説明

ロータリーキルン炉

【課題】被処理物を効率よく燃焼させることができるロータリーキルン炉を提供する。
【解決手段】軸線C周りに回転するキルン本体3を備え、キルン本体3を回転させてキルン本体3の上流側から供給された被処理物Wを撹拌させながら下流側に搬送して燃焼させるロータリーキルン炉1である。このロータリーキルン炉1は、キルン本体3の内壁3aから突出して設けられ、被処理物Wをキルン本体3内で撹拌させるため軸線C方向に伸長する被処理物保持面12cを有するリフタ12を備えている。このリフタ12には、酸素を含む気体である空気をキルン本体3内に供給する噴出部23が設けられている。この噴出部23により、リフタ12によって撹拌された後の被処理物Wと酸素とが接触することにより当該酸素が燃焼に供され、様々な状態で存在し得る被処理物Wを効率よく燃焼させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーキルン炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筒状に構成され、軸線周りに回転するキルン本体を備え、このキルン本体内に廃棄物(被処理物)を導入して上流側から下流側に移動させる間にバーナーなどによって加熱して廃棄物を焼却処理するロータリーキルン炉が知られている。このようなロータリーキルン炉においては、廃棄物の燃焼効率を高めることが求められている。
【0003】
そこで、例えば特許文献1に記載のロータリーキルン炉では、キルン本体内で廃棄物を一旦回転方向に持上げることができる保持面を有するリフタをキルン本体の内壁に備え、塊状など様々な形態で存在し得る廃棄物をリフタの保持面で持上げ落下させ、これらを繰返すことにより廃棄物を撹拌混合して酸素と接触させながら燃焼させて燃焼効率を高くするようにしている。また、例えば特許文献2に記載のロータリーキルン炉では、上述した保持面を有するリフタに代えて、筒状のガス吹込みノズルをキルン本体の内壁に設け、廃棄物をガス吹込みノズルでかき混ぜると共にガスを噴出することにより、廃棄物を撹拌して燃焼させている。
【特許文献1】特開平10−054523号公報
【特許文献2】特開2000−130744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記特許文献1のものにあっては、廃棄物をリフタで撹拌しているものの、燃焼により酸素が消費されるため、廃棄物の近辺で酸素濃度が低く、廃棄物から遠いキルン上部で酸素濃度が高くなり、燃焼効率が低くなる。そのため、処理量の低下、燃料消費量の増加、又は未燃焼状態での廃棄物の排出などの問題があった。一方、特許文献2のものにあっては、円筒状のガス吹込みノズルであるため、廃棄物を持ち上げて落下させるようなことがあまり行えず、廃棄物の撹拌が十分とはいえなかった。また、ガス吹込みノズルからガスを噴出して廃棄物の撹拌を十分に行おうとした場合には、高圧ガスが必要となり装置全体が複雑になってしまうおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、被処理物を効率よく燃焼させることができるロータリーキルン炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるロータリーキルン炉は、軸線周りに回転するキルン本体を備え、このキルン本体を回転させてキルン本体の上流側から供給された被処理物を撹拌させながら下流側に搬送して燃焼させるロータリーキルン炉である。そして、このロータリーキルン炉は、キルン本体の内壁から突出して設けられ、被処理物をキルン本体内で撹拌させるため軸線方向に伸長する被処理物保持面を有するリフタを備えており、リフタには酸素含有気体をキルン本体内に供給する噴出部が設けられていることを特徴としている。
【0007】
本発明によるロータリーキルン炉によれば、様々な形態で存在し得る被処理物を被処理物保持面で撹拌混合するリフタに、酸素含有気体を供給する噴出部が設けられている。このため、撹拌混合後の被処理物と酸素とが接触することにより当該酸素が燃焼に供され、様々な状態で存在し得る被処理物を効率よく燃焼させることができる。
【0008】
ここで、噴出部は、リフタ内を酸素含有気体が流れて噴出するようにリフタに形成されていることが好ましい。このような構成を採用した場合、リフタ内を流れる酸素含有気体によりリフタを冷却することができるので、リフタの長寿命化を図ることが可能となる。
【0009】
また、噴出部は、キルン本体における軸線周りの回転方向の後方側に向かって酸素含有気体を噴出するようにリフタに設けられていることが好ましい。このような構成を採用した場合、リフタの被処物保持面で撹拌混合されて、積層した被処理物の下部から移動して表面にさらされた直後の被処理物の近辺に酸素含有気体を集中的に吹き付けることができる。このため、必要な酸素を必要な箇所に供給することができるため、被処理物の燃焼を更に効率よく行うことができる。
