説明

ローソニア・イントラセルラーリスに対する保護のためのワクチン

本発明は、ローソニア・イントラセルラーリスによる感染に対して保護するためのワクチン(該ワクチンは、全身投与に適した形態である。)を製造するための非生炭水化物含有組成物(前記炭水化物は、ローソニア・イントラセルラーリス細胞の外側細胞膜と会合して、生きたローソニア・イントラセルラーリス細胞中にも見出される。)の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローソニア・イントラセルラーリス(Lawsonia intracellularis)による感染に対して保護するためのワクチンに関し、この意味におけるワクチンは、ローソニア・イントラセルラーリスによる感染の負の影響の減少を少なくとも提供する組成物であり、このような負の影響は、例えば、組織損傷及び/又は減少した体重増加、下痢などの臨床的症候である。
【背景技術】
【0002】
多くの動物、特にブタにおける増殖性腸疾患(腸炎又は回腸炎とも称される。)は、主に末端回腸中での未成熟な腺窩上皮細胞の粘膜過形成を有する臨床的症候及び病理的症候群を呈する。冒され得る腸の他の部位には、空腸、盲腸及び大腸が含まれる。急速な体重減少と脱水という典型的な臨床的徴候を伴って、主に、離乳ブタ及び若い成体ブタが罹患する。ブタでの天然の臨床的疾患は世界中で発生している。本疾病には、現在、ローソニア・イントラセルラーリスとして知られる湾曲した細胞内細菌の存在が一貫して付随する。
【0003】
一般に、ローソニア・イントラセルラーリスに対する経口ワクチン接種は回腸炎を抑制するための経済的に効率的な措置であることが示されており、ブタの遺伝的な成長能をよりよく活用することが可能となる(Porcine Proliferative Enteropathy Technical Manual3.0,July2006;Boehringer Ingelheimから入手可能)。さらに、非経口のワクチン接種よりむしろ、経口ワクチン接種が、複数回使用された針を介したPRRSなどの血液感染性感染症の伝達を低下させ、注射部位の反応及び死体中に保持された針を低下する。経口ワクチン接種は、個別のワクチン接種に比べて、動物及びヒトのストレス、時間、労働コスト及び労力を低下させる(McOrist:“Ileitis−One Pathogen, Several Diseases”at the IPVS Ileitis Symposium in Hamburg, June 28th, 2004)。
【0004】
宿主の免疫系が、より「自然な」様式で、生物の全ての抗原性特性に曝露されるので、弱毒化された生ワクチンアプローチの利点は免疫の効力が通常相対的に良好であるということが一般に理解されている。特にローソニア・イントラセルラーリスなどの細胞内細菌因子に関して、生弱毒化ワクチンアプローチは、T細胞を基礎とする完全で適切な免疫応答のために、ワクチン接種された動物に対して入手可能な最良の保護を与えると考えられている。これは、細胞内細菌に対するサブユニット又は死滅ワクチン種に付随する変動的な免疫ないし乏しい免疫とは対照的である。このことは、粘膜内に病原性感染症を引き起こすローソニア・イントラセルラーリス又はクラミジア種などの偏性細胞内細菌に対しても具体的に当てはまる。問題の細胞内細菌の完全生弱毒化形態は標的粘膜へ最もよく送達されること、完全な感染防御免疫応答を標的粘膜中に生成するために、それらは完全な生きた細菌形態として必要されること、部分的な細菌成分の使用と比べて、それらは免疫学的に優れていることが、研究によって示されている。
【0005】
ローソニア・イントラセルラーリスに対するワクチンは経口的に投与される必要があることが一般的な理解となっている(とりわけ、本明細書に上で引用されているTechnical Manual3.0参照)。これは、回腸炎に対する身体の耐性の基礎は、細胞媒介性免疫及び抗体、特にIgAを介した局所的防御の産物である腸内の局所的免疫であるという事実に基づいている。現在の知見によれば、腸の内腔に到達しないという単純な理由のため、血清抗体(IgG)は保護を全く与えない。経口ワクチン接種は細胞媒介性免疫及び腸内でのIgAの局所的産生をもたらすことが、研究で示されている(Murtaugh, in Agrar− und Veterinar−Akademie, Nutztierpraxis Aktuell, Ausgabe 9, Juni 2004; and Hyland et al.in Veterinary Immunology and lmmunopathology 102(2004)329−338)。これに対して、筋肉内投与は保護をもたらさなかった。さらに、細胞内細菌に対して首尾よく作用するワクチンは細胞媒介性免疫及び局所的な抗体の産生を誘導しなければならないという一般的な理解の次に、経口摂取された抗原の極めて低いパーセントが腸細胞によって実際に吸収されるに過ぎないこと、及び細胞中へのローソニア・イントラセルラーリスの取り込みは細菌によって開始される能動的プロセスであることが当業者によって知られている。従って、不活化されたワクチンは不十分な免疫原性抗原を腸に与える(Haesebrouck et al.in Veterinary Microbiology 100(2004)255−268)。これが、弱毒化された生ワクチンのみが腸の細胞内に十分な細胞媒介性保護を誘導すると考えられている理由である(本明細書の上に引用されているTechnical Manual3.0参照)。現在のところ、ローソニア・イントラセルラーリスに対して保護するために市場に出回っているワクチンは1つしか存在しない(すなわち、Boehringer Ingelheimによって販売されているEnterisol(R)Ileitis)。実際に、このワクチンは、経口投与のための生ワクチンである。
