説明

ロータリダンパ

【課題】発生する制動に温度依存性がなく、高温でも低温でも変化のない制動を得ることができる上に、耐久性に優れたロータリダンパを提供すること。
【解決手段】ロータリダンパ1は、内部2に温度上昇に伴って粘度が低下する粘性流体3を収容する合成樹脂製の収容体4と、収容体4の内部2に軸心Oを中心としてR1及びR2方向に回転できるように配されていると共に収容体4と協働して収容体4の内部2を室5及び6からなる二室と室7及び8からなる二室とに区画する回転体9とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘性流体を収容する収容体の内部にベーンを有した回転体を回転自在に収容して、粘性流体により回転体の回転に対して制動を与えるロータリダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2010−121743号公報
【特許文献2】特開平9−42350号公報
【特許文献3】特開平9−329173号公報
【特許文献4】特開平8−109940号公報
【特許文献5】特開平8−296687号公報
【0003】
隙間を通過する粘性流体により、回転体の一方の回転に対しては大きな制動を与える一方、回転体の他方の回転に対しては小さな制動を与えるようにしたこの種のロータリダンパは、特許文献2等によって知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、斯かるロータリダンパでは、粘性流体の粘度が温度によって変化するために、高温下の使用では制動が低下する一方、低温下の使用では制動が増大することとなり、高温でも低温でも変化のない制動が要求される機器、例えば屋外等設置場所で温度管理されない自動車等へのこの種ロータリダンパの使用は適さないことになる。
【0005】
そこで、発生する制動に温度依存性がなく、高温でも低温でも変化のない制動を得ることができるロータリダンパが特許文献1によって提案されている。
【0006】
提案に係るロータリダンパは、粘性流体を内部に収容する収容体と、この収容体の内周面と協働して収容体の内部の一方の室を形成した湾曲状の凸面、この凸面に沿って延びると共に収容体の内周面と協働して収容体の内部の他方の室を形成した湾曲状の凹面とを具備した弾性ベーンとを有しているので、発生する制動に温度依存性をなくし得て、高温でも低温でも変化のない制動を得ることができるという初期の目的を効果的に達成できるのであるが、本ロータリダンパにおいて、弾性ベーンは、収容体の内部に収容された粘性流体から繰り返し流体圧を受けて弾性変形を繰り返す結果、弾性ベーンに早期に機械的疲労が生じて、長期の使用で場合によりその機能を達成できなくなる虞がある。
【0007】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、発生する制動に温度依存性がなく、高温でも低温でも変化のない制動を得ることができる上に、耐久性に優れたロータリダンパを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるロータリダンパは、温度によって粘度が変化する粘性流体を内部に収容する収容体と、この収容体の内部に回転自在に配されていると共に収容体と協働して収容体の内部を少なくとも二室に区画する回転体とを具備しており、回転体は、収容体に回転自在に支持された回転体本体と、この回転体本体の外周面に設けられている弾性ベーンとを具備しており、弾性ベーンは、一端では回転体本体の外周面に連接する一方、他端では収容体の内周面に対面すると共に収容体の内周面と協働して二室のうちの一方の室を形成した湾曲状の凸面と、この凸面に対応して一端では回転体本体の外周面に連接する一方、凸面に沿って延びると共に収容体の内周面と協働して二室のうちの他方の室を形成した湾曲状の凹面と、湾曲状の凸面に収容体の内周面に向かって突出して一体的に設けられた少なくとも一つの弾性補強突起とを具備しており、凸面は、その他端側で、円周方向において対峙した一対