説明

ロータリジョイント

機器に固定され回転しないロータリジョイント部分12と、回転するロータリジョイント部分15と、軸受手段と、シール手段とを備え、このシール手段が回転するロータリジョイント部分15と機器に固定されたロータリジョイント部分12との間の半径方向封止面内で作用する、圧力付勢された媒体を回転する機械部分の軸方向中空室内に供給および/または該中空室から排出するためのロータリジョイントにおいて、軸受手段が機器に固定されたロータリジョイント部分12と回転するロータリジョイント部分15との間の半径方向間隔を決定する個々の支持軸受13、14を備えていることを特徴とするロータリジョイント。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器に固定され回転しないロータリジョイント部分と、回転するロータリジョイント部分と、軸受手段と、シール手段とを備え、このシール手段が回転するロータリジョイント部分と機器に固定されたロータリジョイント部分との間の半径方向封止面内で作用する、圧力付勢された媒体を回転する機械部分の軸方向中空室内に供給および/または該中空室から排出するためのロータリジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリジョイントは一般的に、機器に固定され回転しないロータリジョイント部分と、回転する機械部分と共に回転するロータリジョイント部分とを備え、この場合シール手段が機器に固定されたロータリジョイント部分と回転するロータリジョイント部分との間に配置されている。このようなロータリジョイントはロールまたはローラに冷却媒体を供給するために使用される。このロールまたはローラは端部が軸受を介して支持されるいわば心棒または軸である。回転するこの機械部分は大きな荷重を受けてある程度軸線が撓む。これは心棒端部または軸端部のいわゆる角度エラーを生じることになる。回転するロータリジョイント部分が回転する機械部分に固定連結されているときに、角度エラーは回転する機械部分、ひいては回転するロータリジョイント部分の半径方向端面の摺動および傾動を意味する。これはシール問題につながる。
【0003】
特許文献1からロータリジョイントが知られている。このロータリジョイントの回転するロータリジョイント部分はスリーブを備えている。回転する機械部分は中空室インサートを備えた軸方向の中空室を有する。ブッシュは中空室に適合した外面を有する。回転する機械部分は心棒端部のある程度の揺動を許容する軸受を介して支持されている。その際、中空室インサートのブッシュは中高の内面を有する。回転するロータリジョイント部分のスリーブの外径はブッシュの中高の内面の最小直径に合うように形成されている。この構造の場合、シール手段が機器に固定された機械部分と回転する機械部分との間において、回転するロータリジョイント部分の軸線に対して半径方向の平面内で作用し、互いに摺動可能である一方、シール手段は同時に相対的に回転する。大きな負荷を受けて回転する機械部分が撓んで心棒端部が揺動すると、回転するロータリジョイント部分はブッシュの中高内面上で角度エラーの値だけ転動することができるので、回転するロータリジョイント部分は軸線平行のままであり、半径方向の封止面内でシール手段が傾斜することがない。それによって、半径方向封止面内で相変わらず良好な封止作用が予想される。特許文献1から知られているロータリジョイントは、端面側がフランジ止めされるロータリジョイントとして形成されている。
【0004】
しかしながら、端面側を接続することがしばしば不可能である。特に、駆動技術、とりわけロール駆動装置の大きな軸の場合に、外部から軸内に媒体を流入させるために、半径方向のロータリジョイントが例えば軸で使用される。この軸には歯付き関節スピンドル(Zahngelenkspindel)が枢着されている。この場合、定置されたロータリジョイント部分は供給リングを備えている。この供給リングは滑り軸受を介して、定置されたロータリジョイント部分の内部で回転するロータリジョイント部分に対して軸承されている。潤滑媒体が半径方向の供給部から供給リングを通って、両ロータリジョイント部分の間の中空室に入り、この中空室から、回転するロータリジョイント部分内に延在する半径方向通路を経て、この回転するロータリジョイント部分の内部に達する。
【0005】