【0006】
本発明の目的は、ローソニア・イントラセルラーリスによる感染に対して保護するための別のワクチンを提供することである。この目的のために、ローソニア・イントラセルラーリスによる感染に対して保護するためのワクチン(該ワクチンは、全身投与に適した形態である。)の製造のために、生でない炭水化物含有組成物(前記炭水化物は、ローソニア・イントラセルラーリス細胞の外側細胞膜と会合して、生きたローソニア・イントラセルラーリス細胞中にも見出される。)を使用することが考案された。驚くべきことに、ローソニア・イントラセルラーリスをどのようにして駆除するかについての持続的な一般的理解とは異なり、ワクチン中の抗原として、例えば、ローソニア・イントラセルラーリスの外側細胞膜から抽出された、炭水化物を含有する非生組成物を使用することによって、抗原が全身的に、すなわち、抗体が身体の循環系(心血管系及びリンパ系を含む。)に到達するように投与され、従って、胃腸管などの特定の部位ではなく全身に影響を与える場合に、生ワクチンEnterisol(R)Ileitis(対応する指示書に従って投与された。)を使用することによって提供される保護と同等である又は改善さえされたローソニア・イントラセルラーリスに対する保護を誘導できることが見出された。全身投与は、例えば、筋肉組織内(筋肉内)、皮膚内(皮内)、皮膚の下(皮下)、粘膜の下(粘膜下)、静脈中(静脈内)などに抗原を投与することによって行うことができる。極めて優れた保護が得られる他、本発明の非生ワクチンの重要な利点は、生ワクチンと比べたときの固有の安全性である。
【0007】
一般に、炭水化物含有組成物は、抗原性炭水化物含有組成物(又は元の組成物若しくは抽出物の希釈物若しくは濃縮物、1つ若しくはそれ以上の精製された成分など、抗原性炭水化物含有組成物に由来する組成物)を医薬として許容される担体(例えば、(場合によって緩衝化された)水などの液体担体又は凍結乾燥されたワクチンを得るために一般的に使用されるような固体担体)と混合することを基本的に含む本分野で公知の方法を使用することによって、ワクチンを製造するために使用することができる。従って、産業的環境中で製造を行うことができるのみならず、例えば、動物へ実際に投与する(直)前に、その場で(すなわち、獣医、農場などで)、抗原を他のワクチン構成成分と混合することができる。ワクチンでは、抗原は、免疫学的に有効な量で、すなわち、野生型微生物によるワクチン接種後の攻撃誘発の負の効果を少なくとも低減させるのに十分に、標的動物の免疫系を刺激することができる量で存在すべきである。ワクチンの意図される使用又は必要とされる特性に応じて、場合によって、アジュバント、安定化剤、粘度改変剤又は他の成分などの他の物質が添加される。全身性ワクチン接種に対して、多くの形態、特に、(溶解された、乳化された又は懸濁された抗原を有する)液体製剤が適しているが、インプラントなどの固体製剤又は液体中に懸濁された抗原用の固体担体などの中間形態も適している。全身性ワクチン接種、特に、非経口的ワクチン接種(すなわち、消化管を通じない)及び全身性ワクチン接種のためのワクチンの適切な(物理的)形態は200年以上知られている。
【0008】
ローソニア・イントラセルラーリス細胞のサブユニットは、この細菌に対して保護するためのワクチンにおける抗原として報告されてきたことが注目される。しかしながら、これらは、主に組換えタンパク質であり、これまでのところ、能力があり、優れた保護を与えることが証明されたものは存在しない。(外側細胞膜と会合して、生きたローソニア・イントラセルラーリス細胞中にも見出される炭水化物を内在的に含有する)死滅された細菌も、ローソニア・イントラセルラーリスに対するワクチン中での抗原として示唆されているが、優れた保護を与えることが実際に検査及び報告された、死滅した完全細胞を基礎とするワクチンは存在しない。それは別として、ローソニア・イントラセルラーリスを局所的に(すなわち、腸内で)駆除するための抗原の全身投与に対して、合理的な成功の予想が存在しないという一般的な理解のために、これらの死滅された細菌と組み合わせて、全身投与は使用されてこなかった。
【0009】
この点に関して、WO97/20050(Daratech PTY Ltd)中に、ブタを免疫化するための死滅されたローソニア・イントラセルラーリス細菌の使用が言及されていることが注目される。しかしながら、全身投与は言及されていない。ワクチン接種は経口投与に際してのみ有効であるという現在の知識に基づけば、経口経路がDaratechの出願中に記載されている実験のために選択された投与経路であったことが一般的に理解される。死滅された細菌について言及する別の特許出願は、WO2005/011731(Boehringer Ingelheim)である。しかしながら、実際に開示されているのは、経口的に投与された生ワクチンの使用に過ぎない。死滅されたワクチンを全身的に与え得ることはもちろん、死滅されたワクチンが有効であり得ることは示されていない。欧州特許843818号(Boehringer Ingelheim)は、死滅されたワクチンの筋肉内投与を記載している(パラグラフ[0119]とともにパラグラフ[0115])。パラグラフ[0115]には、4℃、通常の大気条件で細菌を保存することによって、細菌が死滅されたことが述べられている。しかしながら、一般に知られているように、このような条件下で、ローソニア・イントラセルラーリス細菌は生存する。従って、この文献は本発明の主題を教示していない。炭水化物含有組成物(炭水化物は、ローソニア・イントラセルラーリス細胞の外側細胞膜と会合して、生きたローソニア・イントラセルラーリス細胞中にも見出される。)は、Kroll他(Clinical and Diagnostic Laboratory Immunology, June 2005,693−699)から公知であることも注目される。しかしながら、この組成物は診断薬のために使用されている。本明細書に上記されている理由のために、この組成物は防御抗原として検査されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第97/20050号