【0010】
また、噴出部は、リフタの後方側の面に形成されていることが好ましい。このような構成を採用した場合、簡易な構成で、表面にさらされた直後の被処理物の近辺に酸素含有気体を集中的に吹き付けることができる。
【0011】
また、噴出部は、複数設けられていることが好ましい。このような構成を採用した場合、複数の箇所から酸素含有気体を噴出するため、被処理物に対して酸素含有気体をより均等に供給することができ、未燃焼の部分を減少させることができる。その結果、被処理物の燃焼を一層効率よく行うことができる。しかも、通常1m程度の長さを有するリフタに対して複数の噴出部を設けることで、リフタ内を酸素含有気体が流れて噴出するように噴出部をリフタに形成した場合においては、リフタ全体を効率的に酸素含有気体で冷却させることができる。その結果、リフタの長寿命化を更に図ることができる。
【0012】
また、噴出部は、キルン本体の上流側に向かって酸素含有気体を噴出するようにリフタに形成されていることが好ましい。このような構成を採用した場合、被処理物に対して上流側に戻す方向の力を付与することができ、被処理物のキルン本体内の滞留時間を必要に応じて増やすことができる。このため、被処理物の状態に応じた燃焼の促進を酸素含有気体の噴出量の調整によって容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るロータリーキルン炉によれば、被処理物を撹拌するリフタに酸素含有気体を噴出する噴出部を設けたことにより、被処理物を効率よく燃焼させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明によるロータリーキルン炉の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係るロータリーキルン炉を示す縦断面図、図2は、図1におけるII-II矢視図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係るロータリーキルン炉1は、水平設置面Zに設置された横型回転式のロータリーキルン炉であって、投入部2、キルン本体3、フロントウォール4を備え、被処理物Wが投入部2からキルン本体3内に投入される。
【0016】
キルン本体3は、投入された被処理物Wを回転しながら搬送方向に搬送すると共に燃焼させて排出するものである。キルン本体3は、円筒状の内壁3aと内壁3aに円筒状に内張りされた耐火材3bとから構成され、上流側の開口端3cはフロントウォール4に挿入され、下流側の開口端は排出口3dとされている。このキルン本体3は、水平設置面Z上のベース5の上に設置された支持部6,7により回転可能に支持され、ベース5上の駆動部8を駆動源として回転される。キルン本体3は、下流側が下方になるように軸線Cを水平設置面Zに対して傾斜させて配置されており、これにより、回転しながら被処理物Wを上流側から下流側に搬送し、焼却残さを排出口3dから排出する。排出口3dには、不図示の二次燃焼室や排出物受けが接続される。なお、キルン本体内面に螺旋状突部を設け水平置きで搬送する場合もある。
【0017】
フロントウォール4は、ベース5上に傾斜して固定された壁体であって、一方の面にはキルン本体3の開口端3cが回転可能に挿入され、他方の面からは投入部2が開口端3cまで貫設されている。また、フロントウォール4には、キルン本体3内に投入された被処理物Wを燃焼させるためのバーナー9が設けられており、バーナー9は排出口3dに向けてキルン本体3内に火炎を噴射する。
【0018】
図1及び図2に示すように、キルン本体3には、複数の略直方体形状のリフタ12が設けられ、このリフタ12は、キルン本体3の内壁3aに底面12aが固定され、上面12bが軸線Cに向かって突出するように設けられている。また、リフタ12にあっては、キルン本体3の回転方向R前方に被処理物Wを持ち上げるため、回転方向R前方の面が軸線C方向に伸長する被処理物保持面12cとされている。このような被処理物保持面12cを有するリフタ12で被処理物Wをキルン本体3の回転に従い持ち上げ、図2の矢印Sで示すように被処理物Wを転動させることにより撹拌される。被処理物保持面12cを有するリフタ12は、ここでは、同一円周上に8個設けられ、搬送方向にこの8個を1つのグループとしたものが3箇所に設けられている。
【0019】
