説明

ロータリソレノイド

【課題】 組み立てが容易で、かつ、高トルクを得るのに好適な構造を有するロータリソレノイドを提供すること。
【解決手段】 第1巻線部13と第2巻線部14とを第1シャフト構成体60及び第2シャフト構成体68の側方に、かつ、極めて近接させて設けたので、コイル20の形成が容易になる。さらに、コイルボビン11への装着も容易になっている。シャフトを第1シャフト構成体60と第2シャフト構成体68との2つで構成したので、コイルボビン11をシャフトに固定することが非常に容易になる。また、シャフトを第1シャフト構成体60と第2シャフト構成体68とからなる構成にし、2つのシャフト構成体を螺合するときにシャフトの段差等によってコイルボビン11を2つのシャフト構成体に固定したので、固定手段を別途設ける必要がなく、ロータリソレノイド10の組み立て手順の自由度も大きくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリソレノイドに関し、特に小型化が容易で、かつ、高トルクを得るのに好適な構造を有するロータリソレノイドに関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリソレノイドは、一般的に、コイル、固定磁極、回転子、永久磁石、ストッパ及びシャフトなどの構成を有している。そして、コイルに通電すると発生する磁力によりストッパに規制されるまで回転子が回転し、通電を止めると回転子が永久磁石に吸引されて通電前の位置まで復帰する構成となっているものが多い。
【0003】
このようなロータリソレノイドにおいて、高トルク化を図るために様々な構造が提案されている。例えば、特開2004−172353公報に開示されているロータリソレノイドでは、一対の突部を固定磁極の回転軸に対して対称となる位置に設け、さらに回転子に設けた一対の永久磁石の一方を、回転方向にずらし固定磁極に近接させて設けた構造にしている。
【0004】
他の例においても、固定磁極の形状や永久磁石の配置がトルクに大きな影響を与えることから、固定磁極や永久磁石に改良を加えたものが多い。
【0005】
しかしながら、固定磁極の改良は、固定磁極や、これに付随して設けられる永久磁石などの加工コストを増大するのに対して十分な高トルク化を図れない場合が多い。また、固定磁極に複雑な凹凸を付加する改良では、固定磁極の配置スペースが大きくなるために周辺部品との間隙を十分確保できず、組み立てが困難になるという課題も生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−172353公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、組み立てが容易で、かつ、高トルクを得るのに好適な構造を有するロータリソレノイドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、貫通孔が設けられた固定磁極と、前記固定磁極の前記貫通孔に嵌合された軸受と、分割可能な第1のシャフト構成体と第2のシャフト構成体とを備え、前記第1のシャフト構成体が前記固定磁極の前記貫通孔を貫通した状態で設けられ、前記第2のシャフト構成体が前記軸受に左右に回転自在な状態で支持されたシャフトと、前記シャフトの近傍に配置された第1の永久磁石及び第2の永久磁石と、第1の巻枠部と第2の巻枠部とを備え、前記第1の巻枠部は前記第1のシャフト構成体の基端寄りの部分に固定され、前記第2の巻枠部は前記第2のシャフト構成体の先端寄りの部分に固定されたコイルボビンと、金属の線条を巻回して形成され、前記コイルボビンに設けられると共に、前記線条の一部が前記第1の永久磁石及び前記第2の永久磁石に対向するように設けられたコイルとを有することを特徴とするロータリソレノイドである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記固定磁極は、前記貫通孔を露出させる切欠部が設けられ、前記コイルボビンは、前記第2の巻枠部に露出した前記貫通孔に挿入された挿入部が設けられていることを特徴とするロータリソレノイドである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、さらに、前記軸受と前記コイルボビンの前記第2の巻枠部との間に介在するように設けられたスペーサを有し、
前記シャフトは、前記第1のシャフト構成体と前記第2のシャフト構成体とを螺合することによって一体化していると共に、前記第1のシャフト構成体の先端寄りの外周面に段差部が設けられ、前記コイルボビンは、前記第1のシャフト構成体と前記第2のシャフト構成体とを螺合したときに、前記第2の巻枠部の前記挿入部が前記スペーサと前記第1のシャフト構成体の前記段差部とで挟着されることを特徴とするロータリソレノイドである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記シャフトは、前記第1のシャフト構成体の基端寄りの外周面に別の段差部がさらに形成されると共に、この別の段差部から基端に向かって螺子溝が形成され、前記シャフトの前記第1のシャフト構成体の前記螺子溝に螺合されたナットをさらに有し、前記コイルボビンは、前記第1の巻枠部に前記第1のシャフト構成体の螺子溝が形成された部分が挿入される開口部が設けられると共に、前記第1の巻枠部の前記開口部近傍の部分が前記第1のシャフト構成体の前記別の段差部と前記ナットとで挟着されていることを特徴とするロータリソレノイドである。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記コイルボビンは、前記第1の巻枠部に前記第1のシャフト構成体の螺子溝が形成された部分に少なくとも1つの面カットが形成され、前記コイルボビンは、前記第1の巻枠部の前記開口部を前記第1の巻枠部の前記面カットを形成した部分の断面形状に適合する形状にしていることを特徴とするロータリソレノイドである。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の発明において、さらに、開口部を設けたケースと、前記ケースの前記開口部に嵌合されると共に、開口部を設けた固定部材とを有し、前記固定磁極は、前記固定部材の前記開口部に嵌合されていることを特徴とするロータリソレノイドである。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の発明において、さらに、前記固定磁極と前記第1のシャフト構成体との間に介在するように設けられた別の軸受を有することを特徴とするロータリソレノイドである。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項6又は請求項7のいずれか一項に記載の発明において、前記固定磁極は、前記固定部材に嵌合される側の外周面に段差部が形成され、この段差部が前記固定部材に当接していることを特徴とするロータリソレノイドである。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の発明において、前記固定部材は、前記固定磁極の前記段差部と当接する側の面に、第1の溝と第2の溝とが形成され、前記第1の永久磁石及び前記第2の永久磁石を支持する第1の支持体と第2の支持体をさらに有し、これらの支持体が前記固定部材の前記第1の溝と前記第2の溝とに嵌合又は挿入されていることを特徴とするロータリソレノイドである。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の発明において、前記固定磁極は、外周面に第1の溝と第2の溝とが形成され、
