説明

ロータリバルブ装置

【課題】内筒の内側にチャンバを形成することにより、内筒の円周方向に延びる円弧状溝の長さの範囲内で複数の連通孔を設けることができ、必要な有効流路断面積を容易に確保できるロータリバルブ装置を提供する。
【解決手段】固定側部材である内筒51と回転側部材である外筒52とを備え、外筒52が内筒51に対して摺接しながら回転することにより、内筒51の外周面に形成された円弧状溝51aと外筒52に形成された連通孔52hとが断続的に連通するように構成されたロータリバルブ装置50において、内筒51の内側に固定軸39を設けて内筒51を固定軸39に固定するとともに内筒51と固定軸39との間に所定容量のチャンバ53を形成し、内筒51に、円弧状溝51aの底部とチャンバとを連通する複数の連通孔51hを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリバルブ装置に係り、特に容器を真空吸着して所定の円周上を搬送して検査する容器検査装置に好適に用いることができ、容器を真空吸着する吸着ヘッドの真空圧のON/OFFを行うロータリバルブ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
容器の外観をカメラで撮影して検査する容器検査装置の一種として、プリフォーム検査装置がある。ペットボトルはプリフォームと呼ばれるものに予備成形され、プリフォームが加熱されてボトルに成形される。プリフォームは試験管状の、即ち、口部が平坦で底部が球面の形をしており、首部にリング状のネックリングをもっている。
従来のプリフォーム検査装置は、プリフォームを移送するスターホイールと、移送されたプリフォームの口部を吸着ヘッドで真空吸着して吸着ヘッドを自転させながら公転させるメインロータとを備え、自転するプリフォームをカメラで撮影してプリフォームの外観を検査している。
【0003】
従来のプリフォーム検査装置は、吸着ヘッドに供給する真空圧のON/OFFを行うために、ロータリバルブ装置を用いている。ロータリバルブ装置は、プリフォーム検査装置の検査ステーション部であるメインロータに取り付けられており、このロータリバルブ装置は、回転しないように固定して設置された内筒と、メインロータと同期して回転する外筒とから構成されている。内筒の外周面には、真空引きの際の流路を確保する為の真空用溝が円周方向に複数個形成されており、外筒には、内筒の真空用溝と連通するように内外に連通する複数の連通孔が設けられている。そして、内筒の真空用溝は、真空ポンプに接続されており、外筒の各連通孔は、配管により吸着ヘッドと1対1で接続されている。また、内筒の真空用溝は連続的に設けるのではなく、円周方向の途中で溝加工のない箇所を設けることにより、真空供給、真空の遮断が可能となる。
【0004】
上述のように構成されたロータリバルブ装置においては、メインロータと同期して外筒が回転すると、内筒の外周面に形成された真空用溝を外筒の連通孔が通過していくことになり、外筒の連通孔が内筒の真空用溝に整合(対向)している間だけ吸着ヘッドに真空が供給され、外筒の連通孔が内筒の溝加工のない箇所に掛かると吸着ヘッドへの真空供給が遮断される。
【特許文献1】特許第3422967号公報
【特許文献2】特許第3859323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のプリフォーム検査装置においては、当初、メインロータの搬送速度が遅く、容器搬送時に作用する外力も小さいため、吸着ヘッドの容器吸引力に余裕が余り無くても、容器を安定して搬送することができていたが、近年、要求される搬送速度が上がり、搬送中に吸着ヘッドから容器が落下する現象が見られるようになってきた。
【0006】
本発明者らは、搬送中に吸着ヘッドから容器が落下する原因をつきとめるため、種々の実験を行って、配管経路の状態と吸着ヘッドの吸引力との関係の解析を進めた結果、容器を落下させない吸引を行うには、真空圧よりも真空吸引容量が重要であることを究明した。
そして、真空吸引容量に影響を与える真空ポンプから吸着ヘッドに至るまでの配管系統の見直しを行う過程で、真空切替を行うためのロータリバルブ装置において十分な有効断面積を有した真空経路を構築する必要があることを見いだした。
