び確立:
免疫蛍光試験IFAを標準として使用して、感度及び特異性を計算した後、以下を結論付けることができる。
−捕捉mAb110:9は、陽性及び陰性試料間に明確な差異を与える。
−検出mAb268:29 HRPは、陽性及び陰性血清間に明確な差異を与え、100%の感度と特異性を示す。
−プロトタイプは下記を推奨する:
−ヌンクマキシソープストリップC−8(Nunc maxi−sorp strips C−8)で被覆した、mAb110:9を捕捉mAbとする。
−抗原(Ag):ローソニアイントラセルラリス培養物(好ましくはR&D、Blで製造された濃縮物)
−0.5M NaCl/PBSTで1/10に希釈された血清試料。37℃で1時間インキュベートする。
−0.5M NaClを含むCDS−Cバッファー中で凍結乾燥された、HRP結合mAb268:29。37℃で1時間インキュベートする。
−基質K−Blue Max。室温で10分間インキュベートする。
−スバノバ停止液。
【0050】
2.1 材料及び方法
ELISA法を下記手順に従い、行った。
2.1.0 ELISA法
−90μlのバッファーを全てのウェルに添加する。
−10μlの血清を選択したウェルに添加する。
−プレートを37℃で1時間インキュベートする。
−プレートをPBSTで3回洗浄する。
−CDS−C+0.5M NaClで希釈したHRP結合mAbを100μl/ウェルの濃度で添加する。
−37℃で1時間プレートをインキュベートする。
−PBSTでプレートを3回洗浄する。
−基質を100μl/ウェルの濃度で添加し、室温で10分間インキュベートする。
−50μl/ウェルの停止液を添加する。
−プレートについて分光光度計により450nmの吸収を測定する。
結果を1−OD値または2−PI(抑制率)値、すなわち、100−試料OD/mAbOD×100、として示した。
【0051】
2.1.1 試験1(ELISA030922,030923x2)
mAb 110:9,113:2,301:39,287:6,268:29、300ng/ウェルにより被覆したC−8マキシストリップ。
10% 2251 HAS(正常ウマ血清),10%シュークロース/UHP H2Oによるストリップのブロッキング。150μl/ウェル、室温で30分間インキュベート。
PBSTにより1/10に希釈したAg#030619、100μl/ウェル。4℃で3時間インキュベート。
37℃で3時間乾燥したストリップ。4℃に保存。
血清:IFA陽性:#26,#69。IFA陰性:#6,C1,D1,E1。0.5M NaCl/PBSTにより1/10に希釈。
結合体:268:18,113:2,301:39,110:9,287:6,268:29 HRP 0.5M NaCl/PBST中に希釈。
全捕捉mAbを、それ自身を除く全てのHRP結合mAbに対して試験した。
【0052】
2.1.2 試験2(ELISA030924)
試験1に従い、110:9,113:2及び287:6により被覆したストリップ。
血清:IFA陽性:#26,#69。IFA陰性:#6,C1,D1,E1。0.5M NaCl/PBST中に1/10に希釈した。
HRP結合mAb268:18,268:29,287:6。0.5M NaCl/CDS−C(結合体を凍結乾燥するための標準バッファー(生産におけるスバノバとして))中に希釈。
【0053】
2.1.3 試験3(ELISA030925)
試験1に従い、110:9,113:2及び287:6により被覆したストリップ。
血清:24血清(IFA陽性10,IFA陰性10及び不明4)を試験した。希釈:0.5M NaCl/PBST中1/10。
結合体:268:18 HRP 0.5M NaCl/CDS−C中に希釈。
【0054】
2.1.4 試験4(ELISA030930,031002,031008)
試験1に従い、110:9により被覆したストリップ。
血清:21 IFA陽性及び69 IFA陰性。希釈:0.5M NaCl/PBSTにより1/10に希釈。
結合体:HRP結合268:18及びHRP結合268:29を0.5M NaCl/CDS−Cで希釈。
【0055】
2.2 結果
2.2.1 試験1(ELISA030922,030923x2)
結合体268:18、268:29、287:6を伴う捕捉mAb110:9,113:2及び287:6は、サンドイッチb−ELISAに対する最良の候補と考えられる。これらの組合せは、陽性血清への最良のブロッキング容量を示したからである。血清番号#6は、ほとんどの試験において陽性を示した。以前に開発されたb−ELISAプロトタイプにおいてこの血清が陽性を示したことからこのことが推測された。