【特許文献2】国際公開第2005/011731号
【特許文献3】欧州特許843818号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Porcine Proliferative Enteropathy Technical Manual3.0,July2006;Boehringer Ingelheim
【非特許文献2】McOrist:“Ileitis−One Pathogen, Several Diseases”at the IPVS Ileitis Symposium in Hamburg, June 28th, 2004
【非特許文献3】Murtaugh, in Agrar− und Veterinar−Akademie, Nutztierpraxis Aktuell, Ausgabe 9, Juni 2004; and Hyland et al.in Veterinary Immunology and lmmunopathology 102(2004)329−338
【非特許文献4】Haesebrouck et al.in Veterinary Microbiology 100(2004)255−268
【非特許文献5】Kroll他、Clinical and Diagnostic Laboratory Immunology, June 2005,693−699
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施形態において、炭水化物含有組成物は、ローソニア・イントラセルラーリス細菌の死滅から得られる物質である。本発明に従って使用するための炭水化物を提供する極めて便利な方法は、単にローソニア・イントラセルラーリス細菌を死滅させ、そこから得られた物質を炭水化物源として使用することであることが見出された。生きた細胞から炭水化物を抽出することも、(細胞壁を除去することによって、生きたゴースト細胞を作製することと同様にして)理論では実施することが可能であるが、より精緻な、従って、より高価な技術を必要とする。物質はそのまま(例えば、完全な細胞の懸濁物又はローソニア・イントラセルラーリス細胞の可溶化液)使用することが可能であり、又は物質から炭水化物を精製し、若しくは単離することさえ可能である。この方法は、相対的に単純な本分野で公知の技術を使用することによって実施することができる。
【0013】
好ましい実施形態において、炭水化物含有組成物は、死滅されたローソニア・イントラセルラーリス細菌の完全な細胞を含有する。これは、ワクチン中の抗原として炭水化物を提供するための最も便利な方法であることが明らかとなった。加えて、標的動物の免疫系へ抗原を提供するこの方法は炭水化物の天然環境をよりよく模倣するので、ワクチンの効力がさらに増加される。
【0014】
一実施形態において、ワクチンはμmを下回るサイズの油滴を含有する水中油アジュバントを含む。一般に、アジュバントは非特異的な免疫刺激因子である。原則として、免疫現象のカスケード中の特定のプロセスを好み又は増幅することができ、よりよい免疫学的応答(すなわち、抗原に対する一体化された身体応答、特に、リンパ球によって媒介され、典型的には、特異的抗体又は予め感作されたリンパ球による抗原の認識を伴う身体応答)を最終的にもたらす各物質は、アジュバントとして定義することができる。μmを下回るサイズの油滴を含有する水中油アジュバントを用いることによって、ローソニア・イントラセルラーリスに対して極めて優れた保護が得られることが示された。実際、水中油アジュバント自体の適用は、非生抗原と組み合わされることが一般的である。しかしながら、油滴の直径が大きい場合に、最も優れた免疫刺激特性が得られることが一般に知られている。特に、安全性が重要事項であると考えられる場合には、1μm未満の直径を有する油滴が特に使用される。その場合には、より少ない組織損傷、臨床的症候などを惹起することが知られているので、小さな滴を使用することができる。しかしながら、(本発明の場合のように)全身的ワクチン接種を介して腸関連疾患に対する保護を得る場合には、免疫応答が著しく強化されると予想されるので、大きな滴を選択する。これに対して、組成物中で小さな油滴を用いることによって、ローソニア・イントラセルラーリスに対する保護に関して極めて優れた結果が得られることを本発明者らは見出した。
【0015】
さらに好ましい実施形態において、アジュバントは、生物分解性油の滴及び鉱物油の滴(生物分解性油の滴は鉱物油の滴の平均サイズと異なる平均サイズを有する。)を含む。生物分解性油と鉱物油の混合物の使用が効力及び安全性に関して極めて優れた結果を与えることが示された。これに加えて、組成物の安定性は極めて高く、これは重要な経済的利点である。特に、生物分解性油滴又は鉱物油の何れかの平均(容積で重み付けされた)サイズが500nmを下回る(好ましくは、約400nm)場合に、安定性が極めて優れていることが明らかとなった。
