説明

ロータリピストンエンジン

【課題】オイル消費量の悪化を抑制することが出来るロータリピストンエンジンを提供する。
【解決手段】本発明におけるロータリピストンエンジン1は、ロータハウジング2と、サイドハウジング3と、これらのロータハウジング及びサイドハウジングに囲まれたロータ収容室に収容される3つの頂部10を有すると共に3つの作動室5を形成するロータ6と、を有し、ロータの外側面と、サイドハウジングとの隙間をシールするシール部材76を有し、ロータには、オイルを誘導可能な内部空間36aと、シール部材を保持するためのシール溝68とが形成され、ロータのシール溝には、ロータの内部空間に連通する連通孔80が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリピストンエンジンに係り、特に、ロータハウジングと、サイドハウジングと、これらのハウジングに囲まれたロータ収容室に収容されたロータと、を有するロータリピストンエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリピストンエンジンでは、一般的に、ロータとサイドハウジングとの間にオイルシールが設けられる。
このようなロータリピストンエンジンにおいて、エンジンの運転状態に応じて、ロータ収容室に供給するオイルの供給量を制御し、オイル消費を抑制するようにした技術が知られている(特許文献1)。
なお、特許文献2には、ロータリピストンエンジンとはその構造が全く異なる2サイクルのピストンエンジンにおいて、シリンダ室1に付着したオイルをオイルリング18により掻き取り、掻き取られてオイルリング18の下部に溜まったオイルを、ピストン11に形成したオイル落とし穴19でクランク室13に戻すことにより、オイルの掻き取りを確実に行うようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−174740号公報
【特許文献2】実開昭63−65823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような従来のロータリピストンエンジンでは、エンジン回転数が上昇すると、ロータとサイドハウジングとのシール部分で、エンジンオイルが遠心力により作動室(燃焼室)内に漏れてしまい、オイル消費量が悪化する、という問題があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、オイル消費量の悪化を抑制することが出来るロータリピストンエンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、ロータハウジングと、サイドハウジングと、これらのロータハウジング及びサイドハウジングに囲まれたロータ収容室に収容される3つの頂部を有すると共に3つの作動室を形成するロータと、を有するロータリピストンエンジンであって、ロータの外側面と、サイドハウジングとの隙間をシールするシール部材を有し、ロータには、オイルを誘導可能な頂部の内方に形成された内部空間と、シール部材を保持するためのシール溝とが形成され、ロータのシール溝には、ロータの頂部の内部空間に連通する連通孔が形成されていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、シール部材を保持するロータのシール溝に、ロータの内部空間に連通する連通孔が形成されているので、ロータの外側面とサイドハウジングとの隙間に侵入したオイルが、連通孔によりロータの内部空間に流れるようにすることが出来、それにより、オイルの作動室(燃焼室)内への流入を防止することが出来る。従って、オイル消費量を低減して、オイル消費量の悪化を抑制することが出来る。
【0007】
また、本発明において、好ましくは、内部空間は、ロータの3つの頂部の内部にそれぞれ設けられ、連通孔は、3つの頂部の内部に設けられた内部空間にそれぞれ連通するよう複数形成されている。
このように構成された本発明においては、ロータの3つの頂部の内部にそれぞれ設けられた内部空間は、ロータ径方向に対してより離れた位置で広がるよう形成されるので、内部空間内の冷却用オイルは、ロータの回転時、遠心力によってロータの径方向外方に偏り、これにより、内部空間内の冷却用オイルの油面が連通孔よりも径方向外方に維持されるようにすることが出来るので、内部空間内の冷却用オイルが連通孔に逆流することを防止することが出来る。
【0008】
また、本発明において、好ましくは、シール部材及びシール溝は、ロータの径方向に二重に設けられ、連通孔は、そのうち、ロータ径方向内方側のシール溝に形成されている。
