説明

ロータリダンパ

【課題】回転体の一方の回転に対しては大きな制動を発生する一方、回転体の他方の回転に対しては小さな制動を発生する弾性ベーンによる一方向性の制動特性を長期に渡って維持できる耐久性に優れた弾性ベーンを有したロータリダンパを提供すること。
【解決手段】ロータリダンパ1は、内部2に粘性流体3を収容する合成樹脂製の収容体4と、収容体4の内部2に軸心Oを中心としてR方向に回転自在に配されていると共に収容体4の内面5と協働して収容体4の内部2を室6及び7からなる二室と室8及び9からなる二室とに区画する回転体10とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘性流体を収容する収容体の内部にベーンを有した回転体を回転自在に収容して、粘性流体により回転体の回転に対して制動を与えるロータリダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2010−121743号公報
【特許文献2】特開平9−42350号公報
【特許文献3】特開平9−329173号公報
【特許文献4】特開平8−109940号公報
【特許文献5】特開平8−296687号公報
【0003】
隙間を通過する粘性流体により、回転体の一方の回転に対しては大きな制動を与える一方、回転体の他方の回転に対しては小さな制動を与えるようにしたこの種のロータリダンパは、特許文献1等によって知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、粘性流体を内部に収容する収容体と、この収容体の内部に回転自在に配されている回転体とを具備し、回転体に設けられた弾性ベーンにより収容体の内部を二つの室に区画し、回転体の一方の回転で弾性ベーンを収容体に接触させて二つの室の連通を禁止し、回転体の他方の回転で弾性ベーンを撓ませて弾性ベーンの収容体への接触を解除して二つの室を連通し、而して、回転体の一方の回転に対しては大きな制動を発生し、回転体の他方の回転に対しては小さな制動を発生する斯かるロータリダンパでは、弾性ベーンは、収容体の内部に収容された粘性流体から繰り返し流体圧を受けて撓み弾性変形を繰り返す結果、弾性ベーンに早期に機械的疲労が生じて、長期の使用で場合によりその機能を達成できなくなり、最悪の場合には、弾性ベーンが損壊してしまう虞がある。
【0005】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、回転体の一方の回転に対しては大きな制動を発生する一方、回転体の他方の回転に対しては小さな制動を発生する弾性ベーンによる一方向性の制動特性を長期に渡って維持できる耐久性に優れた弾性ベーンを有したロータリダンパを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるロータリダンパは、粘性流体を内部に収容する収容体と、この収容体の内部に回転自在に配されていると共に収容体の内面と協働して収容体の内部を少なくとも二室に区画する回転体とを具備しており、収容体は、円筒状の内周面を有する筒部と、この筒部の内周面に設けられていると共に湾曲状の内径側凹面を有した区画手段とを具備しており、回転体は、収容体に回転自在に支持されていると共に区画手段の湾曲状の内径側凹面が対面する円筒状の外周面を有した回転体本体と、この回転体本体の外周面に設けられている弾性ベーンとを具備しており、弾性ベーンは、一端部では回転体本体の外周面に連接する一方、他端部では収容体の筒部の内周面に対面すると共に回転体の回転方向に関して区画手段の一方の側面と協働して二室のうちの一方の室を形成した湾曲状の凸面と、この凸面に対応して一端部では回転体本体の外周面に連接する一方、湾曲状の凸面に沿って延びると共に回転体の回転方向に関して区画手段の他方の側面と協働して二室のうちの他方の室を形成した湾曲状の凹面と、湾曲状の凸面に収容体の筒部の内周面に向かって突出して一体的に設けられた少なくとも一つの弾性補強突起とを具備しており、一方の室は、収容体と回転体との間に形成されると共に流動する粘性流体に流動抵抗を与える通路を介して他方の室に連通されている。
【0007】