の楔空間を収容体の内周面との間で形成する円弧状凸面を有しており、この円弧状凸面は、二室のうちの一方の室に連通する一方の楔空間の径方向の幅が円周方向において他方の楔空間に向かうに連れて徐々に狭くなるように、当該一方の楔空間の径方向の幅を決定していると共に、二室のうちの他方の室に連通する他方の楔空間の径方向の幅が円周方向において一方の楔空間に向かうに連れて徐々に狭くなるように、当該他方の楔空間の径方向の幅を決定しており、一対の楔空間を通過する粘性流体は、弾性ベーンを弾性的に撓ませてその粘度によって一対の楔空間の径方向の幅を決定するようになっている。
【0009】
本発明によるロータリダンパによれば、一方の室を縮小すると共に他方の室を拡大するように収容体に対して回転体が回転される際には、弾性ベーンの湾曲状の凸面に粘性流体の圧力が付与されるために、弾性ベーンの他端側が収容体の内周面から離れて一対の楔空間を広げるように弾性ベーンが弾性変形される結果、粘性流体は広げられた一対の楔空間を通って一方の室から他方の室に流れて、この広げられた一対の楔空間を通過する粘性流体による小さな制動が回転体の回転に与えられる一方、一方の室を拡大すると共に他方の室を縮小するように収容体に対して回転体が回転される際には、弾性ベーンの凹面に粘性流体の圧力が付与されるために、弾性ベーンの他端側が収容体の内周面に近づいて一対の楔空間を縮小するように弾性ベーンが弾性変形される結果、粘性流体は縮小された一対の楔空間を通って他方の室から一方の室に流れて、この縮小された一対の楔空間を通過する粘性流体による大きな制動が回転体の回転に与えられて、一方向ダンパとして動作するようになっている。
【0010】
そして、本発明によるロータリダンパによれば、温度によって粘度が変化する粘性流体が回転体の回転において一対の楔空間を通過するために、例えば、低温下で常温(20℃)時よりも粘度が増加した粘性流体が一対の楔空間を通過する場合には、一対の楔空間での粘性流体の圧力増大により弾性ベーンの他端側が収容体の内周面から離れるように弾性ベーンが弾性変形されて一対の楔空間が広げられる結果、粘性流体自体の粘度増加と一対の楔空間の拡大による流動抵抗の低下とにより、低温にも拘らず常温時の制動を維持できる一方、高温下で常温時よりも粘度が低下した粘性流体が一対の楔空間を通過する場合には、一対の楔空間での粘性流体の圧力減少により弾性ベーンの他端側が収容体の内周面に近づくように弾性ベーンが弾性変形されて一対の楔空間が狭められる結果、粘性流体自体の粘度低下と一対の楔空間の縮小による流動抵抗の増大とにより、高温にも拘らず常温時の制動を維持できるようになり、而して、発生する制動に温度依存性がなく、高温でも低温でも変化のない制動を得ることができる。
【0011】
のみならず、本発明によるロータリダンパによれば、湾曲状の凸面に収容体の内周面に向かって突出して一体的に設けられた少なくとも一つの弾性補強突起を弾性ベーンが具備しているために、弾性ベーンの繰り返し撓み弾性変形において弾性ベーンの機械的疲労の進行を弾性補強突起でもって遅らせることができる結果、早期の劣化を低減でき、而して、長期の使用でも弾性ベーンの機能を維持できて耐久性を向上させることができる。
【0012】
弾性補強突起は、弾性的な撓み変形が大きく生じ得る凸面における円弧状凸面に一体的に設けられているとよく、斯かる弾性補強突起であると、円弧状凸面での弾性ベーンの劣化を効果的に低減できて更に効果的に弾性ベーン、延いてはロータリダンパの耐久性を向上させることができる。
【0013】
弾性補強突起は、好ましい例では、少なくとも湾曲状の凹面で粘性流体からの流体圧を受容する際に、その先端部が収容体の内周面に接触するようになっており、これにより、弾性ベーンが弾性補強突起を介して収容体の内周面に支持される結果、弾性ベーンの過大な弾性的な撓み変形を避けることができ、益々効果的にロータリダンパの耐久性を向上させることができる。
【0014】
本発明の一つの例では、弾性補強突起は、円弧状凸面で粘性流体からの流体圧を受容する際に、その先端部が収容体の内周面から浮き上がるようになっている。