このように構成された本発明においては、連通孔は、径方向内方側のシール部材のシール溝に形成されているので、より効果的に、オイルの作動室内への流入を防止することが出来る。また、ロータの頂部の内部空間内のオイルが、連通孔からシール部材側へ逆流することを、効果的に防止することが出来る。
【0009】
また、本発明において、好ましくは、連通孔は、ロータの中心と、ロータの3つの頂部とを結ぶそれぞれの直線上に位置するよう形成されている。
このように構成された本発明においては、より確実に、内部空間内のオイルが、連通孔からシール部材側へ逆流することを防止することが出来る。
【発明の効果】
【0010】
本発明におけるロータリピストンエンジンにおいては、オイル消費量の悪化を抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態によるロータリピストンエンジンの主な構成を示す断面図である。
【図2】図1のII-II線に沿って見た断面図である。
【図3】図2のIII-III線に沿って見た断面図である。
【図4】本発明の実施形態によるロータを示す斜視図である。
【図5】本発明の実施形態によるロータの側面図である。
【図6】本発明の実施形態によるロータに設けられたシール構造の概略構成を示す、図5のVI-VI線に沿って見た要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態によるロータリピストンエンジンを説明する。
先ず、図1により、本発明の実施形態によるロータリピストンエンジンの主な構成を説明する。図1は、本発明の実施形態によるロータリピストンエンジンの主な構成を示す断面図である。
先ず、図1に示すように、本発明の実施形態によるロータリピストンエンジン1は、トロコイド内周面2aを有する繭型のロータハウジング2と、サイドハウジング3と、これらのハウジング2、3に囲まれたロータ収容室4と、このロータ収容室4に収容されたほぼ三角形状のロータ6と、このロータ6の外周側に形成される3つの作動室5とを有する。本実施形態によるロータリピストンエンジン1は、図示は省略するが、2つのロータハウジング2を3つのサイドハウジング3の間に挟み込んで一体化して構成された、いわゆる2ロータタイプのロータリエンジンである。
【0013】
さらに、ロータリピストンエンジン1は、各サイドハウジング3及びフロントカバー(図示せず)のほぼ中央を貫通して、各ロータ収容室4内に突出するエキセントリックシャフト(シャフト)8を有する。ロータ6は、このエキセントリックシャフト8の偏心輪8aに対して回転自在に支持され、また、ロータ6の内側に設けられた内歯車9(図2参照)がサイドハウジング3に設けられた固定歯車11(図2参照)と噛み合い、これらの偏心輪8a及び各歯車により移動軌跡が規定される遊星回転運動をする。即ち、ロータ6は、その外周3つの頂部10に設けられたアペックスシール12が、それぞれトロコイド内周面2aに接し且つ摺動しながら、シャフト8の偏心輪8aの周りを自転し、且つ、シャフト8の軸線Xの周りを公転する。
【0014】
また、サイドハウジング3には、吸気ポート14及び排気ポート16が形成されている。各ポート14、16は、図1に示すように、ロータ収容室4の所定の位置で開口し、作動室5に対して混合気の吸気及び排気ガスの排気を行うようになっている。ロータハウジング2には、作動室5の混合気を点火させるための2本の点火プラグ18が設けられている。
【0015】
作動室5は各頂部10の間にそれぞれ形成される。各作動室5は、それぞれ周方向(図1では時計回り)に移動しながら、所定の位相差をもって、吸気、圧縮、膨張(燃焼)、排気の4行程を行い、その燃焼による圧力がロータ6を介してシャフト8を回転させる。例えば、図1において、吸気ポート14に連通する作動室5(図1の上側の作動室)は吸気上死点にあり、ロータ6の回転に伴って圧縮行程に移行する。圧縮行程に移行した作動室5は、その内部で混合気が圧縮され、そして、圧縮された混合気は所定のタイミングで点火プラグ18により点火されて膨張行程が行われる。例えば、図1において、右下に位置する作動室5は、膨張行程の前半にあり、そして、図1の左下に位置する作動室5のように、ロータ6が移動して作動室5が排気ポート16に連通すると、排気行程に移行する。このような燃焼サイクルは、各作動室5において、シャフト8の3回転につき1回行われ、また、作動室5がロータ6に対して3つあるので、シャフト8の1回転につき、燃焼が1回行われる。
【0016】