前記第1の永久磁石及び前記第2の永久磁石を支持する第1の支持体と第2の支持体をさらに有し、これらの支持体が前記固定磁極の前記第1の溝と前記第2の溝とに嵌合又は挿入されていることを特徴とするロータリソレノイド。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、コイルの各対向部を第1の永久磁石及び第2の永久磁石の内側面及び外側面に対して対向するように設けたので、内側面側の線条、外側面側の線条の双方にローレンツ力が加わり、いずれか一方の側面のみに対して線条を設ける構造よりもより大きなトルクを得ることができる。したがって、同程度のトルクを発揮する従来型ロータリソレノイドよりも小型化することが可能になる。また、シャフトを2つの構成体からなるものとしたので、コイルボビンなど回転する部分の組み立て手順の自由度が大きくなり、組み立てが容易になる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、固定磁極に切欠部を設けて第2の巻枠部の挿入部を固定磁極に挿入する構造としたので、挿入部をシャフトに固定することができる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、2つのシャフト構成体を一体化するときに、コイルボビンをシャフトに対して固定することを同時に行うことができる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、シャフトとナットでコイルボビンを挟着するので、コイルボビンをシャフトに対して強固に固定することが容易になる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、面カットを設けることによってコイルボビンの空回りが防止される。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、固定磁極は固定部材を介してケースに固定されているので、ケースに対して固定磁極を強固に固定することができる。
【0024】
請求項7に記載の発明によれば、別の軸受を設けることによってシャフトを2つの軸受を支持するので、シャフトの回転時のふらつきが防止される。
【0025】
請求項8に記載の発明によれば、固定磁極を固定部材に嵌合するときに、その段差部に当接するところまで圧入すればよいので、ロータリソレノイドの組立作業が容易になる。また、段差部が固定磁極を支持するフランジとなるので、固定磁極を安定的に固定できる。
【0026】
請求項9に記載の発明によれば、2つの支持体を固定部材の第1の溝と第2の溝とに嵌合又は挿入することによって支持体の位置決めができるので、ロータリソレノイドの組立作業が容易になる。
【0027】
請求項10に記載の発明によれば、2つの支持体を固定磁極の第1の溝と第2の溝とに嵌合又は挿入することによって支持体の位置決めができるので、ロータリソレノイドの組立作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態に係るロータリソレノイドの概略構造を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るロータリソレノイドの分解斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るロータリソレノイドの説明図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図4】非通電状態におけるロータリソレノイドの断面説明図(1)であり、(a)はA−A線断面図、(b)はB−B線断面図である。
【図5】左に最大限回転したロータリソレノイドの断面説明図であり、(a)はA−A線断面図、(b)はB−B線断面図である。
【図6】右に最大限回転したロータリソレノイドの断面説明図であり、(a)はA−A線断面図、(b)はB−B線断面図である。
【図7】非通電状態におけるロータリソレノイドの断面説明図(2)であり、(a)はC−C線断面図、(b)はD−D線断面図である。
【図8】シャフト及びコイルボビンの構成を示す斜視図である。
【図9】シャフトとその周辺部品の構成を示す斜視図である。
【図10】シャフトとその周辺部品の組み立て状態を示す斜視図である。
【図11】コイルボビン及びコイルの細部の構成を示す斜視図である。
【図12】支持体の変形例を示す斜視図である。
【図13】コイルの通電方向を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明の実施の形態に係るロータリソレノイドを図面に基づいて説明する。図2は、本発明の実施の形態に係るロータリソレノイドの分解斜視図である。また、図3は、図3は、本発明の実施の形態に係るロータリソレノイドの説明図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。図2において、10はロータリソレノイド、20はコイル、21a、21b、22a及び22bは対向部、23a、23b、24a及び24bは連続部、30は上部巻枠部、31a、31b、32a及び32bは貼付面、34は貫通孔、35は円板部、37は保持溝、40は下部巻枠部、41a、41b、42a及び42bは貼付面、44はネジ孔、47は保持溝、60は第1シャフト構成体、61はネジ溝形成部、62は段差部、63a、63b、64a及び64bは面カット部、65は段差部、66は挿入部、67はネジ溝形成部、68は第2シャフト構成体、69はネジ孔、70は段差部、71はケース、72は開口部、73はナット、74はドライベアリング、75は内部固定磁極、76は上段部、77は貫通孔、78a及び78bは縦溝、79は中段部、80は下段部、81a及び81は切欠、82は開口部、83は永久磁石、83aは外側面、83bは内側面、84は永久磁石、84aは外側面、84bは内側面、85はボールベアリング、86はストッパ、87a及び87bは当接面、88はダボ状突起、89はスペーサ、90はベース、91は開口部、92a及び92bは水平溝、93a及び93bはネジ孔、94は支持体、95a及び95bは永久磁石保持部、96は脚部、97は支持体、98a及び98bは永久磁石保持部、99は脚部、100及び101は突出部、102はネジである。図3において用いた符号は、すべて図2と同じものを示す。なお、コイル20については、図2を始めとする各図面(図11の部分拡大した図を除く)において、線条を繰り返し巻回した細かい態様の記載を省略し、総体的な外観形状によって表現している。さらに、第1シャフト構成体60及びネジ102のネジ溝も記載を省略する。
