説明

ロータリージョイントの軸受結露防止装置

【課題】ロータリー式充填装置等のロータリージョイントにおいて、ロータリージョイントの無給油軸受等の軸受が結露によって発錆しない軸受結露防止装置を提供する。
【解決手段】容器2に液体等を充填するロータリー式充填装置1等のロータリージョイント20,40において、該ロータリージョイント20,40の固定部に回転部を軸支する軸受に、前記回転部とともに回転する回転制御盤15等へ供給するドライエアの一部を、その配管系統16から分岐して供給するように配管系統を構成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に液体等を充填するロータリー式充填装置等のロータリージョイントにおいて、該ロータリージョイントの固定部に回転部を軸支する軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータリー式充填装置等でのロータリージョイントの軸受については、製品飲料中にグリス等の潤滑油が混入するのを防止するとともに、メンテナンスを容易にするために無給油軸受が使用されており、その技術は公知となっている。(特許文献1)
また、回転する冷却シリンダ等の回転体にドライエアを供給して、回転体の結露防止を図った装置は公知となっている。(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭61−94687号公報(第1図)
【特許文献2】実開昭63−112032号公報(第1図、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1によれば、ロータリージョイントの回転軸が、固定されたハウジングブロックに無給油軸受(本項では以下無給油軸受を軸受と称する)を介して軸支され、かつ、該軸受部が大気開放される構造としている。
しかしながら、前記特許文献1の技術では、ロータリージョイントを流れる流体の温度が、一例として、0℃から80℃と温度差が大きいことにより、軸受部には外部との空気の往来が生じて、充填装置が設置されている充填室内部の湿度が一例として80%と高いため、湿度が高い空気が軸受部に侵入して軸受が結露し、そのために軸受に錆が発生するという恐れがある。
【0005】
また、前記特許文献2によれば、回転する冷却シリンダと該冷却シリンダを囲繞する固定のハウジングの間の空間に、冷却空気供給装置から前記ハウジングに接続された管路を経由してドライエアを供給し、冷却シリンダの結露防止をするとしている。
しかしながら、前記特許文献2の技術では、ドライエアは、スリットを有する固定のハウジング内に供給されるのみで、ロータリー式充填装置のロータリージョイントのような回転体のハウジング等にドライエアを供給する技術は開示されていない。
【0006】
本発明は、ロータリー式充填装置等のロータリージョイントにおいて、ロータリージョイントの無給油軸受等の軸受が結露によって発錆しない軸受結露防止装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題に対し、本発明は以下の手段により解決を図る。
(1) 第1の手段のロータリージョイントの軸受結露防止装置は、容器に液体等を充填
するロータリー式充填装置等のロータリージョイントにおいて、該ロータリージョイントの固定部に回転部を軸支する軸受に、前記回転部とともに回転する回転制御盤等へ供給するドライエアの一部を、その配管系統から分岐して供給するように配管系統を構成したことを特徴とする。
(2) 第2の手段のロータリージョイントの軸受結露防止装置は、前記第1の手段のロ
ータリージョイントの軸受結露防止装置において、前記ロータリージョイントの固定部或いは回転部の外径側或いは内径側に前記軸受部近辺で長手方向にスリット溝を設けて、前記軸受の一方の側面の空間に供給されたドライエアが他方の側面の空間にも流通されるように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係わる本発明は、容器に液体等を充填するロータリー式充填装置等のロータリージョイントにおいて、該ロータリージョイントの固定部に回転部を軸支する軸受にドライエアを供給するようにしたことにより、前記軸受がドライエアで陽圧状態となり湿度が高い空気が侵入しなくなり、結露防止ができて前記軸受に錆が発生しないという効果を有し、さらに、前記軸受に供給するドライエアを前記回転部とともに回転する回転制御盤等へ供給するドライエアの一部を、その配管系統から分岐して供給するように配管系統を構成したことにより、前記軸受へのドライエア供給配管装置のコストを抑制できるという効果を有する。