次に、アペックスシール12は、燃焼による高圧のガスの作動室5からの吹き抜けを防止するようにロータ6の幅方向に延びている。ロータ6の両側面には、隣り合う頂部10間を結ぶように、弓状のサイドシール20が設けられている。これらのサイドシール20は、ロータ6の外側面と、サイドハウジング3との隙間をシールするようになっており、また、ロータ6の頂部10には、各サイドシール20を互いに結合すると共に、サイドハウジング3側に開口するほぼ円筒状のコーナシール22が設けられている。
【0017】
次に、ロータリピストンエンジン1は、アペックスシール12、サイドシール20、コーナシール22等のガスシール部に、それらの潤滑のためのオイル(エンジンオイル)を直接、供給する潤滑装置24を有する。この潤滑装置24は、シャフト8の主軸受けにオイルを供給するためのオイルギャラリ52(図2参照)からオイルを取り出し、オイルコントロールバルブ(図示せず)により圧力を調整した後、計量して、オイルを、ロータハウジング2のトロコイド内周面2aに臨むノズル26、28に送り出すようになっている。
【0018】
次に、図2及び図3により、主にロータ6及びシャフト8の内部構造を説明する。図2は、図1のII-II線に沿って見た断面図であり、図3は、図2のIII-III線に沿って見た断面図である。なお、図3においては、ロータと、ロータハウジングの内周面を主に示す。
図2及び図3に示すように、ロータ6には、環状の中央ボス部30と、ほぼ三角形状に延びるロータ外周部32と、複数のリブ34と、が設けられている。複数のリブ34は、ボス部30と外周部32との間を区画するように形成され、これにより、複数の内部空間36が形成されている。
【0019】
これらの内部空間36は、ロータの3つの頂部付近に設けられた比較的大きい3つの頂部内部空間36aと、それ以外の比較的小さい小内部空間36bとを有し、ロータ6を、その内部から冷却する冷却用オイル(エンジンオイル)が供給されるようになっている。頂部内部空間36aは、ロータ6の3つの頂部10に隣接して形成され、小内部空間36bと比べて、環状の中央ボス部30から、径方向により離れた位置まで広がるよう形成されている。
【0020】
ここで、図2に示すように、シャフト8には、オイルポンプ(図示せず)から、上述したロータ冷却用オイルが送給されるオイル通路40が形成されている。シャフト8には、上述した内部空間36に連通する連通路42が形成され、この連通路42には、チェックボール44が設けられている。内部空間36には、これらの連通路42及びチェックボール44を介して、冷却用オイルが吹き付けられるようになっている。このようなオイルの吹き付けは、シャフト8の回転に伴ってオイルに加わる遠心力により行われるようになっている。
【0021】
そして、このように内部空間36に吹き付けられた冷却用オイルは、ロータ6の遊星回転によって受ける慣性力の変化により、各内部空間36a、36b内で旋回しながら、その内壁面から熱を奪うようになっている。そのような各内部空間36a、36b内でのオイルの状態の一例は、図3に示すようになる。
このような各内部空間36a、36b内のオイルは、そのような冷却を行った後、ロータ中心に向かう求心力の作用時に、ロータ6のフロント側又はリア側のいずれか一方に形成されたシャフト貫通孔46、及び、サイドハウジング3のロータ側の側面部に形成されたシャフト貫通孔48を経て、サイドハウジング3内に形成されたオイル環流路50に排出されるようになっている。なお、図2に示す符号54は、冷却水通路である。
【0022】
次に、図4乃至図6により、本発明の実施形態のロータリピストンエンジンにおける、ロータ6の外側面とサイドハウジング3の隙間のシール構造を説明する。図4は、ロータ6を示す斜視図であり、図5は、ロータ6の側面図であり、図6は、図5のVI-VI線に沿って見た、ロータ6に設けられたシール構造の概略構成を示す要部拡大断面図である。なお、図4及び図5は、各シール部材の図示を省略した図であり、図6は、図5のVI-VI線に沿って見たロータ6の断面の構成に加え、サイドハウジング3及びシャフト8の構成を加えた図である。
先ず、図4及び図5に示すように、ロータ6の外側面には、上述したコーナシール22及びサイドシール20を保持するための、コーナシール凹部60及びサイドシール溝62が形成されている。さらに、ロータ6の外側面には、カットオフシール溝64、アウタオイルシール溝66及びインナオイルシール溝68が形成されている。図5に示すように、これらの溝64、66、68は、それぞれ、ロータ6の中心軸線に対して同心円状に延びるよう形成されている。
【0023】