【0016】
一実施形態ににおいて、ワクチンは、マイコプラズマ・ヒオニューモニアエ(Mycoplasma hyopneumoniae)及びブタサーコウイルスの抗原をさらに含む。これまでに、ローソニア・イントラセルラーリスの組み合わせワクチンは従来技術において示唆されてきた。しかしながら、このような組み合わせの多くは、効力に関して実際には検査されていない。この理由は、抗原をローソニア・イントラセルラーリス抗原と組み合わせることは、ローソニア抗原が生の(弱毒化された)細胞として与えられた場合に成功した保護をもたらし得るに過ぎないと一般に理解されていたからである。この点に関して、我々は、ローソニア・イントラセルラーリスを基礎とした組み合わせワクチンの全ての種類も示唆するWO2005/011731を参照する。しかしながら、この特許出願の記述及び特許請求の範囲の構造に関して、譲受人(Boehringer Ingelheim)は、ローソニア抗原が生きた細胞の形態で存在する場合に、組み合わせワクチンが成功の合理的可能性を有するに過ぎないと予測されると確信していたように見受けられる。同じことが、同じくBoehringer Ingelheimに譲渡されたWO2006/099561に関しても当てはまる。実際、通常の一般的知識を基礎とすると、これは自明な考え方である。
【0017】
本発明は、以下の実施例を用いてさらに説明される。
【0018】
実施例1は、実質的にタンパク質を含まない炭水化物含有組成物を取得するための方法及び該組成物を使用することによって作製されるワクチンを記載する。実施例2は、本発明に係る第二のワクチンを現在市場に出回っているワクチン及びローソニア・イントラセルラーリスのサブユニットタンパク質を含む実験用ワクチンと比較する実験を記載する。実施例3は、本発明に係る2つの異なるワクチンを現在市場に出回っているワクチンと比較する実験を記載する。実施例4は、本発明のワクチンの投薬量効果を確立する実験を記載する。
【実施例1】
【0019】
本実施例では、ローソニア・イントラセルラーリス細胞の外側細胞膜と会合された、実質的にタンパク質を含まない炭水化物組成物を得るための方法及び該組成物を用いて作製することができるワクチンが記載されている。一般に、炭水化物は、通常1:2:1の比率で炭素、水素及び酸素を含有する有機化合物である。炭水化物の例は、糖(糖質)、デンプン、セルロース及びゴムである。通常、炭水化物は動物の食餌中で主要なエネルギー源としての役割を果たす。ローソニア・イントラセルラーリスはグラム陰性細菌であり、従って、専らリン脂質とタンパク質のみから構築されておらず、炭水化物、特に、多糖(通常、リポ多糖、リポオリゴ糖又は非リポ多糖などの多糖)も含有する外側膜を含有する。
【0020】
ワクチン調製のための炭水化物画分
3.7E8(=3.7×10)細胞/mLの濃度でローソニア・イントラセルラーリス細胞を含有する緩衝化された水(0.04MPBS、リン酸緩衝化生理的食塩水)の20mLを採取した。100℃に10分間保つことによって、細胞を溶解した。0.04MPBS中のプロテイナーゼK(10mg/mL)を1.7mg/mLの最終濃度になるように添加した。全てのタンパク質を分解し、炭水化物を完全な状態に保つために、60℃で60分間、この混合物を温置した。その後、プロテイナーゼKを不活化するために、混合物を100℃で10分間温置した。得られた物質(これは、炭水化物含有組成物、特に、外側細胞膜と会合した生きたローソニア・イントラセルラーリス細菌中に存在するように炭水化物を含有する組成物(以下のパラグラフを参照。)である。)を、さらに使用するまで、2から8℃で保存した。組成物は、Diluvacforteアジュバント中に調合した。このアジュバント(欧州特許0382271も参照)は、水の中に懸濁され、Tween80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート)の0.5重量%で安定化された、約400nmの平均容量重み付けされたサイズを有する7.5重量%のビタミンE・アセタート滴を含む。各mLワクチンは、1.2E8のローソニア・イントラセルラーリス細胞から抽出された物質を含有した。
【0021】
ローソニア・イントラセルラーリス抗原の免疫沈降
完全な細胞のローソニア・イントラセルラーリスに対して産生されたモノクローナル抗体(MoAb’s)の2つのバッチを、標準的な手順に従って、室温で、飽和NaSOを用いて沈降させた。遠心(10,000g、10分間)によって、沈殿を沈降させた。沈降物を20%NaSOで洗浄し、0.04MPBS中に再懸濁した。製造業者のマニュアルに従って、チロシル活性化されたDynalビーズ(DynaBeads,DK)を0.1MNaPO(pH7.4)で予め洗浄した。MoAbの各バッチのうち、140μgを取り、2E8の予め洗浄されたビーズに添加し、37℃で一晩温置した。ビーズを遠心によって沈降させ、上清の吸引によって、結合されていないMoAbを除去した。分光学的測定によって、添加されたMoAbのうち、20と35%の間のビーズに結合したことが示された。
【0022】