請求項2に係わる本発明は、請求項1に記載するロータリージョイントの軸受結露防止装置において、前記ロータリージョイントの固定部或いは回転部の外径側或いは内径側に前記軸受部近辺で長手方向にスリット溝を設けたことにより、前記軸受の一方の側面の空間に供給されたドライエアが他方の側面の空間にも流通されて、前記軸受の両側面にドライエアが供給されるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係わる軸受結露防止装置を備えたロータリージョイントを下部に有るロータリー式(メカトロ)充填装置の正面図で、断面図としてある。
【図2】図1のA部詳細図で、下部ロータリージョイントを示す。
【図3】図1のB部詳細図で、上部ロータリージョイントを示す。
【図4】図2のH−H断面図で、拡大図としてある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
(本発明の実施の形態)
本発明の実施の形態を図1、図2、図3および図4に基づいて説明する。
図1は、本発明に係わる軸受結露防止装置を備えたロータリージョイントを下部に有するロータリー式(メカトロ)充填装置の正面図で、断面図としてある。
図2は、図1のA部詳細図で、下部ロータリージョイントを示す。
図3は、図1のB部詳細図で、上部ロータリージョイントを示す。
図4は、図2のH−H断面図で、拡大図としてある。
【0012】
図において、ロータリー式メカトロ充填装置(以下ロータリー式充填装置と称する)1は、脚10に載置された架台9の上面に取り付けられた駆動装置4により駆動される歯車4aの外歯と、該外歯とその内歯の噛合いにより軸受8に支持されて回転する旋回台7、該旋回台7の上面に設けられた支柱11に載置されたフィラーボウル3、該フィラーボウル3の下面に円周等分に取り付けられて該フィラーボウル3内の液体12fを容器2に充填する充填バルブ5、該充填バルブ5の下方で該充填バルブ5と対応した位置で前記旋回台7に設けられて図示しないエア経路の作動により容器2を上下動して充填バルブ5に適合させる容器台6、前記架台9にその固定部を取り付けられ、該固定部の周りにその回転部を設けられた下部ロータリージョイント20、フィラーボウル取付台3aの上面に取り付けられた回転制御盤15、該回転制御盤15の上面にその回転部を取り付けられ、該回転部の周りに図示しない固定支持部材に廻り止めされた固定部を有する上部ロータリージョイント40等による構成となっている。
【0013】
前記下部ロータリージョイント20は、前記架台9の上面に取り付けられた固定軸21、該固定軸21に嵌合され、位置決めされた無給油軸受23aおよび無給油軸受23b(以下無給油軸受23a、無給油軸受23bを軸受23a、軸受23bと称する)に支持されて前記固定軸21の外周面を気密に摺動して回転する外筒22、該外筒22の上面に液密、かつ、気密に取り付けられ、前記フィラーボウル取付台3aとともに回転する回転体22a、および、前記外筒22の下面に取り付けられた回転体22b等によって構成されている。
【0014】
なお、前記回転体22aは、該回転体22aに設けられた数か所の窪み22g1から図示しない締付け具により前記外筒22に締め付けられて、回転体22aと外筒22が一体となって回転するようになっているが、該締付けについての詳細な説明は省略する。
また、前記回転体22bは、該回転体22bに設けられた数か所の窪み22g2から図示しない締付け具により前記外筒22に締め付けられて、回転体22bと外筒22が一体となって回転するようになっているが、該締付けについての詳細な説明は省略する。
【0015】
前記固定軸21には、前記充填する液体12fを図示しない液タンクより矢印Dの方向へ供給する配管12と連結された孔26、前記フィラーボウル3内のエアを排気する配管13と連結された孔27、前記フィラーボウル3内の液体12fの上部へ清浄エアを図示しない清浄エア源より矢印Eの方向から供給する配管14と連結された孔28が設けられている。
