説明

ロータリエンコーダ

【課題】大型化を招来することなく、建設機械への搭載した場合にも高精度の計測が可能なロータリエンコーダを提供すること。
【解決手段】金属製の薄板によってパルスコードホイール70を成形するとともに、所定の耐熱性及び剛性を備えた透光性を有する合成樹脂材によって2枚の板状を成す挟持板80を成形し、これら2枚の挟持板80の間にパルスコードホイール70を挟持させ、かつパルスコードホイール70の両面のスリット73をそれぞれ挟持板80によって覆った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリエンコーダに関するもので、特に、建設機械のブームやアームの回転角度を計測するのに好適なロータリエンコーダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
パワーショベル等の建設機械では、通常、ブームやアームの回転角度を演算し、これらの演算結果に基づいてバケットの刃先を目標位置に移動させる制御が行われている。具体的には、可変抵抗を用いたポテンショメータを回転部分に配設し、ポテンショメータの検出結果から回転角度を演算するようにしている。しかしながら、こうした制御方法は、情報化施工で要求されるような高い精度で機器の動作を制御する場合に必ずしも好ましいとはいえない。
【0003】
こうした要求に対しては、ブームやアームの回転部分にロータリエンコーダを配設すれば、解決することは可能である。ロータリエンコーダは、パルスコードホイールに円周方向に沿って多数のスリットを形成し、これらのスリットを介して発光素子から受光素子に光を入射させるように構成したものである。ロータリエンコーダによってブームやアームの回転角度を計測すれば、より高い精度でバケットの刃先位置を制御することが可能になる。
【0004】
ここで、建設機械にあっては、大きな振動や衝撃が加えられる場合が多いため、これに搭載するロータリエンコーダには十分な耐振動性や耐衝撃性を確保することが必須となる。具体的には、耐振動性については20G、耐衝撃性については100Gの要求を満たす必要がある。耐振動性及び耐衝撃性を考慮すると、ロータリエンコーダとしては、金属製のパルスコードホイールを用いたものが考えられる。
【0005】
金属製のパルスコードホイールにあっては、発光素子から照射された光が通過するためのスリットを貫通させて設ける必要がある。スリットを貫通させる方法としては、金属製のパルスコードホイールにエッチングを施すのが好適であるが、スリットに高い成形精度を確保するには、板厚を薄くしなければならず、上述の耐振動性や耐衝撃性を満たすのが難しくなる。耐振動性及び耐衝撃性を確保しつつ、スリットに高い成形精度を確保するには、パルスコードホイールの直径を大きくすることが考えられるが、直径が大きくなった分ロータリエンコーダが大型化することになり、好ましくない。
【0006】
一方、ロータリエンコーダとしては、例えば特許文献1に記載されたものがある。このロータリエンコーダに適用されるパルスコードホイールは、アクリルまたはポリカーボネート等の透光性を有した合成樹脂材からなる板状体の表面にスリットとなるマスク部を印刷するようにしたものである。このロータリエンコーダによれば、板状体に上述の耐振動性及び耐衝撃性を期待することができるため、大きな振動や衝撃が加えられた場合にも、正確な計測が可能となる。しかも、スリットを構成するマスク部を印刷によって構成しているため、高い成形精度を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−197228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、建設機械に搭載されたブームシリンダやアームシリンダでは、作動流体である油が80℃以上の高温状態となる場合が多い。このため、建設機械に搭載するロータリエンコーダのパルスコードホイールには80℃以上の耐熱性が要求される。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載されたロータリエンコーダでは、マスク部に上述の耐熱性を確保することが困難であり、熱変形に起因して計測の精度に影響を及ぼす恐れがある。