本発明によるロータリダンパによれば、一方の室を縮小する一方、他方の室を拡大するように収容体に対して回転体が回転される際には、弾性ベーンの湾曲状の凸面に粘性流体の圧力が付与されるために、弾性ベーンの他端部が収容体の内周面から離れるように当該弾性ベーンが弾性変形される結果、粘性流体は、粘性流体に流動抵抗を与える通路に加えて、弾性ベーンの他端部と収容体の内周面との間の空間(隙間)を通って一方の室から他方の室に流れて、この空間と通路とを通過する粘性流体による小さな制動が回転体の回転に与えられる一方、一方の室を拡大すると共に他方の室を縮小するように収容体に対して回転体が回転される際には、弾性ベーンの凹面に粘性流体の圧力が付与されるために、弾性ベーンの他端側が収容体の内周面に接触して弾性ベーンの他端部と収容体の内周面との間の空間を閉じるように弾性ベーンが弾性変形される結果、粘性流体は当該粘性流体に流動抵抗を与える通路を通って他方の室から一方の室に流れて、この通路を通過する粘性流体による大きな制動が回転体の回転に与えられて、一方向ダンパとして動作するようになっている。
【0008】
そして、本発明によるロータリダンパによれば、弾性ベーンが湾曲状の凸面に収容体の筒部の内周面に向かって突出して一体的に設けられた少なくとも一つの弾性補強突起を具備しているために、弾性ベーンの繰り返し撓み弾性変形において弾性ベーンの機械的疲労の進行を弾性補強突起でもって遅らせることができる結果、弾性ベーンの耐久性を向上できて、回転体の一方の回転に対しては大きな制動を発生する一方、回転体の他方の回転に対しては小さな制動を発生する弾性ベーンによる一方向性の制動特性を長期に亘って維持でき、耐久性に優れた弾性ベーンとなる。
【0009】
弾性補強突起は、好ましくは、少なくとも湾曲状の凹面で粘性流体からの流体圧を受容する際に、その先端部で収容体の筒部の内周面に接触するようになっており、斯かる弾性補強突起によれば、湾曲状の凹面で粘性流体からの流体圧を受容する際に、弾性ベーンが収容体の筒部の内周面によって支持されるために、弾性ベーンの過度の撓み弾性変形を防止でき、これによっても、弾性ベーンの機械的疲労の進行を大幅に遅らせることができ、益々効果的に弾性ベーンの耐久性を向上させることができる。
【0010】
本発明の一つの例では、弾性補強突起は、湾曲状の凸面で粘性流体からの流体圧を受容する際に、その先端部で収容体の内周面から浮き上がるようになっており、斯かる弾性補強突起であると、弾性ベーンの他端部と収容体の内周面との間の空間の粘性流体の通過が弾性補強突起により邪魔されないで行われ、而して、明確な一方向性の制動特性をもったロータリダンパを提供することができる。
【0011】
弾性補強突起は、回転体の軸心方向の一方の端面及び他方の端面の間の中間部に回転体の軸心方向に沿って連続的に延びていてもよいが、本発明は、これに限定されず、回転体の軸心方向の一方の端面から他方の端面までの全体に回転体の軸心方向に沿って連続的に延びていても、また、いずれにおいても、連続的に延びる代わりに、断続的に延びていてもよく、このように中間部において連続的に延びている場合又は弾性補強突起が断続的に延びている場合には、弾性補強突起は、湾曲状の凸面で粘性流体からの流体圧を受容する際に、その先端部が収容体の内周面から浮き上がる必要はなく、断続的な弾性補強突起間において形成される隙間、即ち、隙間通路を介して粘性流体の流通を確保してもよい。
【0012】
湾曲状の凸面は、好ましい例では、少なくとも当該凸面で粘性流体からの流体圧を受容する際に、その他端部で筒部の内周面から浮き上がるようになっており、他の好ましい例では、少なくとも湾曲状の凹面で粘性流体からの流体圧を受容する際に、その他端部で筒部の内周面に接触するようになっているが、本発明は、これに限定されず、回転体が収容体に対してR方向に回転しない際には、即ち、弾性ベーンが湾曲状の凸面及び湾曲状の凹面のいずれにおいても粘性流体からの流体圧を受容しない際には、湾曲状の凸面は、その他端部で筒部の内周面から浮き上がっており、当該凸面で粘性流体からの流体圧を受容する際に、その他端部での浮き上がりをより大きくし、湾曲状の凹面で粘性流体からの流体圧を受容する際に、その他端部でのその浮き上がりをより小さくするようになっていてもよい。
【0013】