0.04MPBS中のローソニア・イントラセルラーリス細胞(3.7E8/mL)1mLの2つのバッチを1分間音波処理した。チロシル活性化されたビーズ・モノクローナル複合体に、得られた細胞可溶化液を添加し、4℃で一晩温置した。Tylosyl活性化されたビーズ・モノクローナル複合体を、0.1MNaPO(pH7.4)で3回洗浄した。0.04MPBS(E1)中の8M尿素0.5mL、10mMグリシンpH2.5(E2)0.5mL及び50mMHCl(E3)0.5mL中で、連続的様式でビーズを洗浄することによって、結合された化合物を溶出した。溶出後、1MTris/HCl(pH8.0)100μL及び200μLの何れかを用いて、E2及びE3を中和した。
【0023】
各工程から試料を採取し、SDS−PAGEゲル上に搭載した。クマシー・ブリリアント・ブルー(CBB)及び銀染色を用いて、ゲルを染色し、又は吸収転移した。本明細書に上記されているものと同じMoAbを用いて、ブロットを展開した。ゲル及びブロットの検査によって、CBBゲル上に見られないが、銀染色されたゲル上には見られる21及び24kDaの見かけの分子量を有するバンドをMoAbが認識することが示された。また、MoAbに結合された細胞の画分はプロテイナーゼK耐性であることが確定された。従って、これらの結果に基づいて、この画分は炭水化物を含有すること(すなわち、全てのタンパク質が溶解され、音波処理されたDNA画分は銀染色中の明瞭なバンドとして現れない。)、及び炭水化物はローソニア・イントラセルラーリスの外側細胞膜と会合されている(すなわち、外側細胞膜の一部を形成し、又は外側細胞膜に結合されている。)こと(すなわち、この画分に対して生成されたMoAbは、完全なローソニア・イントラセルラーリス細胞も認識した。)を結論付けることができる。ローソニア・イントラセルラーリスがグラム陰性細菌であるという事実に鑑みれば、炭水化物組成物は多糖を含むと考えられる。
【実施例2】
【0024】
この実験は、すなわち、死滅された完全細胞(バクテリンとしても知られる。)を介して、炭水化物抗原をワクチン中に調合するための便利な方法を調べるために行われた。対照として、市販のワクチンEnterisol(R)ileitis及びタンパク質サブユニットを含む実験用サブユニットワクチンを使用した。この次に、ワクチン接種されていない動物を対照として使用した。
【0025】
実施例2の実験デザイン
不活化された完全細胞ワクチンは、以下のようにして作製した。PPEを有するブタの腸から得られた生きたローソニア・イントラセルラーリス細胞を集めた。0.01%BPL(β−プロピオラクトン)を用いて、細胞を不活化した。約2.8×10細胞/mLワクチンの濃度で、Diluvacforteアジュバント(実施例1参照)中に、得られた物質((特に、得られた物質は、ローソニア・イントラセルラーリス細菌の外側細胞膜と会合して、生きたローソニア・イントラセルラーリス細菌中に存在するように炭水化物を含有するので)、これは、本来的に、本発明において非生の炭水化物含有組成物である。)を調合した。
【0026】
サブユニットワクチンは、欧州特許1219711号から公知の組換えP1/2及びP4(それぞれ、19/21及び37kDaタンパク質)並びにWO2005/070958に記載されている遺伝子5074、4320及び5464によって発現される組換えタンパク質を含有した。これらのタンパク質は、Diluvac forteアジュバント中に調合した。ワクチンは、1mL当たり各タンパク質約50μgを含有した。
【0027】
6週齢のSPFブタ40匹を使用した。ブタは、それぞれ10匹のブタからなる4つのグループへ振り分けた。グループ1には、製造業者の指示書に従って、生の「Enterisol(R)ileitis」(Boehringer Ingelheim)2mLを(T=0に)経口から1回ワクチン接種した。グループ2及び3には、それぞれ、本明細書中に上記されている不活化されたローソニア完全細胞ワクチン及び組換えサブユニット組み合わせワクチン2mLを筋肉内に2回(T=0及びT=4週に)ワクチン接種した。グループ4は、ワクチン接種されていない対照として放置した。T=6週に、全てのブタに、ローソニア・イントラセルラーリスに感染した均質化された粘膜で経口的に攻撃誘発を行った。その後、ブタ増殖性腸疾患(PPE)の臨床的症候に関して、全てのブタを毎日観察した。攻撃誘発の前および後の定期的な時点で、血清血液(血清学のため)及び糞便(PCRのため)にブタから採取した。T=9週の時点で、全てのブタを安楽死させ、剖検を行った。回腸の組織学的試料を採取し、顕微鏡的に調べた。
【0028】
攻撃誘発接種原は、感染した粘膜から調製した。(感染した腸から剥離した)感染した粘膜500gを生理的塩溶液500mLと混合した。氷上にて、最高速度で1分間、この混合物をオムニミキサー中で均質化した。T=6週に、攻撃誘発接種原20mLを用いて、全てのブタを経口的に攻撃誘発した。
【0029】
T=0、4、7、7、8及び9週に、各ブタの糞便試料(グラム量)及び血清血液試料を採取し、検査まで凍結保存した。定量的PCR(Q−PCR)検査において、糞便試料を検査し、ピコグラム(pg)で見出された量の対数として表した。血清試料は、一般的に使用されるIFT検査(血清中の完全なローソニア・イントラセルラーリス細胞に対する抗体を検出するための免疫蛍光性抗体検査)で検査した。組織学的なスコア付けのために、回腸の適切な試料を採取し、4%の緩衝化されたホルマリン中に固定し、通常の様式で包埋させ、スライドに切断した。ヘマトキシリン−エオシン(HE染色)を用いて及び抗ローソニア・イントラセルラーリスモノクローナル抗体を使用する免疫組織化学的染色(IHC染色)を用いて、これらのスライドを染色した。スライドは、顕微鏡的に検査した。組織学的スコアは以下のとおりである。
【0030】
HE染色:
異常は検出されない スコア=0
疑わしい病変 スコア=1/2
軽度の病変 スコア=1
