説明

ロータス・リーフ効果を有する布帛の製造方法およびロータス・リーフ効果を有する布帛

【課題】ロータス・リーフ効果を有する布帛に関する。またロータス・リーフ効果を有する布帛の製造方法で、染色工程および乾燥工程の後に行う処理方法を提供する。
【解決手段】染色工程および乾燥工程の後に、布帛の表面改質を含む布帛の表面処理と疎水性試剤による処理を行う。表面改質処理としては、プラズマ処理、コロナ処理、化学的エッチング処理および接着剤処理があり、疎水性試剤としてはシリコーン樹脂および弗化炭素を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は布帛の表面処理方法に関する。特に、本発明はロータス・リーフ(Lotus-leaf)効果を有する布帛の製造方法に関する。本発明はまたロータス・リーフ効果を有する布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の防水性および防よごれ性処理においては、布帛は単に試剤に浸漬するか試剤を塗布して、防水性能あるいは防よごれ性能を持たせる。しかしながら、布帛表面に形成した皮膜は洗濯に耐えられない。例えば、皮膜は洗濯機中で(水温40℃)25回洗濯できるに過ぎない。25回の後は防水性および防よごれ性は大きく減少する。
【0003】
従って、よごれあるいは水滴の付着を防ぐためのロータス・リーフ効果を有する布帛の製造方法およびロータス・リーフ効果を有する布帛が強く望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的はロータス・リーフ効果を有する布帛の製造方法を提供することにある。
【0005】
本発明の別の目的はロータス・リーフ効果を有する布帛を提供することにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
多くの付随する利点を持つ本発明の説明とより完全な理解を得るために、ロータス・リーフ効果を有する布帛の製造方法とロータス・リーフ効果を有する布帛について以下の詳細な説明を行う。
【0007】
本発明は、染色工程および乾燥工程の後に、布帛の表面改質を含む布帛の表面処理と疎水性試剤による布帛の処理とを含む、ロータス・リーフ効果を有する布帛の製造方法に関する。
【0008】
本発明に使用される布帛の例としては、合成布帛(例えば、ポリエステル、ポリアミドおよびポリエチレン)、天然繊維(例えば、綿およびレーヨン)、合成布帛と天然布帛(例えば、ナイロン/綿およびポリエステル/綿)の相互織布帛が挙げられる。
【0009】
表面改質の目的は布帛の表面の粗さを増加させて、疎水基を含む試剤と布帛の間の接触面積を増大させ疎水基を含む試剤を布帛に結合させることにある。上記目的を達成できるいかなる表面改質も本発明を実施するのに用いることができる。表面改質の例としては、プラズマ処理、コロナ処理、化学エッチング処理あるいは接着剤処理が挙げられる。
プラズマ処理
布帛を真空室(0.1-0.0001 トル)に入れ、適当なガス(例えば、空気、酸素、窒素、アルゴン、二酸化炭素あるいはこれらの組合わせ)を真空室に導入する。布帛の表面に50-1000 Wの直接電流、無線周波数あるいはマイクロウエーブ励起プラズマを5ないし600秒間導入して表面改質をする。プラズマ処理を行うに適した布帛は、例えば、ポリエステル、ポリエチレンおよびポリアミドなどの合成繊維である。
コロナ処理
布帛を雰囲気中50-1000 Wのコロナで5ないし180秒間表面改質する。コロナ処理を行うに適した布帛は、例えば、ポリエステル、ポリエチレンおよびポリアミドなどの合成繊維である。
化学エッチング処理
天然繊維は、酸を使って化学エッチング処理を行う。合成繊維は、塩基、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムあるいは炭酸水素ナトリウムなどの塩基を使って化学エッチング処理を行う。上記エッチング処理により、繊維の量が0.5-30%減る。化学エッチング処理を行うに適した布帛は、例えば、ポリエステルなどの合成繊維、例えば、綿などの天然繊維である。
接着剤処理
布帛を、例えば、ポリイソシアネート(10-100 g/l)などの特定の接着剤中に浸漬し、乾燥させる。ポリイソシアネートは一般式R-N=C=O、ここにRはC5-C20アルキル、を有する。ポリイソシアネートの好ましい例としては、ポリヘキシルイソシアネート、ポリオクチルイソシアネート、ポリノニルイソシアネートおよびポリドデカニルイソシアネートが挙げられるが、これに限られない。接着剤処理を行うに適した布帛は、例えば、ポリエステルなどの合成繊維、例えば、綿などの天然繊維である。
【0010】
表面改質をした布帛は、ついで5-120 m/minの速度、20-170℃の温度で疎水性試剤で処理して、疎水性試剤が布帛表面に強力に結合し布帛がロータス・リーフ効果を持つようにする。
【0011】
疎水性試剤は紡績の分野では一般に使用されているもので、例えば、シリコーン樹脂や弗化炭素がある。弗化炭素の例としては、式R-Xで表される化合物、ここにRはC1-C15アルキル、Xは(CF2)n、nは1ないし9、が挙げられる。好ましい弗化炭素としては、式R-Xで表される化合物、ここにRはC5-C12アルキル、Xは(CF2)n、nは2ないし7、が挙げられる。さらに好ましい弗化炭素としては、式R-Xで表される化合物、ここにRはC7-C10アルキル、Xは(CF2)n、nは3ないし6、が挙げられる