このようなリフタ12には、図3〜図5に示すように、酸素を含む気体(酸素含有気体)である空気をキルン本体3内に供給する噴出部21,22,23が設けられ、各噴出部21,22,23は空気供給装置13に接続されている。噴出部21は、リフタ12の上流側に面する側面12dに形成された噴出口21aと噴出口21aに連通する孔経路21bとを有し、噴出部22は、回転方向R後方に面する側面12eに形成された噴出口22aと噴出口22aに連通する孔経路22bとを有し、これらの孔経路21b,22bは、リフタ12内部において合流し、1つの孔経路21cとなり、上面12bとは反対側の底面12aを介して空気供給装置13に接続されている。また、噴出部23は、噴出部22と同様に、回転方向R後方に面する側面12eに形成された噴出口23aと噴出口23aに連通する孔経路23bとを有し、この孔経路23bは底面12aを介して空気供給装置13に接続されている。そして、側面12eに形成された噴出口22a,23aは、リフタ12の長手方向に沿って略均等間隔になるように配置されている。
【0020】
また、リフタ12に空気を供給する空気供給装置13は、図4に示すように、空気を供給するファン14と、ファン14からの空気の供給量を調整する流量調整弁15と、リフタ12の孔経路21c,23bに接続されてキルン本体3内に空気を送り込むための空気ヘッダ16(図5参照)と、給電線17とトロリー線18を介してファン14と接続されてファン14を駆動させる駆動部19と、流量調整弁15を制御する制御部20とから構成されており、制御部20によって、リフタ12から噴出される空気の量などを調整することができる。
【0021】
続いて、ロータリーキルン炉1の動作について説明する。まず、駆動部8を駆動してキルン本体3を軸線C周りに回転させ、バーナー9から下流側に向かって火炎を噴射させる。この火炎噴射によりキルン本体3内が所定の高温状態になると、投入部2を通して被処理物Wをキルン本体3内に投入する。投入された被処理物Wは、リフタ12の被処理物保持面12cにより持ち上げられ、転動する。このような転動を複数のリフタ12で繰り返すことにより、被処理物Wは撹拌混合される。また、上述したキルン本体3の回転と共に、空気供給装置13の駆動が行われ、噴出部21,22,23に空気が供給される。
【0022】
キルン本体3の回転に伴うリフタ12の動作により、細かくほぐされた被処理物Wの近辺には、図5に示すように、リフタ12の被処理物保持面12cの裏面である側面12eに設けられた噴出口22a,23aから空気が供給される。また、リフタ12の上流側に面した側面12dに設けられた噴出口21aからは、より上流側に配置された別のリフタ12で転動することにより、表面にさらされた被処理物Wの近辺に空気が供給される。これにより、被処理物Wに対して効率的に空気すなわち酸素が供給される。このように、リフタ12で転動することにより表面にさらされた後の被処理物Wに空気が供給されるため、被処理物Wと酸素とが接触することにより、当該空気が燃焼用に供され、被処理物Wが効率よく燃焼させられる。
【0023】
また、噴出部21により上流側に向かって噴出される空気によって、一部(噴出口21a近傍)の被処理物Wが上流側に戻される。これにより、被処理物Wはキルン本体3内に所望に滞留して燃焼が十分に行われ未燃焼部分が低減させられている。なお、被処理物Wの滞留時間は、噴出させる空気の量を制御部20で調整することにより、変更させることができる。その後、燃焼された被処理物Wは、一部が上流側に戻されながらキルン本体3の回転により排出口3dに向けて搬送される。また、リフタ12は、噴出部21,22,23内を流れる空気によって内部から冷却される。
【0024】
このように、本実施形態に係るロータリーキルン炉1においては、キルン本体3が回転すると、キルン本体3内に投入された被処理物Wがリフタ12の被処理物保持面12cにより持ち上げられ、被処理物W全体が転動する。この転動で表面にさらされた被処理物Wの近辺に酸素を供給することにより、被処理物Wを効率よく燃焼させることができる。
【0025】
また、本実施形態に係るロータリーキルン炉1においては、噴出部22,23がキルン本体3の回転方向Rの後方側に向かって空気を噴出するため、被処理物Wが持ち上げ転動し、撹拌混合され、酸素を必要とする被処理物Wの近辺に空気を集中的に供給させることができ、被処理物Wの燃焼を効率よく行うことができる。しかも、本実施形態に係るロータリーキルン炉1においては、複数の噴出口22a,23aが設けられているため、被処理物Wの燃焼を更に効率よく行うことができる。また、これらの噴出口22a,23aが均等間隔に配置されているため、空気をより均等に供給することができ、未燃焼の部分を減少させることができ、その結果、被処理物Wの燃焼を一層効果的に行うことができる。なお、噴出口22a,23aは、回転方向Rの後方側に設けられていることから、被処理物Wがリフタ12内に進入しないようになっている。
【0026】
また、本実施形態に係るロータリーキルン炉1においては、噴出部21から噴出される空気により、被処理物Wを上流側に押し戻すことができるようになっているため、被処理物Wのキルン本体3内の滞留時間を必要に応じて増やすことができ、その結果、被処理物Wの状態に応じた燃焼の促進を空気の噴出量の調整によって容易に行うことができる。また、制御部20による噴出量の制御により、被処理物Wの量や状態に応じて、キルン本体3内における滞留時間を調整して、被処理物Wの量や状態に応じた燃焼の促進を空気の噴出量の増減調整で容易に行うことができる。