【0030】
図2に示すように、ロータリソレノイド10は、内部構造が略円筒形状のケース71に収納されている。ケース71は、図3(a)に示すように、放熱性を良くするために、上面の開口部72にエンドキャップを設けない開放型の構造としている。したがって、上部巻枠部30などは、ロータリソレノイド10の上面に露出している。また、ロータリソレノイド10の内部構造は、図2に示すように、回転する構成要素として、コイルボビンを構成する上部巻枠部30と下部巻枠部40、コイル20、第1シャフト構成体60及び第2シャフト構成体68からなるシャフトなどを設けている。さらに、回転力を生成し、又は回転するものを支持する固定的な構成要素として、内部固定磁極75、永久磁石83及び84、支持体94及び97、ドライベアリング74、ボールベアリング85、ストッパ86などを備えている。なお、ロータリソレノイド10は、開口部72にエンドキャップを設けて防塵性を有する構造としてもよい。
【0031】
まず、ロータリソレノイド10の回転する構成要素について述べる。図8は、シャフト及びコイルボビンの構成を示す斜視図である。図8において、12はシャフト、33a、33b、36a及び36bは腕部、38は平板部、39a及び39bは収納凹部、45は面カット孔、43a、43b、46a及び46bは腕部、48は平板部、49a及び49bは収納凹部、55は挿入部であり、その他の符号は図2と同じものを示す。
【0032】
シャフト12は、第1シャフト構成体60及び第2シャフト構成体68からなり、螺合することによって一体化する。後述するように、シャフト12を第1シャフト構成体60と第2シャフト構成体68とに分割することによって、内部固定磁極75などの固定的な構成要素への取り付けを個別に行えるようにしている。したがって、シャフト12とこれに関連する構成要素の組み立て手順の自由度が大きくなり、コイル20、上部巻枠部30、下部巻枠部40、永久磁石83及び84に囲まれたスペース内に内部固定磁極75を配置するという複雑な構造を採用しても、ロータリソレノイド10を比較的容易に組み立てられるという利点がある。また、第1シャフト構成体60と第2シャフト構成体68とを螺合するときに、下部巻枠部40がシャフト12に対して固定されるようにしたので、他の構成要素に囲まれた下部巻枠部40の取り付けが容易になるという利点もある。なお、第1シャフト構成体60及び第2シャフト構成体68は、両者の結合をより確実にするために、螺合することに加えて接着剤で互いに接着することが望ましい。
【0033】
第1シャフト構成体60は、上部先端寄りの部分を中央部より小径とし、さらにネジ溝を形成してネジ溝形成部61としている。また、小径とした部分と中央部の境界部分は、上部巻枠部30を挟着するための段差部62としている。また、段差部62から下側の部分には、コイルボビン11の空回りを防止するために面カット部63a及び63bを形成している。面カット部63a及び63bは、ロータリソレノイド10を組み立てたときに、貫通孔34の内部に形成された(図示していない)面カット部に接した状態になるので、上部巻枠部30が回転すれば第1シャフト構成体60も必ず回転する。さらに、第1シャフト構成体60の下側の部分は、下部巻枠部40へ挿入するために中央部よりも小径とした挿入部66を形成している。さらに、その先端側の部分は、第2シャフト構成体68と螺合するために挿入部66よりも小径のネジ溝形成部67としている。中央部と挿入部66との境界部分は、下部巻枠部40を挟着するための段差部65としている。また、段差部65から上側の部分には、コイルボビン11の空回りを防止するために面カット部64a及び64bを形成している。面カット部64a及び64bは、ロータリソレノイド10を組み立てたときに、面カット孔45の面カットに接した状態になるので、下部巻枠部40が回転すれば第1シャフト構成体60も必ず回転する。なお、第1シャフト構成体60の面カットは、上下でそれぞれ2面ずつカットしているが、それぞれ1面又は3面以上カットしてもよい。
【0034】
第2シャフト構成体68は、上部56に第1シャフト構成体60のネジ溝形成部67と螺合するためにネジ孔69を形成している。上部56はボールベアリング85の内輪に嵌合されており、第2シャフト構成体68とこれに螺合された第1シャフト構成体60はボールベアリング85によって左右に回転自在に支持されている。また、上部56を下部57よりも小径とし、これらの境界部分を段差部70としている。下部57は、ロータリソレノイド10の負荷に対して接続される。段差部70は、内部固定磁極75の下段部80に嵌合されるボールベアリング85の内輪に圧接して、第2シャフト構成体68がケース71の内部へ陥入することを防止する。なお、段差部70は、ボールベアリング85の外輪には接触していないので、第2シャフト構成体68の回転が妨げられることはない。
【0035】
図11は、コイルボビン及びコイルの細部の構成を示す斜視図である。図11において、11はコイルボビン、13は第1巻線部、14は第2巻線部、25a、25b、26a及び26bは外部接続部、27a、27b、27c、27d、28a、28b、28c及び28dは湾曲起点部であり、その他の符号は図2及び図8と同じものを示す。
【0036】
図11に示すように、ロータリソレノイド10のコイルボビン11は、上部巻枠部30と下部巻枠部40とで構成されており、シャフト12を介して一体化している。
【0037】