【0007】
本発明者らは、この知見に基づいて、従来のロータリバルブ装置を調べた結果、従来のロータリバルブ装置には、以下のような問題点があることを究明した。
従来のロータリバルブ装置においては、内筒の外周面に形成された複数条の真空用溝と連通させるために、内筒の肉厚内を径に比して軸方向に長い孔が複数個形成されている。すなわち、内筒には、複数条の真空用溝と連通させるために、断面積が比較的小さく軸方向に長い孔が複数個形成されている。取り合いの制約上、内筒の端面の円周上に多数の孔を配置できないことから、孔の個数を増やして断面積を確保することは、難しい状況にある。
一方、前記孔の径を大きくして断面積を確保するためには、内筒の肉厚を相当厚くする必要があり、ロータリバルブ装置が大型化してしまうという問題点がある。そして、内筒の肉厚を相当厚くした場合であっても、孔の断面積の増加が余り見込めない構造になっている。
【0008】
以上のように、本発明者らは、従来のロータリバルブ装置においては、内筒の外周面に形成された真空用溝に真空を供給するための孔の断面積を十分に確保することができないため、吸着ヘッドにおける真空吸引容量が不足し、搬送中に吸着ヘッドから容器が落下するという問題点があることを究明した。
【0009】
本発明は、上述の事情に鑑みなされたもので、内筒の内側にチャンバを形成することにより、内筒の円周方向に延びる円弧状溝の長さの範囲内で複数の連通孔を設けることができ、必要な有効流路断面積を容易に確保できるロータリバルブ装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、ロータリバルブ内にチャンバを形成したロータリバルブ装置を備え、容器を吸着する吸着ヘッドの真空吸引容量を高めることができ、搬送中に吸着ヘッドから容器が落下することがない容器検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明の一態様は、固定側部材である内筒と回転側部材である外筒とを備え、前記外筒が前記内筒に対して摺接しながら回転することにより、前記内筒の外周面に形成された円弧状溝と前記外筒に形成された連通孔とが断続的に連通するように構成されたロータリバルブ装置において、前記内筒の内側に固定軸を設けて内筒を固定軸に固定するとともに内筒と固定軸との間に所定容量のチャンバを形成し、前記内筒に、前記円弧状溝の底部と前記チャンバとを連通する複数の連通孔を設けたことを特徴とするロータリバルブ装置である。
【0011】
本発明によれば、内筒と外筒とを備えたロータリバルブ内にチャンバを形成し、内筒の円弧状溝の底部と前記チャンバとを内筒に設けた複数の連通孔により連通させるようにしたため、チャンバと内筒の円弧状溝とを連通させる連通孔の方向が、内筒の軸方向から半径方向になり、かつ連通孔の長さも非常に短縮されるため、加工がきわめて容易となる。そして、内筒の円周方向に延びる円弧状溝の長さの範囲内で複数の連通孔を設けることができるため、必要な有効断面積を容易に確保できる。これらの結果、吸着ヘッドにおける真空吸引容量が十分確保できるようになり、搬送中の振動、外力、遠心力などにより容器が落下することがない。
【0012】
本発明の好ましい態様は、前記内筒の軸方向の端面と前記固定軸との間にシール部材を設けたことを特徴とする。
本発明によれば、内筒と固定軸との間に形成されたチャンバを密封空間とすることができ、前記チャンバを真空圧が保持できる真空チャンバとして利用できる。
【0013】
本発明の好ましい態様は、前記固定軸にマニホールドを固定し、マニホールドの内部の連通路を前記チャンバに連通させたことを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記マニホールドの連通路に、真空源に接続可能な配管を接続したことを特徴とする。
本発明によれば、ロータリバルブ装置に隣接して、マニホールドを設け、ロータリバルブ装置の上流の配管は、マニホールドに接続してマニホールドを介して上記チャンバに連通させるようにしたため、前記配管は太い配管のままつなぎ込みが可能となり、流路断面積の確保ができる。