【0015】
弾性補強突起は、好ましい例では、回転体の軸心方向の一方の端面から他方の端面まで回転体の軸心方向に沿って連続的に延びているが、本発明は、これに限定されず、回転体の軸心方向の一方の端面及び他方の端面の間の中間部に回転体の軸心方向に沿って連続的に延びていても、また、いずれにおいても、連続的に延びるかわりに、断続的に延びていてもよく、このように弾性補強突起部が断続的に延びている場合又は中間部において連続的に延びている場合には、弾性補強突起は、円弧状凸面で粘性流体からの流体圧を受容する際に、その先端部が収容体の内周面から浮き上がる必要はなく、断続的な弾性補強突起間において形成される隙間、即ち、通路を介して粘性流体の流通を確保してもよい。
【0016】
好ましい例では、凹面は、凸面の一端から他端にかけて徐々に当該凸面に近づくように凸面に沿って延びており、収容体の内周面は、円弧状凸面と協働して一方の楔空間を形成する円筒状内周面と、この円筒状内周面に連接されていると共に凸面に相補的な形状の湾曲凹状内周面とを有しており、円弧状凸面は、円筒状内周面の曲率半径よりも小さな曲率半径を有している。
【0017】
本発明において、粘性流体としては、シリコーンオイルを好ましい例として挙げることができるが、その他の粘性流体であってもよく、また、収容体は、金属製であってもよいが、軽量化、費用の削減等の理由により硬質の合成樹脂製であってもよく、回転体もまた、金属製であってもよいが、軽量化、費用の削減等の理由により硬質の合成樹脂製であってもよく、弾性ベーンは、回転体本体とは別体にして回転体本体に溶接、嵌着、接着等により固着してもよいが、好ましくは回転体本体と一体形成されており、回転体本体と弾性ベーンとが一体形成される場合には、回転体は、弾性ベーンに適度な弾性が付与される合成樹脂素材が用いられるのが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、発生する制動に温度依存性がなく、高温でも低温でも変化のない制動を得ることができる上に、耐久性に優れたロータリダンパを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の好ましい一例の図2に示すI−I線矢視断面説明図である。
【図2】図2は、図1に示す例のII−II線矢視断面説明図である。
【図3】図3は、図1に示す例の外観説明図である。
【図4】図4は、図1に示す例の一部拡大説明図である。
【図5】図5は、図1に示す例の動作説明図である。
【図6】図6は、図1に示す例の動作説明図である。
【図7】図7は、図1に示す例の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に本発明の実施の形態を、図に示す好ましい例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら例に何等限定されないのである。
【0021】
図1から図4において、本例のロータリダンパ1は、内部2にシリコーンオイル等からなって温度上昇に伴って粘度が低下する粘性流体3を収容する合成樹脂製の収容体4と、収容体4の内部2に回転自在に、即ち、軸心Oを中心としてR1及びR2方向に回転できるように配されていると共に収容体4と協働して収容体4の内部2を少なくとも二室、本例では、室5及び6からなる二室と室7及び8からなる二室とに区画する合成樹脂製の回転体9とを具備している。
【0022】
収容体4は、内周面15及び16を有した筒体17と、筒体17の軸心方向Aの一方及び他方の環状の端面18及び19の夫々に複数のねじ20により固着された一対の蓋体21及び22とを具備している。
【0023】
内周面15と16とは、軸心Oに関して対称の形状をもって互いに同様に形成されているので、以下、内周面15について説明すると、内周面15は、軸心Oを中心とする円筒状内周面25と、円筒状内周面25の一端に連接されていると共に回転体9の凸面26に相補的な形状の湾曲凹状内周面27と、一端で円筒状内周面25の他端に連接されている円筒状内周面28と、一端で円筒状内周面28の他端に連接されている円筒状内周面29とを有しており、円筒状内周面25及び円筒状内周面28の夫々は、湾曲凹状内周面27と同様に、凹面からなっており、円筒状内周面29は凸面からなっている。