中度の病変 スコア=2
重度の病変 スコア=3
IHC染色:
明瞭なエル・イントラセルラーリス細菌なし スコア=0
細菌の疑わしい存在 スコア=1/2
スライド中に細菌の単一/少数が存在 スコア=1
スライド中に細菌の中度の数が存在 スコア=2
スライド中に細菌の多数が存在 スコア=3
全てのデータは、各ブタに対して個別に記録された。グループ当りのスコアは、攻撃誘発後の異なるパラメータに対する陽性動物の平均として計算した。統計的な有意性を評価するために、ノンパラメトリックMann−WhitneyU検定を使用した(両側で検定し、有意水準は0.05に設定した。)。
【0031】
実施例2の結果
血清学
IFT抗体力価に関して検査すると、最初のワクチン接種前に、全てのブタは血清陰性であった。完全細胞バクテリン(グループ2)でのワクチン接種後、ブタは高いIFT抗体力価を生じたのに対して、対照及びサブユニットワクチンをワクチン接種されたブタは、攻撃誘発まで陰性のままであった(表1)。Enterisol(R)をワクチン接種されたブタ(グループ1)のうち2匹が中度のIFT力価を生じたのに対して、このグループ中の他の全てのブタは血清陰性のままであった。攻撃誘発後、全てのブタは高いIFT抗体力価を生じた。平均の結果が表1に示されている(使用された希釈では、1.0が下側の検出レベルであった。)。
【0032】
【表1】

【0033】
糞便試料に対するリアルタイムPCR
攻撃誘発前に、全ての糞便試料は陰性であった。攻撃誘発後、全てのグループにおいて陽性反応が見出された。グループ1(p=0.02)、グループ2(p=0.01)及びグループ3(p=0.03)は、対照と比べて有意に低い流出レベルを有していた。攻撃誘発後の概要が、表2に記載されている。
【0034】
【表2】

【0035】
組織学スコア
グループ2は、最も低い組織学HEスコア(p=0.05)、IHCスコア(p=0.08)及び総組織学スコア(p=0.08)を有していた。他のグループは、より高いスコアを有しており、対照群と有意差はなかった。表3を参照されたい。
【0036】
【表3】

【0037】
実施例2に関する結論
これらの結果から、生きたローソニア・イントラセルラーリス細胞の外側膜と会合しても見出される炭水化物を内在的に含有する非生完全細胞ローソニア・イントラセルラーリスワクチンの全身投与は、少なくとも部分的な保護を誘発したと結論付けることができる。調べた全てのパラメータ及び組織学スコアは、有意に又はほぼ有意に、対照と比べて優れていた。
【実施例3】
【0038】
この実験は、抗原として炭水化物含有組成物を含むワクチンを検査するために行われた。検査すべき第二のワクチンは、ローソニア・イントラセルラーリスの死滅された完全細胞の他に、マイコプラズマ・ヒオニューモニアエ及びブタサーコウイルスの抗原を含有していた(「コンビ」ワクチン)。対照として、市販のEnterisol(R)ileitisワクチンを使用した。この次に、ワクチン接種されていない動物を第二の対照として使用した。
【0039】
実施例3の実験デザイン
実質的にタンパク質を含まない炭水化物含有組成物を基礎とするワクチンは、実施例1に記載されているように取得した。
【0040】
実験用コンビワクチンは、1.7×10細胞/mLのレベルで、不活化されたローソニア・イントラセルラーリス完全細胞抗原を含有した(不活化された細菌を提供する使用された方法に関しては、実施例2参照)。この次に、実験用コンビワクチンは、不活化されたPCV−2抗原(PCV2のOFR2によってコードされたタンパク質20μg/mL;タンパク質は、例えば、WO2007/028823に記載されているように、本分野で一般に知られているバキュロウイルス発現系内で発現される。)及び不活化されたマイコプラズマ・ヒオニューモニアエ抗原(Intervet、Boxmeer、The Netherlandsから入手可能な市販のワクチンPorcilis Mhyo(R)から公知のものと同じ用量の同じ抗原)を含有した。抗原は、ツインエマルジョンアジュバント「X」中に調合した。このアジュバントは、アジュバント「A」の5容量部とアジュバント「B」の1容量部の混合物である。アジュバント「A」は、水中のTween80で安定化された、約1μmのおよその平均(容量重み付けされた)サイズを有する鉱物油滴からなる。アジュバント「A」は、鉱物油の25重量%及びTweenの1重量%を含む。残りは水である。アジュバント「B」は、同じくTween80で安定化された、400nmのおよその平均(容量重み付けされた)サイズを有する生物分解可能なビタミンEアセタートの滴からなる。アジュバント「B」は、ビタミンEアセタートの15重量%及びTween80の6重量%を含み、残りは水である。
【0041】
3日齢のSPF仔ブタ64匹を使用した。ブタは、仔ブタ14匹の4つのグループ及び仔ブタ8匹の1つのグループ(グループ4)に割り振った。グループ1には、コンビワクチン2mLを3日齢の時点で筋肉内にワクチン接種した後、25日齢の時点で第二のワクチン接種を行った。グループ2には、25日齢の時点で、コンビワクチン2mLを筋肉内に1回ワクチン接種した。グループ3には、処方に従って、25日齢で、Enterisol(R)ileitis(Boehringer Ingelheim)2mLを経口的にワクチン接種した。グループ4には、3日及び25日齢に、非タンパク質炭水化物ワクチン2mLを筋肉内にワクチン接種した。グループ5は、攻撃誘発対照群としてワクチン接種をしなかった。46日齢に、均質化された感染粘膜で全てのブタを経口的に攻撃誘発した。その後、ブタ増殖性腸疾患(PPE)の臨床的症候に関して、全てのブタを毎日観察した。攻撃誘発の前および後の定期的な時点で、それぞれ、血清学及びPCRのために血清血液及び糞便試料をブタから採取した。68日齢の時点で、全てのブタを安楽死させ、死後検査を行った。回腸を組織学的に調べた。