【0014】
本発明の好ましい態様は、前記チャンバの容量は、200ミリリットル(ml)〜1000ミリリットル(ml)であることを特徴とする。
本発明によれば、ロータリバルブ装置の中に所定の容量を有するチャンバを設けたため、微妙な圧力変動に対応することができる。
【0015】
本発明の一態様は、容器を真空吸着する複数の吸着ヘッドと、前記複数の吸着ヘッドを自転させながら公転させるメインロータと、前記各吸着ヘッドと真空源とを断続的に連通させるロータリバルブ装置とを備え、自転する容器をカメラで撮影して検査する容器検査装置において、前記ロータリバルブ装置に上記に記載のロータリバルブ装置を用いたことを特徴とする容器検査装置である。
本発明によれば、ロータリバルブ内にチャンバを形成したロータリバルブ装置を備え、容器を吸着する吸着ヘッドの真空吸引容量を高めることができ、搬送中に吸着ヘッドから容器が落下することがない。
【発明の効果】
【0016】
本発明のロータリバルブ装置によれば、内筒と外筒とを備えたロータリバルブ内にチャンバを形成し、内筒の円弧状溝の底部と前記チャンバとを内筒に設けた複数の連通孔により連通させるようにしたため、チャンバと内筒の円弧状溝とを連通させる連通孔の方向が、内筒の軸方向から半径方向になり、かつ連通孔の長さも非常に短縮されるため、加工がきわめて容易となる。そして、内筒の円周方向に延びる円弧状溝の長さの範囲内で複数の連通孔を設けることができるため、必要な有効断面積を容易に確保できる。
また、本発明の容器検査装置によれば、ロータリバルブ内にチャンバを形成したロータリバルブ装置を備え、容器を吸着する吸着ヘッドの真空吸引容量を高めることができ、搬送中に吸着ヘッドから容器が落下することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係るロータリバルブ装置および容器検査装置の実施形態を図1乃至図5を参照して説明する。本実施形態においては、容器検査装置の一例として、プリフォーム検査装置について説明する。
図1はプリフォーム検査装置の全体構成を示す平面図である。図1に示すように、プリフォーム検査装置は、検査すべきプリフォーム1をメインロータ20に搬入する入口スターホイール3と、プリフォーム1を搬送しつつプリフォーム1の検査を行うメインロータ20と、検査後のプリフォーム1をメインロータ20から搬出する出口スターホイール4とを備えている。
【0018】
図2は、メインロータ20の詳細構造を示す図であり、図1のII−II線断面図である。図2に示すように、メインロータ20により搬送されるプリフォームは概略試験管状をなし、口部1aが平坦、胴部1bが円筒状、底部1cが球面をなし、首部にネックリング1dを有している。
図1に示すように、入口スターホイール3のピッチ円に沿って、プリフォーム1のネックリング1dを支持するガイドレール6,6が設置されている。また、出口スターホイール4のピッチ円に沿って、プリフォーム1のネックリング1dを支持するガイドレール7,7が設置されている。そして、ガイドレール6,6に接続して入口側ガイドレール8,8が設置されており、また出口スターホイール4に隣接して出口側ガイドレール9,9が設置されている。これら入口側ガイドレール8,8および出口側ガイドレール9,9は、進行方向に下り勾配になっている。
【0019】
前記メインロータ20のピッチ円を挟んで、内側に1台の照明10が設置され、外側に2台の撮影カメラユニット11,12が設置されている。照明10はメインロータ20のピッチ円に沿った円弧状の前面を有している。撮影カメラユニット11および12は、それぞれミラー13とCCDカメラ14とからなっており、高速ラインに対応できるようになっている。
また、メインロータ20のピッチ円の外側には、プリフォーム1を自転させるための自転用タイミングベルト15が配置されている。そして、自転用タイミングベルト15の下流側には、プリフォーム1の自転を停止させるためのブレーキ用ベルト16が配置されている。
【0020】