【0024】
筒体17は、円筒状内周面25を有した円筒状の筒本体35と、筒本体35に軸心Oに関して対称の形状をもって互いに同様に一体的に形成されている一対の突部36及び37とを具備しており、突部36は、内周面15の湾曲凹状内周面27並びに内周面16の円筒状内周面28及び円筒状内周面29を有しており、突部37は、内周面16の湾曲凹状内周面27並びに内周面15の円筒状内周面28及び円筒状内周面29を有している。
【0025】
中央に貫通孔41を有した蓋体21は、軸心方向Aの一方の側面42で内部2の軸心方向Aの一方を規定しており、中央に貫通孔43を有した蓋体22は、軸心方向Aの一方の側面44で内部2の軸心方向Aの他方を規定している。
【0026】
回転体9は、収容体4にR1及びR2方向に回転自在となるように支持された中空の回転体本体51と、回転体本体51の外周面52に一体的に設けられている一対の弾性ベーン53及び54とを具備している。
【0027】
円筒状の回転体本体51の中心部の中空部55に回転軸が嵌装されるようになっており、この回転軸のR1及びR2方向の回転で回転体本体51は、同方向に回転されるようになっており、斯かる回転軸に減衰対象物が連結される。
【0028】
回転体本体51の外周面52は、突部36及び37の夫々の円弧状の先端面56にR1及びR2方向に滑り移動自在に接触しており、回転体本体51の外周面52と突部36及び37の夫々の円弧状の先端面56との接触により、室5及び6からなる二室と室7及び8からなる二室とが相互に密に分離されている。
【0029】
弾性ベーン53及び54は、軸心Oに関して対称の形状をもって互いに同様に形成されているので、以下、弾性ベーン53について説明すると、弾性ベーン53は、一端では回転体本体51の外周面52に連接する一方、他端では収容体4の内周面15の円筒状内周面25に近接して対面すると共に収容体4の内周面15と協働して二室5及び6のうちの一方の室5を形成した湾曲状の凸面26と、凸面26に対応して一端では回転体本体51の外周面52に連接する一方、凸面26に沿って延びると共に収容体4の内周面15と協働して二室5及び6のうちの他方の室6を形成した湾曲状の凹面64と、凸面26に収容体4の内周面15に向かって突出して一体的に設けられた弾性補強突起65とを具備している。
【0030】
凸面26は、特に図4に示すように、その他端側で、円周方向Rにおいて対峙した一対の楔空間71及び72を収容体4の円筒状内周面25との間で形成すると共に円筒状内周面25の曲率半径よりも小さな曲率半径を有している円弧状凸面73を有しており、円筒状内周面25と協働して楔空間71及び72を形成する円弧状凸面73は、室5に連通する一方の楔空間71の径方向Bの幅が円周方向Rにおいて他方の楔空間72に向かうに連れて徐々に狭くなるように、当該一方の楔空間71の径方向Bの幅を決定していると共に、室6に連通する他方の楔空間72の径方向Bの幅が円周方向Rにおいて一方の楔空間71に向かうに連れて徐々に狭くなるように、当該他方の楔空間72の径方向Bの幅を決定しており、一対の楔空間71及び72を通過する粘性流体3は、弾性ベーン53を撓ませてその粘度によって室5と室6とを連通する一対の楔空間71及び72の径方向Bの幅を決定するようになっている。
【0031】
凹面64は、凸面26の一端から他端にかけて徐々に当該凸面26に近づくように凸面26に沿って延びて凸面26の終端と共に終端しており、これにより、弾性ベーン53は、回転体本体51に連接された基部74からその自由端75に至るまで徐々に薄くなるように形成されている。
【0032】