好ましい例では、湾曲状の凸面は、回転体の回転軸心に対して偏心した中心を有する円弧凸面を有しており、弾性補強突起は、円弧凸面において当該円弧凸面の一端部と他端部との間の中間部に一体的に設けられており、この場合、湾曲状の凹面は、円弧凸面と同心であって当該円弧凸面の曲率半径よりも小さい曲率半径をもった円弧凹面を有していてもよい。
【0014】
区画手段の湾曲状の内径側凹面は、回転体本体の外周面との間で前記通路としての隙間を形成するべく当該外周面の径よりも大きな径を有した円筒状の内面を有していてもよいが、本発明は、これに限定されず、区画手段の湾曲状の内径側凹面は、回転体本体の外周面と同径の径を有した円筒状の内面を有していてもよく、この場合には、通路は、回転体本体及び弾性ベーンのうちの少なくとも一方に貫通孔として形成されてもよく、更には、弾性ベーンと収容体との間の軸方向の隙間でもって形成されていてもよい。
【0015】
本発明において、粘性流体としては、シリコーンオイルを好ましい例として挙げることができるが、その他の粘性流体であってもよく、また、収容体は、金属製であってもよいが、軽量化、費用の削減等の理由により硬質の合成樹脂製であってもよく、回転体もまた、金属製であってもよいが、軽量化、費用の削減等の理由により硬質の合成樹脂製であってもよく、弾性ベーンは、回転体本体とは別体にして回転体本体に溶接、嵌着、接着等により固着してもよいが、好ましくは回転体本体と一体形成されており、回転体本体と弾性ベーンとが一体形成される場合には、回転体は、弾性ベーンに適度な弾性が付与される合成樹脂素材が用いられるのが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、回転体の一方の回転に対しては大きな制動を発生する一方、回転体の他方の回転に対しては小さな制動を発生する弾性ベーンによる一方向性の制動特性を長期に渡って維持できる耐久性に優れた弾性ベーンを有したロータリダンパを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の好ましい例の図2に示すI−I線矢視断面説明図である。
【図2】図2は、図1に示す例のII−II線矢視断面説明図である。
【図3】図3は、図1に示す例の回転体の正面説明図である。
【図4】図4は、図3に示す例の回転体の平面説明図である。
【図5】図5は、図1に示す例の容器の正面説明図である。
【図6】図6は、図5に示す容器本体のVI−VI線矢視断面説明図である。
【図7】図7は、図1に示す容器蓋の正面説明図である。
【図8】図8は、図7に示す容器蓋のVIII−VIII線矢視断面説明図である。
【図9】図9は、図1に示す例の動作説明図である。
【図10】図10は、図1に示す例の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に本発明の実施の形態を、図に示す好ましい例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら例に何等限定されないのである。
【0019】
図1から図8において、本例のロータリダンパ1は、内部2にシリコーンオイル等からなる粘性流体3を収容する合成樹脂製の収容体4と、収容体4の内部2に回転自在に、即ち、軸心Oを中心としてR方向に回転自在に配されていると共に収容体4の内面5と協働して収容体4の内部2を少なくとも二室、本例では、室6及び7からなる二室と室8及び9からなる二室とに区画する合成樹脂製の回転体10とを具備している。
【0020】
収容体4は、円筒状の内周面15及び外周面16を有する筒部17と、筒部17の軸心方向Aの一方の環状の端部において内周面15に一体的に設けられた蓋部18と、筒部17の軸心方向Aの他方の環状の端部において外周面16に一体的に設けられた円環状の鍔部19と、鍔部19に複数のねじ20により固着された蓋21と、筒部17の内周面15及び蓋部18の円環状の内側面28に一体的に設けられていると共に夫々湾曲状の内径側凹面22を有した区画部23及び24からなる区画手段とを具備している。
【0021】
筒部17は、軸心方向Aの他方の環状の端部における円環状端面25に、シールリング26が装着される円環状の溝27を有しており、蓋部18は、その円環状の内側面28及び内周面29の連接部にシールリング30が装着される切欠き溝31と、内周面29で規定されていると共に減衰対象物に連結される図示しない回転軸が挿通される貫通孔32とを有している。