図2に示すように、メインロータ20は、回転軸21と、回転軸21に固定された支持板23と、支持板23に上下方向に移動可能に支持されるとともにプリフォーム1の口部1aを真空吸着する吸着ヘッド25とを備えている。回転軸21は、上下に軸受22,22を備えた軸受ハウジング24により回転可能に支持されている。
【0021】
前記回転軸21はモータ(図示せず)に連結され、回転軸21に固定された支持板23には複数のガイドバー37が支持されている。ガイドバー37には、上下動可能に支持部材38が支持されている。回転軸21の上方には、フレームFに固定されるとともに下方に延びる固定軸39が設けられている。固定軸39にはカム40が固定されている。
一方、前記吸着ヘッド25の軸部27は、支持部材38により支持されており、支持部材38に固定されたカムフォロワ42が固定軸39に固定されたカム40に係合し、支持部材38が上下動するようになっている。なお、カム40はメインロータ20の全周に亘って配設されていて、吸着ヘッド25を上下動させて吸着ヘッド25の上下方向の位置を制御している。
【0022】
図3は吸着ヘッド25を示す拡大断面図である。図3に示すように、吸着ヘッド25は、プリフォーム1の口部1aを真空吸着する吸着ヘッド本体26と、吸着ヘッド本体26を保持する細長状の軸部27と、吸着ヘッド本体26内に収容された逆止弁機構28とを備えている。吸着ヘッド本体26は、プリフォーム1の口部1a内に挿入されるテーパ状の凸部26aを有し、また内部に連通孔26bを有している。軸部27は、内部に連通孔27aを有している。逆止弁機構28は、ボール29と、ボール29を収容する円筒状のボールハウジング部30と、ボール29の上下側に設けられた上弁座31,下弁座32とを備えている。上弁座31,下弁座32は、円錐状の着座面31s,32sを有している。連通孔26bと連通孔27aとは、逆止弁機構28を介して連通可能になっている。
【0023】
図3に示す逆止弁機構28において、ボール29が上弁座31の着座面31s又は下弁座32の着座面32sに着座すると、流体の流れが抑制される。すなわち、ボール29と着座面31sとの接触によって流体の流れが抑制されるが、上弁座31の着座面31sには溝(図示せず)が設けられているため、流体の流れが完全に遮断されるわけではなく、溝を介して小流量の流体は流れることになる。ボール29と着座面32sとの接触によって流体の流れが抑制されるが、下弁座32の着座面32sには溝(図示せず)が設けられているため、流体の流れが完全に遮断されるわけではなく、溝を介して小流量の流体は流れることになる。
【0024】
図2に示すように、吸着ヘッド25は上下の軸受44,44により回転可能に支持されている。そして、上下の軸受44,44を収容する軸受ハウジング45は、支持部材38により支持されている。吸着ヘッド25には、自転用タイミングベルト15(図1参照)に係合するプーリ48が固定されている。吸着ヘッド25を自転させるベルト掛け部分は、吸着ヘッド25を支持する二つの軸受44,44の上方に位置している。吸着ヘッド25は、内部に連通孔26b,27a(図3参照)を有しており、連通孔27aは配管59およびロータリバルブ装置50を介して真空源(真空ポンプ)に連通されている。ロータリバルブ装置50は、固定軸39に固定された固定側部材である内筒51と、メインロータ20と同期して回転する回転側部材である外筒52とを備え、内筒51の外周面に真空用溝が設けられている。内筒51の真空用溝は連続的に設けるのではなく、円周方向の途中で溝加工のない箇所を設けることにより、真空供給、真空の遮断が可能となる。
【0025】
図4は、ロータリバルブ装置50の詳細構造を示す縦断面図である。図4に示すように、ロータリバルブ装置50は、固定軸39に固定された固定側部材である内筒51と、メインロータ20と同期して回転する回転側部材である外筒52とを備えている。固定側部材である内筒51および回転側部材である外筒52は、ともに円筒状部材であって、内筒51の外周面と外筒52の内周面とが摺接するようになっている。固定軸39と内筒51との間には、円筒状のチャンバ53が形成されている。チャンバ53の容量は、200ミリリットル(ml)〜1000ミリリットル(ml)に設定されている。内筒51の外周面には、円周方向に延びる複数条(図示の例では8条)の真空用溝51aが多段状に形成されている。各真空用溝51aの底部とチャンバ53とは、内筒51に形成された連通孔51hによって連通されている。内筒51の下端部と固定軸39との間には、オイルシール等からなるシール部材61が設けられている。