凸面26における円弧状凸面73に一体的に設けられていると共に回転体9の軸心方向Aの一方の端面81から他方の端面82まで回転体9の軸心方向Aに沿って連続的に延びている弾性補強突起65は、凸面26で粘性流体3からの流体圧を受容する際に、その先端部が収容体4の内周面15において円筒状内周面25又は湾曲凹状内周面27から浮き上がるようになっている一方、凹面64で粘性流体3からの流体圧を受容する際に、図6及び図7に示すように、その先端部が収容体4の内周面15において円筒状内周面25又は湾曲凹状内周面27に弾性的な撓みをもって接触するようになっている。
【0033】
蓋体21の軸心方向Aの一方の側面42は、回転体9の軸心方向Aの一方の端面81にR1及びR2方向に回転できるように、滑り自在に密に接触しており、蓋体22の軸心方向Aの他方の側面44は、回転体9の軸心方向Aの他方の端面82にR1及びR2方向に回転できるように、滑り自在に密に接触している。
【0034】
蓋体21の側面42と筒本体35及び回転体本体51との間並びに蓋体21の側面44と筒本体35及び回転体本体51との間の夫々には、室5及び6から収容体4外部への粘性流体3の漏出を防止するシールリング85が配されている。
【0035】
以上のロータリダンパ1では、図5に示す回転体9の回転位置で、一方の室5を縮小する一方、他方の室6を拡大するように、収容体4に対して回転体9がR1方向に回転される際には、弾性ベーン53の湾曲状の凸面26に粘性流体3の圧力が付与されるために、弾性ベーン53の他端75側が収容体4の円筒状内周面25から離れて一対の楔空間71及び72を広げるように弾性ベーン53が弾性変形される結果、粘性流体3は広げられた一対の楔空間71及び72を通って一方の室5から他方の室6に流れて、この広げられた一対の楔空間71及び72を通過する粘性流体3の流動抵抗による小さな制動を回転体9のR1方向の回転に与える一方、図6に示す回転体9の回転位置で、一方の室5を拡大する一方、他方の室6を縮小するように、収容体4に対して回転体9がR2方向に回転される際には、弾性ベーン53の凹面64に粘性流体3の圧力が付与されるために、弾性ベーン53の他端75側が収容体4の円筒状内周面25に近づいて一対の楔空間71及び72を縮小するように弾性ベーン53が弾性変形される結果、粘性流体3は縮小された一対の楔空間71及び72を通って他方の室6から一方の室5に流れて、この縮小された一対の楔空間71及び72を通過する粘性流体3の流動抵抗による大きな制動を回転体9のR2方向の回転に与えて、一方向ダンパとして機能する。
【0036】
また、ロータリダンパ1では、温度上昇に伴って粘度が低下する粘性流体3が回転体9のR1及びR2方向の回転において一対の楔空間71及び72を通過するようになっているために、例えば、低温下で常温時より粘度が増加した粘性流体3が一対の楔空間71及び72を通過する場合には、一対の楔空間71及び72での粘性流体3の圧力増大により弾性ベーン53の他端75側が収容体4の円筒状内周面25から常温時よりより離れるように弾性ベーン53が大きく弾性変形されて一対の楔空間71及び72が常温時と比較して大きく広げられる結果、粘性流体3自体の粘度増加による流動抵抗の増大と一対の楔空間71及び72の拡大による流動抵抗の低下とにより、低温にも拘らず常温時の制動を維持できる一方、高温下で常温時より粘度が低下した粘性流体3が一対の楔空間71及び72を通過する場合には、一対の楔空間71及び72での粘性流体3の圧力減少により弾性ベーン53の他端75側が収容体4の円筒状内周面25に常温時より近づくように弾性ベーン53が小さく弾性変形されて一対の楔空間71及び72が狭められる結果、粘性流体3自体の粘度低下による流動抵抗の減少と一対の楔空間71及び72の縮小による流動抵抗の増大とにより、高温にも拘らず常温時の制動を維持できるようになり、而して、発生する制動に温度依存性がなく、高温でも低温でも変化のない制動を得ることができる。
【0037】