【0022】
円環状の蓋21は、その円環状の内側面34及び内周面35の連接部にシールリング36が装着される切欠き溝37と、内周面35で規定されていると共に減衰対象物に連結される図示しない回転軸が挿通される貫通孔38とを有している。
【0023】
区画手段において、軸心Oに関して互いに対称に形成された区画部23及び24の夫々は、湾曲状の内径側凹面22に加えて、一方では内周面15に連接すると共に他方では内径側凹面22に連接した回転方向Rに関する一方の側面41と、同じく、一方では内周面15に連接すると共に他方では内径側凹面22に連接した回転方向Rに関する他方の側面42とを有している。
【0024】
回転体10は、蓋部18の内周面29及び蓋21の内周面35において収容体4にR方向に回転自在に支持されていると共に区画部23及び24の湾曲状の内径側凹面22の夫々が対面する円筒状の外周面51を有した中空の回転体本体52と、回転体本体52の外周面51に軸心Oに関して対称に設けられている一対の弾性ベーン53及び54とを具備している。
【0025】
回転体本体52は、円筒部55と、円筒部55の円筒状の外周面56に一体的に形成されていると共に外周面51を有した円環状のベーン基部57とを具備しており、円筒部55は、減衰対象物に連結される図示しない回転軸が挿通されて嵌装される貫通孔61を規定する円筒状の内周面62と、内周面62に軸心Oに関して対称に一体的に形成された一対のキー突起63とを具備しており、回転体10は、円筒部55の軸心方向Aの両端部で蓋部18の内周面29及び蓋21の内周面35において収容体4にR方向に回転自在に支持されている。
【0026】
軸心方向Aにおいてベーン基部57と同幅の弾性ベーン53及び54は、互いに同一に形成されているので、弾性ベーン53について説明すると、弾性ベーン53は、一端部では外周面51に連接する一方、他端部では筒部17の内周面15に対面すると共に回転体10の回転方向Rに関して区画部23の一方の側面41と協働して二室6及び7のうちの一方の室6を形成した湾曲状の凸面71と、凸面71に対応して一端部では外周面51に連接する一方、湾曲状の凸面71に沿って延びると共に回転体10の回転方向Rに関して区画部24の他方の側面42と協働して二室6及び7のうちの他方の室7を形成した湾曲状の凹面72と、湾曲状の凸面71に収容体4の筒部17の内周面15に向かって突出して一体的に設けられた弾性補強突起73とを具備している。
【0027】
湾曲状の凸面71は、回転体10の軸心Oに対して偏心すると共に軸心Oと弾性ベーン53の先端74とを結ぶ線上に位置した中心O1を有する円弧凸面75を有しており、弾性補強突起73は、円弧凸面75において当該円弧凸面75のR方向の一端部76と他端部77との間の中間部に一体的に設けられている。
【0028】
湾曲状の凹面72は、円弧凸面75と同心であって当該円弧凸面75の曲率半径よりも小さい曲率半径をもった円弧凹面78を有している。
【0029】
弾性補強突起73は、本例では、弾性ベーン53の軸心方向Aの一方の端面81及び他方の端面82の間の中間部に回転体10の軸心方向Aに沿って連続的に延びている。
【0030】
区画手段の一方の側面となる区画部23の側面41は、弾性ベーン53の湾曲状の凸面71と相補的な形状を有する凹面85と、一方では凹面85に連接されている一方、他方では筒部17の円筒状の内周面15に連接されていると共に回転体10の回転方向Rに関して弾性補強突起73の一方の側面86の形状と相補的な形状の面87とを有しており、区画手段の他方の側面となる区画部24の他方の側面42は、弾性ベーン53の湾曲状の凹面72の形状と相補的な形状の湾曲状の凸面88を有しており、区画部23及び24の湾曲状の内径側凹面22の夫々は、外周面51との間で、本例では室6と室7に対応する室9とを、そして、室7と室6に対応する室8とを夫々連通する通路91としての隙間92を形成するべく当該外周面51の径(2×r1)よりも大きな径(2×r2)を有した円筒状の内面93を有しており、而して、一方の室6は、収容体4の区画部23の内径側凹面22と回転体10の外周面51との間に形成されると共に流動する粘性流体3に流動抵抗を与える通路91を介して他方の室7に対応する室9に、他方の室7は、収容体4の区画部24の内径側凹面22と回転体10の外周面51との間に形成されると共に流動する粘性流体3に流動抵抗を与える通路91を介して一方の室6に対応する室8に連通されている。