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みて、大型化を招来することなく、建設機械への搭載した場合にも高精度の計測が可能なロータリエンコーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係るロータリエンコーダは、所定の軸心を中心として回転可能に配設し、前記軸心を中心とした円周に沿って複数のスリットが開口されたパルスコードホイールと、前記パルスコードホイールのスリットを挟んで互いに対向する部位に発光素子及び受光素子を有し、前記発光素子から前記パルスコードホイールのスリットを通過して前記受光素子に入射される光の検出を行うセンサモジュールとを備えたロータリエンコーダにおいて、金属製の薄板によって前記パルスコードホイールを成形するとともに、所定の耐熱性及び剛性を備えた透光性を有する合成樹脂材によって2枚の板状を成す挟持板を成形し、これら2枚の挟持板の間に前記パルスコードホイールを挟持させ、かつ前記パルスコードホイールの両面のスリットをそれぞれ前記挟持板によって覆ったことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上述したロータリエンコーダにおいて、一端部にフランジ状の挟持部及び前記挟持部よりも小径の挿入軸部を有したシャフトと、中心部に前記シャフトの挿入軸部を嵌合する嵌合孔を有したホルダプレートとを備えるとともに、前記パルスコードホイール及び前記2枚の挟持板の中心部にそれぞれ前記シャフトの挿入軸部を挿通させる挿通孔を形成し、前記挿通孔を介して前記挟持板及び前記パルスコードホイールを前記シャフトの挿入軸部に挿通させた後、前記挟持部に対して前記ホルダプレートを締結することにより、これら挟持部及びホルダプレートの間において前記2枚の挟持板の間に前記パルスコードホイールを挟持させ、前記シャフトの回転に従って前記パルスコードホイールを回転させることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上述したロータリエンコーダにおいて、前記挟持板と前記挟持部及び前記ホルダプレートとの間に弾性接着剤を介在させたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上述したロータリエンコーダにおいて、ポリカーボネートもしくはアクリルによって前記挟持板を成形したことを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上述したロータリエンコーダにおいて、前記挟持板及び前記パルスコードホイールは、それぞれ前記軸心を中心とした弧状の外周縁を有したものであり、かつ前記挟持板の外周縁を前記パルスコードホイールの外周縁よりも外方に位置させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、金属製の薄板によってパルスコードホイールを構成し、耐熱性を有する合成樹脂材によって成形した2枚の挟持板の間にパルスコードホイールを挟持させ、かつパルスコードホイールの両面をそれぞれ挟持板によって覆っているため、パルスコードホイール自体の板厚を小さく設定した場合にも、耐振動性や耐衝撃性、耐熱性を確保することが可能となる。これにより、建設機械へ搭載した場合にも正確な計測を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施の形態であるロータリエンコーダの断面側面図である。
【図2】図2は、図1におけるA−A線断面図である。
【図3】図3は、図2においてパルスコードホイールを180°回転させた状態の断面図である。
【図4】図4は、図1に示したロータリエンコーダの要部分解斜視図である。
【図5】図5は、図1中のB部拡大断面図である。
【図6】図6は、図1中のC部拡大断面図である。
【図7】図7は、図1に示したロータリエンコーダを適用した建設機械の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係るロータリエンコーダの好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