従来技術のこのようなロータリジョイント(図1に斜視図で示され、そして図1の切断線A−Aに沿って切断して図2に示されている)は、機器に固定されたロータリジョイント部分2を備えている。このロータリジョイント部分は回転するロータリジョイント部分3、すなわち軸を外周壁状に半径方向から取り囲んでいる。ロータリジョイント部分2のハウジング4内には、半径方向に延在する媒体供給通路5が形成されている。この媒体供給通路はハウジング4と一緒に回転するスライドリング6を通過し、ロータリジョイント部分3をリング状に取り囲むチャンバ7に媒体を供給する。中空チャンバ7はロータリジョイント部分3と一緒に回転し半径方向に延在する他の媒体供給通路8を介して、ロータリジョイント部分3の縦軸線方向に延在する媒体通路9に接続されている。スライドリング6はロータリジョイント部分3の外周面と共に高さ約0.5mmの潤滑隙間6aを形成し、ロータリジョイント部分3の端面側に取付けられたシール10、11によって外部に対して封止されている。この構造の場合、スライドリング6とロータリジョイント部分3との間に比較的に大きな遊びを設けなければならず、潤滑媒体の高い圧力を発生させることができない。
【0006】
このような解決策および他の公知の解決策は、軸承部と軸との間に常に遊びが存在するという欠点がある。軸承部の固有の潤滑剤の消費も不利である。他の欠点は、運転の途中における、使用される媒体の温度上昇と、回転するロータリジョイント部分と定置されたロータリジョイント部分との間の大きな遊びに起因する封止問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許第102004056818B3号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、従来技術の欠点を回避することと、より高い圧力、特に2バール超の圧力のためにシールを使用できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は冒頭に述べた種類のロータリジョイントにおいて本発明に従い、軸受手段が機器に固定されたロータリジョイント部分と回転するロータリジョイント部分との間の半径方向間隔を決定する個々の支持軸受を備えていることによって解決される。
【0010】
それによって、従来技術で設けられているような回転する軸承部の代わりに、点状の支持要素しか必要としない。これは、従来技術と比べて、摩擦熱の発生が非常に少なくなる。本発明により、従来技術の欠点が克服される。本発明により、機能が良好なロータリジョイントを偏平ジャーナルスピンドル(Flachzapfenspindel)に組み込むことができる。
【0011】
本発明の有利な発展形態は従属請求項から明らかである。
【0012】
支持軸受が支持ローラとして形成されていると有利であることがわかった。支持ローラの使用によって、定置されたロータリジョイント部分に対する回転するロータリジョイント部分の固定支持が行われる。この固定支持は安定性が高いと共に軸受の領域において滑り摩擦の代わりにころがり摩擦を生じ、従って従来技術の場合よりも冷却兼潤滑媒体の加熱が弱くなる。さらに、例えば0.2mm未満の小さな半径方向の振れしか打ち消すことができないシールを、より高い圧力で使用することができる。ロータリジョイントと軸との間の実際の半径方向の振れは、この値よりもはるかに小さくなければならない。しかしながら、本発明を適用すると、このような小さな半径方向の振れが達成可能であることがわかった。本発明では、固定されたロータリジョイント部分の重量が少なくとも2個のローラまたは少なくとも2対のローラ、すなわち支持ローラによって軸に伝達され、それによって媒体供給部に組み込まれたシールが軸、すなわち回転するロータリジョイント部分の外周壁に正確に接触し、それに伴いシール唇部の可動性が小さくて済む。従って、小さな可撓性を有する高圧用シールを使用することができる。
【0013】
支持ローラを形成するローラまたは対のローラは、通過案内すべき潤滑媒体による潤滑に依存していない。これは、本発明によるロータリジョイントによって任意の液状媒体またはガス状媒体が通過案内されることを意味する。
【0014】
支持ローラは好ましくは心棒、軸、ハブによっておよび/または端面側の案内手段によって、特にカラーによって案内されている。
【0015】
本発明の基本原理に従って、少なくとも2個の支持ローラが回転するロータリジョイント部分の軸線の上方において、媒体供給用外側供給リング上の1つの半径方向平面内に配置され、この支持ローラが回転しないロータリジョイント部分に対して支持されている。
【0016】
その代わりに、少なくとも2個の支持ローラは互いに鋭角または鈍角をなして配置されている。
【0017】
本発明のきわめて有利な実施形態では、3個の支持ローラが特に互いに等間隔をおいて設けられている。原理的には、軸承は対称的にまたは非対称的に行うことができる。
【0018】
例えば支持ローラのころがり軸受の遊びのない付勢機構を使用することにより、正確な回転安定性と共に、回転するロータリジョイント部分の遊びのない回転を達成することができる。
【0019】
さらに、支持ローラはそれぞれ、それらを支持するハウジング、特に車に統合されている。
【0020】
支持軸受は媒体が流れる空間の中または外に配置することができる。