【0031】
蓋21は、その円環状の内側面34でベーン基部57並びに弾性ベーン53及び54の軸心方向Aの端面に密に摺動自在に接触しており、シールリング26、30及び36は、室6及び7並びに室8及び9から外部への粘性流体3の漏出を防止している。
【0032】
以上のロータリダンパ1では、図1又は図9に示す回転体10の回転位置で、一方の室6を縮小する一方、他方の室7を拡大するように、収容体4に対して回転体10がR1方向に回転される際には、弾性ベーン53の湾曲状の凸面71に粘性流体3の圧力が付与されるために、図10に示すように、弾性ベーン53の他端部95の円弧凸面75及び弾性補強突起73の先端面が収容体4の内周面15から離れように浮き上がって他端部95側での円弧凸面75と内周面15との間及び弾性補強突起73の先端面と内周面15との間に夫々空間(隙間)96及び97を生じるように弾性ベーン53が弾性変形される結果、粘性流体3は、当該粘性流体3に流動抵抗を与える通路91に加えて、これらの空間96及び97を通って一方の室6及び8から他方の室7及び9に流れて、通路91並びに空間96及び97を通過する粘性流体3の流動抵抗による小さな制動を回転体10のR1方向の回転に与える一方、図1又は図10に示す回転体10の回転位置で、一方の室6を拡大する一方、他方の室7を縮小するように、収容体4に対して回転体10がR2方向に回転される際には、弾性ベーン53の凹面72に粘性流体3の圧力が付与されるために、図1及び図9に示すように、弾性ベーン53の他端部95側の円弧凸面75及び弾性補強突起73の先端面が収容体4の内周面15に接触して空間96及び97を閉じるように弾性ベーン53が弾性変形される結果、粘性流体3は、空間96及び97を介することなしに通路91を通って他方の室7及び9から一方の室8及び6に流れて、通路91のみを通過する粘性流体3の流動抵抗による大きな制動を回転体10のR2方向の回転に与えて、一方向ダンパとして機能する。
【0033】
ところで、ロータリダンパ1によれば、弾性ベーン53が湾曲状の凸面71に収容体4の筒部17の内周面15に向かって突出して一体的に設けられた弾性補強突起73を具備しているために、弾性ベーン53の繰り返し撓み弾性変形において弾性ベーン53の機械的疲労の進行を弾性補強突起73でもって遅らせることができる結果、弾性ベーン53の耐久性を向上できて、回転体10のR2方向の回転に対しては大きな制動を発生する一方、回転体10のR1方向の回転に対しては小さな制動を発生する弾性ベーン53による一方向性の制動特性を長期に亘って維持できる。
【0034】
また、ロータリダンパ1においては、湾曲状の凹面72で粘性流体3からの流体圧を受容する際に、弾性補強突起73が先端部で収容体4の筒部17の内周面15に接触するようになっており、斯かる弾性補強突起73によれば、湾曲状の凹面72で粘性流体3からの流体圧を受容する際に、弾性ベーン53が弾性補強突起73を介して収容体4の筒部17の内周面15によって支持されるために、弾性ベーン53の過度の撓み弾性変形を防止でき、これによっても、弾性ベーン53の機械的疲労の進行を大幅に遅らせることができ、益々効果的に弾性ベーン53の耐久性を向上させることができる。
【0035】
加えて、ロータリダンパ1においては、湾曲状の凸面71で粘性流体3からの流体圧を受容する際に、弾性補強突起73がその先端部で収容体4の筒部17の内周面15から浮き上がるようになっており、斯かる弾性補強突起73であると、弾性ベーン53の他端部95と収容体4の内周面15との間の空間96の粘性流体3の通過が弾性補強突起73により邪魔されないで行われ、而して、明確な一方向性の制動特性をもったロータリダンパ1を提供することができる。
【0036】
以上の動作は弾性ベーン54側でも同様に行われる。
【0037】