図1及び図2は、本発明の実施の形態であるロータリエンコーダを示したものである。ここで例示するロータリエンコーダは、建設機械、例えば図7に示すように、パワーショベルにおいて車体本体BDとブームBMとの間のブーム回転支持部BRに取り付けられ、ブームシリンダBCの駆動により車体本体BDに対してブームBMが回転した場合に、後述するシャフト40を介して車体本体BDに対するブームBMの回転角度を検出するものである。このロータリエンコーダは、図1に示すように、第1ケース体10及び第2ケース体20によって構成したケース本体1を備えている。第1ケース体10及び第2ケース体20は、それぞれの外周部に設けた接合面10a,20aを介して相互に接合され、図示せぬボルトによって互いに締結されるとともに、パワーショベルの車体本体BDに取り付けられるものである。
【0020】
第1ケース体10には、軸孔11、軸受部12、ガイド嵌合部13、ホルダ嵌合部14及びOリング装着部15が設けてある。軸孔11は、比較的小径に形成した横断面円形の開口である。軸受部12は、軸孔11よりも大径、かつ軸孔11に連接した円板状の凹所である。ガイド嵌合部13は、軸受部12よりも十分に大径、かつ軸受部12に連接した円板状の凹所である。ガイド嵌合部13の軸方向に沿った長さは、軸受部12よりも小さい寸法に形成してある。ホルダ嵌合部14は、ガイド嵌合部13よりもさらに大径、かつガイド嵌合部13に連接した円板状の凹所である。Oリング装着部15は、ホルダ嵌合部14よりもさらに大径、かつホルダ嵌合部14に連接するとともに、第1ケース体10の接合面10aに開口した円板状の凹所である。これら軸孔11、軸受部12、ガイド嵌合部13、ホルダ嵌合部14及びOリング装着部15は、互いに軸心を合致させた状態で第1ケース体10に形成してある。
【0021】
第2ケース体20には、ホルダ収容部21及びモールド充填部22が形成してある。ホルダ収容部21は、第1ケース体10のガイド嵌合部13と同一の内径を有した円板状の凹所であり、第2ケース体20の接合面20aに開口している。モールド充填部22は、ホルダ収容部21よりもわずかに小径、かつホルダ収容部21に連接した円板状を成す凹所である。これらホルダ収容部21及びモールド充填部22は、互いに軸心を合致させた状態で第2ケース体20に形成してある。
【0022】
これら第1ケース体10及び第2ケース体20は、Oリング装着部15にOリング16を装着し、ガイド嵌合部13とホルダ収容部21との軸心を合致させた状態でそれぞれの接合面10a,20aを介して接合させることにより、互いの間に収容空間2を構成することになる。この本体ケース1の収容空間2には、ホルダ30が配設してある。
【0023】
ホルダ30は、基端部が閉塞壁31によって閉塞された円筒状を成すもので、開放した先端部外周部3Aを第1ケース体10のホルダ嵌合部14に嵌合させ、かつ基端部外周を第2ケース体20のホルダ収容部21に嵌合させた状態で本体ケース1に取り付けてある。このホルダ30には、閉塞壁31において軸孔11に対向する部位に環状支持部32が設けてある。環状支持部32は、閉塞壁31から軸孔11に向けて突出した筒状を成すもので、その軸心を軸孔11の軸心に合致させた状態で閉塞壁31にホルダ30の一体に形成してある。第1ケース体10とホルダ30とによって囲まれた空間には、シャフト40及びセンサモジュール50が配設してある。
【0024】
シャフト40は、図7に示したパワーショベルのブーム回転支持部BRに対して同一の軸心上に取り付けられ、車体本体BDに対してブームBMが回転した場合に一体となって回転するものである。図には明示していないが、シャフト40とブーム回転支持部BRとの間は、直接接続しても良いし、リンクを介して接続しても良い。図1に示すように、このシャフト40には、主軸部41、第1回転支承部42、挟持部43、挿入軸部44及び第2回転支承部45が一体に設けてある。これら主軸部41、第1回転支承部42、挟持部43、挿入軸部44及び第2回転支承部45は、いずれも円柱状を成すもので、互いに軸心を合致させた状態で連接してある。
【0025】
主軸部41は、ブーム回転支持部BR(図7)に接続される部分であり、第1ケース体10の軸孔11よりも小径に構成してある。第1回転支承部42は、主軸部41よりも大径、かつ第1ケース体10に設けた軸受部12の内径よりも小径に形成してある。挟持部43は、第1回転支承部42よりも大径、かつ第1ケース体10に設けたガイド嵌合部13よりも小径に形成してある。挿入軸部44は、主軸部41よりも大径、かつ第1回転支承部42よりも小径に形成してあり、挟持部43との間に挟持面46を構成している。挟持面46は、主軸部41の軸心に対して直交する平坦面であり、挿入軸部44の外周域に環状に設けてある。第2回転支承部45は、主軸部41よりも大径、かつホルダ30に設けた環状支持部32の内径よりも小径に形成してある。