【0056】
2.2.2 試験2(ELISA030924)
この試験は、結合体の凍結乾燥に使用された標準バッファーを使用できることを確認するために、主に行われた。結果は、ブロッキングが陽性血清により達成されることを示している。最良のブロッキングは、検出mAb268:18または268:29によるものであった。
【0057】
2.2.3 試験3(ELISA030925)
捕捉mAb110:9は、陽性及び陰性試料を最も明確な区別するため、最良の選択であることが見いだされた。
【0058】
2.2.4 試験4(ELISA030930,031002,031008)
得られたOD及びPI値は添付5に記載されている。OD値をIFAの結果に対してプロットすると、HRP結合mAb268:29は、100%感度及び特異性で陽性と陰性を最も明確に区別する。mAb268:18もまた、100%の感度と特異性を示すが、陽性と陰性試料の面積が小さい。PI値をプロットすると、mAb268:18はカットオフ20.9において、感度が95.7であり、特異性が100%である。一方mAb268:29は、カットオフ28.6において、感度及び特異性共に100%である。
【0059】
2.3.ディスカッション
免疫蛍光試験IFAに対する感度及び特異性を計算した後、以下を結論づけることができる。
−捕捉mAb110:9は、陽性及び陰性試料の間の明確な差異を与えるため、最良の選択である。
−HRPを結合した検出mAb268:29は、100%の感度及び特異性をもって、陽性と陰性の明確な区別を与えるので、最良の選択である。
プロトタイプは下記を推奨する。
−捕捉mAbとしてmAb110:9。ヌンクマキシ−ソープストリップC−8で被覆したもの。
−Ag:ローソニアイントラセルラリス培養物(好ましくはR&D、Blで製造された濃縮物)
−0.5M NaCl/PBSTにより1/10に希釈した血清試料。37℃で1時間インキュベート。
−HRP結合mAb268:29。0.5M NaClを含むCDS−Cバッファー中で凍結乾燥したもの。37℃で1時間インキュベート。
−基質K−Blue Max。室温で10分間インキュベート。
−スバノバ停止液
【0060】
実施例3
3.1要約
加速安定性試験は、ローソニアイントラセルラリス抗原が捕捉されたELISAプレートが、少なくとも一年の安定性を有すること、及びローソニアHRP結合体268:29が凍結乾燥形態で6〜12ヶ月の安定性を有することを示している。
【0061】
3.2 導入部
将来のローソニアイントラセルラリスELISAキットの成分の安定性を評価するために、加速安定性試験を行う必要がある。試験すべき成分を37℃で4週間保存し、その後、ELISAにおいて試験を行い、4℃で保存した成分と比較した。37℃における4週間の安定性は、約12ヶ月の貯蔵寿命を示す。この報告は、抗原捕捉ELISAプレートとHRP結合体について行った加速安定性試験について述べたものである。
【0062】
3.3 材料及び方法
プレート上での加速安定性(ELISA031024)
プレートをddH2O中の10%シュークロース/10%正常ウマ血清でブロックしたローソニアのmAb 110:9で被覆し、ローソニア抗原でインキュベートした。プレートを乾燥し、密閉し、37℃に置いた。プレートを37℃から第1週、第2週、第3週、及び第4週において取り出し、冷蔵庫内で保存した。また、参照として、全ての試験期間にわたって4℃に保存したプレートを用意した。
陽性血清#26,#69及び#06、及び陰性C2、D1及びE2を使用して、サンドイッチELISAの性能をチェックした。
HRP結合mAb268:29 lot#030120を使用した。
【0063】
凍結乾燥結合体(ELISA031027)上の加速安定性
HRP結合mAb268:29 lot#030120を、ガラスビン中でCDS−Cバッファーにより1/1000に希釈し、標準方法により凍結乾燥を行った。4つの凍結乾燥ビンを37℃で、1週間、2週間、3週間及び4週間保存した。また4℃で保存したビンも用意した。各ビンをサンドイッチELISAで試験した。
陽性血清#26と陰性血清030926を使用した。
結合抗体の1/1000希釈(“結合体希釈”)により、試験において高すぎるOD値が得られることがわかった。結合抗体はそのため、試験において正しいシグナルが得られるようにプレート中で滴定した。
【0064】
3.4.結果
プレート上での加速安定性
4℃に保存したストリップのOD値と比較して、OD値の大幅な低下は第1週の後に見られた。第1週と第4週を比べても大きな差異はない。4℃におけるPI値を見ると、第1週〜第4週の間、有意性は見られなかった。