【0042】
実験デザインにおける他の項目は、別段の表記がなければ、実施例2に記載されているのと同じであった。
【0043】
実施例3の結果
血清学
IFTローソニア抗体力価に関して、最初のワクチン接種前に、全てのブタは血清陰性であった。コンビワクチン(グループ1及び2)及び非タンパク質炭水化物ワクチン(グループ4)のワクチン接種後に、多くのブタがIFT抗体力価を生じたのに対して、対照及びEnterisolをワクチン接種したブタは、攻撃誘発まで、血清陰性のままであった。攻撃誘発後、(Enterisolグループ中の2匹を除く)全てのブタがIFT抗体力価を生成した。得られた平均値の概要に関しては、表4を参照されたい(実施例2と比較したときに、希釈がより高いために、検出レベルは4.0であった。)。
【0044】
【表4】

【0045】
Mhyoに関して、実験の開始時及び強化免疫の日(25日齢)に、全てのブタはMhyoに関して血清陰性であった。強化免疫後、グループ1は、市販のワクチンで得られたものと同等の、高いMhyo抗体力価を生成した。
【0046】
PCVに関して、3日齢の時点で、仔ブタは、母親由来の高いPCV抗体力価を有していた。強化免疫の日に(25日齢)、ワクチン接種群(グループ1)は、グループ2及び対照群と比べて同様の力価を有していた。25日齢でのPCV力価は、3日齢での力価と比べて、若干低かった。25日齢でのワクチン接種後、グループ1(3日及び25日に2回ワクチン接種)及びグループ2(25日に1回ワクチン接種)の力価は、高いレベルを保ったのに対して、対照仔ブタは母親由来の抗体の正常な減少を示した。得られたPCV力価は、市販のワクチンを用いて得られる力価と同等であった。
【0047】
糞便試料に対するリアルタイムPCR
攻撃誘発から3週後、グループ1、2及び4のブタは、グループ3及び5と比べて、糞便中に、より少ないローソニア(DNA)を有していた。グループ1と3(Enterisol)の間及びグループ4と3の間の差のみが統計的に有意であった(p<0.05、Mann−Whitney検定)。平均の結果に関しては、表5参照。
【0048】
【表5】

【0049】
組織学スコア
グループ1及び4の組織学スコアは、グループ3及び5のものと比べて、有意に低かった(p<0.05、両側Mann−WhitneyU検定(表6参照))。確認されたPPEを有するブタの数は、グループ1では2/13、グループ2では6/12、グループ3では12/14、グループ4では2/7及び対照群5では12/14であった。グループ1及び4は、グループ3及び5と比べて、PPEの有意により低いPPEの発生率を有していた(p<0.05、両側Fischerの直接確率検定)。
【0050】
【表6】

【0051】
実施例3の結論
前記結果から、PCV及びMhyo抗原と組み合わされた完全細胞のローソニアバクテリン並びに3日齢及び25日齢で投与された炭水化物を含むワクチン(タンパク質を実質的に含まない。)の全身投与は何れも、実験用ローソニア・イントラセルラーリス感染に対して部分的な保護を誘導することを結論付けることができる。離乳前(21から25日より若い)に、初回投与が行われたときに、ワクチンが有効であることは特に驚くべきことである。実施例2及び3では、ローソニア抗原に関する限り、1mL当り、1E8より多くのローソニア・イントラセルラーリス細胞に由来する抗原性物質を含有することが注目される。これらのワクチンは、穏やかなアジュバント(すなわち、小滴を含有し、鉱物油を殆ど又は全く含有しないアジュバント)が使用されている場合でさえ、特に市販のワクチンEnterisol(R)Ileitisと比べたときに、回腸炎に対して優れた保護を与えるという事実に鑑みれば、抗原の用量を低下させることができる。これは、より少ないワクチン(例えば、皮内適用に適した、例えば、0.2mLまで低下)を投与し、又はワクチンの抗原性含量を減少させることによって実施することができる。ワクチン技術での類推に基づくと、1E7細胞、特に、2.5E7細胞又はそれ以上に由来し又は含有する抗原性用量(ワクチン接種当り)を用いると、現在市販されているワクチンと、なお同等又はより優れた結果を得ることができると考えられる。組み合わせワクチンが、市販の単一ワクチンを用いて得られるレベルと同等のレベルまで、Mhyo及びPCV抗体に対する力価を与えたという事実に鑑みれば、組み合わせワクチンも、マイコプラズマ・ヒオニューモニアエ及びブタサーコウイルスに対する保護を与えることが理解される。
【実施例4】
【0052】
この実験は、本発明のワクチンの投薬量効果を確定するために行った。また、この実験では、ワクチン接種されていない動物を対照として使用した。
【0053】
実施例4の実験デザイン
不活化された完全細胞ワクチンは、実施例2に表記されているように作製した。それぞれ、約2.0×10細胞/mLワクチン、5.0×10及び1.25×10細胞/mLワクチンの濃度で、Diluvac forteアジュバント中に、抗原性物質を調合した。3日齢のSPF仔ブタ60匹を使用した。それぞれ15匹のブタからなる4つのグループへブタを振り分けた。グループ1、2及び3の仔ブタには、各回、ワクチン2mLを、3日齢及び25日齢に、筋肉内(頚部)にワクチン接種した。グループ4は、ワクチン接種されていない対照として放置した。46日齢に、実施例2に示されているように、ローソニア細菌で全てのブタを経口的に攻撃誘発した。67日齢に、全てのブタを安楽死させ、検査した。検査は、実施例2に示されているように行った。この次に、粘膜試料に対してPCRを行った。このために、全ての動物から回腸試料を採取し、適用可能な場合には、肥厚を示す領域から回腸試料を採取した。