次に、図6に示すように、サイドシール溝62には、サイドシール部材70及びそれを弾性支持する支持部材71が、カットオフシール溝64には、カットオフシール部材72及びそれを弾性支持する支持部材73が、アウタオイルシール溝66には、アウタオイルシール部材74及びそれを弾性支持する支持部材75が、インナオイルシール溝68には、インナオイルシール部材76及びそれを弾性支持する支持部材77が、それぞれ設けられている。また、アウタオイルシール部材74及びインナオイルシール部材76は、インナオイルシール溝68内のオイルが、ロータ6の径方向外方に漏れることを防ぐためのOリング78、79を有する。ここで、サイドシール部材70は、主に、作動室5内のガスがロータ6の内方に侵入することを防ぐために設けられ、カットオフシール部材72は、主に、吸排気ポート14、16のオーバラップ期間を短縮し、内部EGRを低減するために設けられている。
【0024】
また、アウタオイルシール部材74及びインナオイルシール部材76は、図6に示すように、その径方向内方側にエッジ74a、76aが形成され、且つ、サイドハウジング3に対向する傾斜面74b、76bが形成され、これらにより、ロータ6とサイドハウジング3の隙間のオイルを、ロータ6の径方向内方側に取り込む(オイルの回収)と共にオイルの所定量の油膜を維持し、また、オイルが、ロータ6の径方向内方から作動室側に侵入することを防ぐような機能を有する。
より詳細には、各シール部材74、76が、ロータ6の遊星回転に伴ってサイドハウジング3に対して径方向外方に移動する部分(即ち、一周にわたる各シール部材74、76のうち、シャフト8の中心に対して外方に向けて移動する部分)では、傾斜面74b、76bにより、径方向外方側(作動室側)のオイル(潤滑用オイル)の圧力を高めると共に傾斜面74b、76bがそのオイルに乗り上げるようにして、オイルを径方向内方側に取り込むと共に、弾性支持されることによる所定の押付荷重により所定量の油膜を維持し、一方、各シール部材74、76が、ロータ6の遊星回転に伴ってサイドハウジング3に対して径方向内方に移動する部分(即ち、一周にわたる各シール部材74、76のうち、シャフト8の中心に対して内方に向けて移動する部分)では、エッジ74a、76aにより、オイル(冷却用オイル)が、ロータ6の径方向内方側から径方向外方側(作動室側)に侵入することを防止する。
【0025】
次に、図5及び図6に示すように、本実施形態では、上述したように二重に設けられたオイルシール74、76のうち、ロータ径方向内方側のインナオイルシール76において、特にエンジンの高回転時、上述した機能を維持するよう、インナオイルシール溝68と、上述した3つの頂部内部空間36aとを連通するように、3つの連通孔80が形成されている。
【0026】
図5に示すように、これらの連通孔80は、それぞれ、ロータの中心と、ロータの3つの頂部10とを結ぶそれぞれの直線上に位置するよう形成され、且つ、図3に一点鎖線で示すような、環状の中央ボス部30に近接した位置で、頂部内部空間36aに連通するよう形成されている。
また、図6に示すように、これらの連通孔80は、シール溝68の底部から、頂部内部空間36aに向けて、ロータ6の軸線方向に平行な方向に延びるよう形成されている。これらの連通孔80の大きさ(径)は、ロータ6の外側面とサイドハウジング3との隙間に流入したオイル(主に、上述したロータ6のシャフト貫通孔46を経て流入した各内部空間36a、36b内の冷却用オイル)が、ロータ6の遠心力により、インナオイルシール76に向けて径方向内方から流動し、インナオイルシール76に圧力がかかるようなとき、そのようなオイルを頂部内部空間36aに排出させると共に、そのようなインナオイルシール76への圧力を低減することが可能な大きさとなっている。
なお、各内部空間36aに連通する連通孔をそれぞれ複数設けてもよく、また、上述した構成に加え、内部空間36bに連通する連通孔を追加しても良く、又は、上述した連通孔80の代わりに、内部空間36bに連通する連通孔を形成するようにしても良い。
【0027】
次に、本発明の実施形態のロータリピストンエンジンの主な作用効果を説明する。
本実施形態では、シール部材76を保持するシール溝68に、ロータ6の内部空間36aに連通する連通孔80が形成されているので、ロータ6の外側面とサイドハウジング3との隙間に侵入したオイル(主に冷却用オイル)が、連通孔80によりロータ6の内部空間36aに流れるようにすることが出来、それにより、オイルの作動室(燃焼室)5内への流入を防止することが出来る。従って、そのように流入を防止した分、オイル消費量を低減して、オイル消費量の悪化を抑制することが出来る。