凍結乾燥結合体の加速安定性
1/8000の“結合体希釈”において、血清#26は4週間後、0.547から0.398への低下を示し、血清030926は4週間後、1.654から0.99へ低下した。
【0065】
3.5.ディスカッション
行った加速安定性試験は、ローソニアイントラセルラリスELISAプレートが、少なくとも1年の安定性を有することを示している。抗ローソニアHRP結合268:29抗体は、4週間後、陰性血清に対してOD値において40%減少を示した。これは、結合体の不安定性を示していると考えられる。OD値を計算した場合、1年後に、1.5ミーンズにおけるシグナルと0.9のOD値の40%減少は、依然として許容できる範囲である。
【0066】
実施例4
4.1.要約
プロトタイプの開発が行われた際に使用した50試料を使用することにより、プロトタイプの検証(プレートバッチ040107)を行った。検証されたバッチにおいて、陽性血清は100%の一致を示したが、一方、検証バッチでは25陰性血清のうち2つが陽性と示された。
豚血清の代わりに、正常ウマ血清がCDS−Cバッファー中で使用できることが見出された。
0.042%PVPを含むPBSTがPBSTタブレット(PVPを含む)を用いた場合と同様な結果を示すことが見出された。
【0067】
4.2.導入部
サンドイッチELISAプロトタイプを検証するために、より多数の血清を大スケールで生産したプレートバッチで試験しなければならない。試験を、プレートバッチ040107で行った。このバッチを、プロトタイプを開発するために以前に使用された50血清試料を検査することにより試験した。
HRP結合体を凍結乾燥する際にバッファーCDS−Cを保存剤として使用する。このバッファーは豚血清を含む。CDS−Cバッファー中で使用されるべきローソニア陰性血清を見つけることが困難な場合には、代わりのものを試験するべきである。この試験において、正常ウマ血清及び胎児ウシ血清を試験した。
【0068】
このELISAにおける実験室的作業の殆どは、PBSTタブレットを用いて行ってきた。スバノバキットに含まれる20×conc.PBSTは、試験が陽性及び陰性試料を正確に区別できないので、使用することができない。タブレットと20×conc.PBSTの処方を比較すると、全ての成分は、安定因子としてタブレット中に含まれる0.042%PVP(ポリビニルピロリドンK25)を除いて、同じであった。PVPを20×PBSTに添加すると、タブレットと同じ結果が得られることが実験により示された。
【0069】
4.3.材料と方法
プロトタイプの検証(ELISA040312)
プロトタイプELISAで予め試験した50血清(バイオスクリーンから入手した)を、大スケールプレートバッチ#040107で試験を行った。0.042%PVPを含むPBST 20×concバッファーを用いた。凍結乾燥した結合体バッチ040308を用いた。
【0070】
正常ウマ血清を含むCDS−Cバッファー
試験 ELISA040203
CDS−Cバッファーを以下の成分と共に製造した:1−ブタ血清(TJ4/05Fと同様)、2−正常ウマ血清、及び3−胎児ウシ血清。バッファーをELISAの結合バッファーとして試験した。試験した血清は、グリス(gris)2,4,13及び17,1−29664,3−29664,A−27239,B−27239,#26及びC2であった。HRP結合mAb268:29 lot#030318を用いた。0.042%PVPを含む20×concPBSTを用いた。
【0071】
試験 ELISA040311
正常ウマ血清含有CDS−Cバッファーを用いて、二つの場合(040211,040308)における凍結乾燥した結合体を製造した。結合体を製造し、1/20k,1/25k及び1/30kに最終的に希釈した。新たに製造した結合体を同時に試験した。血清#26,1−29664,3−29664,A−27239,B−27239,陽性プール030926及び陰性プール030926を用いた。HRP結合mAb268:29 lot#030318を用いた。0.042%PVPを含む20×concPBSTを用いた。
【0072】
PVP含有PBST(ELISA040301)
PBSTバッファー20×濃縮物(concentrated)を1/20に希釈し、最終濃度0.042%のPVPを添加した。このバッファーを同時に、1/20に希釈した20×concPBSTとPBSTタブレット(既にPVPを含む)とを用いて試験した。このバッファーを全ての工程、すなわち、試料及び結合体の希釈バッファー並びに洗浄バッファーにおいて用いた。