【0026】
上記のように構成したシャフト40は、第1回転支承部42と第1ケース体10の軸受部12との間に第1ベアリング3を介させるとともに、第2回転支承部45とホルダ30の環状支持部32との間に第2ベアリング4を介在させ、さらに主軸部41の先端を軸孔11から外部に突出させた状態で第1ケース体10とホルダ30との間に回転可能に支持させてある。第1ベアリング3及び第2ベアリング4は、それぞれシールドベアリングであり、封入されたグリスが外部に漏れ出すことはない。主軸部41と軸孔11との間には、ダストシール5を介在させており、さらに第1ケース体10の外表面において主軸部41の周囲となる部位には、軸孔11及びダストシール5を覆う態様でカバープレート6が取り付けてある。
【0027】
センサモジュール50は、図には明示していないが、発光素子と受光素子とが互いに対向して配設され、受光素子の検出信号に基づいてパルス信号を出力するモジュール本体51と、モジュール本体51をノイズや電磁気障害から保護する保護回路が実装された回路基板52とを備えたものである。モジュール本体51は、第1ケース体10において軸受部12とガイド嵌合部13との間に構成された支持面17の外周部に取り付けてある。回路基板52は、ガイド嵌合部13に嵌合させたガイド60に取り付けてある。ガイド60は、基端部に内方フランジ61を有した円筒状部材であり、基端外周がホルダ30の内部に収容することのできる外径を有するとともに、先端外周が第1ケース体10のガイド嵌合部13に嵌合することのできる外径を有している。このガイド60は、内方フランジ61をホルダ30の閉塞壁31に対向させた状態で、開放した先端外周を第1ケース体10のガイド嵌合部13に嵌合させた状態で第1ケース体10に取り付けてあり、内方フランジ61においてホルダ30の閉塞壁31に対向する部位に上述の回路基板52を保持している。
【0028】
図1からも明らかなように、センサモジュール50に接続されたケーブル53は、導出孔33を介してホルダ30の外部に導出し、さらに第2ケース体20に設けたケーブル孔23を介して本体ケース1の外部に引き出してある。ケーブル53と導出孔33との間には、グロメット34が介在させてあり、ケーブル53とケーブル孔23との間には、キャップ24が介在させてある。グロメット34は、弾性部材によって成形してあり、キャップ24は、合成樹脂材によって成形してある。尚、図には明示していないが、ケーブル53を本体ケース1の外部に引き出した状態においては、第2ケース体20のモールド充填部22とホルダ30との間にモールド材を充填して隙間を埋めるようにしている。
【0029】
一方、シャフト40には、パルスコードホイール70が取り付けてある。パルスコードホイール70は、図1〜図3に示すように、金属の薄板によって形成した略円板状を成す部材であり、中心部に設けた挿通孔71を介し、互いの軸心を合致させた状態でシャフト40の挿入軸部44に嵌合してある。パルスコードホイール70の外径は、その外周部がセンサモジュール50の発光素子と受光素子との間に介在できる寸法に形成してある。本実施の形態では、ニッケル銅合金によって成形した板厚0.04mmのパルスコードホイール70を適用している。
【0030】
このパルスコードホイール70には、外周の一部に欠損部72が設けてあるとともに、欠損部72を除く外周縁部に多数のスリット73が形成してある。欠損部72は、図2及び図3に示すように、パルスコードホイール70を外縁から直線状に切り欠いて構成した部分である。図3に示すように、この欠損部72は、シャフト40の挿入軸部44にパルスコードホイール70を挿通させた状態で第1ケース体10の支持面17に対してセンサモジュール50のモジュール本体51を通過させることのできる大きさに形成してある。スリット73は、エッチングを施すことによってパルスコードホイール70を貫通した細幅の開口であり、シャフト40の軸心を中心とした円周に沿って互いに並設してある。これらのスリット73は、図には明示していないが、シャフト40を軸心回りに回転させた場合に、センサモジュール50のモジュール本体51において発光素子と受光素子との間に配置され、発光素子から照射された光を受光素子へ入射させることが可能である。
【0031】