上部巻枠部30は、第1シャフト構成体60のネジ溝形成部61が貫通する貫通孔34の周囲に円板部35を設けており、さらに円板部35から略L字状に延びる腕部33a及び36aと、略逆L字状に延びる腕部33b及び36bを設けている。なお、貫通孔34は、第1シャフト構成体60の面カット部63a及び63bに対応する面カットを形成しており、第1シャフト構成体60と貫通孔34との面カットの向きが合っていないと挿入できないようにしてある。腕部33a及び36aと、腕部33b及び36bとは、貫通孔34の中心を通り、保持溝37と直交する面に対して面対称となる、つまり互いに鏡像となる構造を有しており、貫通孔34から遠い部位にコイル20を貼り付けるための貼付面31a及び31bとが形成され、これらより貫通孔34に近い部位に同じ目的で貼付面32a及び32bとが形成されている。なお、貼付面31a、31b、32a及び32bは、平坦な面ではなく、後述するようにコイル20の湾曲した部分を貼り付けるので、これらの面もコイル20の湾曲した部分に合わせて湾曲面となっている。また、上部巻枠部30のコイル20を設ける側の面の中央は、平坦な平板部38が垂下するように設けられており、その内側には保持溝37が形成されている。
【0038】
下部巻枠部40は、その中央に、ネジ孔44と、第1シャフト構成体60の面カット部64a及び64bに対応する面カット孔45とが一体的に形成されている。また、後述するように、ロータリソレノイド10を組み立てたときには、これらの孔に第1シャフト構成体60が貫通した状態で設けられる。これらの孔の周囲の部分から略L字状に延びる腕部43a及び46aと、略逆L字状に延びる腕部43b及び46bを設けている。腕部43a及び46aと、腕部43b及び46bとは、ネジ孔44の中心を通り、保持溝47と直交する面に対して面対称となる、つまり互いに鏡像となる構造を有しており、ネジ孔44から遠い部位にコイル20を貼り付けるための貼付面41a及び41bとが形成され、これらよりネジ孔44に近い部位に同じ目的で貼付面42a及び42bとが形成されている。なお、貼付面41a、41b、42a及び42bは、貼付面31aなどと同じ理由により、コイル20の湾曲した部分に合わせて湾曲した面となっている。また、下部巻枠部40のコイル20を設ける側の面の中央は、平坦な平板部48が直立するように設けられており、その内側には保持溝47が形成されている。挿入部55は、内部固定磁極75の中段部79の内周面側に挿入される。
【0039】
コイル20は、第1巻線部13と第2巻線部14との2つの巻線部からなる。第1巻線部13及び第2巻線部14は、両者共に略矩形枠状に形成されている。また、永久磁石83及び84に対する距離及び配置の関係上、第1巻線部13が第2巻線部14よりも多少幅広となるように形成してある。また、第1巻線部13及び第2巻線部14は、コイル20の装着を容易にするために、第1巻線部13及び第2巻線部14からなるシャフトの側方に極めて接近した状態に配置している。したがって、これらの巻線部をシャフト側から見ると、第1巻線部13と第2巻線部14とは、ほぼ重なり合っているように見えることになる。一般的なロータリソレノイドでは、シャフトを取り囲む、又は左右から挟むようにコイルを設けており、コイル20の配置はロータリソレノイド10の大きな特徴と言える。
【0040】
第1巻線部13及び第2巻線部14は、コイルボビン11に直接巻回して形成したものではなく、コイルワイヤーとも呼ばれる銅線条を予め巻線機によって略矩形枠状に巻回した後、湾曲起点部27a、27b、28a及び28bから左右両端までの部分をシャフト側に曲げ加工して形成したものである。なお、曲げ加工時には、上部巻枠部30及び下部巻枠部40に合わせて曲げる。したがって、湾曲起点部27a、27b、28a又は28bから左右両端までの部分は、永久磁石83又は永久磁石84にほぼ正対しているので、コイル20を回転させるためのローレンツ力を最も効率よく得ることができる。また、両者の間隙がほぼ一定になるので、コイル20の回転中に得られるトルクがほぼ一定になるという利点もある。ところで、図9の下部の部分拡大図に示しているように、この実施例では平角線条の短辺面29bがコイルボビン方向を向き、長辺面29aが上下方向を向くように、いわゆるエッジワイズ巻に巻回している。平角線条をこのように巻回することによって、曲げ加工後の形状がよく維持される上に、湾曲起点部27a、27b、28a及び28bにおいて線条の配置が崩れることがほとんどない。さらに、丸線条よりも占積率が高いので、コイルの配置に必要なスペースを小さくでき、かつ、丸線条よりも放熱性がよいという利点がある。
【0041】
また、第1巻線部13の右側の垂直部分を対向部21a、左側の垂直部分を対向部21b、上側の水平部分を連続部23a、下側の水平部分を連続部23bとしている。したがって、コイル20の平面(上面)から見ると、連続部23a及び23bの中央寄りの部分は左右に向かって直線的に延びているように見える。同様に、これらの連続部の左右両端寄りの部分と対向部21a及び21bは、ケース71の内周面とほぼ同心円状の曲面を描くようにゆるやかに湾曲しているように見える。また、第1巻線部13の対向部21a及び21bは、永久磁石83の外側面83aと永久磁石84の外側面84aとにわずかな間隙をおいて対向するように設けられる。したがって、コイル20への通電時には、対向部21a及び21bと、永久磁石83及び84との間にローレンツ力が生じて、コイル20を左右どちらかに回転させる力となる。連続部23a及び23bは、コイル20への通電時に電流の流路となるものであり、対向部21a及び21bのようにコイル20を回転させる力をもたらすものではない。したがって、中央寄りの部分を平坦な板状とすることによって対向部21aと対向部21bとの間における電流の経路長をできる限り短くして電力損失の低減を図っている。
【0042】
第2巻線部14も第1巻線部13と同様に、右側の垂直部分を対向部22a、左側の垂直部分を対向部22b、上側の水平部分を連続部24a、下側の水平部分を連続部24bとしている。したがって、コイル20の平面(上面)から見ると、連続部24a及び24bの中央寄りの部分は左右に向かって直線的に延びているように見える。同様に、これらの連続部の左右両端寄りの部分と対向部22a及び22bは、ケース71の内周面とほぼ同心円状の曲面を描くようにゆるやかに湾曲しているように見える。また、対向部22a及び22bは、第1巻線部13と同様に、中央寄りの部分を平坦な板状とすることによって対向部22aと対向部22bとの間における電流の経路長をできる限り短くし、電力損失の低減を図っている。また、第2巻線部14の対向部22a及び22bは、永久磁石84の外側面83aと永久磁石84の外側面84aとにわずかな間隙をおいて対向するように設けられる。
【0043】
図13は、コイルの通電方向を示す斜視図である。図10において、51a、51b、52a及び52bは電流の方向、53a及び53bは回転方向であり、その他の符号は図8と同じものを示す。
【0044】