【0026】
また、ロータリバルブ装置50の上方には、マニホールド55が配設されており、マニホールド55は固定軸39に固定されている。マニホールド55の内部には、ロータリバルブ装置50のチャンバ53に連通する連通路55aが形成されている。そして、マニホールド55の連通路55aは、配管継手56および配管57を介して真空源(真空ポンプ)に連通されている。マニホールド55の下端部と固定軸39との間には、オイルシール等からなるシール部材62が設けられている。外筒52には、真空用溝51aに整合(対向)して連通可能となる複数の連通孔52hが形成されており、各連通孔52hは配管継手58および配管59を介して各吸着ヘッド25に接続されている。
【0027】
図5は、図4のV−V線断面図である。図5に示すように、内筒51の外周面には、全周の略3/4に亘って円周方向に延びる円弧状溝からなる真空用溝51aが形成されている。また、内筒51の外周面には、真空用溝51aに隣接して大気開放用の矩形状溝51bが形成されている。内筒51の内周面と固定軸39の外周面との間には、円筒状のチャンバ53が形成されている。円弧状溝からなる真空用溝51aの底部と円筒状のチャンバ53とは、半径方向に延びる複数の連通孔51hによって連通されている。外筒52には、内筒51の真空用溝51aに整合(対向)して連通可能となる複数の連通孔52hが形成されている。各連通孔52hは、配管継手58および配管59(図4参照)を介して各吸着ヘッド25に接続されている。
なお、内筒51の外周面には、複数条(図示の例では8条)の真空用溝51aが多段状に形成されているが、各真空溝51aは、図5に示す構成になっている。
【0028】
図4および図5に示すように構成されたロータリバルブ装置50において、外筒52が内筒51に摺接しながら回転すると、外筒52の連通孔52hが内筒51の真空用溝51aに対向(整合)する。そして、連通孔52hが真空用溝51aに対向(整合)している間は、真空ポンプからの負圧が連通孔52h,配管継手58,配管59を介して吸着ヘッド25に供給され、プリフォーム1が吸着ヘッド25により吸着保持される。また、連通孔52hが内筒51の溝加工のない箇所に掛かると、真空ポンプからの負圧が遮断されて吸着ヘッド25によるプリフォーム1の吸着保持が解除される。その後、連通孔52hが大気開放用の矩形状溝51bに連通すると、吸着ヘッド25は大気開放される。次に、連通孔52hが再び真空用溝51aに連通されると、真空ポンプからの負圧が吸着ヘッド25に供給される。なお、大気開放用の矩形状溝51bは、内筒51内を軸方向に延びる大気開放孔51vに連通されている(図4参照)。
以上のように、ロータリバルブ装置50は、1)真空引き⇒2)遮断(ニュートラル)⇒3)大気開放⇒4)遮断(ニュートラル)⇒5)再真空引き⇒6)遮断(ニュートラル)という工程でのローテーションとなっている。
【0029】
次に、上記ロータリバルブ装置50の各工程とプリフォーム1との関係について説明する。
上記ロータリバルブ装置50による1)真空引きにより、プリフォーム1は吸着ヘッド25により真空吸着され、その後、2)ニュートラルの位置においても、プリフォーム1の内部と吸着ヘッド25は共に真空圧で圧力差がなく、真空系路を遮断しても、吸着状態のままである。さらに3)大気開放の位置になると、プリフォーム1内の真空圧が低下して大気圧となり、自重によりプリフォーム1は吸着ヘッド25を離れ脱落し、プリフォーム1のネックリング1dを下から支えるガイドレール7によって支持され、プリフォーム1は下流側の次工程に搬送される。そして、吸着ヘッド25は、新たにメインロータ20に搬送されてくるプリフォーム1に対して、5)再真空引きにより真空吸着する、という一連の動作を繰返すことになる。
【0030】
次に、図1乃至図5に示すように構成されたプリフォーム検査装置の全体の動作を説明する。