【0027】
また、本実施形態に係るロータリーキルン炉1においては、空気がリフタ12内を流れて噴出するように噴出部が形成されているため、リフタ12内を流れる空気によりリフタ12を内部から冷却することができる。これにより、リフタ12の熱による損傷を低減させて長寿命化を図ることができる。特に、本実施形態では、複数の噴出部21,22,23を有しているため、一層長寿命化を図ることができる。
【0028】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、リフタ12(被処理物保持面12c)は軸線方向に沿って形成されていたが、リフタ12を軸線方向に対して所定角度傾斜させて被処理物Wの滞留時間を変えるようにしてもよい。また、リフタ12ではなく、噴出部の噴出方向を斜め後方である上流側に向けるようにしてもよい。また、上記実施形態においては、孔経路22bと孔経路23bとが互いに連通されていないが、孔経路22bと孔経路23bとを連通するようにしてもよい。この場合、リフタ12内の孔経路が増えることになり冷却効果が一層高まり、リフタ12の熱による損傷を低減させて長寿命化を更に図ることができる。
【0029】
また、上記実施形態においては、被処理物Wの量や状態に応じて制御部20で流量調整弁15を制御して空気量を調整するようにしているが、投入部2に被処理物Wの量や状態を検知するセンサを設けて、そのセンサの値に応じて自動的にリフタ12の噴出部21から噴出する空気の量を調整するようにしてもよい。このようにすると、被処理物Wの滞留時間を量や状態に応じて自動的に設定させることができる。また、上記実施形態では、空気を吹き込むようにしているが、酸素含有気体であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態に係るロータリーキルン炉を示す縦断面図である。
【図2】図1におけるII-II矢視図である。
【図3】リフタを示す斜視図である。
【図4】空気供給装置のリフタへの取付けを示す図である。
【図5】図4におけるV-V 矢視図である。
【符号の説明】
【0031】
1…ロータリーキルン炉、2…投入口、3…キルン本体、9…バーナー、12…リフタ、12c…被処理物保持面、12d,12e…側面、13…空気供給装置、20…制御部、21,22,23…噴出部、21a,22a,23a…噴出口、21b,21c,22b,23b…孔経路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線周りに回転するキルン本体を備え、当該キルン本体を回転させて前記キルン本体の上流側から供給された被処理物を撹拌させながら下流側に搬送して燃焼させるロータリーキルン炉であって、
前記キルン本体の内壁から突出して設けられ、前記被処理物を前記キルン本体内で撹拌させるため軸線方向に伸長する被処理物保持面を有するリフタを備え、
前記リフタには、酸素含有気体を前記キルン本体内に供給する噴出部が設けられていることを特徴とするロータリーキルン炉。
【請求項2】
前記噴出部は、前記リフタ内を前記酸素含有気体が流れて噴出するように前記リフタに形成されていることを特徴とする請求項1に記載のロータリーキルン炉。
【請求項3】
前記噴出部は、前記キルン本体における軸線周りの回転方向の後方側に向かって前記酸素含有気体を噴出するように前記リフタに設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のロータリーキルン炉。
【請求項4】
前記噴出部は、前記リフタの前記後方側の面に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のロータリーキルン炉。
【請求項5】
前記噴出部は、複数設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のロータリーキルン炉。
【請求項6】
前記噴出部は、前記キルン本体の前記上流側に向かって前記酸素含有気体を噴出するように前記リフタに設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のロータリーキルン炉。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−257669(P2009−257669A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106950(P2008−106950)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】