第1巻線部13の外部接続部25a及び25bと、第2巻線部14の外部接続部26a及び26bとは、後述するように、それぞれフレキシブルプリント基板の端子に接続されており、この基板を介してロータリソレノイド10の外部の電源に接続される。なお、外部接続部25a及び25bの一方と、外部接続部26a及び26bの一方とを接続して、第1巻線部13と第2巻線部14とを1つの巻線にしてもよいし、これらの巻線部に別個に電流を流す構成とし、さらにどちらか一方をオン、又は両方をオンとすることを可能にし、2段階のトルクを得られるようにしてもよい。さらに、第1巻線部13と第2巻線部14とを異なる巻数にすれば、3段階のトルクを得ることもできる。ただし、第1巻線部13と第2巻線部14とに流す電流は、図13の電流の方向51a、51b、52a及び52bに示すように、永久磁石83側と、永久磁石84側とでそれぞれ逆方向であり、かつ、永久磁石83の外側面83aとその内側面83b、永久磁石84の外側面84aとその内側面84bとがそれぞれ同方向となるようにする。このように電流を流すことによって、対向部21a、21b、22a及び22bを回転方向53a又は53bのように回転させるローレンツ力を生じる。なお、回転方向は永久磁石83及び永久磁石84の着磁方向によって適宜設定することができる。この電流の方向をそれぞれ逆向きにすれば、逆方向へ回転させるローレンツ力が働く。
【0045】
さらに、コイル20のコイルボビン11への装着方法について説明する。図11に示すように、第1巻線部13及び第2巻線部14の曲げ加工後は、第1巻線部13の連続部23aの両端部を上部巻枠部30の貼付面31a及び31bに、連続部23bの両端部を下部巻枠部40の貼付面42a及び42bに接着剤で貼り付ける。同時に、第2巻線部14の連続部24a及の両端部を上部巻枠部30の貼付面31a及び31bに、連続部24bの両端部を下部巻枠部40の貼付面42a及び42bに接着剤で貼り付ける。このように各連続部を貼り付けると、連続部23aと連続部24aとは上部巻枠部30の保持溝37に軽く挟まれた状態で保持され、連続部23bと連続部24bとは下部巻枠部40の保持溝47に軽く挟まれた状態で保持される。したがって。第1巻線部13及び第2巻線部14は、それぞれ4カ所を貼り付けてある上に保持溝37及び保持溝47で保持されているので、長期間使用しても形状が一定に保たれる。また、コイルボビン11への取り付けは、上記のように貼り付けるだけでよいので、ロータリソレノイド10の組み立てが容易になる。
【0046】
なお、ケース71の径が相当に大きい場合には、第1巻線部13及び第2巻線部14を丸線条で形成しても、湾曲起点部27a、27b、28a及び28bにおける線条の配置が崩れにくいので、このような場合には丸線条で形成してもよい。また、乾電池のように細長い外形を持つ場合、連続部23a、23b、24a及び24bの長さが相対的に短くなるので、連続部23a、23b、24a及び24b全体をケース71の内周面に合わせて曲げ加工してもよい。さらに、この場合には、保持溝37及び保持溝47を設けず、連続部23a、23b、24a及び24bを平板部38及び平板部48の外面に貼り付けてもよい。
【0047】
さらに、ロータリソレノイド10の回転する構成要素について述べる。図7は、非通電状態におけるロータリソレノイドの断面説明図(2)であり、(a)はC−C線断面図、(b)はD−D線断面図である。図7において用いた符号は、すべて図2と同じものを示す。なお、断面のハッチングは省略している。
【0048】
コイルボビン11を構成する上部巻枠部30及び下部巻枠部40は、図7(a)及び(b)に示すように、第1シャフト構成体60に対して固定されている。すなわち、上部巻枠部30は、図2の貫通孔34に第1シャフト構成体60のネジ溝形成部61を挿入した状態でナット73をねじ込んでいる。したがって、円板部35は、第1シャフト構成体60の段差部62とナット73とに挟着されている。下部巻枠部40は、図2に示したネジ孔44に挿入部66を挿入した状態において、ネジ溝形成部67を第2シャフト構成体68のネジ孔69にねじ込んであり、第1シャフト構成体60は第2シャフト構成体68に引張されて、ネジ孔44の周辺部がスペーサ89に圧接している。したがって、下部巻枠部40は、図2に示した第1シャフト構成体60の段差部65とスペーサ89とで挟着されている。
【0049】
さらに、第1シャフト構成体60には、その上側に面カット部63a及び63b、その下側に面カット部64a及び64bを形成しており、ロータリソレノイド10を組み立てた状態において、それぞれ上部巻枠部30の貫通孔34と下部巻枠部40の面カット孔45とに接した状態となる。したがって、第1シャフト構成体60とこれに螺合した第2シャフト構成体68は、上部巻枠部30の貫通孔34及び下部巻枠部40に対して空回りすることがない。以上のように、シャフトを第1シャフト構成体60と第2シャフト構成体68とからなる構成にしたので、2つのシャフト構成体を螺合するときにシャフトの段差等によってコイルボビン11を2つのシャフト構成体に強固に固定することができる。
【0050】
続けて、ロータリソレノイド10の固定的な構成要素について述べる。図2に示すように、内部固定磁極75は、上段部76、中段部79及び下段部80から構成されている。上段部76は、略円筒形状に形成され、中央にドライベアリング74を嵌合するために貫通孔77を形成している。また、周側面の互いに背向する部位に、支持体94及び97の突出部100及び101を嵌合するための縦溝78a及び78bを形成している。中段部79は、略半円筒形状に形成されており、下部巻枠部40の挿入部55が内周面側に挿入された状態で左右に回転自在な状態で保持されている。なお、中段部79の幅は、下部巻枠部40の回転角度を配慮して設定している。下段部80は、中央に開口部82が形成されており、ベース90に嵌合されている。また、開口部82にはボールベアリング85を嵌合している。さらに、下段部80の周側部には、ベース90に対して嵌合する向きを合わせるために切欠81a及び81bを形成している。以上のように、内部固定磁極75は、ドライベアリング74を設けた上段部76と、ボールベアリング85を設けた下段部80とが中段部79を介して一体としているので、ドライベアリング74及びボールベアリング85の中心軸(位置)を合わせること(芯出し)がきわめて容易になる。
【0051】
ベース90は、内部固定磁極75を固定するための固定部材であると共に、磁気回路を構成するための固定磁極でもある。その中央に開口部91が形成されており、ケース71の下側の開口部に嵌合されている。また、開口部91には内部固定磁極75の下段部80を嵌合している。さらに、内部固定磁極75を嵌合する向きを合わせるために、上面に水平溝92a及び92bを形成している。すなわち、内部固定磁極75を嵌合するときに、切欠81aと切欠81bとの向きを、それぞれ水平溝92aと水平溝92bに合わせることによって正しく嵌合できるようにしている。くわえて、水平溝92a及び92bの内部には、支持体94の脚部96と支持体97の脚部99とをネジ102でネジ止めするためのネジ孔93a及び93bを形成している。