【0021】
本発明はさらに、本発明に従って、特に次の記載に基づいて示すようなロータリジョイントを備えた駆動ユニット、特にロール駆動装置に関する。
【0022】
次に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来技術のロータリジョイントの斜視図である。
【図2】図1の切断線A−Aに沿った断面図である。
【図3】機器に固定されたロータリジョイント部分が2個の支持ローラを介して回転するロータリジョイント部分に対して支持されているロータリジョイントの第1の実施形態の側面図である。
【図4】切断線A−Aに沿った、図3のロータリジョイントの断面図である。
【図5】機器に固定されたロータリジョイント部分が等間隔の3個の支持ローラを介して回転するロータリジョイント部分に対して支持されているロータリジョイントの他の実施形態の側面図である。
【図6】等間隔の4個の支持ローラが機器に固定されたロータリジョイント部分を回転するロータリジョイント部分に対して支持する、本発明の第3の実施形態の側面図である。
【図7】切断線B−Bに沿った、図6の第3の実施形態の断面図である。
【図8】第3の実施形態の変形の側面図である。
【図9】切断線B−Bに沿った、図8の変形の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の第1の実施形態(図3、図4)において、ロータリジョイントは機器に固定されたロータリジョイント部分12を備え、このロータリジョイント部分はその端面側に取付けられた2対の支持ローラ13、14を介して、回転するロータリジョイント部分15に対して支持されている。両対の支持ローラ13、14は互いに直角に配置されている。ロータリジョイント部分15のハウジング部分16と相対的な支持ローラ13、14の位置は、軸を介してまたは側方の固定手段を介して固定されている。ローラ軸17と外周壁部分18との間にはそれぞれ1個のリング状の軸受19が設けられている。
【0025】
支持ローラ13、14はシール20、21によって封止されたリング状の中空室22の外側に設けられている。この中空室はロータリジョイント部分15を取り囲んでいる。ハウジング部分16内には、中空室22に通じる媒体供給部23が設けられている。潤滑および/または冷却の働きをする媒体は、中空室から、ロータリジョイント部分15の内部の半径方向に延在する通路24に案内される。この通路24はロータリジョイント部分15の縦軸線方向に延在する通路25に接続している。
【0026】
本発明に係るロータリジョイントの第2の実施形態(図5)が類似の方法で形成されている。この場合、3個の支持ローラ26、27、28が設けられている。この支持ローラは等間隔をおいて配置されているので、その中心は等辺三角形の角を形成している。それによって、この構造は、構造体の安定性が定置されたロータリジョイント部分の自重によってのみ決まる図3、図4に示した構造と比べて、滑らかな回転が保証されるという利点を有する。支持ローラ26、27、28の軸位置を変更することにより、ロータリジョイント部分15と相対的なロータリジョイント部分12、ひいてはシール20、21の遊びのない回転を生じることができる。
【0027】
ロータリジョイントの他の実施形態(図6、図7)は4個の支持ローラ29、30、31、32を備えている。この支持ローラの中心は正方形の角を形成している。図3に示した実施形態と異なり、支持ローラ29、30、31、32の軸は、ハウジング部分16に対して軸ジャーナルまたは回転カラー34を介して側方で軸承された1本の軸33(図7)によって形成されている。その他の点では、この実施形態の構造は図3〜図5に示した実施形態と同じである。この実施形態の利点は、より大きな軸方向力を伝達することができる点にある。
【0028】
最後の実施形態(図8、図9)では、ロータリジョイント部分12が同様に4対の支持ローラ29〜32を有するが、上記の実施形態と異なり、このロータリジョイント部分内において支持ローラ29〜32の対が、ロータリジョイント部分12の両端面に互いに対向させて取付けられないで、並べてかつ共通の軸35によって互いに連結されて両端面の一方に取付けられている。他の実施形態のように、支持ローラ29〜32はハウジング部分16の外に設けられている。理解されるように、支持ローラ29〜32がツインローラとして形成されている場合には、180°だけ互いに対向する支持ローラ29、32を例えば一方の端面に配置し、同様に180°だけ対向する他の両支持ローラ30、31を他方の端面に配置することができる。
【0029】
この実施形態はシール20、21にそれぞれ容易にアクセスできるという利点がある。この実施形態はさらに、スペースが狭い場合にも使用可能である。本発明に従い、中高の外側輪郭、すなわち凸形の外側輪郭を有する外周壁部分18を備え、これに対応して形成された輪郭を有する両ロータリジョイント部分上を転動する支持ローラも使用可能である。