【0016】
また、前記外筒22には、前記孔27からリング状のエア溝27gを経由して前記フィラーボウル3内のエアを排気する配管13bと連結された孔27a、前記孔28からリング状のエア溝28gを経由して前記フィラーボウル3内の液体12fの上部へ清浄エアを供給する配管14bと連結された孔28a、後述する軸受23aおよび軸受23bの結露防止のための軸受結露防止装置17を構成する配管17aと連結された孔17bが設けられている。
前記回転体22aは、前記孔26から供給される液体12fを受ける液体受け25rを経由して、液体12fを前記フィラーボウル3へ供給する配管25と連結した孔25aが設けられている。
【0017】
前記軸受23aは、図示のように、前記固定軸21の肩部と固定具24a、および、外筒22の肩部と回転体22aの下面によって固定され、軸受23bは、図示のように、前記固定軸21の肩部と固定具24b、および、外筒22の肩部と回転体22bの上面によって固定されている。
また、前記軸受23aおよび軸受23bの図示の上下方向にはそれぞれ空間32、空間32a、および、空間32b、空間32cが設けられており、前記孔17bは空間32aおよび空間32bに連結されている。
【0018】
また、前記固定軸21の外径側の軸受23a部には、スリット溝29aが設けられており、前記空間32aと空間32が通じるようになっている。同様に、前記固定軸21の外径側の軸受23b部には、スリット溝29bが設けられており、前記空間32bと空間32cが通じるようになっている。
なお、ここでは、スリット溝29aおよびスリット溝29bを固定軸21の外径側に設けた場合を示したが、外筒22の内径側に設けることとしてもよい。
さらに、前記空間32は前記回転体22aに設けられた小孔22h1によって前記窪み22g1を経由して大気に通じることができるとともに、前記空間32cは前記回転体22bと前記固定軸21との小隙間22h2によって大気に通じることができるようになっている。
【0019】
前記上部ロータリージョイント40は、前記回転制御盤15の上面に取り付けられた回転軸41が、無給油軸受43aおよび無給油軸受43b(以下無給油軸受43a、無給油軸受43bを軸受43a、軸受43bと称する)を介して、図示しない廻り止めにより回転しないようになっている外筒42の内周と気密に摺動して回転するようになっている。
前記軸受43aは、図示のように、回転軸41の肩部と固定具44a、および、外筒42の段差部により固定され、前記軸受43bは、回転軸41の肩部と固定具44b、および、外筒42の段差部と外筒42の上面に取り付けられた架台48の段差部により固定されている。
【0020】
前記架台48には、支柱49aが設けられており、電気絶縁材料から成る支持台49が、前記支柱49aと固定具49bによって固定されている。
支持台49には、図示しない固定の電源部からの電気ケーブル50と接続された端子台46を外周側に有する外スリップリング45が取り付けられており、該外スリップリング45の内周に前記回転軸41の外周側に電気絶縁状態で取り付けられた内スリップリング45aが摺動して回転するようになっており、前記外スリップリング45と前記内スリップリング45aの回転摺動により固定部から回転部に電気が受け渡されるようになっている。
【0021】
また、前記内スリップリング45aは回転軸41の肩部と締付け具51によって、固定されており、該締付け具51には、内スリップリング45aからの電流を電気ケーブル50aに伝達する図示しない端子が電気絶縁状態で設けられており、該電気ケーブル50aが回転軸41の上部に設けられた孔41hから回転軸41の孔41c内を通って回転制御盤15内の図示しない端子箱に接続されている。
なお、前記回転軸41の上面には蓋54が取り付けられ、前記外スリップリング45、内スリップリング45a等は、前記架台48に取り付けられたカバー55で覆われている。
【0022】
前記外筒42には、制御用エアを図示しない制御エア源より矢印Gの方向へ供給する配管53cと連結された孔53bおよびリング状のエア溝53g、図示しないエア源より矢印Fの方向へエアが供給され、レギュレータ16r、ミストセパレータ16s、エアドライヤ16kを経てドライエアとして供給する配管16と連結された孔16aおよびリング状のエア溝16gが設けられている。