血清#26,E1,1−29664,3−29664,A−27239,B−27239及びグリス13を用いた。HRP結合mAb268:29 lot#030318を用いた。結合体バッファーとして豚血清を含むCDS−Cを用いた。
【0073】
4.4.結果
プロトタイプの検証
結果は、以前に陽性であった25の全ての血清が、検証バッチにおいて陽性であることを示す。以前に陰性であった25のうち二つは陽性を示した。
正常ウマ血清を含むCDS−Cバッファー
正常ウマ血清を含む当該バッファーは、豚血清を含むものと同様の結果を示した。
凍結乾燥されたHRP結合mAbの値は、新たに製造した結合体と比較して、0.4ODで最も低下した。この低下は、凍結結合体の両方のバッチで認められた。得られたOD値に関係なく計算されたPI値はよく一致するので、試験の性能に影響していない。
PVP含有PBST
結果は、0.042%のPVPを添加した、1/20希釈した20×濃縮PBSTは、PBSTタブレットと同様の結果を示した。一方、PVPを含まず、1/20希釈された20×濃縮PBSTは誤った陰性結果を示した。
【0074】
4.5.ディスカッション
プロトタイプを開発する際に以前に使用した50血清を試験することによりプロトタイプ(プレートバッチ040107)の検証を行った。検証試験では、陽性血清については100%一致した。一方、25陰性血清のうち2つが検証バッチにおいて陽性を示した。この試験の主として重要な点は陽性試料の検出であるから、“誤った”陰性結果は許容しうる。また、以前の試験の結果が本当に正しいかはわかっていない。
【0075】
0.042%PVPを含むPBSTが、PBSTタブレット(PVPを含む)を用いた場合と同様の結果を示した。従って、将来のキットはこのバッファーを含む。PVPを含むPBSTの20×concの安定性試験は、このキットの有効性を保証するために行われるべきである。
【0076】
実施例5
5.1 導入部と目的
ローソニアイントラセルラリスに対する血清抗体の検出は、現在までIFA試験の使用により行われてきた(1)。これらの試験は、結果の解釈において、各個人の高い主観的判断によるものである。最近、L.イントラセルラリスに対する高特異的モノクローナル抗体を用いたサンドイッチブロッキングELISAが開発された。この試験のデータを、目的別に試験し、評価することができ、これにより再生産性、再現性及び比較分析を改良できる。この研究において、IFA試験に対する第一比較データが示されており、これは新試験の適切さと性能を示している。
【0077】
5.2 材料と方法
McCoy細胞培養上で生育され、マイクロタイタープレート上で特異的なモノクローナル抗体により捕捉されたL.イントラセルラリス抗原を用いて、豚血清試料中のL.イントラセルラリスに対する抗体を検出した。血清を1〜10倍に希釈して試験を行った。37℃で1時間インキュベーションした後、プレートをPBSツイン液で洗浄し、ホースラディッシュパーオキシダーゼラベル化モノクローナル抗体(捕捉抗体とは異なる)を添加した。プレートを37℃で更に1時間インキュベートした。非結合抗体を洗浄により除去した。TMB基質と共に室温で10分間インキュベーションを行った後、停止液を添加することにより反応を停止した。分光計で各ウェルについてOD450を測定した。結果を血清を含まないコントロールの抑制率として計算した。
【0078】
L.イントラセルラリスに対する抗体について、確認されたIFA試験(2)で試験された実地の301血清を用いて、新ELISA法を評価した。更に、既知の回腸炎を伴う二つの農場と回腸炎が疑われる一つの農場からの横断的試料(9歳の群から10試料づつ)を用いて、IFAと比較した、ELISAの診断値を示した。
【0079】
5.3 結果
多くの陰性血清が、陰性抑制値を示した。従って、最も低い測定値を0にセットし、全ての他の値はこれに関連づけられた。これらのデータを“相対ELISA値”と呼ぶ。
301の実地の血清の結果を図2に要約した。ELISAは明らかに、陰性(平均相対ELISA値 36)と陽性(平均相対ELISA値 89)血清を区別した。IFAにおいて疑わしい点数の試料の大部分は、ELISAで陽性であった。
3つの農場からの横断的スクリーニングの結果を図3に示す。両試験により、3つの農場におけるL.イントラセルラリスに対する抗体を明確に検出できた。
【0080】
5.4 ディスカッション