プリフォーム1は入口側ガイドレール8,8から入口スターホイール3に供給される。プリフォーム1は、ネックリング1dがガイドレール6,6で支持された状態で入口スターホイール3により移送される。そして、プリフォーム1は入口スターホイール3からメインロータ20に受け渡される。
【0031】
プリフォーム1がメインロータ20に受け渡されると、カム40の作用により吸着ヘッド25を下降させ、吸着ヘッド25をプリフォーム1の口部1aに近接させて、配管59、ロータリバルブ装置50を介して吸着ヘッド25を真空ポンプと連通させ、プリフォーム1の真空吸着を開始する。このとき、図3に示すように、吸着ヘッド25のテーパ状の凸部26aはプリフォーム1の口部1a内に挿入される。この状態でプリフォーム1内は真空排気される。
【0032】
吸着ヘッド25によるプリフォーム1の吸着が完了したら、カム40の作用により吸着ヘッド25を上昇させ、プリフォーム1を吸着ヘッド25に吸着した状態で、自転用タイミングベルト15の作用によりプリフォーム1を吸着ヘッド25とともに自転させ、かつメインロータ20によりプリフォーム1を公転させ、この間に、プリフォーム1の胴部1bおよびネックリング1dを撮影カメラユニット11又は12により撮影する。
【0033】
撮影終了後に、プリフォーム1はブレーキ用ベルト16の作用により自転を停止する。その後、プリフォーム1はメインロータ20から出口スターホイール4に受け渡される。
このとき、プリフォーム1は、ネックリング1dがガイドレール7,7に支持されるようになる。正常なプリフォーム1は出口スターホイール4によって移送され、出口側ガイドレール9,9を介して次工程に移送される。一方、不良なプリフォーム1は、不良品排出シュート60の位置で出口スターホイール4による吸着支持が解除され、不良品排出シュート60に排出される。
【0034】
次に、図4および図5に示すように構成されたロータリバルブ装置50について更に説明する。
本実施形態のロータリバルブ装置50においては、固定側部材である内筒51の内側を貫通する軸39は、公転(回転)する吸着ヘッド25の回転軸心になっているが、この内筒51の内側を貫通する軸39は、固定軸であるために内筒51と締結状態にすることが可能である。そこで、内筒51の内径と、吸着ヘッド25の回転軸心としての固定軸39の外径に寸法差を設け、ロータリバルブ装置の軸方向両端面付近をオイルシール等からなるシール部材61,62によってシールすることで、固定軸39と内筒51の間の隙間を円筒状のチャンバ(真空室)53として活用することができる。そして、ロータリバルブ装置の内筒51の外周面に形成された真空用溝51aの底部とチャンバ53とを放射状に延びる複数個の連通孔51hにより連通させるようにしている。
【0035】
また、ロータリバルブ装置50に隣接して、マニホールド55を設け、ロータリバルブ装置50の上流の真空配管57は、マニホールド55に接続してマニホールド55を介して上記チャンバ53に連通させるようにしている。このように、上流の真空配管57をマニホールド55に接続できるようにしたため、太い配管のままつなぎ込みが可能となり、流路断面積の確保ができる。そして、吸着ヘッド25により近い、ロータリバルブ装置50の中に所定の容量を有するチャンバ53を設けたため、微妙な圧力変動に対応することができる。
【0036】
本実施形態のロータリバルブ装置50においては、チャンバ53と内筒51の真空用溝51aとを連通させる連通孔51hの方向が、内筒51の軸方向から半径方向になり、かつ連通孔51hの長さも非常に短縮されるため、加工がきわめて容易となる。そして、内筒51の円周方向に延びる真空用溝51aの長さの範囲内で複数の連通孔51hを設けることができるため、必要な有効断面積を容易に確保できる。これらの結果、吸着ヘッド25における真空吸引容量が十分確保できるようになり、搬送中の振動、外力、遠心力などにより容器が落下することがない。また、吸着ヘッド25の馴染みが悪いことに起因する容器口部からの多少のリークがあっても、容器吸引状態が保てるようになり、容器が落下することがない。さらに、吸着開始時に吸着ヘッド25が容器口部に密着していなくても容器吸引が可能になったことで、乗り移り部のカム構造を見直すことが可能となり、メインロータを高速で運転することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1はプリフォーム検査装置の全体構成を示す平面図である。