【0030】
すべての実施形態において、機器に固定されたロータリジョイント部分12はトルク支持体によって、定置された構造部分に対して支持されている。
【符号の説明】
【0031】
1 ロータリジョイント
2 機器に固定されたロータリジョイント部分
3 回転するロータリジョイント部分
4 ハウジング
5 媒体供給通路
6 スライドリング
6a 潤滑隙間
7 チャンバ
8 媒体供給通路
9 媒体通路
10 シール
11 シール
12 機器に固定されたロータリジョイント部分
13 支持ローラ
14 支持ローラ
15 回転するロータリジョイント部分
16 ハウジング部分
17 軸
18 外周壁部分
19 リング状軸受
20 シール
21 シール
22 中空室
23 媒体供給部
24 媒体供給通路
25 媒体通路
26 支持ローラ
27 支持ローラ
28 支持ローラ
29 支持ローラ
30 支持ローラ
31 支持ローラ
32 支持ローラ
33 軸
34 回転カラー
35 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器に固定され回転しないロータリジョイント部分(12)と、回転するロータリジョイント部分(15)と、軸受手段と、シール手段(20、21)とを備え、このシール手段が回転する前記ロータリジョイント部分(15)と機器に固定された前記ロータリジョイント部分(12)との間の半径方向封止面内で作用する、圧力付勢された媒体を回転する機械部分の軸方向中空室内に供給および/または該中空室から排出するためのロータリジョイントにおいて、
前記軸受手段が機器に固定された前記ロータリジョイント部分(12)と回転する前記ロータリジョイント部分(15)との間の半径方向間隔を決定する個々の支持軸受(13、14、26、27、28、29、30、31、32)を備えていることを特徴とするロータリジョイント。
【請求項2】
前記支持軸受が支持ローラ(13、14、26、27、28、29、30、31、32)として形成されていることを特徴とする請求項1に記載のロータリジョイント。
【請求項3】
前記支持ローラ(13、14、26、27、28、29、30、31、32)が心棒、軸(33)、ハブによっておよび/または端面側の案内手段によって、特にカラー(34)によって案内されていることを特徴とする請求項2に記載のロータリジョイント。
【請求項4】
少なくとも2個の支持ローラ(13、14)が回転する前記ロータリジョイント部分(15)の軸線の上方で1つの半径方向平面内に配置され、この支持ローラが回転しない前記ロータリジョイント部分(12)に対して支持されていることを特徴とする請求項3に記載のロータリジョイント。
【請求項5】
前記支持ローラ(13、14、26、27、28、29、30、31、32)が互いに鋭角または鈍角をなして配置されていることを特徴とする請求項4に記載のロータリジョイント。
【請求項6】
3個の支持ローラ(26、27、28)が特に互いに等間隔をおいて設けられていることを特徴とする請求項5に記載のロータリジョイント。
【請求項7】
前記支持軸受が付勢されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のロータリジョイント。
【請求項8】
前記支持ローラがそれぞれ、それらを支持するハウジング、特に車に統合されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のロータリジョイント。
【請求項9】
前記支持軸受が、媒体が流れる空間の中または外に配置されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のロータリジョイント。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のロータリジョイントを備えた駆動ユニット、特にロール駆動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2012−508359(P2012−508359A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535920(P2011−535920)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際出願番号】PCT/EP2009/008075
【国際公開番号】WO2010/054822
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(390035426)エス・エム・エス・ジーマーク・アクチエンゲゼルシャフト (320)
【Fターム(参考)】