IFA試験結果と比較して、ELISA法は高い感度であった。3つの試験された農場のある群では、ELISAの結果がIFA試験のそれよりも、非常に明確であった。蛍光試験が非特異的であったため、前記事実は多くの疑問を与えた。3つの群れにおける血清学的プロファイルは、以前に刊行された欧州の群れからのデータ(3,4)によく対応している。10週齢と16週齢の豚の群の間のELISA値の上昇をIFA試験のものと比較すると、55より多い相対ELISA値を有する血清は陽性と判断することができることを示している。
この新試験は、ルーチン試料の回腸炎の診断の改良に役立つものである。新規ブロッキング回腸炎ELISA法は、客観的な基礎に基づく、大量の試料の迅速かつ高感度のスクリーニングのためのツールを提供する。
【0081】
参考文献
1.Guedes RMC et al.,2002.Can J Vet Res 66:99−107.
2.Knittel JP et al.,1998.AJVR 59:722−726.
3.Biksi I et al.,2002.Proc.17th IPVS,Ames,Iowa,USA
4.van Aken N et al.,2002.Proc.17th IPVS,Ames,Iowa,USA.
【0082】
実施例6
6.1 導入部と目的
現在まで、回腸炎特有の診断は、糞便中または腸組織試料中の抗体検出についてはIFA試験(1,2)またはPCR(3,4)により、抗原検出については組織学的及び免疫学的染色法(2,5,6)により行われてきた。全てのこれらの方法は、特異性、汚染リスクまたは作業負荷に関して特有の不利益点があり、大きなスケールで行う群れのルーチンスクリーニングには適さない。ほとんどの診断試験は、群れからの2、3の豚のみについて行われる。開発されたブロッキングELISA法の使用により、血清学試験はより容易となり、より確実になり、また群れのプロファイリングにより適するものとなる。独国の22農場を横断するスクリーニングを新試験の診断性能を示すために行った。
【0083】
6.2 材料と方法
22の独国農場にわたる試料をELISAで試験した。各農場から、4,7,10,13,16,20及び24週齢の若雌豚(gilts)、雌豚(sows)及び豚(pigs)の試料を採取した(各週齢につき10試料づつ)。ELISAを実施例5に記載のように行った。
【0084】
6.3 結果
図4に、全ての22農場の平均相対ELISA値を示した。若雌豚(gilt)及び雌豚(sow)からの血清は、ELISAにおいて非常に反応性であったのに対し、4〜10週齢のフラットデック豚(flatdeck piglet)は低かった。肥育者(fatteners)ではELISA値は、13〜24週に上昇した。
図5において、平均相対ELISA値は、農場の臨床症状と相関している。農場番号5,6及び15は、試料採集の時、臨床的な腸の問題はなかった。農場番号3では、4〜13週の子豚は、腸に問題があり、E.coli性下痢と診断された。農場番号18では、以前の血清学試験が、農場内で臨床的な症状を示さないローソニアイントラセルラリスの存在を示した。農場番号1,2,7,8,9,10,11,12,19,21及び22では、この研究のための資料採集の前に回腸炎と診断された。農場番号4,13,14,16及び20では、飼育者と肥育者における腸の問題が報告された。農場番号4及び13では、回腸炎が臨床的に疑われた。農場番号17では、下痢の臨床的な徴候はなかったが、飼育者において、及び肥育の初期において抗生物質が使用された。
【0085】
6.4 ディスカッション
22農場からの要約された血清プロファイルは、雌豚及び若雌豚において高い反応性を示し、13週から24週までに抗体反応が産生されることを示す。これらの知見は、現在までに回腸炎に関して報告された血清学的データと一致する(7,8,9)。下痢を伴わない農場(No.5,6,15及び18)からの豚、及びE.coli性下痢を伴う農場(No.3)の豚は、ELISAにおいて、顕著な血清変換を示さなかった。既知の回腸炎を伴う農場(No.1,2,7,8,9,10,11,12,19,21及び22)では、7週と13週の間において、明確な血清変換を検出することができた。興味深いことに、ほとんどの雌豚及び若雌豚の群からの試料は、ELISAにおいて非常に反応性であったが、これらの豚のほとんどは、明確な腸の疾病がなかった。これは、ローソニアイントラセルラリスの無症状感染によると考えられる。農場番号17の結果は、無症状回腸炎を示しているようである。
【0086】
本発明の新規なELISAは、大きな試料サイズおよび群れの横断的スクリーニングのためのルーチン試験に適する、回腸炎の血清学的診断のための強力なツールを提供する。
【0087】
参考文献
1.Knittel JP et al.,1998.AJVR 59:722−726.