【図2】図2はメインロータの詳細構造を示す図であり、図1のII−II線断面図である。
【図3】図3は吸着ヘッドを示す拡大断面図である。
【図4】図4は、ロータリバルブ装置の詳細構造を示す縦断面図である。
【図5】図5は、図4のV−V線断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 プリフォーム
1a 口部
1b 胴部
1c 底部
1d ネックリング
3 入口スターホイール
4 出口スターホイール
6,7 ガイドレール
8 入口側ガイドレール
9 出口側ガイドレール
10 照明
11,12 撮影カメラユニット
13 ミラー
14 CCDカメラ
15 自転用タイミングベルト
16 ブレーキ用ベルト
20 メインロータ
21 回転軸
22 軸受
23 支持板
24 軸受ハウジング
25 吸着ヘッド
26 吸着ヘッド本体
26a 凸部
26b,27a,51h 連通孔
27 軸部
28 逆止弁機構
29 ボール
30 ボールハウジング部
31 上弁座
31s,32s 着座面
32 下弁座
37 ガイドバー
38 支持部材
39 固定軸
40 カム
42 カムフォロワ
44 軸受
45 軸受ハウジング
48 プーリ
50 ロータリバルブ装置
51 内筒
51a 真空用溝
51b 矩形状溝
51h,52h 連通孔
51v 大気開放孔
52 外筒
52a 円弧状溝
52b 矩形状溝
53 チャンバ
55 マニホールド
55a 連通路
56,58 配管継手
57,59 配管
60 不良品排出シュート
61,62 シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側部材である内筒と回転側部材である外筒とを備え、前記外筒が前記内筒に対して摺接しながら回転することにより、前記内筒の外周面に形成された円弧状溝と前記外筒に形成された連通孔とが断続的に連通するように構成されたロータリバルブ装置において、
前記内筒の内側に固定軸を設けて内筒を固定軸に固定するとともに内筒と固定軸との間に所定容量のチャンバを形成し、
前記内筒に、前記円弧状溝の底部と前記チャンバとを連通する複数の連通孔を設けたことを特徴とするロータリバルブ装置。
【請求項2】
前記内筒の軸方向の端面と前記固定軸との間にシール部材を設けたことを特徴とする請求項1記載のロータリバルブ装置。
【請求項3】
前記固定軸にマニホールドを固定し、マニホールドの内部の連通路を前記チャンバに連通させたことを特徴とする請求項1又は2記載のロータリバルブ装置。
【請求項4】
前記マニホールドの連通路に、真空源に接続可能な配管を接続したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のロータリバルブ装置。
【請求項5】
前記チャンバの容量は、200ミリリットル(ml)〜1000ミリリットル(ml)であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のロータリバルブ装置。
【請求項6】
容器を真空吸着する複数の吸着ヘッドと、前記複数の吸着ヘッドを自転させながら公転させるメインロータと、前記各吸着ヘッドと真空源とを断続的に連通させるロータリバルブ装置とを備え、自転する容器をカメラで撮影して検査する容器検査装置において、
前記ロータリバルブ装置に請求項1乃至5のいずれか1項に記載のロータリバルブ装置を用いたことを特徴とする容器検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−112440(P2010−112440A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284517(P2008−284517)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(390014661)キリンテクノシステム株式会社 (126)
【Fターム(参考)】