また、ロータ6の外側面とサイドハウジング3との隙間に侵入したオイルが、連通孔80によりロータ6の内部空間36aに流れるようにすることにより、オイルによるシール部材76への圧力が低減するので、シール部材76のサイドハウジング3への押し付け荷重を低減させることが出来、これにより、作動室5側からのオイル(潤滑用オイル)の回収量を増加させることが出来る。また、シール部材76のサイドハウジング3への押し付け荷重を低減させることにより、シール部材76とサイドハウジング3との摩擦圧力が低減し、これにより、エンジン1の出力を向上させることが出来る。
【0028】
また、本実施形態では、連通孔80は、内部空間36a、36bのうち、環状の中央ボス部30から径方向により離れた位置まで広がる頂部内部空間36aに連通し、また、ボス部30に近い位置に形成されているので、内部空間36a内の冷却用オイルに遠心力がかかるとき、そのようなオイルが、連通孔80からシール溝68に逆流することを抑制することが出来る。即ち、内部空間36aは、ロータ6の内部空間36a、36bのうち、最も体積が大きく、環状の中央ボス部30から、ロータ径方向に対してより離れた位置で広がるよう形成されるので、内部空間36a内の冷却用オイルは、ロータ6の回転時にかかる遠心力によってロータ6の径方向外方に偏り、これにより、内部空間36a内の冷却用オイルの油面が連通孔80よりも径方向外方に維持されるようにすることが出来るので、内部空間36a内の冷却用オイルが連通孔80に逆流することを防止することが出来るのである。
【0029】
また、本実施形態では、オイルシール74、76がロータ6の径方向に二重に設けられ、また、これらのオイルシールのうち、ロータ6の径方向内方側のシール溝67に連通孔80が形成されているので、より効果的に、オイルの作動室5内への流入を防止することが出来る。また、ロータ6の頂部内部空間36a内の冷却用オイルが、連通孔80からオイルシール76側へ逆流することを、効果的に防止することが出来る。
【0030】
また、本実施形態では、連通孔80は、ロータ6の中心と、ロータ6の3つの頂部10とを結ぶそれぞれの直線上に位置するよう形成されているので、頂部内部空間36a内のオイルが連通孔80からオイルシール76側へ逆流することを、より確実に防止することが出来る。
【符号の説明】
【0031】
1 ロータリピストンエンジン
2 ロータハウジング
3 サイドハウジング
4 ロータ収容室
5 作動室
6 ロータ
8 エキセントリックシャフト
8a 偏心輪
10 ロータ6の頂部
36 ロータ6の内部空間
36a 頂部内部空間(ロータの頂部の内部空間)
46 ロータに形成されたシャフト貫通孔
66 アウタオイルシール溝
68 インナオイルシール溝
74 アウタオイルシール部材
76 インナオイルシール部材
80 インナオイルシール溝と頂部内部空間との連通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータハウジングと、サイドハウジングと、これらのロータハウジング及びサイドハウジングに囲まれたロータ収容室に収容される3つの頂部を有すると共に3つの作動室を形成するロータと、を有するロータリピストンエンジンであって、
上記ロータの外側面と、上記サイドハウジングとの隙間をシールするシール部材を有し、
上記ロータには、オイルを誘導可能な内部空間と、上記シール部材を保持するためのシール溝とが形成され、
上記ロータのシール溝には、上記ロータの内部空間に連通する連通孔が形成されていることを特徴とするロータリピストンエンジン。
【請求項2】
上記内部空間は、上記ロータの3つの頂部の内部にそれぞれ設けられ、
上記連通孔は、上記3つの頂部の内部に設けられた内部空間にそれぞれ連通するよう複数形成されている請求項1記載のロータリピストンエンジン。
【請求項3】
上記シール部材及び上記シール溝は、上記ロータの径方向に二重に設けられ、
上記連通孔は、そのうち、ロータ径方向内方側のシール溝に形成されている請求項1又は請求項2に記載のロータリピストンエンジン。
【請求項4】
上記連通孔は、上記ロータの中心と、ロータの3つの頂部とを結ぶそれぞれの直線上に位置するよう形成されている請求項1乃至3のいずれか1項に記載のロータリピストンエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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