以上のロータリダンパ1は、一対の弾性ベーン53及び54を有しているが、本発明のロータリダンパは、斯かる一対の弾性ベーンに代えて、一個又は三個以上の弾性ベーンを有していてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 ロータリダンパ
2 内部
3 粘性流体
4 収容体
5 内面
6、7、8、9 室
10 回転体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性流体を内部に収容する収容体と、この収容体の内部に回転自在に配されていると共に収容体の内面と協働して収容体の内部を少なくとも二室に区画する回転体とを具備しており、収容体は、円筒状の内周面を有する筒部と、この筒部の内周面に設けられていると共に湾曲状の内径側凹面を有した区画手段とを具備しており、回転体は、収容体に回転自在に支持されていると共に区画手段の湾曲状の内径側凹面が対面する円筒状の外周面を有した回転体本体と、この回転体本体の外周面に設けられている弾性ベーンとを具備しており、弾性ベーンは、一端部では回転体本体の外周面に連接する一方、他端部では収容体の筒部の内周面に対面すると共に回転体の回転方向に関して区画手段の一方の側面と協働して二室のうちの一方の室を形成した湾曲状の凸面と、この凸面に対応して一端部では回転体本体の外周面に連接する一方、湾曲状の凸面に沿って延びると共に回転体の回転方向に関して区画手段の他方の側面と協働して二室のうちの他方の室を形成した湾曲状の凹面と、湾曲状の凸面に収容体の筒部の内周面に向かって突出して一体的に設けられた少なくとも一つの弾性補強突起とを具備しており、一方の室は、収容体と回転体との間に形成されると共に流動する粘性流体に流動抵抗を与える通路を介して他方の室に連通されているロータリダンパ。
【請求項2】
弾性補強突起は、少なくとも湾曲状の凹面で粘性流体からの流体圧を受容する際に、その先端部で収容体の筒部の内周面に接触するようになっている請求項1に記載のロータリダンパ。
【請求項3】
弾性補強突起は、少なくとも湾曲状の凸面で粘性流体からの流体圧を受容する際に、その先端部で収容体の筒部の内周面から浮き上がるようになっている請求項1又は2に記載のロータリダンパ。
【請求項4】
弾性補強突起は、回転体の軸心方向の一方の端面及び他方の端面の間の中間部に回転体の軸心方向に沿って連続的に延びている請求項1から3のいずれか一項に記載のロータリダンパ。
【請求項5】
湾曲状の凸面は、少なくとも湾曲状の凹面で粘性流体からの流体圧を受容する際に、その他端部で筒部の内周面に接触するようになっている請求項1から4のいずれか一項に記載のロータリダンパ。
【請求項6】
湾曲状の凸面は、少なくとも当該湾曲状の凸面で粘性流体からの流体圧を受容する際に、その他端部で筒部の内周面から浮き上がるようになっている請求項1から4のいずれか一項に記載のロータリダンパ。
【請求項7】
湾曲状の凸面は、回転体の回転軸心に対して偏心した中心を有する円弧凸面を有しており、弾性補強突起は、円弧凸面に当該円弧凸面の一端部と他端部との間の中間部に一体的に設けられている請求項1から4のいずれか一項に記載のロータリダンパ。
【請求項8】
湾曲状の凹面は、円弧凸面と同心であって当該円弧凸面の曲率半径よりも小さい曲率半径をもった円弧凹面を有している請求項7に記載のロータリダンパ。
【請求項9】
区画手段の湾曲状の内径側凹面は、回転体本体の外周面との間で前記通路としての隙間を形成するべく当該外周面の径よりも大きな径を有した円筒状の内面を有している請求項1から8のいずれか一項に記載のロータリダンパ。
【請求項10】
区画手段の一方の側面は、弾性ベーンの湾曲状の凸面と相補的な形状を有する凹面と、一方ではこの凹面に連接されている一方、他方では収容体の筒部の円筒状の内周面に連接されていると共に回転体の回転方向に関して弾性補強突起の一方の側面の形状と相補的な形状の面を有している請求項1から9のいずれか一項に記載のロータリダンパ。
【請求項11】
区画手段の他方の側面は、弾性ベーンの湾曲状の凹面の形状と相補的な形状の湾曲状の凸面を有している請求項1から10のいずれか一項に記載のロータリダンパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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