【0023】
また、前記回転軸41には、前記制御用エアを前記リング状のエア溝53gから回転制御盤15内の配管53へ供給する孔53aが設けられているとともに、前記ドライエアを前記リング状のエア溝16gから回転制御盤15内の配管16cへ供給する孔16bが設けられており、前記配管16cから前記回転制御盤15内の矢印P方向に吹き出されたドライエアは前記回転制御盤15内を微陽圧で冷却するようになっている。
【0024】
ここで、前記軸受結露防止装置17は、前記配管16cから分岐された配管17a、該配管17aの2分岐から前記孔17bを経由して、前記空間32aおよび前記空間32bへ前記ドライエアを供給するようになっており、さらに、前記空間32aから前記スリット溝29aを経て前記空間32へ、および、前記空間32bから前記スリット溝29bを経て前記空間32cへドライエアが流通するように構成されている。
【0025】
次に、本実施の形態に係わる軸受結露防止装置17の作用を説明する。
図示しないエア源より矢印Fの方向へ供給されるエアは、配管16の経路に設けられたレギュレータ16r、ミストセパレータ16s、エアドライヤ16kを経てドライエアとなり、孔16a、リング状のエア溝16g、孔16b、配管16c、配管16cから分岐した配管17a、孔17bを経由して、空間32aおよび空間32bに供給され、さらに、スリット溝29aおよびスリット溝29bを経由して空間32および空間32cに流通されて、それぞれ軸受23aおよび軸受23bを微陽圧でドライな雰囲気にする。
【0026】
これにより、軸受23aおよび軸受23bは、湿度が高い充填室の空気に曝されることがなくなり、発錆を防止することができる。
なお、前記ドライエアは、前記回転制御盤15内を冷却するドライエア源から分岐されたものを利用しており、配管設備コストを抑制したものとすることができる。
【0027】
なお、空間32および空間32cに供給された微陽圧のドライエアは、小孔22h1および小隙間22h2を通じて外部に開放されるが、空間32および空間32cに供給されたドライエアが微陽圧になっているため、外部の湿度が高い空気が侵入することはない。
【符号の説明】
【0028】
1 ロータリー式(メカトロ)充填装置
15 回転制御盤
16、16c 配管
16a、16b 孔
16g リング状溝
16k エアドライヤ
16r レギュレータ
16s ミストセパレータ
17 軸受結露防止装置
17a 配管
17b 孔
20 下部ロータリージョイント
21 固定軸
22 (回転する)外筒
22a、22b 回転体
22h1 小孔
22h2 小隙間
23a、23b (無給油)軸受
29a、29b スリット溝
32、32a、32b、32c 空間
40 上部ロータリージョイント
41 (回転する)回転軸
42 (固定の)外筒
43a、43b (無給油)軸受

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に液体等を充填するロータリー式充填装置等のロータリージョイントにおいて、該ロータリージョイントの固定部に回転部を軸支する軸受に、前記回転部とともに回転する回転制御盤等へ供給するドライエアの一部を、その配管系統から分岐して供給するように配管系統を構成したことを特徴とするロータリージョイントの軸受結露防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載するロータリージョイントの軸受結露防止装置において、前記ロータリージョイントの固定部或いは回転部の外径側或いは内径側に前記軸受部近辺で長手方向にスリット溝を設けて、前記軸受の一方の側面の空間に供給されたドライエアが他方の側面の空間にも流通されるように構成したことを特徴とするロータリージョイントの軸受結露防止装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−106593(P2011−106593A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263234(P2009−263234)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(505193313)三菱重工食品包装機械株式会社 (146)
【Fターム(参考)】