【0054】
実施例4の結果
体重増加
14日及びそれ以降、グループ間に、総体重増加の有意な差が見られた。グループ1は、約5350グラムの平均総体重増加を示した。グループ2では、これは、5150グラムであった。グループ3は、約4250グラムの体重増加を示したのに対して、グループ4は4550グラムの体重増加を示した。
【0055】
糞便試料に対するリアルタイムPCR
攻撃誘発から3週後、全てのグループにおいて陽性反応が見出された。グループ1及びグループ2は、対照と比べて、有意に低い流出レベルを有していた。感染した動物の数の攻撃誘発後の概要(PCRによって測定)が、表7に示されている。
【0056】
【表7】

【0057】
粘膜試料に対するリアルタイムPCR
攻撃誘発から3週後、全てのグループにおいて陽性反応が見出された。グループ1及びグループ2は、対照と比べて、有意に低い流出レベルを有していた。感染した動物の数の攻撃誘発後の概要(PCRによって測定)が、表8に示されている。
【0058】
【表8】

【0059】
組織学スコア
総組織学スコア及びPPEを有することが確認された動物の数が表9に示されている。
【0060】
【表9】

【0061】
実施例4の結論
予想とは異なり、前記結果は、これらの実験において使用された最少投与量付近で、保護効果の極めて突然の減少が存在することを示している。2.5×10個の細胞から得られた抗原性物質の投薬は、市販のワクチンの保護効果と同等の保護効果をなお与えたが、0.6log高いに過ぎない投薬量の間での減少が非常に著しい(体重増加、感染した動物の数及び粘膜に対するPCRでは、ほとんど一切の効果が見られなかったが、PPE認識された動物の数の減少はなお見られた。)という事実は、一般に、抗原の現実的な最少有効用量は、1×10個の細胞から得られ又は1×10個の細胞を含有するより少ない抗原の量で誘導されることができ、実際には、現在の市場環境下では、経済的に妥当な結果をもたらさないという洞察を与えた。この明らかなカットオフ値が存在する理由は、100%明白なわけではない。通常、投薬量が低下されたときには、保護はより徐々に減少すると予想される。全身的に誘導された免疫応答を介して腸の粘膜中の局所的感染を駆除するには、抗原の最少量が必要とされるということかもしれない。
【0062】
上記の次に、実施例3において見られた驚くべき効果(すなわち、全身的に投与された炭水化物抗原を基礎とするワクチンは、離乳前に(21から25日より若い)、初回投与が行われたときに有効である。)は、別のアジュバントを用いる本実験において確認される。従って、この特徴は、炭水化物抗原を含む非生ワクチンに対して一般的なものであると合理的に理解することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローソニア・イントラセルラーリスによる感染に対して保護するための全身投与に適した形態であるワクチンを製造するための非生炭水化物含有組成物(前記炭水化物は、ローソニア・イントラセルラーリス細胞の外側細胞膜と会合して、生きたローソニア・イントラセルラーリス細胞中にも見出される。)の使用。
【請求項2】
炭水化物含有組成物がローソニア・イントラセルラーリス細菌の死滅から得られる物質であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
炭水化物含有組成物が死滅されたローソニア・イントラセルラーリス細菌の完全な細胞を含有することを特徴とする、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
ワクチンがμmを下回るサイズの油滴を含有する水中油アジュバントを含むことを特徴とする、請求項1から3の何れかに記載の使用。
【請求項5】
アジュバントが生物分解性油の滴及び鉱物油の滴を含み、生物分解性油の滴が鉱物油の滴の平均サイズと異なる平均サイズを有することを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
ワクチンがマイコプラズマ・ヒオニューモニアエ及びブタサーコウイルスの抗原をさらに含むことを特徴とする、請求項1から5の何れかに記載の使用。
【請求項7】
ローソニア・イントラセルラーリスによる感染に対して保護するための全身投与に適した形態であるワクチンを製造するための非生炭水化物含有組成物であり、前記炭水化物は、ローソニア・イントラセルラーリス細胞の外側細胞膜と会合して、生きたローソニア・イントラセルラーリス細胞中にも見出される。

【公表番号】特表2011−516600(P2011−516600A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504462(P2011−504462)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際出願番号】PCT/EP2009/054516
【国際公開番号】WO2009/144088
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(506196247)インターベツト・インターナシヨナル・ベー・ベー (85)
【Fターム(参考)】