【0052】
ボールベアリング85は、内部固定磁極75の下段部80に嵌合されており、内輪に第2シャフト構成体68を嵌合している。したがって、第1シャフト構成体60及び第2シャフト構成体68は、ボールベアリング85によって左右に回転自在に支持されている。なお、ボールベアリングに代えてニードルベアリングを設けてもよい。スペーサ89は、上部に第1シャフト構成体60と第2シャフト構成体68と螺合することによって、下端部がボールベアリング85に圧接し、上端部が図8に示した挿入部55に圧接している。その結果、図7(b)に示すように、スペーサ89の上端部と第1シャフト構成体60の段差部65と挿入部55を挟着している。ドライベアリング74は、第1シャフト構成体60を支持する軸受であり、内部固定磁極75の上段部76に嵌合されている。コイル20はシャフト12から見ると一方向に偏って配置されており、コイル20の回転中、コイル20の遠心力はシャフト12に対して常に一方向から加わる。したがって、回転中、シャフト12を首振り(揺動)させるような応力が常に加わることになる。しかし、ドライベアリング74を設けているので、シャフト12が首振りしながら回転することはない。
【0053】
永久磁石83と永久磁石84とは、略円弧板状に形成されており、その着磁方向が逆になっている。すなわち、永久磁石83は、外側面83aがS極側、内側面83bがN極側となるように着磁され、永久磁石84は、外側面84aがN極側、内側面84bがS極側となるように着磁されている。このように着磁することによって、コイル20に図10に示す方向の電流を流したときに、永久磁石83及び永久磁石84と、対向部21a、21b、22a及び22bとの間にコイル20を同じ方向へ回転させるローレンツ力を生成する。なお、永久磁石83及び永久磁石84の着磁方向は、それぞれの外側面又は内側面の曲率中心から放射状に広がる、又は曲率中心へ収束する方向になされていることが望ましい。
【0054】
支持体94及び97は、永久磁石83及び永久磁石84を支持する機能を持つ。すなわち、支持体94は、脚部96がベース90の縦溝78a及び切欠81aで位置決めされ、さらに突出部100が縦溝78aに嵌合されており、くわえてネジ102によってベース90に固定されている。支持体97は、脚部99が内部固定磁極75の縦溝78b及び切欠81bで位置決めされ、さらに突出部101が縦溝78bに嵌合されており、くわえてネジ102によってベース90に固定されている。また、永久磁石保持部95aと永久磁石保持部95bはそれぞれ永久磁石83と永久磁石84とに接しており、永久磁石保持部98aと永久磁石保持部98bとは左右両端が永久磁石83と永久磁石84とに接している。接している部分は互いに接着剤で接着してある。
【0055】
さらに、支持体94及び97の変形例について説明する。図12は、支持体の変形例を示す斜視図である。図12において103はネジ孔であり、その他の符号は図2と同じものを示す。この変形例の支持体94及び97は脚部を省略している。すなわち、内部固定磁極75の縦溝78aにネジ孔103を形成し、さらに縦溝78bにも図示していないネジ孔を設けている。くわえて、支持体94と支持体97とにも、それぞれ突出部100と突出部101を貫通する(図示していない)ネジ孔を設けている。そして、突出部100を縦溝78aに嵌合し、突出部101を縦溝78aに嵌合した状態においてネジ102を支持体94及び支持体97の外側面側から螺合して支持体94及び97を内部固定磁極75に固定する。したがって、脚部を省略しても支持体94及び97を強固に固定するこができる。
【0056】
ストッパ86は、コイルボビン11の回転を規制する機能を持つ。すなわち、下部巻枠部40が一定角度左回転すると、下部巻枠部40の腕部43aがストッパ86の当接面87aに当接して回転が停止する。また、下部巻枠部40が一定角度右回転すると、下部巻枠部40の腕部43bがストッパ86の当接面87bに当接して回転が停止する。ストッパ86は、上部のダボ状突起88が支持体94の図示していない凹陥部に嵌合されており、所定位置に固定されているので、下部巻枠部40が当接することによって位置ずれすることはない。ドライベアリング74は、第1シャフト構成体60を支持する軸受であり、内部固定磁極75の上段部76に嵌合されている。コイル20はシャフト12から見ると一方向に偏って配置されており、コイル20の回転中、コイル20の遠心力はシャフト12に対して常に一方向から加わる。したがって、回転中、シャフト12を首振り(揺動)させるような応力が常に加わることになる。しかし、ドライベアリング74を設けているので、シャフト12が首振りしながら回転することはない。
【0057】
続けて、コイル20及びコイルボビン11の固定的な構成要素への装着方法について説明する。図9は、シャフトとその周辺部品の構成を示す斜視図である。図9において、58は第1グループ、59は第2グループであり、その他の符号は図2と同じものを示す。また、図10は、シャフトとその周辺部品の組み立て状態を示す斜視図である。図10において用いた符号はすべて図9と同じものを示す。なお、図9では、図形配置の都合上、下部巻枠部40を第1グループ58側に表しているが、下部巻枠部40は第2グループ59とする。また、図10では、コイル20及びベース90の記載を省略している。
【0058】
この実施の形態のロータリソレノイド10では、図9の第1グループ58、すなわち下方の構成要素から、上方の第2グループ59へ向かって組み立てる。まず、図9に図示していないが、ベース90の開口部91に内部固定磁極75の下段部80を上側から嵌合する。次に、下段部80の開口部82にボールベアリング85を下側から嵌合する。続けて、第2シャフト構成体68をボールベアリング85の内輪に嵌合する。そして、スペーサ89を中段部79の開口部から挿入し、ボールベアリング85の内輪の上に置く。
【0059】
次に、ドライベアリング74を内部固定磁極75の貫通孔77に嵌合する。なお、予め貫通孔77に嵌合しておいてもよい。そして、下部巻枠部40の挿入部55を内部固定磁極75の中段部79の切欠部へ挿入し、上側からドライベアリング74に第1シャフト構成体60を挿入する。さらに、第1シャフト構成体60を第2シャフト構成体68にねじ込む。これによって、下部巻枠部40はシャフト12に固定される。次に、上部巻枠部30の貼付面31a、31b、32a及び32bと、下部巻枠部40の貼付面41a、41b、42a及び42bに接着剤を塗布する。
【0060】