パルスコードホイール70には、図4〜図6に示すように、その両面に挟持板80が配設してある。挟持板80は、所定の耐熱性及び剛性を備えた透光性を有する合成樹脂材によって板状に成形したもので、パルスコードホイール70とほぼ同じ外形形状に構成してある。挟持板80が欠損部82を有しているのもパルスコードホイール70と同じである。本実施の形態では、パワーショベルで作動流体として用いられる油の温度を考慮して耐熱性を80℃以上に設定し、さらに透光性を有する合成樹脂材としてポリカーボネートもしくはアクリルを適用することとした。特に、ポリカーボネートを適用した場合には、耐熱性をさらに上げることができるため、より好ましいものとなる。パワーショベルでの耐振動性及び耐衝撃性を考慮し、挟持板80の板厚は、0.3mmに設定した。
【0032】
図4に示すように、2枚の挟持板80は、パルスコードホイール70の両面に配置した状態でそれぞれの挿通孔81を介してシャフト40の挿入軸部44に配置し、この状態からホルダプレート90を介してシャフト40の挟持部43に複数のネジ100(実施の形態では3つのネジ100)を同一の円周上に等間隔に締結することにより、両面を完全に覆った状態でパルスコードホイール70を押圧挟持している。ホルダプレート90は、シャフト40の挟持部43とほぼ同じ外径を有し、かつその中心部にシャフト40の挿入軸部44に嵌合する嵌合孔91を有した円板状部材である。図5に示すように、挟持板80とシャフト40の挟持部43との間及び挟持板80とホルダプレート90との間には、それぞれ弾性接着剤101を介在させている。この弾性接着剤101により、ネジ100を締結した場合にも、挟持部43及びホルダプレート90が挟持板80に対して広範な面で接触し、パルスコードホイール70と各挟持板80との間の押圧力が不均一となる事態を防止できるため、耐振動性や耐衝撃性の点で有利となる。
【0033】
図5及び図6に示すように、挟持板80の外径及び挟持板80に形成した挿通孔71の内径は、それぞれパルスコードホイール70よりもわずかに大きく形成してある。挟持板80の外径をパルスコードホイール70よりも大径に形成したのは、組立時等においてパルスコードホイール70に損傷や変形を来す事態を防止するためである。一方、挟持板80に形成した挿通孔71の内径をパルスコードホイール70の挿通孔71よりも大径に形成したのは、シャフト40の挿入軸部44に対してパルスコードホイール70を直接嵌合させることにより、パルスコードホイール70の芯ずれを防止して位置決めするためである。
【0034】
上記のような構成を有するロータリエンコーダは、例えば以下の手順で組み立てれば良い(図1参照)。
(1)第1ケース体10の軸孔11にダストシール5を装着する。
(2)シャフト40の第1回転支承部42に第1ベアリング3のインナーレースを圧入する。
(3)第1ケース体10の軸受部12に第1ベアリング3のアウターレースを挿入してから第1ケース体10にシャフト40を配置する。
(4)パルスコードホイール70を挟持板80で両面から挟み込む。
(5)挟持板80で両面を覆ったパルスコードホイール70をシャフト40の挿入軸部44に挿通させ、ホルダプレート90を介してネジ100を締結する。
(6)シャフト40の第2回転支承部45に第2ベアリング4のインナーレースを圧入する。
(7)第1ケース体10の支持面17にセンサモジュール50のモジュール本体51をネジ54(図2)で取り付ける。このとき、支持面17とモジュール本体51との間に弾性接着剤(図示せず)を塗布する。また、ネジ54には緩み止めを塗布する。
(8)ガイド60の端面に弾性接着剤(図示せず)を塗布し、第1ケース体10のガイド嵌合部13に嵌合させる。
(9)回路基板52をガイド60にネジ55で固定する。
(10)ホルダ30を第1ケース体10のホルダ嵌合部14に圧入する。このとき、第2ベアリング4のアウターレースを同時に挿入する。
(11)ホルダ30の導出孔33とケーブル53と間にグロメット34を装着する。
(12)第1ケース体10に第2ケース体20を取り付ける。
(13)第2ケース体20のモールド充填部22とホルダ30との間にモールド材を充填する。
【0035】
上記のように構成したロータリエンコーダでは、図7に示すように、パワーショベルがブームシリンダBCの駆動により車体本体BDに対してブームBMが回転すると、本体ケース1に対してシャフト40が回転することになる。シャフト40が回転すると、センサモジュールのモジュール本体51に対してパルスコードホイール70が回転し、スリット73が通過するたびに図示せぬ発光素子から照射された光が受光素子に入射されることになり、その検出信号に基づき、回路基板52において回転角度が算出される。