上記処理をした布帛は蓮の葉に似た表面を有し、よごれあるいは水滴が表面に付着するのが困難となる。布帛が表面改質されているので、布帛と結合している疎水性試剤は洗濯に耐え、持続性のある防水性能および防よごれ性能を有する。通常の防水性あるいは防よごれ性処理においては、布帛は単に試剤に浸漬するか試剤を塗布して、皮膜を形成させ、防水性能あるいは防よごれ性能を持たせる。しかしながら、布帛表面に形成した皮膜は25回洗濯すると布帛から破壊され、布帛は最初の防水性能と防よごれ性能を全く失う。しかしながら、本発明の方法で処理した布帛は、数多くの回数洗濯しても(例えば、100回、あるいはJIS L02173-103の方法で処理して)なお優れた防水性能および防よごれ性能(例えば、AATCC試験法22での方法で試験して)を保持する。換言すれば、本発明の布帛はロータス・リーフ効果を有する。
【0012】
ロータス・リーフ効果を有する布帛の製造方法は、染色工程および乾燥工程の後に、布帛の表面改質を含む布帛の表面処理と布帛の疎水性試剤による処理を行うことからなる。本発明の布帛の製造法は、精錬、サイズ除去、染色、乾燥、表面処理、乾燥、熟成、後処理の工程からなる。必要ならば、これらの工程の順序を調整するか、あるいは付加的な工程をこれらの工程の間に入れることが出来る(順序あるいは付加的な工程の調整が防水性能および防よごれ性能に負の影響を及ぼさないならば)。
【0013】
本発明の方法の工程を以下に述べる。
精錬およびサイズ除去
適当な条件下で、生繊維材を精錬しサイズ除去する。例えば、400-600ヤード/反の生繊維材をその上の油と不純物の除去のために精錬しサイズ除去する。例えば、70-110℃、好ましくは80-110℃の温度、50-60 m/minの速度で生繊維材を精錬しサイズ除去できる。
染色
サイズ除去した生繊維材を、適当な染料、例えば、酸性染料、分散染料、カチオン性染料、反応性染料、インダンスレン染料あるいは直接染料で、適当な染色助剤と共に、例えば、空気流動染色機、ジッガー染色機、ウインチ染色機、ビーム染色機、ジェット染色機、急速染色機あるいは連続浸漬およびパッディング染色機中で、例えば、40-170℃の温度で染色する。
乾燥
染色工程から出て来る生繊維材は、50-210℃の温度、5-80 m/minの速度で乾燥する。
表面処理
乾燥工程から出て来る生繊維材を表面処理する。生繊維材は、布帛の種類によりプラズマ処理、コロナ処理、化学エッチング処理あるいは接着剤処理から選ばれる表面改質により処理される。生繊維材はついで、20-170℃の温度および5-120m/minの速度で疎水性試剤により処理される。
乾燥
表面処理工程から出て来る生繊維材は、50-210℃の温度および5-80m/minの速度で乾燥される。
熟成
乾燥工程から出て来る生繊維材は、90-170℃の温度のオブン中に入れ、5-90m/minの速度で処理して、生繊維材を熟成させてより安定した布帛とする。
最終処理
布帛は必要ならば、例えば、軟化、冷−熱カレンダー処理、塗布、積層および特別な防水処理などの最終処理をすることができる。例えば、布帛を軟化剤が入っているタンクに供給し、軟化処理することができる。ついで、布帛を適当な速度(例えば、35-55 m/min)、適当な高さ(60-100 mm, 例えば80 mm)、適当な角度(45-135°、例えば 90°)、適当な温度(110-130℃、 例えば120℃)で装置に供給し、防水処理をすることができる。ついで、布帛を適当な期間保存して架橋を行わせる。必要ならば、布帛を最終セットして、最終製品を得る。
持続性のある防水(水よごれ)性能の試験
(1)試験法:AATCC試験法22
AATCC試験法22は布帛の撥水性の試験に適用される。
【0014】
(2)試験装置:AATCC-22試験機
(3)試験法
本発明により調製されたロータス・リーフ効果を有する布帛をJIS L02173-103の方法に従って家庭用洗濯機で洗濯し、乾燥し、18 x 18 cmの試験片に裁断する。試験前に、試験片を65 ± 2%の相対湿度、21 ± 1℃の温度で4時間ならす。ついで、試験片を金属フープにしっかりとくくりつけ、滑らかでしわの無い表面にする。フープを試験機のスタンドに対して45°の角度をなす位置に置く。漏斗を試験片の中央から15.2 cm上の位置に置く。27 1℃の250 mlの蒸留水を漏斗に注ぎ、25-30秒間試験片上に振り掛ける。
試験の評点
100:布帛の上表面への付着あるいは上表面の湿潤がない。
【0015】
90: 布帛の上表面への僅かで無作為な付着あるいは上表面の僅かで無作為な湿潤がある。
【0016】
80:水を振り掛けた点で布帛の上表面の湿潤がある。
【0017】
70: 布帛の全上表面上で部分的な湿潤がある。
【0018】
50:布帛の全上表面上で完全な湿潤がある。
【0019】
本発明をさらに説明するために以下の実施例を提供するが、この実施例から技術者が本発明をさらに理解できる。しかしながら、本実施例は、本発明の範囲を制限するものと解するべきでない。
【実施例】
【0020】