続けて、上部巻枠部30の貫通孔34に第1シャフト構成体61の溝形成部61を挿入しつつ、コイル20を上部巻枠部30及び下部巻枠部40の所定部位に押し当てておく。さらに、ナット73で第1シャフト構成体60を締め付ける。ここまで組み立てると、図10に示す状態となる。また、接着剤が硬化すれば、コイル20は上部巻枠部30及び下部巻枠部40に付着する。くわえて、ケース71を上側から被せて、ベース90に嵌合する。最後に、図10に図示していないが、コイル20への配線の接続等を行う。
【0061】
次に、この実施の形態に係るロータリソレノイド10の動作について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るロータリソレノイドの概略構造を示す斜視図である。図4は、非通電状態におけるロータリソレノイドの断面説明図(1)であり、(a)はA−A線断面図、(b)はB−B線断面図である。図5は、左に最大限回転したロータリソレノイドの断面説明図であり、(a)はA−A線断面図、(b)はB−B線断面図である。図6は、右に最大限回転したロータリソレノイドの断面説明図であり、(a)はA−A線断面図、(b)はB−B線断面図である。図1、図4、図5及び図6において用いた符号は、すべて図1と同じものを示す。
【0062】
まず、コイル20へ通電していないときには、図1及び図4に示すように、コイル20の対向部21a及び対向部22aと、対向部21b及び対向部22bとは、それぞれ永久磁石83と永久磁石84との中央付近にあり、このままの状態で静止している。ここで、コイル20へ通電すると、図10の電流の方向51a、51b、52a及び52bに示すように、2組の対向部にそれぞれ逆方向となる電流が流れる。また、永久磁石583及び84、内部固定磁極75、ベース90及びケース71を巡る磁気回路も発生する。
【0063】
そうすると、対向部21a及び対向部22aと、対向部21b及び対向部22bとを流れる電流に対して右ねじが進む向きの力、すなわち荷電粒子の流れを動かそうとずるローレンツ力が働いて、これらの対向部を図10の回転方向53の向きに動かす。そうすると。コイル20の回転に伴ってコイルボビン11と第1シャフト構成体60及び第2シャフト構成体68も回転する。そして、図5に示すところまで回転すると、ストッパ86の当接面87aに下部巻枠部40の腕部43aが当接して停止する。
【0064】
回転が停止した状態において、今度は図10とは逆方向に電流を流すと、対向部21a及び対向部22aと、対向部21b及び対向部22bとを回転方向53とは逆方向に動かす。そうすると。コイル20の回転に伴ってコイルボビン11等も逆回転する。そして、図6に示すところまで回転すると、ストッパ86の当接面87bに下部巻枠部40の腕部43bが当接して停止する。
【0065】
なお、コイルボビン11等を逆回転させるときに、逆方向に電流を流す手段以外の手段を採用してもよい。例えば、ケース71の内部又は外部に設けたつるまきばねなどの機械的手段によってコイルボビン11等を逆回転されるような状態に設けてもよい。このようにすれば、コイルボビン11等が所定角度まで回転したところでコイル20への通電を止めると、つるまきばねなどの手段の働きによってコイルボビン11等が元の角度に戻るように動作するようになる。
【0066】
以上説明したように、この実施の形態に係るロータリソレノイド10においては、コイル20の対向部21aと対向部22aとが永久磁石83の外側面83aと内側面83bを、対向部21b及び対向部22bとが永久磁石84の外側面84aと内側面84bとを挟み込むように位置させ、この状態においてコイル20電流を流すことによって。永久磁石83及び84の外側面側と内側面側との双方のコイルにローレンツ力が働くようにしたので、磁気回路の一部に間隙(エアギャップ)を設け、通電時にこの間隙を埋めるように回転動作するロータリソレノイドよりも高効率となる。ひいては、このようなロータリソレノイドよりも小型化が容易になる。また、第1巻線部13と第2巻線部14とを第1シャフト構成体60及び第2シャフト構成体68の側方に、かつ、極めて近接させて設けたので、コイル20の形成が容易になる。さらに、コイルボビン11への装着も容易になっている。また、シャフトを第1シャフト構成体60と第2シャフト構成体68との2つで構成しているので、コイルボビン11をシャフトに固定することが非常に容易になる。また、シャフトを第1シャフト構成体60と第2シャフト構成体68とからなる構成にし、2つのシャフト構成体を螺合するときにシャフトの段差等によってコイルボビン11を2つのシャフト構成体に固定するようにしたので、固定手段を別途設ける必要がない。さらに、ロータリソレノイド10の組み立て手順の自由度が大きくなり、組み立てが容易になる。くわえて、上部巻枠部30のコイル20を配置している側と反対側のスペースを収納空間54とし、フレキシブルプリント基板50を収納できるようにしているので、フレキシブルプリント基板50のような配線に係わるもの収納が非常に容易になる。さらに例えば磁気センサなどのデバイスなどを収納することもできる。
【0067】
なお、本発明は以上に説明した内容に限定されるものではなく、コイルボビン、コイル、又は構造支持体の細部の形状や、コイルボビンへの金属の線条の巻回順序などについては、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限りにおいて種々の変形を加えることが可能である。例えば、コイル20の構成を、第1巻線部13と第2巻線部14との間にシャフト12が配置されるものとし、シャフト12については、第1シャフト構成体60及び第2シャフト構成体68からなるものとしておき、前述の組立手順で組み立てるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 ロータリソレノイド
11 コイルボビン
12 シャフト
13 第1巻線部
14 第2巻線部
20 コイル
21a 対向部
21b 対向部
22a 対向部
22b 対向部
23a 連続部
23b 連続部
24a 連続部
24b 連続部
25a 外部接続部
25b 外部接続部
26a 外部接続部
26b 外部接続部
27a 湾曲起点部
27b 湾曲起点部
27c 湾曲起点部
27d 湾曲起点部
28a 湾曲起点部
28b 湾曲起点部
28c 湾曲起点部
28d 湾曲起点部
29a 長辺面
29b 短辺面
30 上部巻枠部
31a 貼付面
31b 貼付面
32a 貼付面
32b 貼付面
33a 腕部
33b 腕部
34 貫通孔
35 円板部
36a 腕部
36b 腕部
37 保持溝
38 平板部
39a 収納凹部
39b 収納凹部
40 下部巻枠部
41a 貼付面
41b 貼付面
42a 貼付面