2.Guedes RMC et al.,2002.Can J Vet Res 66:99−107.
3.Jones GF et al.,1993.J Clin Microbiol 31:2611−2615.
4.Suh−DK et al.,2000.J Vet Sci 1:33−37.
5.McOrist S et al.,1989.Vet Pathol 26:260−264.
6.Huerta B et al.,2003.J Comp Path 129:179−185.
7.Biksi I et al.,2002.Proc.17th IPVS,Ames,Iowa,USA 8.van Aken N et al.,2002.Proc.17th IPVS,Ames,Iowa,USA 9.Holyoake PK et al.,1994.J Clin Microbiol 32:1980−1985.
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明に従うブロッキングELISAの結果を表す。
【図2】IFAとELISAの比較における301の実地の血清の結果を表す。
【図3】回腸炎ブロッキングELISA−3農場(飼育場)横断スクリーニングの結果を表す。
【図4】回腸炎ELISA−22の独国農場(飼育場)の結果を表す。
【図5】臨床症状とELISAの結果との相関関係を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臨床前または臨床のローソニアイントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)感染を診断する方法であって、下記工程を含む方法:
a)液体試料を哺乳類から採取する工程、b)前記液体試料のローソニアイントラセルラリスへの特異的な結合を検出する工程、c)得られた結果をコントロールと比較する工程。
【請求項2】
方法が免疫試験法である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
方法がELISA法である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
方法がブロッキングELISA法である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
抗体301:39、抗体287:6、抗体268:29、抗体110:9、抗体113:2及び抗体268:18からなる群より選択される一または複数のモノクローナル抗体を使用する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
抗体110:9を分泌するハイブリドーマ細胞系ECACC受託番号04092204。
【請求項7】
抗体113:2を分泌するハイブリドーマ細胞系ECACC受託番号04092201。
【請求項8】
抗体268:18を分泌するハイブリドーマ細胞系ECACC受託番号04092202。
【請求項9】
抗体268:29を分泌するハイブリドーマ細胞系ECACC受託番号04092206。
【請求項10】
抗体287:3を分泌するハイブリドーマ細胞系ECACC受託番号04092203。
【請求項11】
抗体301:39を分泌するハイブリドーマ細胞系ECACC受託番号04092205。
【請求項12】
抗体301:39、抗体287:6、抗体268:29、抗体110:9、抗体113:2及び抗体268:18からなる群より選択されるモノクローナル抗体及び請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法を行うために必要な他の要素を含む部品からなるキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−503737(P2008−503737A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517200(P2007−517200)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【国際出願番号】PCT/EP2005/006781
【国際公開番号】WO2006/012949
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(504225895)ベーリンガー インゲルハイム フェトメディカ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (34)
【Fターム(参考)】