450 ± 50ヤード/反の生繊維材を温度90℃および速度50 m/minで精錬およびサイズ剤除去処理する。ついで、生繊維材を温度約110℃で染色、乾燥して後、真空室中で250秒間、無線周波数、500 Wの処理をする。その後、生繊維材を式R-Xの弗化炭素、ここにRはC10アルキル、Xは(CF2)3、で速度20 m/min、温度60℃で処理し、ついで温度110℃で乾燥した。最後に、生繊維材を温度160℃で熟成させてロータス・リーフ効果を有する布帛を得る。
(1)本発明の布帛および通常の布帛について、洗濯前(L0),25回洗濯(L25)および100回洗濯(L100)の場合の耐水性能を上記の方法および試験法に従って試験する。試験の結果は以下の様である。
【0021】
【表1】

【0022】
表の結果は、本発明の布帛は80の高得点を得るが、一方通常の布帛は50の低い点を得ることを示す。
(2)防よごれ性の簡単な試験法
100回洗濯した(40℃の水温)布帛をからし、ケチャップあるいは蜂蜜でよごす。図1に示すように、布帛上のよごれは水スプレーにより簡単に除かれる。
【0023】
もちろん、本発明の精神と本質から離れることなしに、ここに示した方法以外の他の方法で本発明を実施できる。したがって、本実施例はすべての点で説明と考慮すべきであり制限的ではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】家庭用洗濯機で100回洗濯した布帛に付けたよごれが、水を振掛けると容易に除去できることを示す連続的写真を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
染色工程および乾燥工程の後に、布帛の表面改質と疎水性試剤による布帛の処理を行うことを特徴とする、ロータス・リーフ効果を有する布帛の製造方法。
【請求項2】
該表面改質がプラズマ処理、コロナ処理、化学的エッチング処理および接着剤処理を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該疎水性試剤がシリコーン樹脂および弗化炭素を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
該接着剤処理に使用する接着剤が一般式R-N=C=O(式中RはC5-C20アルキルである)で表されるポリイソシアネートである、請求項2記載の方法。
【請求項5】
該ポリイソシアネートがポリヘキシルイソシアネート、ポリオクチルイソシアネート、ポリノニルイソシアネートあるいはポリドデカニルイソシアネートである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
該弗化炭素が式R-X(式中RはC1-C15アルキル、Xは(CF2)n、nは1ないし9である)で表される化合物である、請求項3記載の方法。
【請求項7】
該弗化炭素が式R-X(式中RはC7-C10アルキル、Xは(CF2)n、nは3ないし6である)で表される化合物である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
該布帛が、JIS L02173-103の方法により洗濯され、かつ、AATCC試験法22により試験された場合にも、優れた防水性能と防よごれ性能を保持することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項9】
布帛の表面改質と疎水性試剤による布帛の処理を行ったロータス・リーフ効果を有する布帛。
【請求項10】
該表面改質処理がプラズマ処理、コロナ処理、化学的エッチング処理あるいは接着剤処理を含む、請求項9記載の布帛。
【請求項11】
該疎水性試剤がシリコーン樹脂および弗化炭素を含む、請求項9記載の布帛。
【請求項12】
該接着剤処理に使用する接着剤が一般式R-N=C=O(RはC5-C20アルキル)で表されるポリイソシアネートである、請求項10記載の布帛。
【請求項13】
該ポリイソシアネートがポリヘキシルイソシアネート、ポリオクチルイソシアネート、ポリノニルイソシアネートあるいはポリドデカニルイソシアネートである、請求項12記載の布帛。
【請求項14】
該弗化炭素が式R-X(式中RはC1-C15アルキル、Xは(CF2)n、nは1ないし9である)で表される化合物である、請求項11記載の布帛。
【請求項15】
該弗化炭素が式R-X(式中RはC7-C10アルキル、Xは(CF2)n、nは3ないし6である)で表される化合物である、請求項14記載の布帛。
【請求項16】
該布帛が、JIS L02173-103の方法により洗濯され、かつ、AATCC試験法22により試験された場合にも、優れた防水性能と防よごれ性能を保持することを特徴とする請求項9記載の布帛。

【図1】
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【公開番号】特開2006−124901(P2006−124901A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−273667(P2005−273667)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(505302694)フォーモサ タフェタ カンパニー,リミティド (7)
【Fターム(参考)】