【0036】
ここで、発光素子から照射された光は、パルスコードホイール70の両面に配設した挟持板80を通過することになるが、挟持板80として透光性を有したものを適用しているため、受光素子での光の検出に支障を来す恐れはない。
【0037】
しかも、パルスコードホイール70として金属製のものを適用し、かつその板厚をごく薄く(0.04mm)設定したものを適用しているため、大型化を招来することなく、エッチングによって多数のスリット73を精度良く一時に設けることが可能となり、製造作業を容易化することができるとともに、ロータリエンコーダがパワーショベルの高温状態に曝された場合であっても、パルスコードホイール70に熱変形を来す恐れがない。
【0038】
さらに、パルスコードホイール70を耐熱性を有した挟持板80によって両端から挟み込み、かつパルスコードホイール70の両面をそれぞれ挟持板80によって完全に覆っている。従って、大きな振動や衝撃が加えられた場合にも、パルスコードホイール70が振動したり変形したりする事態を防止でき、正確な計測を行うことが可能となる。また、パルスコードホイール70に形成したスリット73にゴミ等の異物が侵入する恐れもなくなるため、高精度の計測を長期に渡って行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0039】
40 シャフト
43 挟持部
44 挿入軸部
50 センサモジュール
51 モジュール本体
52 回路基板
70 パルスコードホイール
71 挿通孔
73 スリット
80 挟持板
81 挿通孔
90 ホルダプレート
91 嵌合孔
101 弾性接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸心を中心として回転可能に配設し、前記軸心を中心とした円周に沿って複数のスリットが開口されたパルスコードホイールと、
前記パルスコードホイールのスリットを挟んで互いに対向する部位に発光素子及び受光素子を有し、前記発光素子から前記パルスコードホイールのスリットを通過して前記受光素子に入射される光の検出を行うセンサモジュールと
を備えたロータリエンコーダにおいて、
金属製の薄板によって前記パルスコードホイールを成形するとともに、所定の耐熱性及び剛性を備えた透光性を有する合成樹脂材によって2枚の板状を成す挟持板を成形し、
これら2枚の挟持板の間に前記パルスコードホイールを挟持させ、かつ前記パルスコードホイールの両面のスリットをそれぞれ前記挟持板によって覆ったことを特徴とするロータリエンコーダ。
【請求項2】
一端部にフランジ状の挟持部及び前記挟持部よりも小径の挿入軸部を有したシャフトと、
中心部に前記シャフトの挿入軸部を嵌合する嵌合孔を有したホルダプレートと
を備えるとともに、前記パルスコードホイール及び前記2枚の挟持板の中心部にそれぞれ前記シャフトの挿入軸部を挿通させる挿通孔を形成し、
前記挿通孔を介して前記挟持板及び前記パルスコードホイールを前記シャフトの挿入軸部に挿通させた後、前記挟持部に対して前記ホルダプレートを締結することにより、これら挟持部及びホルダプレートの間において前記2枚の挟持板の間に前記パルスコードホイールを挟持させ、前記シャフトの回転に従って前記パルスコードホイールを回転させることを特徴とする請求項1に記載のロータリエンコーダ。
【請求項3】
前記挟持板と前記挟持部及び前記ホルダプレートとの間に弾性接着剤を介在させたことを特徴とする請求項2に記載のロータリエンコーダ。
【請求項4】
ポリカーボネートもしくはアクリルによって前記挟持板を成形したことを特徴とする請求項1に記載のロータリエンコーダ。
【請求項5】
前記挟持板及び前記パルスコードホイールは、それぞれ前記軸心を中心とした弧状の外周縁を有したものであり、かつ前記挟持板の外周縁を前記パルスコードホイールの外周縁よりも外方に位置させたことを特徴とする請求項1に記載のロータリエンコーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−255709(P2012−255709A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128647(P2011−128647)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】