加えて、ロータリダンパ1では、上記の動作において弾性変形される弾性ベーン53が弾性補強突起65で補強されていると共に凹面64で粘性流体3からの流体圧を受容する際に、弾性補強突起65の先端部が円筒状内周面25又は湾曲凹状内周面27に弾性的な撓みをもって接触して弾性ベーン53が弾性補強突起65を介して円筒状内周面25又は湾曲凹状内周面27で支持されるために、弾性的な撓み変形による弾性ベーン53の劣化を低減でき、而して、長期の使用でも弾性ベーン53の機能を維持できて耐久性を向上させることができる。
【0038】
以上の動作は弾性ベーン54側でも同様に行われる。
【0039】
以上のロータリダンパ1は、一対の弾性ベーン53及び54を有しているが、本発明のロータリダンパは、斯かる一対の弾性ベーンに代えて、一個又は三個以上の弾性ベーンを有していてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 ロータリダンパ
2 内部
3 粘性流体
4 収容体
5、6 室
9 回転体
26 凸面
51 回転体本体
52 外周面
53、54 弾性ベーン
64 凹面
65 弾性補強突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度によって粘度が変化する粘性流体を内部に収容する収容体と、この収容体の内部に回転自在に配されていると共に収容体と協働して収容体の内部を少なくとも二室に区画する回転体とを具備しており、回転体は、収容体に回転自在に支持された回転体本体と、この回転体本体の外周面に設けられている弾性ベーンとを具備しており、弾性ベーンは、一端では回転体本体の外周面に連接する一方、他端では収容体の内周面に対面すると共に収容体の内周面と協働して二室のうちの一方の室を形成した湾曲状の凸面と、この凸面に対応して一端では回転体本体の外周面に連接する一方、凸面に沿って延びると共に収容体の内周面と協働して二室のうちの他方の室を形成した湾曲状の凹面と、湾曲状の凸面に収容体の内周面に向かって突出して一体的に設けられた少なくとも一つの弾性補強突起とを具備しており、凸面は、その他端側で、円周方向において対峙した一対の楔空間を収容体の内周面との間で形成する円弧状凸面を有しており、この円弧状凸面は、二室のうちの一方の室に連通する一方の楔空間の径方向の幅が円周方向において他方の楔空間に向かうに連れて徐々に狭くなるように、当該一方の楔空間の径方向の幅を決定していると共に、二室のうちの他方の室に連通する他方の楔空間の径方向の幅が円周方向において一方の楔空間に向かうに連れて徐々に狭くなるように、当該他方の楔空間の径方向の幅を決定しており、一対の楔空間を通過する粘性流体は、弾性ベーンを弾性的に撓ませてその粘度によって一対の楔空間の径方向の幅を決定するようになっているロータリダンパ。
【請求項2】
弾性補強突起は、凸面における円弧状凸面に一体的に設けられている請求項1に記載のロータリダンパ。
【請求項3】
弾性補強突起は、少なくとも湾曲状の凹面で粘性流体からの流体圧を受容する際に、その先端部が収容体の内周面に接触するようになっている請求項1又は2に記載のロータリダンパ。
【請求項4】
弾性補強突起は、円弧状凸面で粘性流体からの流体圧を受容する際に、その先端部が収容体の内周面から浮き上がるようになっている請求項1から3のいずれか一項に記載のロータリダンパ。
【請求項5】
弾性補強突起は、回転体の軸心方向の一方の端面から他方の端面まで回転体の軸心方向に沿って連続的に延びている請求項1から4のいずれか一項に記載のロータリダンパ。
【請求項6】
凹面は、凸面の一端から他端にかけて徐々に当該凸面に近づくように凸面に沿って延びている請求項1から5のいずれか一項に記載のロータリダンパ。
【請求項7】
収容体の内周面は、円弧状凸面と協働して一方の楔空間を形成する円筒状内周面と、この円筒状内周面に連接されていると共に凸面に相補的な形状の湾曲凹状内周面とを有しており、円弧状凸面は、円筒状内周面の曲率半径よりも小さな曲率半径を有している請求項1から6のいずれか一項に記載のロータリダンパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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