42b 貼付面
43a 腕部
43b 腕部
44 ネジ孔
45 面カット孔
46a 腕部
46b 腕部
47 保持溝
48 平板部
49a 収納凹部
49b 収納凹部
51a 電流の方向
51b 電流の方向
52a 電流の方向
52b 電流の方向
53a 回転方向
53b 回転方向
55 挿入部
56 上部
57 下部
58 第1グループ
59 第2グループ
60 第1シャフト構成体
61 ネジ溝形成部
62 段差部
63a 面カット部
63b 面カット部
64a 面カット部
64b 面カット部
65 段差部
66 挿入部
67 ネジ溝形成部
68 第2シャフト構成体
69 ネジ孔
70 段差部
71 ケース
72 開口部
73 ナット
74 ドライベアリング
75 内部固定磁極
76 上段部
77 貫通孔
78a 縦溝
78b 縦溝
79 中段部
80 下段部
81a 切欠
81b 切欠
82 開口部
83 永久磁石
83a 外側面
83b 内側面
84 永久磁石
84a 外側面
84b 内側面
85 ボールベアリング
86 ストッパ
87a 当接面
87b 当接面
88 ダボ状突起
89 スペーサ
90 ベース
91 開口部
92a 水平溝
92b 水平溝
93a ネジ孔
93b ネジ孔
94 支持体
95a 永久磁石保持部
95b 永久磁石保持部
96 脚部
97 支持体
98a 永久磁石保持部
98b 永久磁石保持部
99 脚部
100 突出部
101 突出部
102 ネジ
103 ネジ孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔が設けられた固定磁極と、
前記固定磁極の前記貫通孔に嵌合された軸受と、
分割可能な第1のシャフト構成体と第2のシャフト構成体とを備え、前記第1のシャフト構成体が前記固定磁極の前記貫通孔を貫通した状態で設けられ、前記第2のシャフト構成体が前記軸受に左右に回転自在な状態で支持されたシャフトと、
前記シャフトの近傍に配置された第1の永久磁石及び第2の永久磁石と、
第1の巻枠部と第2の巻枠部とを備え、前記第1の巻枠部は前記第1のシャフト構成体の基端寄りの部分に固定され、前記第2の巻枠部は前記第2のシャフト構成体の先端寄りの部分に固定されたコイルボビンと、
金属の線条を巻回して形成され、前記コイルボビンに設けられると共に、前記線条の一部が前記第1の永久磁石及び前記第2の永久磁石に対向するように設けられたコイルとを有することを特徴とするロータリソレノイド。
【請求項2】
前記固定磁極は、前記貫通孔を露出させる切欠部が設けられ、
前記コイルボビンは、前記第2の巻枠部に露出した前記貫通孔に挿入された挿入部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のロータリソレノイド。
【請求項3】
さらに、前記軸受と前記コイルボビンの前記第2の巻枠部との間に介在するように設けられたスペーサを有し、
前記シャフトは、前記第1のシャフト構成体と前記第2のシャフト構成体とを螺合することによって一体化していると共に、前記第1のシャフト構成体の先端寄りの外周面に段差部が設けられ、
前記コイルボビンは、前記第1のシャフト構成体と前記第2のシャフト構成体とを螺合したときに、前記第2の巻枠部の前記挿入部が前記スペーサと前記第1のシャフト構成体の前記段差部とで挟着されることを特徴とする請求項2に記載のロータリソレノイド。
【請求項4】
前記シャフトは、前記第1のシャフト構成体の基端寄りの外周面に別の段差部がさらに形成されると共に、この別の段差部から基端に向かって螺子溝が形成され、
前記シャフトの前記第1のシャフト構成体の前記螺子溝に螺合されたナットをさらに有し、
前記コイルボビンは、前記第1の巻枠部に前記第1のシャフト構成体の螺子溝が形成された部分が挿入される開口部が設けられると共に、前記第1の巻枠部の前記開口部近傍の部分が前記第1のシャフト構成体の前記別の段差部と前記ナットとで挟着されていることを特徴とする請求項3に記載のロータリソレノイド。
【請求項5】
前記コイルボビンは、前記第1の巻枠部に前記第1のシャフト構成体の螺子溝が形成された部分に少なくとも1つの面カットが形成され、
前記コイルボビンは、前記第1の巻枠部の前記開口部を前記第1の巻枠部の前記面カットを形成した部分の断面形状に適合する形状にしていることを特徴とする請求項4に記載のロータリソレノイド。
【請求項6】
さらに、開口部を設けたケースと、
前記ケースの前記開口部に嵌合されると共に、開口部を設けた固定部材とを有し、
前記固定磁極は、前記固定部材の前記開口部に嵌合されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のロータリソレノイド。
【請求項7】
さらに、前記固定磁極と前記第1のシャフト構成体との間に介在するように設けられた別の軸受を有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のロータリソレノイド。
【請求項8】
前記固定磁極は、前記固定部材に嵌合される側の外周面に段差部が形成され、この段差部が前記固定部材に当接していることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のロータリソレノイド。
【請求項9】
前記固定部材は、前記固定磁極の前記段差部と当接する側の面に、第1の溝と第2の溝とが形成され、
前記第1の永久磁石及び前記第2の永久磁石を支持する第1の支持体と第2の支持体をさらに有し、これらの支持体が前記固定部材の前記第1の溝と前記第2の溝とに嵌合又は挿入されていることを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか一項に記載のロータリソレノイド。
【請求項10】
前記固定磁極は、外周面に第1の溝と第2の溝とが形成され、
前記第1の永久磁石及び前記第2の永久磁石を支持する第1の支持体と第2の支持体をさらに有し、これらの支持体が前記固定磁極の前記第1の溝と前記第2の溝とに嵌合又は挿入されていることを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか一項に記載のロータリソレノイド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−3862(P2011−3862A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148094(P2009−148094)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(302038741)新電元メカトロニクス株式会社 (38)
【Fターム(参考)】